説明

TF結合薬剤及びそれらの使用

【課題】TF結合薬剤及びそれらの使用
【解決手段】本発明は、組織因子に結合する新規の化合物に関し、また、診断及び/又は治療の目的のためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織因子に結合する新規の化合物及びそれらの診断マーカーとしての使用に関する。また、本発明は、該新規の化合物を含む薬学的組成物、並びに、出血、癌、炎症、アテローム性動脈硬化症及び虚血/再灌流を含む、組織因子(TF)に関わる病理学に関する疾患又は障害の診断、予防又は治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
急性の胃腸管系出血の患者の医学的及び外科的対応は改善されているが、内視鏡検査、血管造影法、及び診査的開腹術のような現在の技術にも関わらず、出血部位又は器官の同定はときに非常に困難である。99mTc-標識化アルブミン又は赤血球細胞の、出血のシンチグラフィーのための使用は、重症の急性胃腸管出血で時折役立つが、しかし、出血速度が1 mL/分を超える時のみである。現在のシンチグラフィー追跡による出血部位の位置確認の成功は、トレーサーの静脈内注入の後の最初の1〜1・1/2時間の間の活性出血に依存し、そしてその記録手法は、時間を消費し(60〜90分の動的画像処理、及びその後の試みで)、それらの患者の多くの重篤な状態を悪化させる。急性胃腸管出血における簡単で迅速、安全、非-観血的な診断手段の必要性は明らかであり、患者の結果を極めて改善し得る。
【0003】
凝固は、FVIIaの細胞表面受容体と障害部位の組織因子(TF)によるFVIIa複合体の形成によって開始される。組織因子は、血漿凝固因子VIIa(FVIIa)のための細胞膜貫通受容体であり、細胞表面でTF/FVIIa複合体を形成し、これはインビボでの凝固カスケードのきっかけとなる。TF/FVIIa複合体は、凝固因子IX及びXを効率的に活性化させる。得られたプロテアーゼ因子Xa(FXa)は、プロトロンビンをトロンビンに活性化し、これはフィブリノーゲンをフィブリンマトリクスへ転換する。
【0004】
通常、TFは、例えば、フィブロブラスト、周皮細胞、平滑筋細胞、及び上皮性細胞のような血液と接触しない多くの血管外細胞タイプの表面に恒常的に発現されるが、しかし、内皮細胞及び単球のような血液と接触する細胞の表面には発現しない。しかしながら、TFは、癌、炎症、アテローム性動脈硬化症、及び虚血/再灌流における疾患状態の進行に関与すると信じられている種々の病態生理条件においても発現される。従って、TFは現在、上昇する発現に関係する状態において治療的処置の標的として認識されている。
【0005】
FVIIaは、二本鎖であり、50キロダルトン(kDa)のビタミン-K依存性の、インビボでの止血の複合制御に関与する血漿セリンプロテアーゼである。FVIIaは、そのシングル鎖チモーゲン 因子VII(FVII)からシングルペプチド結合のタンパク質分解によって生じ、これは、約0.5μg/mlで血漿中に存在する。このチモーゲンは触媒的に不活性である。チモーゲンFVIIの、活性化二本鎖分子への転換は、内部ペプチド結合の切断によって生じる。カルシウムイオンの存在下において、FVIIaは高い親和性により露出したTFへ結合し、これは、FVIIaのためのコファクターとして作用し、その基質FVII、因子IX及びFXのタンパク質分解活性を増強する。
【0006】
凝固プロセスの発動因子としてのその確立された役割に加えて、TFは近年、TFの細胞質内ドメインと細胞骨格との相互作用による、或いは、FVIIa-プロテアーゼ依存性情報伝達の補助による、細胞内活性のメディエーターとしての機能を示している。そのような活性は、少なくとも部分的には、腫瘍発達、転移、及び血管新生と結びつけられるTFの役割の原因である。TF活性の細胞曝露は血管障害の危機において有利であるが、しかし曝露がそれらの種々の疾患状態において維持されると致命的である。従って、TF機能の発現の制御は、健康の維持において重大な意味を持つ。
【0007】
放射能標識TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、ガンマカメラ、PETカメラ又はPET/CTカメラによる画像診断にとって、特に腫瘍細胞のTF発現の評価にとって、TF受容体を発現すると知られている腫瘍細胞の悪性度の段階づけにとって、従来の化学療法又は放射線治療の間のTF発現による腫瘍のモニタリングにとって役立つ。また、アルファ-又はベータ-放射性同位体で標識されたTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、治療のために、恐らくは化学療法的作用を有する化合物に二-特異的に結合され、これはTF受容体の存在に関連し得る。これらのケースにおいて画像診断は、TF受容体結合薬による治療の後の腫瘍の応答を観察するために重要である。
【0008】
表面の接近可能な(accessible)TF受容体の発現の上昇を伴う他の種類の疾患、恐らく炎症性又は自己免疫疾患も観察することができ、ここで、放射能標識されたTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストが診断及び治療の両方へ適用されることは妥当である。
【0009】
TFアンタゴニストの一例である、不活性化されたFVII(FVIIai)は、触媒的に不活性であるように改変されたFVIIaである。従って、FVIIaiはFXのFXaへの転換、又はFIXのFIXaへの転換を触媒できず、それでも活性内在性FVIIaと競合してTFに固く結合することができ、それ故TF機能を阻害することができる。
【0010】
国際特許出願WO 92/15686、WO 94/27631、WO 96/12800、WO 97/47651は、FVIIai に関し、またそれらの使用に関する。国際特許出願WO 90/03390、WO 95/00541、WO 96/18653、及び欧州特許EP 500800 は、TF/FVIIaアンタゴニスト活性を有するFVIIaに由来するペプチドを開示している。国際特許出願WO 01/21661 は、FVII 及びFXaの、二価の阻害剤に関する。
【0011】
Hu Z 及び Garen A (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98; 12180-12185、Hu Z 及び Garen A (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97; 9221-9225、Hu Z 及び Garen A (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96; 8161-8166、及び国際特許出願WO 0102439 は、ヒトIgG1 免疫グロブリンのFc 領域を含む免疫複合体、及び、FVIIポリペプチド変異体に関し、これは、TFに結合するが血液凝固を開始しない。
【0012】
さらに、国際特許出願WO 98/03632は、一以上のG−結合受容体に親和性を有する二価のアゴニストを開示しており、また、Burgess、L.E. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96、8348-8352 (July 1999)は、「ヒト肺トリプターゼの強力な選択性非ペプチド阻害剤」を開示している。
【0013】
当該分野ではなお、比較的低用量で効率的に病態生理学的なTF機能を阻害し、また、望ましくない副作用を生じない、改良された化合物に対する要求がある。本発明は、生理学的なTF機能において特異的に作用し、同時に、診断ツールとして有用な化合物を提供する。或いは、本発明は、改良された化合物を提供し、これは、凝固を促進し、同時に、診断ツールとして有用である。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストの接合体に関し、例えば、凝固システムの病態生理学的な機能による又はよらない急性又は断続的な胃腸管出血障害の起源のシンチグラフィー的位置確認のための診断ツールとして、或いは、TH−結合受容体の高発現を伴う腫瘍の位置確認のため、又は、細胞外コンパートメントからのTF結合受容体の発現及び到達性(accessability)による既知の腫瘍の特徴づけのため、又は、センチネルリンパ節への悪性播種の診断のための、診断ツールとしても有用である。この接合体は、高親和性と特異性をもってTFに結合する。本発明の一つの態様において、TF結合剤は、TFアンタゴニストであり、これは、血液凝固を開始しない。本発明の一つの態様において、TFアンタゴニストは、その活性部位で化学的に不活性化されたFVIIaポリペプチドである。本発明の他の態様において、TFアンタゴニストは、TFに対する抗体である。一つの態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。一つの態様において、抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。一つの態様において、抗体は、ヒトTFに対する抗体である。
【0015】
ヒトTFに対するヒト抗体の調製方法は、国際特許出願公開番号WO 03/029295及び国際特許出願番号PCT DK03/00741 に開示されており、それらの内容は全て参考として本明細書に援用される。
【0016】
該接合体は、検出可能な発光を提供する官能基を含む。これは、例えば、TF発現細胞、例えばTF発現標的細胞における(腫瘍)組織の多さ、又は曝露されたTF発現細胞による内部出血などのTFの同定及び位置確認を可能にする。
【0017】
「TFアンタゴニスト」という用語は、ここで用いられる場合、TFに直接結合して、FXa産生アッセイ(アッセイ1)においてFXのFXaへの転換を阻害する任意の化合物を意味するように意図される。TFアンタゴニストの例には、これに限定されないが、FVIIai及びTFに対する阻害性抗体が含まれる。
【0018】
「TFアゴニスト」という用語は、ここで用いられる場合、FXa産生アッセイ(アッセイ1)において、FXのFXaへの転換を阻害することなくTFに直接結合する任意の化合物を意味するように意図される。本発明の一つの態様において、TFアゴニストはFVIIである。本発明の一つの態様において、TFアゴニストはFVIIaである。本発明の一つの態様において、TFアゴニストは因子VII-関連ポリペプチドである。本発明の一つの態様において、TFアゴニストは天然のヒトFVIIa又はそれらの変異体である。さらなる態様において、TFアゴニストは、FVIIa等価物である。
【0019】
ここで用いられるように、「因子VII」又は「FVII」は、野生型因子VII(即ち、米国特許第4,784,950号に開示されているアミノ酸配列を有するポリペプチド)、並びに、野生型因子VIIに対して実質的に同じか又は改良された生物活性を示す因子VIIのポリペプチド変異体を包含する。「因子VII」という用語は、非切断(チモーゲン)形態での因子VIIポリペプチド、並びに、タンパク分解的に処理されてそれらのそれぞれの生理活性形態を産する因子VIIポリペプチド(これは因子VIIaと命名される)を包含するよう意図される。典型的には、因子VIIは残基152及び153の間で切断されて因子VIIaを産する。
【0020】
「因子VIIa」又は「FVIIa」という用語は、これに限定されないが、野生型ヒト因子VIIa(米国特許第4,784,950号に開示されているように)のアミノ酸配列1〜406を有するポリペプチド、並びに、例えばウシ、ブタ、イヌ、マウス、及びサケの因子VIIaのような他の種に由来する野生型因子VIIaを包含するよう意図される。それはさらに、ある個体から他の個体に存在し生じ得る、因子VIIaの天然の対立遺伝子の変異を包含する。また、グリコシル化又は他の翻訳後修飾の程度及び位置は、選択された宿主細胞、及び該宿主細胞の環境の性質に依存して変動する。
【0021】
「変異体」という用語は、ここで用いられる場合、配列番号:1の配列を有するヒト因子VIIを示すように意図され、ここにおいて、親タンパクの一以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されている、及び/又は、親タンパクの一以上のアミノ酸が欠失している、及び/又は、一以上のアミノ酸がタンパク質に挿入されている、及び/又は、一以上のアミノ酸が親タンパクに加えられている。そのような添加は、親タンパクのN末端又はC末端の何れか、或いはその双方で起こり得る。本発明の一つの態様において、該変異体はアミノ酸置換及び/又は付加及び/又は欠失の総量は、1,2,3,4,5,6,7,8,9及び10から成る群から独立的に選択される。
【0022】
ここで用いられる場合、「因子VII関連ポリペプチド」は、因子VIIa生物活性が、野生型因子VIIaの活性に対して実質的に改変されたか又は減少されたポリペプチド変異体を含むポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドは、これに限定されないが、特異的アミノ酸配列変化が導入されて、ポリペプチドの生理活性が改変したか又は乱された、因子VII又は因子VIIaを含む。血液凝固における因子VIIaの生物活性は、(i)組織因子(TF)に結合するその能力、及び(ii)因子IX又は因子Xをタンパク分解的に切断して活性化された因子IX又はX(それぞれ因子IXa又はXa)の生成を触媒する能力に由来する。本発明の目的のために、因子VIIa生物活性は、例えば米国特許第5,997,864号に開示されているように、因子VII欠失血漿及びトロンボプラスチンを用いて、製剤の血液凝固を促進する能力を測定することによって数量化することができる。このアッセイでは、生物活性は、コントロールのサンプルと比較した凝固時間の減少として表され、1ユニット/mlの因子VII活性を含むヒトのプール血清標準と比較した「因子VIIユニット」に変換される。或いは、因子VIIa生物活性は、(i)脂質膜に包埋されたTF及び因子Xを含むシステム中で、因子Xaを生成させる因子VIIaの能力を測定することによって(Persson et al.、J. Biol. Chem. 272:19919-19924、1997);(ii)水性システム中での因子Xの加水分解を測定することによって;(iii)表面プラスモン共鳴に基づく機器を用いて、TFへの物理的な結合を測定することによって(Persson、FEBS Letts. 413:359-363、1997)、及び(iv)合成基質の加水分解を測定することによって、数量化されることができる。
【0023】
野生型の因子VIIaと比較して実質的に同じであるか又は改良された生物活性を有する因子VII変異体は、上記した凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞タイプで生成された因子VIIaの比活性の少なくとも約25%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%を示すものを包含する。野生型因子VIIaと比較して実質的に減少した生物活性を有する因子VII変異体は、上記した凝固アッセイ、タンパク質分解アッセイ、又はTF結合アッセイの一以上で試験したとき、同じ細胞タイプで生成された野生型因子VIIaの比活性の約25%より少ない、好ましくは約10%より少ない、より好ましくは約5%より少ない、最も好ましくは約1%より少ない比活性を示すものである。野生型因子VIIと比較して実質的に改変された生物活性を有する因子VIIは、これに限定されないが、TF非依存性の因子Xのタンパク分解活性を示す因子VII変異体、及び、TFに結合するが因子Xを切断しないものを含む。
【0024】
因子VIIの変異体は、野生型因子VIIと実質的に同じか又はそれより良い生理活性を示すかどうか、あるいは、野生型VIIと比較して実質的に改変されたか又は減少された生理活性を示すかどうかに関わらず、これに限定されないが、野生型因子VIIの配列と、一以上のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換によって異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0025】
野生型因子VIIと実質的に同じ生物活性を有する因子VII変異体の非限定的な例は、S52A-FVIIa、S60A-FVIIa (Lino et al.、Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192、1998);米国特許第5,580,560に開示されているような、上昇されたタンパク分解安定性を示すFVIIa変異体; 残基290及び291の間で、又は残基315及び316の間でタンパク分解的に切断された因子VIIa(Mollerup et al.、Biotechnol. Bioeng. 48:501-505、1995);酸化型の形態の因子VIIa (Kornfelt et al.、Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54、1999); 因子VII変異体の他の非限定的な例は、国際特許出願WO 02/077218で開示されているようなFVII変異体を含む; 及び、WO 02/38162 (Scripps Research Institute)に開示されているようなFVII変異体; WO 99/20767及びWO 00/66753 (ミネソタ大学)に開示されているような、修飾されたGlaドメインを有し、増強された膜結合を示すFVII変異体;及びWO 01/58935 (Maxygen ApS)及びWO 02/02764 (ミネソタ大学)に開示されているようなFVII変異体を含む。
【0026】
野生型因子VIIと比較して実質的に減少されたか又は改変された生物活性を有する因子VII変異体の非限定的な例は、R152E-FVIIa (Wildgoose et al.、Biochem 29:3413-3420、1990)、S344A-FVIIa (Kazama et al.、J. Biol. Chem. 270:66-72、1995)、FFR-FVIIa (Holst et al.、Eur. J. Vasc. Endovasc. Surg. 15:515-520、1998)、及びGlaドメインを欠失した因子VIIa(Nicolaisen et al.、FEBS Letts. 317:245-249、1993)を含む。
【0027】
野生型FVIIと比べて上昇した生物活性を有するFVII変異体の非限定的な例は、国際特許出願WO 01/83725、WO 02/22776、WO 03/027147、WO 03/037932、WO 04/000366、WO 02/38162 (Scripps Research Institute)、国際特許出願番号PCT/DK03/00625に開示されたようなFVII変異体;及び、JP 2001061479 (Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示されたような増強された活性を有するFVIIa変異体を含む。
【0028】
因子VII又は因子VII関連ポリペプチドの例は、これに限定されないが、
野生型因子VII、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、 V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、及び S336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S52A-因子VII、S60A-因子VII; R152E-因子VII、S344A-因子VII、Glaドメイン欠失因子VIIa; 及び P11Q/K33E-FVII、T106N-FVII、K143N/N145T-FVII、V253N-FVII、R290N/A292T-FVII、G291N-FVII、R315N/V317T-FVII、K143N/N145T/R315N/V317T-FVII; 及びアミノ酸配列の233Thrから240Asnにおいて、置換、付加又は欠失を有するFVII、
アミノ酸配列の304Argから 329Cysにおいて、置換、付加、又は欠失を有するFVIIを含む。
【0029】
現在、TFアンタゴニストは、ヒトで治療的に使用するためには開発も市販もされていない。既知の治療的ストラテジーは、モノクローナル抗体、触媒的に障害性のFVIIa突然変異体及び化学的不活性化されたFVIIaを含む。天然のFVIIaはTFと高親和性で結合し、アミノ酸置換を有する殆どの突然変異体及びモノクローナル抗体は、同じか又は減少した親和性で結合することを期待される。TFへの低い親和性は、臨床での有効的使用を制限する。化学的に不活性化されたFVIIaは、天然のFVIIaと比べて適度に上昇したTFへの親和性を有すると報告されている。
【0030】
報告されたFVIIaの不活性突然変異体並びに化学的に不活性化されたFVIIaは、循環している天然のFVIIと比べて短い半減期を有すること、即ち、2〜3時間であることが期待され、これは診療における有効な使用を制限し得る。
【0031】
本発明は、放射性核種を含む化合物に結合した、放射能標識されたTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストに関する。その接合体がTFの存在する細胞に結合するか又はTFの存在する細胞の増殖を死滅させるか又は停止させることは、理解されるべきである。「TFの存在する細胞」という語は、ここで用いられる場合、細胞表面血漿膜上におけるTFの存在を意味する。TFは、細胞の膜に位置し、ここにおいてそれはタンパク質合成によって合成されるか、又は他の細胞によって合成されて放たれた後、集積される。
【0032】
FVIIaタンパク分解活性の不活性化は、インビトロにおいて、例えばクロロメチルケトンのような共有結合的活性部位阻害剤によって得られる。この接合体は、化学的に不活性化されたFVIIa分子の増大した親和性のために、天然のFVIIaの結合と比較してTFに対し非常に高い親和性を有する。高い親和性は、それらを必要とする患者により効果的且つ安全な治療を提供する。また、この接合体は、複数のTF結合部位によるFVIIaiダイマー、トリマー又はマルチマーの存在によって効果的に導入される活性のために、TFに対してよりいっそう高い親和性を有する。
【0033】
本発明の一つの態様において、その活性部位が共有結合的に改変された、化学的に不活性化されたFVII分子に関する:
1)放射性核種の輸送のための共有結合的活性部位阻害剤。このシナリオにおいて、放射性核種は、標的細胞の表面又は内部に選択的に蓄積される。
【0034】
2)放射性核種を含む共有結合活性部位阻害剤。このシナリオにおいて、放射性核種は標的細胞の画像診断において用いられることができる。
【0035】
完全長FVIIが1,2及び3における薬物輸送の好ましい態様を表す一方で、これはFVII(des-Gla)の使用、又は、切断型、アナログ、誘導体及び融合タンパク質(モノマー、ホモ−、又はヘテロダイマー又はマルチマー)を含むタンパク質に由来する他の任意のTF結合FVIIを排除しない。そのような分子のTFに対する異なる親和性は、全身の止血において、診断化合物の潜在的に望ましくない効果を減少させる方法を提供する。
【0036】
第一の側面において、本発明は、式A−(LM)−Cを有する化合物に関し、ここでAはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー分子であり;Cは放射性核種を含む化合物である。一つの態様においてLMは存在する。一つの態様においてLMは存在しない。
【0037】
