説明

X線治療用助剤

【課題】X線を照射して腫瘍等の患部の標的細胞を治療する際に、X線を効率良く標的細胞に吸収させることができ、しかも周囲の正常細胞の損傷を低減することのできる低被曝、低侵襲のX線治療用助剤を提供する。
【解決手段】平均粒径が1nm〜10μmの微粒子で、遠達力のあるX線を吸収し、吸収したX線エネルギーを酸化還元反応に変換して、活性酸素種又はフリーラジカルを発生させるエネルギー変換微粒子の少なくとも1種を媒体に分散させてなるX線治療用助剤。好適なエネルギー変換微粒子としては、CdTe、CeF、ZnS:Ag、Nb、ZrO、CsI、CsF、SrTiO、CdSe、KTaOからなる群から選択されたものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射により、ガン細胞などの悪性新生物、ガン前駆細胞、ウイルスおよび細菌が感染した細胞を損傷または死滅させることができるX線治療用助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射線治療では、高エネルギーのX線、ガンマ線を腫瘍に集中的に照射すると、細胞内の水がヒドロキシラジカルと水素原子に分解され、細胞内の酸素と反応して、スーパーオキシドやヒドロペルオキシラジカルが生成される。これらの活性酸素やフリーラジカルは、細胞の中のDNAに直接損傷を与える場合と、細胞膜の脂質から水素を引き抜き、過酸化ラジカルの連鎖によって過酸化脂質に変質させて細胞膜傷害を引き起こす間接的な損傷経路、の2つの系統がある。しかし、放射線を標的細胞にのみ選択的に照射することはできないので、これらの反応が患部周囲の正常細胞でも進行し、強度の放射線が照射された経路および患部周辺では、腫瘍細胞と正常細胞の区別なく、損傷を与えてしまう結果となる。
【0003】
患部の標的細胞を損傷させる方法として、これまで、紫外線または放射線と光触媒微粒子をもちいた治療方法が提案されてきた。たとえば、Fujishimaらはヒト由来のガン細胞(Hela細胞)に酸化チタン懸濁液を注入し、in vitroで紫外線を照射して、酸化チタンの酸化還元反応を利用して細胞を死滅させたと報告している(非特許文献1)。しかし、この方法では、紫外線が患部の内部に到達しないため、患部の表面でしか治療が行われない。したがって、患部が体表面の深部にある場合や、患部自体が大きい場合、深部の治療が困難である。
【非特許文献1】DENKI KAGAKU, vol.60, pp.314-321, 1995
【0004】
また、一方の端部面に光触媒を担持させた光学繊維と、該光学繊維の他方の端部に配置させた近紫外線光源とを備えたがん治療装置が提案されているが(特許文献1)、この装置でも、紫外線に透過性はなく、ファイバー端面近傍の表面の治療しか行うことができない。
さらに、可視光応答性の酸化チタンからなる治療用助剤を腫瘍部に注入して、可視光で光触媒を活性化させる方法も知られているが(特許文献2)、可視光も腫瘍の深部には到達できないので、表面のみの治療しかできない。
【特許文献1】特開平9-56836号公報
【特許文献2】特開2001-302548号公報
【0005】
一般に放射線の照射量は、放射線エネルギとフォトン数の積に比例するが、従来の開示例では、ガンマ線治療の類推からMeVオーダーの高いフォトンエネルギーを想定した例が多かった。しかし、これらの高エネルギーフォトンは、物質との相互作用確率も低くなるため、微粒子にも吸収されにくくなる点が問題である。
患部の深部での治療を目的とし、光触媒粒子とともに、ガンマ線を放出する放射性剤を混合して用いる方法が提案されているが(特許文献3)、これらの放射性核種からの放射線エネルギーは、数百KeVと極めて大きい。このため、光触媒に吸収されるのは極わずかで、他の殆どのガンマ線は周囲の正常細胞に損傷を与えるか、または、体外に放出されてしまい、治療の効果は期待できない。
【特許文献3】特開2005-334524号公報
【0006】
また、同様に酸化チタン懸濁液に、放射線を照射して標的細胞を破壊する方法及びその装置が提案されているが(特許文献4)、計算例にもあるとおり一般にフォトンエネルギーは500keVと非常に高く、このレベルでの酸化チタン粒子への吸収率はかなり低い。むしろ、このような高エネルギーは酸化チタンに吸収されずに、周囲の正常細胞を損傷したり、体外に飛散してしまう割合が高い。また、ガンマ線やいくつかの放射性同位元素を放射線源として使用し、光触媒を励起する方法では、ガンマ線源や放射性同位元素の粒子フルエンス率(単位時間、単位面積あたりのフォトン通過数)がX線に比べて極めて低いため、粒子に吸収される確率も低く、実効的な治療効果が期待できるか不明である。
【特許文献4】特許第3242026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、X線を照射して腫瘍等の患部の標的細胞を治療する際に、X線を効率良く標的細胞に吸収させることができ、しかも周囲の正常細胞の損傷を低減することのできる低被曝、低侵襲のX線治療用助剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明ではつぎの1〜9の構成を採用する。
1.平均粒径が1nm〜10μmの微粒子で、遠達力のあるX線を吸収し、吸収したX線エネルギーを酸化還元反応に変換して、活性酸素種又はフリーラジカルを発生させるエネルギー変換微粒子の少なくとも1種を媒体に分散させてなるX線治療用助剤。
2.前記エネルギー変換微粒子が、CdTe、CeF、ZnS:Ag、Nb、ZrO、CsI、CsF、SrTiO、CdSe、KTaOからなる群から選択されたものであることを特徴とする1に記載のX線治療用助剤。
3.前記エネルギー変換微粒子の平均粒径が1〜200nmであることを特徴とする1又は2に記載のX線治療用助剤。
4.前記エネルギー変換微粒子の含有量が、分散媒体を基準として1.0×10−7〜50重量%であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のX線治療用助剤。
5.前記媒体が、水又は水系溶媒であることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のX線治療用助剤。
6.前記媒体が、酸素を予め溶存させた水又は水系溶媒であることを特徴とする5に記載のX線治療用助剤。
7.前記エネルギー変換微粒子が補助成分として光触媒又は蛍光材料を含有することを特徴とする1〜5のいずれかに記載のX線治療用助剤。
8.前記光触媒がTiOであることを特徴とする7に記載のX線治療用助剤。
9.X線治療用助剤が、10〜1013フォトン/cm/秒の遠達力のあるX線を照射して用いられるものであることを特徴とする1〜8のいずれかに記載のX線治療用助剤。
【本発明の効果】
【0009】
上記の構成を採用することによって、本発明のX線治療用助剤は、次のような効果を奏する。
1)酸化チタンの微粒子を患部に分散させて、紫外線で励起して細胞を損傷させる方法では、透過性の低い紫外線や可視光の一部を利用して触媒反応を進行させるため、作用する領域は患部の表面近傍に限られており、患部が体表面の深部にある場合や、患部自体が大きい場合、深部の治療が困難であった。本発明では、患部が深部にある場合にもX線を効率良く患部に吸収させることができ、しかも周囲の正常細胞の損傷を低減することができる。
