説明

X線画像検出器

【課題】振動や衝撃を受けた場合のガラス基板および筐体の破損の可能性を抑制する。
【解決手段】X線画像検出器30は、被支持部品群22と金属製の筐体26と支持支柱24とを備える。被支持部品群22は、ガラス基板11を備えて、X線を検出して電気信号に変換するX線検出パネル31と、X線検出パネル31の前記X線の入射面の反対側に設けられたX線遮蔽板18とを含む。筐体26は、外部装置に固定するための取付穴25が形成された底板40を備えて、被支持部品群22を収納する。支持支柱24は、被支持部品群22と筐体26の底板40との間に延びていて、これらに固定されている。支持支柱24の本数n1は、取付穴25の数n2以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、X線画像検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
新世代のX線診断用検出器としてアクティブマトリックスを用いたX線画像検出器が大きな注目を集めている。平面状の検出器にX線を当てることで、X線撮影像またはリアルタイムのX線画像がデジタル信号とし出力される。固体検出器であることから、画質性能や安定性の面でも極めて期待が大きい。このため、多くの大学やメーカーが研究開発に取り組んできた。
【0003】
実用化の最初の用途として、比較的大きな線量で静止画像を収集する胸部・一般撮影用に開発され、近年商品化されている。より高い技術的なハードルをクリアして、透視線量下で秒30コマ以上のリアルタイム動画を実現させる必要のある循環器、消化器分野への応用に対しても近い将来に商品化が予想される。この動画用途に対しては、S/Nの改善や微小信号のリアルタイム処理技術等が重要な開発項目となっている。
【0004】
平面検出器には大きく分けて直接方式と間接方式の2通りがある。直接方式は、X線をa−Seなどの光導電膜により直接電荷信号に変換し、電荷蓄積用のキャパシターに導く方式である。一方の間接方式は、シンチレータ層によりX線を受けて一旦可視光に変換し、可視光をa−SiフォトダイオードやCCDにより信号電荷に変換して電荷蓄積用キャパシターに導く方式である。直接方式は、入射X線によりX線光導電体内部に発生した光導電電荷を高電界により直接に電荷蓄積用キャパシターに導く方式である。
【0005】
現在実用化されているX線画像検出器の多くは、間接変換方式を採用している。従来の間接型X線画像検出器においては、人体などを透過したX線をX線画像検出器に入射し、そのX線強度分布を電気信号に変換する。この際にX線を可視光に変換する蛍光変換膜によってX線を可視光に変換し、その光を格子状に形成された複数の光検出器によって二次元的な画像情報として検出し、外部に電気信号として出力する。
【0006】
間接式X線検出器は、液晶表示装置の製造工程に類似しているTFTパネル製造工程により、信号配線とTFTトランジスタをガラス基板上に形成したアレイ基板を作成する。その上に入力面からの蛍光を検出するフォトダイオード素子を格子状に形成し、その出力を下部に配置されているTFTトランジスタに電気的に接続することで画素となる。
【0007】
画素はガラス基板上に格子状に配置され、各画素のスイッチング素子は行を表すゲート線と列を表す信号線に接続されている。ゲート線と信号線は、格子状に配置され、格子状に配置している各画素に接続されている。
【0008】
平面型光検出器上にX線を可視光に変換する蛍光体を積層することにより、外部から入射したX線は蛍光体内部にて可視光に変換され、発生した可視光は平面型光検出器に入射する。この際に平面型光検出器内部のフォトダイオードに入射した可視光はフォトダイオードにて電荷に変換され、フォトダイオード内部もしくは並列接続されている容量素子内部に蓄積される。
【0009】
電荷に変換されたX線強度分布情報は、フォトダイオードに接続されているスイッチング素子(TFTトランジスタ)を通して基板外部へと伝達される。ゲート線の電位が変化することで、電位の変化したゲート線に接続されたTFTトランジスタは導通状態となり、導通状態となったTFTトランジスタに接続されているフォトダイオードもしくは容量素子内部に蓄積された電荷は、TFTトランジスタを通して外部に排出される。外部に排出された電荷は、TFTトランジスタに接続している信号線を通してガラス基板外部へと排出される。
【0010】
TFTトランジスタを駆動するゲート線の電位は、ゲートドライバからのスイッチング信号により通常1本のみのゲート線の電位が変化され、ある特定の行に相当する画素内部のTFTトランジスタを導通状態にする。電位を変化させるゲート線を順次変更することで、外部にはある特定の行に相当する画素からの信号が外部に排出され、電荷の排出された信号線の位置と、その時点で電位の変動したゲート線の位置を参照することで、X線の入射位置と強度を算出することが可能となる。