第二の側面において、本発明は、式A−(LM)−Cを有する化合物の量、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む薬学的組成物に関し、ここでAはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物である。
【0038】
第三の側面において、本発明は、式A−(LM)−Cを有する薬物として使用する化合物に関し、ここで、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物であり;及びここにおいて該化合物はTFに結合しTFの機能を阻害する。
【0039】
さらなる側面において、本発明は、式A−(LM)−Cを有する化合物の使用に関し、ここでAはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物であり;病態生理学的なTF機能と関係する疾患又は障害の診断、予防又は治療のための薬剤の製造のための使用に関する。
【0040】
さらなる側面において、本発明は、式A−(LM)−Cを有する化合物の、ここで、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物であり;病態生理学的なTF機能と関係する疾患又は障害の画像診断のための薬剤の製造のための使用に関する。
【0041】
一つの態様において、該薬剤は、哺乳類の内臓における病態生理学的なTF機能と関係する疾患又は障害、例えば内部出血又は癌の画像診断のために使用される。
【0042】
「病態生理学的なTF機能に関係する疾患又は障害」という語は、ここで用いられる場合、TFが関与する任意の疾患又は障害を意味する。これは、限定されないが、TFが媒介する凝固活性に関連する疾患又は障害を含み、例えば、凝固因子欠乏症(例えば、血友病A及びB又は凝固因子XI又はVIIの欠損)又は凝固因子阻害剤のような出血障害、正常に機能する血液凝固カスケードを有する被験者(凝固因子欠損がなく、任意の凝固因子に対する阻害剤もない)において発生する、例えば、欠損した血小板の機能、血小板減少症又はフォンウィルブランド病によって引き起こされる過剰出血、手術及び外傷を含む他の形態の組織損傷と関連する出血、内蔵における出血、血栓又は凝固障害関連疾患又は障害、又は、炎症反応のような疾患又は障害及び、深部静脈血栓症、動脈性血栓症、術後血栓症、のような血管障害を含む、フィブリン形成に関係する慢性血栓塞栓性疾患又は障害、冠状動脈バイパスグラフト(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTAC)、脳卒中、癌、腫瘍成長、腫瘍転移、血管新生、血栓溶解、動脈硬化症、及び血管形成術後の再狭窄、炎症のような急性及び慢性徴候、敗血症ショック、敗血症、低血圧、成人呼吸困難症候群(ARDS)、播種性血管内血液凝固障害(DIC)、肺塞栓症、血小板析出、心筋梗塞、又はアテローム硬化型血管を有する哺乳類の血栓症に対する危険の予防的処置、及び他の疾患を含む。病態生理学的TF機能と関係する疾患又は障害は、上記で挙げたようなインビボの凝固障害に限定されず、生体外(ex vivo)でのTF/FVIIa関連プロセス、例えば、透析手順、血液濾過、又は手術の間の血液バイパスのようなプロセスにおいて、患者からインラインで血液を除去することを含む、血液の体外循環の結果としての凝固を含む。
【0043】
一つの態様において、病態生理学的TF機能と関係する疾患又は障害は、TFが血液へ曝露されたことによるものである。一つの態様において、病態生理学的TF機能と関係する疾患又は障害は、TFが正常な生理学的状態下よりも高いレベルで発現されたことによるものである。
【0044】
「処置」は、任意の症状又は疾患状態が発達するのを防ぐ目的で、或いは、既に発達したそのような症状又は疾患状態を治癒するか又は緩和させる目的で、本発明の治療的に活性な化合物の有効量を投与することを意味する。「処置」という語は、従って、予防的な処置を含むことを意味する。
【0045】
「癌」又は「腫瘍」という語は、全ての形態の腫瘍性細胞増殖、に当てはまるものとして理解されるべきであり、これは、嚢胞性及び固形性腫瘍の双方、骨および軟組織腫瘍、良性及び悪性の何れの腫瘍、肛門組織、胆管、膀胱、血球細胞、骨、骨(二次的な)、腸(大腸&直腸)、脳、脳(二次的な)、乳房、乳房(二次的な)、カルチノイド、頚部、小児癌、眼、食道(gullet)(食道(oesophagus))、頭&首、カポジ肉腫、腎臓、喉頭、白血病(急性リンパ芽球性)、白血病(急性骨髄性)、白血病(慢性リンパ球性)、白血病(慢性骨髄性)、白血病(その他)、肝臓、肝臓(二次的な)、肺、肺(二次的な)、リンパ節(二次的な)、リンパ腫(ホジキンの)、リンパ腫(非ホジキンの)、メラノーマ、中皮種、ミエローマ、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、肌、軟組織肉腫、胃、睾丸、甲状腺、未知の原発性腫瘍、膣、外陰、子宮(womb)(子宮(uterus))における腫瘍を含む。
【0046】
軟組織腫瘍は、良性シュワン細胞腫モノソミー、類腱腫、脂肪肉腫、脂肪腫、子宮平滑筋腫、明細胞肉腫、皮膚線維肉腫、ユーイング肉腫、骨格外(Extraskeletal)粘液様軟骨肉腫、脂肪肉腫粘液、脂肪肉腫、良分化型、肺胞性横紋筋肉腫、及び滑膜肉腫を含む。
【0047】
特異的な骨腫瘍は、非骨化性線維腫、単房性骨嚢腫、内軟骨腫、動脈瘤様骨嚢腫、骨芽細胞腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、骨化性繊維腫及びエナメル上皮腫、巨細胞腫、繊維性骨異形成症、ユーイング肉腫、エオジン好性細胞肉芽腫、骨肉腫、軟骨腫、軟骨肉腫、悪性線維性組織球腫、及び転移性癌を含む。
【0048】
白血病は、骨髄によって生成される白血球細胞の癌をさす。これは、これに限定されないが、4つの主なタイプの白血病を含む:急性リンパ芽球性(ALL)、急性骨髄芽球性(AML)、慢性リンパ球性リンパ球性(CLL)及び慢性骨髄球性(CML)。
【0049】
ここで用いられる場合、「出血障害」という語は、細胞又は分子起源の、先天的、後天性又は誘発された、出血が著しい任意の欠損症を指す。凝固因子欠損症(例えば、血友病A及びB又は凝固因子XI又はVIIの欠乏症)の例は、凝固因子阻害剤、血小板機能欠陥、血小板減少症、又はフォンウィルブランド病である。
【0050】
「出血エピソード」という語は、手術及び他の形態の組織傷害の両方に関連する主な問題である、制御されない過剰な出血を含むよう意図される。制御されない過剰な出血は、正常な凝固システムを有する被験者及び凝固又は出血障害を有する被験者で生じ得る。凝固因子欠損(血友病A及びB、凝固因子XI又はVIIの欠損)又は凝固因子阻害剤は、出血障害を引き起こし得る。過剰な出血はまた、正常に機能する出血凝固カスケード(凝固因子欠損のない又は何れの凝固因子に対する阻害剤のない)を有する被験者でも起こり、また、欠陥のある血小板機能、血小板減少症、又はフォンウィルブランド病によっても引き起こされ得る。そのようなケースにおける出血は血友病によって起こされる出血にたとえられる、というのも、血友病におけるような止血システムは、必須な凝固「化合物」(血小板又はフォンウィルブランド因子タンパク質)が欠損しているか又は異常であるために多量の出血を引き起こすからである。手術又は多大な外傷に関連する広範な組織損傷を被った被験者において、正常な止血機構は、即時の止血の必要に圧倒され、止血機構が正常であるにも関わらず、出血を発達させ得る。出血が脳、内耳領域及び眼のような外科的止血の可能性が制限される器官において生じた場合も、良好な止血を達成するのは困難である。同様の問題は、種々の器官(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)から生検を採取する過程、並びに腹腔鏡検査手術においても生じる。これら全ての状況に共通することは、外科的技術(縫合、クリップ等)による止血を行うことの困難性であり、これは出血が広汎性(出血性胃炎及びおびただしい子宮出血)である場合もそうである。急性及びおびただしい出血は、与えられた治療によって欠陥性の止血が誘発された抗凝固治療の被験者においても生じ得る。そのような被験者は、抗凝固効果に急速に対抗する必要がある場合、外科的処置を必要とする。根治的な恥骨後前立腺切除は、通常、局在化した前立腺癌を有する被験者のための方法が行われる。この手術は、しばしば、著しく時に大量の血液損失によって悪化される。前立腺切除の間の相当な血液損失は、主に、外科的止血が容易でない高密度に血管化された部位に伴う複雑な解剖学的状況に関連し、この結果として広大な領域から広汎性出血を生じる。不満足な止血の場合に問題を生じる他の状況は、正常な止血機構を有する被験者が、血栓塞栓性疾患の予防のための抗凝固治療を与えられたときである。そのような治療には、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリン又は他の形態のビタミン K-アンタゴニスト並びにアスピリン及び他の血小板凝集阻害剤が含まれる。
【0051】
本発明の一つの態様において、出血は血友病に関連する。他の態様において、出血は獲得した(aquired)阻害剤による血友病に関連する。他の態様において、出血は血小板減少症に関連する。他の態様において、出血はフォンウィルブランド病に関連する。他の態様において、出血は重症の組織損傷に関連する。他の態様において、出血は重症の外傷に関連する。他の態様において、出血は手術に関連する。他の態様において、出血は腹腔鏡検査手術に関連する。他の態様において、出血は出血性胃炎に関連する。他の態様において、出血はおびただしい子宮出血に関連する。他の態様において、出血は機械的止血の可能性が制限された臓器において生じるものである。他の態様において、出血は脳、内耳領域、又は眼において生じるものである。他の態様において、出血は生検を採取する過程に関連する。他の態様において、出血は抗凝固治療に関連する。
【0052】
さらなる側面において、本発明は、病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害の診断、予防又は治療のための方法に関し、該方法は、TFが存在する細胞を、式A−(LM)−C(ここで、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー分子であり;Cは放射性核種を含む化合物である)を有する化合物と接触させることを含む。
【0053】
本発明の一つの態様において、AはTFアンタゴニストである。
本発明の一つの態様において、AはTFアゴニストである。本発明の一つの態様において、TFアゴニストは、天然のヒトFVIIa又はそれらの変異体である。
本発明の一つの態様において、病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害は、出血、深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス移植(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、脳卒中、癌、腫瘍成長、腫瘍転移、血管新生、虚血/再灌流、リウマチ様関節炎、血栓溶解、動脈硬化症及び血管形成術後の再狭窄、炎症のような急性又は慢性徴候、敗血症ショック、敗血症、低血圧、成人呼吸困難症候群(ARDS)、播種性血管内血液凝固(DIC)、肺塞栓症、血小板堆積、心筋梗塞、或いは、血栓症の危険のあるアテローム硬化型血管を有する哺乳類の予防的な治療である。
【0054】
本発明の一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、不活性のFVIIaポリペプチドである。
【0055】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、その活性部位において触媒的に不活性化された天然のヒトFVIIa又はそれらの断片である。
【0056】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、その活性部位で触媒的に不活性化された天然のヒトFVIIaである。
【0057】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるC又は(LM)-Cは、FVIIaポリペプチドの活性部位に接合する。
【0058】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、及びD-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、及びダンシル-D-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトンからなる群から独立的に選択されたクロロメチルケトン阻害剤によって、その活性部位において触媒的に不活性化された、不活性FVIIaポリペプチドである。
【0059】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトンPhe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン及びD-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン及びダンシル-D-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、(ここで、不活性FVIIaポリペプチドは、前記クロロメチルケトン阻害剤によってその活性部位において触媒的に不活性化される)から成る群から独立的に選択されるクロロメチルケトン阻害剤を含む。
【0060】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、TFに対する抗体である。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるAは、ヒトTFに対するヒトモノクローナル抗体である。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種を含む化合物である。他の具体的な態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、I125を含む。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、ガンマ放出体である放射性核種を含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、ベータ放出体である放射性核種を含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、アルファ放出体である放射性核種を含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種Tc-99mを含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種188-Reを含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種123-Iを含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種131-Iを含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種インジウム-111を含む化合物である。
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、放射性核種フッ素-18を含む化合物である。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、タンパク質又はペプチドを含む。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるC又は(LM)-Cは、Aのグリコシル化側鎖に接合する。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるC又は(LM)-Cは、A上に存在するフリーのスルフヒドリル基に接合する。
さらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物は、TFに対して一より多い結合部位を有する。一つの態様において、該化合物はダイマーである。一つの態様において、該化合物はトリマーである。一つの態様において、該化合物はテトラマーである。一つの態様において、該化合物はペンタマーである。一つの態様において、該化合物はヘキサマーである。
【0061】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、アミノ酸配列を含む。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、アミノ酸配列Gly-Glyを含む。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、直鎖又は分枝鎖のC1-50-アルキル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルケニル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルキニル、鎖中に炭素及び少なくとも一つのN、O又はS原子を含む1〜50-員の直鎖又は分枝鎖、C3-8シクロアルキル、環中に炭素及び少なくとも一つのN、O又はS原子を含む3〜8-員の環、アリール、ヘテロアリール、アミノ酸、次の基の一以上で任意に置換された構造:H、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、チエニル、オキソ、アミノ、C1-4-アルキル、‐CONH2 、‐CSNH2、C1-4 モノアルキルアミノ、C1-4 ジアルキルアミノ、アシルアミノ、スルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ハロゲン(halogeno)、C1-6 アルコキシ、C1-6 アルキルチオ、トリフルオロアルコキシ、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、から成る群から選択された分子を含む。
【0062】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、化学的還元によって壊すことのできる化学結合を含む。
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、ジスルフィド結合を含む。一つの態様において、該ジスルフィド結合は、二つのシステインの間である。
【0063】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、酵素加水分解の切断部位を含む。一つの態様において、該酵素はリパーゼである。他の態様において、該酵素はプロテアーゼである。
【0064】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、プロテアーゼ加水分解の切断部位を含み、ここで該プロテアーゼは、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、カテプシンN、カテプシンS、カテプシンT、カテプシンK、及びレグマイン(legumain)から成る群から選択される。具体的な態様において、該プロテアーゼはカテプシンBである。
【0065】
本発明のさらなる態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるLMは、アミノ酸配列Phe-Argを含む。
【0066】
「放射性核種を含む化合物」という語は、ここで用いられる場合、放射性核種を含む任意の化合物、例えば、第一の目的の標的細胞の画像診断のための放射性核種を含む化合物を指す。この語は、放射能活性同位体又は放射性核種(例えば、I131、I125、I123、In111、Y90、Tc99m、Re186、並びに11-C、13-N、15-O、及び18-FのようなPETトレーサー、及び、従来のガンマカメラ、非-画像処理プローブ、ポジトロン放出断層撮影カメラ、及び他のインビボ及びインビトロ画像カメラ又は放射性活性記録デバイスでの画像処理に適した他の放射性同位体(radioisotopes))を含むよう意図される。
【0067】
画像処理は、従来の平面ガンマカメラ調査、断層撮影ガンマカメラ調査(SPECT)、低-線量CTスキャニングと組み合わせたガンマカメラ調査、又はCT-スキャニングと組み合わせた又は組み合わせないポジトロン放出断層撮影(PET)スキャンのように行ってよい。
【0068】
TFアゴニスト又はアンタゴニストに標識化される放射性核種のタイプは、調査の目的及び用いられる装置に依存する;急性胃腸管出血の場合、TFアゴニスト又はアンタゴニストを99mTcで標識するのが重要であり、これは核医学の部門でいつでも入手できる。薬物が、低い程度の出血状況の画像処理のような、より長い捕捉を意図する場合、111インジウムがより適切であり、また、癌のためには、さらに長い半減期を有する111インジウム又は131ヨウ素のガンマカメラでの画像処理が必要である。131ヨウ素は同時に、ベータ‐及びガンマ‐放出同位体との組み合わせでの治療的適用の候補である。PETスキャニングと共に用いる場合、18F-フッ素標識化が好ましい同位体であり、より短い半減期ならば十分である。他の同位体は、腫瘍細胞に結合するためにより長い時間が必要である場合に適切である。
【0069】
診断化合物は、これに限定されないが、放射性核種を含んでよい。放射性核種は、これらに限定されないが、高エネルギーのベータ粒子を放出するイットリウム、及び、オージェ電子を放出するI125のような放射性金属を含んでよく、これは隣接するTFが存在する細胞によって吸収され得る。リガンド又は標的分子を治療的化合物とカップリングする方法は、当業者には周知である(例えば、 conjugates as reviewed by Ghetie et al.、1994、Pharmacol. Ther. 63:209-34; U.S. Pat. No.5,789,554を参照。その開示は、本明細書に参考として援用される。)。そのような方法はしばしば、分子のカップリング又は結合のために用いられる、幾つかの入手可能なヘテロ‐二官能性試薬の一つを利用する。
【0070】
本発明で有用な放射性核種は、ガンマ-放出体、ポジトロン-放出体、オージェ電子-放出体、X-線放出体及び蛍光-放出体が含まれ、ベータ-又はアルファ-放出体が治療的な使用のためには好ましい。放射性核種は当該分野で周知であり、123-I、125-I、130-I、131-I、133-I、135-I 47-Sc、72-As、72-Se、90-Y、88-Y、97-Ru、100-Pd、101m-Rh、119-Sb、128-Ba、197-Hg、211-At、212-Bi、153-Sm、169-Eu、212-Pb、109-Pd、111-In、67-Ga、68-Ga、64-Cu、67-Cu、75-Br、76-Br、77-Br、99m-Tc、11-C、13-N、15-O、166-Ho 及び 18-Fが含まれる。好ましい治療的放射性核種は、188-Re、186-Re、203-Pb、212-Pb、212-Bi、109-Pd、64-Cu、67-Cu、90-Y、99m-Tc、123-I、125-I、131-I、77-Br、211-At、97-Ru、105-Rh、198-Au 及び 199-Ag、166-Ho 又は 177-Luが含まれる。
【0071】
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、I-131、I-125、I-123、In-111、Y-90、Tc-99m、Re-186、11-C、13-N、15-O、及び 18-Fから成る群から選択される放射性核種を含む化合物である。
