説明

Vγ9Vδ2T細胞の増殖剤、活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法およびこれらの利用

【課題】非常に高い増殖効率で、抗腫瘍活性とサイトカイン産生能の高いVγ9Vδ2T細胞を増殖させることが可能なVγ9Vδ2T細胞の増殖剤、活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法およびこれらの利用を提供する。
【解決手段】少なくとも、ゾレドロネート等のビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を含む、Vγ9Vδ2T細胞の増殖剤と増殖キット。また、該T細胞を含む医薬品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Vγ9Vδ2T細胞の増殖剤、活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法およびこれらの利用に関するものである。より詳しくは、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2、インターロイキン18を含むVγ9Vδ2T細胞の増殖剤、Vγ9Vδ2T細胞を、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激する活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法、当該活性化Vγ9Vδ2T細胞およびこれを含む医薬、並びにVγ9Vδ2T細胞の増殖キットに関する。
【背景技術】
【0002】
Vγ9Vδ2T細胞(Vγ9Vδ2Tリンパ球)は、腫瘍組織適合性抗原に拘束されることなく腫瘍細胞の排除や、細胞内寄生性の細菌および寄生虫に対する防衛に当たることのできる細胞として注目されており、現在ヒト末梢血から得られるVγ9Vδ2T細胞を用いた癌治療の研究が進められている。しかし、ヒト末梢血中に存在するVγ9Vδ2T細胞の数は少なく、免疫療法に用いるのに十分な数のVγ9Vδ2T細胞を得ることは容易ではない。
【0003】
最近、骨粗鬆症の改善などに用いられているビスホスホネートが、がん細胞に直接作用して抗腫瘍作用を示すとともに、γδT細胞に作用してその増殖や活性化を促すことが明らかになった(非特許文献1)。このようにして増殖したγδT細胞は、強い抗腫瘍細胞活性を有することから、癌患者の自己血液より分離したγδT細胞をビスホスホネートを用いて体外で増殖させ、該リンパ球を体内に戻すという治療法の確立が試みられており、有望な結果が得られているという報告もある(非特許文献2)。また、補助因子としてインターロイキン2(以下「IL−2」と略記する)を用い、有機ピロリン酸誘導体に加えることによってVγ2Vδ2T細胞を増殖させる方法(特許文献1)や、ゾレドロネートに加えることによってVγ9Vδ2T細胞を増殖させる方法(非特許文献3)も開示されている。
【特許文献1】特許第4025019号公報(2007年10月12日登録)
【非特許文献1】Kunzmann et. al、Blood、97:2917-2918, 2000.
【非特許文献2】Caccmo et. al、Curr. Med. Chem.、15:1147-1153, 2008.
【非特許文献3】Int. J. Cancer 116, 94-99, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、未だVγ9Vδ2T細胞を十分に増殖させることはできていないという問題がある。例えば、ゾレドロネートとIL−2をVγ9Vδ2T細胞に添加した場合のVγ9Vδ2T細胞の最大増幅率は約800倍である(非特許文献3)。この方法では、増幅率が低いため、増殖させるべきVγ9Vδ2T細胞を多く用意しなければならず、そのためには患者の末梢血を多く採取する必要がある。ゆえに患者に与える苦痛・負担が大きい。
【0005】
このような状況の下、Vγ9Vδ2T細胞を用いたがんの治療方法確立のため、より効率良くVγ9Vδ2T細胞を増殖させることが可能な技術が待望されている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来法よりも非常に高い増殖効率で、抗腫瘍活性とサイトカイン産生能の高いVγ9Vδ2T細胞を増殖させることが可能なVγ9Vδ2T細胞の増殖剤、活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法およびこれらの利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意検討した結果、末梢血から分離したリンパ球を、IL−2、ビスホスホネートおよびインターロイキン18(以下「IL−18」と略記する)を添加した培地で培養することによって、従来法と比較して著しくVγ9Vδ2T細胞数が増加することを確認した。さらに得られたVγ9Vδ2T細胞は、抗腫瘍活性とガンマ型インターフェロン(以下「IFN−γ」と略記する)等のサイトカインの産生能が非常に高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、上記課題を解決するために、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を含むことを特徴としている。