【0011】
ガラス基板外部に排出された電荷信号は、各信号線に接続された積分増幅器へと入力される。積分増幅器に入力された電荷情報は増幅され、電位信号に変換されて出力される。積分増幅器から出力された電位信号はアナログ、デジタル変換機にてデジタル値に変換される。
【0012】
デジタル値に変換された信号に対しては、適切な信号処理と画像処理を行うことが必要である。これはX線画像信号が極めて微弱であるため、信号処理を行う前の画像には多数のノイズや輝度むら、そして不要な信号が多数含まれているからである。これらを画像処理により取り除くことで、X線を用いた医療に用いることが可能なX線画像検出器とすることができる。
【0013】
X線画像検出器との画素は、ガラス基板上に配置されている。X線画像検出器が衝撃や振動を受けた場合にガラス基板へのダメージを抑制するため、ガラス基板は樹脂や金属などの平坦な支持プレート上に配置され、支持プレート面と反対側の面から押さえつけることにより固定される。あるいは、ガラス基板と支持プレートとを接着剤や両面テープにより固定する方法が取られる場合もある。ガラス基板の温度上昇抑制や温度分布を少なくするため、断熱を目的得して、ガラス基板と支持プレートの間に樹脂板を配置することもある。
【0014】
また、画像処理と信号処理IC、そしてゲートドライバや積分増幅器、アナログデジタル変換器は、主に半導体による回路にて構成される。これら半導体回路はX線の入射により半導体内部に多数の電荷を発生させ、それら電荷が半導体内部の電気信号に混入することで誤作動を引き起こしてしまうことが知られている。この現象によりX線画像に多数のノイズが混入し、画像品質を大きく劣化させてしまう可能性がある。
【0015】
そこで、半導体回路へのX線の入射を防ぐため、重金属で比重の高い金属によるX線遮蔽材により半導体回路を含む基板を覆うことが求められる。X線は、主に対象となる被写体を通過し、蛍光体とTFT回路が積層されているガラス基板を透過する。半導体を含む回路基板は、装置の大きさの制約上、ガラス基板の裏面方向に配置されることが多い。このため、X線遮蔽物質はガラス基板と回路基板との間に配置されることが多い。X線遮蔽物質はX線の透過を防ぐという目的のため、他の部品を取付けるための穴を形成しないことが好ましい。このためX線遮蔽物質は前記支持プレートに接着剤や両面テープなどで固定し、さらに支持プレートに回路基板を取付けるという方法が取られる。
【0016】
ガラス基板、樹脂板、支持プレート、X線遮蔽物質、回路基板から構成される被支持部品群は筐体中の質量が集中している部分である。被支持部品群は、筐体の振動や衝撃が発生した場合の変形を抑制するために、支持支柱で支えられている。支持支柱の他の端は、筐体に接続されている。
【0017】
一般的に、可搬型でないX線画像検出器は、検査装置システムに据え付けられて使用される。X線の入射を妨げないように、X線画像検出器はそのX線入射面以外の面、多くはX線入射面と反対側の面を用いて検査装置システムに取付けられる。筐体を構成する部材の厚さが厚い場合には、筐体に直接ネジ穴を複数箇所に設け、ネジ締めにより検査装置システムに固定されることが多い。筐体を構成する部材の厚さが薄い場合には、筐体に複数個の取付ナットを設け、ネジ締めにより固定されることが多い。この取付ナットは筐体に溶接や打ち込みなどで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2005−195643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
検査装置システムを低コストで製造するために簡略化したいという要望から、X線画像検出器の軽量化や取付点数の削減が求められている。このためにはX線画像検出器を構成する構造部品の薄肉化や部品点数削減が必要となり、剛性の低下は避けられない。
【0020】
一方、被支持部品群はガラス基板、樹脂や金属などの支持プレート、X線遮蔽物質、回路基板で構成されており、筐体中の質量が集中している部分である。X線画像検出器の検査装置システムへの据付時や輸送中および動作中などに衝撃や振動を受けた場合、この被支持部品群が変形する可能性がある。被支持部品群が変形すると、ガラス基板に応力が発生し、最悪の場合はガラスが破損する可能性がある。
【0021】
また、被支持部品群の変形・変位が支持支柱を介して筐体へ伝わり、筐体が変形をする可能性がある。その際、取付穴部が固定点となり、それ以外の部分が変形する挙動を示すため、取付穴部周辺には局部的な応力が集中する。この結果、取付穴の変形や取付ナットの変形・脱落を招き、最悪の場合、検査装置システムからX線画像検出器が落下するおそれがある。
