説明

SiH基を有する化合物を添加剤として使用し、DMC触媒を用いたポリエーテルアルコールの製造方法

【課題】SiH基を有する化合物を添加剤として使用し、DMC触媒を用いたポリエーテルアルコールの製造方法を提供する。
【解決手段】複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)を用いた重合によるポリエーテルアルコールの製造方法であって、1つのケイ素原子に結合した1つ以上のヒドリド水素原子を有する化合物からなる任意選択により混合された1種以上の添加剤が、重合前または重合中に反応混合物に添加されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素原子に直接結合したヒドリド水素原子を含む特定のヒドロシロキサンおよびシランを添加剤として使用し、複合金属シアン化物触媒(double metal cyanide catalysts)を用いたヒドロキシル化合物とエポキシドモノマーとのアルコキシル化におけるモル質量分布の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しばしば簡潔にポリエーテルまたはポリエーテルオールとも称され、同義語として使用されるポリエーテルアルコールは、かなり以前から知られており、工業的に大量に製造され、とりわけポリイソシアネートとの反応によるポリウレタンを製造するための出発化合物としてまたは界面活性剤を製造するための出発化合物としても使用される。アルコキシル化生成物(ポリエーテル)の製造方法のほとんどは、例えば、アルカリ金属水酸化物およびアルカリ金属メトキシドなどの塩基性触媒を利用する。KOHの使用は、特に普及し何年も前から知られている。典型的には、ブタノール、アリルアルコール、プロピレングリコールまたはグリセリンなどの通常は低分子量ヒドロキシ官能性出発物を、アルカリ触媒の存在下で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドまたは異なるアルキレンオキシドの混合物と一緒に反応させて、ポリオキシアルキレンポリエーテルにする。このいわゆるリビング重合での強アルカリ性の反応条件は、様々な副反応を促進する。連鎖の出発物としてそれ自体が機能するアリルアルコールへのプロピレンオキシドの転移および連鎖停止反応によって、比較的広いモル質量分布を有するポリエーテルおよび不飽和副生成物が生成する。特に、出発アルコールとしてアリルアルコールを用いると、アルカリ触媒作用下で実施されるアルコキシル化反応によりプロペニルポリエーテルも生成する。このプロペニルポリエーテルは、ヒドロシリル化の後にさらに処理してSiC支持(supported)シリコーンポリエーテル共重合体とした際の非反応性の副生成物となり、さらに(中に存在するビニルエーテル結合の加水分解性の不安定性およびプロピオンアルデヒドの放出の結果として)生成物の嗅覚上の欠点の望ましくない供給源であることが見出されている。これは、例えば、EP−A−1431331に記載されている。
【0003】
塩基性触媒によるアルコキシル化の欠点の1つは、疑いなく、得られた反応生成物から活性塩基を中和工程により除去する必要があることである。その場合、中和時に生成する水を蒸留して取り除き、ろ過により生成した塩を取り除くことが必ず必要である。
【0004】
塩基触媒による反応に加え、アルコキシル化用の酸触媒作用も知られている。例えば、DE 10 2004 007561には、HBF、並びに例えば、BF、AlClおよびSnClなどのルイス酸をアルコキシル化技術に使用することが記載されている。
【0005】
酸触媒によりポリエーテルを合成する際の欠点は、例えば、プロピレンオキシドなどの非対称オキシランの開環における位置選択性が不十分であることが見出されており、明確な制御手段がない方法で得られるいくつかの第二級および第一級OH末端を有するポリオキシアルキレン鎖が得られる。塩基触媒によるアルコキシル化反応の場合のように、ここでもまた、中和、蒸留、およびろ過の一連の処理はここでも不可欠である。エチレンオキシドがモノマーとして酸触媒によるポリエーテル合成に使用される場合、望ましくない副生成物としてジオキサンが生成することが予想され得る。
【0006】
しかしながら、ポリエーテルアルコールの製造に用いられる触媒は、しばしば複合金属シアン化化合物(multimetal cyanide compounds)または複合金属シアン化物触媒(double metal cyanide catalysts)であり、一般にDMC触媒とも称される。DMC触媒の使用により、不飽和副生成物の含有量が最小限に抑えられ、通例の塩基性触媒と比較して空間−時間収率(space-time yield)が有意に高い反応も進行する。アルコキシル化触媒としての複合金属シアン化物錯体の製造および使用は、1960年代以来知られており、例えば、US3,427,256、US3,427,334、US3,427,335、US3,278,457、US3,278,458、US3,278,459に詳述されている。後年に更に開発され、例えばUS5,470,813およびUS5,482,908に記載されているさらにより効果の高いタイプのDMC触媒の1つに、特に亜鉛−コバルト−ヘキサシアノ錯体がある。その非常に優れた高い活性のため、ポリエーテルオールを製造するのに低い触媒濃度しか必要ではなく、そのため、慣用のアルカリ触媒に必要な処理段階(触媒の中和、沈殿、濾別からなる)を、アルコキシル化プロセスの最終段階で省くことができる。DMC触媒を用いて製造されたアルコキシル化生成物は、アルカリ触媒による生成物と比較してモル質量分布が非常に狭い点で優れている。例えば、プロピレンオキシドに基づくポリエーテルが極わずかな割合の不飽和副生成物しか含有しないという事は、DMC触媒によるアルコキシル化の高い選択性に起因している。
【0007】
DMC触媒で行うアルコキシル化反応は、アルカリおよび酸触媒作用と直接比較して、記載した技術的特徴をもって大変有利であるため、体積の大きい、単純な、通常はPO単位のみからなるポリエーテルオールを製造するための連続的プロセスの開発に繋がった。例えば、WO98/03571は、DMC触媒を用いてポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法を記載しており、ここでは、連続攪拌槽にまず出発物およびDMC触媒からなる混合物を供給し、触媒を活性化し、この活性化された混合物に更に出発物、アルキレンオキシド、およびDMC触媒を連続的に添加し、目的の反応器充填レベルに達した際、連続的にポリエーテルアルコールを取り出す。
【0008】
JP H6−16806に、DMC触媒を用いて、任意選択により連続攪拌槽中でまたは管型反応器中でポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法が記載されており、ここでは、活性化された出発物質混合物が入口で供給され、管型反応器の様々な箇所でアルキレンオキシドが計量供給される。
