説明

VA菌根菌の培養方法

【課題】VA菌根菌を胞子から人工培地上でVA菌根菌を培養する方法を提供する。
【解決手段】無菌的に取得したVA菌根菌の胞子をコーンベース培地又はポテトベース培地で培養することを特徴とするVA菌根菌の培養方法である。コーンベース培地は、冷凍コーンを浸出ろ過する方法、又はコーンスティープリカー溶液をろ過する方法で得ることができる。また、ポテトベース培地は、ジャガイモをミキサー処理して上澄みを濾過する方法で得ることができる。植物根は牧草根であることが好ましく、また、VA菌根菌はGigaspora margarita(ギガスポラ・マルガリータ)又はGlomus etunicatum(グロムス・エチュニカタム)であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VA菌根菌の培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はVA菌根菌の胞子から2つの方法で人工寒天培地平板上又は液体培養法で生菌VA菌根菌の培養法を確立し、分離菌株は株化、継代し保存も可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、VA菌根菌の胞子から人工培地上でVA菌根菌を培養する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、無菌的に取得したVA菌根菌の胞子をコーンベース培地又はポテトベース培地で培養することを特徴とするVA菌根菌の培養方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、無菌的に取得したVA菌根菌の胞子を人工的に培養することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明はVA菌根菌の培養方法であって、無菌的に胞子を取得し、これとコーンベース培地又はポテトベース培地で培養する工程を備える。以下、各工程を順次説明する。
【0007】
(胞子の取得)
VA菌根菌の胞子を植物根から無菌的に取得する。胞子を無菌的に取得する方法としては、以下の2つの方法を例示することができる。
1. 特殊組織培養液を用いて牧草(ソルゴー等)を無菌発芽発根し培養した牧草根に無菌胞子を接種し感染した感染根から胞子を取得する。
2. 絶対無菌牧草(ソルゴー等)と無菌胞子を植え込み隔離ポット栽培し培養土中の胞子から取得する。
【0008】
(培養)
続いて、取得した胞子をコーンベース培地又はポテトベース培地で培養して増殖させる。コーンベース培地は、例えば冷凍コーンを浸出ろ過する方法や、コーンスティープリカー溶液をろ過する方法などにより調製することができる。また、ポテトベース培地は、ジャガイモをミキサー処理して上澄みを濾過する方法で調製することができる。
【0009】
コーンベース培地又はポテトベース培地は、いずれも平板培地又は培養液とすることができる。また、平板培地とする場合は、寒天平板培地とすることが好ましい。培地のpHとしては5.0が好ましく、また培養温度としては20℃が好ましい。培養期間としては3〜4日間が好ましい。寒天培地平板上で培養した場合、VA菌根菌は通常1〜2種の集落を形成する。
【0010】
本発明のおけるVA菌根菌としては、Gigaspora margarita(ギガスポラ・マルガリータ)及びGlomus etunicatum(グロムス・エチュニカタム)を挙げることができる。また、植物根としては、牧草(ソルゴー等)を挙げることができる。
【実施例】
【0011】
特殊組織培養液、コーンベース培地及びポテトベース培地の調整及び各種の滅菌方法は次のようにして行った。
【0012】
特殊組織培養液
硫酸アンモニウム0.017g・硝酸アンモニウム0.06g・塩化カリウム0.06g・塩化カルシウム0.8g・硫酸マグネシウム0.05g・塩化マンガン0.001g・酸化ほう素0.005g・硫酸鉄(II)7水和物0.0001g・硫酸銅0.001g・モリブデン酸ナトリウム0.001g・硝酸コバルト0.001g・グルコース2g・蒸留水1000ml pH5.0
【0013】
コーンベース培地
冷凍コーン100gを1000mlの割合に加え120℃25分浸出しろ過したもの又はコーンスティープリカー(Corn steep Lique)1%溶液を一度煮沸しろ過しpH5.0に補正した。
【0014】
ポテトベース培地
ジャガイモ100gをミキサーで処理し1000mlとし、しばらく放置し上澄みをろ過し、一度煮沸してろ過したものにグルコース10gを加えpH5.0に補正した。
【0015】
胞子及び牧草(ソルゴー等)は適当な濃度の殺菌剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム溶液、過酸化水素などの適当な殺菌剤を用いて滅菌し、特殊組織培養液は無菌ろ過法、培地類は120℃15分間、その他の培養土、器具及び器財はいずれも120℃30分間滅菌を行った。
【0016】
以下の2つの実施例はいずれも自然光線下で実施した。なお、VA菌根菌の胞子は、“Gigaspora margarita”と“Glomus etunicatum”を使用した。
(1)実施例1
特殊組織培養液を用いて牧草(ソルゴー等)を無菌発芽発根し培養した牧草根にVA菌根菌の無菌胞子を接種し感染した感染根をコーンベース寒天培地平板上又はポテトベース寒天培地平板上に20℃3〜4日間培養すると1〜2種の集落を形成した
【0017】
(2)実施例2