【0009】
IL−18は、IFN−γの誘導因子として岡村らによって1995年に発見され(Okamura et. al、Nature 378:88-91、1995.)、近年様々な生物学的作用を有することが明らかになってきているサイトカインである。本発明者らは、IL−18が、活性化されたCD8陽性Tリンパ球およびNK細胞のアポトーシスを抑制することにより、それらの細胞のポピュレーションサイズを著しく増大させること、さらに活性化CD8陽性T細胞はIL−18レセプターβ鎖を強く発現し、IL−18刺激により、PI3K/AktやBcl2などの細胞生存を高める因子が増強されること(Li Wen et. al、J.Leukocyte Biol.、82、142-151、2007.)を報告している。
【0010】
このように、IL−18は細胞死を抑制し、細胞生存を高める性質を有するため、ビスホスホネートに対する補助因子として作用し、ビスホスホネートおよびIL−2によるVγ9Vδ2T細胞の増殖効果を著しく高めることができるものと考えられる。それゆえ、上記構成によれば非常に効率的にVγ9Vδ2T細胞を増殖させることができる。
【0011】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤では、上記ビスホスホネートがゾレドロネートであることが好ましい。ゾレドロネートはビスホスホネートの中でもVγ9Vδ2T細胞の増殖刺激能が高い化合物である。それゆえ、上記構成によればより効率的にVγ9Vδ2T細胞を増殖させることができる。
【0012】
本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法は、Vγ9Vδ2T細胞を、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激することを特徴としている。上述のように、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18はVγ9Vδ2T細胞を効率よく増殖させることができる。さらに、後述する実施例に示すように、増殖したVγ9Vδ2T細胞は抗腫瘍活性、サイトカイン産生能が高い。よって、上記構成によれば、優れた生理活性を備えたVγ9Vδ2T細胞を非常に効率よく生産することができる。
【0013】
本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞は、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激されてなることを特徴としている。また、本発明にかかる医薬は、本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞を含むことを特徴としている。
【0014】
後述する実施例に示すように、上記活性化Vγ9Vδ2T細胞は、従来のVγ9Vδ2T細胞よりも優れたサイトカイン産生能を有し、抗腫瘍活性も高い。よって、上記活性化Vγ9Vδ2T細胞を含む医薬は、優れた抗がん作用、抗ウィルス作用、免疫応答の制御作用、細胞増殖・分化などの調節作用等を示すことができる。
【0015】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖キットは、少なくとも、Vγ9Vδ2T細胞、ビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を備えることを特徴としている。上記構成によれば、Vγ9Vδ2T細胞の増殖に最低限必要とされるものが予めセットになっているため、Vγ9Vδ2T細胞の増殖を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、以上のように、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を含むので、従来十分に増殖させることができなかったVγ9Vδ2T細胞を非常に効率的に増殖させることができるという効果を奏する。さらに、増殖させたVγ9Vδ2T細胞に、優れた抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を付与することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
(1.Vγ9Vδ2T細胞の増殖剤)
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、ビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を必須成分として含んでいる。
【0019】
ビスホスホネートとは、生理的に存在するピロリン酸のアナローグで、側鎖の違いにより窒素を含むものと含まないものに分類される。ビスホスホネートの種類としては、基本骨格の中央のCに付く誘導体の種類により3種類に分類されている。すなわち、エチドロネートやクロドロネートのように側鎖の構造が簡単なもの、ゾレドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、レセドロネート、イバンドロネートのようにアミノ基を有するもの、インカドロネート、リセドロネート、ミノドロネートのように環状構造を有するものがある。