2)また、従来技術では困難であった、体表深部の患部、複雑形状の患部、損傷を避けたい部位に近い患部に対しても、X線治療用助剤を適切に分布させることで、患部形状に沿って表面と内部を3次元的に治療できる。
3)さらに、X線照射により直接酸化還元反応を示す、シンチレータ、量子ドット、蛍光体材料、光触媒から選択されたエネルギー変換微粒子の相乗効果を利用して、より高い治療効果を発現させることができる。
4)現在の放射線治療では、患部までの経路と、患部を透過したあとの経路すべてにわたって生体組織に損傷を与えてしまうため、患部を含む経路に沿った正常組織へのダメージが大きく、治療部位が再度悪化しても、同一経路に沿った放射線照射はできなかった。本発明では、従来の放射線治療のように、高エネルギーのガンマ線の透過経路にある組織がすべて損傷をうけるのではなく、粒子フルエンス率の高い放射線を均一に照射して、X線治療用助剤が選択的に局在する標的に対し選択的に治療効果を発揮して、組織サイズオーダーの細かさで損傷を与え、正常細胞に対する損傷を低減することができるので、患部摘出手術に伴う過剰な摘出や患部の取り残しを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について、詳細に説明する。
(薬剤概要、薬剤構成成分)
本発明のX線治療用助剤は、X線照射により治療効果を発現する、平均粒径が1nm〜10μmのエネルギー変換微粒子の少なくとも1種を媒体に分散させてなるX線治療用助剤である。エネルギー変換微粒子としては、平均粒径が1〜200nmのものを使用することが好ましい。
このようなエネルギー変換微粒子は、(a)原子番号30以上の元素を含む光触媒、(b)量子ドット、(c)シンチレーター、及び(d)蛍光体材料からなる群から選択することができる。
そして、このX線治療用助剤を患部の標的となる腫瘍細胞、ウィルス、遺伝子、細菌等に分散させることで、X線を均一に照射したとしても、患部形状に沿った標的のみを組織サイズのレベルで損傷または死滅させ、過剰な摘出や患部の取り残しを回避するとともに、遠達力のあるX線によって患部が深部にあっても薬剤にエネルギーを吸収させて治療効果を発現させ、低侵襲・低被爆のX線治療を可能とするものである。
【0011】
すなわち、本発明のX線治療用助剤は、遠達力のあるX線エネルギーを吸収し、強力な酸化還元反応を誘起して活性酸素種やフリーラジカルを生成し、患部領域の標的となる腫瘍細胞、ウィルス、遺伝子、細菌等を損傷または死滅させる能力をもつ薬剤を意味する。このとき、X線エネルギーを一旦、蛍光・燐光などの発光現象に変換し、発光エネルギーを酸化還元反応に変換する成分を添加した薬剤もこの範囲に含めるものとする。
【0012】
本発明のX線治療用助剤は、図1にみられるように助剤分散液を患部に注入し、粒子フルエンス率が高く、コリメートしたX線によって患部の深部までエネルギーを伝達し、X線治療用助剤にX線エネルギーを吸収させて、酸化還元反応を誘起することで、X線治療用助剤が分散していない周囲の正常細胞への被曝を低減させ、患部でのみ活性酸素種およびフリーラジカルを生成させて、腫瘍細胞、ウィルス、遺伝子、細菌等の標的に、選択的に損傷を与えることができる。
すなわち、本発明ではX線治療用助剤を患部にのみ分布させているため、平行または円錐状のX線ビームを一様に照射したとしても、複雑な形状の患部であっても、損傷を与えるのは、X線治療用助剤が分散した領域に限定され、正常組織の温存と、患部組織の治療が、組織レベルで制御できる。X線治療用助剤を標的に到達させる方法としては、溶液に懸濁させ直接注入する方法、現在医療分野で用いられているカプセル、ナノテクノロジーを応用した薬物伝送システム(DDS)、標的に選択的に取り込むまたは結合する抗体、受容体を利用する方法等がある。
【0013】
本発明のX線治療用助剤で使用することのできるエネルギー変換微粒子としては、以下のものが挙げられる。
(原子番号の大きい光触媒)
X線治療用助剤として光触媒を用いる場合、X線エネルギーの吸収が重要である。X線の減衰のうち、吸収成分に相当する光電吸収は原子番号の3乗から5乗に比例することが知られている。そのため、原子番号が30以上の元素、すなわち、亜鉛(30)、ガリウム(31)、砒素(33)、セレン(34)、ストロンチウム(38)、ジルコニウム(40)、ニオブ(41)、モリブデン(42)、ルテニウム(44)、カドミウム(48)、インジウム(49)、スズ(50)、タンタル(73)、タングステン(74)、ビスマス(83)などを構成成分としてもつ、酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カリウム(K2O・nTiO3)、硫化モリブデン(MoS2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化カドミウム(CdO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、タンタル酸カリウム(K2O・nTaO3)、硫化カドミウム(CdS)、ガリウム燐(GaP)、ガリウム砒素(GaAs)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)の群から選ばれる少なくとも1種の材料を微粒化したものを混合し、一定濃度で水溶液に分散させた溶液を使用する。
【0014】
(量子ドット)
量子ドットは直径が数ナノメートルと小さいため、量子サイズ効果が顕著となり、同じ物質であってもその物理化学的性質が異なるために、近年、生化学や情報通信の分野で注目されている材料である。同一の重量に対しては、ナノサイズの粒子の表面積のほうが径の二乗に比例して大きくなる。量子ドットは、単一波長の紫外線によって励起され、サイズに応じた可視光域の蛍光を発すること、また、従来の蛍光タンパクよりも強い蛍光を出すため、近年生体イメージングに広く利用されるようになった(非特許文献2参照)。また、活性酸素産生のような材料表面での化学反応は、表面積の影響が強いため、わずかな量の量子ドットでも活性酸素の発生が確認される。活性酸素種を介した細胞毒性も、報告されている(非特許文献3参照)。
このような化合物半導体のうちでも、特に、II-VI族化合物のセレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化カドミウム(CdS), 水銀テルル化カドミウム(CdHgTe),セレンテルル化カドミウム(CdSeTe)、IV-VI族化合物の硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)、III-VI族の硫化インジウム(InS),III-V族の リン化インジウム(InP), 砒素化インジウム(InAs),IV族の炭素(C)、シリコン(Si)などが広く使われている。これらの量子ドットは、原子番号の大きなもの、すなわち、X線の光電吸収が極めて大きい物が多い。たとえば、CdTeなどは、バルク材料としてではあるが、古くから捕集効率の高い半導体放射線検出器として用いられてきた。
本発明では、テルル化カドミウム量子ドット(CdTe/ZnS)分散液およびセレン化カドミウム量子ドット(CdSe/ZnS)分散液にX線を照射し、有意のX線吸収が生じることを確認し、これと上記の細胞毒性に関する報告より、X線のエネルギー吸収により、CdTe/ZnSあるいはCdSe/ZnS量子ドットはX線を吸収した後、酸化還元反応へのエネルギー変換により、活性酸素種あるいはフリーラジカルを生成し、細胞毒性を発現しているものと考えた。