【0072】
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、123-I、125-I、130-I、131-I、133-I、135-I 47-Sc、72-As、72-Se、90-Y、88-Y、97-Ru、100-Pd、101m-Rh、119-Sb、128-Ba、197-Hg、211-At、212-Bi、153-Sm、169-Eu、212-Pb、109-Pd、111-In、67-Ga、68-Ga、64-Cu、67-Cu、75-Br、76-Br、77-Br、99m-Tc、11-C、13-N、15-O、166-Ho 及び 18-Fから成る群から選択される放射性核種を含む化合物である。
【0073】
一つの態様において、式A-(LM)-Cを有する化合物におけるCは、188-Re、186-Re、203-Pb、212-Pb、212-Bi、109-Pd、64-Cu、67-Cu、90-Y、99m-Tc、123-I、125-I、131-I、77-Br、211-At、97-Ru、105-Rh、198-Au 及び 199-Ag、166-Ho 又は 177-Luから成る群から選択される放射性核種を含む化合物である。
【0074】
「核酸配列」又は「ヌクレオチド配列」という語は、ここで用いられる場合、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチド、及び、それらの断片又は部分、並びに、一重又は二重鎖のゲノム又は合成由来のDNA又はRNAを指し、センス又はアンチセンス鎖を表す。同様に、「アミノ酸配列」は、ここで用いられる場合、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列、及びそれらの断片又は部分、並びに天然又は合成の分子を示す。
【0075】
ここで「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子のアミノ酸配列を示すと記載された場合に、「アミノ酸配列」及び「ポリペプチド」又は「タンパク質」のような同様の語は、記載されたタンパク質分子と関係する完全な天然のアミノ酸配列のアミノ酸配列に限定されることを意味しない。
【0076】
「FVIIaポリペプチド」という語は、ここで用いられる場合、天然の因子VIIa、並びに、天然の因子VIIaと比較して一以上のアミノ酸配列変化を含む(即ち、因子VII 変異体)、及び/又は天然の因子VIIaと比較して切断されたアミノ酸配列を含む(即ち、因子VIIa断片)、因子VIIaの等価物を意味する。
【0077】
そのような等価物は、安定性、リン脂質結合、変化したタンパク分解的比活性などを含めて、天然の因子VIIaと比較して異なる性質を示し得る。
【0078】
ここで用いられる場合、「因子VII等価物」は、これに限定されないが、TF結合活性を示す因子VIIaの等価物を包含する。「TF結合活性」という語は、ここで用いられる場合、組換えヒト125I-FVIIaの細胞表面ヒトTFへの結合を阻害する、FVIIaポリペプチド又はTFアンタゴニストの能力を意味する。TF結合活性は、アッセイ3に記載されているように測定され得る。
【0079】
因子VII等価物はまた、FVIIaのタンパク分解的不活性変異体を含む。本発明の一つの態様において、FVIIaポリペプチドはヒトFVIIaであり、これは配列番号:1の位置341に対応するリシンのアミノ酸置換を有する。
【0080】
本発明の一つの態様において、FVIIaポリペプチドは、ヒトFVIIaであり、これは、配列番号:1の位置344に対応するセリンのアミノ酸置換を有する。
本発明の一つの態様において、FVIIaポリペプチドは、ヒトFVIIaであり、これは、配列番号:1の位置242に対応するアスパラギン酸のアミノ酸置換を有する。
本発明の一つの態様において、FVIIaポリペプチドはヒトFVIIaであり、これは配列番号:1の位置193に対応するヒスチジンのアミノ酸置換を有する。
【0081】
一つの態様において、FVIIaポリペプチドはFVII-(K341A)である。
一つの態様において、FVIIaポリペプチドはFVII-(S344A)である。
一つの態様において、FVIIaポリペプチドはFVII-(D242A)である。
一つの態様において、FVIIaポリペプチドはFVII-(H193A)である。
【0082】
ここで用いられる具体的なアミノ酸置換の用語法は、次の通りである。最初の文字は配列番号:1の位置に天然に存在するアミノ酸を表す。次の数字は、配列番号:1における位置を表す。二番目の文字は、天然のアミノ酸に代わる異なるアミノ酸を表す。例えばFVII-(K341A)は、配列番号:1の位置341のリシンがアラニンによって置換されている。他の例FVII-(K341A/S344A)は、配列番号:1の位置341のリシンがアラニンに置換され、同じ因子VIIポリペプチドの配列番号:1の位置344のセリンがアラニンによって置換されている。
【0083】
「活性部位」及び同様の語は、FVIIaに関してここで用いる場合、触媒及びチモーゲンの基質結合部位を指し、FVIIaの「S1」部位(これはSchecter、I. and Berger、A., (1967) Biochem. Biophys. Res. Commun. 7:157- 162.によって定義された語である)を含む。
【0084】
「TF媒介凝固活性」という語は、TF/FVIIa複合体の形成、及びFIX及び因子XのそれぞれのFIXa及びFXaへの活性化を介して、TFによって惹起される凝固を意味する。TF媒介凝固活性は、FXa産生アッセイで測定される。「FXa産生アッセイ」という語は、ここで用いられる場合、TF、FVIIa、FX、カルシウム及びリン脂質を含むサンプルでFXの活性が測定される任意のアッセイを意味するよう意図される。FXa産生アッセイの例は、アッセイ1に開示している。
【0085】
TF/FVIIa媒介又は関連する過程又は現象、又はTF媒介凝固活性の過程又は関連する現象は、TF/FVIIaの存在が必要である任意の現象である。
【0086】
そのような過程又は現象は、これに限定されないが、血栓形成を誘導するフィブリン形成;血小板堆積;例えば内膜肥厚又は再狭窄のような血管壁における平滑筋細胞(SMCs)の増殖、これは血小板堆積及び血栓形成、走化性及び分裂促進因子の放出、及び血管平滑筋細胞の動脈セグメントの内膜への転位及び増殖、を含む生物学的プロセスの複雑な相互作用の結果であると考えられる;及び、例えば冠状動脈血栓を起こした急性心筋梗塞の患者におけるような、虚血後の再灌流に関係する有害な現象を含む。
【0087】
非-再流現象、即ち、以前の虚血性組織の微小血管系への均一な灌流の欠如は、最初にクラッグら(Krug et al.)(Circ. Res. 1966; 19:57-62) によって開示されている。
【0088】
血液の凝血塊形成の発生機構は、ギャノング(Ganong、in Review of Medical Physiology、13th ed.、Lange、Los Altos Calif.、pp 411-414 (1987))によって概説されている。凝固は、血小板の凝集を誘導するトロンビンの生成並びに血小板栓を安定にするフィブリン形成という、二つのプロセスの合流を必要とする。このプロセスは、それぞれが別々の酵素前駆体及びプロファクターの存在を必要とする、幾つかの段階を含む。このプロセスは、フィブリンの架橋と血栓の形成で終了する。フィブリノーゲンはトロンビンの作用によってフィブリンへ転換する。トロンビンは、プロトロンビンのタンパク分解性の切断によって形成される。このタンパク分解は、活性化された血小板の表面に結合したFXaによってもたらされ、FVa及びカルシウムの存在下においてプロトロンビンを切断する。TF/FVIIaは、凝固の外因性経路によるFXのタンパク分解性活性化を必要とする。従って、TF/FVIIaによって媒介されるか又はそれに関係するプロセス、或いは、TFに媒介される凝固活性は、TF/FVIIa複合体の形成からフィブリン血小板血餅の形成までの凝固カスケードにおける何れかの工程を含み、これは、最初にTF/FVIIaの存在を必要とする。例えば、TF/FVIIa複合体は、FXからFXaへ、FIXからFIXaへ、及びさらにFVIIからFVIIaへの活性化によって外因性経路を惹起する。TF/FVIIaは、プロセスを媒介するか又は関係し、又は、TF媒介凝固活性は、ロイ(Roy、S)((1991) J. Biol. Chem. 266:4665-4668)及びオブリエン( O’Brien、D.)ら((1988) J. Clin. Invest. 82:206-212)に開示されているような、TF/FVIIa及び他の必要な試薬の存在下におけるFXからFXaへの転換のための標準的なアッセイを用いて便利に測定されることができる。
【0089】
ここで用いられる場合、ペプチド、タンパク質及びアミノ酸は、「天然の」、即ち、自然発生のアミノ酸並びに「非古典的な」D-アミノ酸(これに限定されないが、通常のアミノ酸のD-異性体、α-イソ酪酸、4-アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、合成アミノ酸、例えば、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、及び一般のアミノ酸アナログを含む)を含む又は指すことができることは、注意されるべきである。さらに、アミノ酸はAbu、2-アミノ酪酸; γ-Abu、4-アミノ酪酸; ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸; Aib、2-アミノ-イソ酪酸; β-Ala、3-アミノプロピオン酸; Orn、オルニチン; Hyp、t-ヒドロキシプロリン; Nle、ノルロイシン; Nva、ノルバリンを含むことができる。
【0090】
ここで用いられる場合、3文字表示「GLA」は、4-カルボキシグルタミン酸 (γ-カルボキシグルタミン酸)を意味する。
【0091】
「FVIIaポリペプチドの活性部位において触媒的に不活性化された」とは、FVIIa阻害剤がFVIIaポリペプチドに結合され、FXからFXaへのFVIIa-触媒転換を減少させるか又は妨げることを意味する。FVIIa阻害剤は、物質として同定され得るものであり、これはペルッソン(Persson)ら(Persson et al.、J. Biol. Chem. 272: 19919-19924 (1997)) によって開示されたFVIIaアミド分解性(amidolytic)アッセイにおいて、400μMの物質濃度で、少なくとも50%のアミド分解性活性を減少させる。好ましくは、300μMの物質濃度で、少なくとも50%のアミド分解性活性を減少させる物質である;より好ましくは、200μMの物質濃度で、少なくとも50%のアミド分解性活性を減少させる物質である。
【0092】
「FVIIa阻害剤」は、FVIIaに向けられた阻害剤の幾つかの群の何れか一つから選択されてよい。そのような阻害剤は、本発明の目的のために大まかに分類される;i) FVIIaに可逆的に結合し、FVIIaによって切断される阻害剤、ii) FVIIaに可逆的に結合し、しかし切断されない阻害剤、及び、iii) FVIIaに不可逆的に結合する阻害剤。セリンプロテアーゼの阻害剤の概説は、プロテアーゼ阻害剤((Research Monographs in cell and Tissue Physiology; v. 12) Elsevier Science Publishing Co.、Inc.、New York (1990) )を参照されたい。
【0093】
FVIIa阻害剤部分もまた、不可逆的なFVIIaセリンプロテアーゼ阻害剤である。そのような不可逆的な活性部位の阻害剤は、一般に、プロテアーゼ活性部位と共有結合を形成する。そのような不可逆的阻害剤は、これらに限定されないが、ペプチドクロロメチルケトン(Williams et al.、J. Biol. Chem. 264:7536-7540 (1989) を参照)又はペプチジルクロロメタンのような一般的なセリンプロテアーゼ阻害剤;アザペプチド;種々のグアニジンベンゾエート誘導体及び 3-アルコキシ-4-クロロイソクマリンのようなアシル化剤;フェニルメチルスルホニルフロリド(PMSF)のようなフッ化スルホニル(sulphonyl);ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP);トシルプロピルクロロメチルケトン(TPCK);トシルリジルクロロメチルケトン (TLCK);ニトロフェニルスルホネート及び関連する化合物;イソクマリン及びクマリンのような複素環式プロテアーゼ阻害剤を含む。
【0094】
ペプチジル不可逆的FVIIa阻害剤の例には、これらに限定されないが、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトンPhe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン及びD-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトンが含まれる。
【0095】
また、FVIIa阻害剤の例は、ベンゾキサジノン(benzoxazinones)又はPCT/DK99/00138に開示されているようなそれらの複素環式類縁体を含む。
他のFVIIa阻害剤の例は、これらに限定されないが、例えばPhe-Phe-Arg、D-Phe-Phe-Arg、Phe-Phe-Arg、D-Phe-Phe-Arg、Phe-Pro-Arg、D-Phe-Pro-Arg、Phe-Pro-Arg、D-Phe-Pro-Arg、L-及びD-Glu-Gly-Argのような小ペプチド;ペプチドミメティクス(peptidomimetics);ベンザミジン(benzamidine)システム;一以上のアミジノ(amidino)基で置換された複素環式構造;一以上のC(=NH)NHR基で置換された芳香族又は芳香族複素環システム(RはH、C1-3アルキル、OH 又はインビボで容易に開裂する基である)を含む。
【0096】
「リンカー部分」又は「LM」は、放射性核種を含む化合物をTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストに結合する一手段として機能する任意の生体適合性の分子を意味する。「リンカー」「リンカー部」「リンカー部B」「スペーサー」という語は、ここで用いられる場合、全てLMの部分を指す。TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニスト及び放射性核種を含む化合物は、化学結合(例えば、LMのアミノ基とTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストのカルボキシル基又はその等価物の間の、アミド又はペプチド結合)を介して分子LMと結合し、放射性核種を含む化合物もまた同じである。LMは、共有結合的及び非共有結合的化学結合又はそれらの混合を含み得ることは理解されるべきである。LMはその軸について自由な回転を有する複数の炭素-炭素σ結合を含み得る。
【0097】
適切なLMs、又は主鎖は、これらに限定されないが、ペプチド;ポリヌクレオチド;モノサッカリド、ジ-及びオリゴサッカリド、シクロデキストリン及びデキストリンを含むサッカリド;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールを含むポリマー、炭化水素、ポリアクリレート及びアミノ-、ヒドロキシ-、チオ- 又はカルボキシ-機能化シリコン、他の生体適合性の物質ユニット;及びそれらの組み合わせのような群を含む。上記したようなLM物質は、商業的に広く入手可能であるか、或いは当該分野の技術者に通常知られている有機合成方法を介して得ることができる。本発明の好ましい態様において、LMは、式A-(LM)-Cを有する化合物の放射性核種を含む化合物を放出する機能を果たす。一つの態様において、LMは、還元性の環境、例えば、細胞質又はリソソームへの移行に続いて、診断的化合物を放出する機能を果たす。本発明の他の態様において、LMは、特異的加水分解酵素、例えばカテプシンBのようなリソソームプロテアーゼによる加水分解に続いて、細胞の内側又は細胞表面の何れかで、診断的化合物を放出する機能を果たす。本発明の一つの態様において、LMは、外因性の刺激、例えば、光又は他の電磁場放射又は超音波、例えば高強度焦点超音波(HIFU)に続いて、診断的化合物を放出する機能を果たす。
【0098】
LMは、例えば、次の構造を含んでよい:直鎖又は分枝鎖のC1-50-アルキル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルケニル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルキニル、鎖中に炭素及び少なくとも一つのN、O 又は S 原子を含む、1〜50-員の直鎖又は分枝鎖の鎖、C3-8シクロアルキル、環中に炭素及び少なくとも一つのN、O 又は S 原子を含む3〜8-員の環、アリール、ヘテロアリール、アミノ酸、次の基の一以上で任意に置換された構造:H、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、チエニル、オキソ、アミノ、C1-4-アルキル、−CONH2、−CSNH2、C1-4モノアルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、アシルアミノ、スルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ハロゲノ(halogeno)、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、トリフルオロアルコキシ、アルコキシカルボニル、ハロアルキル。
【0099】
LMは、直鎖又は分枝であってよく、一以上の二重結合又は三重結合を含んでよい。LMは、N、O 又は Sのような一以上のヘテロ原子を含んでよい。LMは、上記の基の二以上の分類を含むことができ、並びに、分類内の二以上のメンバーを含むことができる、ということが理解されるであろう。LMが二以上の分類の基を含む場合、そのようなLMは、好ましくは、異なるユニットをそれらの官能基を介して接合することによって得られる。そのような結合を形成する方法は、標準的な有機合成を含み、当該分野の通常の技術者には周知である。
【0100】
「それらの組み合わせ」とは、LMが上記の基の分類の二以上、並びに、分類内の二以上のメンバーを含むことができることを意味する。LMが二以上の分類の基を含む場合、そのようなLMは、好ましくは、異なるユニットをそれらの官能基を介して接合することによって得られる。そのような結合を形成する方法は、標準的な有機合成を含み、当該分野の通常の技術者には周知である。
【0101】
LMは、例えば、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、C1-4モノアルキルアミノ、アシルアミノ、スルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ハロゲノ(halogeno)、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、トリフルオロアルコキシ、アルコキシカルボニル、又はハロアルキル基のような官能基を含むことができる。また、LMは、例えばアンモニウム基又はカルボキシル基のような、帯電した官能基を含むこともできる。
【0102】
帯電した官能基は、TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストに、水又は生理学的な系への十分な溶解性を与え、イオン結合の反応部位に他の化学種を与え、また、TF/FVIIa/FXa複合体の他のメンバーへのそれらの結合活性を増強する。TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストに、最適な溶解性と結合活性特性を与えるために、特定の酸、及びそれらの濃度を選択することは、当該分野の技術の範囲内である。好ましくは、帯電した官能基の総量は、TF部位のためのTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストの特異性を最大にするように、しかし溶解性を著しく減少させないように最小化される。
【0103】
「C1-50-アルキル」又は「C1-50-アルカンジイル(alkanediyl)」という語は、ここで用いられる場合、直鎖又は分枝鎖の、飽和又は不飽和の、1〜50の炭素原子を有する炭化水素鎖を指す。
【0104】
「C2-50-アルケニル」又は「C2-50-アルカンジイル」という語は、ここで用いられる場合、不飽和の、分枝鎖又は直鎖の、2〜50の炭素原子を有し少なくとも一つの二重結合を有する炭化水素鎖を指す。
【0105】
「C2-50-アルキニル」又は「C2-50-アルカンジイル」という語は、ここで用いられる場合、不飽和の、分枝鎖又は直鎖の、2〜50の炭素原子を有し、少なくとも一つの三重結合を有する炭化水素鎖を指す。C1-50-アルキル残基は、脂肪族炭化水素残基、不飽和の脂肪族炭化水素残基、脂環式炭化水素残基を含む。この定義内のC1-50-アルキルの例は、これらに限定されないが、デカニル、ヘキサデカニル、オクタデカニル、ノナデカニル、イコサニル、ドコサニル、テトラコサニル、トリアコンタニル、デカンジイル、ヘキサデカンジイル、オクタデカンジイル、ノナデカンジイル、イコサンジイル、ドコサンジイル、テトラコサンジイル、トリアコンタンジイルを含む。
【0106】
C3-8-シクロアルキルという語は、飽和の、3〜8の炭素原子を有する脂環式炭化水素残基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル;及び、5〜6の炭素原子を有するC5-6不飽和脂環式炭化水素残基、例えば1-シクロペンテニル、2-シクロペンテニル、3-シクロペンテニル、1-シクロヘキセニル、2-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニルを意味する。
【0107】
「C1-6-アルコキシ」という語は、ここで用いられる場合、単独で又は組み合わせて、エーテル酸素からの遊離価結合を有し、1〜6の炭素原子を有する、エーテル酸素を介して結合したC1-6-アルキル基を含む直鎖又は分枝鎖の一価の置換基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペントキシを指す。
【0108】
「C1-6-アルキルチオ」という語は、ここで用いられる場合、単独で又は組み合わせて、その遊離価結合をチオエーテル硫黄から有し、1〜6の炭素原子を有する、チオエーテル硫黄原子を介して結合した、C1-6-アルキル基を含む直鎖又は分枝鎖の一価の置換基を指す。
【0109】
