説明

UD層を製造するための方法および装置

【課題】所定数のフィラメント束(5)から所定層幅のUD層(2)を製造するための方法であって、前記フィラメント束(5)が前記UD層(2)の長手方向を横切って帯体(16、17)へと開繊して並置される、極力均一な厚さを有するUD層(2)を製造ことを目的とする。
【解決手段】このため、前記帯体(16、17)が、前記フィラメント束(5)の数で所定層幅を除することによって得られた分割幅よりも大きな幅に開繊される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定数のフィラメント束から所定層幅のUD(Unidirectional)層を製造するための方法であって、所定数のフィラメント束がUD層の長手方向を横切る方向に帯体へと開繊されて並置されるものに関する。
【0002】
本発明はさらに、所定層幅のUD層を製造するための装置であって、所定数のフィラメント束を同時に引き出すことのできるフィラメント束分配装置と各フィラメント束についてその長手方向を横切る方向にフィラメント束が帯体へと開繊するための開繊装置と開繊して並置された帯体を一緒に巻き取るための巻取り機構とを有する、UD層を製造するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、フィラメントとして以下炭素フィラメントからなるフィラメント束を例に挙げて説明する。しかし、本発明は、フィラメントとして炭素フィラメントに限定されるものではない。
【0004】
炭素フィラメントは、12000本、24000本、48000本以上の炭素フィラメントを含むフィラメント束として販売される。一般に、炭素フィラメントの本数が多ければ多いほどフィラメント束は一層安価となる。フィラメント束は横断面が概ね楕円形状または円形状である。
【0005】
繊維強化プラスチックの製造時、しばしば、いわゆるUD層が必要とされる。UD層内で、繊維即ちフィラメントは、すべて同じ主方向に存在する。繊維即ちフィラメントは、確かに互いに厳密に平行に整列していなくてもよいが、しかし、すべて同じ方向に延びている。その場合、繊維強化プラスチックはかかる方向で高い引張強度を有する。
【0006】
フィラメント束からこのようなUD層を製造できるようにするために、フィラメント束は、並置されて帯体へと開繊されなければならない。その場合、1平面で並置されている帯体は次に一緒に巻き取られ、または別の仕方で一緒に処理される。この際、状況によっては隣接する帯体の間に横凝集力が生成される。
【0007】
強化繊維を有する後のプラスチック製品において、複数の方向で引張強度向上が求められる場合、異なる繊維方向を有する複数のUD層が重なるように配置され、次にその状態で一緒にプラスチックに埋封される。
【0008】
冒頭に指摘した種類の方法および装置は、例えば特許文献1により公知である。
【0009】
特許文献2は、繊維帯を編機に供給するための装置を示しており、かかる特許文献2では、繊維帯が一様な速度でボビンから引き出され、但し所定の停止時間をもって継続処理される。前記停止時間の間、繊維帯は制御された貯蔵部内に中間貯蔵される。
【0010】
特許文献3により、炭素繊維束を開繊するための装置および方法が公知である。繊維束を一層良好に開繊できるようにするために、繊維束は、電流を通すことによって加温される。
【0011】
特許文献4に述べられた一方向積層布を製造するための方法では、開繊した繊維を横繋ぎ糸で互いに結合してウエブが形成されている。
【0012】
フィラメント束の帯体への開繊は、フィラメント束を一定の張力を加えた状態で転向機構、例えば、丸い棒材で転向させて引き進めることによって簡単に行われる。すべてのフィラメント即ち繊維は引張応力(張力)のゆえに、棒材に接近する傾向を有する。棒材に密接して配置されるフィラメント即ち繊維は、それより離れて配置されるフィラメント即ち繊維によって、横方向の外方に押しのけられる。これにより、フィラメント束の帯体への拡幅(開繊)が自然に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第0 972 102号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10 2005 008 705号明細書
【特許文献3】独国特許発明第10 2005 052 660号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第197 07 125号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前述したような帯体によって製造されるUD層は、その長手方向を横切る方向において一定の起伏または凹凸、換言するなら不均一な厚さを有することが確認されている。