【非特許文献2】Bruchez, Science, Vol.281, 25 Sept. 1998
【非特許文献3】Hardman, Environmental Health Perspectives, vol.114, No.2, 2006
【0015】
(シンチレータ)
従来、無機シンチレータ材料はバルク材料として、放射線検出器のエネルギー変換素子に用いられてきた。シンチレータから蛍光として放射される可視光や紫外光を、光電子増倍管の検出面に取り出すためには、光学的に透明なガラス板状の結晶を作る必要があったため、本発明のような微粒子としての使用方法については、検討事例が少ない。本発明では、フッ化セリウム(CeF3)というガンマ線検出用のシンチレータ微粒子を水に分散させ、一定量点滴して乾燥させた後、高フルエンスのX線を照射すると、ローダミン色素が分解されて脱色する、すなわち、酸化チタンに紫外線をあてたときと同様の現象が見られることを実施例により確認している。同様の現象は、バンドギャップを有し、放射線入射によってキャリアを生成する他のシンチレータにも起こると考えられる。したがって、フッ化セリウム(CeF3)以外の無機、有機シンチレータ材料についても、微粒子化することで表面積が拡大し、周囲環境との相互作用により、吸収したエネルギーが酸化還元反応に変換されるX線治療用助剤の構成成分とすることができる。
【0016】
このような無機シンチレータ材料としては、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化バリウムを母体とし発光中心となるLa、Euを添加したBaF2:La、BaF2:Eu、塩化バリウム(BaCl2)、およびこれを母体として発光中心となるLaを添加したBaCl2: La、ヨウ化セシウム(CsI)、フッ化セシウム(CsF)が例示され、また、有機シンチレータ材料としては、アントラセン、クロロアントラセン、トランススチルベン、p-ターフェニル、クオータフェニル、ジフェニルアセチレン、ナフタレンの群から選ばれる少なくとも1種の材料が例示される。このような、シンチレーター材料は200nm以下の粒子サイズまで微粒化し、一定濃度で水溶液に分散させた溶液として使用することが好ましい。
【0017】
無機シンチレータの中でも、YAlO3(Ce)、Bi4Ge3O12、CdWO4、GSO、LSO、LuAG:Ce、LiF(W)、LiF(Eu)、PWOは、透明のガラス板状結晶としてのみ流通しているものが多くある。これらを上記のような微粒子の形態として、液中に分散できれば、CeF3と同様の効果が期待できるが、これまで、これらの固体シンチレータを200nm以下の粒子サイズまで微粒化し、液体中に分散させた事例はほとんど報告されていない。これらの固体結晶を微粒化し、液中に分散する方法の一例として、液中レーザーアブレーションがあり、金属や金属酸化物の微粒子化事例が報告されているが、上記のシンチレータの微粒子化分散例は報告されていない。
【0018】
(蛍光体材料)
本発明では、IIb-VIb族化合物半導体であるZnSを母体とし、発光中心にAgを添加したZnS:Agは、X線照射で、450nmにピークをもつ青い蛍光を発すると同時に、ローダミンを脱色する酸化還元反応があることを、実施例により確認している。したがって、II-VI族化合物半導体のセレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)の単体、及びこれを母体とし発光中心となるAg、Cl、Cu、Mnの微量元素を含む蛍光体材料の群から選ばれる少なくとも1種の材料からなる蛍光体材料を、一定濃度で水溶液に分散させることによって、本発明のX線治療用助剤とすることができる。これらの材料は、200nm以下の粒子サイズまで微粒子化して水溶液に分散させることが好ましい。
【0019】
(粒子サイズ)
近年のフラーレン、カーボンナノチューブ、金、量子ドットなどの工業用ナノ粒子製造の拡大に伴って、直径がサブミクロンサイズ(〜200nm)のナノ粒子の生体や環境への影響に関する研究が活発に行われつつある。これらによると、体内に取り込まれたナノ粒子は上皮細胞または内皮細胞を透過して、血液やリンパ液循環に入り、骨髄やリンパ節、脾臓、心臓などの敏感な臓器に到達したり、皮膚を透過したナノ粒子は、リンパ流路に乗って体内に分布したり、高い生理活性をもち、炎症や酸化作用、抗酸化作用をもつ(Oberdorster, et.al, EHP Vol.113, No.7, July 2005)。また、ナノ粒子がミトコンドリア内に蓄積し、酸化ストレスを与えるとの報告もある(Donaldson and Tran, Inhal Toxicol. Jan;14(1):5-27. 2002)。したがって、細胞に選択的に取り込まれて、治療効果を発揮させるためには、X線治療用助剤を、200nm以下のサイズにすることが好ましい。しかし、一方で、ナノ粒子のように表面積が大きく、表面に露出している活性部分が多ければ、必ずしも細胞内に取り込まれる必要は無く、細胞表面の酸化ストレスにより、Ca++濃度上昇やIL-8を誘起したり、遷移金属、有機化合物により、細胞表面の受容体が活性化して、酸化ストレスを与える場合もある(出典:Donaldson and Tran 2002)。したがって、μmオーダーの粒子でも細胞表面或いは細胞外から細胞毒性を発揮して、本発明のX線治療用助剤として使用できるものもある。しかし、粒子径が小さくなれば、放射線の照射面積も小さくなるので、エネルギー吸収率が低下する。このためには、単位体積あたりの粒子数、すなわち、患部での粒子濃度を高める、あるいは、原子番号の大きな元素でフォトンの減衰係数が大きな成分を含む材質を用いてX線吸収を高める、低いフォトンエネルギーを使って吸収確率を高める、などの対策が必要となる。
【0020】
X線治療用助剤が半導体で構成される場合には、200nm以下でさらに粒径を小さくしていくと、バンドギャップエネルギーが大きくなり、光吸収端が短波長側にずれる量子サイズ効果が顕著となってくる。このような粒子径とバンドギャップの関係は、Brusの式によって与えられ(L. E. Brus, J. Phys. Chem., 90, 2555 (1986))、粒子サイズを小さくすることで、エネルギー吸収端をX線領域に近づけることが可能である。X線治療用助剤を構成する材料のうち、半導体に属するものの粒径をさらに100nm以下にすることで、量子サイズ効果により光吸収端を短波長側に移動させ、紫外線よりも短い波長のX線エネルギーを効率的に吸収させることができる。
【0021】
(含有量、X線エネルギー、X線減衰)
従来の開示例では、照射する放射線量の推定はあっても、それがどの程度、粒子に吸収されるかについては、全く考慮されていなかった。たとえ高強度の放射線を患部に照射したとしても、粒子に吸収される率が低ければ、従来のガンマ線治療などと効果は変わらない。そこで、本発明では、X線治療用助剤として、ある材質を選択したとき、
1)フォトンのエネルギー、
2)粒子径、
3)濃度(分散液数密度)、
4)X線治療用助剤のフォトンに対する減衰係数