「アリール」及び「ヘテロアリール」という語は、ここで用いられる場合、任意に置換されることができるアリール又は任意に置換されることができるヘテロアリールを指し、フェニル、ビフェニル、インデン、フルオレン、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、アントラセン(1-アントラセニル、2-アントラセニル、3-アントラセニル)、チオフェン(2-チエニル、3-チエニル)、フリル(2-フリル、3-フリル)、インドリル、オキサジアゾリル(oxadiazolyl)、イソキサゾリル(isoxazolyl)、キナゾリン、フルオレニル、キサンテニル(xanthenyl)、イソインダニル(isoindanyl)、ベンズヒドリル(benzhydryl)、アクリジニル(acridinyl)、チアゾリル、ピロリル (2-ピロリル)、ピラゾリル (3-ピラゾリル)、イミダゾリル (1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル)、トリアゾリル (1、2、3-トリアゾール-1-イル、1、2、3-トリアゾール-2-イル 1、2、3-トリアゾール-4-イル、1、2、4-トリアゾール-3-イル)、オキサゾリル (2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、チアゾリル (2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、ピリジル (2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリミジニル (2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル)、ピラジニル、ピリダジニル (3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、5-ピリダジニル)、キノリル (2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル (1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル)、ベンゾ[b]フラニル (2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル (2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、5-(2,3-ジ
ヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[b]チオフェニル (2-ベンゾ[b]チオフェニル、3-ベンゾ[b]チオフェニル、4-ベンゾ[b]チオフェニル、5-ベンゾ[b]チオフェニル、6-ベンゾ[b]チオフェニル、7-ベンゾ[b]チオフェニル)、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル (2-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、3-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、5-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、6-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、7-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b]チオフェニル)、インドリル(1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、インダゾール (1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンズイミダゾリル(1-ベンズイミダゾリル、2-ベンズイミダゾリル、4-ベンズイミダゾリル、5-ベンズイミダゾリル、6-ベンズイミダゾリル、7-ベンズイミダゾリル、8-ベンズイミダゾリル)、ベンゾキサゾリル (1-ベンゾキサゾリル、2-ベンゾキサゾリル)、ベンゾチアゾリル (1-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、カルバゾリル (1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル)、5H-ジベンズ[b,f]アゼピン (5H-ジベンズ[b,f] アゼピン-1-イル、 5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-2-イル、 5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-3-イル、 5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-4-イル、 5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-5-イル)、10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン (10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-1-イル、 10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-2-イル、 10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-3-イル、 10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-4-イル、 10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ[b,f]アゼピン-5-イル)を含む。
【0110】
また、本発明は、上記の環系の部分的又は完全に飽和された類縁体に関する。
【0111】
「C1-4 モノアルキルアミノ」及び「C1-4 ジアルキルアミノ」という語は、その一つ又は両方の水素が独立的に、1〜4の炭素原子を有するアルキル基、上記定義されたアルキル、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、プロピルアミノ、ジプロピルアミノ、N-(n-ブチル)-N-メチルアミノ、n-ブチルアミノ、ジ(n-ブチル)アミノ、sec-ブチルアミノ、t-ブチルアミノなどで置換されたアミノ基を指す。
【0112】
「アシル」又は「カルボキシ」という語は、カルボニル基を介して結合したC1-6-アルキル基を含む一価の置換基;例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル、バレリル等を指す。
【0113】
「アシルアミノ」という語は、C1-n C(=O)NH-基を指す。
【0114】
「カルボキサミド」という語は、-C(=O)NHC1-n基を指す。
【0115】
「トリフルオロアルコキシ」という語は、一以上の炭素原子に結合したその水素原子の3つがフッ素によって置換された、上記定義のC1-6 アルコキシ基、例えば(CF3)O-、(CF3)CH2O-を指す。
【0116】
「アルコキシカルボニル」という語は、-C(=O)(R)基を指し、ここでRは上記定義のC1-6 アルコキシ基である。「C1-6-アルコキシカルボニル」という語は、ここで用いられる場合、カルボニル基を介して結合したC1-6-アルコキシ基を含む一価の置換基を指し;例えば、メトキシカルボニル、カルベトキシ、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、s-ブトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、3-メチルブトキシカルボニル、n-ヘキソキシカルボニル等である。
【0117】
「脱離基」という語は、ここで用いられる場合、これらに限定されないが、ハロゲン、スルホネート又はアシル基を含む。適切な脱離基は、当該分野の技術者には既知であろう。
【0118】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0119】
「任意の」又は「任意に」は、その後に記載された現象又は状況が、生じるか又は生じないことを意味し、また、その記述が、該現象又は状況が生じた場合並びに生じなかった場合を含んでいることを意味する。例えば、「任意に置換された・・・アリール」は、アリールが置換される又は置換されないことを意味し、その記述が、置換されていないアリール及び置換されたアリールの両者を含むことを意味する。
【0120】
本発明の一つの態様において、LMはFVIIa阻害剤を含む。FVIIa阻害剤は、FVIIa阻害剤を含むLMを介して、放射性核種を含む化合物をFVIIaポリペプチドの活性部位に接合するために用いられることは、理解されるであろう。
【0121】
TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストの調製に用いるための、FVIIa阻害剤を含む、放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)を含む化合物は、次の方法によって調製され得る。次の方法において、FVIIa阻害剤は文字Fで示される。放射性核種Cを含む化合物は、文字Cで示される。リンカー部分Bは、リンカー部分LMの他のリンカー部分を指す。
【0122】
<方法1>
FVIIa阻害剤を含むLMは、F-B-Xを反応させることによって調製される。ここで、Xは構造C-Yと反応可能な官能基であり、Yは官能基であり、当該分野の技術者に既知のカップリング試薬を用いて通常のカップリング反応によって調製される。
【0123】
<方法2>
FVIIa阻害剤を含むLMは、F-B-Zの間の反応によって調製され得る。ここでZは脱離基であり、C−WのWはヌクレオファイル(nucleofile)である。脱離基の例は、ハロゲン、スルホネート、ホスホネートである。ヌクレオファイルの例は、ヒドロキシ、アミノ、N置換アミノ、及びカルバニオンである。
【0124】
<方法3>
FVIIa阻害剤を含むLMは、C-B-Zの間の反応によって調製され得る。ここでZは脱離基であり、F−Wは、Wがヌクレオファイルである。脱離基の例は、ハロゲン、スルホネート、ホスホネートである。ヌクレオファイルの例は、ヒドロキシ、アミノ、N置換アミノ、及びカルバニオンである。
【0125】
<方法4>
リンカー部分Bは、当該分野で周知の方法を用いて、構造F及び固相表面に結合されたCと反応されることができる。
【0126】
<方法5>
FVIIa阻害剤を含む放射性各種結合部分接合体C-(LM)を含む化合物は、F又はCをまず、活性化されたリンカー部分と反応させてそれぞれ、F-B、C-B部分を形成し、続いて、形成された産物をそれぞれC、F部分と反応させることを介する、一連の反応によって調製されうる。実際の結合形成は、方法1〜3に記載したように、官能基又は誘導体又は脱離基/ヌクレオフィルでの反応を通して起こる。
【0127】
この反応は、当該分野の技術者には既知の方法を用いて、溶液相又は固相担体上で行うことができる。
【0128】
本明細書においてアミノ酸は、IUPAC-IUB委員会生化学命名法(CBN)で承認された表1に表示したような略語を用いて表される。名称又は次の略語によって表された、異性体を有するアミノ酸等は、他に示さない限り、天然のL形態である。さらに、ペプチドのアミノ酸配列の左端及び右端は、他に示さない限り、それぞれN末端及びC末端である。
【表1】

【0129】
また、本発明は、上記のようなTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストを調製する方法に関する。TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、DNA組換え技術によって調製しても良い。その終わりに、ヒトFVIIaをコードするDNA配列は、ゲノム又はcDNAライブラリーを調製し、標準的な技術に従って、合成オリゴヌクレオチドプローブを用いてハイブリダイゼーションし、タンパク質の全部又は一部をコードするDNAをスクリーニングすることによって単離することができる(例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989)。本発明の目的のために、タンパク質をコードするDNA配列は、ヒト由来であること、即ち、ヒトゲノムDNA又はcDNAライブラリーに由来するものであることが好ましい。
【0130】
ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列は、確立された標準的な方法、例えばブーケージ及びカルザー(Beaucage and Caruthers)(Tetrahedron Letters 22 (1981) 1859 - 1869 )によって開示されたホスホアミジト(phosphoamidite)方法、又は、マッターら(Matthes et al.)( EMBO Journal 3 (1984)、801 - 805)によって開示された方法によって合成的に調製されることもできる。ホスホアミジト方法に従って、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機で合成され、精製され、アニールされ、ライゲートされ、及び適切なベクターにクローン化される。
【0131】
DNA配列は、例えばUS 4,683,202、サイキら( Science 239 (1988)、487 - 491)又はサンブルックら(Sambrook)(supra)に開示されているように、特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法によっても調製されることができる。
【0132】
ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列は、通常、組換えDNA方法に共されるのに都合の良い任意のベクターである組換えベクターに挿入され、ベクターの選択はしばしば、それが導入される宿主細胞に依存する。従って、ベクターは自己複製ベクター、即ち、染色体外の実体として存在しているベクターであってよく、その複製が染色体複製とは独立している、例えばプラスミドである。或いは、ベクターは、宿主細胞に導入されるときに宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と共に複製されるものであってもよい。
【0133】
ベクターは、その中のヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列が、DNAの転写に必要な付加的なセグメントに操作可能に結合された発現ベクターであることが好ましい。一般に、発現ベクターはプラスミド又はウイルスDNAに由来し、或いは、両者の要素を含む。「操作可能に結合された」という語は、セグメントが、それらの意図する目的に一致して機能するように配列されることを示し、例えば、転写がプロモーターで開始され、ポリペプチドをコードするDNA配列を通って進行することを示す。
【0134】
プロモーターは任意のDNA配列でよく、それは選択された宿主細胞内で転写活性を示し、その宿主細胞に相同性であるか又は異種性であるタンパク質をコードする遺伝子に由来してもよい。
【0135】
哺乳類細胞において、ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNAの転写を指示する適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramani et al.、Mol. Cell Biol. 1 (1981)、854--864)、MT-1 (メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al.、Science 222 (1983)、809 - 814)、CMVプロモーター(Boshart et al.、Cell 41:521-530、1985)又はアデノウイルス2メージャー・レート(major late)プロモーター(Kaufman and Sharp、Mol. Cell. Biol、2:1304-1319、1982)である。
【0136】
昆虫細胞において用いるのに適切なプロモーターの例は、ポリヘドリン(polyhedrin)プロモーター(US 4、745、051; Vasuvedan et al.、FEBS Lett. 311、(1992) 7 - 11)、P10プロモーター(J.M. Vlak et al.、J. Gen. Virology 69、1988、pp. 765-776)、オートグラフ・カリホルニカ(Autographa californica)多角体病ウイルス・基本タンパク(basic protein)プロモーター(EP 397 485)、バキュロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)、又は、バキュロウイルス39K後発性(delayed-)初期遺伝子プロモーター(US 5,155,037; US 5,162,222)である。
【0137】
酵母宿主細胞で用いるのに適切なプロモーターの例は、酵母解糖遺伝子 (Hitzeman et al.、J. Biol. Chem. 255 (1980)、12073 - 12080; Alber and Kawasaki、J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982)、419 - 434)又はアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young et al.、in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender et al、eds.)、Plenum Press、New York、1982)からのプロモーター、或いは、TPI1 (US 4、599、311)又はADH2-4c (Russell et al.、Nature 304 (1983)、652 - 654)プロモーターを含む。
【0138】
糸状菌宿主細胞で用いるのに適切なプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al.、The EMBO J. 4 (1985)、2093 - 2099)又はtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、A. オリザエ(oryzae)TAKA アミラーゼ、 リゾムコール・ミエイ(Rhizomucor miehei)アスパラギンプロテイナーゼ、 A. ニガー中性α-アミラーゼ、 A. ニガー・酸安定化α-アミラーゼ、A. ニガー又は A. アワモリ(awamori)グルコアミラーゼ(gluA)、リゾムコール・ミエイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ、A. オリザエ(oryzae)アルカリンプロテアーゼ、 A. オリザエ(oryzae)トリオースホスフェートイソメラーゼ又はA. ニドゥラン(nidulans)アセタミダーゼ(acetamidase)をコードする遺伝子に由来するものである。TAKA-アミラーゼ及びgluAプロモーターが好ましい。適切なプロモーターは、例えば、EP 238 023 及び EP 383 779に記載されている。
【0139】
ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列は、必要であれば、ヒト成長ホルモンターミネーター (Palmiter et al.、Science 222、1983、pp. 809-814) 又はTPI1 (Alber and Kawasaki、J. Mol. Appl. Gen. 1、1982、pp. 419-434) 又はADH3 (McKnight et al.、The EMBO J. 4、1985、pp. 2093-2099) ターミネーターのような適切なターミネーターに操作可能に結合されてよい。ベクターは、プロモーターの下流且つFVIIa配列の挿入部位の上流に位置するRNAスプライスのセットを含んでも良い。RNAスプライス部位は、アデノウイルス及び/又はイムノグロブリン遺伝子から得ることが好ましい。また、ポリアデニル化シグナルは、その発現ベクター中に、その挿入部位の下流に位置するように含まれる。特に好ましくは、ポリアデニル化シグナルはSV40(Kaufman and Sharp、ibid.)からの早期又は後期ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5EIb領域からのポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto et al. Nuc. Acids Res. 9:3719-3730, 1981 )、又はヒトFVII遺伝子又はウシFVII遺伝子からのポリアデニル化シグナルを含む。発現ベクターは、非コーディングウイルスリーダー配列、例えば、プロモーターとRNAスプライス部位の間に位置するアデノウイルス2トリパルタイトリーダー;及びエンハンサー配列、例えばSV40エンハンサーを含んでも良い。
【0140】
組換えベクターは、問題の宿主細胞中におけるベクターの複製を可能にするDNA配列をさらに含むこともできる。そのような配列の例は(宿主細胞が哺乳類細胞である場合)、SV40複製開始点(SV40 origin of replication)である。
【0141】
宿主細胞が酵母細胞である場合、ベクターの複製を可能にする適切な配列は、酵母プラスミド2μ複製遺伝子REP1-3及び複製開始点である。
【0142】
ベクターは、選択可能マーカー、例えば宿主細胞における欠陥を補完する生成物の遺伝子を含んでもよく、例えば、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子、又は分裂酵母ポンベ(pombe) TPI 遺伝子(P.R. Russell、Gene 40、1985、pp. 125-130に開示されている)、或いは、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、ハイグロマイシン又はメトトレキセート等の薬剤に耐性を与えるものを含んでよい。糸状菌のための選択可能マーカーには、amdS、pyrG、argB、niaD又はsCが含まれる。
【0143】
本発明のヒトFVIIaポリペプチドを宿主細胞の分泌経路内へ配向させるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られる)が、組換えベクター中に提供され得る。その分泌シグナル配列は、正確なリーディングフレームでヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列に連結される。分泌シグナル配列は、一般に、ペプチドをコードしているDNA配列の5’に位置している。分泌シグナル配列は、正常なタンパク質と付随しているか、或いは、他の分泌されるタンパク質をコードする遺伝子からのものでもよい。
【0144】
酵母細胞からの分泌のために、分泌シグナル配列は任意のシグナルペプチドをコードし、これは、発現されたヒトFVIIaポリペプチドが細胞の分泌経路に効率的に向けられることを保証する。このシグナルペプチドは、天然のシグナルペプチドであってよく、或いは、それらの機能的な部分でもよく、合成ペプチドであってもよい。適切なシグナルペプチドは、α-因子シグナルペプチド(例えば、US 4,870,008)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(例えば、O. Hagenbuchle et al.、Nature 289、1981、pp. 643-646)、改変されたカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(例えば、 L.A. Valls et al.、Cell 48、1987、pp. 887-897)、酵母BAR1シグナルペプチド(例えば、WO 87/02670)、或いは、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3 (YAP3)シグナルペプチド(例えば、M. Egel-Mitani et al.、Yeast 6、1990、pp. 127-137)であることが分かった。
【0145】
