説明

Vリブドベルトの製造方法

【課題】ベルト幅を微調節することのできるVリブドベルトの製造方法の提供。
【解決手段】幅広のベルトスラブ8に一定のピッチ(P)で複数のリブ6を形成する。リブ溝7の中心に沿って設定した除去部9を砥石10で研削して切断する。先に切断した部位からベルト幅方向に所定の間隔(W0)をあけて次の切断箇所を設定する。この切断箇所を同様の手順で切断する。ベルトスラブ8が所定のベルト幅(W)に幅裁されてVリブドベルト1が得られる。除去部9を除去する分、Vリブドベルト1のベルト幅(W)が、切断箇所の中心間隔(W0)よりも狭くなる(W<W0)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幅広のベルトスラブをベルト幅方向に切断して所定のベルト幅のVリブドベルトを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、補機への伝動などに使用されるVリブドベルトは、ベルト側面とプーリフランジとの接触による損傷を防止するよう、プーリフランジとの間に余裕代を確保可能なベルト幅に設定され、そのベルト幅の範囲内に所定の条数のリブが形成されている。
【0003】
このVリブドベルトは、一旦、ベルトスラブと称される環状かつ幅広のゴム体を成形し、これにリブプロファイル研磨を施してリブを形成した後、そのベルトスラブをリブ溝の中心に沿って切断して幅裁することによって形成することが多い(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−58255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、レイアウトが複雑な場合や、プーリオフセットやミスアライメントを生じた場合には、ベルト側面が背面アイドラやVリブドプーリのフランジと干渉しやすく、異音を発生させたりVリブドベルトを破損させたりするおそれがある。
【0005】
これに対して、Vリブドベルトをより狭いベルト幅に設定することにより、フランジとの干渉を防止することが考えられる。ただ、上記のように幅広のベルトスラブをリブ溝の中心に沿って切断してVリブドベルトを形成する場合、そのベルト幅は、リブピッチの整数倍のうちから選択できるものの、レイアウトの複雑さの度合いなどに応じてベルト幅を微調節することができない。
【0006】
本発明は、ベルト幅を微調節することのできるVリブドベルトの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るVリブドベルトの製造方法は、ベルト周方向に連続する複数のリブがベルト幅方向に一定のピッチで配された幅広のベルトスラブを形成し、このベルトスラブをベルト周方向かつ複数置きのリブ溝の中心に沿ってベルト幅方向に切断して所定のベルト幅のVリブドベルトを製造するものであり、ベルトスラブを切断する際、切断箇所として設定したリブ溝中心に沿う所定幅の除去部を除去することにより、ベルト側縁から一つ目のリブ溝中心までの幅をリブのピッチよりも狭く設定するものである。
【0008】
上記構成によれば、ベルトスラブの切断箇所に設定した除去部を除去することによってベルトスラブを切断するので、ベルトスラブを単に切断する場合よりも、除去部の幅だけベルト幅を狭くすることができる。これにより、ベルトスラブをリブ溝の中心に沿って切断してVリブドベルトを形成する際、その切断する位置をずらすことなく、ベルト幅を微調節することができる。
【0009】
ベルトスラブを切断するための具体的な手法としては、ベルトスラブの切断箇所を所定幅の砥石で研削することにより、除去部を除去してベルトスラブを切断する手法、あるいは、ベルトスラブの切断箇所を所定の間隔を空けて配置された二枚の刃物で切断することにより、除去部を除去してベルトスラブを切断する手法を例示できる。
【0010】
また、本発明は、ベルト内周面に、ベルト周方向に連続する複数のリブがベルト幅方向に一定のピッチで形成され、ベルト側縁から一つ目のリブ溝中心までの幅がリブのピッチよりも狭く設定されたVリブドベルトを提供する。
【0011】
この構成によれば、リブピッチを変更することなくベルト幅を狭くすることができるので、リブピッチの共通化を図りつつ、レイアウトが複雑な場合や、プーリオフセットやミスアライメントを生じる場合にも、ベルト側面とフランジとの干渉を阻止して、異音の発生やベルト側面の破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のとおり、本発明によると、ベルトスラブの切断箇所に設定した除去部を除去することによってベルトスラブを切断するので、Vリブドベルトのリブピッチの共通化を図りつつ、ベルト幅を微調節することができる。これにより、Vリブドベルトのベルト側面とプーリフランジとの干渉を阻止して、異音の発生やベルト側面の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るVリブドベルト及びVリブドベルトの製造方法を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。まず、Vリブドベルトの構成について説明する。図1は本発明に係るVリブドベルトの断面図である。
【0014】
Vリブドベルト1は、例えば補機への伝動などに使用されるものであり、リブゴム2の外周側を接着ゴム3を介して帆布4で被覆すると共に、接着ゴム3に心線5を埋設した構造とされ、そのリブゴム2の内周側に、ベルト周方向に連続する複数条(図1においては7条)のリブ6がベルト幅方向に一定のピッチ(P:例えば3.56mm)で形成されている。