絶対無菌牧草(ソルゴー等)とVA菌根菌の無菌胞子を植え込み隔離ポット栽培し、経時的培養土中の胞子の発芽状態を調べたが、極めて複雑過程をとり約1ヶ月後には胞子、幼若胞子と円盤状の仮称感染粒子が確認され、この仮称感染粒子は適当な時期を見計らいながら上記の寒天培地平板上に培養すると同様に本菌の集落が形成され。尚、仮称感染粒子以外に同時分離される胞子及び幼若胞子は全く発育しなかった
【0018】
本菌は2つの方法(実施例1,2)で分離し、その際ポテトベース寒天培地平板上又はコーンベース寒天培地平板上に2〜3種の集落を形成することがある。これについて細菌学的、並びに生化学的諸性状を検討した結果、Smooth(スムース)・Intermediat(インターメデート)・Roagh(ラフ)及びMucoid(ムコイド)のMutationalphase(変異相)が存在することを確認した。変異相によって形成される集落も異なりSmoothの場合ポテトベース寒天培地平板上には盛り上がった多型の集落を形成し、培地深部に菌糸が深入する。コーンベース寒天培地平板上での集落は菌糸の深部深入と同時に寒天培地平板上に長い菌糸が伸長する。突然変異率はやや高く、R(ラフ)・M(ムコイド)株は変異誘起物質を含む勾配寒天培地平板法等によってinduced mutation(誘発変異)によってS(スムース)が出現する。
【0019】
以上2法(実施例1,2)で分離したVA菌根菌をTC−1No1(Gigaspora margarita)・TC−1 2No20(Gigaspora margarita)及びTC−7No2(Glomus etunicatum)株と命名した。本菌株の保存は胞子の保存菌株の維持のような植物栽培による必要はなくNIH(USA)処方の凍結保存液に菌体を浮游させ凍結すれば長期にわたり保存は可能である。
【0020】
TC−1No1及びTC−7No2株は例えばポテトベース培養液又はコーンベース培養液に20℃〜25℃で4〜5日間培養すると、菌体はフロック状に沈降する。菌体の純粋実験を行って確認したのち、例えば滅菌パーライト、フヨーライトその他の保持剤に保持させ、適度の湿度を保ち、更に保持剤で混和希釈する。従って共生率も自由に変えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌的に取得したVA菌根菌の胞子をコーンベース培地又はポテトベース培地で培養することを特徴とするVA菌根菌の培養方法。
【請求項2】
前記コーンベース培地は、冷凍コーンを浸出ろ過する方法、又はコーンスティープリカー溶液をろ過する方法で得られることを特徴とする請求項1に記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項3】
前記ポテトベース培地は、ジャガイモをミキサー処理して上澄みを濾過する方法で得られることを特徴とする請求項3に記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項4】
前記コーンベース培地又はポテトベース培地は、寒天平板培地又は培養液であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項5】
前記胞子は、滅菌した組織培養液を用いて植物根を無菌状態で発芽発根させ、該植物根に無菌状態で胞子を接種し感染させた感染根から取得されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項6】
前記組織培養液は、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、酸化ほう素、硫酸鉄(II)7水和物、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、硝酸コバルト及びグルコースを含有することを特徴とする請求項5に記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項7】
前記胞子は、無菌状態の植物根と無菌状態のVA菌根菌の胞子とを培養土を含むポットで植え込み隔離培養し、前記培養土中に含まれる前記胞子から感染粒子を選別することで取得されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項8】
前記植物根が牧草根であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のVA菌根菌の培養方法。
【請求項9】
前記VA菌根菌がGigaspora margarita(ギガスポラ・マルガリータ)又はGlomus etunicatum(グロムス・エチュニカタム)であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のVA菌根菌の培養方法。

【公開番号】特開2012−50461(P2012−50461A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264447(P2011−264447)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【分割の表示】特願2006−227151(P2006−227151)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(506287464)
【出願人】(506287475)
【出願人】(506287486)
【Fターム(参考)】