説明

X線撮影装置

【課題】 フラットパネル型X線検出器の端部に構造物が存在した場合においても、正確に画像を表示することが可能なX線撮影装置を提供する。
【解決手段】 X線撮影装置は、被検体である患者1を載置するテーブル2と、X線管3と、フラットパネル型X線検出器4と、画像データ補正部61および画像処理部62を有するとともに装置全体を制御する制御部6と、CRT等から構成される表示部8とを備える。画像データ補正部61は、フラットパネル型X線検出器4におけるX線検出領域のうち、構造物と対向するX線検出領域端部の無効データ領域の画素値を、無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することにより、フラットパネル型X線検出器による画像データを補正するものである。また、画像処理部62は、画像データ補正部61により補正した画像データを画像処理するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体に向けてX線を照射するX線管と、このX線管から照射され被検体を通過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器とを備えたX線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなX線撮影装置に利用されるフラットパネル型X線検出器は、フラットパネルディテクタ(flat panel detector)とも呼称されるものであり、TFT(薄膜トランジスター)上にX線変換膜が積層された構成を有し、X線をX線変換膜を利用して電気信号に変換するものである。この電気信号は画像処理部において画像処理され、X線画像が作成される。
【0003】
ところで、このようなフラットパネル型X線検出器によりX線撮影を行うときに、フラットパネル型X線検出器の端部に、例えば、パネル等の構造物が存在する場合がある。このような場合には、フラットパネル型X線検出器で検出した画像のうち、構造物に相当する領域は、無効データ領域となる。
【0004】
特許文献1には、このような無効データ領域を利用してキャリブレーションを行った場合の弊害を防止するため、X線照射領域がキャリブレーションの際に設定された有効領域を越えないようにしたX線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−94369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フラットパネル型X線検出器の縦横の画素数は、画像処理の都合上、一般的に2のn乗となっている。また、画像処理において、例えば画像のサイズを1/64に縮小する処理等を容易に行うため、フラットパネル型X線検出器の縦横の画素数は、2の6乗である64で割り切れる値となっていることが多い。このようなフラットパネル型X線検出器においては、フィルタリング処理や拡大縮小処理等の画像処理時には、有効データ領域のみではなく、無効データ領域をも使用して画像処理を行う必要がある。
【0007】
このとき、その端部に無効データ領域を含むX線検出領域全体を画像処理した場合には、有効データ領域の処理を行う場合に無効データ領域のデータを参照することから、有効データ領域の画像処理結果が無効データ領域のデータの影響を受けることに起因して、撮影画像の端部における画像の視認性が低下するという問題が生ずる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フラットパネル型X線検出器の端部に構造物が存在した場合においても、正確に画像を表示することが可能なX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器と、を備えたX線撮影装置において、前記フラットパネル型X線検出器におけるX線検出領域のうち、構造物と対向するX線検出領域端部の無効データ領域の画素値を、無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することにより、X線検出器による画像データを補正する補正手段と、前記画像データ補正手段により補正した画像データを画像処理する画像処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記補正手段は、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域と対称となる位置に配置された有効データ領域の画素値に置換する鏡像補間、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域に隣接する有効データ領域の端部の画素値に置換する端画素補間、無効データ領域の画素値を有効データ領域のうちの予め設定した領域の画素値で置換する固定値補間のいずれかを利用して、無効データ領域の画素値を置換する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、X線検出領域端部の無効データ領域の画素値を有効データ領域の画素値に置換することにより、フラットパネル型X線検出器の端部に構造物が存在した場合においても正確に画像を表示することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、鏡像補間、端画素補間または固定値補間により、X線検出領域端部の無効データ領域の画素値を、容易に有効データ領域の画素値に置換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【図2】フラットパネル型X線検出器4のX線検出領域を示す平面図である。
【図3】この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影後の画像表示動作を示すフローチャートである。
【図4】鏡像補間を示す説明図である。
【図5】端画素補間を示す説明図である。
【図6】固定値補間を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るX線撮影装置の概要図である。
【0015】
このX線撮影装置は、被検体である患者1を載置するテーブル2と、X線管3と、X線管3に付与する管電圧等を制御する高電圧発生部5と、フラットパネル型X線検出器4と、後述する画像データ補正部61および画像処理部62を有するとともに装置全体を制御する制御部6と、CRT等から構成される表示部8とを備える。
【0016】
このX線撮影装置においては、X線管3からテーブル2上の患者1に向けてX線を照射し、患者1を通過したX線をフラットパネル型X線検出器4により検出し、検出されたX線に基づく画像データを画像データ補正部61により補正するとともに、画像処理部62により画像処理し、画像処理された画像データによる映像信号を利用して表示部8にX線画像を表示する。
【0017】
図2は、フラットパネル型X線検出器4のX線検出領域を示す平面図である。
【0018】
この実施形態に係るフラットパネル型X線検出器4の表面におけるX線検出領域は、1536行1536列(1536×1536)に配置された2359296個の画素(ピクセル)から構成されている。このフラットパネル型X線検出器4においては、例えば、画像のサイズを1/64に縮小する画像処理等を容易に行うため、縦横の画素数は、2の6乗である64で割り切れる値(1536)となっている。
【0019】
そして、フラットパネル型X線検出器4においては、X線検出領域の周囲(上下左右)には、一般的にパネル等の構造物が配置されることから、これらの領域は無効データ領域となっている。この実施形態においては、図2にハッチングを付して示すように、X線検出領域の周囲(上下左右)の10画素の領域が無効データ領域となっている場合を示している。
【0020】
フラットパネル型X線検出器4において、これらの無効データ領域を含むX線検出領域全体を画像処理した場合には、有効データ領域の処理を行う場合に無効データ領域のデータを参照することから、有効データ領域の画像処理結果が無効データ領域のデータの影響を受けることに起因して、撮影画像の端部における画像の視認性が低下するという問題が生ずる。このため、この発明に係るX線撮影措置においては、無効データ領域の画素値を無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することにより画像データを補正した後に、画像処理を実行するようにしている。