【0015】
Vリブドベルト1のベルト側縁から一つ目のリブ溝7の中心までの幅(P1:例えば3.06mm)は、リブ6のピッチ(P)よりも狭く設定されている(P1<P)。これにより、リブ6のピッチ(P)を一定にしたまま、ベルト幅(W)が、リブ6のピッチ(P)と条数との積で求められる幅(W0)よりも狭く設定されている(W<W0)。
【0016】
ここで、リブゴム2は、例えばクロロプレンゴムなどからなり、帆布4は、例えばナイロン製の布をゴム糊に浸漬させてなる。また、心線5は、多数のフィラメントを撚り合わせたポリエステルコードなどであり、ベルト周方向に連続して、Vリブドベルト1に作用する引張力を受け持つ。
【0017】
次に、Vリブドベルトの製造方法を説明する。図2はベルトスラブを砥石で切断する様子を示す断面図である。
【0018】
まず、周知の手順により、環状かつ幅広で内周面及び外周面が平坦なベルトスラブ(平ベルト)を加硫成形した後、そのリブゴム2にリブプロファイル研磨を施すことにより、ベルト幅方向に一定のピッチ(P)でベルト周方向に連続する複数のリブ6を有する環状かつ幅広のベルトスラブ8を形成する。
【0019】
次いで、ベルトスラブ8の切断箇所として、複数置きのリブ溝7の中心に沿って所定幅(a:例えば1mm以下)の除去部9を設定し、この除去部9を所定の厚さ(a)の砥石10を回転させて研削する。これにより、除去部9が除去されつつ、ベルトスラブ8がベルト周方向かつリブ溝7の中心に沿ってベルト幅方向に切断される。
【0020】
さらに、先に切断した部位からベルト幅方向に所定の間隔(W0)をあけて、別のリブ溝7に次の切断箇所を順次設定し、その切断箇所を同様の手順で切断することにより、ベルトスラブ8が所定のベルト幅(W)に順次幅裁されて、複数のVリブドベルト1が得られる。
【0021】
ここで、ベルトスラブ8を切断しつつ除去部9を除去するので、Vリブドベルト1の両側縁部の幅(P1)がリブ6のピッチ(P)よりもa/2ずつ狭くなる(P1=P−a/2)。これにより、Vリブドベルト1のベルト幅(W)は、リブ6のピッチ(P)の整数倍(図1においては7倍)である切断箇所の中心間隔(W0)よりもaだけ狭くなる(W=W0−a)。
【0022】
上記構成によれば、ベルトスラブ8を幅裁する際に、厚さ(a)の砥石10で研削して幅(a)の除去部9を除去するので、Vリブドベルト1の両側縁部の幅(P1)を狭くすることができ、リブ6のピッチ(P)を変更することなくベルト幅(W)を狭くすることができる。
【0023】
これにより、リブ6のピッチ(P)の共通化を図りつつ、レイアウトが複雑な場合や、プーリオフセットやミスアライメントが発生しやすい場合にも、ベルト側面とアイドラやプーリのフランジとの干渉による異音の発生やベルト破損を防止することができる。さらに、フランジの間隔を狭くすることができるので、プーリなどの配置スペースが狭い場合にも、そのフランジの取り付けを容易にすることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、図3に示すように、ベルトスラブ8を砥石10で研削して切断する代わりに、所定の間隔(a)を空けて配置した二枚の刃物11でベルトスラブ8を切断することにより、除去部9を除去しつつベルトスラブ8を切断することもできる。なお、刃物11は、丸刃などを採用することができ、特に回転させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るVリブドベルトの断面図
【図2】ベルトスラブを砥石で切断する様子を示す断面図
【図3】ベルトスラブを二枚の刃物で切断する様子を示す断面図
【符号の説明】
【0026】
1 Vリブドベルト
6 リブ
7 リブ溝
8 ベルトスラブ
9 除去部
10 砥石
11 刃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト周方向に連続する複数のリブがベルト幅方向に一定のピッチで配された幅広のベルトスラブを形成し、該ベルトスラブをベルト周方向かつ複数置きのリブ溝の中心に沿ってベルト幅方向に切断して所定のベルト幅のVリブドベルトを製造する方法であって、前記ベルトスラブを切断する際、切断箇所として設定したリブ溝中心に沿う所定幅の除去部を除去することにより、ベルト側縁から一つ目のリブ溝中心までの幅を前記リブのピッチよりも狭く設定することを特徴とするVリブドベルトの製造方法。
【請求項2】
前記ベルトスラブの切断箇所を所定幅の砥石で研削することにより、前記除去部を除去してベルトスラブを切断することを特徴とする請求項1に記載のVリブドベルトの製造方法。
【請求項3】
前記ベルトスラブの切断箇所を所定の間隔を空けて配置された二枚の刃物で切断することにより、前記除去部を除去してベルトスラブを切断することを特徴とする請求項1に記載のVリブドベルトの製造方法。
【請求項4】
ベルト内周面に、ベルト周方向に連続する複数のリブがベルト幅方向に一定のピッチで形成され、ベルト側縁から一つ目のリブ溝中心までの幅が前記リブのピッチよりも狭く設定されたことを特徴とするVリブドベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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