【0022】
ガラス基板の破損を防ぐために支持支柱の数を増やすと、低コスト、軽量化に相反するだけでなく、回路基板の設計自由度が下がる。さらに、被支持部品群の変位が筐体の取付面側に伝達され、筐体の変形を助長させる可能性がある。筐体の変形を防ぐために取付穴や取付ナットの数を増やすと、低コスト、軽量化に相反するだけでなく、検査装置システムへのX線画像検出器の取付操作性が下がる。
【0023】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、振動や衝撃を受けた場合のガラス基板および筐体の破損の可能性を抑制したX線画像検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するため、実施形態のX線画像検出器は、ガラス基板を備えてX線を検出して電気信号に変換するX線検出パネルと、前記X線検出パネルの前記X線の入射面の反対側に設けられたX線遮蔽板と、を含む被支持部品群と、外部装置に固定するための取付穴がn2か所に形成された底板を備えて前記被支持部品群を収納する金属製の筐体と、前記被支持部品群と前記筐体との間に延びてこれらに固定されたn1本の支持支柱と、を具備し、n1≧n2であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施の形態によるX線画像検出器の側断面を示す図2のI−I矢視断面図である。
【図2】一実施の形態によるX線画像検出器の平断面を示す図1のII−II矢視平断面図である。
【図3】一実施の形態によるX線画像検出器のブロック図である。
【図4】一実施の形態によるX線検出パネルの模式的斜視図である。
【図5】一実施の形態による画像検出部の回路図である。
【図6】一実施の形態によるX線画像検出器における支持支柱の数n1の取付穴の数n2に対する比Aと許容応力で規格化したガラス基板および筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。
【図7】一実施の形態によるX線画像検出器において、被支持部品群の質量をm1とし、X線画像検出器の質量をm2とし、b1=n1/m1とし、b2=n2/m2としたときのB=b1/b2と許容応力で規格化したガラス基板および筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。
【図8】一実施の形態によるX線画像検出器において、支持支柱から最短距離に配置される取付穴までの距離のうち全支持支柱における最大値をlmaXとし、筐体の対角長さをLとしたときのlmaX/Lと許容応力で規格化した筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下一実施の形態のX線画像検出器を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
図3は、一実施の形態によるX線画像検出器のブロック図である。
【0028】
X線画像検出器30は、X線検出パネル31を有している。X線検出パネル31は、入射したX線を電気信号に変換する。
【0029】
X線検出パネル31には、ゲートドライバ32および複数の積分増幅器33が接続されている。ゲートドライバ32は、外部からの信号を受信すると、X線検出パネル31に接続されている多数のゲート線の電圧を順番に変更していく。積分増幅器33は、X線検出パネル31から出力される極めて微小な電荷信号を増幅し出力する。ゲートドライバ32には、行選択回路35が接続されていて、X線画像の走査方向に従って対応するゲートドライバ32へと信号を送る。
【0030】
積分増幅器33は、X線検出パネル31がX線を変換した電気信号を積分して増幅する。積分増幅器33は、A/D変換器34に接続されている。積分増幅器33で増幅された電気信号は、並列/直列変換されてA/D変換器34に入力される。積分増幅器33から入力されてA/D変換器34で変換されて生成したデジタル信号は、画像合成回路36に伝達される。画像合成回路36は、伝達された信号からX線検出パネル31に入射したX線像を合成し、外部のディスプレイなどに伝達する。外部のディスプレイは、伝達されたX線像を表示する。
【0031】
図4は、本実施の形態におけるX線検出パネルの模式的斜視図である。
【0032】
X線検出パネル31は、蛍光変換膜38と画像検出部12とを有している。蛍光変換膜38へと入射する入射X線37は、蛍光変換膜38の内部にて蛍光に変換され、発生した蛍光は画像検出部12表面へと到達する。
【0033】
画像検出部12は、ガラス基板11上にTFT回路層10およびフォトダイオード16が形成されたものである。フォトダイオード16は、正方格子状に配列されている。蛍光変換膜38から入射した可視光像は、画像検出部12にて電気信号による画像情報へと変換される。なお、図4では、蛍光変換膜38と画像検出部12とを離して記載しているが、実際には、両者は接触している。
