説明

SHCタンパク質を使用して消化管および他の癌の再発の予後を診断するための方法

本発明は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを使用した、消化管および他の癌の再発の予後を診断するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/760,900号(2006年1月20日出願)に対する優先権を主張するものであり、出願の内容は参照することによりその全体が本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
正常な細胞および癌に冒された細胞の広範囲にわたる分子生物学的研究によって、細胞の成長および分裂に関わるシグナル伝達における異常によって癌が生じること、また、発癌性遺伝子の発現によって生成されるタンパク質が、細胞の成長および分裂を制御していることが明らかになった。すなわち、成長因子、成長因子受容体、細胞チロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびホスファターゼ、Rasタンパク質、アダプタタンパク質、転写因子などが、細胞内のシグナル伝達に関係し、細胞増殖において重要な役割を果たしていることが報告されている(例、Alexander,L.(1994)Eur.J.Biochem.226,1−13、Hahn W.C.and Weinberg R.A.(2002)Nat Rev Cancer 2(5):331−41、Blume−Jensen P. and Hunter T.(2001)Nature 411(6835):355−65を参照のこと)。
【0003】
例えば、Rasによる細胞内のシグナル伝達は、シグナル伝達物質が、たとえばErbB2のような成長因子受容体に結合したときに生じ、それによって、受容体上にチロシンのリン酸化が生じる。受容体は、Shc(Srcホモロジおよびコラーゲンタンパク質)内のチロシン317をリン酸化し、次いで、Grb2−(成長因子受容体−結合タンパク質−2)SOS複合体によって認識される。その結果、SOSは、Rasを活性化させ易くすると思われる細胞膜に転座され、(例、Batzer,A.G.,et al.(1994)Mol Cell Biol 14(8):5192−201;Buday,L.and J.Downward(1993)Cell 73:611−620;Feig,L.A.(1994)Curr Opin Cell Biol 6(2):204−11;Karin,M.and T.Hunter(1995)Curr Biol 5(7):747−57;Meyer,S.,et al.(1994)Mol Cell Biol 14(5):3253−62;Seger,R.and E.G.Krebs(1995)Faseb J 9(9):726−35;Segatto,O.,et al.(1993)Oncogene 8(8):2105−12;Sutherland,R.L.,C.K.Watts,and E.A.Musgrove(1993)J Steroid Biochem Mol Biol 47(1−6):99−106)を参照のこと)DNA合成、細胞増殖、および分化の促進に至る。
【0004】
さらに、Shc、Shcアンチセンス、種々のShcドミナントネガティブコンストラクトに微量注入された抗体を使用したいくつかの研究では、EGFレセプタ、Her2/Neu、IGF−IおよびHGFによってシグナリングするための、機能Shcへの依存度を示している(例、Nolan,M.K.,et.al.(1997)Int J Cancer 72(5):828−3;Xie,Y.,K et al.(1995)Oncogene 1995 10(12):2409−2413;Pelicci,G.,et al.(1995)Oncogene 10(8):1631−8;Sasaoka,T.et al.(1994)J Biol Chemi 269(18):13689−94;Stevenson,L.A.,et al.(1999)Cell Growth & Differentiation 10(1):61−71;および、Song,R.X.,et al.(2006)Proc Natl Acad Sci USA 101(7):2076−4081を参照のこと)。Shcには、それぞれ66、52、および46kDaのp66、p52、およびp46の3つのイソ型がある(例、Songyang,Z.,et al.(1993)Cell 72(5):767−78;Pelicci,G.,et al.(1992)Cell 70(1):93−104;Rozakis−Adcock,M.,et al.(1992)Nature 360(6405):689−92を参照のこと)。p66 Shcのイソ型は、p52またはp46 Shcのイソ型には見られない、固有のN末端ドメイン(CH2)を含む(Pelicci,G.,et al.(1992)Cell 70(1):93−104)。p52およびp46 Shcとは対照的に、p66 Shcは、一般的に、MAPキナーゼシグナル伝達カスケードを活性化するのではなく、むしろMAPキナーゼおよびc−fosに対する成長因子の能力を実際に抑制する(Migliaccio,E.,et al.(1997)Embo J 16(4):706−16;Pacini,S.,et al.(2004)Mol Cell Biol 24:1747−57;Trinei,M.,et al.(2002)Oncogene 21:3872−8)。加えて、p66 Shcは、酸化的ストレスに対するアポトーシス感作体である(Migliaccio,E.,et al.(1999)Nature 402(6759):309−313;Nemoto,S.,et al.(2002)Science 295(5564):2450−2452;Orasini,F.,et al.(2004)J Biol Chem 279(24):25689−25695;Pacini,S.,et al.(2004)Mol Cell Biol 24(4):1747−1757;Purdom,s.,et al.(2003)Trends Mol Med 9(5):206−210;およびTrinei,M.,et al.(2002)Oncogene 21(24)3872−3878)。このようなストレスは、成長因子経路の慢性的な活性化によって、好中球およびマクロファージの浸潤によって、および/または低酸素の腫瘍の新血管形成によって発生する場合がある(Brown,N.S.,et al.(2001)Brest Cancer Res 3(5):323−327;Irani,K.,et al.(1997)Science 275(5306):1649−1652)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
消化管癌などの癌と診断された患者の場合、外科的および内科的な腫瘍学者は、現在では、レベルD1の外科的切除しか処置されていない早期癌の患者が、疾患を再発する適当な可能性(約20%)に対して、侵襲レベルD2の手術によって、および現在の治療標準(MacDonald,J.(2001)N.Engl J Med 345:725−730)としての一部によって採用された有害な化学放射線療法によってもたらされ得る、最小の起こり得る利益のバランスをとらなければならない。再発性疾患が現れそうな患者を識別する予後マーカは、この臨床的治療法の決定を補助および向上させる。
【0006】
したがって、特に早期ステージの癌患者の外科的およびアジュバント治療の有効性および程度を管理する予後指標のための分野では緊急を要する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量で、および/またはShcの数学的関係(例、Shcの比率および/またはPYp66−Shc生成物)で、癌(例、消化管癌)治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断できること、また、癌治療を受ける対象の生存の予後を診断できることの発見に、少なくとも部分的に基づくものである。特に、出願人は、胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはShc(PY−Shc)の量の増加が、対象における癌の再発と相互に関連すること、および胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはShc(PY−Shc)の量の減少が、対象における癌の無再発と相互に関連にすることを初めて実証した。同様に、胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはShc(PY−Shc)の量の増加が、対象の死亡と相互に関連すること、および胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはShc(PY−Shc)の量の減少が、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。
【0008】
出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の増加が、対象における癌の再発と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の減少が、対象における癌の無再発と相互に関連することも初めて実証した。同様に、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の増加が、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の減少が、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。加えて、出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が低いこと、すなわちShcの比率が低いことが、対象における癌の再発と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの比率が高いことが、対象における癌の無再発と相互に関連することを初めて実証した。同様に、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が低いこと、すなわちShcの比率が低いことが、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの比率が高いことが、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。さらに、出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が高いこと、すなわちPYp66−Shc生成物が多いことが、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、PYp66−Shc生成物が少ないことが、対象の死亡と生存に関連することも初めて実証した。
【0009】
また、対象から得られた試料内の、変異または蓄積したTP53の存在と相まって、高レベルのp66−Shcが、対象における癌の再発と相互に関連することも始めて実証した。同様に、対象から得られた試料内の、変異または蓄積したTP53の非存在と相まって、高レベルのp66−Shcが、対象における癌の再発のしにくさと相互に関連することを始めて実証した。
【0010】
したがって、本発明は、癌治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、上述のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、癌治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0011】
別の側面では、本発明は、癌治療を受ける対象(例、ヒト)の生存の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、上述のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、癌治療を受ける対象の生存の予後を診断する。
【0012】
さらに別の側面では、本発明は、消化管癌の治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から消化管の組織試料を得るステップと、消化管の組織試料と、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcに特に特異的に結合する抗体とを接触させるステップと、抗体および免疫組織化学的アッセイを使用してチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを検出することによって、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、対照試料内の量に対する試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはp66−Shcの量の増加は、対象において消化管癌が再発することを示し、対照試料内の量に対する試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはp66−Shcの量の減少は、対象において消化管癌が再発しないことを示し、それによって、消化管癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0013】
別の側面では、本発明は、胃癌の治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、上述のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはp66−Shcの量の増加は、対象において胃癌が再発することを示し、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはp66−Shcの量の減少は、対象において胃癌が再発しないことを示し、それによって、胃癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0014】
別の側面では、本発明は、大腸癌の治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内に存在するp66−Shcの量を決定するステップと、上述の量と、対照試料内のp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、p66−Shcの量の増加は、対象において大腸癌が再発することを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0015】
さらに別の側面では、本発明は、大腸癌の治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内のShcの比率を決定するステップと、上述のShcの比率と、対照試料内の対照Shcの比率とを比較するステップとを含み、試料内のShcの比率が低い場合、対象の大腸が再発することを示し、試料内のShcの比率が高い場合、対象の大腸が再発しないことを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0016】
別の側面では、本発明は、大腸癌の治療を受ける対象(例、ヒト)における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内のPYp66−Shc生成物を決定するステップと、PYp66−Shc生成物と、対照試料内の対照PYp66−Shc生成物とを比較するステップとを含み、試料内のPYp66−Shc生成物が多い場合、大腸癌が再発することを示し、試料内のPYp66−Shc生成物が少ない場合、大腸癌が再発しないことを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0017】
本発明の一実施態様では、本方法は、対象から得られた試料の形態学的分析とともに行われる。
【0018】
一実施形態では、試料は、組織(例、胃組織、小腸組織、または大腸組織)または細胞からなる群から選択される。
【0019】
一実施形態では、癌は、胃癌(例、ステージIの胃癌またはステージIIの胃癌)である。
【0020】
一実施形態では、癌は、大腸癌(例、ステージIIの大腸癌またはステージIIIの大腸癌)である。
【0021】
一実施形態では、p66−Shcの量だけが決定される。一実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量だけが決定される。
【0022】
さらに別の実施形態では、p66−Shcおよびチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の両方の量が決定される。一実施形態では、Shcの数学的関係が決定される。一実施形態では、決定されるShcの数学的関係は、Shcの比率である。別の実施形態では、決定されるShcの数学的関係は、PYp66−Shc生成物である。
【0023】
一実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)およびp66−Shcの量を決定するステップは、p66−Shcまたはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体の使用を含む。このような実施形態では、決定ステップは、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリ、ELISA、および質量分析からなる群から選択された手法の使用を含む場合がある。別の実施形態では、p66−Shcの量は、核酸レベルで決定される。このような実施形態では、核酸の量は、定量PCRおよび発現アレイ分析からなる群から選択された手法を使用して決定される。
【0024】
別の側面では、本発明は、癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定するための方法を提供する。本方法は、細胞内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、上述のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定する。
【0025】
一実施形態では、癌細胞は、消化管癌細胞である。
【0026】
一実施形態では、癌細胞は、組織試料(例、胃組織試料、小腸組織試料、または大腸組織試料)内に存在する。
【0027】
さらに別の側面では、本発明は、対象の消化器癌(例、大腸または胃癌)を治療するための治療計画の有効性を評価する方法を提供する。本方法は、治療計画の少なくとも一部を対象に施す前に対象から得られた第1の試料内に存在する、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、治療計画の少なくとも一部を施した後に対象から得られた第2の試料内に存在する、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量とを比較するステップを含み、第2の試料に対して、第1の試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量が少ない場合、治療計画が消化管癌の治療に有効であることを示し、第2の試料に対して、第1の試料内に存在するp66−Shcの量が著しく多い場合、治療計画が対象の消化管癌の治療に有効であることを示す。
【0028】
別の側面では、本発明は、対象の消化管癌(例、大腸癌)を治療するための治療計画の有効性を評価する方法を提供する。本方法は、治療計画の少なくとも一部を対象に施す前に対象から得られた第1の試料内に存在する、Shcの比率と、治療計画の少なくとも一部を施した後に対象から得られた第2の試料内に存在する、Shcの比率とを比較するステップを含み、第1の試料に対して、第2の試料内に存在するShcの比率が高い場合、治療計画が大腸癌の治療に有効であることを示し、第1の試料に対して、第2の試料内のShcの比率が低い場合、治療計画は、対象の大腸癌の治療に有効ではないことを示す。
【0029】
別の側面では、本発明は、対象の消化管癌(例、大腸癌)を治療するための治療計画の有効性を評価する方法を提供する。本方法は、治療計画の少なくとも一部を対象に施す前に対象から得られた第1の試料内に存在する、PYp66−Shc生成物と、治療計画の少なくとも一部を対象に施した後に対象から得られた第2の試料内に存在する、PYp66−Shc生成物とを比較するステップを含み、第1の試料に対して、第2の試料内に存在するPYp66−Shc生成物が少ない場合、治療計画が大腸癌の治療に有効であることを示し、第1の試料に対して、第2の試料内のPYp66−Shc生成物が多い場合、治療計画が対象の大腸癌の治療に有効ではないことを示す。
【0030】
一実施形態では、治療計画は、手術、放射線、ホルモン治療、抗体治療、タンパク質チロシンキナーゼ抑制剤による治療、セリン/スレオニンキナーゼ抑制剤、成長因子、サイトカイン、および化学療法からなる群から選択された治療計画を含む。別の実施形態では、本方法は、対象から得られた試料の形態学的分析とともに行われる。
【0031】
別の側面では、本発明は、消化管癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を選択する方法を提供する。本方法は、消化管癌細胞と、試験化合物とを接触させるステップと、試験化合物の、消化管癌細胞内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整する能力を決定するステップとを含み、それによって、消化管癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を識別する。
【0032】
一実施形態では、試験化合物の、癌細胞内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の発現および/または活性を増加する能力、および/または細胞内のp66−Shcの発現および活性を減少させる能力は、化合物が、消化管癌細胞の侵襲性を軽減させることを示す。
【0033】
本発明は、本発明の方法とともに使用するキットをさらに提供する。キットは、p66−Shcに特異的に結合する検出可能な抗体、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体、消化管組織または消化管細胞を単離させるための試薬、および使用説明書のうちの1つ以上を含む場合がある。
【0034】
別の側面では、癌治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。本方法は、対象から得られた試料内の変異TP53の有無を決定するステップと、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、変異TP53の有無と、対照試料内に存在する変異TP53の有無とを比較するステップと、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。
【0035】
一実施形態では、試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の存在は、対象において癌が再発することを示す。別の実施形態では、試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の無存在は、対象において癌が再発しないことを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量で、および/またはShcの数学的関係で、癌(例、消化管癌)治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断することができること、また、癌治療を受ける対象の生存の予後を診断できることの発見に、少なくとも部分的に基づくものである。特に、出願人は、胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはShc(PY−Shc)の量の増加が、対象における癌の再発と相互に関連すること、および胃癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはShc(PY−Shc)の量の減少が、対象における癌の無再発と相互に関連にすることを初めて実証した。同様に、癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはShc(PY−Shc)の量の増加が、対象の死亡と相互に関連すること、および癌治療を受ける対象から得られた試料内の、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはShc(PY−Shc)の量の減少が、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。
【0037】
出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の増加が、対象における癌の再発と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の減少が、対象における癌の無再発と相互に関連することも初めて実証した。同様に、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の増加が、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、p66−Shcの量の減少が、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。加えて、出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が低いこと、すなわちShcの比率が低いことが、対象における癌の再発と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が高いこと、すなわちShcの比率が高いことが、対象における癌の無再発と相互に関連することを初めて実証した。同様に、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が低いこと、すなわちShcの比率が低いことが、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が高いこと、すなわちShcの比率が高いことが、対象の生存と相互に関連することを初めて実証した。さらに、出願人は、大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が高いこと、すなわちPYp66−Shc生成物が多いことが、対象の死亡と相互に関連すること、および大腸癌治療を受ける対象から得られた試料内の、Shcの数学的関係が低いこと、すなわちPYp66−Shc生成物が少ないことが、対象の死亡と生存に関連することも初めて実証した。
