説明

Swine−origininfluenzaA(H1N1)pdmウイルスを抑制する方法

【課題】帯電微粒子液によって新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスの抑制を図る。
【解決手段】水を静電霧化させて生成したラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液を生成し、新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスに対して暴露させ、当該Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化技術を用いて帯電微粒子液を生成し、ウイルス等に暴露する感染管理技術に関するものでる。
【背景技術】
【0002】
2009年4月にメキシコで発生した新型インフルエンザ(Swine-origin influenza A(H1N1)pdm)は、日々、その感染者を拡大し、大きな社会問題となってきている。
【0003】
これに対し、イオン発生機や薬品を用いてウイルスを抑制する感染対策が注目されている。
【0004】
本願の出願人は、2003年に、静電霧化技術を用いて帯電微粒子液を生成し、当該帯電微粒子液が、除菌の他、ウイルス抑制に効果があることを検証し、特許出願(特許文献1、特許文献2)をおこなっている。特に、特許文献2においては、インフルエンザ等のウイルス抑制にも効果があることを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−66586号公報
【特許文献2】特開2008−184322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスについて、効果があることを明示した文献等は知られていない。
【0007】
本願は、上記問題点に鑑みて発明したものであり、その目的とするところは、帯電微粒子液によって新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスの抑制を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、水を静電霧化させて生成したラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液を生成し、新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスに対して暴露させ、当該Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスを抑制する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、Swine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスに対して暴露させ、当該Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスの99%が抑制され、当該Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスの感染防止に顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に用いる静電霧化装置の一実施形態の断面図である。
【図2】(a)(b)は同上の対向電極の実施形態を示す作用説明図である。
【図3】本発明のSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスの抑制の実施例に用いた静電霧化装置の具体例を示す説明図である。
【図4】ラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液をSwine-origin influenza A(H1N1)pdmに暴露する場合と、非暴露の場合とのウイルス力価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1にはラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液を生成するための静電霧化装置1の一例が示してある。
【0013】
静電霧化装置4は、棒状の放電電極1と、この放電電極1の先端1aから距離を隔てて位置すると共に放出孔5aを中央に有する対向電極5と、この放電電極1の先端に水等の静電霧化用の液体(図示せず)を供給する液体供給手段2と、放電電極1及び対向電極5に電気的に接続されて放電電極1と対向電極5間に高電圧を印加する高電圧印加手段3とを備えている。
【0014】
放電電極1に液を供給する液体供給手段2としては、例えば、空気中の水分を冷却することで生成した結露水を放電電極1に供給したり、あるいは、液溜め部に溜めた液を毛細管現象、あるいは加圧手段、あるいは、重力等を利用して放電電極1の先端に供給する等が考えられる。
【0015】
実施形態では液体供給手段3を、空気中の水分を冷却することで生成した結露水を放電電極1に供給する場合の一例が示してある。以下液体を水、帯電微粒子液を帯電微粒子水の例として説明する。
【0016】
添付図面に示す実施形態においてはペルチェユニット8のような熱交換器の冷却部8aにアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成する放電電極1の基端部1bが接続してあり、これによりペルチェユニット8の冷却部8aにより放電電極1を冷却し、これにより空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極1に水を供給するようになっている。
【0017】
放電電極1の先端1aに対向する対向電極5bは、放電電極1の先端1aを中心とする所定の曲率半径Rを有している。放電電極1aの先端1aを通過する平面でこの内曲面5bを切断した断面は、放電電極1の先端を中心とする半径Rの円弧状となっている。したがって、この内曲面5b全体と放電電極1の先端1aとの間には、三次元的に広い範囲で強力な磁界が生じる(図2(a)中の矢印参照)。
【0018】
更に、対向電極5に円形に開口する放出孔5aの周縁には、放電電極1から離れる方向(図中上方)に円筒形の筒状電極部7を延設している。筒状電極部7は、放出孔5aに連通する開口を一端(図中下側)に有し、外部空間に連通する吐出口7aを他端(図中上側)に有する。筒状電極部7が備えられることで、筒状電極部7の内面7b全体と放電電極1の先端1aとの間においても電界が生じるので、筒状電極部7が備えられない場合よりも広い範囲で強力な電界が生じる(図2(b)中の矢印参照)。
【0019】
筒部電極部7を有する対向電極5は、例えばSUS304等の金属からなる導電性物質を切削、曲げ加工等して一体に形成したものであるが、樹脂成形後に金属メッキを施して形成してもよいし、あるいは導電性プラスチック等の導電性物質を用いてもよい。
【0020】
上記構成の静電霧化装置4においては水供給手段2により放電電極1の先端1a側がマイナス電極となって電荷が集中するように放電電極1と対向電極5との間に高電圧を印加する。電圧の印加によって生じた電界により、放電電極1の先端に保持された水が帯電し、帯電した水にクーロン力が働き、水の液面が局所的に盛り上げる。
【0021】
