説明

SS7信号処理システム及びそれにおける障害復旧方法

【課題】通信相手とのコネクションを確立したまま、システムを復旧させることができることにより、システム上のプロセス再起動後に行われるSS7リンクの再確立処理が不要となり、既存システムに比べて速やかなシステム復旧が可能となるSS7信号処理システムを提供する。
【解決手段】監視プロセス7にて監視されない常駐のリソース管理常駐プロセス6を設け、SS7物理回線終端デバイスドライバ2から取得したファイルディスクリプタだけをこのリソース管理常駐プロセス6にて共有メモリエリア8に保持する。SS7信号リンク制御プロセス5は、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、保持されているファイルディスクリプタによってSS7物理回線終端デバイスドライバ2に対してアクセスする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用OS(オペレーティングシステム)を用いて構築されたSS7(Signaling System No.7)信号の送受信・呼処理システムにおいて、システム上で様々な機能を実現しているソフトウェア(プロセス)の一部の障害によって、信号送受信を行っている信号リンクに影響を与えず、速やかに障害を復旧させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2000−57095号公報)には、サーバと複数の端末とで構成され、端末とサーバとの間でTCP/IPコネクションを確立し、ソケットを用いて通信を行うプロセスをサーバ上に有する通信処理システムにおいて、プロセスが異常終了しても、TCP/IPコネクションを切断することなく、サーバと端末とが通信を継続することができるようにするために、次のように構成したものが開示されている。
【0003】
すなわち、プロセスとの間に制御用コネクションを確立して通信及びプロセスの状態監視を行う制御手段と、端末との通信の処理状態をプロセス間共有メモリによって管理する手段とを備え、プロセスは、端末とのTCP/IPコネクションを確立してソケットを取得し、この取得したソケットを制御用コネクションを通じて制御手段にコピーし、制御手段は、プロセスの異常終了を検出すると、バックアップ用ソケットを制御用コネクションを通じて別のプロセスにコピーし、この別のプロセスは、バックアップ用ソケットのコピーを使用して端末との通信処理を継続する。
【0004】
しかし、これは、TCP/IPコネクションで通信を行う通信システムでの適用に限られる。
【0005】
ところで、既存電話網で送受信されるSS7(Signaling System No.7)信号を終端または転送する信号局の高速大容量化、及び基盤となる信号網のIP(インターネットプロトコル)ネットワーク化が進められているなか、安価で高性能処理を実現できる汎用OS(オペレーティングシステム)と汎用ハードウェアを用いたシステム構築が主流となっている。これらのシステムでは、Linux(登録商標)をはじめとする汎用的なOSを用いることで、多種多様な機能の実現と柔軟なシステム構成を可能としているが、既存専用装置で実現されてきた障害時などにおけるシステムの高信頼性実現が課題となっている。
【0006】
汎用OSを用いて構築されたSS7信号処理システムでは、個々の機能はOS上で動作する「プロセス」として実現されており、信号の送受信や保守機能など複数のプロセスが並列に実行されることで、システムを構成し機能提供を実現している。これらのソフトウェアプロセスは、一つでも異常な動作を行うとシステム全体の処理に影響を与えてしまうことがあるため、大規模な障害発生に備え、OS上で全てのプロセスを監視している監視プロセスにより制御されている。異常なプロセスが発生すると監視プロセスが即座に検出し、全てのプロセス再起動を実施することで、システムを正常状態に復旧させるよう設計されている。
【0007】
しかし、一機能を担うプロセスの異常により、システム上で動作している全てのプロセスが再起動されてしまうため、システムの提供しているサービスが停止してしまうことが課題となる。たとえば、SS7信号処理とまったく関係のない時間補正プロセスの異常によって、システムのメイン処理である信号リンク制御、信号送受信処理のサービス停止に繋がってしまう。特に、対向信号局とのSS7信号リンクやIPネットワーク上の対向信号局とIPリンクを制御しているプロセスが再起動してしまうことで、対向信号局とのリンクが切断されてしまい、ネットワークを介した大きなシステム障害として扱われてしまう。
【0008】