【0034】
図5は、本実施の形態における画像検出部の回路図である。
【0035】
画像検出部12のそれぞれのフォトダイオード16に対応して、薄膜トランジスタ14およびコンデンサ15が設けられている。フォトダイオード16、薄膜トランジスタ14およびコンデンサ15などによって、それぞれの画素39が構成されている。それぞれの画素39は、ゲート線13と信号線17とに接続されている。
【0036】
つぎに、X線画像検出器の動作を説明する。
【0037】
初期状態においてコンデンサ15には電荷が蓄えられている。また、並列接続されているフォトダイオード16には逆バイアス状態の電圧が加えられている。このときの電圧は、信号線17に加えられている電圧と同じである。フォトダイオード16はダイオードの一種なので、逆バイアスの電圧が加えられても電流はほとんど流れることは無い。そのためコンデンサ15に蓄えられた電荷は減少することなく保持される。
【0038】
このような状態において、入射X線37が蛍光変換膜38に入射すると、蛍光変換膜38内部において高エネルギーのX線が低エネルギーの多数の可視光に変換される。蛍光変換膜38内部にて発生した蛍光の一部は、画像検出部12表面に配置されているフォトダイオード16へと到達する。
【0039】
フォトダイオード16に入射した蛍光は、フォトダイオード16内部にて電子とホールからなる電荷に変換される。変換された電荷がコンデンサ15にて印加されている電界方向に沿ってフォトダイオード16の持つ両端子へと到達することで、フォトダイオード16内部を流れる電流として観測される。
【0040】
蛍光の入射により発生したフォトダイオード16内部を流れる電流は、並列接続されているコンデンサ15へと流れ込み、コンデンサ15内部に蓄えられている電荷を打ち消す。その結果、コンデンサ15に蓄えられていた電荷は減少し、コンデンサ15の端子間に発生していた電位差も初期状態と比べて減少する。
【0041】
ゲート線13は、特定のゲートドライバ32に接続されている。ゲートドライバ32は、多数のゲート線13を順番に電位を変化させる機能を有する。ある特定の時刻においては、ゲートドライバ32において電位の変化しているゲート線13は1本のみである。電位の変化したゲート線13に接続されている信号線17に並列接続されている薄膜トランジスタ14のソース、ドレイン間端子は、絶縁状態から導通状態へと変化する。
【0042】
各信号線17には特定の電圧がかけられている。電位の変化したゲート線13に接続されている薄膜トランジスタ14のソース端子とドレイン端子とを通じて、信号線17に印加された電圧がコンデンサ15に印加される。
【0043】
初期状態においてコンデンサ15は信号線17と同じ電位状態になっているため、コンデンサ15の電荷量が初期状態と変化していない場合、コンデンサ15には信号線17からの電荷の移動は発生しない。しかし外部からの入射X線7より蛍光膜8内部にて発生した蛍光が入射したフォトダイオード16と並列接続しているコンデンサ15では、内部に蓄えられている電荷が減少しており、初期状態の電位とは変化している。そのため導通状態となった薄膜トランジスタ14を通じて信号線17より電荷の移動が発生し、コンデンサ15内部に蓄えられた電荷量は初期状態に戻る。また、移動した電荷量は信号線17を流れる信号となり外部へと伝わっていく。
【0044】
それぞれの信号線17は、それぞれ独立した積分増幅器33へと接続されている。信号線17を流れる電流は、対応する積分増幅器33へと入力される。積分増幅器33は、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を外部へと出力する。この動作によって、ある一定時間内に信号線17を流れる電荷量を電圧値に変換することができる。この結果、入力X線37によって蛍光変換膜38内部で発生した蛍光の強弱分布に対応したフォトダイオード16内部にて発生する電荷信号は、積分増幅器33によって電位情報へと変換される。
【0045】
積分増幅器33よって発生した電位信号は、A/D変換機34にて順次デジタル信号へと変換される。デジタル値となった信号は、画像合成回路36で画像検出部12に配置された画素の行と列にしたがって順次整理され、画像信号として外部へと出力される。
【0046】
これらの動作を連続して行うことにより、外部から入射したX線画像情報は電気信号による画像情報へと変換され、外部へと出力される。外部へと出力された電気信号による画像情報は、通常のディスプレイ装置によって容易に画像化が可能であり、その画像によりX線画像を可視光による画像として観察することが可能となる。