【0009】
DD 203 725でも、DMC触媒を用いてポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法が記載されており、ここでは、管型反応器に活性化された出発物質混合物がまず管型反応器の入口で供給され、管型反応器の様々な箇所でアルキレンオキシドが計量供給される。
【0010】
WO01/62826、WO01/62824、およびWO01/62825では、DMC触媒によるポリエーテルアルコールの連続的製造方法のための特定の反応器が記載されている。
【0011】
ここに記載した工業的方法のための特許文献は、DMC方法により得られるポリエーテルオールの単分散性を特に考慮している。例えば、PU発泡系に利用されるポリオールの場合(DE 100 08630、US5,689,012)のように狭いモル質量分布が望ましいことが多い。
【0012】
しかしながら、全ての使用分野で狭いモル質量分布が高品質と同義ではない。影響を受けやすい用途では、多分散性が狭すぎるとむしろ不利になることがあり、このためDMCに基づくポリエーテル/ポリエーテルアルコールの利用可能性は制限される。例えば、文献EP−A−1066334は、これに関連して、アルカリアルコキシル化方法により得られるポリエーテルアルコールをDMC触媒を用いて製造されるポリエーテルオールに簡単に代えることができないことを指摘している。DMC触媒によって得られ、かつ、その狭い分子量分布を特徴とするポリエーテルオールの有用性は、特に、例えば、界面活性物質(PU−気泡安定剤)としてポリウレタン発泡系に関与するシリコーンポリエーテル共重合体中の共重合体成分としてそれを用いることを意図する場合、特に制限される。
【0013】
この工業的に有用な物質類は、発泡されるPU系に少量添加するだけでPU系の形態学的特性、従って、得られる発泡部材のその後の使用特性をかなりの程度制御する点で優れている。
【0014】
US5,856,369およびUS5,877,268に記載されているように、一方では、DMC触媒によって製造されたポリエーテルオールの化学的純度が高くて多分散性が低いことは望ましいことであるが、他方では、DMC触媒作用は、慣用のアルカリ触媒によるポリエーテルと比較して非常に異なる種類の構造のポリエーテル鎖を生じさせるので、DMCに基づくポリエーテルオールは界面活性ポリエーテルシロキサンの前駆体として制限が多く、適さない。PU気泡安定剤の分野で記載される、通常はアリルアルコールから出発するポリエーテルオールの利用可能性は、いくつかの場合では、ランダムに混合された配列中のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドモノマー単位からなり、かつ、ポリマー鎖中にポリエチレングリコールブロックが形成するのを防止するためにエチレンオキシド分画が60モル%を超えてはならない、比較的小規模のポリエーテルオール群に限られる。さらに、界面活性作用のあるポリエーテルシロキサンが、モル質量が異なる少なくとも2種のDMCに基づくEO/PO−ポリエーテルオールのブレンドのみを用いて製造されるという事から、現在までの従来技術によるDMC技術によって予め定められる非常に狭いモル質量分布がPU気泡安定剤の分野で決して有利ではないことが実証される。
【0015】
慣用のアルカリ触媒作用により製造されたポリエーテルオールに代わりのDMC触媒作用によって合成されたものでは、PUで実証された確立されたシリコーンポリエーテル共重合体中での共重合体成分として限定された程度でしか使用可能でない異なる種類のアルコキシル化生成物が得られる。
【0016】
従来技術は、複合金属シアン化物触媒を用いた触媒作用を使用するアルコキシル化方法が参照される。本明細書では、例えば、EP−A−1017738、US5,777,177、EP−A−0981407、WO2006/002807およびEP−A−1474464を参照する。
【0017】
特許文献には、慣用の通常ではアルカリ触媒作用による方法によって現在まで得られていないように、触媒活性が向上し、かつ、多分散性が最小で非常に高純度の生成物が得られるような方法で、後の生成物組成にとって非常に重要な段階であるアルコキシル化方法の開始段階で介入することにより、DMC触媒の作用形式に影響を及ぼす方法がある。EP−A−0222453では、アルキレンオキシドと二酸化炭素との共重合に関して最適であるようにDMC触媒を改良するために、硫酸亜鉛などの助触媒が添加されている。EP−A−0981407によれば、不活性ガスで出発物/DMC触媒混合物を真空ストリッピングすることにより触媒の活性を向上させること、アルキレンオキシド添加の前の初期化段階(initialization phase)を短くすること、および多分散性が特に低いポリエーテルを製造することが可能である。US6,713,599は、生成物の多分散性を減少させ、特に分子の均一なポリエーテルを得ることによって質を向上させる目的で、立体障害が大きくプロトン化作用のある(protonating)アルコール、フェノール、およびカルボン酸を添加物としてDMC触媒に製造プロセスの開始段階において添加することを記載している。
【0018】
ZHANGら(AIChE Annual Meeting, Conference Proceedings Nov. 7-12, 2004, 353B)が確信的に実証しているように、DMC触媒でのアルコキシル化のキネティクス(kinetics)は、逆混合反応器(ループ等)を使用した際でも、狭い分子量分布の得られるプロセスをより高い多分散性の方向に進ませることができないような特有の性質のものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、解決されるべき技術的課題は、触媒機構への介入による化学的方法により、および反応器のタイプ(攪拌反応器、ループ反応器、排出器(ejector)、管型反応器、または例えば反応器電池)および方法原理(バッチ式または連続的方法)とは無関係に、モル質量分布を所望の使用分野の必要性に応じて制御しかつ再現可能な形式で利用することを可能とし、かつ、既知方法に従って製造されたポリエーテルと比較した場合に異なる多分散性M/Mを有するポリエーテルを製造することさえも可能にする、DMC触媒によるポリエーテルの製造方法を見出すことであると定める。本発明による方法は、好ましくは、それ自体が直接に界面活性化合物としてあるいは界面活性剤の製造の前駆体として好適であるポリエーテルの製造を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、OH官能性出発物およびDMC触媒からなる出発混合物へのSi−H添加剤として、ケイ素原子に直接結合した1つ以上の水素原子を有する特定のケイ素化合物を使用すると、課題が解決されることが見出された。
【0021】
Si−H添加剤の使用により、同じ比較可能な反応条件を考慮してSi−H添加剤を用いずに生成されたポリエーテルと比較した場合、生成されたポリエーテルの多分散性Mw/Mnは広範となる。