信号リンク制御には、SS7信号終端装置のデバイスドライバやOSのカーネルが提供する制御リソース(ファイルディスクリプタ/ソケットディスクリプタ)が用いられているが、プロセス再起動時にはこれらのリソースは自動的に解放され、リンク切断となってしまう。このため、プロセス再起動が発生するようなケースにおいてもリンク制御情報の引き継ぎによるリンクの継続が課題となっている。これらの軽度のシステム障害に関しては、確立済みの信号リンクには影響を与えず、リンク無切断のシステム復旧手法が望まれている。
【0009】
一般的に、SS7の物理回線を終端するデバイスは、PC(パーソナルコンピュータ)基盤をベースとした汎用機器上にバス接続などで取り付けられる一つのデバイスとして実装されている。このSS7回線終端デバイスを、OS上で動作するアプリケーションプログラムから制御するために、OS上のカーネルモジュールとして動作するデバイスドライバが提供される。信号リンクの確立、切断といった信号リンク制御及び信号送受信を行う信号処理管理プロセスは、このデバイスドライバのAPI(Application Program Interface)をコールすることで、該当機能を実現している。
【特許文献1】特開2000−57095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、通信相手とのコネクションを確立したまま、システムを復旧させることができることにより、システム上のプロセス再起動後に行われるSS7リンクの再確立処理が不要となるため、既存システムに比べて速やかなシステム復旧が可能となるSS7信号処理システム及びその障害復旧方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る本発明は、SS7信号処理システムに係り、SS7物理回線終端デバイスを制御するSS7物理回線終端デバイスドライバ、システムの保守機能を実現するプロセス群、信号リンクの制御・信号送受信を行うSS7信号リンク制御プロセス、これらのプロセスの異常状態を常時監視する監視プロセス、この監視プロセスにて監視されない常駐のリソース管理常駐プロセスを設け、このリソース管理常駐プロセスは、SS7物理回線終端デバイスドライバから取得したファイルディスクリプタだけを保持し、SS7信号リンク制御プロセスは、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、保持されているファイルディスクリプタによってSS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスすることを特徴とする。
【0012】
すなわち、従来のSS7信号処理システムにおいて信号リンク制御を実現していたプロセスを、SS7物理回線終端デバイスドライバのリソース識別子であるファイルディスクリプタを保持するだけの常駐プロセスと、信号送受信とリンク制御を実現する信号リンク制御プロセスに分離し、このプロセス間でリンク制御情報を共有して信号処理を行う。
【0013】
その好ましい形態である請求項2に係る発明は、SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとが共有する共有メモリを有し、この共有メモリにファイルディスクリプタをリンク情報と共に書き込み、SS7信号リンク制御プロセスは、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時にこの共有メモリを参照する。
【0014】
同じく請求項3に係る発明は、リソース管理常駐プロセスが、SS7信号リンク制御プロセスから信号リンクの切断要求があったとき、SS7物理回線終端デバイスドライバに対して該当する信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放させる機能を有する。
【0015】
同じく請求項4に係る発明は、SS7信号リンク制御プロセスが、当該SS7信号処理システムの再起動時に、リソース管理常駐プロセスにて保持しているファイルディスクリプタを引き継ぐか引き継がないかを選択できる機能を有する。
【0016】
請求項5に係る発明は、SS7信号処理システムにおける障害復旧方法に係り、SS7物理回線終端デバイスを制御するSS7物理回線終端デバイスドライバ、システムの保守機能を実現するプロセス群、信号リンクの制御・信号送受信を行うSS7信号リンク制御プロセス、これらのプロセスの異常状態を常時監視する監視プロセス、この監視プロセスにて監視されない常駐のリソース管理常駐プロセスを設け、このリソース管理常駐プロセスにより、SS7物理回線終端デバイスドライバから取得したファイルディスクリプタだけを保持し、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、SS7信号リンク制御プロセスが、保持されているファイルディスクリプタによってSS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスすることを特徴とする。
【0017】