【0015】
本発明の目的は、できるだけ均一な厚さを有するUD層を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、冒頭に指摘した種類の方法において、フィラメント束の数で所定層幅を除することによって得られた分割幅よりも、大きな幅に、帯体を開繊することによって解決することができる。
【0017】
この明細書及び特許請求の範囲において、繊維を含む意味で用語「フィラメント」が使用される。しかし、本発明は、その対象について「フィラメント」以外の繊維についても同様に応用することができる。
【0018】
従来は、すべてのフィラメント束を分割幅に開繊し次にそれらを並置することによって所定層幅のUD層が製造されることが前提とされていた。かかる分割幅は、使用するフィラメント束の数で所定層幅を除したものである。 このように開繊したフィラメント束でもって、長手方向を横切って繋がり合った帯体または突き合わされた状態の帯体を有するUD層が得られる。 転向機構を介してフィラメント束を引き進めると確かに帯体へのフィラメント束の開繊が簡単に可能であることが知られている。しかし、フィラメント束が元々厚かった箇所、つまり一般に中央の箇所では、フィラメント束が元々薄かった領域よりも厚くなった帯体が得られる。 簡単に表現するなら、帯体の全幅にわたって得られる厚さ分布は浅い傘状曲線に概ね一致する。 次に、このような帯体を並置すると、これによりUD層の長手方向を横切る方向において、該UD層に一定の起伏が生じる。 前記分割幅に一致した幅よりも幅広に帯体を開繊すると、基本的にさしあたり個々の帯体の厚さ推移に確かに何ら変化はない。 しかし、横方向で各帯体単独の厚さ偏位またはUD層の厚さ偏位のいずれかに影響を及ぼす可能性は、多数存在する。
【0019】
第1の可能性は、開繊後に長手方向を横切る方向に帯体を寄せ集めることにある。このように帯体同士を寄せ集めることは、例えば、原帯体幅よりも細いガイドに帯体を通すことによって行われる。 このガイドは主として帯体の外縁部分の繊維に作用してこれを内方に変位させることになる。 しかし、(横方向において)、帯体の中央の箇所は寄せ集めることの影響を事実上受けない。 それに応じて、帯体の長手縁部(エッジ)で厚さの増加が生じるが、帯体の中央では相応するような厚さ増加は生じない。
【0020】
その際、好ましくは、帯体は分割幅に一致した帯体幅へと寄せ集められる処理がなされることである。その場合、閉鎖表面(隙間のない表面)を有するUD層を製造するために、並置される帯体は横方向でいわば隙間なく並置することができる。
【0021】
選択的な1つの構成として、帯体は前記分割幅よりも狭い帯体幅へと寄せ集められることである。その場合、仕上がったUD層では個々の帯体の間に小さな間隔が生じる。 このことは、UD層をプラスチック母材に埋封するとき流動体状のプラスチックの通過を可能とするために、望ましいことがある。 前記間隔は比較的小さく、例えば0.1〜1mmに選択することができる。
【0022】
他の1つの構成としては、長手方向を横切る方向に帯体を部分的に重ねて配置することができるように構成することである。 部分的に重ねて配置することは、帯体を横方向で寄せ集めた後に行うことができる。 しかし、部分的に重ねて配置するのは、帯体を横方向で寄せ集めることなく、行うこともできる。 その場合、帯体の中央と比較して僅かな(小さな)厚さを有する隣接する帯体の縁領域同士が重ねられる。 その場合、全体として並置された帯体の全幅にわたって概ね均一な厚さが得られる。部分的に重ねる前に帯体を寄せ集めることによって、厚さは一層厳密に調整することができる。
その際、好ましくは、帯体が前記分割幅よりも大きな帯体幅に開繊されることである。その場合、希望する厚さを、部分的に重なっている領域の重なった合計の厚さによって得られる。
【0023】
好ましくは、前記寄せ集めるとき、可変幅の帯体が得られるようにすることである。装置に関連して前述したように、帯体を一緒にしてシート材とするとき、繊維強化プラスチック部品を形成するために、後に流動体状のプラスチックが通過し得る空隙を、隣接する帯体の間に生じるようにすることが、こうして可能となる。 幅変更は、例えば周期的に行うことができる。 隣接する帯体は、次に、最大幅で突き合わさるように並置することができ、こうして僅かな幅の領域部分では、隣接する帯体との間に隙間が生じることから、シート材に空隙が生じる。
【0024】