酵母中での効率的な分泌のためにリーダーペプチドをコードする配列を、そのシグナル配列の下流且つヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列の上流に挿入することもできる。リーダーペプチドの機能は、発現されたペプチドが、小胞体からゴルジ体に向けられ、さらには培養培地への分泌のための分泌小胞へ向けられることを可能にする(即ち、細胞壁を横切った、又は、少なくとも細胞膜を通った、酵母細胞の細胞膜周辺腔へのヒトFVIIaポリペプチドの移出)。そのリーダーペプチドは、酵母アルファ-因子リーダー(その使用は、例えばUS 4,546,082、US 4,870,008、EP 16 201、EP 123 294、EP 123 544 及び EP 163 529に開示されている)であってよい。或いは、リーダーペプチドは、合成リーダーペプチドであってもよく、即ち、天然において発見されないリーダーペプチドであってもよい。合成リーダーペプチドは、例えば、WO 89/02463又はWO 92/11378に開示されているように作成される。
【0146】
糸状菌における使用のために、シグナルペプチドは、アスペルギルス属sp. アミラーゼ 又は グルコアミラーゼをコードする遺伝子、リゾムコール・ミエイ(Rhizomucor・ miehei)リパーゼ又はプロテアーゼ又はヒュミコラ・ラヌギノーサ(Humicola・lanuginosa)リパーゼをコードする遺伝子からのものが都合よい。シグナルペプチドは、好ましくはA. オリザエ TAKA アミラーゼ、A. ニガー中性α-アミラーゼ、A. ニガー酸安定アミラーゼ、又は A. ニガーグルコアミラーゼをコードする遺伝子に由来する。適切なシグナルペプチドは、例えばEP 238 023 及び EP 215 594に開示されている。
【0147】
昆虫細胞における使用のためのシグナルペプチドは、昆虫遺伝子(例えば、WO 90/05783)、例えばレピドプテラン・マンドューカ・セクスタ(lepidopteran Manduca sexta)アジポキニンホルモン前駆物質シグナルペプチド(例えば US 5,023,328)に由来するものが都合よい。
【0148】
該方法は、ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列、プロモーター及び任意にターミネーター及び/又は分泌シグナル配列をそれぞれライゲートし、そして、それらを、複製に必要な情報を含んだ適切なベクター中に挿入するものであり、これは当該分野の技術者には周知である(例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、New York、1989)。
【0149】
哺乳類細胞の形質移入及び細胞中に導入されたDNA配列の発現は、例えば、カーフマン(Kaufman)及びシャルプ(Sharp)(J. Mol. Biol. 159 (1982)、601 - 621; サザン(Southern)及びベルグ(Berg)(J. Mol. Appl. Genet. 1 (1982)、327 - 341);ロイター(Loyter)ら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982)、422 - 426); ウィラー(Wigler)ら(Cell 14 (1978)、725); コルサロ(Corsaro)及びピアソン(Pearson)(Somatic Cell Genetics 7 (1981)、603、Graham and van der Eb、Virology 52 (1973)、456);及びニューマン(Neumann)ら(EMBO J. 1 (1982)、841 - 845)に開示されている。
【0150】
選択可能マーカーは、細胞中に別のプラスミド上で対象の遺伝子と同時に導入されてよく、或いは、それらは同じプラスミド上で導入されても良い。同じプラスミド上である場合、その選択可能マーカー及びその対象遺伝子は、異なるプロモーターの制御下にあり、或いは同じプロモーターの制御下にあってよく、後者の配列はジシストロンメッセージを生成する。このタイプの構造は、当該分野で既知である(例えば、Levinson and Simonsen、U.S. Pat. No. 4,713,339)。「キャリアDNA」としても知られているさらなるDNAを、細胞へ導入される混合物に追加することも有利である。
【0151】
細胞がDNAを摂取した後、それらを適切な増殖培地で、典型的には1〜2日増殖させ、所望の遺伝子の発現を開始させる。ここで用いられる場合、「適切な増殖培地」とは、細胞の増殖及び所望のヒトFVIIaポリペプチドの発現に必要な、栄養と他の成分を含む培地を意味する。培地は一般に、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、必須糖、ビタミン、塩、リン脂質、タンパク質及び増殖因子を含む。ガンマ-カルボキシル化タンパク質を生成するために、培地はビタミンKを、好ましくは約0.1μg/mlから約5μg/mlの濃度で含む。薬剤選択は、安定な様式で選択可能マーカーを発現する細胞の増殖のための選択に適用される。増幅可能な選択可能マーカーとともに形質移入された細胞のための薬剤濃度を、クローン化配列の上昇したコピー数を選択するために上昇させ、それによって発現レベルを上昇させてもよい。次に、安定に形質移入された細胞のクローンを、所望のヒトFVIIaポリペプチドの発現についてスクリーニングする。
【0152】
ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列が導入される宿主細胞は、任意の細胞でよく、これは、形質移入後の改変されたヒトFVIIaポリペプチドを生成する能力があり、また、酵母、菌、及び高度な真核細胞を含む。
【0153】
本発明で用いるための哺乳類細胞の例は、COS-1 (ATCC CRL 1650)、ベビーハムスター腎臓(BHK) 及び 293 (ATCC CRL 1573; Graham et al.、J. Gen. Virol. 36:59-72、1977) 細胞株である。好ましいBHK細胞株は、tk- ts13 BHK細胞株(Waechter and Baserga、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:1106-1110、1982、参考として本明細書に援用される) であり、以後BHK 570細胞と称す。BHK 570細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(12301 Parklawn Dr.、Rockville、Md. 20852)に、ATCC受付番号CRL 10314で寄託されている。tk- ts13 BHK細胞株も、受付番号CRL 1632でATCCから入手することができる。さらに、Rat Hep I (Rat肝細胞腫; ATCC CRL 1600)、Rat Hep II (Rat肝細胞腫; ATCC CRL 1548)、TCMK (ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)、CHO (ATCC CCL 61) 及び DUKX 細胞 (Urlaub and Chasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220、1980) を含む他の多くの細胞株も本発明内で用いることができる。
【0154】
適切な酵母細胞の例は、酵母菌属spp. 又は分裂酵母spp.であり、特に、酵母菌属セレビシア(cerevisiae)又は酵母菌属クルイヴェリ(kluyveri)の菌株である。異種性のDNAを用いて酵母細胞を形質転換する方法、及び、異種性ポリペプチドを生成する方法は、例えば、US 4,599,311、US 4,931,373、US 4,870,008、5,037,743、及び US 4,845,075に開示されており、それらの全ては本明細書に参考として援用される。形質移入された細胞は、選択可能マーカー、一般の薬剤耐性、又は特定の栄養、例えばロイシンの非存在下での増殖能力によって決定される表現型によって選択される。酵母において用いるために好ましいベクターは、US 4,931,373に開示されているPOT1ベクターである。ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNA配列は、シグナル配列及び例えば上記に記載したような任意のリーダー配列によって先行される。適切な酵母細胞のさらなる例は、K. ラクティス(lactis)、ハンゼヌラ、例えばH. ポリモルファ(polymorpha)、或いは、ピキア(Pichia)、例えばP. パストリス(pastoris)(例えば、Gleeson et al.、J. Gen. Microbiol. 132、1986、pp. 3459-3465; US 4,882,279) のようなクルイヴェロマイセス(Kluyveromyces)の菌株である。
【0155】
他の真菌細胞の例は、糸状菌の細胞、例えばアスペルギルス属spp.、パンカビ属spp.、フザリウムspp. 又はトリコデルマ属spp.であり、特に、A. オリザエ(oryzae)、A. ニドゥランス(nidulans)又はA. ニガーの菌株である。タンパク質の発現のための、アスペルギルスspp.の使用は、例えばEP 272 277、EP 238 023、EP 184 438に開示されている。F. オキシスポラムの形質転換は、例えば、マラルディエル( Malardier)ら(1989、Gene 78: 147-156)によって開示されているように行うことができる。トリコデルマ属spp.の形質転換は、例えばEP 244 234に開示されているように行うことができる。
【0156】
糸状菌を宿主細胞として用いる場合は、組換え宿主細胞を得るために宿主染色体中のDNA構築物が組み込まれることによって便利に、本発明のDNA構築物で形質転換されることができる。この組み込みは、一般に、DNA配列が細胞中でより安定に維持されるために、有利であると見なされている。DNA構築物の宿主細胞内への組み込みは、従来方法、例えば相同性又は異種性組換えの方法に従って行われることができる。
【0157】
昆虫細胞の形質転換及びその点での異種性ポリペプチドの生産は、US 4,745,051; US 4,879,236; US 5,155,037; 5,162,222; EP 397,485)に開示されているように行うことができ、それらの全ては本明細書において参考として援用される。宿主として用いられる昆虫細胞株は、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞又はトリチョプルシア・ニイ(Trichoplusia ni)細胞 (例えばUS 5,077,214)のような鱗翅目細胞株が適切である。培養条件は、例えばWO 89/01029又はWO 89/01028、或いは上述の参考文献の何れかに開示されているように適切にされてよい。
【0158】
上記の形質転換又は形質移入された宿主細胞は、次いで、ヒトFVIIaポリペプチドの発現を可能にする条件下において、適切な栄養培地で培養され、その後、得られたペプチドの全部又は一部を培養物から回収する。細胞の培養に用いられる培地は、最小培地又は適切な補充を含む複合培地のような、宿主細胞の増殖に適切な任意の都合の良い培地であってよい。適切な培地は、商業的な供給者から入手可能であり、或いは、公表されている処方(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ)に従って調製してもよい。細胞によって生産されたヒトFVIIaポリペプチドは、次いで、遠心分離又は濾過により宿主細胞を培地から分離すること、上清又は濾液のタンパク水溶性成分を塩、例えば硫酸アンモニウムによって沈殿させること、種々のクロマトグラフィー方法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等、問題のポリペプチドのタイプに依存するクロマトグラフィーによって精製することを含む、従来の方法によって培養培地から回収される。
【0159】
組換えヒトFVIIaポリペプチドの調製のために、クローン化された野生型FVIIa DNA配列が用いられる。この配列は、所望のFVIIa変異体をコードするために改変されうる。ヒトFVIIaの完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列は知られている。U.S.特許番号4,784,950を参照されたい。これは、本明細書に参考文献として援用される。ここには、組換えヒトFVIIaのクローニング及び発現が開示されている。ウシFVIIa配列は、タケヤ(Takeya )ら(J. Biol. Chem、263:14868-14872 (1988))に開示されており、これは本明細書に参考文献として援用される。
【0160】
アミノ酸配列変更は、種々の技術によって達成され得る。DNA配列の改変は、部位特異的突然変異によって可能である。部位特異的突然変異のための技術は、当該分野で周知であり、例えば、ゾラー及びスミス(Zoller and Smith)(DNA3:479−488、1984)によって開示されている。従って、FVIIのヌクレオチド及びアミノ酸配列を用い、選択した変更を導入することができる。
【0161】
本発明内で使用するためのDNA配列は、典型的にはFVIIaタンパク質のアミノ末端においてプレプロペプチドをコードし、適切な翻訳後処理(例えば、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化)及び宿主細胞からの分泌を得る。プレプロペプチドはFVIIa又は他のビタミンK依存性血漿タンパク質、例えば因子IX、因子X、プロトロンビン、タンパク質C又はタンパク質Sのものであってよい。当該分野の技術者には認められるであろうように、タンパク質の凝固因子としての作用能力を著しく損なわない限り、さらなる改変をFVIIaのアミノ酸配列中で行うこともできる。例えば、一般に米国特許番号5,288,629(これは本明細書に参考として援用される)に開示されているように、触媒的三徴候のFVIIaは、活性化切断部位において改変されて、チモーゲンFVIIのその活性化二本鎖形態への転換を阻害することもできる。
【0162】
本発明内で、遺伝子組換え動物技術が、ヒトFVIIaポリペプチドを生成するために用いられ得る。宿主メス哺乳類の乳腺内でタンパク質を生成することが好ましい。乳腺における発現及びその後の、関心のあるタンパク質の乳への分泌は、他の源からのタンパク質の単離において遭遇する多くの困難を克服する。乳は容易に収集でき、大量に入手可能であり、生化学的に良く性質決定されている。さらに、主要な乳タンパクは、乳中に高濃度(典型的には約1〜15g/l)で存在する。商業的な観点から、大量の乳を産出する種を宿主として使用することが明らかに好ましい。一方、マウスやラットのような小さい動物を使用することもでき(原理的な段階の証明においては好ましい)、本発明内で、ブタ、ヤギ、ヒツジ、及びウシを含むがこれらに限定されない家畜哺乳類を用いることが好ましい。ヒツジは、この種における遺伝子導入(transgenesis)の以前の歴史、乳産出量、コスト及びヒツジの乳を収集する設備が容易に入手可能なこと等の要因のために、特に好ましい。宿主種の選択に影響する要因の比較について、WIPO公報WO88/00239を参照されたい。イースト・フリースランド・シープ(East Friesland sheep)のような、酪農使用のために育種される宿主動物の品種を選択すること、或いは、遺伝子組換え系を育種することによって後日に酪農系統を導入することが、一般に望ましい。何れの場合でも、良好な健康状態の既知の動物が用いられる。
【0163】
乳腺における発現を得るため、乳タンパク遺伝子の転写プロモーターが用いられる。乳タンパク遺伝子は、カゼイン(米国特許第5,304,489、ここに参考として援用される)、ベータ-ラクトグロブリン、アルファ-ラクトグロブリン、及び乳清酸性タンパク質をコードする遺伝子を含む。ベータ-ラクトグロブリン(BLG)プトモーターが好ましい。ヒツジのベータ-ラクトグロブリン遺伝子の場合、該遺伝子の近位の少なくとも406 bpの領域の5’フランキング配列が用いられるが、しかし、約5 kbpまでのより大きな部分の5’フランキング配列、例えば、5’フランキングプロモーター及びベータ-ラクトグロブリン遺伝子の非コーディング部分を包含する4.25 kbpのDNAセグメントが好ましい。ホワイトロー(Whitelaw)らのBiochem J. 286: 31-39 (1992)を参照されたい。他の種からの同様のDNAプロモーターの断片も適切である。
【0164】
ベータ-ラクトグロブリン遺伝子の他の領域も、発現されるべき該遺伝子のゲノム領域と同じく、構築物中に組み込まれてもよい。当該分野で一般に受け入れられているように、イントロンを欠いた構築物は、例えば、そのようなDNA配列を含むものと比較して不充分に発現する(Brinster et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 836-840 (1988); Palmiter et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 478-482 (1991); Whitelaw et al.、Transgenic Res. 1: 3-13 (1991); WO 89/01343; 及び WO 91/02318を参照。それぞれ参考として本明細書に援用される)。これに関して、可能であれば、関心のあるタンパク質又はペプチドをコードする遺伝子の天然のイントロンの全部又は幾つかを含むゲノム配列を用いることが一般に好ましく、それ故、少なくとも幾つかのイントロン、例えばベータ-ラクトグロブリン遺伝子からのイントロンを含むことが好ましい。一つのそのような領域は、ヒツジのベータ-ラクトグロブリン遺伝子の3’非-コーディング領域からのイントロンスプライシング及びRNAポリアデニル化を提供するDNAセグメントである。遺伝子の天然の3’非-コーディング配列が置換されたとき、このヒツジのベータ-ラクトグロブリンセグメントは、関心のあるタンパク質又はポリペプチドの発現レベルを増強し及び安定化させることができる。他の態様において、ヒトFVIIaポリペプチドをコードする配列の開始ATGを囲む領域は、乳特異的タンパク遺伝子の対応する配列で置換される。そのような置換は、発現を増強する推定上の組織-特異的開始環境を提供する。ヒトFVIIaポリペプチドの完全なプレプロ配列及び5’非-コーディング配列を、例えば、BLG遺伝子のもので置換することは都合がよいが、しかしより小さな領域が置換され得る。
【0165】
遺伝子組換え動物におけるヒトFVIIaポリペプチドの発現のために、ヒトFVIIaポリペプチドをコードするDNAセグメントが、発現ユニットを生成するためにその発現のために必要な付加的なDNAセグメントに操作可能に結合される。そのような付加的なセグメントは、上記のプロモーター、並びに、転写の終了及びmRNAのポリアデニル化を与える配列を含む。発現ユニットはさらに、ヒトFVIIaポリペプチドをコードするセグメントに操作可能に結合された分泌性のシグナル配列をコードするDNAセグメントを含む。分泌性シグナル配列は、ヒトFVIIaポリペプチドの天然の分泌性シグナル配列であってもよく、或いは、他のタンパク質、例えば乳タンパク質のものであっても良い。例えば、ここに参考として援用される、ヴォン・ヘインジェ(von Heinje、Nuc. Acids Res. 14: 4683-4690 (1986));及びメーデら(Meade et al.、U.S. Pat. No. 4,873,316)を参照されたい。
【0166】
遺伝子組換え動物中で用いるための発現ユニットの構築は、その発現ユニットは基本的に任意のライゲーション配列によって構築されうるが、ヒトFVIIaポリペプチドをコードする配列を、付加的なDNAセグメントを含むプラスミド又はファージベクターに挿入することによって都合よく行われる。乳タンパク質をコードするDNAセグメントを含むベクターを提供すること、及び該乳タンパク質のコーディング配列をヒトFVIIaポリペプチドのもので置換することは、特に都合がよく、それによって、乳タンパク遺伝子の発現制御配列を含む遺伝子融合が作成される。何れの場合でも、プラスミド又は他のベクターにおける発現ユニットのクローニングは、ヒトFVIIaポリペプチドの増幅を促進する。増幅は、細菌(例えばE.coli)宿主細胞中で都合よく行われ、従って、そのベクターは典型的には複製開始点及び細菌宿主細胞中で機能する選択可能マーカーを含む。
【0167】
発現ユニットは、次いで、選択された宿主種の受精卵(胚嚢(embryos)初期段階を含む)に導入される。異種性DNAの導入は、マイクロインジェクション(例えば、米国特許第4,873,191)、又はレトロウイルス感染(Jaenisch、Science 240: 1468-1474 (1988))、又は胚幹(ES)細胞を用いる部位直接的組み込み(Bradleyらによる概説、Bio/Technology 10: 534-539 (1992))を含む幾つかの経路の一つによって達成することができる。次いで、卵は、偽妊娠のメスの卵管又は子宮に移植され、発育が可能にされる。導入されたDNAをその生殖系列に保持する子孫は、正常なメンデルの法則によってそのDNAを子孫に渡し、遺伝子組換え家畜の発達を可能にすることができる。
【0168】
遺伝子組換え動物を調製する一般的な方法は、当該分野で周知である。例えば、ホーガンら(Hogan et al.、Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1986);シモンら(Simons et al.、Bio/Technology 6: 179-183 (1988));ウォールら(Wall et al.、Biol. Reprod. 32: 645-651 (1985));ブーラーら(Buhler et al.、Bio/Technology 8: 140-143 (1990));エベルトら(Ebert et al.、Bio/Technology 9: 835-838 (1991));クリンペンフォルトら(Krimpenfort et al.、Bio/Technology 9: 844-847 (1991));ウォールら(Wall et al.、J. Cell. Biochem. 49: 113-120 (1992));米国特許第4,873,191及び同第4,873,316; WIPO公報WO 88/00239、WO 90/05188、WO 92/11757;及びGB 87/00458(これらは参考として本明細書に援用される)を参照されたい。外来性のDNA配列を哺乳類とそれらの胚細胞に導入する技術は、最初にマウスで発達した。例えば、ゴールドンら(Gordon et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 7380-7384 (1980));ゴールドン及びルドル(Gordon and Ruddle、Science 214: 1244-1246 (1981));パルミッター及びブリンスター(Palmiter and Brinster、Cell 41: 343-345 (1985));及びブリンスターら(Brinster et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438-4442 (1985))を参照されたい。これらの技術は、続いて、家畜種を含むより大きな動物での使用に適応された(例えば、WIPO公報WO 88/00239、WO 90/05188、及び WO 92/11757;並びにSimons et al.、Bio/Technology 6: 179-183 (1988)を参照)。概要を述べると、遺伝子組換えマウス又は家畜の生成において今日用いられている最も効果的な経路において、関心のあるDNAの数百の直線的な分子が、確立された技術に従って、受精卵の前核の一つに注入される。接合体の細胞質へのDNAの注入もまた使用されることができる。遺伝子組換え植物の生成にも用いられる。発現は、一般化されてもよく、或いは特定の器官、例えば塊茎に方向付けられてもよい。ハイアッタ(Hiatt、Nature 344:469-479 (1990));エーデルバウンら(Edelbaum et al.、J. Interferon Res. 12:449-453 (1992));シジモンら(Sijmons et al.、Bio/Technology 8:217-221 (1990));及び欧州特許庁公報EP 255,378を参照されたい。