その好ましい形態である請求項6に係る発明は、SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとが共有する共有メモリにファイルディスクリプタをリンク情報と共に書き込み、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、SS7信号リンク制御プロセスが共有メモリを参照してSS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスする。
【0018】
同じく請求項7に係る発明は、SS7信号リンク制御プロセスから信号リンクの切断要求があったとき、リソース管理常駐プロセスが、SS7物理回線終端デバイスドライバに対して該当する信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放させる。
【0019】
同じく請求項8に係る発明は、当該SS7信号処理システムの再起動時に、リソース管理常駐プロセスにて保持しているファイルディスクリプタを引き継ぐか引き継がないかを、SS7信号リンク制御プロセスにて選択する。
【発明の効果】
【0020】
上述のように、通常は、障害発生時のプロセス再起動によって取得した信号リンク制御用リソースは解放されてしまうが、本発明では、信号処理管理プロセスを、信号送受信とリンク制御を行うSS7信号リンク制御プロセスと、SS7物理回線終端デバイスドライバから取得した信号リンク制御用のリソース識別子であるファイルディスクリプタを保持するだけのリソース管理常駐プロセスとに分離することで、プロセス異常発生の可能性をなくすと共に、システム障害発生時のプロセス再起動の対象から除外する。信号処理に関係のないシステム上のソフトウェア障害によって、メイン機能である信号送受信・リンク制御のプロセスが再起動されたとしても、リンク制御用リソースを保持するだけの処理を限定した小規模の、しかも、監視不要のリソース管理常駐プロセスが常駐し続けることで、確立済み信号リンクの制御リソースの解放を防ぎ、信号リンク切断を発生させない対向信号局に透過な障害復旧手法を実現することができる。
【0021】
したがって、SS7信号リンクやSCTP(Stream Control Transmission Protocol)アソシエーションによるコネクション制御を実現するシステムにおいて、軽微なシステム障害発生時において、本システムと対向接続している通信相手とのコネクションを切断することなく、対向システムに障害透過なシステム復旧が実現可能となる。システム異常により一時的なサービス中断を発生させることなく、障害復旧させることができることで、システムとして高い耐障害性を提供する。また、通信相手とのコネクションを確立したまま、システムを復旧させることができることにより、システム上のプロセス再起動後に行われるSS7リンクの再確立処理が不要となるため、既存システムに比べて速やかなシステム復旧が可能となる。
【0022】
請求項2及び請求項6に係る発明によれば、SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとが共有する共有メモリによって、これらプロセス間の動作を効率良く行うことができる。
【0023】
請求項3及び請求項7に係る発明によれば、SS7信号リンク制御プロセスから信号リンクの切断要求があったとき、リソース管理常駐プロセスが、SS7物理回線終端デバイスドライバに対して該当する信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放させるので、信号処理管理プロセスが、SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとに分離されていても、信号リンクの切断及び再接続を支障なく行える。
【0024】
請求項4及び請求項8に係る発明によれば、当該SS7信号処理システムの再起動時に、リソース管理常駐プロセスにて保持しているファイルディスクリプタを引き継ぐか引き継がないかを、SS7信号リンク制御プロセスにて選択することができるので、以前の情報を引き継ぐか、以前の情報を破棄(リンク切断)し、新規にリンクを確立かを、状況に応じて任意に選択することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0026】
本発明によるSS7信号処理システムは、既存電話網の基盤ネットワークを構成するTDM(Time Division Multipexing )やATM(Asynchronous Transfer Mode)物理回線を終端し、SS7信号を転送または呼処理を実行するSEP(Signaling End Point)やSTP(Signaling Transfer Point)などの信号局サーバへ適用される。その信号局サーバは、PCなどをベースとした汎用的なハード基盤の上に、専用のSS7回線終端デバイスを搭載した形で構築される。