主に、所定数のフィラメント束は少なくとも2つの異なる平面で開繊されるように構成すると、そのことから、各フィラメント束は開繊時に相互に邪魔し合うことがない。 つまり、各フィラメント束は分割幅よりも大きな幅に、問題なく開繊することができる。 フィラメント束が小さな幅に開繊され、または大きな幅に開繊後に再び横方向で寄せ集められるとしても、各フィラメント束もしくはそれから得られる帯体に対して、十分な取扱い空間が提供され、有利な構成となる。
【0025】
冒頭に指摘した種類の装置において、前記課題は、開繊装置が少なくとも2つの群の開繊装置に分割されており、これらの群の開繊装置が異なる位置に配置されており、隣接するフィラメント束がそれぞれ異なる群の開繊装置に案内されるように構成することによって、解決される。
この構成によって、使用するフィラメント束の数で所定層幅を除することによって得られる分割幅を超えて、個々のフィラメント束を横方向で拡幅することが可能となる。隣接するフィラメント束が異なる位置で開繊されることによって、該隣接するフィラメント束は開繊時に邪魔し合うことがなく、前記分割幅を超えて拡幅することができる。 前記異なる群の開繊装置によって形成された個々の帯体は、該異なる群の開繊装置を通過後に、1平面で一緒にされ、または別の仕方で、後に一緒に巻き取ることができるように案内されねばならないだけである。
【0026】
その際、好ましくは、少なくとも幾つかの開繊装置の下流側にそれぞれ1つの調整装置(規制装置ともいう)が設けられており、この調整装置が帯体をその長手方向を横切って所定幅へと寄せ集めるように構成されていることである。 方法に関連して前述したように、帯体の厚さを均一化することがこうして可能となる。 フィラメント束を帯体へと開繊するとき、厚さ分布の傘状の偏位が認められる。すなわち、帯体は中央がその縁領域よりも厚い。 ところが、前記調整装置は、長手縁領域のフィラメントを再び帯体中央の方向に移動させることによって、縁領域を厚くするが、一方、帯体の中央の領域厚さは事実上変化のないままである。
【0027】
好ましくは、所定幅が前記分割幅に等しく、この分割幅はフィラメント束の数でUD層の所定層幅を除することによって得た幅に一致する。 その場合、繊維を隙間なく並置したUD層が得られる。
【0028】
選択的な1つの構成として、前記所定幅を分割幅よりも大きくすることである。 その場合、隣り合せて配置される帯体が部分的に重なり、それらの縁領域の合計が加算される。 その場合、薄い縁領域でも、重ねられることによって得られる厚さは、帯体の中央部分の厚さに一層良好に一致する。
【0029】
第3の構成として、前記所定幅を前記分割幅よりも狭くすることができる。 その場合、後のUD層において横方向において個々の帯体の間に、プラスチックの通過を可能とする隙間が生じることになる。
【0030】
主に、調整装置が帯幅変更機構を有するように構成される。このことにより、帯体をその走行方向を横切る方向に寄せ集めるとき、可変幅の、つまり、幅の大きい帯体部分と僅かな幅(小さな幅)の帯体部分を有する帯体を生成することができる。 これらの個々の帯体を並置すると、前記僅かな幅の帯体部分で隙間が形成され、こうして形成されるシート材中に隙間が生じ、後にこれらの隙間を流動体状のプラスチックが通過できる。 そのことから、積層布に構成したときにも、流動体状のプラスチックの浸透を実現することが容易となる。 前記帯幅変更機構は、さまざまな態様で形成することができる。 帯体の幅を最終的に規定する、溝を備えた回転軸を、前記調整装置が有する場合、周方向の、可変幅(異なる寸法の幅)を有する溝を使用することによって、帯体の幅は簡単に変更することができる。 その場合、こうして生成された帯体の幅は周期的に変化する。 別の可能性は、帯体を挿通させるフランジ板を軸に設けて調整装置を形成することによって生まれる。フランジ板の軸線方向の位置を変更することによって、帯体の幅の変更を生じさせることができる。 隣接する帯体の幅変更は、大きな幅を有する帯体が並置されるとき突き合わさるように互いに調整することができ、こうして僅かな幅(小さな幅)の領域に、大きな隙間が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】UD層を製造するための装置の構成を示す略図である。
【図2】隣接する帯体を調整するための調整装置のさまざまな形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例)
以下、図面を参照しながら好ましい実施例に基づいて、本発明を説明する。
【0033】
図1は、パッケージ3に巻き取られるUD層2を製造するための装置1を示す。詳しくは図示しない仕方で、隣接する巻層は分離紙または別の分離手段によってパッケージ3上で相互に分離することができる。 巻き取る代わりに、例えば、多軸積層布または繊維強化プラスチックを製造するために、前記UD層2を直ちに継続する処理をおこなうように構成することも可能である。