この円錐状となった水(テイラーコーン)の先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となり、高密度の電化の反発力で弾けるようにして水が分裂、飛散(いわゆるレイリー分裂)を繰り返して静電霧化を生じる。静電霧化現象により、ラジカル(活性種)を含むナノメータサイズの帯電微粒子水が大量に生成され、イオン風に乗って放出孔5aから装置外へと放出される。
【0022】
ここで、筒状電極部7を有する対向電極5と放電電極1の先端1aとの間における広範な領域内で、非常に強力な電界が生じる。したがって、放電電極1の先端1aに電界が一極集中する度合いが非常に高くなり、放電電極1に保存する水に効率的に電荷が集中して、帯電微粒液を大量に発生する。
【0023】
加えて、大量に発生した帯電微粒子水は、放出孔5aから延設される筒状電極部7の内周面7bに引き寄せられるように放出孔5a内に導入され、そのままイオン風に乗って筒状電極部7内を通過し、吐出口7aから外部空間に向けて吐出される。
【0024】
つまり、対向電極5に更に筒状電極部7を延設してあることで、放電電極1の先端1aに対して電界を強力に一極集中させ、ラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子水を大量生成できると共に、この大量生成した帯電微粒子水を、対向電極5の内曲面5bに付着させることなく放出孔5aを通じて高効率で外部に放出することができる。結果として、ラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子水が、外部空間に大量に放出される。
【0025】
上記実施形態では、対向電極5を設けた例を示したが、本発明に用いる静電霧化装置4としては、対向電極5を設けることなく、放電電極1の先端部1aに供給された液体(水)に高電圧を印加することで、静電霧化をしてラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液(水)を生成するようにしたものを用いてもよい。
【0026】
本発明は、上記のようなラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液(水)を、新型インフルエンザであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスに対して暴露させ、当該Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスを抑制することである。
【0027】
以下、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0028】
(実施例)
ボックス(300mm×350mm×400mmからなる内容積約45リットル)内に、直径6cmのシャーレを置き、ボックス内において上記シャーレの直上に静電霧化装置4の放出口が位置してラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液(水)が暴露されるように、静電霧化装置4をボックスに配置した。ボックス内は温度25℃、湿度40%の環境とした。
【0029】
実施例で用いた静電霧化装置4としては図1に示すようなものを用いた。この図1に示す静電霧化装置4において、主要構成部及び主要構成部相互の具体的寸法関係は、図3に示すように、対向電極5の筒状電極部7の内径Dを5.0mm、筒状電極部7の軸方向の高さHを1.5mm、対向電極5の内曲面5bの放電電極1側に開口する開口部5c部分から筒状電極部7の放出口7aまでの高さLを4.0mm、放電電極1の先端1aから対向電極5の内曲面5bまでの距離Rを5.0mm、放電電極1の軸方向での対向電極5の下端5cと放電電極1の先端1a間の距離Lを2.25mmとした。また、印加電圧−5kV、電流6μAとした。そして、この実施例に用いた静電霧化装置4においては、上記の条件で、帯電微粒子水が1秒間に1×1014個以上発生する。
【0030】
シャーレには、発育鶏卵の尿膜腔内で、新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスを増殖させ、得られた尿腔液(ウイルス原液)を超純水で10倍希釈して実験用ウイルス液を得た。このようにして得た実験用ウイルス液をシャーレに2ミリリットル注入した。このようにして得た実験用ウイルスにおけるウイルスの力値は、およそ10の5.5乗であった。上記のようにして得た実験用ウイルス液を2ミリリットル注入したシャーレを、上記ボックス内の静電霧化装置4の放出口5aの直下に配置し、静電霧化装置4を6時間連続運転してラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子水を放出し続け、6時間帯電微粒子水をシャーレ内の実験用ウイルス液に暴露した。
【0031】
6時間の暴露した後、シャーレをボックスから取出し、帯電微粒子水に暴露後のウイルス液を回収し、10倍段階希釈して発育鶏卵に接種した。その後、3日目に観察された赤血球凝集反応を基にウイルス力値(50%発育鶏卵感染量;EID50/0.1ml)を算出したところ、ウイルス力価は、図4に示すように10の3.5乗となっており、当該ウイルスが99%抑制されることが判明した。
(比較例)
上記実施例に用いたボックスと同じボックス内に、実施例と同様にして得た実験用ウイルス液(ウイルスの力値が、およそ10の5.5乗)を2ミリリットル注入したシャーレを入れ、静電霧化装置4を運転することなく、帯電微粒子水の非暴露状態で6時間放置した。このように非暴露状態で6時間経過後、シャーレをボックスから取出し、ウイルス液を回収し、10倍段階希釈して発育鶏卵に接種した。その後、3日目に観察された赤血球凝集反応を基にウイルス力値(50%発育鶏卵感染量;EID50/0.1ml)を算出したところ、ウイルス力価は、図4に示すように10の5.5乗のままであった。
【0032】
上記実施例、比較例から明らかなように、ラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子液を、新型インフルエンザウイルスであるSwine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスに暴露することでSwine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスの抑制効果があることが判明した。
【符号の説明】
【0033】
1 放電電極
2 液体供給手段
3 高電圧印加手段
4 静電霧化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Swine-origininfluenza A(H1N1)pdmウイルスに対して、ラジカルを含むナノメータサイズの帯電微粒子水を暴露させることにより、当該Swine-origin influenza A(H1N1)pdmウイルスを抑制する方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−62308(P2011−62308A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214752(P2009−214752)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】