をパラメータとして、X線透過距離とそれに伴う減衰率の推定を行い、X線治療用助剤の治療に適切なフォトンエネルギー範囲を明らかにした。この計算の流れを図2に示す。この計算では、薬剤微粒子が分散媒体(患部組織)に均等に分散していると仮定し、粒子1個が存在する平均的な分散媒体の体積を、単位立方体として、その寸法をもとめ、X線治療用助剤を含む分散媒体のX線減衰(透過)率を求めている。
【0022】
図2に記載した手順に従って、具体例として、X線治療用助剤として直径100nmのZnS:AgおよびCeF3、液体として水(生体軟組織とほぼ同じ透過率)、透過距離を3cmと仮定し、平均濃度差(D-ρL)を、0.0001〜1.0(g/cm3)(重量%で0.01〜50)まで変化させた場合の計算例を、表1及び表2に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
分散液の平均濃度から、X線治療用助剤が含まれる重量割合が計算できれば、分散液を透過する際の減衰率が求められる。X線治療用助剤を含む患部では、X線が十分吸収されて、透過する放射線は減衰され、正常組織への被曝が低減されることが望ましい。そこで、透過するX線強度が10%になるフォトンエネルギーの条件を求めると、透過距離が3cm、平均濃度差(D-ρL)が0.0001〜1.0(g/cm3)のとき、ZnS:Agでは20-90keV、CeF3では20-170keVのエネルギー範囲が適していることがわかる。
【0026】
この範囲のX線では、減衰の成分は光電吸収とコンプトン散乱であるが、X線治療用助剤にエネルギーを伝達するには、光電吸収が卓越している必要がある。そこで、上記のエネルギー範囲でのZnS:AgおよびCeF3のX線減衰成分を調べると、エネルギーが高くなると散乱成分が増加するものの、光電吸収がコンプトン散乱成分の10倍以上となるエネルギー帯があり、X線減衰の主成分が光電吸収であることがわかる。したがって、このエネルギー帯でX線照射を行うことで、X線治療用助剤の患部でのエネルギー吸収を高め、周囲の正常組織での損傷を低下させることが可能となる。
同様の計算を、原子番号の大きい光触媒であるZrO2と、量子ドットであるCdTeについて行ったところ、X線治療用助剤への照射エネルギー範囲は、ZrO2の場合、20-120keV、CdTeの場合、20-160keVとなる。X線治療用助剤の構成成分が変わっても、同様の計算手法で適したX線エネルギー範囲を求めることができる。
【0027】
(複合型X線治療用助剤)
本発明のX線治療用助剤は、(a)原子番号30以上の元素を含む光触媒、(b)量子ドット、(c)シンチレーター、及び(d)蛍光体材料からなる群から選択されたエネルギー変換微粒子(第1成分)を構成成分として持つときに、単独でもX線エネルギーを酸化還元反応のエネルギーに変換し、活性酸素種やフリーラジカルを生成して、患部標的に損傷を与える。しかし、材料によっては、変換効率が低いため、X線エネルギーを一旦、蛍光・燐光などの発光エネルギーに変えて、その発光エネルギーを酸化還元反応のエネルギーに変換する方が治療効果が高まる場合もある。したがって、第1成分から発生する蛍光エネルギーを吸収して、酸化還元反応のエネルギーに変換し、活性酸素種またはフリーラジカルを発生する材質で、第1成分とは異なる材質をシンチレータ材料、蛍光体材料、量子ドット、酸化チタンを含む光触媒材料、又は光化学物質からなる群の中から選択して、補助成分として加えても良い。また、量子ドットにおいては、ZnSはCdSe、CdTeの蛍光を増強する被覆材として用いられており、このような形態も複合型X線治療用助剤として有効である。
【0028】
このように、第1成分と補助成分が併存する環境では、X線治療用助剤に吸収されたX線エネルギーは、1)第1成分により、直接、酸化還元反応に寄与する、2)第1成分から蛍光として放射され、補助成分によって蛍光が吸収されて酸化還元反応に寄与する、の二重の変換効果をもち、それらの相乗効果として活性酸素種やフリーラジカルを生成し、その酸化還元力によって患部標的を酸化分解または損傷させて、治療効果を高めることができる(図3参照)。
【0029】
酸化チタンが高エネルギー放射線で励起されることは知られているが、500keVレベルのエネルギー帯では、酸化チタンのような原子番号の小さい微粒子との相互作用の確率は低く、酸化チタンに吸収されるのは、そのエネルギーのごくわずかであると推定される。これに比べ、上記のような混合または複合型X線治療薬剤では、X線捕獲率の高い第1成分でX線を吸収し、それ自体で活性酸素種やフリーラジカルを生成する酸化還元反応を誘起するとともに、蛍光に変換して、補助成分にとって吸収率の高い紫外から可視、近赤外の波長に変換してエネルギーを伝達させるので、入射X線エネルギーを効率よく利用した低被曝の治療効果を得ることができる。
【0030】
(光化学物質)
蛍光励起され、光毒性を発揮する光化学物質として、塩化ベルベリンはUVAを吸収してラジカルや一重項酸素を発生し、エールリッヒ腹水癌細胞(Ehrlich ascites carcinoma (EAC) cells)を損傷することが報告されている(Jantova S, J Photochem Photobiol B. 2006 Aug 11)。また、ヘマトポルフィリンに可視光を照射することによりガン細胞を損傷されるが、これは一重項酸素によるものであることが確認されている(Weishaupt KR, Cancer Res. 1976 Jul;36(7 PT 1):2326-9)。さらに、ポルフィリン-ナノ粒子コンジュゲイトをガンの光療法(可視光励起)に用いる研究( Sortino S, Biomaterials. 2006 Aug;27(23):4256-65)や、フタロシアニン-ナノ粒子コンジュゲイトをガンの光療法(可視光励起)に用いる研究もなされている( Wieder ME, Photochem Photobiol Sci. 2006 Aug;5(8):727-34)。しかし、これらの方法は可視光や紫外線による患部の表面的な治療であるため、患部が深部にある場合は、エネルギーの伝達ができない。透過力あるX線を照射し、深部にある患部に分散した光化学物質に蛍光を吸収させて、患部でのみ光毒性を発現できるという点で、本発明はこれらの従来技術に見られない顕著な効果を奏するものである。。
【0031】
(合成形態)
本発明のX線治療用助剤を構成する複合型のエネルギー変換微粒子は、具体的には、シンチレータ、蛍光体材料、量子ドット、原子番号が30以上の元素を含む光触媒、または、光化学物質の単独あるいは組み合わせで構成される材質である。これらを水や緩衝液中に分散させて濃度を調整し、混合または複合化して患部に注入する。第1成分から補助成分への蛍光を介したエネルギー伝達は、距離が近いほど効率的に行われるので、両者の距離をできるだけ近づけるために、単に混合する以外に、これらの材質を化学合成によって連結させたり、密着させて接合する方法が考えられる。あるいは、第1成分の周囲を補助成分で被覆して、透過性の高いX線を補助成分の被覆を透過させて、第1成分に到達させて、X線エネルギーを吸収させた後、内部にある第1成分から表面の補助成分に、内部からエネルギーを伝達させる方法も考えられる。これらの微粒子の複合化の形態として、図4に示すような、連結型、結合型、被覆型が考えられる。
【0032】
(組み合わせ最適化)