【0022】
本発明のさらなる目的は、ケイ素原子に結合した1以上の活性水素原子を有する特別なケイ素化合物を、Si−H添加剤が低い濃度レベルでも多分散性の変化がもたらされるDMC触媒の方法において、Si−H添加剤として使用することである。Si−H添加剤は、(生成された)ポリエーテルアルコールの全質量に基づき、0.01から3重量パーセント、好ましくは0.01から1重量パーセントの濃度レベルで用いる。
【0023】
反応混合物中、触媒濃度は、好ましくは>0から1.000ppmw(質量ppm)、好ましくは>0から500ppmw、より好ましくは0.1から100ppmw、最も好ましくは1から50ppmである。この濃度は、(生成された)ポリエーテルポリオールの全質量に基づく。反応温度は、60から250℃、好ましくは90から160℃、より好ましくは100から130℃の温度である。アルコキシル化が行われる圧力は、好ましくは0.02barから100bar、好ましくは0.05から20barの絶対値である。
【0024】
Si−H添加剤の添加によって、得られる最終生成物のモル質量分布の有意な広範化および有意に高い多分散性がもたらされる。
【0025】
モル質量分布の広範化、換言すれば多分散性の増加の有意性は、高い再現性およびモル質量の均一性を示す添加剤を添加しない実験比較、ゆえに改良されていないDMC触媒作用の比較から即座に明らかになる。
【0026】
本発明方法を用いた生成されたポリエーテルアルコールの多分散性は、同じ反応条件を用いてSi−H添加剤なしで行ったアルコキシル化方法と比較して、好ましくは少なくとも10パーセント高く、より好ましくは少なくとも20パーセント高く、最も好ましくは少なくとも30パーセント高い。この結果は、例えば重合の温度や触媒濃度/アルキル化時間などの反応条件にほとんど依存しない。
【0027】
絶対値では、多分散性は、同じ反応条件を用い、Si−H添加剤を用いた際、好ましくは少なくとも0.1高く、より好ましくは少なくとも0.2高く、最も好ましくは少なくとも0.4高い。多分散性の変化の絶対値は、例えば、当業者には既知であるように、触媒の濃度、反応時間/期間、Si−H添加剤の濃度、出発アルコール、および得られた生成ポリエーテルアルコール鎖長に依る。
【0028】
1.2以上の多分散性および8.000g/mol未満の平均モル質量を有する、例えば、アリルアルコール、ヘキサノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジポリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、およびグリセロールなどの出発化合物に基づく本発明方法を用いたポリエーテルオールが特に好ましい。比較のため、同じ反応条件を用いるがSi−H添加剤なしで製造したポリエーテルアルコールは、1.05から1.15の多分散性を示す。
【0029】
さらに、本発明の方法および1.4以上の多分散性を有する上記の出発物質を用いることにより製造した8.000より高い平均モル質量を有するより高分子のポリエーテルアルコールも好ましい。比較のため、同じ反応条件を用いるがSi−H添加剤なしで製造されたポリエーテルアルコールは、ほぼ1.1の多分散性を示し、非常に特別な場合に最大1.3を示す。
【0030】
上記のパーセント値および絶対値は、典型的なGPC測定に基づく:カラムの組み合わせ SDV1000/10000オングストローム(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてのTHF、流速1ml/分、試料濃度10g/l、RI検出器、ポリエチレングリコール基準に対する分析。
【0031】
従って、複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)を用いた重合により多分散性が増加したポリエーテルアルコールの製造方法が提供され、該方法では、1つのケイ素原子に1つ以上の(ヒドリド)水素原子を有する化合物からなる任意選択により混合された1種以上のSi−H添加剤(下記において単に添加剤とも称する)が、重合前または重合中に添加される。
【0032】
水素−ケイ素共有結合では、水素が負に分極している。従って、この水素は、ヒドリドの性質を有し、例えば他のH酸性化合物と活性型で(水素を放出して)反応する。
【0033】
本発明による方法においてSi−H水素のヒドリド特性がどの程度まで作用するかは、まだ明らかにされていない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
多分散性の増加は、(通常の)標準DMC触媒作用の場合での値と本発明による添加剤を併用した場合での値との比較から得られるM/M値の差と理解され得る。使用される出発化合物に応じて、少し値が増加しただけでも重要となり、重合生成物の所望の特性にプラスの影響を及ぼし得る。
【0035】
本発明による教示の他の形態は、特許請求の範囲から明らかになる。
【0036】
本発明による方法の別の目的は、高い反応速度並びに触媒の不活性化および除去なしで行えるという複合金属シアン化物系で知られている利点を維持することである。
【0037】
多分散性の広範化は、添加される添加剤の濃度、その構造、および妥当な場合には添加剤の混合した場合の混合比に依存するが、各々の場合において再現可能である。
【0038】
本発明による、添加剤として好ましく使用されるシランは、一般式(I)で表される化合物であり、
R’’’Si (I)、
式中、R’’’は、炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖または分岐鎖かつ飽和または一不飽和若しくは多不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルシリル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基、または炭素数1〜20のハロアルキル基から選択される1つ以上の同じかまたは異なる基であり、
aは、1〜3の整数であり、
bは、1〜3の整数であり、
但し、aとbとの合計が4に等しく、ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子が分子中に存在することを条件とする。
【0039】
単独で、互いに混合して、または式(II)のヒドロシロキサンと組み合わせて使用することができる、式(I)の本発明によるシラン添加剤の非限定的な列記には、モノメチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、モノエチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、モノプロピルシラン、ジプロピルシラン、トリプロピルシラン、モノフェニルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシラン、フェニルメチルシラン、フェニルエチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルジエチルシラン、モノメトキシシラン、ジメトキシシラン、トリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、および例えばトリス(トリメチルシリル)シランが含まれる。