【0047】
図1は、本実施の形態におけるX線画像検出器の側断面を示す図2のI−I矢視断面図である。
【0048】
X線画像検出器30は、筐体26を有している。筐体26は、X線画像検出器30を外部装置に固定するための取付穴25が複数形成された底板40を有する箱である。ここで、外部装置とは、X線画像検出器30が固定される物である。このX線画像検出器30が固定される外部装置は、たとえばX線画像検出器30を用いたX線画像検査システムの筐体である。X線画像検出器30が固定される外部装置は、検査室の壁など固定構造物であってもよい。
【0049】
取付穴25は、筐体26に直接ねじ穴として形成される場合もあるが、筐体26に形成された貫通穴に取付ナットを固定して形成される場合もある。筐体26の底板40と対向する面には、X線37が入射する入射窓23が形成されている。筐体26は、ステンレス鋼などの金属で形成されている。
【0050】
筐体26の内部には、X線検出パネル31と回路基板19とが収められている。回路基板19には、行選択回路35、ゲートドライバ32、積分増幅器33、A/D変換器34などのX線検出パネル31を駆動し、また、X線検出パネル31が出力する電気信号を処理する回路の一部または全部が搭載されている。X線検出パネル31と回路基板19とはフレキシブル基板20で接続されている。積分増幅器33は、フレキシブル基板20上に実装される場合もある。
【0051】
また、筐体26の内部には、支持プレート21が収められている。支持プレート21は、X線検出パネル31よりも少し大きな金属製の板である。支持プレート21は、筐体26の底板40と平行に配置されている。支持プレート21は、複数の同じ長さの支持支柱24を介して底板40に固定されている。支持支柱24は、たとえば支持プレート21に形成された穴に打ち込まれている。支持支柱24の先端にねじを形成し、支持プレート21に形成されたねじ穴にねじこんで固定してもよい。支持支柱24の底板40側の端部は、たとえばねじによって底板40に固定されている。
【0052】
支持プレート21の入射窓23側の面には、X線遮蔽板18が固定されている。X線遮蔽板18と支持プレート21との固定には、接着剤や両面テープなどが用いられる。
【0053】
X線検出パネル31は、X線遮蔽板18の入射窓23側の面に載置されている。また、入射窓23の周囲の筐体26の内面とX線検出パネル31との間に、押しつけ部材41が配置されている。押しつけ部材41は、ゴムなどの弾性体であって、X線検出パネル31をX線遮蔽板18側に押し付けている。
【0054】
X線遮蔽板18は、X線検出パネル31を透過したX線37を減衰させて、その裏側へのX線37の透過量が所定の量以下となるように遮蔽する。X線遮蔽板18は、たとえば鉛で形成される。
【0055】
支持プレート21のX線検出パネル31とは反対側の面には、回路基板19が固定されている。回路基板19と支持プレート21との間の固定には、その間に設けられた柱にそれぞれを固定する方法が用いられる。回路基板19は、たとえば支持支柱24が貫通する貫通穴を形成することなどにより、支持支柱24と干渉しないような形状としている。
【0056】
このように、複数の支持支柱24は、一方の端部を筐体26の底板40に固定され、他方の端部で直接あるいは間接に、筐体26内部の複数の構成部品を支持している。支持支柱24で支持される部品群を、被支持部品群22と呼ぶこととする。被支持部品群22には、支持パネル21、X線検出パネル31、X線遮蔽板18および回路基板19が含まれる。
【0057】
X線検出パネル31と回路基板19との間を断熱するための断熱板が設けられる場合がある。この場合、この断熱板も直接あるいは間接に支持支柱24で支持され、被支持部品群22に含まれることとなる。また、X線検出パネル31と支持プレート21との間に樹脂板などを配置する場合には、その樹脂板も被支持部品群22に含まれる。
【0058】
図2は、本実施の形態におけるX線画像検出器の平断面を示す図1のII−II矢視平断面図である。
【0059】
筐体26は、たとえば正方形の底板40を有している。筐体26の底板Xの対角の長さをLとする。支持支柱24は、底板40の四隅の他、底板40の全体にわたってほぼ均等に配置されている。本実施の形態において、支持支柱24の数n1は、16である。取付穴25は、底板40の四隅の他、底板40の全体にわたってほぼ均等に配置されている。本実施の形態において、取付穴25の数n2は、10である。
【0060】
本実施の形態のX線画像検出器Xでは、支持支柱24の数をn1とし、取付穴25の数をn2としたときに、n1≧n2の関係としている。また、被支持部品群22の質量をm1とし、X線画像検出器Xの質量をm2とし、b1=n1/m1とし、b2=n2/m2とすると、b1≧b2の関係となっている。支持支柱24から最短距離に配置される取付穴25までの距離のうち全支持支柱24における最大値をlmaXとし、筐体26の対角長さをLとすると、lmaX/L≦0.2の関係となっている。