前記の混合型もしくは複合型X線治療用助剤においては、吸収したX線で励起される第1成分から発する蛍光波長スペクトルのピーク値とスペクトル幅は材料によって決まっているので、これを吸収する補助成分の吸収スペクトルとの重なりが最大化する粒子材料の組み合わせを選択することで、効率的に活性酸素種やフリーラジカルを生成させることができる(図5)。
【0033】
混合型または複合型X線治療用助剤の例として、代表的な無機シンチレータであるヨウ化ナトリウムにテルルを微量添加したNaI:Teは、415nmにピークを持ち、300nmから550nmまでの蛍光を発する。また、ZnSに発光中心となる銀を微量ドープさせたZnS:Ag蛍光体では、発光中心ピーク波長が450nmで、380nmから550nmの範囲で蛍光を発する。無機シンチレータのCeF3では300nmと340nmに発光中心ピークを持ち、BaF2では210nmと310nmに発光中心ピークを持つ。さらに、紫外域で高い強度の蛍光を発光することで知られるYaP:Ceは、350nmに発光波長ピークをもち、320nmから430nmの範囲で蛍光を発する。
【0034】
これに対して、放射線励起された微粒子の蛍光を受け取る、光触媒の吸収は、例えば酸化チタンを用いる場合、ルチル型で3.0eV、アナターゼ型で3.2eVのバンドギャップに相当する波長端は、アナターゼ型酸化チタンの場合、380nm、ルチル型酸化チタンの場合、410nmとなる。したがって、これらの吸収端と、上記蛍光体材料またはシンチレータ材料からの発光波長ピークの重なりが、最大となる組み合わせによって、効率的にエネルギーの伝達が行われる。例として、ZnS:Agを選択した場合、発光中心ピークが450nmにあるので、アナターゼ型よりも、ルチル型の粒子と混合させたほうがエネルギー吸収率が高くなる。発光中心ピークが415nmにあるNaI:Tlを用いた場合も同様である。しかし、CeF3やBaF2、YaP:Ceは、発光中心ピークがアナターゼ型、ルチル型の吸収端より短波長側なので、双方に使うことができる。
【0035】
(X線フルエンス)
X線およびガンマ線などの放射線は、可視光や紫外線に比べて透過力が大きいのが特徴であるが、このうち、同位体元素の崩壊によって発生するガンマ線の粒子フルエンス率は、X線に比べて数桁小さいのが普通である。高フルエンスのガンマ線源は治療用や非破壊検査に使われているが、オン・オフ操作、遮蔽、シャッター構造の複雑さや放射線管理の点で、X線発生器よりも取り扱いが困難である。この点、X線発生器は電気的にオン・オフが可能で、エネルギーも可変であるため、X線治療用助剤を構成する材質を変えたときに、薬剤を活性化させるのに必要なフォトンエネルギーに調節し、単位時間・単位面積あたり、アイソトープ核種よりはるかに多くのフォトンを容易に発生させることができるため、薬剤のX線エネルギー吸収確率が高まる。例えば、典型的な診断用の透視X線発生器では、120kV管電圧、管電流10mAで、50cm離れた位置で、1秒間に6.7x109個/cm2である。一方、治療用テレコバルト線源では、最大2.22x1012Bq(=60Ci)(崩壊数/秒)のコバルト60線源などが使われるが、放射線は全方向に放射されるので、ある一方向の50cm離れた位置で1cm2あたりでは、2.22x1012/4x3.14x5002=7.1x106個/cm2でしかない。したがって、フォトン数から言えば、X線発生器の方が約1000倍大きなフルエンスを発生させることができるので、患部への均一な照射ができ、X線治療用助剤の活性化確率も大幅に向上する。このようなX線発生源として、医療用または非破壊検査用のX線管球、リニアック、サイクロトロン、コッククロフト加速器、静電加速器、マイクロトロン、軟X線発生装置、放射光施設、X線自由電子レーザーなどを用いることができる。
【0036】
X線源とガンマ線源を使った場合の放射線被曝を比較するため、X線源から発生するフォトンの吸収線量と、ガンマ線源をつかった放射線治療の場合の吸収線量を計算した。吸収線量D(グレイ:Gy)は、荷電粒子平衡が成立している場合、一般に以下の式で与えられる。
D=(μen/ρ)x(hν0)xΦ’xT
ここで、
(μen/ρ): 質量エネルギー吸収係数[cm2/g]、
(hν0) : 入射フォトンエネルギー[MeV]、
Φ’: は粒子フルエンス率[フォトン/ cm2/秒]、
T: 積算照射時間[秒]
であり、上記単位系では、
D=1.602x10-10x(μen/ρ)x(hν0)xΦ’xT
となる。
【0037】
X線照射の場合、平均フォトンエネルギーを50keVと想定し、生体軟組織に近い水の質量エネルギー吸収係数を用いて、吸収線量Dxを計算すると、以下の値を使って、
(μen/ρ)@50keV,Water: 質量エネルギー吸収係数 0.0422[cm2/g]、
(hν0) @50keV: 入射フォトンエネルギー 0.05[MeV]、
Φ’: 粒子フルエンス率 6.7x109 [フォトン/ cm2/秒]、
T: 積算照射時間 1800[秒]
Dx=1.602x10-10x0.0422x0.05x6.7x109x1800=4.07[Gy]
となる。
【0038】
一方、223.11 TBq (6030 Ci)コバルト60線源を使ったガンマナイフの場合、同様の計算から吸収線量Dγを求めると、
(μen/ρ)@1.2MeV,Water: 質量エネルギー吸収係数 0.0296[cm2/g]、
(hν0) @1.2MeV: 入射フォトンエネルギー 1.2[MeV]、
Φ’: 粒子フルエンス率 =7.1x108 [フォトン/cm2/秒]、
T: 積算照射時間 1800[秒]
Dγ=1.602x10-10x0.0296x1.2x7.1x106x1800=7.23[Gy]
となる。
【0039】
これらの計算例に示すように、ガンマ線とX線では、吸収線量が同程度でも、フォトンエネルギーと粒子フルエンス率が大きく異なるのが大きな違いである。粒子フルエンス率は、X線発生器の運転条件(管電圧、管電流)、発生器からの距離などで大きく変わるので、上記計算結果から、望ましくは109〜1011フォトン/cm2/秒、さらに望ましくは107〜1013フォトン/cm2/秒が適しているといえる。
【0040】
また、吸収線量の項ごとの比を比較し、X線とガンマ線治療の場合の吸収線量比Dx/Dγをとると、
Dx/Dγ= [(μen/ρ)X/(μen/ρ)γ]x[(hν0)X/ (hν0)γ]x[ΦX’/Φγ’]x[TX/Tγ]
と表される。
上式では、[(μen/ρ)X/(μen/ρ)γ]と[(hν0)X/ (hν0)γ]の項は、フォトンエネルギーと物質によって、一意的に決まる。X線フォトンのエネルギーが0.05MeV、ガンマ線のフォトンエネルギーが1.2MeVのとき、
質量エネルギー吸収係数比 [(μen/ρ)X/(μen/ρ)γ]=1.4
入射フォトンエネルギー比 [(hν0)X/ (hν0)γ]=0.042
となるので、X線とガンマ線のエネルギーが大きく異なるとき、同じフルエンス、照射時間であれば、高エネルギーのガンマ線のほうが生体での吸収線量が大きい、すなわち被曝が大きいといえる。
【0041】
また、Φγ’もガンマ線源の加工時に決定してしまうため、被曝に関係する吸収線量に関するパラメータとして設置後に変更できるのは、ガンマ線源の場合、照射時間Tγのみである。患部形状や位置、X線治療用助剤の種類など、多様な要素に対応するには、パラメータの自由度が高いX線源が適している。