【0038】
また、対象から得られた試料内の、変異または蓄積したTP53の存在と相まって、高レベルのp66−Shcが、癌の再発および対象の死亡と相互に関連することも始めて実証した。同様に、対象から得られた試料内の、変異または蓄積したTP53の無存在と相まって、高レベルのp66−Shcが、対象の生存または癌の再発のしにくさと相互に関連することを始めて実証した。
【0039】
したがって、本願明細書では、対象における癌の再発およびまたは生存の予後を診断するための方法、試薬、およびキット、ならびに、消化管癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定するための方法、対象の消化管癌を治療するための治療計画の有効性を評価する方法、消化管癌の対象を治療するための方法、および消化管癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を選択する方法が提供される。
【0040】
本願明細書に示される、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量の変化、および/またはShcの数学的関係の変化は、胃および/または大腸癌試料内で識別されたものであるが、本発明の方法は、胃および/または大腸癌の予後、診断、特徴付け、治療、および予防に対する使用に限定されるものではなく、例えば、本発明の方法は本願明細書に記述されたあらゆる癌に適用することができる。
【0041】
本開示のこれらの、および他の種々の側面を以下のサブセクションにおいて詳細に説明する。
【0042】
I.定義
【0043】
本願明細書で使用する場合、以下のそれぞれの用語は、本セクション内でその用語に関連付けられた趣意を有する。
【0044】
本願明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、その項目の文法的な目的物のうちの1つ、または2つ以上(すなわち少なくとも1つ)のことである。一例として、「an element(要素)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0045】
「腫瘍」または「癌」という用語は、当技術分野で既知であり、無制限増殖、不滅、転移能、急成長、および増殖速度などの、発癌性の細胞に特有の特性、および特定の特徴的形態を有する細胞が(例えば、対象に)存在することである。癌細胞は、しばしば腫瘍の形態であるが、このような細胞は、対象に単独で存在するか、または白血病細胞のような非腫瘍形成性の癌細胞である場合がある。本願明細書で使用する場合、「癌」という用語は、前癌状態の、および悪性の癌を含む。癌には、これに限定されないが、胃癌、結腸直腸癌、皮膚癌(例、黒色腫または基底細胞癌)、肺癌、頭部および頸部の癌、気管支癌、膵癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液学的な組織の癌などが挙げられる。一実施形態では、癌は、消化管癌である。別の実施形態では、癌は、性ホルモン独立癌であり、例えば、この癌は、乳癌、前立腺癌、および/または卵巣癌ではない。
【0046】
本願明細書で使用する場合、「腫瘍細胞」または「癌細胞」とは、腫瘍内の、または腫瘍に由来する癌性細胞である。腫瘍または癌細胞は、血管細胞のような、他の腫瘍内に存在する非癌性の細胞とは異なる。
【0047】
本願明細書で使用する場合、「消化管癌」または「GI癌」とは、消化管器官または胃腸管、すなわち口腔、食道、胃、十二指腸、小腸、結腸または大腸、直腸、および肛門のうちのいずれかの癌である。本願明細書で使用する場合、消化管癌という用語は、膵臓、肝臓、および胆嚢の癌も含む。
【0048】
「胃癌(gastricまたはstomach cancer)」または「胃腫瘍形成(gastric neoplasia)」という用語は、本願明細書で使用する場合、胃の腺癌、リンパ腫、間質腫瘍、扁平上皮細胞腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド、および平滑筋肉腫を含む。本願明細書で使用する場合、胃癌とは、胃の内壁(粘膜)において生じる腫瘍、胃の下部(幽門)、胃の中央部(本体)、胃の上部(噴門)において発現する腫瘍、および、胃の2つ以上の部分で発現する腫瘍のことでもある。胃癌は、別の線源(例、大腸)からの「転移」か、または「原発性」(胃細胞起源の腫瘍)である場合がある。例えば、胃癌は、食道または小腸に転移する場合があり、また、胃壁を通って、隣接するリンパ節および器官(例、肝臓、膵臓、および大腸)に及ぶ可能性がある。胃癌は、身体(例、肺、卵巣、骨)の他の部分に転移する可能性がある。
【0049】
胃癌は、ステージ0乃至IVに分類することができる。「ステージ0」の胃癌は、「上皮内癌」とも称され、胃壁の粘膜層の内壁だけにしか見られない腫瘍である。「ステージIの胃癌」は、癌が転移した場所によって、「ステージIA」および「ステージIB」に分類される。ステージIAでは、癌が胃壁の粘膜層を通って完全に転移している。ステージIBでは、癌が、胃壁の粘膜層を通って完全に転移して、腫瘍に近い最高6つのリンパ節に見られるか、または癌が胃壁の筋層に完全に転移している。「ステージIIの胃癌」では、癌が、胃壁の粘膜層を通って完全に転移して、腫瘍に近い7つ乃至15のリンパ節に見られるか、または胃壁の筋層に完全に転移して、腫瘍に近い最高6つのリンパ節に見られるか、あるいはリンパ節または他の器官には転移していないが、胃壁の漿膜層に転移している。「ステージIIIの胃癌」は、癌が転移した場所によって「ステージIIIA」および「ステージIIIB」に分類される。ステージIIIAでは、癌が、胃壁の筋層に転移し、腫瘍に近い7つ乃至15のリンパ節に見られるか、または胃壁の漿膜層に転移し、腫瘍に近い1乃至6つのリンパ節に見られるか、あるいはリンパ節または身体の他の部分には転移していないが、胃に隣接する器官に転移している。ステージIIIBでは、癌が、胃壁の漿膜層に転移し、腫瘍に近い7つ乃至15のリンパ節に見られる。「ステージIVの胃癌」では、癌が、胃に隣接する器官に転移し、少なくとも1つのリンパ節に転移しているか、または15を超えるリンパ節に転移しているか、あるいは身体の他の部分に転移している。
【0050】
本願明細書で使用する場合、「大腸癌」または「結腸直腸癌」とは、大腸または結腸の内壁に生じる腫瘍のことである。全てではないが、これらの癌の大部分は、結腸ポリープから発現する。同様に、「大腸癌」という用語は、大腸の癌腫、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、黒色腫、および肉腫のことである。
【0051】
結腸直腸癌は、ステージ0乃至IVに分類することができる。「ステージ0」の結腸直腸癌は、大腸または直腸の最内の内壁にしか見られない。上皮内癌は、ステージ0の結腸直腸癌の別名である。「ステージI」の結腸直腸癌とは、大腸または直腸の内壁に成長した腫瘍のことである。腫瘍は、大腸の外壁に到達していないか、または大腸の外側に広がっていない。「Duke’s A」は、ステージIの結腸直腸癌の別名である。「ステージII」の結腸直腸癌では、腫瘍が、大腸または直腸の壁により深く広がるか、またはこれを通って広がる。腫瘍は、組織付近まで侵入している場合があるが、癌細胞は、リンパ節に転移していない。「Duke’s B」は、ステージIIの結腸直腸癌の別名である。「ステージIII」の結腸直腸癌とは、リンパ節の近くに転移しているが、身体の他の部分には転移していない腫瘍のことである。「Duke’s C」は、ステージIIIの結腸直腸癌の別名である。「ステージIV」の結腸直腸癌では、腫瘍が、肝臓または肺のような身体の他の部分に転移している。「Duke’s D」は、ステージIVの結腸直腸癌の別名である。
【0052】
本願明細書で使用する場合、「生存」とは、癌の治療を受けた対象の寿命が継続することである。一実施形態では、生存とは、腫瘍が再発できないことである。本願明細書で使用する場合、「再発する」または「再発」という用語は、腫瘍に対して一次治療が施された対象において、腫瘍または癌性細胞が再生することである。腫瘍は、最初に発生した部位または身体の別の部分において再発する場合がある。一実施形態では、再発する腫瘍は、対象が治療を受けた元の腫瘍と同一タイプのものである。例えば、対象が胃腫瘍であり、その治療を受けた後に別の胃腫瘍が発現した場合は、その腫瘍が再発している。加えて、癌は、最初に発生した場所とは異なる器官または組織において再発する場合がある。例えば、対象が胃腫瘍であり、その治療を受けた後に別の胃腫瘍が発現した場合も、やはりその腫瘍が再発している。
【0053】
本願明細書で使用する場合、「侵襲的」という用語は、腫瘍または癌細胞に関して、対象において、または当該の侵襲的な腫瘍から得られた細胞において再発する傾向のある腫瘍のことである。
【0054】
本願明細書で使用する場合、「量」という用語は、細胞または試料内に存在するp66−Shcまたはリン酸化Shc(PY−Shc)のいずれかに関して、(a)単位体積あたりの分子、モル、または重量で測定される絶対量か、または(b)例えば0乃至5の数値的評価によって示される相対量のことである。
【0055】
本願明細書で使用する場合、「Shcの数学的関係」は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcのあらゆる数学的変化および/またはあらゆる数学的相互作用(例えば、細胞または試料内に存在するPY−Shcおよび/またはp66−Shcの量)を含む。チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量の数学的変化とは、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの数値的量のあらゆる変化のことで、本発明の方法を容易にするものであり、また、これに限定されないが、その量の平方根、その量のlog n(ここで、nは任意の整数または分数)、任意の数(整数または分数)によるその量の乗算、および/またはその量へ/からの任意の数(整数または分数)の加算または減算を含む。チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量の数学的相互作用とは、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)およびp66−Shcの数値的量のあらゆる相互作用のことで、本発明の方法を容易にするものであり、また、これに限定されないが、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量とp66−Shcの量と生成物(本願明細書では「PY66−Shc生成物」と称する)、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量とp66−Shcの量との正比、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量とp66−Shcの量との加重平均、および/またはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量とp66−Shcの量とを含む多項式の比率を含む。
【0056】
対象から得られた細胞または試料における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係は、「変化する」(「増減する」、またはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの正常量よりも「多くまたは少なく」なる)、および/または、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係が、それぞれ対照量および/または量の評価に用いたアッセイの標準誤差よりも多いまたは少ない場合は、正常のShcの数学的関係である。対象から得られた細胞または試料における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係は、対照量、および/または対照Shcの数学的関係および試料量、および/またはShcの数学的関係が、それぞれチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量よりも、および/またはShcの数学的関係よりも、少なくとも2倍、好ましくは、少なくとも3倍、4倍、または5倍多いか、または少ない場合、対照量よりも、および/または対照Shcの数学的関係よりも「多い」または「少ない」とみなすことができる。
【0057】
本願明細書で使用する場合、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの「対照量」という用語は、癌にかかっていない対象から得られた細胞または試料、侵襲的な腫瘍から得られた細胞または試料、または非侵襲的な腫瘍から得られた細胞または試料における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量のことである。この「対照量」は、例えば、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを発現すること、例えば高レベル、中間レベル、低レベルのタンパク質を発現することが分かっている、細胞または組織内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの平均量を計算することによって決定することができる。
【0058】
同様に、本願明細書で使用する場合、「対照Shcの数学的関係」という用語は、癌にかかっていない対象から得られた細胞または試料、侵襲的な腫瘍から得られた細胞または試料、または非侵襲的な腫瘍から得られた細胞または試料における、PY−Shcおよび/またはp66−Shcの量の数学的関係のことである。「対照のShc数学的関係」は、例えば、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを発現すること、例えば高レベル、中間レベル、低レベルのタンパク質を発現することが分かっている、細胞または組織内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量の平均的な数学的関係を計算することによって決定することができる。
【0059】
チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの「高レベルの発現および/または活性」とは、試験試料における発現レベルおよび/または活性のことであり、発現および/または活性の評価に用いたアッセイの標準誤差よりも大きく、対照試料(例、癌にかかっていない健康な対象から得られた試料)におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現レベルおよび/または活性の少なくとも2倍であることが好ましく、3倍、4倍、5倍、または10倍以上であることがより好ましく、また、いくつかの対照試料におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの平均発現レベルおよび/または活性であることが好ましい。
【0060】
チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの「低レベルの発現および/または活性」とは、試験試料における発現レベルおよび/または活性のことであり、発現および/または活性の評価に用いたアッセイの標準誤差よりも小さいが、対照試料(例えば、Shcタンパク質の予後能力のための検証基準として役立つ追跡情報によって、消化管または乳癌のパネルに対して、情報直接的または間接的に較正された試料)におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現レベルおよび/または活性の少なくとも2倍であることが好ましく、3倍、4倍、5倍、または10倍以上であることがより好ましく、また、いくつかの対照試料におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの平均発現レベルおよび/または活性であることが好ましい。
【0061】
本願明細書で使用する場合、「抗体」は、一例として、自然発生的形態の抗体(例、IgG、IgA、IgM、IgE)、および一本鎖抗体、キメラおよびヒト化抗体、および多重特異的抗体のような組み換え抗体、ならびに上述した全ての抗体の断片および誘導体(断片および誘導体は、少なくとも1つの抗原性結合部位を有する)を含む。抗体誘導体は、抗体に共役させたタンパク質または化学的な部分を含むことができる。
【0062】
本願明細書で使用する場合、「既知の標準」または「対照」とは、p66−Shcリン酸化Shc、および変異TP53の有無に関して、適用可能な量および/または数学的関係のうちの1つ以上のことである。既知の標準は、再発性腫瘍および非再発性腫瘍、および/または侵襲的または非侵襲的な腫瘍の、当該の量および/または科学的関係の特性を反映することが好ましい。既知の標準を生成するための試薬には、これに限定されないが、侵襲性であることが分かっている腫瘍から得られた腫瘍細胞、非侵襲性であることが分かっている腫瘍から得られた腫瘍細胞、および状況に応じて標識化した抗体が挙げられる。既知の標準には、組織培養細胞系(これに限定されないが、特定のShcタンパク質を発現するように、特定のShcタンパク質を発現しないように、チロシンキナーゼを発現するように、または成長因子を発現するように操作された細胞系を含む)、あるいは一定量のPY−Schまたはp66−Shcを構成的に含むか、または(例えば、変化させた環境に晒すことによって)操作して(このような変化させた環境には、これに限定されないが、成長因子、ホルモン、ステロイド、サイトカイン、抗体、種々の薬品および代謝拮抗剤、および細胞外マトリクスが挙げられる)、PY−Shcおよび/またはp66−Shcを発現させることができる、腫瘍異種移植片が挙げられる。細胞系は、ペレットとしてパラフィン内に直接固定して包埋された、分析用のガラススライド上に直接載置されるか、またはアガロースのようなマトリクス中に懸濁した後にパラフィン上に固定して包埋されて、組織試料として分割および処理することができる。標準は、Shcタンパク質の予後能力のための検証基準として役立つ追跡情報によって、消化管または乳癌のパネルに対して、情報直接的または間接的に較正しなければならない。
【0063】
「p66−Shc」とは、「Sch」で示されるアダプタタンパク質の66kDaのイソ型のことである。
【0064】
「リン酸化Shc」とは、リン酸化されたそのアミノ酸残基側鎖のうちの少なくとも1つを有する、「ShcA」で示されるアダプタタンパク質のことである。一実施形態では、Shcのチロシン残基は、リン酸化される(「チロシンリン酸化Shc」)。このような残基には、例えば、チロシン残基317が挙げられる。別の実施形態では、Shcの残基がリン酸化され(「チロシンリン酸化Shc」)、このような残基には、例えばチロシン残基239、240が挙げられる。上述の残基番号は、ヒトShcの52kDaのイソ型のタンパク質内のこれらのアミノ酸の位置であることに留意されたい。ネズミShcに対する付番方式では、チロシンアミノ酸349、350、および427は、それぞれマウスの239、240、および317に対応する。
【0065】
ShcA遺伝子は、それらのN末端において異なる、p46−Shc、p52−Shc、およびp66−Shcで示される3つのイソ型のヒトShcを生じる。ヒトShcのヌクレオチドおよび、アミノ酸配列は、既知であり、例えば、GenBank association gi:34147725、およびgi:52693920に見出すことができ、それぞれの内容は参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0066】
本願明細書で使用する場合、「TP53」は、細胞増殖の規定内に含まれる腫瘍抑制タンパク質p53のことであり、これは当技術分野で既知である。ヒトTP53のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、既知であり、例えば、GenBank association gi:8400737およびgi:8400738に見出すことができる。
【0067】
本願明細書で使用する場合、「変異TP53」という用語は、遺伝子突然変異があるか、または例えば突然変異などの、タンパク質の生物活性を変化させる欠失のあるTP53タンパク質のことであり、例えば、TP53の発現を妨げるか、または機能的な不活性のTP53を生成する場合がある。「変異TP53」という用語は、無調節の(dysregulated)TP53タンパク質、例えば、他のタンパク質または遺伝子における突然変異または欠失(例、PI3’キナーゼまたはPTENにおける突然変異)によって、その生物活性または発現が下方制御されたTP53タンパク質も包含する。上述した全ての実施形態では、得られるタンパク質は、TP53として抗原的に認識可能でないTP53タンパク質である。
【0068】
「一次治療」とは、本願明細書で使用する場合、腫瘍のある対象の最初の治療のことである。一次治療には、これに限定されないが、手術、放射線、ホルモン治療、化学療法、免疫治療、血管新生治療、および生体モジュレータによる治療が挙げられる。
【0069】
本願明細書で使用する場合、「対象」とは、哺乳類のようなあらゆる動物であり、これに限定されないが、ヒト、マウス、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、および他の家畜およびペット類が挙げられる。
【0070】
癌は、癌の少なくとも1つの症状が予想された場合に、または軽減、終結、減速、または防止する場合に「治療される」。本願明細書で使用する場合、癌は、癌の再発または転移を減少、減速、遅延、または防止する場合にも「治療される」。
【0071】
キットは、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを検出するための、少なくとも1つの試薬(例、プローブ)を含むあらゆる製品(例、パッケージまたは容器)であり、この製品は、本発明の方法を行うためのユニットとして宣伝、配布、または販売されている。
【0072】
II.本発明の用法
本発明は、癌(例、胃癌または大腸癌のような消化管癌)の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法を提供する。これらの方法は、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、その量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含む。本発明は、癌(例、消化管癌)治療を受ける対象の生存の予後を診断するための方法であって、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、その量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含む方法も提供する。
【0073】
本発明は、癌(例、胃癌または大腸癌のような消化管癌)の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、対象から消化管の組織試料を得るステップと、消化管の組織試料と、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcに特異的に結合する抗体とを接触させるステップと、上述の抗体および免疫組織化学的アッセイを使用して、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、対照試料内の量に対する試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはp66−Shcの量の増加は、対象において癌が再発することを示し、対照試料内の量に対する試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはp66−Shcの量の減少は、対象において癌が再発しないことを示す、方法も提供する。
【0074】
本発明の方法は、当業者によって使用される他の方法とともに行って、癌治療を受ける対象の癌の再発および/または生存の予後を診断することができる。例えば、本発明の方法は、対象から得られた試料の形態学的または細胞学的分析とともに行うことができる。細胞学的方法は、分子マーカ自体によって、他のマーカとともに、および/またはShcマーカとともに、他の分子マーカの免疫組織化学的または免疫蛍光による検出(および適切な場合は、計量)を含む場合がある。他の方法には、インシトゥPCRによる、または組織を抽出してリアルタイムPCRによって他のマーカを数量化することによる、他のマーカの検出が挙げられる。PCR(polymerase chain reaction)は、ポリメラーゼ連鎖反応として定義される。
【0075】
本発明の一実施形態(一実施態様)では、p66−Shcの量だけが、決定される。別の実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量だけが決定される。さらに別の実施形態では、p66−Shcおよびチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の両方の量が決定される。別の実施形態では、Shcの数学的関係が決定される。一実施形態では、決定されるShcの数学的関係は、Shcの比率である。別の実施形態では、決定されるShcの数学的関係は、PYp66−Shc生成物である。本発明のキットおよび方法において、p66−Shcおよびチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の両方の量が決定されたとき、および/またはShcの数学的関係が決定されたとき、その量は、単一反応混合物(すなわち、異なる蛍光プローブのような試薬を使用して)、または別個の反応混合物のいずれかの、同一タイプの対照試料における正常量と比較することができる。