【0027】
図1に本発明によるSS7信号処理システムの構成例を示す。
このSS7信号処理システムは、ハードウェアとして、TDM(Time Division Multipexing )やATM(Asynchronous Transfer Mode)物理回線をSS7物理回線終端デバイス1で終端し、これを、Linuxのような汎用OS上で動作するSS7物理回線終端デバイスドライバ2で作動させる。このデバイスドライバ2を制御するソフトウェアとして、保守運用プロセス群3、呼制御プロセス4があるほか、本発明では、従来における信号処理管理プロセスを、信号送受信とリンク制御を行うSS7信号リンク制御プロセス5と、SS7物理回線終端デバイスドライバ2から取得した信号リンク制御用のリソース識別子であるファイルディスクリプタを保持するだけのリソース管理常駐プロセス6とに分離してシステム上に配置する。
【0028】
SS7信号リンク制御プロセス5は、保守運用プロセス群3及び呼制御プロセス4と同じくシステム上の監視プロセス7の監視の対象となるが、リソース管理常駐プロセスは、実現する処理を限定した小規模のプログラムであり、異常終了が発生することがなく作られているため、監視プロセス7の監視の対象とする必要がなく、OS起動と同時にプロセスが起動されシステムが終了するまで常駐する。
【0029】
SS7信号リンク制御プロセス5とリソース管理常駐プロセス6とは、共有メモリエリア8を用いた情報共有を行い、プロセス間通信によって制御情報のやりとりを行う。
【0030】
リソース管理常駐プロセス6は、SS7信号リンク制御プロセス5からリンク確立の要求を受けると、デバイスドライバ2のAPIをコールし、信号リンク制御用のファイルディスクリプタを取得する。該当信号リンク情報は共有メモリエリア8に書き込まれ、取得したファイルディスクリプタ情報と共にSS7信号リンク制御プロセス5に引き渡される。SS7信号リンク制御プロセス5では、リソース管理常駐プロセス6によって引き渡されたファイルディスクリプタを用いて、デバイスドライバ2のAPIをコールし、その後の信号リンク制御及び信号送受信処理を行う。
【0031】
対向信号局との信号リンク確立中に、システム内のプロセスに異常が発生した場合は、システムを正常状態に復旧させるために監視プロセス7が、監視対象の全てのプロセス再起動を行う。この際、リソース管理常駐プロセス6は、監視対象外としているため再起動不要であり、保有しているリンク制御用のファイルディスクリプタはリソース管理常駐プロセス6で保持されたままとなる。
【0032】
プロセス障害発生による再起動時、カーネルリソースであるファイルディスクリプタの解放は不要であり、すでに確立済みの信号リンクは切断されることなく継続される。プロセス再起動によりSS7信号リンク制御プロセス5が起動すると、このSS7信号リンク制御プロセス5は、リソース管理常駐プロセス6との共有メモリエリア8を参照し、すでに確立済みの信号リンク情報を継続して用いることで、復旧後即時の信号送受信・制御を開始する。
【0033】
図1のSS7信号処理システムの構成の動作を図2にフロー図として示す。
リソース管理常駐プロセス6は、システム起動時におけるOSの立ち上がり時に個別に起動される。その後、監視プロセス7が起動され、監視対象の各プロセス3〜5が監視プロセス7によって順次起動される。監視プロセス7によって起動されたプロセス3〜5は常時異常が発生していないか監視される。
【0034】
本システムのユーザからリンク確立の指示が要求されると、SS7信号リンク制御プロセス5がリンク確立要求を受け、プロセス間通信でリソース管理常駐プロセス6に対してリンク確立要求を転送する。リソース管理常駐プロセス6では、要求を受けるとSS7物理回線終端デバイス1のデバイスドライバ2のAPIをコールし、リンク確立・制御用にファイルディスクリプタを取得し、リンク情報と共に共有メモリエリア8に書き込む。ファイルディスクリプタの取得が完了すると、リソース管理常駐プロセス6は、プロセス間通信によってSS7信号リンク制御プロセス5に結果を伝達する。このとき、取得したファイルディスクリプタのコピー情報も伝達する。そして、リソース管理常駐プロセス6は、次に要求があるまで何も処理を行わず空転して待機する。
【0035】
SS7信号リンク制御プロセス5では、リソース管理常駐プロセス6を経由して取得したファイルディスクリプタを用いてデバイスドライバ2のAPIをコールし、信号リンクの制御・信号の送受信などの信号処理を実施する。対向信号局との信号リンク確立中に、システム内監視対象の保守機能プロセスの一つで異常状態が発生した場合は、監視プロセス7が異常を検出しシステムを正常状態に復旧させるために監視対象の全てのプロセスの再起動を行う。この際、リソース管理常駐プロセス6は、監視対象外であるため再起動されることなく、リンク制御用のファイルディスクリプタはリソース管理常駐プロセス6で保持されたままとなる。カーネルリソースであるファイルディスクリプタの解放(記録削除)が発生しないため、システム復旧時においてもすでに確立済みの信号リンクは切断されることなく継続される。この間に対向信号局から送信された信号は、デバイスドライバ2が保持する受信バッファに蓄積され、SS7信号リンク制御プロセス5が起動後に漏れなく受信され、処理されることになる。