【0021】
以下、この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影動作について説明する。図3は、この発明に係るX線撮影装置によるX線撮影後の画像表示動作を示すフローチャートである。
【0022】
最初に、制御部6に対して画像を入力する(ステップS1)。すなわち、X線管3からテーブル2上の患者1に向けてX線を照射し、患者1を通過したX線をフラットパネル型X線検出器4により検出することにより撮影した画素値のデータを、画像データとして制御部6に取り込む。
【0023】
次に、無効データ領域の画素値を無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換する(ステップS2)。すなわち、図1に示す画像データ補正部61により、フラットパネル型X線検出器4におけるX線検出領域のうち、図2においてハッチングを付した構造物と対向するX線検出領域端部の無効データ領域の画素値を、無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することにより、フラットパネル型X線検出器4による画像データを補正する。
【0024】
この無効データ領域の画素値の置換は、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域と対称となる位置に配置された有効データ領域の画素値に置換する鏡像補間、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域に隣接する有効データ領域の端部の画素値に置換する端画素補間、無効データ領域の画素値を有効データ領域のうちの予め設定した領域の画素値で置換する固定値補間のいずれかを利用して実行される。
【0025】
図4は、鏡像補間を示す説明図である。なお、この図においては、フラットパネル型X線検出器4における左端から一定領域の画素を、左端から数えた位置の番号を付して示している。また、この図においては、図2においてハッチングを付した無効データ領域を太線で示している。
【0026】
この鏡像補間は、無効データ領域の画素値を、それらの無効データ領域と対称となる位置に配置された有効データ領域の画素値に置換するものである。図4に示すように、フラットパネル型X線検出器4の左端から10画素の画素値が、11番目の画素を中心として、12番目の画素から21番目の画素までの画素値となるように、対称に置換されている。この鏡像置換により、X線検出領域端部の無効データ領域の画素値を無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することが可能となる。
【0027】
図5は、端画素補間を示す説明図である。なお、この図においても、フラットパネル型X線検出器4における左端から一定領域の画素を、左端から数えた位置の番号を付して示している。また、この図においても、図2においてハッチングを付した無効データ領域を太線で示している。
【0028】
この端画素補間は、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域に隣接する有効データ領域の端部の画素値に置換するものである。図5に示すように、フラットパネル型X線検出器4の左端から10画素の画素値が、11番目の画素値となるように置換されている。この端画素補間によっても、X線検出領域端部の無効データ領域の画素値を無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することが可能となる。
【0029】
図6は、固定値補間を示す説明図である。なお、この図においても、フラットパネル型X線検出器4における左端から一定領域の画素を、左端から数えた位置の番号を付して示している。また、この図においても、図2においてハッチングを付した無効データ領域を太線で示している。
【0030】
この固定値素補間は、無効データ領域の画素値を有効データ領域のうちの予め設定した領域の画素値で置換するものである。図6に示すように、フラットパネル型X線検出器4の左端から10画素の画素値が、この実施形態では90番目の画素値となるように置換されている。この設定領域としては、例えば、有効データ領域においてX線が適正線量となった領域の画素を選択することができる。この固定値補間によっても、X線検出領域端部の無効データ領域の画素値を無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することが可能となる。
【0031】
再度、図3を参照して、無効データ領域の画素値の置換が終了すれば、画像処理を実行する(ステップS3)。この画像処理は、無効データ領域の画素値と置換することにより補正された画像データ全域に対して、図1に示す画像処理部62により、フィルタリング処理や拡大縮小処理等のX線撮影後の検査に必要な各種の処理を行うものである。この画像処理時には、無効データ領域の画素値の置換が完了していることから、有効データ領域の画像処理結果が無効データ領域のデータの影響を受けることにより、撮影画像の端部における画像の視認性が低下することを有効に防止することが可能となる。
【0032】
そして、画像処理が終了した画像データは、表示部8に出力され(ステップS4)、表示部8にX線撮影画像が表示される。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、フラットパネル型X線検出器4における上下左右の端縁から各10画素の領域を無効データ領域として置換処理しているが、この無効データ領域は、上下左右方向に対称である必要はない。この無効データ領域は、フラットパネル型X線検出器4と対向する構造物の形状や大きさに対応させて、適宜、設定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 患者
2 テーブル
3 X線管
4 フラットパネル型X線検出器
5 高電圧発生部
6 制御部
8 表示部
61 画像データ補正部
62 画像処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けてX線を照射するX線管と、前記X線管から照射され前記被検体を通過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器と、を備えたX線撮影装置において、
前記フラットパネル型X線検出器におけるX線検出領域のうち、構造物と対向するX線検出領域端部の無効データ領域の画素値を、無効データ領域以外の有効データ領域の画素値に置換することにより、フラットパネル型X線検出器による画像データを補正する画像データ補正手段と、
前記画像データ補正手段により補正した画像データを画像処理する画像処理手段と、
を備えたことを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮影装置において、
前記画像データ補正手段は、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域と対称となる位置に配置された有効データ領域の画素値に置換する鏡像補間、無効データ領域の画素値をそれらの無効データ領域に隣接する有効データ領域の端部の画素値に置換する端画素補間、無効データ領域の画素値を有効データ領域のうちの予め設定した領域の画素値で置換する固定値補間のいずれかを利用して、無効データ領域の画素値を置換するX線撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125428(P2012−125428A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280019(P2010−280019)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】