【0076】
全般的に、癌治療を受ける対象における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係と、対照試料における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係との間の差異は、できる限り大きいことが好ましい。この差異は、量および/または数学的関係を決定するための方法の検出限界と同程度に小さくなる場合もあるが、この差異は、少なくとも評価方法の標準誤差よりも大きいことが好ましく、少なくとも評価方法の標準誤差よりも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、100倍、500倍、1000倍を越える差異であることが好ましい。
【0077】
対照(例、非癌性の)組織におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係の変化は、種々の方法で評価することができる。一実施形態では、非癌性であると思われる細胞における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係を評価することによって、また、上述の正常量のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shc、および/または正常なShcの数学的関係と、癌性である疑いのある細胞における、量およびShcの数学的関係とを比較することによって、この量が評価される。例えば、腹腔鏡検査または他の医療処置によって、器官の一部分に腫瘍の存在が認められたときには、正常量のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcは、その器官の非罹患部分を使用して評価することができ、この正常量は、その器官の罹患部分(すなわち腫瘍)における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と比較することができる。代替的に、および特に本願明細書に記述された方法のルーチンパフォーマンスによって利用可能となる更なる情報として、「正常」量のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shc、および/または正常なShcの数学的関係に対する集団平均値を使用することができる。他の実施形態では、「正常」量のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shc、および/または「正常」なShcの数学的関係は、癌にかかっていない対象から得られた対象の試料、対象において癌が発病する前に対象から得られた対象の試料、アーカイブされた対象の試料などにおける、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を評価することによって決定することができる。好適な実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係は、上述のように決定される。
【0078】
また、治療計画(例えば、化学療法、放射線療法、手術、ホルモン治療、または対象における癌の治療に有用な他の治療手法)の有効性を評価するための方法も提供される。これらの方法では、一対の試料(治療計画が施されない第1の試料、および治療計画の少なくとも一部が施される第2の試料)における、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量が評価される。第2の試料に対して、第1の試料におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量が少ない場合、その治療計画が癌治療に有効であることを示す。第2の試料に対して、第1の試料におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量が多い場合も、その治療計画が対象における消化管癌に有効であることを示す。同様に、一対の試料(治療計画が施されない第1の試料、および治療計画の少なくとも一部が施される第2の試料)における、Shcの数学的関係(例、Shcの比率)が評価される。第1の試料に対して、第2の試料におけるShcの比率が高い場合、その治療計画が対象における癌治療(例、大腸癌)に有効であることを示す。第1の試料に対して、第2の試料におけるShcの比率が低い場合、その治療計画が対象における癌治療(例、大腸癌)に有効でないことを示す。また、一対の試料(治療計画が施されない第1の試料、および治療計画の少なくとも一部が施される第2の試料)における、Shcの数学的関係(例、PYp66−Shc生成物)も評価することができる。第1の試料に対して、第2の試料におけるPYp66−Shc生成物が少ない場合、その治療計画が対象における癌治療(例、大腸癌)に有効であることを示す。第1の試料に対して、第2の試料におけるPYp66−Shc生成物が多い場合、その治療計画が対象における癌治療(例、大腸癌)に有効でないことを示す。
【0079】
本発明は、消化管癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定するための方法も提供する。本方法は、細胞内のリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、その量と、対照試料(「定義」の項で定義される)内に存在するリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、消化管癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定する。
【0080】
本発明の方法は、消化管癌細胞の侵襲性を調整する、すなわち減少させることができる化合物の選択にも使用することができる。本方法では、消化管癌細胞と試験化合物とを接触させ、試験化合物の、癌細胞内のリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整する能力が決定され、それによって、消化管癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を選択する。
【0081】
本願明細書に記述された方法を使用することで、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の発現および/または活性を調整する、すなわち減少させる分子を識別するために、種々の分子(特に細胞膜を通過することができるほどに十分小さな分子を含む)をスクリーニングすることができる。そのように識別された化合物は、対象における癌細胞の侵襲性を抑制するために対象に提供して、対象における癌の再発を防止するか、または対象における癌を治療することができる。
【0082】
したがって、本発明は、以下の第V項に記述されているように、癌(例、消化管癌)の患者を治療するための方法も含む。
【0083】
チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量および/または活性への促進または抑制効果を有する薬剤またはモジュレータを対象に(予防的または治療的に)投与して、対象における癌(例、消化管癌)を治療することができる。このような治療とともに、腫瘍のファーマコプロテオミクス(pharmacoproteomics)およびファーマコホスホプロテオミクス(pharmacophosphoproteomics)(すなわち、腫瘍のプロテオーム/ホスホプロテオーム、およびその腫瘍の外来化合物または薬品に対する反応の研究)を考慮する場合がある。腫瘍環境(成長因子、細胞外接触、腫瘍癌遺伝子の活性化、または腫瘍抑制遺伝子の不活性化などを含む)は、分子機構(プロテオームおよびホスホプロテオーム)が、薬理的活性薬品の作用に適していない場合に、治療が失敗する可能性がある。したがって、腫瘍のファーマコプロテオーム(pharmacoproteome)およびファーマコホスホプロテオームpharmacoproteome)は、個々の腫瘍のプロテオームおよびホスホプロテオームの考慮を踏まえて、予防薬または治療上の処置に対して、効果的な薬剤(例えば薬品)を選択できるようにする。さらに、このようなファーマコプロテオミクスおよびファーマコホスホプロテオミクスを用いて、適切な適用量および治療計画を決定することができる。したがって、対象におけるチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量および/または活性を決定し、それによって、対象の治療または予防治療のための適切な薬剤を選択することができる。実施例は、これに限定されないが、成長因子受容体(モノクローナル抗体およびハーセプチン(Herceptine)、Erbitux;ゲフィチニブ(Gefitinib)のようなチロシンキナーゼ抑制剤)、ホルモン受容体(タモキシフェンおよび他のSERMS;アロマターゼ阻害薬)、SRC族のような細胞内チロシンキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼ、タンパク質チロシンホスファターゼ、およびタンパク質セリン/スレオニンホスファターゼを標的とした薬剤を含む。
【0084】
本発明は、癌治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する方法も提供する。本方法は、対象から得られた試料内の変異TP53の有無を決定するステップと、対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、変異TP53の有無と、対照試料内に存在する変異TP53の有無とを比較するステップと、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップとを含み、それによって、癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する。一実施形態では、試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の存在は、対象において癌が再発することを示す。別の実施形態では、試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の非存在は、対象において前記癌が再発しないことを示す。
【0085】
III.試料を採取して、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcレベル、および/または数学的関係を検出/数量化するための方法
本発明の方法に有用に試料には、あらゆる組織、細胞、生検、またはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを発現する体液の試料が挙げられる。一実施形態では、試料を、組織、細胞、全血、結成、血漿、口腔スクレイプ、唾液、髄液、尿、便、または気管支肺胞洗浄液とする場合がある。好適な実施形態では、組織試料は、胃組織試料、小腸組織試料、大腸組織試料である。
【0086】
身体試料は、例えば生検の使用、領域のかきとりまたは拭き取り、または体液を吸い出すための針の使用などの、当技術分野で既知の様々な手法によって対象から得ることができる。種々の本体試料を採集するための方法は、当技術分野で既知である。特定の実施形態では、身体の試料は、消化管組織試料を含む。
【0087】
PY−Shcおよび/またはp66−Shcタンパク質を検出および数量化するための好適な組織試料は、新鮮なもの、凍結させたもの、または当業者に既知の方法によって固定したものとすることができる。好適な組織試料は、更なる分析のために、分割して顕微鏡スライド上に配置することが好ましい。別様には、固体試料、すなわち組織試料は、可溶化および/または均質化した後に、可溶性抽出物のように分析することができる。
【0088】
一実施形態では、新鮮に採取された生検試料は、例えば液体窒素またはジクロロジフルオロメタンを使用して凍結される。凍結試料は、例えばOCTを使用して分割するために載置され、低温保持装置内で連続的に分割される。連続切片は、ガラス顕微鏡スライド上に採集される。免疫組織化学的な染色の場合、切片がスライドに定着するように、例えばクロムミョウバン、ゼラチン、またはポリ−L−リジンによってコーティングすることができる。別の実施形態では、試料は、分割する前に固定して包埋される。例えば、組織試料は、例えばホルマリン内に固定し、連続的に脱水して、例えばパラフィン内に包埋することができる。
【0089】
試料が得られると、PY−Shcおよび/またはp66−Shcおよび/またはTP53タンパク質の検出および数量化に好適な、当技術分野で既知のあらゆる方法を(核酸レベルか、または好ましくはタンパク質レベルのいずれかで)使用することができる。このような方法は、当技術分野で既知であり、これに限定されないが、ウエスタンブロット法、ノーザンブロット法、サザンブロット法、免疫組織化学、ELISA(例、増幅ELISA)、免疫沈降、免疫蛍光法、フローサイトメトリ、免疫細胞化学、質量スペクトロメトロメトリック分析(例、MALDI−TOF、およびSELDI−TOF)、核酸ハイブリダイゼーション技法、核酸逆転写法、および核酸増幅法が挙げられる。特定の実施形態では、PY−Shcおよび/またはp66−Shcタンパク質は、例えば、米国特許公報第2004/0033542号および第2005/0004008号(これらの内容は参照することにより本願明細書に組み込まれる)に記載されているような、これらのタンパク質を特異的に結合する抗体を使用して、タンパク質レベルで検出される。他の実施形態では、TP53の有無は、例えば、アミノ酸21乃至25間のエピトープまたはTP53を認識するDO−7抗体(Vojtesek,et al.(1992)J Immunol Meth 151:237)、またはTP53の配座依存エピトープを認識するPab240(Legros,et al.(1994)Oncogene 9:3689;Vojtesek,et al.(1995)Oncogene 10:389)のような、例えばこのプロテインに結合する抗体を使用して決定される。
【0090】
試料は、PY−Shcおよび/またはp66−Shcおよび/またはTP53を抗体結合に利用し易くするために、修飾を必要とする場合がある。免疫細胞化学的または免疫組織化学的方法の特定の側面では、スライドは、前処理バッファに移送され、状況に応じて、抗原の接触性を高めるように加熱される場合がある。前処理バッファにおける試料の加熱は、迅速に細胞の脂質二重層を崩壊させ、抗原(新鮮な標本となる場合があるが、一般的に固定標本では生じない)(すなわち、PY−Shcおよび/またはp66−Shcタンパク質、および/またはTP53)をより抗体結合させ易くする。「前処理バッファ」および「調製バッファ」という用語は、本願明細書において代替可能に使用され、特に、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質をより抗体結合させ易くすることによって、免疫染色のための細胞学的または組織学的試料の調整に使用されるバッファのことである。前処理バッファは、pH特異性食塩水、ポリマー、洗浄剤、または例えばエチルオキシル化されたアニオン性または非イオン物質界面活性剤のような非イオン性またはアニオン性界面活性剤、アルカノアートまたはアルコキシル酸塩、またはこれらの混合したもの、あるいは胆汁酸塩を使用したものを含む場合がある。前処理バッファは、0.1%乃至1%デオキシコール酸の溶液、ナトリウム塩、またはラウレスナトリウム−13−カルボン酸塩(例、Sandopan LS)、および/またはエトキシ化したアニオン錯体とする場合がある。いくつかの実施形態では、前処理バッファをスライドストレージバッファとして使用する場合もある。
【0091】
PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質をより抗体結合させ易くするためのあらゆる方法を、本発明の実施に使用することができ、当技術分野で既知の抗原回復法を含む。例えば、Bibbo,et al.(2002)Acta.Cytol.46:25−29;Saqi,et al.(2003)Diagn.Cytopathol.27:365−370;Bibbo,et al.(2003)Anal.Quant.Cytol.Histol.25:8−11(これらの内容は参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0092】
PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質の利用し易さを高める前処理の後に、試料は、例えば過酸化水素のようなペルオキシダーゼ遮断試薬などの、適切な遮断剤を使用して遮断される場合がある。いくつかの実施形態では、試料は、抗体の非特異的結合を防止するように、タンパク質遮断試薬を使用して遮断される場合がある。タンパク質遮断試薬は、例えば、精製されたカゼインを含む場合がある。抗体、特に、PY−Shcおよび/またはp66−Shcに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体、またはTP53に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体は、次いで、試料によって培養される。当業者は、より正確な予後または診断が、場合によっては、患者試料内のPY−Shcおよびp66−Shcの両方を検出ことによって得られる場合もあると理解されよう。したがって、特定の実施形態では、PY−Shcおよびp66−Shcのそれぞれに向けられた少なくとも2つの抗体が使用される。1つ以上の抗体が使用される場合、これらの抗体は、個々の抗体試薬として逐次的に、または抗体のカクテルとして同時に、単一の試料に添加することができる。別様には、個々の抗体を同一患者から得られた別個の試料に添加して、得られたデータをプールすることができる。
【0093】
抗体結合を検出するための手法は、当技術分野で既知である。PY−Shc、p66−Shc、および/またはTP53への抗体結合は、抗体結合のレベルに対応し、それに応じて、PY−Shc、p66−Shc、および/またはTP53タンパク質の発現レベルに対応する、検出可能なシグナルを発生する化学試薬を使用することによって検出することができる。本発明の免疫組織化学または免疫細胞化学法のうちの1つでは、抗体結合は、標識化ポリマーに共役される二次抗体を使用することによって検出される。標識化ポリマーには、これに限定されないが、ポリマー酵素複合体が挙げられる。これらの複合体内の酵素は、一般的に、抗原抗体結合部位での沈着物の触媒に使用され、それによって、対象のバイオマーカの発現レベルに対応する細胞の染色が得られる。特定の対象の酵素には、これに限定されないが、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、およびアルカリ性ホスファターゼ(AP)が挙げられる。
【0094】
本発明のある特定の免疫組織化学または免疫細胞化学法では、PY−Shcおよび/またはp66−Shcタンパク質への抗体結合は、二次抗体に共役されるHRP標識ポリマーを使用することによって検出される。抗体結合は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体に結合する種特異的なプローブ試薬、および種特異的なプローブ試薬に結合する、HRPに共役されたポリマーを使用することによって検出することもできる。スライドは、あらゆるクロマゲン(chromogen)(例、3,3−ジアミノベンジジン(DAB))を使用して、抗体結合のために染色され、ヘマトキシリンによって、また状況に応じて、水酸化アンモニウムまたはTBS/Tween−20のような青味剤によって対比染色される。他の好適なクロマゲンには、例えば、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)が挙げられる。本発明のいくつかの側面では、スライドは、細胞検査技師および/または病理学者によって顕微鏡で観察され、細胞染色、例えば蛍光染色(すなわち、PY−Shcまたはp66−Shcの発現)を評価する。別様には、試料は、自動顕微鏡によって、または、陽性染色細胞の識別を容易にするコンピュータソフトウェアを用いて要員が観察することができる。
【0095】
抗体結合の検出は、抗PY−Shc、p66−Shc、および/またはTP53抗体を検出可能な物質に結合させることによって容易することができる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発行物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンが挙げられる。好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例には、ルミノールが挙げられる。生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる。また、好適な放射性物質の例には、125I、131I、35S、14C、またはHが挙げられる。
【0096】
本発明の一実施形態では、凍結試料は、上述のように調整した後に、例えばトリスバッファ生理食塩水を使用して適切な濃度に希釈したPY−Shcおよび/またはp66−Shcに対して、抗体によって染色される。一次抗体は、ビオチン化抗免疫グロブリン内でスライドを培養することによって検出することができる。このシグナルは、状況に応じて、抗原のジアミノベンジジン沈殿を使用して増幅および視覚化することができる。さらに、スライドは、状況に応じて、例えばヘマトキシリンによって対比染色して、細胞を視覚化することができる。
【0097】
別の実施形態では、固定および包埋された試料は、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53に対して、抗体によって染色され、凍結切片に対して上述のように対比染色される。加えて、試料は、状況に応じて、抗体染色を視覚化するために、薬剤で処理してシグナルを増幅する場合がある。例えば、ビオチニル−チラミドのペルオキシダーゼ触媒による沈着を使用することができるが、これは、その後ペルオキシダーゼ共役ストレプトアビジン(Catalyzed Signal Amplification(CSA)System、DAKO、Carpinteria、CA))と反応する。
【0098】
組織ベースのアッセイ(すなわち免疫組織化学)は、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53の検出および数量化の好適な方法である。一実施形態では、変異TP53の有無は、免疫組織化学によって決定される場合がある。一実施形態では、TP53の免疫組織化学的な分析は、変異TP53の欠如した細胞が染色されないように、低濃度の抗TP53抗体(例、DO−7)を使用する。別の実施形態では、変異TP53の有無は、変異TP53の欠如した細胞が濃密に染色されるように、高濃度の抗TP53抗体(例、DO−7)を使用する、免疫組織化学的な方法を使用して決定される。染色しない細胞は、変異TP53を含み、抗原的に認識可能なTP53タンパク質の生成に失敗したか、またはTP53のレベルを調整する経路が、(例えば、PI3’キナーゼにおける突然変異の活性化、または脂質ホスファターゼPTENにおける突然変異の活性化によって)調節されていない細胞のいずれかであり、無視してよいTP53タンパク質の定常状態発現がもたらされる。
【0099】
当業者は、本発明の方法の実施に使用される特定の抗体の濃度は、結合に対する時間、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53のための抗体の特異度のレベル、および試料調製の方法などの因子によって変化することが認識されよう。さらに、複数の抗体が使用されるときには、必要な濃度は、抗体が、例えばカクテルとして同時に、または個々の抗体試薬として逐次的に提供される順序に影響を受ける場合がある。さらに、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53への抗体結合に使用される検出の化学的性質も、所望のシグナル対ノイズ比を生成するように最適化されなければならない。
【0100】
本発明の一実施形態では、プロテオーム法(例、質量分析)は、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質の検出および数量化に使用される。例えば、マトリクスに関連したレーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOF MS)、またはタンパク質結合チップへの血清のような生物学的試料のアプリケーションを伴う、表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析装置(SELDI−TOF MS)(Wright,G.L.,Jr.,et a;.(2002)Expert Rev Mol Diagn 2:549;Li,J.,et al.(2002)Clin Chem 48:1296;Laronga,C.,et al.(2003)Dis Markers 19:229;Petricoin,E.F.,et al.(2002)359:572;Adam,B.L.,et al.(2002)Cancer Res 62:3609;Tolson,J.,et al.(2004)Lab Invest 84:845;Xiao,Z.et al.(2001)Cancer Res 61:6029)を使用して、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質を検出および数量化することができる。質量分析法は、例えば、米国特許第5,622,824号、第5,605,798号、および第5,547,835号に記載されており、それぞれの内容は参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【0101】