【0036】
SS7信号リンク制御プロセス5は、再起動後にリソース管理常駐プロセス6との共有メモリエリア8を確認し、すでに確立済みの信号リンク情報を確認し、リソース管理常駐プロセス6から該当リンクのファイルディスクリプタのコピー情報を再取得することで、信号送受信・リンク制御を継続する。
【0037】
通常はこのようにリンク情報を引き継ぐが、起動要求時のオプション指定に応じて(保守者の要求により)、次のように既存リソースの破棄と新規リソースの確立を行うことができる。
【0038】
保守者の介在によりプロセスを再起動する場合、SS7信号リンク制御プロセス5が新規リンクの確立が必要であると判断すると、リソース管理常駐プロセス6にその確立を要求する。これを受けたリソース管理常駐プロセス6は、デバイスドライバ2のAPIをコールし、該当信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放(記録削除)し、共有メモリエリア8に書き込まれている情報から該当エントリを削除する。
【0039】
この後、リソース管理常駐プロセス6は、デバイスドライバ2のAPIを再びコールし、新規のリンク確立・制御用にファイルディスクリプタを取得し、リンク情報と共に共有メモリエリア8に書き込む。新規のファイルディスクリプタの取得が完了すると、リソース管理常駐プロセス6は、プロセス間通信によってSS7信号リンク制御プロセス5に結果を伝達する。このとき、新規に取得したファイルディスクリプタのコピー情報も伝達する。
【0040】
SS7信号リンク制御プロセス5では、リソース管理常駐プロセス6を経由して新規に取得したファイルディスクリプタを用いてデバイスドライバ2のAPIをコールし、信号リンクの制御・信号の送受信などの信号処理を実施する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上記の実施例では、既存電話信号網におけるSEPやSTPなどSS7信号処理システムでの信号リンク無切断障害復旧方法について説明したが、IPネットワーク上でSS7信号を送受信・転送するようなIP−SEP(IP-Signaling End Point)局やSGW(Signaling Gate Way)などのIP信号リンクについても適用が可能である。IPネットワーク上でSS7信号を送受信するためのIP信号リンクでは、コネクション指向のトランスポートプロトコルであるSCTP(Stream Control Transmission Protocol)が使用されており、システム上でIP信号リンクを制御するプロセスでは、SCTPのコネクション制御とデータを送受信するためにソケットディスクリプタを管理している。このソケットディスクリプタも汎用OSのカーネルが提供するリソースであり、プロセスの再起動によってリソースは解放されてしまう。
【0042】
そこで、本発明を適用することで、ファイルディスクリプタの取得・解放のみ実現するリソース管理常駐プロセスと、信号の送受信・コネクション制御を実現する信号リンク制御プロセスを分離し、システム上で障害発生時もリソース管理常駐プロセスが再起動されない仕組みを用いることによって、SCTPのコネクションが切断されることなく対向装置に対して障害透過な復旧機構を実現することが可能である。
【0043】
以上の説明から分かるように、本発明は次のような場合に適用できる。
既存電話網の信号を終端、中継する信号局(SEP: Signaling End Point、STP: Signaling Transfer Point)
固定電話網及び携帯電話網とIPネットワーク網を中継する信号中継局(SGW:Signalling Gateway)。
IPネットワーク上で固定電話網、及び携帯電話網の信号を終端・処理する信号終端局(IPSEP: IP Signalilng End Point)。
トランスポートプロトコルにSCTPを用いる、高信頼性が要求されるIPサーバ間での通信。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明によるSS7信号処理システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】そのSS7信号処理システムの動作例のフロー図である。
【符号の説明】
【0045】
1 SS7物理回線終端デバイス
2 SS7物理回線終端デバイスドライバ