【0040】
式(I)で特定したシランに加えて本発明により添加剤として同様に好ましく使用される水素シランは、一般式(II)で表されるポリオルガノシロキサンであり、
【化1】

式中、Rは、炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖または分岐鎖かつ飽和または一不飽和若しくは多不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、またはシロキシ基およびトリオルガノシロキシ基から選択される1つ以上の同じかまたは異なる基であり、
R’およびR”は、各々独立して、HまたはRであり、
xは、0〜600、好ましくは0〜200の整数であり、
yは、0〜100、好ましくは0〜50、特に40未満の整数を表し、
但し、ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子が分子中に存在することを条件とする。
【0041】
ヒドリド水素を有する本発明による添加剤は、連鎖成長のキネティクスが改変され、かつ、添加剤の濃度および種類に応じて異なる程度の多分散性を利用することが可能になるように、複合金属シアン化物触媒の作用機構に影響を及ぼすことができるということは、特に予想外である。酸性OH官能性物質の添加によるポリエーテルの多分散性の減少を目的とし、これを達成するUS6,713,599B1における所見とは正反対に、ヒドリド水素を有する特定の水素置換ケイ素化合物をDMC触媒によるアルコキシル化に使用すると、最終生成物の多分散性において有意な増加が起こる。
【0042】
各添加剤は、生成物の質に悪影響を及ぼすことなく最終物ポリエーテル中に残存することができるような低い濃度で反応混合物に添加される。
【0043】
前述の塩基触媒作用下でのアルコキシル化とは対照的に、DMC触媒作用下でのアリルアルコールに基づく系では、プロペニルポリエーテルへの転移が起こらない。驚くべきことに、当業者が決して予測できないように、従って特許請求の範囲に記載されるヒドロシロキサンまたはシランからなる添加物を添加した触媒系は、また、プロペニル基を有する望ましくない副生成物を生成しない。
【0044】
従って、本発明による方法は、望ましい多分散性の増加が再現可能に確立できるという追加の利益を有するDMC触媒作用の全ての利点からの利益を依然として得られる。
従って、本発明による方法に対してDMC触媒作用の全ての利点は、更に、添加剤の使用により多分散性の望ましい増加が再現可能に調整され得るという長所になる。
【0045】
添加剤は、アルキレンオキシドの計量添加の開始前のアルコキシル化開始の際に1回で添加することが好ましいが、代わりに、アルキレンオキシドを連続的に添加する間に数回に分けて連続的に添加することもできる(例えば、反応物質の供給流に溶解/分散される)。本発明のコンテクストで使用できるエポキシドモノマーは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびスチレンオキシドと同様、既知である別の一官能性および多官能性エポキシド化合物全て(グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルを含む)を単独でも混合物でも、ランダムでもブロック式の順序でも使用することができる。
【0046】
特定の構造の任意選択により混合された1種以上の添加剤が使用することができる。
【0047】
反応を開始するためには、懸濁媒中で任意選択によりスラリーにしたDMC触媒を含有する反応混合物を反応器中にまず供給し、これに少なくとも1種類のアルキレンオキシドを添加するとき利になり得る。アルキレンオキシドと出発混合物中の反応基、特にOH−基とのモル比は、この場合、好ましくは約0.1〜5:1、より好ましくは約0.2〜2:1である。アルキレンオキシドの添加前に、存在する反応阻害物質を反応混合物から、例えば蒸留により除去するとき有利になり得る。用いる懸濁媒は、ポリエーテルまたは不活性溶媒のいずれか、有利にはアルキレンオキシドが添加される出発化合物、または両方の混合物であってもよい。
【0048】
反応の開始は、例えば、圧力をモニタリングすることによって検出することができる。反応器中の圧力の急な低下は、気体状のアルキレンオキシドの場合、アルキレンオキシドが導入され、従って反応が開始し、開始段階の終わりに達していることを示す。
【0049】
開始段階の後、すなわち反応の初期化後、目的とするモル質量に応じて、出発化合物およびアルキレンオキシドを同時にあるいはアルキレンオキシドだけを計量供給する。あるいは、異なるアルキレンオキシドの望ましい混合物も添加することができる。反応は、例えば粘度を低下させるために、不活性溶媒中で行うことができる。使用される出発化合物に基づいて、特に、使用される出発化合物のOH基の数に基づいて計量供給されるアルキレンオキシドのモル比は、0〜10:1であることが好ましい。
【0050】
使用されるアルキレンオキシドは、一般式(IIIa)を有する化合物とすることができ、
【化2】

式中、RまたはRおよびRまたはRは、同時にあるいは独立して、H、あるいは飽和または任意選択により一不飽和若しくは多不飽和であり、任意選択により1価または多価であり、さらに置換されていてもよい炭化水素基であり、ここで、R基またはR基は、各々、1価の炭化水素基である。炭化水素基は、フラグメントYを介して脂環式に架橋されていてもよく;Yは、0、1または2個のメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよく、Yが0である場合、RまたはRは、独立して、炭素数1〜20、好ましくは1〜10の直鎖基または分岐鎖基、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、アリル基またはフェニル基である。式(IIIa)中の2つの基RまたはRの少なくとも1つは水素であることが好ましい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド(ここで、R−Rは−CHCHCHCH−基であり、Yは従って−CHCH−である)、またはビニルシクロへキセンオキシドまたはこれらの混合物をアルキレンオキシドとして使用することが特に好ましい。式(IIIa)による炭化水素基RおよびRは更に置換されていてもよく、ハロゲン、ヒドロキシル基、またはグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有してもよい。このようなアルキレンオキシドにはエピクロロヒドリンおよび2,3−エポキシ−1−プロパノールが含まれる。