X線発生器とガンマ線発生器の大きな違いは、エネルギーやフルエンスを可変にできるかどうかということである。X線発生器では、患部の大きさや深度、X線治療用助剤の寸法に応じて、管電流、管電圧を変えて発生するX線のスペクトルを、同じ装置で変えられるが、アイソトープなどのガンマ線源は核種を選択した時点でエネルギーが決まり、加工時にその崩壊数が一意に決定される。また、X線が電気的にスイッチをオン・オフできるのに対し、ガンマ線はオン・オフはできないため、機械的なシャッターで制御しなくてはいけない。この点は、作業者の取り扱いの容易さや安全性の面で、大きな違いとなる。
さらに一般的な放射線治療法は乳がんの場合は1回2Gy程度の照射を複数回行うことにより、腫瘍細胞を死滅させる。本法におけるX線照射量も同程度であり、本法により標的を損傷する時、X線放射療法により期待できる効果も同時に期待できる。
【0042】
(酸素供給)
X線エネルギーを吸収して、X線治療用助剤の酸化還元反応を促進させるためには、発生した電子と正孔が定常的に消費される必要がある。X線の照射が継続的で、電子正孔対の生成が連続して起こっても、一部に電子や正孔が蓄積すると、再結合が起こりやすくなり、キャリアが酸化還元反応に使われなくなる。体内のように、溶存酸素が空気中の酸素濃度に比べて低い場合、伝導帯で電子が酸素に取り込まれて、スーパーオキシドなどの活性酸素種を生成するプロセスが律速となると、キャリアの再結合確率が高まり、酸化還元反応速度が低下すると考えられる。したがって、X線治療用助剤の近傍に、十分な酸素を供給することで、高い反応効率を維持できる。このためには、X線治療用助剤分散液の酸素溶存濃度を、事前に高めておくことが有効な手段となる。したがって、の酸化還元反応を効率よくかつ継続的に進行させて、活性酸素種又はフリーラジカルを発生させ、患部の標的となる細胞、細菌、ウィルス、遺伝子などを死滅または損傷させるため、酸素を予め溶存させた水溶液にX線治療用助剤を分散させることが有効な手段となる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1:量子ドット)
〔実験試料〕
外径1mmのガラス・キャピラリーに量子ドット(Qdot705、Invitrogen社)溶液を吸い上げた物(CdTe/ZnS 量子ドットストレプトアビジンサンプラーは、ペーハーpH8.3のホウ酸緩衝液中に、1μMのストレプトアビジン結合QDを含む)と、コントロールとして外径1mmのガラス・キャピラリーに水を吸い上げた物を準備した。
〔実験方法〕
KevexマイクロフォーカスX線源(PXS5-925EA、焦点径7μm)、浜松ホトニクスフラットパネル検出器(C7943CA-02、1231x1231画素)を使用し、X線透過像(管電圧40kV, 管電流120μA, 拡大率 12倍、焦点からの距離30mm)を得た。ダーク信号を差し引き、不良画素を補正した後、サンプルのないゲイン画像との比をとり、Logを求めた結果を図6に示す。
【0044】
また、水とCdTe/ZnS量子ドット(QD)分散溶液のガラス管中央(図6のラインA-AおよびラインB-B)に沿ったX線投影データの輝度値分布比較を、図7に示す。
ガラス管内の量子ドット溶液と水に対し、同一条件でX線を照射した場合、量子ドットを含む溶液のX線吸収が高かった(図7参照)。これは、X線が溶液中に分散したCdTe/ZnSナノ粒子に吸収したためと考えられる。CdTe/ZnSは、フォトンの捕集効率が高いため、バルク固体としては放射線検出素子として従来より使われてきた材料であり、分散した濃度により輝度値は異なるが、ナノ粒子化された場合でも、X線吸収が顕著であることを示しており、CdTe/ZnSのような量子ドットがX線治療用助剤に使われた場合、X線によるエネルギー伝達が効率よく行われることを示している。
【0045】
(実施例2:蛍光体、複合型)
〔実験試料〕
(1)TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)を 0.30g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(2)ZnS:Agを 1.00g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(3)TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)0.17g/mLおよびZnS:Agを 0.44g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(4)(1)、(2)、(3)で用意した試料に暗所で4mg/mLのローダミン水溶液を2uL点加え30分間放置した。この時、同時にローダミン水溶液を加えないものを用意した。
【0046】
〔実験方法〕
(5)X線源(東芝、KXO-15E)のX線照射口から10cm離した位置に、用意した試料を置き、 X線を管電圧100kV, 管電流4mAの条件で、30分連続照射した。同時に用意した試料で、X線照射を行わず暗所に置いたものを対照区1とした。
(6)X線照射前と後にデジカメで条件が同じになる様に(マニュアルモード、ISO:64、シャッター速度:1/40、絞り:F3.2、露光:-1)画像を取り込んだ。
(7)この画像を既存のソフトウェア(MATLAB, The MathWorks社)でグレイスケールに変換して輝度値を得た(この時、同一画像内でローダミンを点加しない試料の輝度値でノーマライズを行った)。
(8)X線照射前のローダミンを添加した輝度値とローダミンを添加しない輝度値の差を100%として、試験後の各々の試料の輝度値の変化をパーセンテージで表した。0%は実験前後で輝度が変化せず脱色されないこと、100%は実験によりローダミンが完全に分解されたことを示す。
得られた輝度の変化を、表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
ZnS:Ag微粒子にX線を照射したところ、青い蛍光を発することが観察された。またZnS:Ag微粒子はX線照射により、ローダミンを分解することを検証した。
TiO2 とZnS:Agとの混合物にX線を照射した場合のローダミン分解の実測値はZnS:Agより大きいことを検証した。これは蛍光体材料ZnS:Agが、X線照射のもと、単独で酸化還元作用を示すほかに、紫外光または可視光を発することから、これらの光でも酸化還元反応が誘起される光触媒を混合することによって、相乗的に酸化還元反応が促進されることを確認した。
【0049】
(実施例3:シンチレータ)
〔実験試料〕
(1)TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)を 0.30g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(2)TiO2(アナターゼ型98%) を1.00g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に14uL点加し十分乾燥させた。
(3)CeF3 を1g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(4)Nb2O5を 0.30g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(5)ZrO2を 0.31g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(6)(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で用意した試料に暗所で4mg/mLのローダミン水溶液を4uL点加え30分間放置した。この時、同時にローダミン水溶液を加えないものを用意した。