他の実施形態では、p66−Shcの発現は、核酸レベルで検出される。さらに他の実施態様では、TP53の有無は、核酸レベルで決定される。発現を評価するための核酸ベースの手法は、当技術分野で既知であり、例えば、身体試料内のp66−Shc mRNAおよび/またはTP53 mRNAのレベルを決定するステップを含む。多くの発現検出法では、単離RNAを使用する。mRNAの単離に対して選択しないあらゆるRNA単離手法は、p66−Shcおよび/またはTP53を発現する細胞からのRNAの生成に用いられる(例、Ausubel et al.,ed.,(1987−1999)Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons,New York)を参照のこと)。加えて、多数の組織試料を、例えばChomczynski(1989、米国特許第4,843,155号)の単一ステップのRNA単離プロセスのような、当業者に既知の手法を使用して容易に処理することができる。
【0102】
「プローブ」という用語は、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53(例えば、p66−Shcおよび/またはTP53ヌクレオチド転写物、またはPY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53タンパク質)に選択的に結合できる、あらゆる分子のことである。プローブは、当業者によって合成するか、または適切な生物学的調製から導出することができる。プローブは、特に標識化されるようにデザインされている場合がある。プローブとして用いることができる分子の例には、これに限定されないが、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機分子が挙げられる。
【0103】
単離mRNAは、ハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイ(これに限定されないが、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、およびプローブアレイを含む)に使用することができる。mRNAレベルの検出のための方法は、単離mRNAと、p66−Shc mRNAにハイブリッド化することができる核酸分子(プローブ)とを接触させるステップを含む。核酸プローブは、例えば、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250、または500ヌクレオチドであり、厳しい条件下でp66−Shc mRNAまたはp66−ShcゲノムDNAに特異的にハイブリッド化するに十分なオリゴヌクレオチドのような、完全長cDNAまたはその一部とすることができる。
【0104】
一実施形態では、mRNAは、固体表面上に固定され、例えば、アガロースゲル上でmRNAを動かし、mRNAをそのゲルからニトロセルロースのような膜へ移送することによって、プローブと接触させる。別の実施形態では、プローブは、固体表面上に固定され、mRNAは、例えばAffymetrix遺伝子チップアレイ内で、プローブと接触させる。当業者は、既知の検出方法を、PY−Shcおよび/またはp66−Shc、および/またはTP53 mRNAのレベルの検出に容易に適合させることができる。
【0105】
試料内のp66−Shc、および/またはTP53 mRNAのレベルを検出するための代替方法は、例えばRT−PCR(Mullis,1987,米国特許第4,683,202号に記述された実験的な実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193)、自律配列複製(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、Q−βレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al.米国特許第5,854,033号)、または他の核酸増幅法による核酸増幅のプロセスと、その後の、当業者に既知の手法を使用した増幅分子の検出とを含む。これらの検出スキームは、このような分子がごく少数しか存在しない場合、特に核酸分子の検出に有用である。本発明の特定の側面では、p66−Shcおよび/またはTP53の発現は、定量的な蛍光RT−PCR(すなわち、TaqManTMシステム)によって評価される。このような方法は、一般的に、p66−Shcに特異的であるオリゴヌクレオチドプライマの対を用いる。既知の配列に対して特異的なオリゴヌクレオチドプライマをデザインするための方法は、当技術分野で既知である。
【0106】
p66−Shcおよび/またはTP53 mRNAの発現レベルは、(ノーザン、サザン、ドットのようなハイブリダイゼーション分析に用いられているような)膜ブロット、またはマイクロウェル、試料管、ゲル、ビード、またはファイバ(あるいは、結合核酸を含むあらゆる固体担体)を使用して観察することができる。米国特許第5,770,722号、第5,874,219号、第5,744,305号、第5,677,195号、および第5,445,934号(参照することにより本願明細書に組み込まれる)を参照のこと。p66−Shcおよび/またはTP53の発現の検出は、溶液内の核酸プローブを使用するステップも含む場合がある。
【0107】
本発明の一実施形態では、マイクロアレイを使用して、p66−Shcおよび/またはTP53の発現を検出する。マイクロアレイは、異なる実験間の再現性から、この目的に特に適している。DNAマイクロアレイは、1つの方法を、多数の遺伝子の発現レベルの同時測定に提供する。それぞれのアレイは、固体担体に取り付けられた再現可能なパターンの捕捉プローブから構成される。標識化RNAまたはDNAは、アレイ上の相補的プローブにハイブリッド化され、その後レーザー走査によって検出される。アレイ上のそれぞれのプローブに対するハイブリダイゼーション強度が決定され、相対的な遺伝子発現レベルを表す定量的な値に変換される。米国特許第6,040,138号、第5,800,992号、第6,020,135号、第6,033,860号、および第6,344,316号を参照のこと(これらは参照することにより本願明細書に組み込まれる)。高密度オリゴヌクレオチドアレイは、試料内の多数のRNAの遺伝子発現プロファイルの決定に特に有用である。
【0108】
チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはPY−Shcおよび/またはp66−Shcの量の数学的関係は、本発明の方法を使用して、癌治療を受ける対象における癌の再発のリスク、癌治療を受ける患者の生存、癌細胞が侵襲的であるかどうか、癌治療のための治療計画の有効性などの計算に使用することができ、当業者に既知の回帰分析法を含む場合がある。例えば、好適な回帰モデルには、これに限定されないが、CART(例、Hill,T,and Lewicki,P.(2006)「STATISTICS Methods and Applications” StatSoft,Tulsa,OK)、Cox(例、www.evidence−based−medicine.co.uk)、指数、正規および対数正規(例、www.obgyn.cam.ac.uk/mrg/statsbook/stsurvan.html)、ロジスティック(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、パラメトリック、ノンパラメトリック、セミパラメトリック(例、www.socserv.mcmaster.ca/jfox/Books/Companion)、線形(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、または加法(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Generalized_additive_model)が挙げられる。
【0109】
一実施形態では、回帰分析は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を含む。別の実施形態では、回帰分析は、Shcの数学的関係を含む。さらに別の実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係の回帰分析は、更なる臨床的および/または分子的な共変量を含む場合がある。このような臨床的共変量には、これに限定されないが、結節状態、腫瘍ステージ、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、治療体制(例、化学療法および/または放射線治療)、臨床転帰(例、再発、疾患特異的生存、治療不全)、および/または診断後の経過時間、治療開始後の経過時間、および/または治療完了後の経過時間に対する関数としての臨床転帰が挙げられる。分子的な共変量には、これに限定されないが、更なる分子マーカ値、例えば、TP53、PSA、BRCA1、BRCA2、HER2などが挙げられる。
【0110】
別の実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはPY−Shcおよび/またはp66−Shcの量の数学的関係、および変異TP53の有無は、本発明の方法を使用して、癌治療を受ける対象における癌の再発のリスク、癌治療を受ける患者の生存、癌細胞が侵襲的であるかどうか、癌治療のための治療計画の有効性などの計算に使用することができ、当業者に既知の回帰分析法を含む場合がある。例えば、好適な回帰モデルには、これに限定されないが、CART(例、Hill,T,and Lewicki,P.(2006)「STATISTICS Methods and Applications」StatSoft,Tulsa,OK)、Cox(例、www.evidence−based−medicine.co.uk)、指数、正規および対数正規(例、www.obgyn.cam.ac.uk/mrg/statsbook/stsurvan.html)、ロジスティック(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、パラメトリック、ノンパラメトリック、セミパラメトリック(例、www.socserv.mcmaster.ca/jfox/Books/Companion)、線形(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Logistic_regression)、または加法(例、www.en.wikipedia.org/wiki/Generalized_additive_model)が挙げられる。
【0111】
一実施形態では、回帰分析は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を含む。別の実施形態では、回帰分析は、Shcの数学的関係を含む。さらに別の実施形態では、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量、および/またはShcの数学的関係、および/または変異TP53の有無の回帰分析は、更なる臨床的および/または分子的な共変量を含む場合がある。このような臨床的共変量には、これに限定されないが、結節状態、腫瘍ステージ、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、治療体制(例、化学療法および/または放射線治療)、臨床転帰(例、再発、疾患特異的生存、治療不全)、および/または診断後の経過時間、治療開始後の経過時間、および/または治療完了後の経過時間に対する関数としての臨床転帰が挙げられる。分子的な共変量には、これに限定されないが、更なる分子マーカ値、例えば、Ki67、Bcl−2、Bcl−xL、ホスホAKT、Rasの突然変異状態、PI3’キナーゼ、PTEN、およびATMなどが挙げられる。
【0112】
IV.キット
本発明は、癌(例、消化管癌)治療を受ける対象の癌の再発または生存の予後を診断するための、組成物およびキットも提供する。これらのキットは、p66−Shcに特異的に結合する検出可能な抗体、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体、染色のために消化管組織試料を採取および/または調製するための試薬、および使用説明書のうちの1つ以上を含む。
【0113】
本発明のキットは、状況に応じて、本発明の方法の実行に有用な更なる構成要素を含む場合がある。一例として、本キットは、相補的核酸のアニーリングに、または抗体と抗体が特異的に結合するタンパク質との結合に好適な液体(例、SSCバッファ)と、1つ以上の試料区画と、本発明の方法の性能および消化管組織の特異的制御/標準を記述した教材とを含む場合がある。
【0114】
V.治療方法
本発明は、癌(例、消化管癌)である、またはその危険性のある対象(例、ヒト)の予防法および治療方法の両方をさらに提供する。本願明細書で使用する場合、対象の「治療」には、癌、癌の症状、または癌のリスク(または癌への感染性)を、治す、阻害する、癒す、緩和する、軽減する、変質させる、治療する、良くする、改善するための、または癌に作用させるための、対象への治療剤の適用または投与、または癌である、癌の症状がある、またはその危険性(感染性)のある対象から得られた細胞または組織への治療剤の適用または投与を含む。本願明細書で使用する場合、「治療剤」または「化合物」は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整することができる、あらゆる化合物または薬剤を含む。このような化合物には、これに限定されないが、小分子、ペプチド、ペプチド模倣薬、ホルモン、サイトカイン、ポリペプチド、RNA干渉剤(例、siRNA分子)、抗体、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0115】
本願明細書に記述されるように、対象における胃癌の再発、および/または胃癌による対象の死亡は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少、および/またはp66−Shcの量の増加と相互に関連する。上述のように、癌の発生によって、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量には幾らかの変化があるが、これらの変化が、癌性の状態を誘導する、保持する、および促進する場合もある。したがって、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少によって特徴付けられる癌(例、胃癌)は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の発現および活性を増加させることによって治療することができる。
【0116】
本願明細書に記述されるように、対象における大腸癌の再発、および/または大腸癌による対象の死亡は、p66−Shcの量の増加、および/またはShcの比の減少、および/またはPYp66−Shc生成物の増加と相互に関連する。上述のように、癌の発生によって幾らかの変化があるが、これらの変化が、癌性の状態を誘導する、保持する、および促進する場合もある。したがって、p66−Shcの量の増加、および/またはShcの比の減少、および/またはPYp66−Shc生成物の増加は、p66−Shcの発現および/または活性を増加させることによって、および/またはShcの比率および/またはPY66−Shc生成物を減少させることによって治療することができる。
【0117】
よって、本発明の別の側面は、癌(例、消化管癌)を罹患している対象を治療するための方法に関する。これらの方法は、PY−Shcの発現および/または活性を増加させるに効果的な量の、PY−Shcの発現および/または活性を増加させることができる化合物を対象に投与するステップを含む。チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の発現および/または活性を増加させるために使用し、それによって癌を治療または防止することができる化合物には、抗体(例、共役抗体)、小分子、RNA干渉剤(例、siRNA分子)、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。このような化合物は、例えば、下述するスクリーニングアッセイを使用して識別することができる。
【0118】
本発明の別の側面は、癌(例、消化管癌)を罹患している対象を治療するための方法に関する。これらの方法は、p66−Shcの発現および/または活性を減少させるに効果的な量の、p66−Shcの発現および/または活性を減少させることができる化合物を対象に投与するステップを含む。p66−Shcの発現および/または活性を減少させるために使用し、それによって癌を治療または防止することができる化合物には、抗体(例、共役抗体)、ホルモン、サイトカイン、成長因子、小分子、RNA干渉剤(例、siRNA分子)、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。このような化合物は、例えば、下述するスクリーニングアッセイを使用して識別することができる。
【0119】
加えて、TP53は、p66−Shcを安定させ、それによって、p66−Shcの細胞内のレベルを増加させることが知られている(Trinei,M.et al.(2002)Oncogene 21:3872−3878)。したがって、TP53の発現および/または活性を減少させることができる効果的な量の化合物を対象に投与することによって、癌(例、胃または大腸癌)の再発を防止すること、および/または癌(例、胃または大腸癌)である対象の生存を促進することができる。
【0120】
VI.スクリーニングアッセイ
本発明は、モジュレータ、すなわち候補物質、試験化合物、または薬剤(例、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、小分子、または他の薬品)を識別するための方法(本願明細書では「スクリーニングアッセイ」とも称される)も提供し、このモジュレータは、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整することによって、癌細胞(例、消化管癌細胞)の侵襲性を調整する。このようなアッセイは、一般的に、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcと、1つ以上のアッセイ構成要素との間の反応を含む。他の構成要素は、試験化合物自体か、または試験化合物と、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの自然結合パートナーとを組み合わせたもののうちのいずれかである場合がある。本願明細書に記載されているようなアッセイによって識別される化合物は、例えば、癌細胞(例、胃癌細胞のような消化管癌細胞)の侵襲性の調整(例、抑制、改善、処理、または防止)に有用となり得る。
【0121】
本発明のスクリーニングアッセイに使用される試験化合物は、自然および/または合成化合物の系統的ライブラリを含む、あらゆる利用可能なソースから得ることができる。試験化合物は、当技術分野で既知の組み合わせライブラリ法における多数の手法のうちのいずれかによって得ることもでき、次のようなものが挙げられる。生物学的ライブラリ、ペプトイドライブラリ(ペプチドの機能を有する分子のライブラリであるが、酵素分解に対して耐性があっても、なお生物活性を残す、斬新な非ペプチドバックボーンを有する。例、Zuckermann,et al.,1994,J.Med.Chem.37:2678−85を参照のこと)、空間的にアドレス可能な並列固相または溶液相ライブラリ、逆畳み込みが必要な合成ライブラリ法、「ワンビーズワンコンパウンド」ライブラリ法、および親和性クロマトグラフィセレクションを使用した合成ライブラリ法。生物学的ライブラリおよびペプトイドライブラリ法は、ペプチドライブラリに限定されるが、他の4つの手法は、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマ、または小分子ライブラリに適用可能である。(Lam,1997,Anticancer Drug Des.12:145)
【0122】
分子ライブラリを合成するための方法の例は、次のような従来技術に見出すことができる。DeWitt et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909、Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422、Zuckermann et al.(1994)J. Med.Chem.37:2678、Cho et al.(1993)Science 261:1303、Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059、Carrell et al.(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061、およびGallop et al.(1994)J. med.Chem.37:1233。
【0123】
化合物のライブラリは、溶液内(例、Hoghten,1992,Biotechniques 13:412−421)に、またはビーズ上(Lam,1991,Nature 354:82−84)に、チップ上(Fodor,1993,Nature 364:555−556)に、細菌および/または芽胞上(Ladner,米国特許第5,223,409号)に、プラスミド上(Cull et al.1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865−1869)、またはファージ上(Scott and Smith,1990,Science 249:386−390;Devlin,1990,Science 249:404−406;Cwirla et al.,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382;Felici,1991,J.Mol.Biol.222:301−310;Ladner,前掲)に存在する場合がある。
【0124】
本発明のスクリーニング法は、癌細胞(例、消化管癌細胞)と、試験化合物とを接触させるステップと、試験化合物が、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調製する能力を決定するステップとを含む。チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性は、本願明細書に記述されるように決定することができる。
【0125】
別の実施形態では、本発明は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの基質またはその生物活性部分である、スクリーニング候補物質または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの基質またはその生物活性部分に結合する、スクリーニング候補物質または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。試験化合物がマーカに直接結合する能力を決定するステップは、例えば、化合物のマーカへの結合が、複合体内の標識化マーカを検出することによって検出できるように、化合物と、放射性同位元素または酵素標識とを結合させることによって達成することができる。例えば、化合物(例、マーカ基質)は、131I、125I、35S、14C、またはHで直接的または間接的に、および電波放射の直接計数またはシンチレーション計数によって検出された放射性同位元素で標識化することができる。別様には、アッセイ構成要素は、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、またはルシフェラーゼで、および適切な基質から生成物への変換の決定によって検出された酵素標識で酵素的に標識化することができる。
【0126】
本発明は、さらに、上述のスクリーニングアッセイによって識別される斬新な薬剤に関する。したがって、本発明の範囲内で、適切な動物モデルにおいて本願明細書に記述されるように識別される薬剤をさらに使用するためのものである。例えば、本願明細書に記述されるように識別された、チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整することができる薬剤を、動物モデルに使用して、当該の薬剤の有効性、毒性、または副作用の決定、またはその薬剤による治療を行うことができる。別様には、本願明細書に記述されるように識別された薬剤を、動物モデルに使用して、当該の薬剤の作用の機構を決定することができる。さらに、本発明は、上述した治療のための上述のスクリーニングアッセイによって識別された、斬新な薬剤の用法に関する。
【0127】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、限定するものとして解釈されるべきでない。本出願の全体にわたって引用される全ての参考文献、図、特許、および公開された特許出願書の内容は、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0128】
実施例1
早期ステージ(ステージIおよびステージII)の胃癌を有する患者の原発性腫瘍におけるPY−Shcは、無再発および疾患特異的生存の両方に有意な防護効果がある
【0129】
ステージIおよびステージIIの腫瘍を有する患者から得られた胃腫瘍試料内のPY−Shcの統計分析は、早期ステージの疾患(ステージIおよびII)を呈した後にその疾患が再発したか、または死亡した患者の原発性腫瘍において、発現が減少する(およびp66−Shcの発現が増加する)傾向を強く示した。
【0130】
PY−Shc対疾患特異的死亡(図1)のドットプロットによれば、約1.1のカットポイントで、良好な予後の高PY−Shcを有した患者と、不良な予後で低PY−Shcを有した患者とが明確に分かれた。一変量ロジスティック回帰分析では、高PY−Shcに強力な防護効果があった。高PY−Shcスコアの患者の死亡する可能性は、低PY−Shcスコアの患者の1/6倍であった(P=0.03)。高PY−Shcまたは低PY−Shcの患者に対するカプラン−マイヤー生存プロットは、結果において、これらの差異を明確に視覚化している。p66−Shcは、同様の予後能力を示した(表1および2を参照のこと)。
【0131】
連続変数として、PY−Shcには、統計的有意性に向かう傾向がある疾患特異的生存(DSS)に対して強い保護能力があった(0乃至5のスケールを使用して、PY−Shcのスコアにおける1単位増加に対して0.39のRR、または0.009フルスケール:100倍のRR)(P=0.11)。p66−Shcは、非常に危険(スコアにおける1単位増加に対して1.6のRR、または10フルスケール)(P=0.06)であった。同様の能力が無再発生存(RFS)に対して見られた。(表1および2を参照のこと)。