【0051】
同様に、一般式(IIIb)で表されるグリシジルエーテルおよび/またはグリシジルエステルなどのグリシジル化合物
【化3】

(式中、少なくとも1つのグリシジルオキシプロピル基は、エーテルまたはエステル官能基Rを介して、炭素数1〜24の直鎖または分岐鎖アルキル基、芳香族基、または脂環式基に結合している)を使用することができる。このクラスの化合物には、例えば、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、C12/C14−脂肪アルコールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、またはo−クレジルグリシジルエーテルが含まれる。好ましく使用されるグリシジルエステルは、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、またはネオデカン酸グリシジルである。1,2−エチルジグリシジルエーテル、1,4−ブチルジグリシジルエーテル、または1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルなどの多官能性エポキシド化合物も同様に使用可能である。
【0052】
アルコキシル化反応に用いる出発物は、少なくとも1つの反応性ヒドロキシル基を有する式(IV)に従った全ての化合物(HはアルコールのOH基に属する)を使用することができる。
−H (IV)
【0053】
本発明のコクテクストにおいて、出発化合物とは、アルキレンオキシドの添加によって得られる、製造するポリエーテル分子の発端(出発)となる物質を意味すると理解する。本発明による方法に使用される出発化合物は、好ましくは、アルコール、ポリエーテルオール、またはフェノールからなる群から選択される。好ましくは、用いる出発化合物として、1価または多価のポリエーテルアルコールまたはアルコールR−H(HはアルコールのOH基に属する)である。
【0054】
用いるOH官能性出発化合物は、好ましくは、モル質量が18〜2000g/mol、特に100〜2000g/molであり、1〜8個、好ましくは1〜4個のヒドロキシル基を有する化合物である。具体例には、アリルアルコール、ブタノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、または天然物質に基づくヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。
【0055】
有利には、予めDMC触媒によるアルコキシル化により製造された、1〜8個のヒドロキシル基および100〜2000g/molのモル質量を有する低分子量ポリエーテルオールを出発化合物として使用する。
【0056】
脂肪族および脂環式OH−基を有する化合物に加えて、好適な化合物は1〜20個のフェノールOH官能基を有する任意の化合物である。これには、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アリールフェノール、ビスフェノールA、およびノボラックが含まれる。
【0057】
エポキシドおよびエポキシドの開環方法に応じて本発明による方法を用い、式(Va)および(Vb)で表されるポリエーテルアルコール並びにこれらの混合物を製造することができる。
−[(CR−CR−O)H]
(Va)
またはR−[(CR−CR−O)H]

−[(CHR−CH(CHOR)−O)H]
(Vb)
またはR−[(CH(CHOR)−CHR−O)H]
式中、Rは、ヒドロキシル基、または有機出発化合物の基のいずれかを表し、この場合、少なくとも1個の炭素原子を有する基であり、
mは、1〜8であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4であり、
nは、0〜12であり,000、好ましくは1〜800であり、より好ましくは4〜400、および、特に好ましくは20〜200であり、
基、R基、R基、R基、およびR基の定義は、式(IIIa)または(IIIb)の定義に対応する。
【0058】
特に、本発明による方法を用いて、構造およびモル質量分布に関して制御されかつ再現可能な形式で製造することができるということ点で優れている式(Va)または(Vb)のポリエーテルを合成することができる。これらのポリエーテルは、例えば、ポリウレタンを製造するための原料として好適であり、界面活性特性を有する製品(例えば、構成を改変した(organically modified)シロキサン化合物が挙げられるが、これに限定されない)の製造に特に好適である。これらの界面活性剤には、PU気泡安定剤、同様に乳化剤、分散剤、脱泡剤、増粘剤、および例えば離型剤としてのシリコーンポリエーテル共重合体が含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明による方法は、アルコール、ポリオール、フェノール、またはポリエーテルオールなどのOH−官能性化合物のアルコキシル化を特定の置換された立体障害のある(ポリ)フェノールの存在下でDMC触媒を用いて行い、従ってどの点に関してもUS6,713,599B1に記載されている方法とは基本的に異なり、これまで不可避であったDMC触媒作用と多分散性の低いポリエーテルの関連的な生成とのカップリングを初めてなくした。従って、DMC技術の利点を更に利用し、モル質量制御の柔軟性を増大し、最終的にそのように製造されたDMCに基づく生成物の用途範囲を影響を受けやすい界面活性用途分野に広げることを可能にする機器が利用可能である。
【0060】
使用されるアルキレンオキシドおよびグリシジル化合物の種類、これらのエポキシド化合物の混合物の組成、並びにDMC触媒によるアルコキシル化プロセス中のそれらの添加の順序は、ポリエーテルアルコールの所望の使用目的に依る。
【0061】
本発明に従って特許請求の範囲に記載される反応用の反応器として、原則的に、反応および存在するその反応の発熱性を制御し得る全ての好適なタイプの反応器とすることができる。
【0062】
反応は、プロセス技術で知られている様式で、連続的に、半連続的に、またはバッチ式に実施することができ、存在する製造技術装置に柔軟に合せることができる。
【0063】
慣用の攪拌槽反応器に加え、気相および例えばEP−A−0 419 419に記載されているような外部熱交換器またはWO01/62826に記載されているような内部熱交換管を備えるジェットループ反応器(jet loop reactor)も使用することができる。さらに、気相のないループ反応器を使用することができる。
【0064】
反応物の測定供給による添加時に、化学反応に関与する物質、すなわち、アルキレンオキシドまたはグリシジル化合物、出発物、DMC触媒、妥当な場合には懸濁媒、および本発明による添加剤の十分な分散が必要である。
【0065】