3 保守運用プロセス群
4 呼制御プロセス
5 SS7信号リンク制御プロセス
6 リソース管理常駐プロセス
7 監視プロセス
8 共有メモリエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SS7物理回線終端デバイスを制御するSS7物理回線終端デバイスドライバ、システムの保守機能を実現するプロセス群、信号リンクの制御・信号送受信を行うSS7信号リンク制御プロセス、これらのプロセスの異常状態を常時監視する監視プロセス、この監視プロセスにて監視されない常駐のリソース管理常駐プロセスを設け、このリソース管理常駐プロセスは、前記SS7物理回線終端デバイスドライバから取得したファイルディスクリプタだけを保持し、前記SS7信号リンク制御プロセスは、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、前記保持されているファイルディスクリプタによって前記SS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスすることを特徴とするSS7信号処理システム。
【請求項2】
SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとが共有する共有メモリを有し、この共有メモリにファイルディスクリプタをリンク情報と共に書き込み、SS7信号リンク制御プロセスは、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時にこの共有メモリを参照することを特徴とする請求項1に記載のSS7信号処理システム。
【請求項3】
リソース管理常駐プロセスは、SS7信号リンク制御プロセスから信号リンクの切断要求があったとき、SS7物理回線終端デバイスドライバに対して該当する信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放させることを特徴とする請求項1又は2に記載のSS7信号処理システム。
【請求項4】
SS7信号リンク制御プロセスは、当該SS7信号処理システムの再起動時に、リソース管理常駐プロセスにて保持しているファイルディスクリプタを引き継ぐか引き継がないかを選択できることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のSS7信号処理システム。
【請求項5】
SS7物理回線終端デバイスを制御するSS7物理回線終端デバイスドライバ、システムの保守機能を実現するプロセス群、信号リンクの制御・信号送受信を行うSS7信号リンク制御プロセス、これらのプロセスの異常状態を常時監視する監視プロセス、この監視プロセスにて監視されない常駐のリソース管理常駐プロセスを設け、このリソース管理常駐プロセスにより、SS7物理回線終端デバイスドライバから取得したファイルディスクリプタだけを保持し、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、前記SS7信号リンク制御プロセスが、前記保持されているファイルディスクリプタによって前記SS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスすることを特徴とする、SS7信号処理システムにおける障害復旧方法。
【請求項6】
SS7信号リンク制御プロセスとリソース管理常駐プロセスとが共有する共有メモリにファイルディスクリプタをリンク情報と共に書き込み、当該SS7信号処理システムを復旧させるための再起動時に、SS7信号リンク制御プロセスが上記共有メモリを参照してSS7物理回線終端デバイスドライバに対してアクセスすることを特徴とする請求項5に記載の、SS7信号処理システムにおける障害復旧方法。
【請求項7】
SS7信号リンク制御プロセスから信号リンクの切断要求があったとき、リソース管理常駐プロセスが、SS7物理回線終端デバイスドライバに対して該当する信号リンク制御用のファイルディスクリプタを解放させることを特徴とする請求項5又は6に記載の、SS7信号処理システムにおける障害復旧方法。
【請求項8】
当該SS7信号処理システムの再起動時に、リソース管理常駐プロセスにて保持しているファイルディスクリプタを引き継ぐか引き継がないかを、SS7信号リンク制御プロセスにて選択することを特徴とする請求項5、6又は7に記載の、SS7信号処理システムにおける障害復旧方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−270895(P2008−270895A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107241(P2007−107241)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】