【0132】
【表1】

【0133】
ステージIおよびIIの組み合わせ;RRは、ロジスティック回帰から計算される相対的なリスク;Hi/Lo二分法のためのPY−Shcのカットポイントは1.1であった。
【0134】
【表2】

【0135】
nは患者数であり、7/58は、58人の患者のうち7人が再発したことを示す。RFS%、DSS%は、それぞれ疾病が再発せずに生存、または病死せずに生存している患者の割合である。Pは、Hi/Lo二項変数のログランク一変量分析に与えられる。PY−Shc Hi、Loは、それぞれ原発性腫瘍が、PY−Shcに対して高い(≧1.1)か、または低い(<1.1)スコアであった患者である。p66−Shc Hi、Loは、それぞれ原発性腫瘍が、p66−Shcに対して高い(≧2.2)か、または低い(<2.2)スコアであった患者である。
【0136】
実施例2
ステージIの胃癌患者における癌の再発および疾患生存の予後指標としてのPY−ShcおよびP66−Shc
ステージIの胃癌患者における癌の再発および疾患生存の予後指標としてのPY−ShcおよびP66−Shc胃癌における予後マーカに対する最も大きな臨床的必要性は、ステージIの疾患の患者に関係する。これらの患者に対しては、外科的および医学的腫瘍学者は、現在では、D1レベルの解剖および外科的切除しか処置されていないステージIの患者が、疾患を再発する適当な可能性(約20%)に対して、D2レベルの侵襲性の解剖によって、および現在の治療標準(MacDonald,J.(2001)N.Engl J Med 345:725−730)としての一部によって採用された有害な化学放射線療法によってもたらされ得る、最小の起こり得る利益のバランスをとらなければならない。再発性疾患が現れそうなステージIの患者を識別する予後マーカは、この臨床的治療法の決定を補助および向上させる。
【0137】
上記実施例では、ステージIの胃癌患者の原発性腫瘍内のPY−Shcは、無再発および疾患特異的生存の両方に有意な防護効果があった。PY−Shcは、ステージIの疾患を呈した後にその疾患が再発したか、または死亡した患者の原発性腫瘍において、発現が減少する傾向を強く示した。
【0138】
PY−Shc対疾患特異的死亡(図3)のドットプロットによれば、以前に設定された1.1のカットポイントで、良好な予後の高PY−Shcを有した患者と、不良な予後の低PY−Shcを有した患者とが明確に分かれた。一変量ロジスティック回帰分析では、高PY−Shcに強力な防護効果があった。いかなる高PY−Shcスコアの患者も、これらの疾患で死亡しなかった(図3のカプラン−マイヤー線図を参照のこと)。p66−Shcは、同様の予後能力を示した。
【0139】
連続変数として、PY−Shcには、疾患特異的生存に対して極めて強い保護能力があった(0乃至5のスケールで、PY−Shcのスコアにおける1単位増加に対して0.15のRR、または0.00008フルスケール:13,000倍のRR)(P=0.05)。RFSに関しては、二分されたPY−Shcには、統計学的に有意な非常に強い保護能力があった(0.08のRR:12倍のRR)(P=0.04)(表3および4を参照のこと)。
【0140】
【表3】