【0034】
この装置1は、フィラメント束分配装置4を有する。 フィラメント束分配装置4は例えば、多数のボビンを配置したクリールとして形成しておくことができ、各ボビンにフィラメント束が巻き付けられている。 フィラメント束分配装置4は多数の樽またはボール箱を具備するよう構成することもでき、かかる各樽または各ボール箱内にフィラメント束を配置しておく。
【0035】
フィラメント束5はフィラメント束分配装置4から引き出され、第1供給装置6に供給される。 望ましくは、この第1供給装置6ではフィラメント束5が平行に並置されるようにすることである。
【0036】
フィラメント束5の走行方向で前記第1供給装置6の下流側には、第1群7の開繊装置と第2群8の開繊装置とが配置されている。 前記第1群7の開繊装置は3つの棒材(開繊手段の一種)9〜11を有し、これらの棒材9〜11を介してフィラメント束5は所定の引張応力が作用した状態で引き進められる。 前記引張応力はパッケージ3の直前に配置される第2供給装置12によって生成される。
【0037】
第2群8の開繊装置は3つの棒材(開繊手段の一種)13〜15を有し、これらの棒材13〜15を介して別のフィラメント束5が同じ張力が作用した状態で引き進められる。
【0038】
前記同じ張力は、第2供給装置12の引張応力に起因して生じる張力に、すべてのフィラメント束5が曝されていることから、得られる。
【0039】
ところで、所定数のフィラメント束5は、隣接するフィラメント束5が第1群7の開繊装置と第2群8の開繊装置とに交互に供給されるように、案内されている。 つまり、隣接するフィラメント束5の開繊または拡幅は、異なる平面で行われる。これにより、個々のフィラメント束5はいわば互いに束縛されることなく所望の幅に開繊することが可能となる。 換言するなら、フィラメント束5は分割幅よりも大きな幅の帯体へと開繊することができる。 かかる分割幅とは、仕上がったUD層2の幅(所定層幅)をフィラメント束の数で除した寸法の幅である。
【0040】
前記第1群7もしくは第2群8の開繊装置を通過後、フィラメント束5は、帯体16、17の態様(形態)を有する。 これらの帯体16、17は次に一緒にニップ18に通され、このニップ18は、2つのロール19、20の間に形成され、「ロール間隙」と称することもできる。 この場合、ニップ18内で形成されるUD層2は、他の転向ローラ22,23で転向され、第2供給装置12に案内されることができる。また、別のガイドによる案内も可能である。
【0041】
前記帯体16、17が前記分割幅よりも大きな幅を有するので、かかる帯体16、17は部分的に重なる。 部分的に重なる領域は、ニップ18内で強い張力で加圧し合う。かかる帯体16、17の縁領域が加圧し合うことになる引張応力を、別の仕方で、ロール19(20)で帯体16、17に作用させることができる場合には、このニップ18を省くこともできる。
【0042】
前述した処理の仕方によると、以下の利点が得られる。
【0043】
前記第1群7または第2群8の開繊装置を通過した後、帯体16、17がその中央(これはその走行方向を横切る方向における中央:幅方向の中央)で有する厚さは、帯体16、17の縁領域における厚さよりも多少厚くなる。 これは恐らく、フィラメント束5の中央の部分がそれ以前にすでに厚かったためであり、開繊装置内でおこなわれる厚さ補償できる程度の支出(補償)では、完全な補償が実現可能でないという事実から生じる。 このことから、前記帯体16、17は、横方向で多少厚い中央の領域と薄い縁領域とを有することになる。 厚さ分布は、「傘状曲線」の態様(形態)となる。 このような形態の厚さ分布が存在することは、仕上がったUD層2において、多くの場合に、望ましくないことであるが、相応に変化した厚さが生じることになる。 しかし、薄い縁領域を部分的に重ねることによって合計して得られる厚さは、帯体16、17の中央の厚さに一致し、こうして、UD層の厚さは高度に均一に保つことができる。 厚さが絶対的に一定になることは、多くの場合必要でない。
【0044】
前記帯体16、17は、各開繊装置を通過後になお調整装置(規制装置)22、23を通すようにすることができる。 かかる調整装置22、23は、図2に略示されており、最も単純な場合、該調整装置22,23は、交互に周面の形態(外径)が変わる規制ユニット、つまり、溝26、27および突起28、29を有する棒材24、25(規制ユニットともいう:前者の棒材を第1の規制ユニット24,後者の棒材を第2の規制ユニット25という)によって構成される。
【0045】
前記帯体16が前記調整装置22に案内される場合、該帯体16がこの調整装置22から進出後(引き出された後)に有する幅は、2つの突起28a、28bの間の間隔に一致する。 同様に、前記調整装置23を通過する帯体17は、2つの突起29a、29bの間の間隔に一致した幅を有する。