【0050】
〔実験方法〕
(7)X線源(東芝、KXO-15E)のX線照射口から10cm離した位置に、用意した試料を置き、 X線を管電圧100kV, 管電流4mAの条件で、30分連続照射した。同時に用意した試料で、X線照射を行わず暗所に置いたものを対照区1、X線照射を行わず室内(蛍光灯下)に置いたものを対照区2とした。
(8)X線照射前と後にデジカメで条件が同じになる様に(マニュアルモード、ISO:64、シャッター速度:1/40、絞り:F3.2、露光:-1)画像を取り込んだ。
(9)この画像を既存のソフトウェア(MATLAB, The MathWorks社)でグレイスケールに変換して輝度値を得た(この時、同一画像内でローダミンを点加しない試料の輝度値でノーマライズを行った)。
(10)X線照射前のローダミンを添加した輝度値とローダミンを添加しない輝度値の差を100%として、試験後の各々の試料の輝度値の変化をパーセンテージで表した。0%は実験前後で輝度が変化せず脱色されないこと、100%は実験によりローダミンが完全に分解されたことを示す。
上記の実験により求められた輝度の変化を、表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
本実験のX線照射条件により、TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)およびTiO2(アナターゼ98%)がX線によって励起され、酸化還元反応によりローダミン色素を分解することを検証した。
CeF3微粒子にX線を照射し、紫外線を発することを紫外線メータで確認した。またCeF3微粒子、Nb2O5微粒子、ZrO2微粒子はX線照射により、ローダミンを分解することを確認した。さらに、TiO2は蛍光灯に含まれるUV光によりローダミンを分解するが、CeF3微粒子は本実験条件においては蛍光灯によってローダミンを分解しないことを検証した。
【0053】
(実施例4:アルミ板による遮蔽の効果)
〔実験試料〕
(1)TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)0.17g/mLおよびZnS:Agを 0.32g/mLとなるように蒸留水に懸濁したものを、直径6mm、深さ0.1mmの円形の孔に7uL点加し十分乾燥させた。
(2)(1)で用意した試料に暗所で4mg/mLのローダミン水溶液を2uL点加え30分間放置した。この時、同時にローダミン水溶液を加えないものを用意した。
【0054】
〔実験方法〕
(3)X線源(東芝、KXO-15E)のX線照射口から10cm離した位置に、用意した試料を置いた。試料とX線の間で試料から5mmの位置に0.3mm、1mm、2mmの厚さのアルミ板を置いた。さらにアルミ板を置かない試料も用意した。 X線を管電圧100kV, 管電流4mAの条件で、30分連続照射した。同時に用意した試料で、X線照射を行わず暗所に置いたものを対照区1、X線照射を行わず室内(蛍光灯下)に置いたものを対照区2とした。
(4)X線照射前と後にデジカメで条件が同じになる様に(マニュアルモード、ISO:64、シャッター速度:1/40、絞り:F3.2、露光:-1)画像を取り込んだ。
(5)この画像を既存のソフトウェア(MATLAB, The MathWorks社)でグレイスケールに変換して輝度値を得た(この時、同一画像内でローダミンを点加しない試料の輝度値でノーマライズを行った)。
(6)X線照射前のローダミンを添加した輝度値とローダミンを添加しない輝度値の差を100%として、試験後の各々の試料の輝度値の変化をパーセンテージで表した。0%は実験前後で輝度が変化せず脱色されないこと、100%は実験によりローダミンが完全に分解されたことを示す。
上記の実験により求められた輝度の変化を、表5に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
本実験のX線照射条件により、アルミ板で遮蔽してもTiO2 とZnS:Agとの混合物がX線によって励起され、酸化還元反応によりローダミンを分解することを検証した。
これまでがんの治療方法として酸化チタンの微粒子を患部に分散させて、紫外線で励起して細胞を損傷させる方法が検討されてきた。しかし、紫外線や可視光は透過性が低いため、物体表面においては有効であるが物体の深部に対しては無効である。
50keVのX線は厚さ2mmのアルミ板で約10%減衰する。これに相当する水の厚さは8.8mmである。同様に、厚さ1mmのアルミ板は水4.4mm、厚さ0.3mmのアルミ板は水1.5mmの厚さの減衰に相当することから、この実験はX線照射により体表から約9mm深部へのエネルギー伝達が十分可能であることを示している。同時に、紫外線はアルミ板を全く透過しないため、紫外線による励起が困難な場所であっても、X線によってエネルギーを伝達し、酸化還元反応を誘起できることも示している。
【0057】
(実施例5:活性酸素)
〔実験試料〕
(1)実験試料として、以下のものを、3.0mg/mLとなるように蒸留水に懸濁したもの、および蒸留水のみのもの1mLを、おのおの直径35mmのシャーレに分注した。
・光触媒材料:ZrO2、SrTiO2、KTaO3、TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)、CdSe
・蛍光体材料:ZnS:Ag
・シンチレータ材料:CeF3、CsI、CsF
・量子ドット : Qdot525(CdSe/ZnS)、Qdot655(CdSe/ZnS)、Qdot705(CdTe/ZnS)平均粒子径1〜20nm
光触媒、蛍光体、シンチレータ材料は蒸留水に分散した状態で、平均径2-10μmの1次粒子と、これらが凝集した平均径50-200μmで構成されていることを、倍率200倍の光学顕微鏡で確認した。また、量子ドットの粒子径は1〜20nmである。また、TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)とZnS:Agをそれぞれ3.0mg/mLとなるように混合し蒸留水に懸濁したものを直径35mmのシャーレに分注した。量子ドットはQdot525(Invitrogen)、Qdot655(Invitrogen)、Qdot705(Invitrogen)を、1.0ng/mLとなるように蒸留水に懸濁したもの、および蒸留水のみのもの1mLを、おのおの直径35mmのシャーレに分注した。
(2)(1)で用意した試料に、終濃度が25μMとなる様に、ジハイドロエチジウム(dihydroethidium, Invitrogen - Molecular Probes社)を加えた。
(3)(2)の試料おのおのについて、0時間、暗所30分、明所30分(室内蛍光灯下2m)、X線30分(100kV、4mA、照射距離40cm)照射の処理をおこなった。
【0058】
〔実験方法〕
(4)試料を回収し、10000rpm,10min(TOMY社、MX-160)の遠心を行った。
(5)上澄みを取り、再度、同じ条件で遠心し、その上澄みを分取した。