アルキレンオキシドの添加およびアルキレンオキシドの変換を完了するために連続して行われる任意の反応の後、生成物を処理することができる。ここで必要な処理は、原則的に、未反応のアルキレンオキシドおよび任意の別の揮発性構成成分を一般には真空蒸留、水蒸気またはガスストリッピング、または別の脱臭方法により除去するだけである。揮発性副次成分は、バッチ式でも連続的でも除去することができる。DMC触媒に基づく本発明による方法では、慣用の塩基触媒によるアルコキシル化とは対照的に、通常、ろ過なしで行うことができる。
【0066】
必要な場合、DMC触媒を最終物ポリエーテルアルコールから除去することが可能である。しかしながら、ほとんどの使用分野では、それはポリエーテルアルコール中に残存し得る。例えば、WO01/38421に記載されているようにDMC触媒を除いて再使用することは、好ましくはないが原則的に可能である。しかし、この方法は、通常、ポリエーテルアルコールの工業的規模の生産には複雑すぎる。
【0067】
アルキレンオキシド化合物、一般的用語で言うとエポキシド化合物は、好ましくは60〜250℃の温度で、好ましくは90〜160℃の温度で、特に好ましくは100〜130℃の温度で行われる。アルコキシル化が行われる圧力は、好ましくは0.02バール〜100バール、好ましくは0.05〜20バール(絶対圧)である。減圧下でアルコキシル化を行うゆえに、非常に高い信頼性をもって反応を行うことができる。妥当な場合に、アルコキシル化を不活性ガス(例えば、窒素)の存在下および高圧でも行うことができる。
【0068】
方法の工程は、同一温度または異なる温度で実施することができる。反応開始時に反応器に供給される出発物質、DMC触媒、および任意選択により添加剤の混合物を、アルキレンオキシドの測定添加を開始する前にWO98/52689の教示に従ってストリッピングにより前処理することができる。この場合に、不活性ガスを反応供給口を通して反応混合物に添加し、反応器系に付けられた真空設備を用いて減圧にすることにより比較的揮発性の成分を反応混合物から除去する。この簡単な方法で、反応混合物から、触媒を阻害し得る物質、例えば低級アルコールまたは水などを除去することができる。反応物質の添加または副反応によっても阻害化合物が反応混合物中に入り得るため、不活性ガスを添加し、同時に揮発性成分を除去することは特に反応の開始時に有利なものとなり得る。
【0069】
用いるDMC触媒は、全ての既知DMC触媒であってもよく、好ましくは亜鉛およびコバルトを有するもの、より好ましくはヘキサシアノコバルト酸亜鉛(III)を有するものである。US5,158,922、米国特許出願公開第2003/0119663、WO01/80994、または前述の文献に記載されているDMC触媒が使用されることが好ましい。触媒は非晶質であっても結晶性であってもよい。
【0070】
反応混合物中、触媒濃度は、好ましくは約>0〜1.000wppm(質量ppm)、好ましくは約>0〜500wppm、より好ましくは0.1〜100wppm、および最も好ましくは約1〜50wppmである。この濃度は、ポリエーテルポリオールの総質量に基づく。
【0071】
触媒を反応器に計測供給するのは1回だけであることが好ましい。触媒量は、本方法に十分な触媒活性があるように製造しなければならない。触媒は、固体としてまたは触媒懸濁液の形態で測定することができる。懸濁液を使用する場合、特に出発ポリエーテルが懸濁媒として好適である。しかし、懸濁液を用いることなく行われることが好ましい。
【実施例】
【0072】
付随の実施例は、あくまでも例示であって、決して本発明の対象を制限するものではない。
【0073】
GPC測定のパーセント値および絶対値は、典型的なGPC測定に基づく:カラムの組み合わせ SDV1000/10000オングストローム(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてのTHF、流速1ml/分、試料濃度10g/l、RI検出器、ポリエチレングリコール基準に対する分析。
【0074】
添加剤を添加した本発明の方法によるポリプロピレングリコールの製造
実施例1a:
まず、3リットルのオートクレーブにポリプロピレングリコール(重量平均モル質量M=2000g/mol)215.7g、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.03g、および4.5eq/kgのSiH含有量を有するヘプタメチルヒドロトリシロキサン(Rhodia)(CAS[1873−88−7])5.9gを窒素下で供給し、攪拌しながら130℃に加熱する。存在する任意の揮発性成分を除去するため、反応器を30ミリバールの内圧まで排気する。DMC触媒の活性化のため、プロピレンオキシド40.0g部を添加する。反応が開始し、内圧の低下が起こった後、更にプロピレンオキシド944gを、冷却しながら、連続的に、60分以内に、130℃および最大1.5バールの反応器内圧で計量供給する。130℃で30分の連続反応の後、脱気段階とする。ここで、残存するプロピレンオキシドなどの揮発性成分を減圧下130℃での蒸留により除去する。最終物ポリエーテルを80℃未満に冷却し、反応器から取り出す。
【0075】
得られた長鎖ポリプロピレングリコールは、OH数10.2mgKOH/g、粘度(25℃)10,400mPas、およびGPCによる多分散性M/M1.8(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0076】
1a)に対する添加剤を添加しない比較実験(本発明ではない)
実施例1b:
実施例1aと同様に実施される別の対照実験において、現在までの従来技術に従い、アルコキシル化の開始時にポリプロピレングリコール/DMC触媒混合物に添加剤を添加しない。
【0077】
得られた長鎖低粘度ポリプロピレングリコールは、OH数9.8mgKOH/g、粘度(25℃)7,100mPas、およびGPCによる多分散性M/M1.4(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0078】
【表1】

【0079】
添加剤を添加した本発明の方法によるエチレンオキシド/プロピレンオキシド混合物に基づくポリエーテルの製造
実施例2a:
まず、3リットルのオートクレーブにポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(重量平均モル質量M=400g/mol)180.0g、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛DMC触媒0.08g、および4.5eq/kgのSiH含有量を有するヘプタメチル水素トリシロキサン(Rhodia)(CAS[1873−88−7])5.25gを窒素下で供給し、攪拌しながら130℃に加熱する。存在する任意の揮発性成分を除去するため、反応器を30ミリバールの内圧まで排気する。DMC触媒の活性化のため、プロピレンオキシド36.0g部を供給した。反応が開始し、内圧の低下が起こった後、エチレンオキシド396gおよびプロピレンオキシド1269gを混合物として、冷却しながら、連続的に、90分以内で、130℃および最大1.5バールの反応器内圧にて計量供給する。130℃での30分間の連続的反応の後、脱気段階とする。ここで、残存するプロピレンオキシドなどの揮発分を減圧下130℃で蒸留により除去する。最終物ポリエーテルを60℃未満に冷却し、反応器から取り出す。