【0046】
両方の調整装置22、23は、UD層2の走行方向即ち長手方向を、横切る方向において、帯体の幅だけそれぞれずれており、突起28a、28bは、例えば溝27a、27bに対して、隙間をとって配置される。
【0047】
ところで、対向する、突起28aの幅に対して溝27aの幅を、相対的に調整することによって、仕上がったUD層のさまざまな構成をつくり出すことができる。
【0048】
図2aに示す構成の場合、溝27cは対向する突起28cよりも小さな幅を有する。それに応じて、調整装置22、23を通過後、長手方向を横切る方向に隣接する帯体16、17の間に間隔30が生じる。 この間隔30は例えば0.2〜1mmの範囲内の値に調整することができる。 その場合、UD層2に、流動体状のプラスチックが該UD層を通過する可能性が得られる。
【0049】
図2bに示す構成の場合、一方の調整装置23の溝27aの幅は、他方の調整装置22の突起28aの幅に、正確に一致している。 それに応じて、ここで製造することのできるUD層では、個々の帯体16、17が隙間なく、部分的な重なりなしに並置される。
【0050】
それにもかかわらず、両方の事例においてUD層の厚さは均一に保たれる。 つまり、前記調整装置22、23が、主として、帯体16、17の縁領域に配置されるフィラメントに作用して、これらのフィラメントを帯体16、17の中央方向に移動させることを観察することができる。 これにより、縁領域で帯体16、17の厚肉化が生じる、一方において、帯体16、17の中央は、縁領域でのフィラメントのこの変位による影響を事実上受けることはない。
【0051】
図2cに示す構成の場合、前記溝26は、対向する突起29cよりも大きな幅を有する。 それに応じて、隣接する帯体16、17の間に、部分的な重なり31が生じる。 ここでも、多少幅広の帯体16、17が長手方向を横切る方向(幅方向)において事前に寄せ集められるので、縁領域の厚さは比較的良好に、縁領域の厚さの合計が、後で、帯体16、17の中央の厚さに一致するように、調整することができる。その際、厚さが僅かに厚かったとしても問題は生じない。
【0052】
前記調整装置23の溝26に周方向で可変幅が得られる構成の場合、つまり、調整装置23が帯幅変更機構を有する場合、走行方向で、持続的、周期的に変化する幅を有する帯体16、17をも得ることができる。 後に帯体16、17を一緒にしてシート材とする場合、かかる帯体16、17の僅かな幅を有する領域で、隣接する帯体16、17の間に空隙または凹部が生じ、繊維強化プラスチックエレメントを製造する場合、後にこれらの空隙または凹部を、流動体状のプラスチックが通過できることになる。 そうする代わりに、軸線方向の位置を変更可能なフランジ板の間に帯体16、17を挿通させるように構成した調整装置23も、使用することができる。 この場合、前記フランジ板を一層接近させると、幅の狭い帯領域が得られる。 一方、フランジ板をさらに離間させると、厚さの大きい帯領域が得られる。いずれの場合にも、幅の変化は比較的僅かである。帯幅は、数パーセント、例えば3.5%または10%だけ変化させれば十分である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、所定層幅のUD層を製造するのに利用できる。
【符号の説明】
【0054】
2…UD層
5…フィラメント束
16、17…帯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数のフィラメント束(5)から所定層幅のUD層(2)を製造するための方法であって、前記所定数のフィラメント束(5)が前記UD層(2)の長手方向を横切る方向に帯体(16、17)へと開繊され並置される、UD層(2)を製造するための方法において、
前記帯体(16、17)が、前記フィラメント束(5)の数で前記所定層幅を除すことによって得られる分割幅よりも、大きな幅に開繊されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記帯体(16、17)が、開繊後に長手方向を横切る方向において寄せ集められることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記帯体(16、17)が、前記分割幅に一致した幅寸法の帯体へと寄せ集められることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記帯体(16、17)が、前記分割幅よりも狭い幅寸法の帯体へと寄せ集められることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記帯体(16