【0169】
本発明に従って調製されたFVIIaは、抗FVII抗体カラムでの親和性クロマトグラフィーによって精製され得る。高特異性モノクローナル抗体を含む免疫吸着カラムが好ましい。ワカバヤシら(Wakabayashi et al.、J. Biol. Chem、261:11097-11108、(1986))及びチムら(Thim et al.、Biochem. 27: 7785-7793、(1988))(本明細書に参考として援用される)に開示されているようなカルシウム依存性モノクローナル抗体の使用が特に好ましい。さらなる精製は、高速液体クロマトグラフィーのような従来の化学的精製手段によって行うことができる。クエン酸バリウム沈殿を含む他の精製方法も当該分野で周知であり、ここで開示したFVIIaの精製に適用可能である(一般に、Scopes、R.、Protein Purification、Springer-Verlag、N.Y.、1982を参照されたい)。製薬的な使用のためには、少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋なFVIIaが好ましく、98〜99%以上の均一性が最も好ましい。部分的に又は所望の均一性に一旦精製されれば、FVIIaは治療的に用いることができる。
【0170】
一本鎖FVIIの活性な二本鎖FVIIaへの転換は、ヘンダー及びキシエル(Hedner and Kisiel (1983、J. Clin. Invest. 71: 1836-1841))によって開示されたように因子XIIaを用いて行ってもよく、或いは、トリプシン様特異性(Kisiel and Fujikawa、Behring Inst. Mitt. 73: 29-42、1983)を有する他のプロテアーゼで行ってもよい。或いは、FVIIは、モノQ.RTM.(Pharmacia Fire Chemicals)又は同様のもの(Bjoern et al.、1986、Research Disclosures 269:564-565)のような、イオン交換クロマトグラフィーカラムを通して自己活性化されてもよい。本発明のFVIIa分子及びそれらの薬学的組成物は、血管内凝固を含む種々の状態を治療するためにヒトに投与されるために特に有用である。
【0171】
本発明の化合物は、一以上の不斉中心を有してよく、それは立体異性体(光学異性体)を意図し、純粋又は部分的に純粋な立体異性体又はそれらのラセミ混合物が本発明の範囲内に含まれる。
【0172】
本発明内で、TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、薬学的に許容される塩の形態で、特に、有機酸塩及び鉱物酸を含む、酸付加塩の形態で調製されることができる。そのような塩の例は、ギ酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸等のような有機酸の塩を含む。適切な無機酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの塩を含む。薬学的に許容される無機又は有機酸付加塩のさらなる例には、当該分野の技術者には周知のジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンス(Journal of Pharmaceutical Science)66、2 (1977)にリストされた薬学的に許容される塩が含まれる。
【0173】
また、薬学的に許容される酸付加塩として本発明の化合物が形成し得る水和物も意図される。
酸付加塩は、化合物合成の直接的な生成物として得られる。或いは、遊離塩基を適切な酸を含んだ適切な溶媒に溶解し、その溶媒を蒸発させるか又は塩と溶媒を分離してその塩を単離してもよい。
【0174】
本発明の化合物は、技術者に周知の方法を用いて、標準的な低分子量溶媒で溶媒和化合物を形成することもできる。
【0175】
本発明のTFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、血管疾病及び炎症反応を含む血栓又は凝固障害に関連する疾患又は障害の診断、治療又は予防のための薬学的組成物の調製に有用である。そのような疾患及び反応は、これらに限定されないが、出血、深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス移植(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、脳卒中、腫瘍転移、炎症、敗血症ショック、低血圧、ARDS、肺塞栓症、播種性血管内凝固(DIC)、血管性再狭窄、血小板堆積、心筋梗塞、血管新生、又は、血栓症の危険のあるアテローム硬化型血管を有する哺乳類の予防的な治療を含む。
【0176】
TFアゴニスト及び/又はTFアンタゴニストは、薬学的に許容される酸付加塩の形態で投与されることができ、ここで、アルカリ金属又はアルカリ土類金属又は低アルキルアンモニウム塩としてが適切である。そのような塩形態は、遊離塩基形態とほぼ同じ桁の活性を示すと考えられる。
【0177】
該化合物の薬学的な使用とは別に、それらはFVIIa、FXa又はTF/FVIIa/FXa活性の阻害の調査についてのインビトロでのツールに有用である。
【0178】
<薬学的組成物>
本発明の他の目的は、TF結合接合体を含みpH2.0〜10.0である薬学的製剤を提供することである。この製剤は、バッファー系、保存剤、等張剤、キレート化剤、安定剤及び界面活性剤をさらに含んでもよい。本発明の一つの態様において、薬学的組成物は、水溶性製剤、即ち水を含む製剤である。そのような製剤は、典型的には、溶液又は懸濁液である。本発明のさらなる態様において、薬学的製剤は水溶液である。「水溶性製剤」という語は、少なくとも50% w/wの水を含む製剤として定義される。同様に、「水溶液」という語は、少なくとも50% w/wの水を含む溶液として定義され、また、「水溶性懸濁液」という語は、少なくとも50% w/wの水を含む懸濁液として定義される。
【0179】
他の態様において、該薬学的製剤は、凍結乾燥製剤であり、これに医師又は患者が溶媒及び/又は希釈剤を使用の前に加える。
他の態様において該薬学的製剤は、事前の溶解なしで使用できる乾燥製剤(例えば凍結乾燥又はスプレー乾燥)である。
【0180】
さらなる側面において本発明はTF結合接合体の水溶液及びバッファーを含む薬学的製剤に関し、ここで該製剤は、pH約2.0〜約10.0である。
【0181】
本発明の他の態様において、前記製剤のpHは、以下からなるリストから選択される:2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、及び10.0。
【0182】
本発明のさらなる態様において、前記バッファーは、以下から成る群から選択される:酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、バイシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸又はそれらの混合物。これらの具体的なバッファーのそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0183】
本発明のさらなる態様において、前記製剤は薬学的に許容される保存剤をさらに含む。本発明のさらなる態様において、該保存剤は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピル p-ヒドロキシベンゾエート、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメルサール(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミドウレア(imidurea)、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、ベンゼトニウムクロリド、クロルフェネシン(3p-クロロフェノキシプロパン-1、2-ジオール)又はそれらの混合物から成る群から選択される。本発明のさらなる態様において、前記保存剤は0.1 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記保存剤は0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記保存剤は、5 mg/ml〜10 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記保存剤は、10 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。これらの具体的な保存剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。薬学的組成物における保存剤の使用は、技術者には良く知られている。便宜上、レミングトン(Remington: The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995)が参考にされる。
【0184】
本発明のさらなる態様において、製剤はさらに等張剤を含む。本発明のさらなる態様において、前記等張剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リシン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1、2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1、3-プロパンジオール、1、3-ブタンジオール) ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、又はそれらの混合物から成る群から選択される。モノ-、ジ-、又はポリサッカリド、又は、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トリハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリンを含む水-溶解性グルカン、可溶性スターチ、ヒドロキシエチルスターチ及びカルボキシメチルセルロース-Naのような任意の糖を用いることができる。一つの態様において、前記糖添加物は、スクロースである。糖アルコールは、少なくとも一つの--OH 基を有するC4-C8 の炭化水素として定義され、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール(galacititol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一つの態様において、前記糖アルコール添加物はマンニトールである。上記の糖又は糖アルコールは、個々に又は組み合わせて用いられる。糖又は糖アルコールが液体製剤に溶解する限り、及び、本発明の方法を用いて達成される安定化効果に不利な影響を与えない限り、用いる量に固定された制限はない。一つの態様において、糖又は糖アルコールの濃度は、約1 mg/ml〜約150 mg/mlである。本発明のさらなる態様において、前記等張剤が1 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記等張剤は1 mg/ml〜7 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記等張剤は8 mg/ml〜24 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、前記等張剤は25 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。これらの具体的な等張剤はそれぞれ、本発明の代替の態様を構成する。薬学的組成物中での等張剤の使用は、技術者には周知である。便宜的な参考には、レミングトン:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が用いられる。
【0185】
本発明のさらなる態様において、該製剤はさらにキレート剤を含む。本発明のさらなる態様において、該キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、及びアスパラギン酸の塩、及びそれらの混合物から選択される。本発明のさらなる態様において、該キレート剤は0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、該キレート剤は0.1 mg/ml〜2 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる態様において、該キレート剤は2 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。これらの具体的なキレート剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。薬学的組成物中におけるキレート剤の使用は、技術者には周知である。便宜的な参考には、レミングトン:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が用いられる。
【0186】
本発明のさらなる態様において、前記製剤はさらに安定剤を含む。薬学的組成物中における安定剤の使用は、技術者には周知である。便宜的な参考には、レミングトン:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が用いられる。
【0187】
とりわけ、本発明の組成は、その治療的に活性な成分が、液状薬学的製剤での貯蔵の間凝集形成を示し得るポリペプチドを含む、安定化された液状薬学的組成物である。「凝集形成」は、結果としてオリゴマーを形成する、ポリペプチド分子間の物理的相互作用を意図し、これは可溶性を保ち、或いは、溶液から沈殿する大きい可視凝集体である。「貯蔵の間」とは、一旦調製された液状薬学的組成物又は製剤が、被験者にすぐには投与されないことを意図する。むしろ、それは調製に続いて、液体形態で、凍結状態で、或いは後で液体形態又は被験者に投与するのに適した他の形態に再構成するための乾燥形態の何れかで、貯蔵のためにパッケージされる。「乾燥形態」とは、液状薬学的組成物又は製剤が凍結乾燥(即ち、凍結乾燥法(lyophilization)、例えば、Williams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59 を参照)、スプレー乾燥(Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical、Essez、U.K.)、pp. 491-676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206; and Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照)、又は風乾(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; and Roser (1991) Biopharm. 4:47-53)の何れかによって乾燥されることを意図する。液体薬学的組成物の貯蔵の間のポリペプチドによる凝集の形成は、そのポリペプチドの生物学的な活性に不利に影響し得るものであり、その結果として、該薬学的組成物の治療的効力が損失し得る。さらにその上、凝集形成は、そのポリペプチド含有薬学的組成物を、注入システムを用いて投与する際に、チューブ、膜又はポンプを詰まらせるような他の問題も引き起こし得る。
【0188】
本発明の薬学的組成物は、該組成物の貯蔵の間のポリペプチドによる凝集の形成を減少させるのに十分な量のアミノ酸塩基をさらに含んでも良い。「アミノ酸塩基」とは、アミノ酸又はアミノ酸の組み合わせを意図し、ここで任意に与えられたアミノ酸は、その遊離塩基形態又はその塩形態の何れかで存在する。アミノ酸の組み合わせが用いられる場合、全てのアミノ酸はそれらの遊離塩基形態で存在し得、全てはそれらの塩形態で存在し得、或いは、それらの遊離塩基形態で存在するものもあればそれらの塩形態で存在するものもある。一つの態様において、本発明の組成物を調製するのに用いられるアミノ酸は、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸のような荷電側鎖を有するものである。特定のアミノ酸(例えばグリシン、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リシン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン及びそれらの混合物)の任意の立体異性体(即ち、L,D又はDL異性体)又はそれらの立体異性体の組み合わせは、特定のアミノ酸がその遊離塩基形態又はその塩形態の何れかで存在する限り、本発明の薬学的組成物中に存在し得る。一つの態様において、L−立体異性体が用いられる。本発明の組成物は、それらのアミノ酸の類縁体で処方されてもよい。「アミノ酸類縁体(analogue)」とは、本発明の液状薬学的組成物の貯蔵の間の、ポリペプチドによる凝集形成を減少させる所望の効果をもたらす、天然のアミノ酸の類縁体(derivative)を意図する。適切なアルギニン類縁体は、例えば、アミノグアニジン、オルニチン及びN−モノエチルL−アルギニンを含み、適切なメチオニン類縁体は、エチオニン及びブチオニンを含み、適切なシステイン類縁体はS-メチル-Lシステインを含む。他のアミノ酸のように、アミノ酸類縁体はそれらの遊離塩基形態で、或いはそれらの塩形態で組成物中に取り込まれる。本発明のさらなる態様において、アミノ酸又はアミノ酸類縁体は、タンパク質の凝集を予防するか又は遅延させるのに十分な濃度で用いられる。
【0189】
本発明のさらなる態様において、メチオニン(又は他の硫黄を含むアミノ酸又はアミノ酸類縁体)は、治療的薬剤として作用するポリペプチドがそのような酸化に影響されやすいメチオニン残基を少なくとも一つ含むポリペプチドである場合に、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を抑制するために加えられる。「抑制」とは、時間の経過によるメチオニン酸化型種の最小の蓄積を意図する。メチオニン酸化の抑制は、適切な分子形態でのポリペプチドのより長い維持をもたらす。メチオニンの任意の立体異性体(L,D又はLD異性体)又はそれらの組み合わせを用いることができる。加えられる量は、メチオニンスルホキシドの量が制御作用のために許容されるような、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきである。これは典型的には、その組成物がメチオニンスルホキシドを約10%〜約30%より多くは含まないことを意味する。これは一般に、メチオニン残基に加えるメチオニンの比が、約1:1〜約1000:1、例えば10:1〜約100:1の範囲であるようなメチオニンを加えることによって達成できる。
【0190】
本発明のさらなる態様において、該製剤は、高分子量ポリマー又は低分子化合物の群から選択される安定剤を含む。本発明のさらなる態様において、該安定剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、ポリビニルアルコール (PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ-/ヒドロキシセルロース又はそれらの誘導体(例えば HPC、HPC-SL、HPC-L 及び HPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸及び 2-メチルチオエタノールのような硫黄-含有物質、及び異なる塩(例えば塩化ナトリウム)から選択される。これらの具体的な安定剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0191】
薬学的組成物は、そのなかの治療的に活性なポリペプチドの安定化をさらに増強する、さらなる安定剤を含んでもよい。本発明に関心のある特定の安定化剤は、これらに限定されないが、メチオニン酸化からポリペプチドを保護するメチオニン及びEDTAを含み、また、凍結融解又は機械的剪断に付随した凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含む。
【0192】
本発明のさらなる態様において、該製剤はさらに界面活性剤を含む。本発明のさらなる態様において、該界面活性剤は、界面活性剤(detergent)、エトキシ化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えば、プロニック(R)F68、ポロキサマー188 及び 407、トリトン X-100のようなポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばアルキル化及びアルコキシル化誘導体(トゥイーン、例えば、トゥイーン-20、トゥイーン-40、トゥイーン-80 及び ブリッジ(Brij)-35)のようなポリオキシエチレン及びポリエチレン誘導体、モノグリセリド又はそれらのエトキシル化誘導体、ジグリセリド又はそれらのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レシチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸) 及びリゾリン脂質(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリン及びエタノールアミン、コリン、セリン又は スレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル) 及びリゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び極性頭部の改変体、即ちコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、及び 陽性荷電DODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン及びリゾホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えば、セファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピランゾイド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、雌鳥卵(hen egg)リゾレシチン、フシジン酸誘導体-(例えば、タウロ-ジヒドロフシジン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそれらの塩C6-C12(例えば、オレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、又は、リジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジン及び中性又は酸性アミノ酸の任意の組み合わせを含むジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸及び二荷電アミノ酸の任意の組み合わせを含むトリペプチドのNα-アシル化誘導体、DSS (ドクセート(docusate)ナトリウム、CAS 登録番号[577-11-7])、ドクセートカルシウム、CAS 登録番号[128-49-4])、ドクセートカリウム、CAS 登録番号[7491-09-0])、SDS (ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はそれらの誘導体、胆汁酸及びそれらの塩及びグリシン又はタウリン接合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N、N-ジメチル3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、陰イオン性(アルキル-アリール-スルホネート) 一価界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N、N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-コルアミド(cholamido)-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート)、陽イオン性界面活性剤(4級アンモニウム塩基) (例えば、臭化セチル-トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシル β-D-グルコピラノシド)、ポロキサミン(例えば、テトロニクス(Tetronic’s))(エチレンジアミンへの酸化プロピレン及び酸化エチレンの逐次付加に由来する四官能性ブロックコポリマー)、から選択され、或いは、該界面活性剤はイミダゾリン誘導体の或いはそれらの混合物の群から選択される。それらの具体的な界面活性剤のそれぞれは、本発明の代替の態様を構成する。