【0080】
得られたアリルポリエーテルは、OH数13.5mgKOH/g、およびGPCによる多分散性M/M1.5(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0081】
実施例2b:
実施例2aと同様に実施される実験において、アルコキシル化の開始時に、添加剤である4.5eq/kgのSiH含有量を有するヘプタメチル水素トリシロキサン(Rhodia)(CAS[1873−88−7])4.10gをポリプロピレングリコール−モノアリルエーテル/DMC触媒混合物に添加する。
【0082】
得られたアリルポリエーテルは、OH数13.4mgKOH/g、およびGPCによる多分散性M/M1.3(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0083】
実施例2c:
実施例2aと同様に実施される実験において、添加剤である2.75eq/kgのSiH含有量を有するα,ω−ジヒドロポリジメチルシロキサン5.0gを、ポリプロピレングリコール−モノアリルエーテル/DMC触媒混合物にアルコキシル化の開始時に添加する。
【0084】
得られたアリルポリエーテルは、OH数13.5mgKOH/g、およびGPCによる多分散性M/M1.5(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0085】
実施例2d:
実施例2aと同様に実施される実験において、アルコキシル化の開始時に、2.5eq/kgのSiH含有量を有するポリ(メチルヒドロ)−ポリ(ジメチルシロキサン)共重合体6.2gを添加剤としてポリプロピレングリコールモノアリルエーテル/DMC触媒混合物に添加する。
【0086】
得られたアリルポリエーテルは、OH数13.4mgKOH/g、およびGPCによる多分散性M/M1.5(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0087】
2a〜d)に対する添加剤を添加しない比較実験(本発明ではない)
実施例2e:
実施例2aと同様に実施される別の対照実験において、現在までの従来技術に従い、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル/DMC触媒混合物にアルコキシル化の開始時に添加剤を添加しない。
【0088】
得られたアリルポリエーテルは、OH数13.4mgKOH/g、およびGPCによる低い多分散性Mw/Mn1.05(ポリプロピレングリコール基準に対して)を有する。
【0089】
実験一覧2は、実験2a)、2c)、および2d)で添加剤を用いることによる多分散性が参照実験2e)と比較して0.45ポイントまたは42.8パーセント高いことを示している。実験2b)では、多分散性は、参照実験2e)と比較して0.25ポイントまたは23.8パーセント高い。
【0090】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属シアン化物触媒(DMC触媒)を用いた重合によるポリエーテルアルコールの製造方法であって、一置換または複数置換されていてもよく、かつ、1つのケイ素原子に結合している1つ以上の水素原子を有する化合物からなる任意選択により混合された1種以上の添加剤が、Si−H添加剤として、OH官能性出発混合物および前記DMC触媒を含む出発反応混合物に重合前または重合中に添加されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記生成されたポリエーテルオールの多分散性Mw/Mnが、前記Si−H添加剤なしでその他は同じ反応条件の下で生成されたポリエーテルと比較して高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成されたポリエーテルオールの多分散性が、前記Si−H添加剤なしで行った方法と比較して少なくとも10パーセント高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多分散性Mw/Mnの絶対値が、前記Si−H添加剤なしで行った方法と比較して少なくとも0.1高いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記Si−H添加剤が、式(I)
R’’’Si (I)、
(式中、R’’’は、炭素数1〜40の直鎖または分岐鎖かつ飽和または一不飽和若しくは多不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アルキルシリル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基、または炭素数1〜20のハロアルキル基から選択される1つ以上の同じかまたは異なる基であり、
aは、1〜3の整数であり、
bは、1〜3の整数であり、
但し、aとbとの合計が4に等しく、ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子が分子中に存在することを条件とする)で表されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエーテルアルコールの製造方法。
【請求項6】
用いる式(I)のケイ素−水素化合物が、モノメチルシラン、ジメチルシラン、およびトリメチルシラン、モノエチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、モノプロピルシラン、ジプロピルシラン、トリプロピルシラン、モノフェニルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシラン、フェニルメチルシラン、およびフェニルエチルシラン、フェニルジメチルシラン、およびフェニルジエチルシラン、モノメトキシシラン、ジメトキシシラン、およびトリメトキシシラン、および、モノエトキシシラン、ジエトキシシラン、およびトリエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、またはトリス(トリメチルシリル)シランであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載のポリエーテルアルコールの製造方法。
【請求項7】
用いるSi−H添加剤が、ヒドロシロキサンまたは一般式(II)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜40の直鎖または分岐鎖かつ飽和または一不飽和若しくは多不飽和のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基、炭素数1〜20のハロアルキル基、またはシロキシ基およびトリオルガノシロキシ基から選択される1つ以上の同じかまたは異なる基であり、
