説明

VA菌根菌の分離培養法(変異相を含む)及び培養菌体(変異相を含む)の生菌資材の製造法

【課題】宿主根物根へ共生されることなしに増殖させることができなかったVA菌根菌の、胞子からの人工寒天培地平板上又は液体培養法での株化、継代も可能である、生菌VA菌根菌の培養法の提供。
【解決手段】VA菌根菌、Gigaspora margarita(ギガスポラ・マルガリータ)及びGlomus etunicatum(グロムス・エチュニカタム)の胞子からの人工培養法。これらのVA菌根菌を適当な保持剤に保持されるVA菌根菌生菌資材の製造法。野外応用試験においても従来のVA菌根菌資材より極めて早く本菌が作物根への定着し、作物の成長も良好なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は菌の増殖に関する。
【背景技術】
【0002】
VA菌根菌は、これまで人工培地上に培養することは不可能とされ、従ってこれまで分離された報告例はない。
【特許文献1】
【非特許文献1】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はVA菌根菌の胞子から2つの方法で人工寒天培地平板上又は液体培養法で生菌VA菌根菌の培養法を確立し、分離菌株は株化、継代し保存も可能である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
特殊組織培養液、コーンベース培地及びポテトベース培地の調整及び各種の滅菌方法は次のようにして行った。
特殊組織培養液
硫酸アンモニウム0.017g・硝酸アンモニウム0.06g・塩化カリウム0.06g・塩化カルシウム0.8g・硫酸マグネシウム0.05g・塩化マンガン0.001g・酸化ほう素0.005g・硫酸鉄(II)7水和物0.0001g・硫酸銅0.001g・モリブデン酸ナトリウム0.001g・硝酸コバルト0.001g・グルコース2g・蒸留水1000ml pH5.0
コーンベース培地
冷凍コーン100gを1000mlの割合に加え120℃25分浸出しろ過したもの又はコーンスティープリカー(Corn steep Lique)1%溶液を一度煮沸しろ過しpH5.0に補正した。
ポテトベース培地
ジャガイモ100gをミキサーで処理し1000mlとし、しばらく放置し上澄みをろ過し、一度煮沸してろ過したものにグルコース10gを加えpH5.0に補正した。
胞子及び牧草(ソルゴー等)は適当な濃度の殺菌剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液、過酸化水素などの適当な殺菌剤を用いて滅菌し、特殊組織培養液は無菌ろ過法、培地類は120℃15分間、その他の培養土、器具及び器財はいずれも120℃30分間滅菌を行った。
以下の2つの方法はいずれも自然光線下で実施した。
1. 特殊組織培養液を用いて牧草(ソルゴー等)を無菌発芽発根し培養した牧草根に無菌胞子を接種し感染した感染根をコーンベース寒天培地平板上又はポテトベース寒天培地平板上に20℃3〜4日間培養すると1〜2種の集落を形成する。
2. 絶対無菌牧草(ソルゴー等)と無菌胞子を植え込み隔離ポット栽培し、経時的培養土中の胞子の発芽状態を調べたが、極めて複雑過程をとり約1ヶ月後には胞子、幼若胞子と円盤状の仮称感染粒子が確認され、この仮称感染粒子は適当な時期を見計らいながら上記の寒天培地平板上に培養すると同様に本菌の集落が形成される。尚、仮称感染粒子以外に同時分離される胞子及び幼若胞子は全く発育しない。
【発明の効果】
【0005】
本菌は2つの方法で分離し、その際ポテトベース寒天培地平板上にコーンベース寒天培地平板上に2〜3種の集落を形成することがある。これについて細菌学的、並びに生化学的諸性状を検討した結果、Smooth(スムース)・Intermediat(インターメデート)・Roagh(ラフ)及びMucoid(ムコイド)のMutationalphase(変異相)が存在することを確認した。変異相によって形成される集落も異なりSmoothの場合ポテトベース寒天培地平板上には盛り上がった多型の集落を形成し、培地深部に菌糸が深入する。コーンベース寒天培地平板上での集落は菌糸の深部深入と同時に寒天培地平板上に長い菌糸が伸長する。突然変異率はやや高く、R(ラフ)・M(ムコイド)株は変異誘起物質を含む勾配寒天培地平板法等によってinduced mutation(誘発変異)によってS(スムース)が出現する。
以上2法で分離したTC−1No1(Gigaspora margarita)・TC−1 2No20(Gigaspora margarita)及びTC−7No2(Glomus etunicatum)株と命名した。本菌株の保存は胞子の保存菌株の維持のような植物栽培による必要はなくNIH(USA)処方の凍結保存液に菌体を浮游させ凍結すれば長期にわたり保存は可能である。
【発明を実施するための最良の状態】
【0006】
TC−1No1及びTC−7No2株は例えばポテトベース培養液又はコーンベース培養液に20℃〜25℃で4〜5日間培養すると、菌体はフロック状に沈降する。菌体の純粋実験を行って確認したのち、例えば滅菌パーライト、フヨーライトその他の保持剤に保持させ、適度の湿度を保ち、更に保持剤で混和希釈する。従って共生率も自由に変えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VA菌根菌の生菌分離培養法(変異相を含む)及び培養菌体(変異相を含む)の生菌資材の製造法

【公開番号】特開2008−29315(P2008−29315A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227151(P2006−227151)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506287464)
【出願人】(506287475)
【出願人】(506287486)
【出願人】(597019056)
【Fターム(参考)】