【0020】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤に含まれるビスホスホネートの種類は特に限定されるものではない。また、1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でもVγ9Vδ2T細胞の増殖刺激能が高いため、ゾレドロネートであることが特に好ましい。ゾレドロネートは、Vγ9Vδ2T細胞の増殖効果を有するとともに、がん細胞のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害することにより、IPPをがん細胞表面に表出させ、Vγ9Vδ2T細胞に対する抗原性を高めることが知られているため、特に好ましいといえる。
【0021】
ビスホスホネートの形態は特に限定されるものではない。例えば、遊離のビスホスホネートであってもよいし、塩を形成していてもよく、ビスホスホネートまたはビスホスホネートの塩の水和物であってもよい。また、遊離のビスホスホネート、上記塩、上記水和物は、それぞれ単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。ビスホスホネートの塩としては、特に限定されるものではないが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0022】
IL−2は、T細胞増殖因子として知られており、ビスホスホネートの補助因子として用いられる。IL−18もビスホスホネートの補助因子として用いられるが、IL−18は細胞死を抑制し、細胞生存を高める性質を有するため、ビスホスホネートにIL−2のみを作用させる場合よりも、Vγ9Vδ2T細胞を著しく増殖させることができるものと考えられる。
【0023】
γδT細胞は、δ鎖の違いによってVδ1T細胞、Vδ2T細胞、Vδ3T細胞の3つの亜分画に分類される。ヒト末梢血中に存在し、ビスホスホネートとの反応しうるのはVδ2T細胞に含まれるVγ9Vδ2T細胞であるため、本発明ではVγ9Vδ2T細胞が用いられる。
【0024】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18を混合することによって調製することができる。ビスホスホネートの濃度としては、特に限定されるものではないが、0.5μM以上5.0μM以下であることが好ましい。IL−2の至適濃度は特に存在しないが、ビスホスホネートが上記濃度である場合に、10ng/mlまたは100units/ml用いれば十分である。IL−18についても至適濃度は特に存在しないが、ビスホスホネートが上記濃度である場合に、50ng/ml用いれば十分である。
【0025】
ビスホスホネート、IL−2およびIL−18を最終濃度が上記濃度となるように培養液に添加する場合、Vγ9Vδ2T細胞の濃度は、特に限定されるものではないが約5〜10×10個/mlであることが好ましい。例えば、PBMC5〜10×10個/mlには、当該PBMC中には約5〜10×10個/mlのVγ9Vδ2T細胞が含まれる。上記混合を行う方法は特に限定されるものではない。例えば、水や従来公知の培地中にビスホスホネート、IL−2およびIL−18を上記濃度となるように添加し、従来公知のスターラー等を用いて混合することによって行うことができる。
【0026】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18のみからなっていてもよいが、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18によるVγ9Vδ2T細胞の増殖効果を妨げない限り、さらにその他の成分を含んでいても構わない。例えば、IL−15のような他の補助因子、Vγ9Vδ2T細胞の培養に必要な培地、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、保存剤、安定剤、乳化剤、浸透圧調整剤、基剤などの添加成分を必要に応じて使用することができる。本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、上記添加成分を用いて、通常の製剤化技術によって製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、水溶剤、乳剤、油性剤、もしくは懸濁剤などの固体または液体の剤型として使用することができる。
【0027】
これらの添加成分の例としては、ヒトAB型血清含有RPMI1640培地、グルコース、乳糖、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、流動パラフィン、ポリビニルアルコール、植物油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール等を挙げることができる。
【0028】
Vδ2T細胞に含まれるVγ9Vδ2T細胞は、ヒト末梢血中に存在し、強い抗腫瘍作用を有するため、ガン治療用のγδT細胞として有望であるが、絶対数が非常に少ないため、効率的な増殖法が待望されている。本発明にかかる上記増殖剤は、Vγ9Vδ2T細胞と接触させることによって、Vγ9Vδ2T細胞を刺激して著しく増殖させることができ、後述する実施例では、Vγ9Vδ2T細胞の数を、個人差はあるものの、約300〜3000倍に増殖させることに成功している。一方、従来のゾレドロネートとIL−2とを用いる増殖法ではVγ9Vδ2T細胞の数を最大800倍にしか増殖させることができていない(非特許文献3)。