【0141】
RRは、ロジスティック回帰から計算される相対リスク;Hi/Lo二分法に対するPY−Shcのカットポイントは1.1であった。**低PY−Shcカテゴリは、DSDを完全に予測した。
【0142】
【表4】

【0143】
早期ステージの胃癌患者の原発性腫瘍におけるPY−Shcは、全生存に有意な防護効果があると思われる。PY−Shc(p66−Schではない)は、早期ステージ(ステージIおよびII)を呈した後に死亡した患者の原発性腫瘍において、著しく減少した。
【0144】
連続変数として、PY−Shcには、統計的有意性に極めて接近した強い保護能力があった(0乃至5のスケールで、PY−Shcのスコアにおける1単位増加に対して0.62のHR、または0.092フルスケール:11倍のHR)(P=0.055)。
【0145】
PY−Shc対死亡のドットプロットによれば、約1.5のカットポイントで、良好な予後で高PY−Shcを有した患者(85%、17/20人生存)と、不良な予後で低PY−Shcを有した患者(44%、14/32人生存)とが明確に分かれた(P=0.003)。一変量Cox比例ハザード分析では、高PY−Shcに強力な防護効果があった。高PY−Shcスコアの患者の死亡する可能性は、低PY−Shcスコアの患者の1/5倍であった(P=0.0018)。腫瘍グレード、化学療法、および放射線療法に対して調整した後の多変量Cox分析では、PY−Shc(HR=0.22、P=0.015)および腸腫瘍タイプ(HR=0.38、P=0.046)だけが、生存の有意な予知因子として保持された。上述のデータの統計学的な分析を下記に示す。
要約統計(ソフトウェアパッケージ、Stataバージョン8を用いた全出力):
【0146】
変数のディクショナリ:
.describe pyaverb p66ave ttypen stagen grade cther rther dsd survdays

【0147】
【数1】

【0148】

変数および臨床情報の要約:
. sum pyaverb pyrb pyrl p66ave survdays dsd ether rther grade stagen ttypen
【0149】
【数2】

【0150】
実施例3
Shcマーカと臨床病理学的特性との相関
全ての利用可能なマーカおよび臨床情報の相関分析を以下に示す。PY−Shcは、全生存(dsd)と逆相関を示すことに注目されたい。他の有意な相関には陰影を付してある。相関の有意性は、複数の比較に対して調整されなかった(減じられなかった)ことに留意されたい。テーブルは、それぞれの相関係数でのそれぞれのP値と±の相関係数を示す。
【0151】
.pwcorr pyaverb p66ave ttypen stagen grade cther rther survdays dsd, sig
【0152】
【数3】

【0153】
実施例4
Shcマーカの関数としての全死亡の分析
PY−Shc(p66−Schではない)は、早期ステージ(ステージIおよびII)を呈した後に死亡した患者において、著しく減少した。図4は、何らかの原因による死亡の関数として、ステージIおよびIIの胃癌におけるPY−Shcスコアの分布を示す図である。
【0154】
.ttest pyaverb if stagen<4&dsd!=.&survdays!=.,by(dsd)
【0155】
【数4】

【0156】
.Dr.Lis: ttest pyrl if stagen<4&dsd!=.&survdays!=.,by(dsd)
【0157】
【数5】

【0158】
.Dr.Bagdasaryan:ttest pyrb if stagen<4&dsd!=.&survdays!=.,by(dsd)
【0159】
【数6】

【0160】
Dr.LisとDr.Bagdasaryanのスコアとの間に目立った相関があることに留意されたい。
【0161】
.pwcorr pyave pyrb pyrl dsd survdays,sig
【0162】
【数7】

【0163】
ttest p66ave if stagen<4&dsd!=.&survdays!=.,by(dsd)
【0164】
【数8】

【0165】
実施例5
連続変数として、PY−Shcには強い保護能力がある
連続変数として、PY−Shcには、統計的有意性に極めて接近した強い保護能力がある(0乃至5のスケールで、PY−Shcのスコアにおける1単位増加に対して0.62のHR、または0.092フルスケール:11倍のHR)(P=0.055)。
【0166】
.stcox pyaverb if stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog

failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0167】
【数9】

【0168】
実施例6
カットポイント変数としてのPY−Shc
上述のように、死亡の関数としてのPY−Shcのドットプロットによれば、適切かつ有用なカットポイントは、約0.15のPY−Shc値と推定することができる。このカットポイントでは、高PY−Shcの患者の85%が生存したが、低PY−Shcの患者は15%しか生存しなかった(P=0.003)。
【0169】
tab dsd pycp if stagen<4&pyaverb!=.&survdays!=.&dsd!=.,chi2 col

【0170】
【数10】

【0171】
高PY−Shcまたは低PY−Shcの腫瘍を有する患者間の生存の差異は、それらのカプラン−マイヤー生存のグラフから容易に理解することができる(一変量ログランク分析によるP=0.003)(図6)。
【0172】

詳細:一変量ログランク分析
.sts test pycp if stagen<4&survdays!=.&dsd!=.

failure_d: dsd
analysis time_t: survdays


【0173】
【数11】

【0174】
一変量Cox比例ハザード分析では、PY−Shcに強力な防護効果があった。高PY−Shcスコアの患者の死亡する可能性は、高PY−Shcスコアの患者の1/5倍であった(P=0.0018)。
【0175】
一変量分析の詳細:
.stcox pycp if stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog

failure d:dsd
analysis time_t:survdays

【0176】
【数12】

【0177】
多変量Cox分析では、PY−Shc(HR=0.22、P=0.015)および腸腫瘍タイプ(HR=0.38、P=0.046)だけが、モデルにおいて優位性を保持した。
【0178】
ベースモデルは、PY−Shc以外の全ての潜在的な共変量を含めた後に、最下位から始めて、P値>0.15の共変量を除くことによって見出される。
. stcox cther rther grade ttypens stagen if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0179】
【数13】

【0180】
最下位の共変量をドロップする:放射線治療:
.stcox ether grade ttypens stagen if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0181】
【数14】

【0182】
次に下位の共変量をドロップする:グレード
stcox cther ttypens stagen if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0183】
【数15】

【0184】
上述のものは、最終的なベースモデルである:P<0.15で有意な全ての共変量
このモデルにPY−Shcを加える:
stcox pycp cther ttypens stagen if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0185】
【数16】

【0186】
最下位の共変量をドロップする:化学療法
.stcox pycp ttypens stagen if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0187】
【数17】

【0188】
次に下位の共変量をドロップする:腫瘍ステージ
およびDiffuse(ttypens2)、Intestinal(ttypens3)、および他の全て、ほぼ未知(ttypens1)に分類した腫瘍タイプ:
.stcox pycp ttypensl ttypens2 ttypens3 if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure _d: dsd
analysis time _t: survdays
注:共線により、ttypenslはドロップした
【0189】
【数18】

【0190】
最も有意でないDiffuse(2)および共線形(1)をドロップする:
.stcox pycp ttypens3 if pyaverb!=.&stagen<4&survdays!=.&dsd!=.,nolog
failure_d:dsd
analysis time_t:survdays

【0191】
【数19】

【0192】
実施例1乃至6の要約:
早期ステージの胃癌患者の原発性腫瘍におけるPY−Shcは、全生存に有意な防護効果があると思われる。PY−Shc(p66−Schではない)は、早期ステージ(ステージIおよびII)を呈した後に死亡した患者において、著しく減少した。
【0193】
連続変数として、PY−Shcには、統計的有意性に極めて接近した強い保護能力があった(0乃至5のスケールで、PY−Shcのスコアにおける1単位増加に対して0.62のHR、または0.092フルスケール:11倍のHR)(P=0.055)。
【0194】
PY−Shc対死亡のドットプロットによれば、約1.5のカットポイントで、良好な予後で高PY−Shcを有した患者(85%、17/20人生存)と、不良な予後で低PY−Shcを有した患者(44%、14/32人生存)とが明確に分かれた(P=0.003)。一変量Cox比例ハザード分析では、高PY−Shcに強力な防護効果があった。高PY−Shcスコアの患者の死亡する可能性は、低PY−Shcスコアの患者の1/5倍であった(P=0.0018)。腫瘍グレード、化学療法、および放射線療法に対して調整した後の多変量Cox分析では、PY−Shc(HR=0.22、P=0.015)および腸腫瘍タイプ(HR=0.38、P=0.046)だけが、生存の有意な予知因子として保持された。
【0195】
実施例7
大腸腫瘍マイクロアレイを使用した、ステージIIおよびステージIIIの大腸癌の患者における疾患特異的生存および無再発生存の分析
本研究の目的は、患者の人口学的特性および疾患特性に加えて、Shcタンパク質の能力を評価すること、再発までの期間および大腸癌による疾患特異的死亡までの期間を予測することであった。
【0196】
Shc Testのブラインド検証(blinded varidation)を、ステージIIおよびステージIIIの大腸癌の患者から得られた、アーカイバルRIH Colon Array標本上で行った。データは、患者の性別、年齢、グレード、リンパの侵襲状態、および疾患のステージに関して収集した。疾患のステージおよびリンパに侵襲状態は、患者間に同様に分布していたので、リンパの侵襲は、全ての分析に含めなかった。死亡した日付、死亡までのフォローアップ時間、生存状態、再発状態、および疾患の再発までの期間を、全ての患者に対して収集した。データは、それぞれのパラメータに対して0乃至5の範囲での、PY−Shcおよびp66−Shcの染色の平均スコアとして与えられた。加えて、Shcの比率は、両方の試験結果が利用可能な場合に、p66−Shcに対するPY−Shcの正比として計算した。PYp66−Shc生成物(0乃至5の範囲)は、両方の結果が利用可能であった場合に、PY−Shcおよびp66−Shcの直接生成物として計算した。
【0197】
130人の患者に関するデータは、RIH Colon Arrayから全ての分析に対して用いた。130人の患者のうち、19人の患者(14.6%)が疾患で死亡し、18人の患者(13.9%)が疾患を再発した。高グレードの疾患を有する16人の患者を除いて、残りの患者は低グレードの疾患であった。大部分の患者(115/130;88.5%)は、ステージIIの疾患であった。下記は、DSSおよびRFSの分析による結果の一部である。
【0198】
無再発生存率(RFS)および疾患特異的生存(DSS)が本分析の中心であった。無再発生存率は、大腸癌の初期診断から、最初の疾患の再発までの期間(月)として定義した。疾患特異的生存は、疾患特異的死亡までの患者のフォローアップ期間(月)として定義した。
【0199】
患者の人口学的特性および疾患特性の中のShcパラメータに有意な差異があった場合には、それぞれのShcパラメータの要約統計を、RFSおよびDSSに対して計算して評価した。RFSおよびDSS期間の分析は、全ての予後およびShc因子によって階層化した一変量K−M(カプラン−マイヤー)分析を使用して行った。イベント分析の多変量期間は、Cox PH回帰を使用して行い、ベースライン予後因子およびShcパラメータの予測能力を調査した。
【0200】
複数の一変量K−Mおよび多変量Cox PH回帰モデルおよび線図は、疾患特異的死亡の期間および無再発生存の期間を分析するために、Shcパラメータのそれぞれのカットオフポイントを導くように行った。複数のバリエーションの後、それらの最大尤度の値およびログランクのp値に基づいて、以下のカットポイントを選択した。
【0201】
【数20】

【0202】
これらの分析の結果は、疾患特異的生存および無再発生存の両方におけるShc TestTMの予測能力を実証する。高ハザード比率は、疾患特異的生存および無再発生存における高p66−Shcおよび低Shcの比率に関連した。
【0203】
疾患特異的生存
疾患特異的生存に関して、平均p66−Shcは、その疾患で生存した患者のもの(1.84±0.93)よりも、その疾患で死亡した患者のもの(2.37±1.02)の方が著しく高かった(P=0.03)Shcの平均比率は、その疾患で生存した患者のもの(2.88±3.13)よりも、その疾患で死亡した患者のもの(1.98±1.12)の方が著しく低かった(P=0.03)。疾患のステージは、ステージIIIの癌に関連する高い死亡発生率の一変量K−M分析において、有意な層化予後因子であることが分かった。p66−Shc、Shcの比率、およびPYp66−Shc生成物は、全て、一変量K−M分析において、有意な層化因子であることが分かった。p66−Shc値が大きい患者は、高い死亡率と関係していた。同様に、PYp66−Shc生成物値が大きい患者は、高い死亡率と関係していた。一方で、Shcの比率値が小さい患者は、高い死亡率と関係していた。
【0204】
多変量モデルは、年齢、性別、グレード、ステージ、およびShcパラメータを含めて実行した。年齢は優位な因子ではなく、また、推定のハザード比(HR)がこれらのモデルの全てにおいて1に近かったので、最終的なモデルではこのパラメータを考慮しなかった。疾患のグレードが、これらのモデルの大部分において有意ではなかったが、推定のHRは1とはかなり異なっていたので、最終的なモデルにおいて考慮した。疾患のステージおよび性別は、モデルの大部分において有意であった。疾患のステージのハザード比は、4乃至7の間であることが分かった。この値は、ステージIIからステージIIIへの疾患の悪化により、ハザードが4乃至7倍増加したことを示す(表5を参照のこと)。p66−Shcは、一変量および多変量モデルの両方において有意であることが分かった。一変量および多変量モデルにおける1.82および2.36の推定ハザード比は、ハザードが、上述のp66−Shcの結果において2単位以上増加したことを示す。p66−shcのカテゴリを包含することで、連続的なp66−Shc値ベースのモデルと一致する高ハザード比(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ2.48および3.22)も提供した。PYp66−ShcおよびShcの比率、一変量および多変量モデルにおける有意な因子でもあった。PYp66−Shcにおけるハザード比(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ1.77および2.30)の方向は、p66−Shcのものと同一であったが、一方で、Shcの比率(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ0.62および0.55)の方向は逆、すなわち、ハザードは、Shcの比率の単位増加とともに減少する。PY−Shcは、連続的またはカテゴリフォーマットのいずれかにおいては有意でなかった。疾患のステージは、多変量モデルの多くにおいて有意な因子であった。性別も、これらのモデルの多くにおいて有意であった。
【0205】
【表5】