【0193】
薬学的組成物中での界面活性剤の使用は、技術者には周知である。便宜上、参考にはレミングトン:The Science and Practice of Pharmacy、19th edition、1995が用いられうる。
【0194】
他の成分が、本発明のペプチド薬学的製剤中に存在してもよい。そのような付加的な成分は、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、張度調節剤、キレート剤、金属イオン、油性溶媒、タンパク質(例えば、ヒト血漿アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び双性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リシン、及びヒスチジンのようなアミノ酸)を含んでよい。そのような付加的な成分は、勿論、本発明の薬学的製剤の全体的な安定性に不利に影響すべきではない。
【0195】
本発明のTF結合接合体を含む薬学的組成物は、そのような治療を必要とする患者に幾つかの部位において、例えば局所的な部位、例えば肌及び粘膜部位、吸収をバイパスする部位、例えば、動脈、静脈、心臓における投与、及び吸収に関与する部位、例えば、肌、皮下、筋肉または腹部において、投与されることができる。
【0196】
本発明による薬学的組成物の投与は、幾つかの投与経路、例えば、舌、舌下、頬側、 口中、経口、胃及び腸内、経鼻、肺性、例えば気管支梢及び肺胞又はそれらの組み合わせを介して、上皮性、真皮性、経皮的、膣、直腸、眼球、例えば結膜を介して、輸尿管、及び非経口的を介して、そのような治療を必要とする患者に行われ得る。
【0197】
現発明の組成は、幾つかの投与形態、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ミクロエマルジョン、マルチプルエマルジョン(multiple emulsion)、気泡、膏薬、ペースト、硬膏剤、軟膏剤、錠剤、被覆された錠剤、リンス、カプセル、例えば硬性ゼラチンカプセル及び軟性ゼラチンカプセル、坐薬、直腸カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、粉末、エアロゾル、吸入剤、点眼、眼軟膏、眼のリンス、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏、注入溶液、インサイチュー・トランスフォーミング溶液、例えば、インサイチュー・ゲル化、インサイチュー・硬化、インサイチュー・沈殿、インサイチュー・結晶化、注入溶液、及び植込錠のような投与形態として投与されることができる。
【0198】
本発明の組成物はさらに、TF結合接合体の安定性をさらに増強するため、生物学的利用能を上昇させるため、溶解性を上昇させるため、不利な影響を減少させるため、当該分野の技術者に周知の時間治療を達成するため、及び患者のコンプライアンスを上昇させるため、又はそれらの組み合わせのために、例えば、共有結合性の、疎水性の及び静電気的な相互作用を介して、薬物担体、薬物輸送システム及び進行型の薬物輸送システム中に配合されるか、或いはそれらに属されることができる。担体、薬物輸送システム及び進行型の薬物輸送システムの例には、これらに限定されないが、ポリマー、例えばセルロース及び誘導体、ポリサッカリド、例えばデキストラン及び誘導体、スターチ及び誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレート及びメタクリレートポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそれらのコポリマーブロック、ポリエチレングリコール、担体タンパク質、例えばアルブミン、ゲル、例えばサーモゲルシステム、例えば当該分野の技術者に周知のブロックコポリマーシステム、ミセル、リポソーム、微粒子、ナノ微粒子、液晶及びそれらの分散系、L2相及びそれらの分散系、油-水系で挙動する当該分野の技術者に周知の相、重合体のミセル、マルチプルエマルジョン、自己乳化、自己ミクロ乳化、シクロデキストリン及びそれらの誘導体、及びデンドリマー(dendrimers)が含まれる。
【0199】
固体担体の例は、ラクトース、石膏、スクロース、タルク、ゼラチン、アガー、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸である。液体担体の例は、シロップ、ピーナツ油、オリーブ油及び水である。同様に、担体又は希釈剤は、単独で又はワックスと混合された、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレートのような、当該分野で既知の任意の時間遅延物質を含んでもよい。製剤は、湿潤剤、乳化剤、及び懸濁剤、保存剤、甘味剤又は香味剤を含んでも良い。本発明の製剤は、当該分野で周知の手法を用いて患者に投与された後に、活性成分の急速な、持続的な又は遅延された放出を提供するように処方され得る。
【0200】
現発明の組成物は、例えばメータド投与吸入器、乾燥粉末吸入器及び噴霧器のような、当該分野の技術者には全て周知であるデバイスを用いた、TF結合接合体の肺投与のための、固体、半固体、粉末及び液体の製剤において有用である。
【0201】
現発明の組成物は、制御された、持続的な、遅延性の(protracting)、遅滞性の(retarded)及び緩徐な放出の薬物輸送システムの製剤において特に有用である。とりわけ、これに限定されないが、組成物は、当該分野の技術者に周知である、非経口的な制御された放出及び持続的な放出システム(何れのシステムも、投与数において数倍の減少をもたらす)の製剤において有用である。制御された放出及び持続的な放出システムで皮下に投与されることがより好ましい。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御された放出システム及び組成物は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマーミセル、微粒子、ナノ粒子である。
【0202】
現発明の組成物に有用な制御された放出システムを調製する方法は、これに限定されないが、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧均質化、封入、スプレードライ、マイクロ封入、コアセルベーション、相分離、微粒子生成のための溶媒蒸発、押し出し及びスーパークリティカルフロー方法を含む。一般的な参考には、薬学的制御放出ハンドブック(Wise、D.L.、ed. Marcel Dekker、New York、2000)及び、薬物及び薬学科学99巻:タンパク質製剤及び輸送(MacNally、E.J.、ed. Marcel Dekker、New York、2000)が参考にされる。
【0203】
非経口投与は、シリンジ、任意のペン様シリンジのような方法によって、皮下、筋肉内、腹腔内又は静脈内注射によって行われ得る。或いは、非経口投与は、注入ポンプによって行われることもできる。さらなる選択肢は、経鼻又は肺性スプレーの形態でのTF結合接合体の投与のための溶液又は懸濁液である組成物である。さらなる選択肢として、本発明のTF結合接合体を含む薬学的組成物は、経皮的な投与、例えば、無針注射又はパッチ、任意にイオントフォレーシスパッチ、或いは、経粘膜的、例えば頬側、の投与に適用されることもできる。
【0204】
「安定化された製剤」という語は、物理的安定性が上昇された製剤、化学的安定性が上昇された製剤、又は物理的及び化学的安定性が上昇された製剤を指す。
【0205】
タンパク質製剤の「物理的安定性」という語は、ここで用いられる場合、タンパク質の熱-機械的ストレスへの曝露の結果として、及び/又は疎水性面及び境界のような、不安定化される境界及び面との相互作用の結果として、生物学的不活性及び/又は不溶性のタンパク質の凝集を形成するタンパク質の傾向を指す。水溶性タンパク質製剤の物理的安定性は、適切な容器(例えばカートリッジ又はバイアル)に充填したその製剤を、機械的/物理的ストレス(例えば攪拌)に異なる温度で種々の時間曝露した後に、可視的な検査及び/又は濁度測定を行うことによって評価される。製剤の可視検査は、暗い背景中、鋭い焦点光で行われる。製剤の濁度は、例えば0〜3のスケール上で濁度の程度をランク付けした可視スコアによって特徴付けられる(濁度を示さない製剤は可視スコア0に対応し、昼光下で可視濁度を示す製剤は可視スコア3に対応する)。製剤は、タンパク凝集に関する物理的不安定を分類され、このとき、可視的濁度は昼光下で示される。或いは、製剤の濁度は、技術者には周知の単純な濁度計で評価されることもできる。水溶性タンパク質製剤の物理的安定性は、分光学的薬剤又はタンパク質の立体配置的な状態のプローブ(probe)を用いて評価されても良い。プローブは、好ましくは、タンパク質の非天然配座に優先的に結合する小分子である。タンパク質の構造の小分子分光学的プローブの一つの例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド原繊維の検出に広く用いられている蛍光染料である。原繊維、及び、恐らくその上他のタンパク質立体配置の存在下で、チオフラビンTは結合してフィブリルタンパクを形成したとき、最大約450 nmの新しい励起を生じ、及び約482 nmの発光を増強させる。非結合チオフラビンTは、その波長で基本的に非蛍光性である。
【0206】
他の小分子も、タンパク質構造の天然から非天然状態への変化のプローブとして用いられることができる。例えば、曝露されたタンパク質の疎水性パッチに優先的に結合する「疎水性パッチ」プローブ。疎水性パッチは、一般に、天然状態にあるタンパク質の三次構想内に埋められ、しかし、タンパク質が展開又は変性し始めるとき曝露される。これらの小分子、分光学的なプローブの例は、芳香族、疎水性染料、例えばアントラセン、アクリジン、フェナントロリン等である。他の分光学的なプローブは、金属-アミノ酸複合体、例えば、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリンなどのような疎水性アミノ酸のコバルト金属複合体である。
【0207】
タンパク質製剤の「化学的安定性」という語は、ここで用いられる場合、天然のタンパク質構造と比較して少ない生物学的効能のポテンシャル及び/又は上昇した免疫原性性質のポテンシャルを有する化学的分解産物の形成を導くタンパク質構造における化学的共有結合変化を指す。種々の化学的分解産物は、天然のタンパク質のタイプ及び性質、及びそのタンパク質が曝露される環境に依存して形成される。化学的分解の排除は、恐らく、完全には避けられず、当該分野の技術者に周知のように、化学的分解質産物の量の上昇はしばしば貯蔵及びタンパク質製剤の使用の間に見られる。殆どのタンパク質は、アミド分解を起こし易く、グルタミニル又はアスパラギニル残基の側鎖アミド基における処理が加水分解して遊離のカルボン酸を形成する。他の分解経路は、高分子量形質転換産物の形成に関与し、二以上のタンパク質分子がアミド基転移及び/またはジスルフィド相互作用を介してお互いに共有結合し、共有結合ダイマー、オリゴマー、及びポリマー分解産物の形成をもたらす(Stability of Protein Pharmaceuticals、Ahern. T.J. & Manning M.C.、Plenum Press、New York 1992)。酸化(例えばメチオニン残基の)は、化学的分解の他の変異形ということができる。タンパク質製剤の化学的安定性は、異なる環境状況(分解産物の形成は、しばしば、例えば温度上昇によって促進され得る)に曝露した後の、種々の時間点における化学的分解産物の量を測定することによって評価することができる。それぞれの分解産物の量は、しばしば、分子サイズ及び/または電荷に依存して、種々のクロマトグラフィー技術(例えば、SEC-HPLC及び/またはRP-HPLC)を用いて、分解産物を分離して測定される。
【0208】
それ故、上記概要のように、「安定化された製剤」は、上昇された物理的安定性、上昇された化学的安定性、または上昇された物理的及び化学的安定性を有する製剤を指す。一般に、製剤は有効期限に達するまでは、使用及び貯蔵の間(推奨される使用及び貯蔵状態に応じて)安定でなければならない。
【0209】
本発明の一つの態様において、TF結合接合体を含む薬学的製剤は6週間より長い使用及び3年より長い貯蔵に安定である。
【0210】
本発明の他の態様において、TF結合接合体を含む薬学的製剤は、4週間より長い使用、及び3年より長い貯蔵に安定である。
【0211】
本発明のさらなる態様において、TF結合接合体を含む薬学的組成物は、4週間より長い使用及び2年より長い貯蔵に安定である。
【0212】
本発明のさらなる態様において、TF結合接合体を含む薬学的製剤は、2週間より長い使用及び2年より長い貯蔵に安定である。
【0213】
任意に、本発明の薬学的組成物は、抗凝固活性を示す一以上の他の化合物、例えば、血小板凝集阻害剤と組み合わせて、TFアンタゴニストを含んでよい。
【0214】
ここで用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗真菌剤等をも包含する。任意の便利な媒体が活性成分及びその意図された使用と不適合であることを除く限りにおいて、本発明の組成物における使用が期待される。
【0215】
薬学的組成物は、滅菌され、及び、必要であれば、活性化合物と有害な反応をしない補助剤、乳化剤、浸透圧に影響するための塩、バッファー及び/又は着色物質などと混合されることができる。
【0216】
投与経路は活性化合物を適切な又は所望の作用部位に効率的に輸送する任意の経路でよく、経口又は、例えば直腸、経皮、皮下、鼻腔内、筋肉内、局所的、静脈内、尿道内、点眼剤又は軟膏のような非経口であり、好ましくは経口経路である。
【0217】
経口投与のために固体担体を用いる場合、製剤は錠剤化されることができ、硬性ゼラチンカプセル中におかれてもよく、粉末又はペレット形態であってもよく、或いは、トローチ又はロゼンジの形態であってもよい。固体担体の量は広く変動可能であるが、通常は、約25mg〜約1gである。液体担体を用いる場合は、製剤はシロップ、エマルジョン、軟性ゼラチンカプセル又は水溶性又は非水溶性液体懸濁液又は溶液のような滅菌注射用液体の形態であってよい。
【0218】
経鼻投与のためには、製剤は、エアロゾルの適用のための、液体担体、特に水溶性担体中に溶解又は懸濁された式(I)の化合物を含む。担体は、可溶化剤、例えばプロピレングリコール、界面活性剤、レシチン(ホスファチジルコリン)又はシクロデキストリンのような吸着賦活薬(enhancers)、或いはパラベンのような保存剤のような、添加物を含んでも良い。
【0219】
非経口的な適用のためには、注入可能溶液又は懸濁液が特に適切であり、ポリヒドロキシル化ヒマシ油に溶解された活性化合物の水溶液が好ましい。
【0220】
タルク及び/又は糖担体又は結合剤等を有する錠剤、糖剤、又はカプセルは、特に経口適用に適している。錠剤、糖剤、又はカプセルのために好ましい担体は、ラクトース、コーンスターチ、及び/又はポテトスターチを含む。シロップ又はエリキシル剤は、加糖溶媒が使用できる場合に用いることができる。
【0221】
典型的な錠剤は、従来の錠剤化技術によって調製可能であり、以下を含む。
【0222】
コア:
活性化合物(遊離化合物又はそれらの塩として) 10 mg
コロイド性シリコンジオキシド(アレオシル(R)) 1.5 mg
セルロース、微結晶(アビセル(R)) 70 mg
改変セルロースゴム(Ac-Di-Sol(R)) 7.5 mg
ステアリン酸マグネシウム
コーティング:
HPMC 約 9 mg
*ミワセット(Mywacett)(R)9-40 T 約0.9 mg
フィルムコーティングのための可塑剤として使用される*アシル化モノグリセリド。
【0223】
本発明の化合物は、哺乳類、特に、上記のような種々の血栓溶解性又は凝固障害性疾患又は障害の治療、予防、排除、軽減、回復を必要とするヒトに投与され得る。そのような哺乳類は、動物をも含み、家畜、例えば家庭のペット、及び野生動物のような非家畜動物の双方を含み得る。
【0224】
通常、経口、経鼻、肺性又は経皮投与に適した投与形態は、約0.001 mg〜約100 mg、好ましくは約0.01 mg〜約50 mgの式Iの化合物と、薬学的に許容される担体又は希釈剤との混合物を含む。
【0225】
化合物は、経口的、直腸的又は非経口的(皮下)経路に関わらず、薬学的に許容される担体又は希釈剤と同時に(concurrently)、同時に(simultaneously)、又は一緒に投与されることができる。化合物はしばしば、及び好ましくは、それらのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の形態である。
【0226】
適切な投与量範囲は、上記のように、投与の正確な様式、投与される形態、その投与が向けられる徴候、関わる被験者及び関わる被験者の体重、及び、担当の医師又は獣医師の選択及び経験に依存して変動する。
【0227】
本発明の化合物は、興味深い薬理学的な性質を有する。例えば、本発明の化合物は、血液凝固因子又はそれらの阻害剤の欠損又は機能不全によって起こる、哺乳類の障害性の止血バランスを変調及び正常化するために用いられることができる。FVIIa及び特にTF/FVIIA活性は、凝固カスケードの制御において重要な役割を果たし、本発明のように、この鍵となる制御活性のモジュレーターは、血管性疾患及び炎症反応を含む血栓性又は凝固障害関連疾患又は障害の治療又は予防に用いられることができる。本発明の薬学的組成物は、従って、哺乳類の障害性止血バランスの変調及び正常化するために有用である。特に、該薬学的組成物は、血管性疾患及び炎症反応を含む血栓性又は凝固障害関連疾患又は障害の治療又は予防のために用いられることができる。
【0228】
「障害性の止血バランスの変調及び正常化」は、インビトロアッセイ及び/又は血栓症又は出血の危険性を減少する動物モデルにおいて測定可能な凝固システムに効果を与えることを意味する。
【0229】
とりわけ、該薬学的組成物は、哺乳類における血液凝固の阻害剤として、哺乳類における凝固活性の阻害剤として、哺乳類におけるフィブリンの堆積の阻害剤として、哺乳類における血小板堆積の阻害剤として、深部静脈血栓症、動脈血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス移植(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、脳卒中、腫瘍転移、炎症、敗血症ショック、低血圧、ARDS、肺塞栓症、播種性血管内凝固 (DIC)、血管性再狭窄、血小板堆積、心筋梗塞、血管新生を罹患している哺乳類の治療において、又は血栓症の危険のあるアテローム硬化型血管を有する哺乳類の予防的な治療において有用である。
【0230】
さらにその上本発明は、哺乳類におけるTF惹起活性の阻害のための方法に関連し、該方法は、本発明の少なくとも一つの化合物の有効量を、薬学的に許容される希釈剤及び/又は担体と組み合わせて、そのような治療を必要とする哺乳類に投与することを含む。
【0231】
<アッセイ>
TFアンタゴニストFXa発生アッセイによる、FXのFVIIa/リン脂質を包埋したTF-触媒活性化の阻害(アッセイ1):
以下の例において、濃度は全て最終濃度である。HBS/BSA (50 mM hepes、pH 7.4、150 mM NaCl、5 mM CaCl2、1 mg/ml BSA)中の、脂質化された(Lipidated)TF (10 pM)、FVIIa (100 pM) 及び TFアンタゴニスト又は FFR-rFVIIa (0 - 50 nM) を、FX (50 nM)を加える前に、60 分、室温でインキュベートした。さらに10分後、この反応は、1/2容量の停止バッファー (50 mM Hepes、pH 7.4、100 mM NaCl、20 mM EDTA)を加えて停止した。FXa発生量は、基質S2765 (0.6 mM、Chromogenix)を添加し、405 nmでの吸光度を連続的に10分間測定して測定した。FVIIa/脂質化TFが媒介するFXの活性化のTFアンタゴニスト阻害のIC50値を算出した。このアッセイにおけるFFR-rFVIIaのIC50値は51 +/- 26 pMであった。
【0232】
TFアンタゴニストによるFXのFVIIa/細胞表面TF-触媒活性化の阻害 (アッセイ2):
以下の例において、濃度は全て最終濃度である。恒常的にTFを発現する、ヒト肺線維芽細胞の単層WI-38 (ATTC No. CCL-75) 又はヒト膀胱癌腫細胞株J82 (ATTC No. HTB-1)又はヒトケラチノサイト細胞株CCD 1102KerTr (ATCC no. CRL-2310)を、FXのFVIIa/TF 触媒活性のTF源として用いた。96ウェルプレートにおける集密的な細胞単層を、バッファーA(10 mM Hepes、pH 7.45、150 mM NaCl、4 mM KCl、及び 11 mM グルコース)で一回洗浄し、バッファー B (1 mg/ml BSA 及び 5 mM Ca2+を補充したバッファーA)で一回洗浄した。バッファー B 中のFVIIa (1 nM)、FX (135 nM) 及び種々の濃度のTFアンタゴニスト又はFFR-rFVIIa を、同時に細胞に加えた。15分間、37°CでFXaを形成させた。各ウェルから50-μl分取を取り出し、50 μlの停止バッファー (10 mM EDTA 及び 1 mg/ml BSAを補充したバッファー A)に加えた。FXa発生量を、マイクロタイタープレートウェルに上記混合物を50μl移動させ、25μlのクロモジム(Chromozym)X(最終濃度0.6 mM)をウェルに加えて測定した。405 nmで吸光度を連続的に測定し、色展開(colour development)の初速度を、FXa標準曲線を用いてFXa濃度に転換した。このアッセイにおいて、FFR-rFVIIa のIC50値は、1.5nMであった。