【0029】
それゆえ、本発明にかかる増殖剤は、Vγ9Vδ2T細胞をがん治療用細胞として利用する上で非常に有用であるといえる。また、(2.)で述べるように、本発明にかかる上記増殖剤を用いて増殖させたVγ9Vδ2T細胞は、単に増殖率が高いだけでなく、非常に強い抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を獲得することができる。このことからも、本発明にかかる上記増殖剤は非常に有用性が高いといえる。
【0030】
(2.活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法、活性化Vγ9Vδ2T細胞および活性化Vγ9Vδ2T細胞を含む医薬、Vγ9Vδ2T細胞の増殖キット)
本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法は、Vγ9Vδ2T細胞を、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激することによって、活性化Vγ9Vδ2T細胞、すなわち強い抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を有するVγ9Vδ2T細胞を得る方法である。
【0031】
刺激する対象となるVγ9Vδ2T細胞は、従来公知の方法によって調製することができる。例えば、ヒトの末梢血やヒト末梢血単核球を採取し、抗γδTCR抗体や抗Vγδ2T抗体を結合させたマグネティックビーズを作用させ、Vγ9Vδ2T細胞を分離することができる。ただし、必ずしも分離されたVγ9Vδ2T細胞を用いる必要はない。例えば、ヒト血液、ヒトリンパ液、ヒト末梢血単核球等を少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激した後に、上記マグネティックビーズを用いる方法等によって活性化Vγ9Vδ2T細胞を分離してもよい。
【0032】
上記刺激は、Vγ9Vδ2T細胞と、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18とを接触させることによって行うことができる。接触させるための方法は特に限定されるものではない。例えば、Vγ9Vδ2T細胞の増殖に好適な従来公知の培地(例えば5%のヒトAB型血清を含有するRPMI1640培地)中にVγ9Vδ2T細胞、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18を添加し、COインキュベータ等の従来公知の培養装置中で培養することによって上記接触を行うことができる。培養温度、培養時間はVγ9Vδ2T細胞を増殖させることができれば特に限定されるものではないが、通常、摂氏37℃、5%CO存在下で培養し、3−5日おきに新鮮な培地とビスホスホネート、IL−2およびIL−18とを追加しながら10−14日間培養することが好ましい。
【0033】
ビスホスホネート、IL−2およびIL−18は、それぞれを別々に培地に添加してもよいし、(1.)で説明したように、混合された状態の増殖剤として添加してもよいし、製剤化された増殖剤として添加してもよい。また、例えばIL−15のような他の補助因子も添加してもよい。Vγ9Vδ2T細胞と、ビスホスホネート、IL−2およびIL−18が接触することによって、Vγ9Vδ2T細胞が特異的に刺激され、非常に高い増殖率で増殖するとともに、Vγ9Vδ2T細胞の抗腫瘍作用、サイトカイン産生能の誘導・増強が促され、強い抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を有するVγ9Vδ2T細胞である活性化Vγ9Vδ2T細胞が産生される。なお、ビスホスホネート、IL−2、IL−18の濃度、Vγ9Vδ2T細胞の使用量は(1.)で説明したとおりである。
【0034】
本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞と、従来の方法で刺激されたVγ9Vδ2T細胞との構造上の相違点は今のところ明らかとなっていないが、本発明にかかる活性化Vγ9Vδ2T細胞は、後述する実施例に示すように、強い抗腫瘍作用を示すとともに、従来の方法で刺激されたVγ9Vδ2T細胞よりも非常に強いサイトカイン産生能を示すことができる。例えば、後述する実施例では、ゾレドロネートおよびIL−2を用いて刺激した場合と比べ、IFN−γ、腫瘍壊死因子(TNF),顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)について非常に高い産生能を示したことが確認されている。
【0035】
このように、上記活性化Vγ9Vδ2T細胞は、優れた抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を有するため、本発明には、上記活性化Vγ9Vδ2T細胞を含む医薬も含まれる。
【0036】
上記医薬は、上記活性化Vγ9Vδ2T細胞のみからなっていてもよいし、他の成分として、例えば(1.)で説明した添加成分を含んでいてもよい。上記医薬は、ヒトに投与することによってその抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を発揮することができる。投与方法としては、局所への注射、静脈注射、経皮吸収などの方法を取ることができる。