【0206】
無再発生存
無再発生存に関して、平均p66−Shcは、その疾患で生存した患者のもの(1.86±0.92)よりも、その疾患で死亡した患者のもの(2.41±1.04)の方が著しく高かった(P=0.02)。Shcの平均比率は、その疾患で生存した患者のもの(2.87±3.13)よりも、その疾患で死亡した患者のもの(2.01±1.16)の方が著しく低かった(P=0.04)。疾患のステージは、ステージIIIの癌に関連する高い死亡発生率の一変量K−M分析において、有意な層化予後因子であることが分かった。p66−Shc、Shcの比率、およびPYp66−Shc生成物は、全て、一変量K−M分析において、有意な層化因子であることが分かった。p66−Shc値が大きい患者(Highに分類される)は、高い死亡率と関係していた。同様に、PYp66−Shc生成物値が大きい患者は、高い死亡率と関係していた。一方で、Shcの比率値が小さい患者は、高い死亡率と関係していた。
【0207】
多変量モデルは、年齢、性別、グレード、ステージ、およびShcパラメータを含んで実行した。モデルのいずれかにおいて、年齢は有意な因子ではなく(また、HRが1に近かった)ので、最終的なモデルでは考慮しなかった。疾患のグレードは、これらのモデルの大部分において有意ではなかったが、推定のHRは1とはかなり異なったので、最終的なモデルにおいて考慮した。疾患のステージおよび性別は、これらのモデルの大部分において有意であった。疾患のステージのハザード比は、4乃至6.50の間であることが分かった。この値は、ステージIIからステージIIIへの疾患の悪化により、ハザードが4乃至6.50倍増加することを示す(表6を参照のこと)。p66−Shcは、一変量および多変量モデルの両方において有意であることが分かった。一変量および多変量モデルにおける1.82および2.36の推定ハザード比は、ハザードが、上述のp66−Shcの結果において2単位以上増加したことを示す。p66−shcのカテゴリを包含することで、連続的なp66−Shc値ベースのモデルと一致する高ハザード比(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ2.48および3.22)も提供した。PYp66−ShcおよびShcの比率、一変量および多変量モデルにおける有意な因子でもあった。PYp66−Shcにおけるハザード比(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ1.77および2.30)の方向は、p66−Shcのものと同じであったが、一方で、Shcの比率(一変量および多変量モデルにおいて、それぞれ0.62および0.55)の方向は逆、すなわち、ハザードは、Shcの比率の単位増加とともに減少する。PY−Shcは、これらのモデルの連続的またはカテゴリフォーマットのいずれかにおいては有意でなかった。疾患のステージは、多変量モデルの多くにおいて有意な因子であった。性別も、これらのモデルの多くにおいて有意であった。
【0208】
【表6】

【0209】
表7および8は、それぞれ、疾患特異的生存および無再発生存による患者特性の分布、および疾患特異的生存によるShcパラメータを要約したものである。
【0210】
【表7】




【0211】
【表8】

【0212】
【表9】

【0213】
上記の要約統計から、正規性の仮定を満たすかどうかに基づいて、p値を、t検定およびWilcoxonの順位和検定を使用して計算した。異なる試験に対するp値を、表9および10に示す。
【0214】
【表10】

【0215】
【表11】

【0216】
実施例8
種々の腫瘍タイプにおけるShcの量
種々の腫瘍タイプにおけるPY−Shcおよびp66−Shcの量は、本願明細書に記述されるように決定した。結果を下記の表11に示す。
【0217】
【表12】

【0218】
【表13】

【0219】
実施例9
侵襲的な癌細胞内のp66−ShcおよびTP53の分析
理論に束縛されるものではないが、侵襲的な癌細胞(例、乳癌細胞)を識別する高レベルのPY−Shcおよび低レベルのp66−Shcの能力を説明する、提案された腫瘍成長の機構モデルは、発現時に高酸化的ストレスであり、侵襲的な腫瘍細胞が、ストレス誘発性アポトーシスを回避する強い選択的な圧力を発生させる。ストレス誘発性アポトーシスには、機能性p66−Shcが必要であるが、TP53にも依存する(Trinei他、前掲)。したがって、酸化的ストレスのアポトーシスの圧力は、例えばErkおよびc−FOSにシグナリングする受容体チロシンキナーゼ(RTK)の、p66−Shcが媒介するフィードバックの下方制御を回避することによって、またはアポトーシスを生じさせる他の因子(例、成長因子のシグナリングによって生じる因子、ミトコンドリア活性、宿主の炎症性細胞による浸潤)の発現を変化させたものによって、および腫瘍の脈管形成の成功に応えての低酸素組織の欠陥の再灌流によって、下方制御されたp66−Shcおよび加法制御されたTP53のいずれかを有する、侵襲的な腫瘍細胞が功を奏するように選択する。
【0220】
例えば、変異TP53を、従来の低濃度の抗TP53を用いたIHC(ImmunoHistoChemical:免疫組織化学的)アッセイによって評価した場合(そのうちの約60%は、実際には正常なTP53であり、アポトーシスでの無益な試みにおいて蓄積されていると考えられる(例、Askmalm,M.S.,et al.(2004)Acta.Oncolog 43:235を参照のこと))、低レベルのp66−Shcに関連する蓄積されたTP53の大部分は、正常なTP53となるものであり、予後におけるハザードとはならない。一方で、高濃度の抗TP53を使用してTP53を評価する場合(McCabe et al.(2005)J.Natl.Cancer Inst.97:1808)、通常乃至低レベルのTP53を含む細胞を暗く染色する。しかし、いかなるこれらの同じ細胞も、従来の低濃度の抗TP53抗体で染色しない。次いで、染色されないままの細胞は、おそらくは(抗原的に認識可能な)TP53が合成されないようにする突然変異によって、「ゼロ」TP53を発現する。上述したように(McCabe他、前掲)、この方法では、24%の原発性乳癌は、「突然変異体」TP53ゼロ腫瘍として識別された(さらに12%の蓄積TP53を有した)。したがって、これらのTP53ゼロ腫瘍の大部分、およびTP53ゼロの予後能力の全ては、通常および/または高レベルのp66−Shcを発現する腫瘍内に存在する。
【0221】
したがって、例えばナイーブ乳癌のような癌、すなわち全身のアジュバント療法を受けない乳癌の場合、p66−Shcを下方制御するための選択的な圧力は、腫瘍細胞が、別の機構を見つけて酸化的ストレス誘発性アポトーシスをバイパスする場合に軽減される。このような機構には、例えば、抗アポトーシス因子(Bcl−2またはBcl−xLなど)の上方制御、またはPI3’キナーゼ、PTEN、またはTP53のようなプロアポトーシス因子の下方制御、すなわち、PI3’キナーゼ内の活性か突然変異、およびPTEN内の不活性突然変異(それぞれ、MDM2がTP53を下方制御できるようにするAKT活性を増加させる)が挙げられる。
【0222】
例えば、PI3’キナーゼは、AKTのリン酸化を引き起こし、また、正常に機能したときにMDM2のリン酸化を減じるAKTの活性化(リン酸化)を減じるPTENによって平衡され、それによって、MDM2が、細胞質から、MDM2がタンパク質分解のためにTP53を標的とする核まで移動しないようにする。したがって、活性PTENは、TP53の蓄積、故にアポトーシスの蓄積を助力する。次いで、PI3’キナーゼの活性化突然変異、またはPTENの不活性化突然変異によって、AKTをP−AKTに過活性化させて、TP53のレベルがほぼゼロになる。(PI3’キナーゼ内の活性化突然変異は、大腸癌の約30%に生じる(Samuels,et al.(2004)Science 304:554)。)PI3’キナーゼおよびPTEN突然変異体は、高濃度の抗TP53抗体アッセイを使用して、TP53ゼロ腫瘍として現れる場合がある。TP53の突然変異体自体ではない間は、機能的および予後的に、それらは区別できない。この区別は、PI3’キナーゼ−AKT−MDM2の経路の分子標的の候補である患者の識別に重要である。
【0223】
TP53は、乳癌の内の12乃至40%において変異していることが報告されている(Oliver,et al.(2006)Clin.Cancer Res.12:1157−1167)。遺伝子配列分析を使用した研究では、TP53の突然変異の発生が16%乃至40であることを報告している。DO−7モノクローナル抗体を使用した代表的なIHC分析では、TP53ゼロの突然変異体は見出されない(すなわち、いかなる抗原的に検出可能なTP53タンパク質も生成されない)。TP53ゼロの突然変異体は、ナンセンス突然変異か、または挿入/欠失またはスプライシングエラーを伴う突然変異になりがちである。IHCを陽性で行い、かつ実際の遺伝子配列が行われた266人の患者のある研究では(Askmalm,M.S.,et al(2004)Acta Oncolog 43:235)、IHCは、TP53の突然変異の48%(22/44)を検出した。IHC陽性の54の61%(32/44)が、非変異TP53を有した。いくつかの部位での突然変異は、予後のハザードの程度に差異を生させるので、これは、TP53の機能の低下の程度の変化を反映する。p66−Shc媒介アポトーシスは、酸化的ストレスに応じて、活性TP53に強く依存することが示された(Trinnei,et al.(2002)Oncogene 21(24):3872−78)。したがって、ナイーブ乳癌における正常および/または高レベルのp66−Shcは、TP53の発現を遮断したか、または機能不活性のTP53を生成した突然変異によって、TP53の発現を減じた。機能不活性のTP53は、細胞内に蓄積する傾向によって検出することができる(従来のIHCによって、または高濃度の抗TP53を使用して染色した細胞内に全く存在させないこと(McCabe他、前掲)によって過剰発現される)。特に活性受容体チロシンキナーゼに結合するときに、PI3’キナーゼまたはPTEN内の突然変異によって下方制御されたTP53は、高抗TP53IHC手法を使用して、陰性のTP53として現れる。
【0224】
それでも、正常なTP53は、酸化的ストレス誘発性のDNA損傷に応じた、または(TP53の安定化による)酸化的ストレス自体に応じた、いくつかの腫瘍細胞内に蓄積する場合がある。これは、IHC分析による「偽陽性」のTP53の突然変異をやや頻繁に生じさせる。このような「偽陽性」のTP53は、予後のハザードではなく、またp66−Shcのレベルに依存しないか、または残りの正常な細胞機構が、無駄に恒常的死亡の達成を試みるときに、低レベルのp66−Shcの発現と実際に選択的に相関する。
【0225】
上述の分析に基づくと、TP53の予後能力のほとんど全てが、通常乃至高レベルのp66−Shc発現に関連付けられるものと考えられる。これを試験するために、TP53のレベル(蓄積された高レベルのTP53を検出するようにデザインされた、抗TP53の量を使用して決定される)は、BCCA V6の乳癌腫瘍のマイクロアレイデータセット(TMA)におけるp66−ShcおよびDSS(疾患特異的生存)に関して分析した(Frackelton et al.,Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.46:LB201)。
【0226】
BCCA 01−011 V6の胸部TMAからのp66−Shcのスコアは、フラクショナルランクに変換した。変数はp66biとして定義し、ここで、p66−Shcのフラクショナルランクが0.5未満であればp66bi=1であり、p66−Shcのフラクショナルランクが0.5以上であればp66bi=2である。TP53の染色は、DO−7を使用した従来の方法によって行われ、陰性、弱い、または強い染色を有するものとして、GPECにおいてスコアした。これらは、陰性ならば0に、それ以外ならば1に再コード化される。染色された腫瘍(307)のうち、8%が弱いTP53の染色を示し、8%が強いTP53の染色を示した。
【0227】
TP53を蓄積して疾患特異的生存を予測する能力は、まず、p66−Shcのレベルの関数として、TP53のログランク分析によって評価し、次いで、ソフトウェアSTATA 8を使用した、一変量および多変量Cox比例ハザード分析によって評価した。
【0228】
全母集団に対して、TP53の蓄積の有無によって階層化した疾患特異的生存曲線は、全ての腫瘍に対するものを図20Aに、低p66−Shcの腫瘍に対するものを図20Bに、高p66−Shcの腫瘍に対するものを図20Cに示す。高レベルのp66−Shcを有する患者の場合、「変異」TP53を蓄積した患者は、TP53の蓄積の無い患者よりもはるかに悪い結果であった(P=0.00003、表12を参照のこと)。これに対して、低レベルのp66−Shcを有する患者の場合は、TP53が蓄積された患者は、TP53の蓄積の無い患者よりもわずかに悪い結果であり、この悪い結果では、有意性は得られなかった(P=0.6)(図20B)。しかし、低p66−Shcの患者における診断後の早い段階(6年未満)では、優位傾向があった(P=0.26)。他のTP53の研究と一致して、事実上、TP53の特定のハザードの全ては、9年よりも前に観察される(図20Aおよび20C)。
【0229】
Cox比例ハザードの一変量分析によって、TP53の蓄積に関する全てのハザードが、高レベルのp66−Shcを有する患者に見られ、これらの患者は、その疾患によって死亡するリスクの高さは2倍未満であった(全母集団よりも100倍大きな有意性がある)(表12)。リスクにおけるこの差異は、多変量Coxモデルにおいても保持された(HR=9、P=0.001、高p66−Shcを有する患者におけるTP53に対して、PY−Shc、結節状態、Her−2、および共変量としてのKi67に対して調整)。
TP53を蓄積した46人の患者のうち、32人(70%)は、低p66−Shcに関連していた。これは、IHC測定によるTP53の蓄積に対して発行されている60%の偽陽性率(非変異TP53)よりもわずかしか大きくなかった。
【0230】
【表14】

【0231】
侵襲的な腫瘍を識別するためのp66−Shcの能力を説明するモデルと一致して、TP53の蓄積に関連するほぼ全てのハザードが、腫瘍が高レベルのp66−Shcを有する患者内に見出された。さらに、モデル予測、およびIHCアッセイによる変異TP53の推定に対して偽陽性である比率に関して発行されたデータの両方と一致して、TP53の蓄積の対部分には、いかなる予後的価値も無く、また低レベルのp66−Shcに関連していた。したがって、p66−ShcおよびTP53の独立予測値によって、患者のリスクをより正確に予測することができ、それによって、臨床医の治療法の決定を補助する。
【0232】
上述の分析の詳細は後述する。
.sts test p53bi
failure_d:event
analysis tim _t:total_fo
【0233】
【数21】

【0234】
.sts test p53bi if p66bi!=.
failure_d:event
analysis time_t:total_fo
【0235】
【数22】

【0236】
.sts test p53bi if p66bi==l
failure_d:event
analysis time_t:total_fo
【0237】
【数23】

【0238】
failure_d:event
analysis time_t:total_fo
【0239】
【数24】

【0240】
TP53の予後/予測能力の全ては、高p66−Shcの腫瘍内に存在する(上位50%のp66−Shcスコア)
.display chi2tail(1,17.64)
.00002669
Cox分析
.stcox p53bi if p66bi!=.,nolog
failure _d: event
analysis time _t:total_fo
【0241】
【数25】

【0242】
.stcox p53bi if p66bi==l,nolog
failure_d:event
analysis time_t:total_fo
【0243】
【数26】

【0244】
. stcox p53bi if p66bi = = 2, nolog
failure_d: event
analysis time_t:total_fo
【0245】
【数27】