、17)が、長手方向を横切る方向において部分的に重ねられて配置されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記帯体(16、17)が、前記分割幅よりも幅寸法の大きな帯体に開繊され、場合によっては再び寄せ集められることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記寄せ集められるとき、幅が変化する帯体(16、17)が形成されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1の項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラメント束(5)は、少なくとも2つの異なる平面によって、開繊されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1の項に記載の方法。
【請求項9】
所定数のフィラメント束(5)を同時に引き出すことのできるフィラメント束分配装置(4)と、各フィラメント束(5)についてその長手方向を横切る方向で該フィラメント束(5)を帯体(16、17)へと開繊するための開繊手段(9〜11;13〜15)を備えた開繊装置と、開繊して並置された前記帯体(16、17)を一緒に巻き取るための巻取り機構(3)とを有する、所定層幅のUD層(2)を製造するための装置において、
前記開繊手段(9〜11;13〜15)を備えた開繊装置が少なくとも2つの群(7、8)に分けて設けられており、それぞれの群(7、8)の開繊装置が異なる位置に配置されており、隣接するフィラメント束(5)がそれぞれ異なる群(7、8)へと案内されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
所定数のフィラメント束(5)のそれぞれのための、対応する開繊手段を備えた、少なくとも1つの開繊装置を有することを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
少なくとも幾つかの開繊手段(9〜11;13〜15)の下流側にそれぞれ1つの調整装置(22、23)が設けられており、該調整装置(22、23)が、前記帯体(16、17)をその長手方向を横切る方向において所定幅へと寄せ集めることを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記所定幅が分割幅に等しく、該分割幅は前記フィラメント束(5)の数で前記所定層幅を除することによって得られる幅であることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記所定幅が前記分割幅よりも大きいことを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項14】
前記所定幅が前記分割幅よりも狭いことを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項15】
前記調整装置(22、23)が帯幅変更機構を有することを特徴とする請求項11〜14のいずれか1の項に記載の装置。
【請求項16】
さらに、間に隙間を有するように二つのローラーが配置され、かかる隙間の間を帯体が通過するように案内されることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項17】
前記調整装置(22、23)が、それぞれ複数の溝と複数の突起を備えた少なくとも第1の規制ユニットと第2の規制ユニットを備え、前記溝が前記所定幅に対応していることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項18】
前記第1の規制ユニット(24)の複数の溝(26)が、前記第2の規制ユニット(25)の複数の突起(29)に対応して配置されており、対応する前記複数の溝(26)と前記複数の突起(29)とが、走行方向を横切る方向に所定長さを有していることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記第1の規制ユニット(24)の複数の溝(26)が、前記第2の規制ユニット(25)の複数の突起(29)に対応して配置されており、前記走行方向を横切る溝(26)の幅が、前記走行方向を横切る方向に対応して配置されている突起(29)の幅と異なる寸法に構成されていることを特徴とする請求項17記載の装置。

【図1】
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【図2】
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