【0037】
上記医薬は、抗腫瘍作用およびサイトカイン産生能を有するため、がんの治療用医薬として好適に用いることができる。がんとしては特に限定されるものではなく例えば、中皮腫、骨肉腫、腎臓がん、前立腺がん、扁平上皮がん、肺がん、メラノーマ、すい臓がん、胃がん、肝臓がんなど、従来公知の種々のがんに対して適用することができる。また、上記医薬はサイトカイン産生能を有するため、抗ウィルス作用、免疫応答の制御作用、細胞増殖・分化などの調節作用等を示すことができる。よって、これらの作用が治癒に有効な疾病、例えば、マラリア、結核等の難治性感染症に対しても適用可能である。
【0038】
本発明の利用形態の一例として、Vγ9Vδ2T細胞の増殖キットを挙げることができる。このVγ9Vδ2T細胞の増殖キットの具体例としては、少なくとも、Vγ9Vδ2T細胞、ビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を備えていればよく、必要に応じて、Vγ9Vδ2T細胞を培養するための培地や、培養プレート等の実験用素材を添付してもよい。
【0039】
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0040】
(実施例1:Vγ9Vδ2T細胞の増殖)
健康な成人より末梢血を採取し、Ficoll-Hypaque密度勾配遠心法を用いて(条件:室温(摂氏25℃)で、スイングローターTS−7(トミー精工)を用い、2000rpm、20分間遠心)、末梢血単核球(以下「PBMC」と略記する)を分離した。
【0041】
5%のヒトAB型血清を含有するPRMI1640培地にゾレドロネート(最終濃度1μM)、IL-2(最終濃度10ng/ml)、IL-18(最終濃度100ng/ml)を添加した培養液に、上記PBMCを5〜10×10個/mlとなるようにサスペンドした。図2(e)に示すように、当該PBMC中に、Vγ9Vδ2T細胞は約1〜5%含まれている。
【0042】
COインキュベータ中で、5%CO存在下、摂氏37℃で培養し、細胞が過剰増殖しないよう(培養液の色が黄色くならないよう)3−5日おきに、培養開始時に用いた上記培地の3−5倍量の新鮮な培地に、上記の濃度になるようにゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液を追加しながら14日間培養した。なお、ゾレドロネートは、Novartis Pharma社製、IL−2はR&D Systems社製、IL−18はGlaxoSmithKline社製のものを用いた。
【0043】
増殖したVγ9Vδ2T細胞の解析は、細胞表面で発現されている抗原に対する標識抗体を用いてフローサイトメトリー法によって解析し(使用装置: BECTN DICKINSON, FACSCalibur)、Vγ9Vδ2T細胞が細胞全体に占める割合と全体の細胞数から、Vγ9Vδ2T細胞の絶対数を算出した。
【0044】
対照として、同様の実験をゾレドロネート(1μM)およびIL-2(10ng/ml)を用いて行った。
【0045】
また、Vγ9Vδ2T細胞の増殖に対するIL−18の役割を確認するために、ゾレドロネート(1μM)およびIL-2(10ng/ml)を加えた培地に抗IL−18受容体抗体(R&D Systems社)を2.5μg/mlの濃度で加え、内在性のIL−18をブロックした。
【0046】
結果を図1、2に示す。図1は、IL−2の存在下、ゾレドロネートで刺激したVγ9Vδ2T細胞の増殖に対する外因性IL−18の効果を示すものである。図中、「ZOL」とはゾレドロネートを、「aIL-18R Ab」は抗IL−18受容体抗体を示している。縦軸の「γδT細胞の絶対数」はVγ9Vδ2T細胞の絶対数を表す。
【0047】
図1のAは、62歳の男性の末梢血を用いた場合のVγ9Vδ2T細胞の増殖結果を示すものであり、図1のBは、31歳の女性の末梢血を用いた場合のVγ9Vδ2T細胞の増殖結果を示すものである。
【0048】
ヒト末梢血より分離したPBMCを、ゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液中で培養すると、図示しないが、PBMCの総数は、個人差はあるが約40−100倍に増加し、その中でもVγ9Vδ2T細胞の数は著しく増加した(図1、図2)。一方、図示しないが、ゾレドロネートとIL−2のみを添加した培養液中で培養した場合は、PBMCの総数は10倍程度にしか増加しなかった。
【0049】
図1のAに示す実験系において、培養開始時(D0)におけるVγ9Vδ2T細胞は約2.5×10個であり、培養14日後(D14)では、Vγ9Vδ2T細胞は約48×10個に増殖していた。また、図1のBに示す実験系において、培養開始時(D0)におけるVγ9Vδ2T細胞は約6×10個であり、培養14日後(D14)では、Vγ9Vδ2T細胞は約750×10個に増殖していた。
【0050】
このようにゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液中で培養した場合、Vγ9Vδ2T細胞の数は、少なく見積もっても約300倍から3000倍に増加することが確認された。よって、被験者によって増殖率に違いは見られるものの、ゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した場合は、ゾレドロネートとIL−2のみを添加した場合と比べて非常に高い増殖率となることが明らかとなった。
【0051】
また、図1において点線で表されるグラフに示されるように、抗IL−18受容体抗体を添加することによって、IL−18はVγ9Vδ2T細胞に作用することができなくなるため、Vγ9Vδ2T細胞の増殖は殆ど見られなくなっている。このことからも、IL−18がVγ9Vδ2T細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが分かる。
【0052】
なお、IL−18およびゾレドロネートのみを添加した培養液中ではVγ9Vδ2T細胞の数の増加は観察されず、Vγ9Vδ2T細胞の増殖にはIL−2が不可欠であることが示された。さらに、IL−2とIL−18のみを添加した培養液中でも有意なVγ9Vδ2T細胞の数の増加が見られたが、その数はゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液中で培養した場合に比べてはるかに少なかった。これらの結果は治療に用いられる十分な数量のVγ9Vδ2T細胞を得るためには、従来のようにIL−2とゾレドロネートとを培養液に添加するのに加えて、さらにIL−18を添加することが有用であることを示している。
【0053】
図2は、PBMCの細胞構成をフローサイトメトリーで解析した結果を示すものである。図2中、点線より左側の(a),(b),(e),(h)がゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに培養する前(以下単に「培養前」という)のPBMCを表し、点線より右側の各グラフはゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに培養後のPBMCを表している。
【0054】
図2の(a)は、培養前のPBMCにおいてαβ型のT細胞が56%を占めることを示している。図中の丸囲みした部分がαβ型のT細胞である。図2の(b)は、培養前のPBMCにおいてVγ9Vδ2T細胞が1.4〜5%を占めることを示している。図2の(c)は、ゾレドロネートおよびIL−2とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の70%を占めるようになったことを示し、図2の(d)はゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の45%を占めるようになったことを示している。
【0055】
上述のように、ヒト末梢血より分離したPBMCを、ゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液中で培養した場合のPBMCの総数は培養前の約40−100倍に増加しており、ゾレドロネートとIL−2のみを添加した培養液中で培養した場合のPBMCの総数は培養前の約10倍しか増えていないので、図2の(c)と(d)とでは、(d)の方がPBMCの総数が非常に多い。よって、図2の(c)における70%と、図2の(d)における45%とでは、後者の方が非常に数が多いことが分かる。よって、ゾレドロネート、IL−2およびIL−18を用いた場合の方が、ゾレドロネートとIL−2のみを用いた場合よりも非常に効率よくVγ9Vδ2T細胞を増殖させることができることが分かる。
【0056】
図2の(e)は培養前のPBMCにおいてVγ9Vδ2T細胞が1〜5%を占めることを示している。図2の(f)は、ゾレドロネートおよびIL−2とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の75%を占めるようになったことを示し、図2の(g)はゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の51%を占めるようになったことを示している。
【0057】
図2の(h)は、培養前のPBMCにおいてαβ型のT細胞が56%、Vγ9Vδ2T細胞が1.5%を占めていたことを示している。図2の(i)はゾレドロネートおよびIL−2とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の65%を占めるようになり、αβ型のT細胞が13.5%に減少したことを示し、図2の(j)はゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに14日間培養後、Vγ9Vδ2T細胞がPBMC全体の80%を占めるようになり、αβ型のT細胞が5.8%に減少したことを示している。
【0058】
このように、PBMCをゾレドロネート、IL−2およびIL−18とともに培養した場合、ゾレドロネートおよびIL−2とともに培養した場合と比べて、非常に効率よくVγ9Vδ2T細胞を増殖させることができることが分かった。
【0059】
(実施例2:活性化Vγ9Vδ2T細胞の生理作用)
(実施例2−1:表面抗原NKG2Dの発現)