【0246】
実施例10
p66−ShcおよびTP53は、どちらも早期ステージの大腸癌における疾患再発および疾患特異的生存に対する強力かつ独立した予後マーカである
【0247】
TP53は、早期ステージの大腸癌のうちの40乃至60%において変異する(Iacopetta B Hum Mutat(2003)21:271−276;Lane DP.(1992)Nature 358:15−16;Russo et al.(2005)J.Clin.Oncol,23:7518−7528)。しかし、機能的に、PI3キナーゼ(110kDaサブユニット)における突然変異(結腸直腸癌のうちの30%、Samuels,et al.(2004)Science)、またはPTEN(結腸直腸癌のうちの18%、Nassif,et al.(2004)Oncogene 23(2):617−28)は、同様にTP53の発現が低く、したがって、約80%以上の無調節の(機能しない)TP53の頻度をもたらす。こうした予後のハザードのすべては、主に高p66−Shcの腫瘍に見出される。実際に、図7において上述したRIH大腸データセットにおける、蓄積されたTP53の発現の分析および高レベルのp66−Shcとの関連は、これと一致する。
【0248】
下記の表13に示されるように、最低60%のp66−Shcスコアも有する腫瘍の中で、ほぼ2倍のp53陽性腫瘍が存在するにもかかわらず、14のうち10の関連する蓄積したp53は、最高レベルのp66−Shcを発現した腫瘍の40%内に存在した。
表13.大腸癌による大部分の疾患特異的死亡は、腫瘍も高レベルのp66−Shcを発現したTP53を蓄積した患者において生じる
定義:p53、TP53が蓄積した=1;蓄積せず=0。p66quint、トラクショナルランクによる五分位数(1乃至5)におけるp66−Shcのスコアがyes=1;no=0。dsd、疾患特異的死亡がyes=1;no=0。
Stataによる計算:
.tab p53 p66quint
【0249】
【表15】

【0250】
表3.p66−ShcおよびTP53は、早期ステージの大腸癌における悪い結果の強力かつ独立した予後マーカである。
定義:p66s、連続的な0乃至1のスケールに変換したp66−Shcのスコア。p53、表2にあるようなTP53のスコア。sexn、女性は1;男性は2。stage、ステージIIの疾患はStage=2;ステージIIIの疾患は3。recurrencestatus、疾患が再発した場合は1、しなかった場合は0。recurrencetimemth、再発または最終接触までの月数。
.stcox p66s p53 sexn stage if stage! =9, nolog
failure_d:recurrencestatus
analysis time_t:recurrencetimemths

【0251】
【表16】

【0252】
これらの分析によれば、p66−ShcもTP53も、早期ステージの大腸癌における疾患再発に対する、非常に強力で独立した予後マーカである。同様な分析においても、p66−ShcもTP53も、疾患特異的死亡に対する、非常に強力で独立した予後マーカであることを実証している。
【0253】
したがって、(高)p66−Shcは、無調節のTP53によって腫瘍を識別しているので、大腸癌においてハザードである。よって、これらの患者は、細胞障害性化学療法に十分反応しないが、タキソールには良好に反応する(TP53は、タキソール媒介の細胞死に関与しない)。したがって、p66−Shcのレベルは、これらの患者のうちの80%において高くなる。故に、高p66−Shcは、変異(下方制御)TP53とほぼ等しく、したがって、高p66−Shcは、予後のハザード、一般的な無調節のTP53に対する代用マーカとして現れる。
【0254】
同等物
当業者は、単にルーチン実験を用いて、本願明細書に記載された本発明の特定の実施態様には多くの同等物があることを認識または確認することが可能であろう。このような同等物は、以下の請求項によって包含されるよう意図されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】Shcマーカを使用した、ステージIおよびステージIIの胃癌患者における、PY−Shc対RFS%(再発せず生存している患者の割合)、およびDFS%(病死しない患者の割合)のドットプロットの図である。
【図2】高PY−Shcまたは低PY−Shcスコアを有する、ステージIおよびステージIIの胃癌患者のカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図3】PY−Shcスコアを使用した、ステージIおよびステージIIの胃癌患者におけるRFS%およびDFS%のカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図4】何らかの原因による死亡の関数として、ステージIおよびステージIIの胃癌におけるPY−Shcスコアのドットプロットの図である。
【図5】何らかの原因による死亡の関数として、ステージIおよびステージIIの胃癌におけるp66−Shcスコアのドットプロットの図である。
【図6】高PY−Shcまたは低PY−Shcスコアの腫瘍を有する、ステージIおよびステージIIの胃癌患者の全生存間の差異を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図7】p66−Shcの関数として、ステージIおよびステージIIの胃癌患者の疾患特異的生存を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。縦座標は、一部の生存する患者としての疾患特異的生存である。横座標は、診断後の月数である。p66bi=0は、p66−Shcスコア<=2.5であり、p66bi=1は、p66−Shcスコア>2.5乃至5である。打ち切りデータは、曲線上に垂直ハッシュマークで示す。
【図8】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者の腫瘍グレードの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図9】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者の腫瘍ステージの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図10】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のPY−Shcスコアの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図11】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のp66−Shcスコアの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図12】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のPYp66−Shc生成物のスコアの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図13】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のShcの比率スコアの関数として、疾患特異的死亡までの期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図14】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者の腫瘍グレードの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図15】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者の腫瘍ステージの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図16】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のPY−Shcスコアの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図17】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のp66−Shcスコアの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図18】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のPYp66−Shc生成物のスコアの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図19】ステージIIおよびステージIIIの大腸癌患者のShcの比率スコアの関数として、無再発生存の期間を示すカプラン−マイヤー生存プロットの図である。
【図20】全ての腫瘍の全母集団に対するTP53の蓄積の有無によって階層化した、カプラン−マイヤー生存プロットの図(図20A)、低p66−Shcの腫瘍の全母集団に対するTP53の蓄積の有無によって階層化した、カプラン−マイヤー生存プロットの図(図20B)、高p66−Shcの腫瘍の全母集団に対するTP53の蓄積の有無によって階層化した、カプラン−マイヤー生存プロットの図(図20C)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、を含み、それによって、癌治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項2】
癌治療を受ける対象の生存の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、を含み、それによって、癌治療を受ける前記対象の生存の予後を診断する、方法。

【請求項3】
消化管癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から消化管の組織試料を得るステップと、
前記消化管の組織試料と、前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcに特異的に結合する抗体とを接触させるステップと、
免疫組織化学的アッセイにおいて、前記抗体を使用してチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcを検出することによって、前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記試料内の前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、
を含み、
前記対照試料内の量に対する前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはp66−Shcの量の増加は、前記対象において前記消化管癌が再発することを示し、前記対照試料内の前記量に対する前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはp66−Shcの量の減少は、前記対象において前記消化管癌が再発しないことを示し、それによって、消化管癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項4】
胃癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、
を含み、
前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の減少および/またはp66−Shcの量の増加は、前記対象において前記胃癌が再発することを示し、前記試料内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量の増加および/またはp66−Shcの量の減少は、前記対象において前記胃癌が再発しないことを示し、それによって、胃癌の治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項5】
大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するp66−Shcの量を決定するステップと、
前記量と、対照試料内に存在するp66−Shcの対照量とを比較するステップと、を含み、
p66−Shcの量の増加は、前記対象において前記大腸癌が再発することを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項6】
大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するShcの比率を決定するステップと、
前記Shcの比率と、対照試料内に存在する対照Shcの比率とを比較するステップと、
を含み、
前記試料内のShcの比率が低い場合、前記対象において大腸が再発することを示し、前記試料内のShcの比率が高い場合、前記対象において大腸が再発しないことを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項7】
大腸癌の治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内に存在するPYp66−Shc生成物を決定するステップと、
前記PYp66−Shc生成物と、対照試料内の対照PYp66−Shc生成物とを比較するステップと、を含み、
前記試料内のPYp66−Shc生成物が多い場合、前記対象において前記大腸癌が再発することを示し、前記試料内のPYp66−Shc生成物が少ない場合、前記対象において前記大腸癌が再発しないことを示し、それによって、大腸癌の治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項8】
前記方法は、前記対象から得られた前記試料の形態学的分析とともに行われる、請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項9】
前記試料は、組織または細胞からなる群から選択される、請求項1、2、および4乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項10】
前記試料は、胃組織、小腸組織、および大腸組織からなる群から選択された組織試料である、請求項1、2、および4乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項11】
前記癌は、胃癌および大腸癌からなる群から選択される、請求項1乃至3のうちの1つに記載の方法。

【請求項12】
前記癌は、胃癌である、請求項11に記載の方法。

【請求項13】
前記癌は、大腸癌である、請求項11に記載の方法。

【請求項14】
前記癌は、ステージIの胃癌またはステージIIの胃癌である、請求項1乃至4のうちの1つに記載の方法。

【請求項15】
前記癌は、ステージIIの大腸癌またはステージIIIの大腸癌である、請求項1乃至3または5乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項16】
前記p66−Shcの量だけが決定される、請求項1乃至4のうちの1つに記載の方法。

【請求項17】
前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量だけが決定される、請求項1乃至4のうちの1つに記載の方法。

【請求項18】
前記p66−Shcおよびチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の両方の量が決定される、請求項1乃至4のうちの1つに記載の方法。

【請求項19】
Shcの数学的関係が決定される、請求項18に記載の方法。

【請求項20】
決定される前記Shcの数学的関係は、前記Shcの比率である、請求項19に記載の方法。

【請求項21】
決定される前記Shcの数学的関係は、前記PYp66−Shc生成物である、請求項19に記載の方法。

【請求項22】
前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップは、p66−Shcまたはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体の使用を含む、請求項1、2、および4乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項23】
前記決定するステップは、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリ、ELISA、および質量分析からなる群から選択される手法の使用を含む、請求項22に記載の方法。

【請求項24】
前記p66−Shcの量は、核酸レベルで決定される、請求項1、2、4、または5のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項25】
前記核酸の量は、定量PCRおよび発現アレイ分析からなる群から選択された手法を使用して決定される、請求項24に記載の方法。

【請求項26】
前記対象は、ヒトである、請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項27】
(a)p66−Shcに特異的に結合する検出可能な抗体と、(b)チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体と、(c)消化管組織または消化管細胞を単離させるための試薬と、(d)使用説明書と、を含む、請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の方法を行うためのキット。

【請求項28】
癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定するための方法であって、
前記細胞内のチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、を含み、それによって、前記癌細胞が侵襲的であるかどうかを決定する、方法。

【請求項29】
前記癌細胞は、消化管癌細胞である、請求項28に記載の方法。

【請求項30】
前記癌細胞は、組織試料内に存在する、請求項28に記載の方法。

【請求項31】
前記試料は、組織試料であり、胃組織、小腸組織、および大腸組織からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。

【請求項32】
前記p66−Shcの量だけが決定される、請求項28に記載の方法。

【請求項33】
チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量だけが決定される、請求項28に記載の方法。

【請求項34】
前記p66−Shcおよびチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の両方の量が決定される、請求項28に記載の方法。

【請求項35】
Shcの数学的関係が決定される、請求項34に記載の方法。

【請求項36】
決定される前記Shcの数学的関係は、前記Shcの比率である、請求項35に記載の方法。

【請求項37】
決定される前記Shcの数学的関係は、前記PYp66−Shc生成物である、請求項35に記載の方法。

【請求項38】
前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)およびp66−Shcの量を決定するステップは、p66−Shcまたはチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)に特異的に結合する検出可能な抗体の使用を含む、請求項28に記載の方法。

【請求項39】
前記決定するステップは、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリ、ELISA、および質量分析からなる群から選択される手法の使用を含む、請求項28に記載の方法。

【請求項40】
対象における消化器癌を治療するための治療計画の有効性を評価する方法であって、
a)前記治療計画の少なくとも一部を前記対象に施す前に前記対象から得られた第1の試料内に存在する、前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、
b)前記治療計画の少なくとも一部を施した後に前記対象から得られた第2の試料内に存在する、前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量とを比較するステップを含み、
前記第2の試料に対して、前記第1の試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の量が少ない場合、前記治療計画が消化管癌の治療に有効であることを示し、前記第2の試料に対して、前記第1の試料内に存在するp66−Shcの量が多い場合、前記治療計画が前記対象における消化管癌の治療に有効であることを示す、方法。

【請求項41】
対象における大腸癌を治療するための治療計画の有効性を評価する方法であって、
a)前記治療計画の少なくとも一部を前記対象に施す前に前記対象から得られた第1の試料内に存在する、前記Shcの比率と、
b)前記治療計画の少なくとも一部を施した後に前記対象から得られた第2の試料内に存在する、前記Shcの比率とを比較するステップを含み、
前記第1の試料に対して、前記第2の試料内に存在するShcの比率が高い場合、前記治療計画が大腸癌の治療に有効であることを示し、前記第1の試料に対して、前記第2の試料内に存在するShcの比率が低い場合、前記治療計画は、前記対象における大腸癌の治療に有効ではないことを示す、方法。

【請求項42】
対象における大腸癌を治療するための治療計画の有効性を評価する方法であって、
a)前記治療計画の少なくとも一部を前記対象に施す前に前記対象から得られた第1の試料内に存在する、前記PYp66−Shc生成物と、
b)前記治療計画の少なくとも一部を前記対象に施した後に前記対象から得られた第2の試料内に存在する、前記PYp66−Shc生成物とを比較するステップを含み、
前記第1の試料に対して、前記第2の試料内に存在するPYp66−Shc生成物が少ない場合、前記治療計画が大腸癌の治療に有効であることを示し、前記第1の試料に対して、前記第2の試料内に存在するPYp66−Shc生成物が多い場合、前記治療計画が前記対象における大腸癌の治療に有効ではないことを示す、方法。

【請求項43】
前記治療計画は、手術、放射線、ホルモン治療、抗体治療、タンパク質チロシンキナーゼ抑制剤による治療、セリン/スレオニンキナーゼ抑制剤、成長因子、サイトカイン、および化学療法からなる群から選択される治療計画を含む、請求項40、41、または42のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項44】
前記方法は、前記対象から得られた前記試料の形態学的分析とともに行われる、請求項40、41、または42のうちのいずれか1つに記載の方法。

【請求項45】
癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を選択する方法であって、
消化管癌細胞と、試験化合物とを接触させるステップと、
前記試験化合物の、前記癌細胞内の前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの発現および/または活性を調整する能力を決定するステップと、を含み、それによって、癌細胞の侵襲性を調整することができる化合物を識別する、方法。

【請求項46】
前記癌細胞は、消化管癌細胞である、請求項45に記載の方法。

【請求項47】
前記試験化合物の、前記癌細胞内の前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)の発現および/または活性を増加する能力、および/または前記細胞内の前記p66−Shcの発現および活性を減少させる能力は、前記化合物が、消化管癌細胞の侵襲性を軽減させることを示す、請求項46に記載の方法。

【請求項48】
癌治療を受ける対象における癌の再発の予後を診断するための方法であって、
前記対象から得られた試料内の変異TP53の有無を決定するステップと、
前記対象から得られた前記試料内に存在する前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量を決定するステップと、
前記変異TP53の有無と、対照試料内に存在する変異TP53の有無とを比較するステップと、
前記チロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの量と、対照試料内に存在するチロシンリン酸化Shc(PY−Shc)および/またはp66−Shcの対照量とを比較するステップと、を含み、それによって、癌の治療を受ける前記対象における癌の再発の予後を診断する、方法。

【請求項49】
前記試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の存在は、前記対象において癌が再発することを示す、請求項48に記載の方法。

【請求項50】
前記試料内のp66−Shcの量の増加および変異TP53の非存在は、前記対象において前記癌が再発しないことを示す、請求項48に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公表番号】特表2009−524048(P2009−524048A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551239(P2008−551239)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/010728
【国際公開番号】WO2007/084156
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(508218154)カタリスト オンコロジー、エル・ピー (1)
【氏名又は名称原語表記】CATALYST ONCOLOGY,LP
【Fターム(参考)】