【0233】
TFアンタゴニストによる125I-FVIIaの細胞表面TFへの結合の阻害(アッセイ3):
以下の例において、濃度は全て最終濃度である。結合研究は、恒常的にTFを発現する、ヒト膀胱癌腫細胞株J82 (ATTC No. HTB-1)又はヒトケラチノサイト細胞株CCD 1102KerTr (ATCC no. CRL-2310)又はNHEK P166 (Clonetics No. CC-2507)を、用いて行った。24ウェル組織培養プレートにおける集密的な単層を、5 mM EDTAを補充したバッファー A (10 mM Hepes、pH 7.45、150 mM NaCl、4 mM KCl、及び 11 mM グルコース)で一回洗浄し、次いで、バッファー Aで一回、バッファー B (1 mg/ml BSA 及び 5 mM Ca2+を補充したバッファー A)で一回洗浄した。単層は100μlのコールドバッファーBで2分間前インキュベートした。種々の濃度のMabs (又はFFR-FVIIa)及び放射能標識化 FVIIa (0.5 nM 125I-FVIIa)を、細胞に同時に加えた(最終容量200 μl)。プレートを2時間4℃でインキュベートした。インキュベートの終わりに、非結合性物質を取り除き、細胞を氷冷バッファーBで4回洗浄し、300 μl の溶解バッファー (200 mM NaOH、1 % SDS 及び 10 mM EDTA)に溶解した。放射能活性を、ガンマカウンター(Cobra、Packard Instruments)で測定した。結合データを分析し、GraFit4 (Erithacus Software、Ltd.、(U.K.)を用いて曲線を適合させた。このアッセイにおいて、FFR-rFVIIa のIC50値は、4nMであった。
【0234】
バイオセンサーアッセイ(アッセイ4):
TFアンタゴニストを、TFアンタゴニストの標準溶液を、TF固定化チップ上を通過させることによって、バイオコア( Biacore)装置で試験した。続いて、150 mM NaCl、10 mM CaCl2 及び0.0003 % ポリソルベート20を含有する、10 mM ヘーペス(hepes) pH 7.4 中の異なる濃度のTFで行った。Kd'sは、集積(integrated)バイオコア(Biacore)評価ソフトウェアを用いてセンソルグラム(sensorgrams)から算出した。
【0235】
本発明は、さらに、以下の例によって説明される。
本発明は、本発明の多くの側面を説明するための例、及び、機能的に相当する任意の態様において開示された具体的な態様の範囲に限定されるべきではない。当該分野の技術者には、本明細書における本発明の記載の具体的な態様に相当するものが分かるか、日常的な実験によって確認できるであろう。これら及び他の等価物の全ては、以下の請求項によって包囲されるように意図される。
【実施例】
【0236】
[例1]
放射性核種を含むTFアンタゴニストの輸送のための、放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)の一般的な構成:
【化1】

【0237】
模式的な図解において、選択された放射性核種は、FVIIa阻害剤D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン(DFFR-cmk)に結合される。これは、他の全てのFVIIa阻害剤に広げられる。「リンカー」とは、LMの他の部分を指し、これは放射性核種を含む化合物をFVIIaポリペプチドから分離する。FVIIa阻害剤を含む放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)が、FVIIaポリペプチドと反応して本発明のTFアンタゴニストを与えることが理解されよう。放射性核種は、TFが存在する細胞に又は細胞中に輸送される。
該受容体は、従来の化学、例えばボルトン-ハンターを用いて放射性核種と結合されることができる任意の基であってよい。
【0238】
[例6]
放射性核種を含むTFアンタゴニストの輸送のための、放射性核種リンカー部分接合体のC-(LM)の具体的な構成:
【化2】

【0239】
模式的な図解において、放射性核種I125は、FVIIa阻害剤D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン(DFFR-cmk)に結合される。これは、他の全てのFVIIa阻害剤に広げられる。FVIIa阻害剤を含む放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)が、FVIIaポリペプチドと反応して本発明のTFアンタゴニストを与えることが理解されよう。放射性核種は、TFが存在する細胞に又は細胞中に輸送される。該受容体は、従来の化学、例えばボルトン-ハンターを用いて放射性核種と結合されることができる任意の基であってよい。
【0240】
[例7]
標的細胞の画像診断のための放射性核種を含むTFアンタゴニストの使用のための、放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)の具体的な構成:
【化3】

【0241】
模式的な図解において、放射性核種Tcm99は、FVIIa阻害剤D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン(DFFR-cmk)に結合される。これは、他の全てのFVIIa阻害剤に広げられる。FVIIa阻害剤を含む放射性核種リンカー部分接合体C-(LM)が、FVIIaポリペプチドと反応して本発明のTFアンタゴニストを与えることが理解されよう。放射性核種は、TFが存在する細胞に又は細胞中に輸送される。該受容体は、従来の化学、例えばボルトン-ハンターを用いて放射性核種と結合されることができる任意の基であってよい。
【0242】
[例8]
I-123によるrFVIIaの標識化。
1000 μlのグリシルグリシンバッファー中の200 μgのタンパク質を、370 MBqの123Iで標識化した。I-123ヨウ素化において高い標識効率を得るために、放射性活性ヨウ素は、総ヨウ素含量3 nmolのKIの形態にある非放射性活性ヨウ素で希釈した。標識化は、酸化システムとして過酸化水素(H2O2、10 μl、1 mM)及びラクトペルオキシダーゼ(40 μl、0.1 μg/μl)を用いて行った。
【0243】
ヨウ素化の後、形成された[123I]rFVIIaを、小サイズ排除カラム(NAP 10)を通して脱塩することによって未反応のヨウ素から分離した。0.5% RSA (vehikel: 10 mM グリシルグリシン、150 mM NaCl、10 mM CaCl2、pH 7.5)を含む1.5 ml の溶媒でカラムを溶出した。産物を、必要とする規格のために、溶媒(vehikel)及びrFVIIaでさらに調整した。
【0244】
最後に、VYDAC C4カラム、放射シグナルのイン-ライン・モニタリングによる逆相クロマトグラフィーで、放射化学的純度を測定した。放射化学的純度は、>95%で、主な不純物はタンパク質に関連した。
【0245】
[例9]
他のヨウ素同位体によるrFVIIaの標識化。
上記方法は、他のヨウ素同位体、例えば125I、124I、130I、132I、135Iによる標識化にも適用される。また、他のハロゲン同位体(臭素、アステート(astate))による標識化においても予測されうる。
【0246】
[例10]
他の酸化剤によるrFVIIaの標識化
さらに、クロラミン-T、ヨードゲン(Iodogen)、ヨードビーズ(Iodobeads)、ヨウ素酸塩、亜硝酸ナトリウム等のような他の酸化システムを、H2O2/ラクトペルオキシダーゼの代わりに用いても良い。
【0247】
[例11]
64Cu、90Y又は111InによるrFVIIaの標識化。
タンパク質は、DTPA、TETA、DOTA 又は、通常、それら各々の無水物の形態である他の適切な配位基で誘導体化されることができる。タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーによって未反応配位基から分離される。得られた誘導体化タンパク質は、適切なバッファー中で処方され、放射性核種溶液と混合され、1〜2時間インキュベートされる。得られる溶液を使用することができるか、或いは精製が必要であるかは、標識化の効率(即ち、どれほどの放射性核種が、誘導体化タンパク質に「補足された」か)に依存する。未反応の放射性核種からの分離は、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、親和性クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー等を用いて行うことができる。
【0248】
[例12]
[99mTc(H2O)3(CO)3]+の調製。
99mTcO4- (1 mL、1 GBq/mL)を、アイソリンク(Isolink)TM カルボニル標識試薬を含むバイアルに加えた。アイソリンクTM は、次の凍結乾燥塩から構成される:酒石酸塩ナトリウム(8.5 mg)、四ホウ酸ナトリウム(2.85 mg)、炭酸ナトリウム(7.15 mg) 及びボラノカルボネートナトリウム(sodium boranocarbonate)(4.5 mg)。反応混合物を堅く密封し、攪拌した(100℃、25〜30分)。室温に到達した後、該溶液をHCl(〜2 ml、0.1 N)で酸性化した(pH 4.5〜4.75)。粗製産物(HPLCによれば、>85%の[99mTc(H2O)3(CO)3]+)を、精製せずに次の工程に使用した。HPLC:Merck Hitachi HPLC 及び Moelsgaard放射能検出器、勾配0-5分100%A、5〜6 分 0〜25%B、6〜9 分 25〜34% B、9〜20 分 34〜100% B、溶媒A: TEAP 0.5 M、溶媒 B: MeOH、カラム: Luna C18 250 mm x 4.6 mm、5 μm、Flow 1 mL/分。
【0249】
[99mTc(CO)3]rFVIIaの調製。
[99mTc(H2O)3(CO)3]+ (0.5 mL、0,3 GBq/mL)を、rFVIIa (1.4 mg/mL、0.6 mL)に加えた。得られた混合物を、生理食塩水(0.9% w/w NaCl、3.1 mL)で希釈し、該反応混合物を穏やかに攪拌した(37℃、90分)。粗製産物を、NAP-10 固相抽出カラム(グリシルグリシン 0,1 M NaCl 1.0 M、CaCl 0.1 M、HAS 0.5 w/w%、1 mL)を用いて脱塩した。脱塩後、[99mTc(CO)3]rFVIIaの放射化学的純度はHPLCによれば>90%であった。HPLC:Merck Hitachi HPLC及びBerthold放射能検出器、勾配0〜30分 0〜100% B、溶媒 A: TFA 0.1%、MeCN 10%. B: TFA 0.1% MeCN 90%、カラム: Vydac C4 250 mm x 4.6 mm、5 μm、流速1 mL/分。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1−1】配列表
【図1−2】配列表の続き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A-(LM)-Cを有する化合物、ここで、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物である。
【請求項2】
AがTFアゴニストである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記TFアゴニストが、天然のヒトFVIIa又はそれらの変異体である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
AがTFアンタゴニストである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記TFアンタゴニストが、不活性FVIIaポリペプチドである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記不活性FVIIaポリペプチドが、その活性部位で触媒的に不活性化された天然のヒトFVIIa又はそれらの断片である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記不活性FVIIaポリペプチドが、その活性部位で触媒的に不活性化された天然のヒトFVIIaである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
C又は(LM)-Cが、FVIIaポリペプチドの活性部位に結合する、請求項5〜7の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の化合物であって、前記FVIIaポリペプチドが、以下から成る群から独立的に選択されるクロロメチルケトン阻害剤によってその活性部位で触媒的に不活性化された化合物:Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Phe-ArgクロロメチルケトンPhe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン及びD-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Arg クロロメチルケトン、ダンシル-L-Glu-Gly-Arg クロロメチルケトン及びダンシル-D-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか一項に記載の化合物であって、LMが、以下から成る群から独立的に選択されるクロロメチルケトン阻害剤を含む化合物:Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Arg クロロメチルケトン、D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、L-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン及びD-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Phe-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-D-Phe-Pro-Argクロロメチルケトン、ダンシル-L-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン及びダンシル-D-Glu-Gly-Argクロロメチルケトン;ここにおいて、前記不活性FVIIaポリペプチドは、前記クロロメチルケトン阻害剤によってその活性部位で触媒的に不活性化される。
【請求項11】
前記TFアンタゴニストが、TFに対する抗体である、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
前記抗体は、ヒトTFに対するヒトモノクローナル抗体である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Cが、Tc-99m、ヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、及びフッ素-18から成るリストから選択される放射性核種を含む化合物である、請求項1〜12の何れか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Cが、タンパク質又はペプチドを含む、請求項1〜13の何れか一項に記載の化合物。
【請求項15】
C又は(LM)-Cが、Aのグリコシル化側鎖において結合する、請求項1〜9、11〜14の何れか一項に記載の化合物。
【請求項16】
C又は(LM)-Cが、A上に存在するフリーのスルフヒドリル基に結合する、請求項1〜9、11〜14の何れか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記化合物が二以上のTF結合部位を含む、請求項1〜16の何れか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記LMが、アミノ酸配列を含む、請求項1〜17の何れか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記LMが、Gly-Glyのアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか一項に記載の化合物であって、LMが以下から成る群から選択される分子を含む化合物:直鎖又は分枝鎖のC1-50-アルキル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルケニル、直鎖又は分枝鎖のC2-50-アルキニル、炭素及び少なくとも一つのN、O又はS原子を鎖中に含む、1〜50-員の直鎖又は分枝鎖、C3-8シクロアルキル、炭素及び少なくとも一つのN、O 又はS原子を環中に含む、3〜8-員の環、アリール、ヘテロアリール、アミノ酸、次の基の一以上で任意に置換された構造:H、ヒドロキシ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、チエニル、オキソ、アミノ、C1-4-アルキル、−CONH2、−CSNH2、C1-4 モノアルキルアミノ、C1-4 ジアルキルアミノ、アシルアミノ、スルホニル、カルボキシ、カルボキサミド、ハロゲノ(halogeno)、C1-6 アルコキシ、C1-6 アルキルチオ、トリフルオロアルコキシ、アルコキシカルボニル、ハロアルキル。
【請求項21】
LMが、化学的還元によって切断され得る化学的結合を含む、請求項1〜20の何れか一項に記載の化合物。
【請求項22】
LMがジスルフィド結合を含む、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記ジスルフィド結合は、二つのシステインの間である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
LMは、プロテアーゼ加水分解の切断部位を含む、請求項1〜21の何れか一項に記載の化合物。
【請求項25】
前記プロテアーゼが、カテプシン B、カテプシン D、カテプシン E、カテプシン G、カテプシン H、カテプシン L、カテプシン N、カテプシン S、カテプシン T、カテプシン K、及び、レグマイン(legumain)から成る群から選択される、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記プロテアーゼは、カテプシン Bである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
LMが、アミノ酸配列Phe-Argを含む、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
式A-(LM)-Cを有する化合物の量、及び、薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む薬学的組成物であって、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物である、薬学的組成物。
【請求項29】
式A-(LM)-Dを有する化合物が請求項1〜28の何れか一項によるものである、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
式A-(LM)-Cを有する薬剤として使用するための化合物であって、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物であり;前記化合物はTFに結合してTF機能を阻害することを特徴とする化合物。
【請求項31】
前記式A-(LM)-Dを有する化合物は、請求項1〜27の何れか一項によるものである、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害の診断、予防又は治療のための薬剤の製造のための、式A-(LM)-Cを有する化合物の使用であって、AはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物である使用。
【請求項33】
前記式A-(LM)-Dを有する化合物は、請求項1〜27の何れか一項によるものである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害は、出血、深部静脈血栓症、動脈性血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス移植(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、脳卒中、癌、腫瘍成長、腫瘍転移、血管新生、虚血/再灌流、リウマチ様関節炎、血栓溶解、動脈硬化症及び血管形成術後の再狭窄、炎症のような急性又は慢性徴候、敗血症ショック、敗血症、低血圧、成人呼吸困難症候群(ARDS)、播種性血管内血液凝固(DIC)、肺塞栓症、血小板堆積、心筋梗塞、或いは血栓症の危険にあるアテローム硬化型血管を有する哺乳類の予防的な治療である、請求項32〜33の何れか一項に記載の使用。
【請求項35】
病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害の診断、予防又は治療のための方法であって、該方法は、TFが存在する細胞を、式A-(LM)-Cを有する化合物と接触させることを含み、ここでAはTFアンタゴニスト又はTFアゴニストであり;LMは任意のリンカー部分であり;Cは放射性核種を含む化合物である方法。
【請求項36】
前記式A-(LM)-Dを有する化合物は、請求項1〜27の何れか一項に記載のものである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項35〜36の何れか一項に記載の方法であって、前記病態生理学的なTF機能に関連する疾患又は障害は、出血、深部静脈血栓症、動脈性血栓症、術後血栓症、冠動脈バイパス移植(CABG)、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、脳卒中、癌、腫瘍転移、血管新生、虚血/再灌流、リウマチ様関節炎、血栓溶解、動脈硬化症及び血管形成術後の再狭窄、炎症のような急性又は慢性徴候、敗血症ショック、敗血症、低血圧、成人呼吸困難症候群(ARDS)、播種性血管内血液凝固(DIC)、肺塞栓症、血小板堆積、心筋梗塞、或いは血栓症の危険にあるアテローム硬化型血管を有する哺乳類の予防的な治療であり、該方法は、請求項1〜27で定義された少なくとも一つの化合物の治療的有効量を、薬学的に許容される希釈剤及び/又は担体と組み合わせて、そのような治療を必要としている哺乳類に投与することを含む方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2006−516564(P2006−516564A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500511(P2006−500511)
【出願日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000041
【国際公開番号】WO2004/064870
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【出願人】(505278182)エイチ:エス・リグスホスピタレット (1)
【Fターム(参考)】