上記のようにIL−2とゾレドロネートとIL−18とを用いて刺激し、増殖させたVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)についてフローサイトメトリーを用いて解析したところ、抗腫瘍作用に重要な役割を持つNKG2Dを強く発現していた。それゆえ、強い抗腫瘍作用をもつことが示唆された。図3は、活性化Vγ9Vδ2T細胞上のNKG2Dの発現を示すものである。図3の(a)は図2の(g)と同じであり、丸囲みした部分はVγ9Vδ2T細胞である。図3の(b)より、IL−2とゾレドロネートとIL−18とを用いて刺激したVδ2T細胞がNKG2Dを強く発現していることが分かる。
【0060】
(実施例2−2.腫瘍細胞に対する殺細胞活性)
腫瘍細胞に対する殺細胞活性は、様々な腫瘍細胞(ターゲット)とVγ9Vδ2T細胞(エフェクター)とを様々な比率で一晩共培養後、放出されたセリンエステラーゼをBLT法によって測定し、溶解した標的腫瘍細胞の割合を計算することにより評価した。中皮腫から樹立した3種類の腫瘍細胞(MESO−1、MESO−4,MSTO-211H)、正常中皮細胞であるMet5A、骨肉腫より樹立した細胞に対し、エフェクター:ターゲットの細胞数比1:1、3:1、10:1で、Vγ9Vδ2T細胞の殺腫瘍細胞活性を測定した。
【0061】
図4は、MESO−1、MSTO-211Hをターゲットとした場合のVγ9Vδ2T細胞の殺細胞活性を示すものである。図中、横軸はエフェクターを示し、コントロールは未刺激のVγ9Vδ2T細胞、「IL−2 ZOL」は、IL−2およびゾレドロネートを用いて刺激したVγ9Vδ2T細胞、「IL−2 IL−18」は、IL−2およびIL−18を用いて刺激したVγ9Vδ2T細胞、「IL−2 ZOL IL−18」は、IL−2、ゾレドロネートおよびIL−18を用いて刺激したVγ9Vδ2T細胞を表している。なお、図4の凡例は、白四角がE(エフェクター):T(ターゲット)=1:1、灰色四角がE:T=3:1、黒四角がE:T=10:1となっており、コントロールのみがこの凡例と一致しているが、各試験区においてもコントロールと同様、3本の棒グラフは、左からE:T=1:1、E:T=3:1、E:T=10:1を示している。
【0062】
ゾレドロネート、IL−2およびIL−18を添加した培養液中で培養したVγ9Vδ2T細胞も、ゾレドロネートとIL−2のみを添加した培養液中で培養したVγ9Vδ2T細胞も、強い殺腫瘍細胞活性を示したが、両者に目立った違いはなかった。なお、図示しないが、いずれのエフェクターも、対照の正常中皮細胞として用いたMet5Aに対してはほとんど殺細胞活性を示さなかった。
【0063】
(実施例2−3:IFN−γ、TNF、GM−CSFの産生)
様々な条件で培養したVγ9Vδ2T細胞の培養液の上清について、ELISA法を用いてサイトカイン(IFN−γ、TNF、GM−CSFなど)産生を測定した。図5は、ゾレドロネートとIL−2とIL−18とを加え、1週間培養したVγ9Vδ2T細胞によるIFN‐γおよびTNFαの産生を示すものである。
【0064】
図5に示すように、培養開始1週間後の培養上清中に含まれるサイトカインの量は、ゾレドロネートとIL−2のみを加えて培養したVγ9Vδ2T細胞に比べて、ゾレドロネートとIL−2とIL−18とを加えて培養したVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)の方がIFN−γについては約100倍、腫瘍壊死因子(TNF)については4倍くらい多かった。
【0065】
このことはゾレドロネートとIL‐2とIL‐18とを加えて2週間培養して増殖したVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)を、抗γδTCR抗体を結合させたマグネティックビーズを用いて95%以上にまで純化したものをIL‐18存在下と非存在下で再刺激し、24時間後の上清について比べた場合も同様であり、IL‐18存在下で培養したものの方がIFN‐γおよびTNFαの産生がはるかに多かった。
【0066】
なおGM‐CSFについてもIL‐18を加えた方が10倍ほど産生量が増えた(データ提示はせず)。このようにIL‐18はVγ9Vδ2T細胞の増殖を促進するばかりでなく、IFN−γやTNFの産生能を著しく高めることができ、がん細胞の標的化の作用を持つと考えられる。
【0067】
(実施例2−4:in vivoにおける抗腫瘍効果)
in vivoにおける抗腫瘍効果の測定は、NODscidマウスにヒト中皮腫由来腫瘍細胞を2x10個皮下に移植し、腫瘍の直径が約0.5cmになったところで10個のVγ9Vδ2T細胞を約1週間に1度の割合で尾静脈より注射し、適当な間隔で腫瘍の大きさを測定することで評価した。なお、腫瘍の大きさ(体積)は、(腫瘍の長径)×(腫瘍の短径)×π÷6により計算した。図6は、in vivoにおける活性化Vγ9Vδ2T細胞の抗腫瘍効果の測定結果を示すものである。
【0068】
Vγ9Vδ2T細胞としては、実施例1に記載した方法でゾレドロネート(1μM)、IL-2(10ng/ml)およびIL-18(100ng/ml)で刺激したVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)を用いた。図6では、上記腫瘍細胞と活性化Vγ9Vδ2T細胞とを用いたときの結果を黒丸のポイントで表示しており、凡例では「活性化γδT細胞」と示している。
【0069】