(6)分光蛍光光度計(島津製作所、RF-1500)を用いて波長456nmで励起した時の、585nmの蛍光強度を測定した。
上記の実験により求められた蛍光強度(Ex 456nm, Em 585nm)を、表6に示す。数値は相対的な蛍光強度であり、0時間(ジハイドロエチジウム混合直後)との差を示した。
【0059】
【表6】

【0060】
ジハイドロエチジウム試薬は、O2-(スーパーオキサイドアニオン)、HO2・(ペルオキシラジカル)、・HO(ヒドロキシラジカル)等の活性酸素の存在下でジハイドロエチジウム(励起波長385nm、蛍光波長480nm)からエチジウム(励起波長465nm、蛍光波長585nm)が生成されることから、その活性性酸素の測定方法の一つとして用いられる。(文献:Nethery D, Stofan D, Callahan L, DiMarco A, Supinski G.: Formation of reactive oxygen species by the contracting diaphragm is PLA(2) dependent. J Appl Physiol. 1999 Aug;87(2):792-800.)
実施例2、3、4よりTiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)、ZnS:Agは蛍光灯照射によりローダミン色素を分解することが確認されている。これは蛍光灯に含まれる数μW/cm2の紫外線の作用によるものである。本実施例により、TiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)、ZnS:Ag、SrTiO2、CdSe、Qdot655、Qdot705は光照射におよびX線照射によりエチジウムが生成され活性酸素の発生が確認された。これは、実施例3においてTiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)、ZnS:Agは光照射により色素を分解するという現象と一致する。
【0061】
一方CeF3、ZrO2、CsI、CsF、KTaO3、Qdot525は光照射よりほとんどエチジウムが生成されず、X線照射によりエチジウムが生成された。これは、実施例3においてCeF3、ZrO2はX線照射のみにより色素を分解し、光照射によって色素を分解しないという現象と一致する。これらの実施例から、色素の分解は活性酸素の発生によるものであることが確認でき、さらにTiO2(ルチル90%,アナターゼ10%)、ZnS:Ag、CeF3、ZrO2、CsI、CsF、SrTiO2、CdSe、KTaO3、Qdot525、Qdot655、Qdot705はX線照射により活性酸素が発生することが確認された。Qdot525、Qdot655はCdSeをコアとしてZnSを被覆した量子ドットであり、Qdot705はCdTe をコアとしてZnSを被覆した量子ドットである。本実験ではQdot525、Qdot655はCdSe微粒子の3百万分の1の濃度で同程度の活性酸素を発生した。これは、Qdot525、Qdot655が超微粒子であるために反応に寄与する表面積がCdSe微粒子に比べて非常に大きいこと、およびQdot525、Qdot655がCdSeとZnSの複合材料であることによる。また、Qdot705はCdTeとZnSの複合材料であり、これらの成分もX線照射により活性酸素発生に寄与することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、放射線治療において、ガン細胞などの悪性新生物、ガン前駆細胞、ウイルスおよび細菌が感染した細胞を損傷または死滅させて治療するのに有用なX線治療用助剤を提供する。本発明のX線治療用助剤は、患部領域にX線の照射を限定した低被曝線量で、放射線を使った低侵襲の治療法への道を拓くものである。
また、本発明X線治療用助剤を使用することにより、菌(大腸菌、エンドトキシン、O157、ベロ毒素、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、エンテロトキシン、緑濃菌)の殺菌、毒素分解、ならびに、バクテリア、ウイルスの酸化分解、損傷、死滅により、殺菌滅菌を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のX線治療用助剤を使用して、患部にX線を照射して治療する方法を説明する図である。
【図2】X線治療用助剤の患部での透過距離計算方法とパラメータを示す図である。
【図3】本発明の混合または複合型X線治療用助剤の酸化還元反応の相乗効果を説明する図である。
【図4】2種類以上のX線治療用助剤材質の混合または複合の形態を説明する図である。
【図5】混合または複合型X線治療用助剤の蛍光発光と吸収スペクトルを考慮した最適な組み合わせを示す図である。
【図6】実施例1で得られた結果を示す図である。
【図7】実施例1で得られた結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が1nm〜10μmの微粒子で、遠達力のあるX線を吸収し、吸収したX線エネルギーを酸化還元反応に変換して、活性酸素種又はフリーラジカルを発生させるエネルギー変換微粒子の少なくとも1種を媒体に分散させてなるX線治療用助剤。
【請求項2】
前記エネルギー変換微粒子が、CdTe、CeF、ZnS:Ag、Nb、ZrO、CsI、CsF、SrTiO、CdSe、KTaOからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載のX線治療用助剤。
【請求項3】
前記エネルギー変換微粒子の平均粒径が1〜200nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線治療用助剤。
【請求項4】
前記エネルギー変換微粒子の含有量が、分散媒体を基準として1.0×10−7〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のX線治療用助剤。
【請求項5】
前記媒体が、水又は水系溶媒であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のX線治療用助剤。
【請求項6】
前記媒体が、酸素を予め溶存させた水又は水系溶媒であることを特徴とする請求項5に記載のX線治療用助剤。
【請求項7】
前記エネルギー変換微粒子が補助成分として光触媒又は蛍光材料を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のX線治療用助剤。
【請求項8】
前記光触媒がTiOであることを特徴とする請求項7に記載のX線治療用助剤。
【請求項9】
X線治療用助剤が、10〜1013フォトン/cm/秒の遠達力のあるX線を照射して用いられるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のX線治療用助剤。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137939(P2008−137939A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325323(P2006−325323)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】