式中、R’およびR”は、各々独立して、HまたはRであり、
xは、0〜600の整数であり、
yは、0〜100の整数であり、
但し、ケイ素原子に結合している少なくとも1つの水素原子が分子中に存在することを条件とする)で表されるポリオルガノシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエーテルアルコールの製造方法。
【請求項8】
式(Va)または(Vb)
−[(CR−CR−O)H]
(Va)
またはR−[(CR−CR−O)H]

−[(CHR−CH(CHOR)−O)H]
(Vb)
またはR−[(CH(CHOR)−CHR−O)H]
(式中、Rは、ヒドロキシル基または少なくとも1つの炭素原子を有する基であり、
mは1〜8であり、nは1〜12,000であり、
またはRおよびRまたはRは、共にまたは独立して、H、あるいは飽和または任意選択により一不飽和若しくは多不飽和であり、任意選択により1価または多価であり、さらに置換されていてもよい炭化水素基であり;ここで、前記R基およびR基は、各々、1価の炭化水素基である)で表されるポリエーテルアルコールが製造されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリエーテルアルコールの製造方法。
【請求項9】
式(IIIa)または(IIIb)
【化5】

(式中、RまたはR並びにRまたはRは、共にまたは独立して、H、あるいは飽和、または任意選択により一不飽和若しくは多不飽和であり、任意選択により1価または多価であり、さらに置換されていてもよい炭化水素基であり、ここで、前記R基およびR基は、各々、1価の炭化水素基であり、前記炭化水素基は脂環式にフラグメントYを介して架橋されていてもよく、ここで、Yは0、1または2個のメチレン単位を有するメチレン架橋であってもよい)で表されるアルキレンオキシド、または一般式(IIIb)
【化6】

(式中、少なくとも1つのグリシジルオキシプロピル基が、エーテルまたはエステル官能基Rを介して、炭素数1〜24の直鎖または分岐鎖アルキル基、芳香族基、または脂環式基に結合している)で表されるグリシジルエーテルおよび/またはグリシジルエステルなどのグリシジル化合物を出発化合物R−H(IV)(式中、Rはヒドロキシル基または少なくとも1つの炭素原子を有する基のいずれかである)に重合させることにより、
式(Va)または(Vb)
−[(CR−CR−O)H]
(Va)
またはR−[(CR−CR−O)H]

−[(CHR−CH(CHOR)−O)H]
(Vb)
またはR−[(CH(CHOR)−CHR−O)H]
(式中、Rは、ヒドロキシル基または少なくとも1つの炭素原子を有する基のいずれかであり、mは1〜8であり、nは1〜12,000である)で表されるポリエーテルアルコールおよびこれらの混合物を製造する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(IIIa)中の2つの基RまたはRの少なくとも1つが水素であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の、式(Va)または(Vb)のポリエーテルオールの製造方法。
【請求項11】
用いる式(IIIa)または(IIIb)で表されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、またはビニルシクロへキセンオキシド、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリエーテルアルコールの製造方法。
【請求項12】
8.000g/mol未満の平均モル質量を有し、かつ、アリルアルコール、ヘキサノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、および/またはグリセロールなどの出発アルコールに基づく前記ポリエーテルアルコールが、1.2以上の多分散性を有することを特徴する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
8.000g/mol未満の平均モル質量を有する前記ポリエーテルアルコールが、1.4以上の多分散性を有することを特徴する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法によって製造された、増加した多分散性を有する、式(Va)および(Vb)
−[(CR−CR−O)H]
(Va)
またはR−[(CR−CR−O)H]
−[(CHR−CH(CHOR)−O)H]
(Vb)
またはR−[(CH(CHOR)−CHR−O)H]
(式中、Rは、ヒドロキシル基または有機出発化合物の基を表し、少なくとも1つの炭素原子を有する基であり、mは1〜8であり、nは0〜12,000であり、RまたはRおよびRまたはRは、各々、H、あるいは飽和、または任意選択により一不飽和若しくは多不飽和であり、任意選択により1価または多価であり、さらに置換されていてもよい炭化水素基であり、ここで、前記R基およびR基は、各々、1価の炭化水素基であり、前記炭化水素基は脂環式であってもよい)で表されるポリエーテルアルコール(ここで、前記ポリエーテルアルコールの多分散性は、Si−H添加剤を用いずに同じ反応条件を用いて製造されたポリエーテルアルコールと比較して高い)およびこれらの混合物を含む組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の、式(Va)または(Vb)
−[(CR−CR−O)H]
(Va)
またはR−[(CR−CR−O)H]
−[(CHR−CH(CHOR)−O)H]
(Vb)
またはR−[(CH(CHOR)−CHR−O)H]
(式中、mは1〜6であり、nは1〜800である)で表されるポリエーテルアルコールおよびこれらの混合物を含む組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、式(Va)および(Vb)で表されるポリエーテルアルコールを使用したポリウレタンの製造。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、式(Va)および(Vb)で表されるポリエーテルアルコールを使用したポリエーテルシロキサンの製造。
【請求項18】
請求項1〜13に記載のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、式(Va)および(Vb)で表されるポリエーテルアルコールを使用した界面活性物質または界面活性剤の製造。

【公開番号】特開2009−138192(P2009−138192A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−302123(P2008−302123)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】