また、ゾレドロネートは、ファルネシルピロリン酸合成酵素の作用を阻害することにより、がん細胞の細胞質内にイソペンテルピロリン酸(IPP)等を蓄積し、がん細胞のVγ9Vδ2T細胞に対する感受性を高めることができる。そこで、1mMの濃度で生理食塩水に溶かしたゾレドロネート溶液0.2mlを予め腹腔内投与しておいて、6−16時間後に10個の活性化Vγ9Vδ2T細胞を尾静脈より注射した。このようにして得られた腫瘍細胞を用いたときの結果は図6において黒三角のポイントで表示しており、凡例では「ZOL+活性化γδT細胞」として表示している。
【0070】
なお、コントロールとしては、ゾレドロネート、IL−2およびVγ9Vδ2T細胞の代わりに0.2mlの生理食塩水をそれぞれ腹腔内および尾静脈より注射して得られた腫瘍細胞を用いた。
【0071】
図6に示すように、ゾレドロネートとIL−2とIL−18とを添加した培養液中で培養したVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)を投与することにより、腫瘍移植25日後の腫瘍の大きさは対照群に比べ約半分となり、腫瘍細胞の増加が強く抑制されていることが示された。このことから、IL‐18を用いて効率よく増殖させたVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)は生体内でも強い抗腫瘍活性を保っていることが示され、中皮腫などの治療に用いることができる可能性が示された。
【0072】
以上の観察結果から、Vγ9Vδ2T細胞をビスホスホネート、IL−2およびIL−18で刺激することにより、極めて効率よくVγ9Vδ2T細胞を増加させることが可能であることが分かった。しかも、このようにして得られたVγ9Vδ2T細胞(活性化Vγ9Vδ2T細胞)は、IFN−γ、腫瘍壊死因子(TNF)、GM−CSFなどのサイトカイン産生能も高く、in vitro(試験管内)でも in vivo(生体内)でも、様々な腫瘍細胞に対して強い殺細胞活性を保つ。このように、ビスホスホネート、IL−2に加えて、さらにIL−18を用いることにより、がんの治療に用いられる必要な量のVγ9Vδ2T細胞を患者の自己リンパ球から従来より簡便に生産することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかるVγ9Vδ2T細胞の増殖剤は、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を含んでいるため、従来効率的な増殖法がなかったVγ9Vδ2T細胞を飛躍的に増殖させることができる。それゆえ、製薬業等の生化学関係の産業全般に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】IL−2の存在下、ゾレドロネートで刺激したVγ9Vδ2T細胞の増殖に対する外因性IL−18の効果を示すものである。
【図2】PBMCの細胞構成をフローサイトメトリーで解析した結果を示すものである。
【図3】活性化Vγ9Vδ2T細胞上のNKG2Dの発現を示すものである。
【図4】MESO−1、MSTO-211Hをターゲットとした場合のVγ9Vδ2T細胞の殺細胞活性を示すものである。
【図5】ゾレドロネートとIL−2とIL−18とを加え、1週間培養したVγ9Vδ2T細胞によるIFN‐γおよびTNFαの産生を示すものである。
【図6】in vivoにおける活性化Vγ9Vδ2T細胞の抗腫瘍効果の測定結果を示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を含むことを特徴とするVγ9Vδ2T細胞の増殖剤。
【請求項2】
上記ビスホスホネートがゾレドロネートであることを特徴とする請求項1に記載の増殖剤。
【請求項3】
Vγ9Vδ2T細胞を、少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を用いて刺激することを特徴とする、活性化Vγ9Vδ2T細胞の製造方法。
【請求項4】
少なくともビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18によって刺激されてなることを特徴とする活性化Vγ9Vδ2T細胞。
【請求項5】
請求項4に記載の活性化Vγ9Vδ2T細胞を含むことを特徴とする医薬。
【請求項6】
少なくとも、Vγ9Vδ2T細胞、ビスホスホネート、インターロイキン2およびインターロイキン18を備えることを特徴とするVγ9Vδ2T細胞の増殖キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−17134(P2010−17134A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180749(P2008−180749)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【特許番号】特許第4281071号(P4281071)
【特許公報発行日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年7月発行の「自然免疫の最前線 −3学会合同大会2008−」(日本生体防御学会他)第169頁に「ゾレドロネートで刺激したヒトPBMCのγ・δT細胞の増殖とその機能に及ぼすIL−18の効果」として発表。
【出願人】(506208908)学校法人兵庫医科大学 (12)
【Fターム(参考)】