【0061】
被支持部品群22は、重金属で比重の大きい鉛などの金属からなるX線遮蔽板18などの比較的質量が大きい物体を含んでいて、X線画像検出器30の全体の質量のうち大きな割合を占めている。このため、X線画像検出器30の運搬や運転の際に、X線画像検出器30に振動が発生した場合には、被支持部品群22の挙動がX線画像検出器30の健全性に与える影響は大きい。
【0062】
たとえば被支持部品群22に振動や衝撃が与えられるとそのエネルギーは、被支持部品群22と支持支柱24を介して接続された筐体26に伝達される。振動などに伴って筐体26に発生する応力が許容応力を超えれば、筐体26が変形などしてX線画像検出器30の健全性が維持できない可能性がある。また、X線検出パネル31はガラス基板11を有している。ガラス基板11は、筐体26などの金属製の部材に比べて許容応力が小さい。このため、振動などによって被支持部品群22が過度に変形した場合、ガラス基板11が破損してしまう可能性がある。
【0063】
筐体26は、システム側筐体と取付穴25部分で固定されている。したがって、筐体26の取付穴25は実質的に固定点であるとみなすことができる。このため、被支持部品群22に与えられた振動や衝撃のエネルギーの一部が支持支柱24を介して筐体26に伝達されると、筐体26が支持支柱24と取付穴25との間で変形する。筐体26側に伝達されるエネルギーが大きくなり、筐体26に発生する応力が許容応力を超えると筐体26の健全性が維持できない。
【0064】
図6は、本実施の形態における支持支柱の数n1の取付穴の数n2に対する比Aと許容応力で規格化したガラス基板および筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。図7は、本実施の形態において、被支持部品群22の質量をm1とし、X線画像検出器の質量をm2とし、b1=n1/m1とし、b2=n2/m2としたときのB=b1/b2と許容応力で規格化したガラス基板および筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。図8は、本実施の形態において、支持支柱から最短距離に配置される取付穴までの距離のうち全支持支柱における最大値をlmaXとし、筐体の対角長さをLとしたときのlmaX/Lと許容応力で規格化した筐体に発生する応力との関係の例を示すグラフである。これらのグラフは、有限要素法を用いた構造解析ソフトウェアによる構造解析の結果である。図6および図7において、実線はガラス基板11に発生する応力をガラス基板11の許容応力で規格化した値である。図6ないし図8において、破線は筐体26に発生する応力を筐体26の許容応力で規格化した値である。
【0065】
支持支柱の数n1の取付穴25の数n2に対する比Aが大きい、すなわち取付穴25の数n2に対する支持支柱24の数n1の比率が大きい場合、被支持部品群22の変形が小さいため、ガラス基板11に発生する応力が小さくなる。これは、被支持部品群22は、筐体26と支持支柱24を介して接続されているため、疑似的に厚さが厚い状態となっており、被支持部品群22の見かけの曲げ剛性が増大しているためである。
【0066】
一方、Aが大きいと、筐体26に発生する応力は大きくなる。これは、被支持部品群22の変形が小さい一方で、被支持部品群22の振動などのエネルギーは被支持部品群22を変位させる力となるためである。取付穴25は検査装置システムの筐体に固定されているため実質的に固定点となり、被支持部品群22の変位によって筐体26が支持支柱24と取付穴25との間で変形する。この変形に伴って筐体26に応力が発生する。
【0067】
Aが小さい場合、すなわち取付穴25に対する支持支柱24の数の比率が小さい場合には、被支持部品群22の変形が大きいため、ガラス基板11に発生する応力は大きくなる。一方、筐体26の変形は小さくなる。これは、振動や衝撃のエネルギーは、被支持部品群22の変形によって減衰し、筐体26側に伝達されるエネルギーが減少するためである。
【0068】
したがって、図6に示すように、支持支柱24の数n1の取付穴25の数n2に対する比Aの増加に伴って、被支持部品群22の発生応力は単調に減少する。また、図6に示すように、Aの増加に伴って、筐体に発生する応力は単調に増加する。X線検出器30の健全性の確保のためには、これらの許容応力で規格化した発生応力がいずれも1未満、すなわち、発生応力が許容応力を下回るようにする必要がある。したがって、Aを所定の範囲にする必要がある。
【0069】
さらに、支持支柱24の数n1の減少は、X線画像検出器30の全体の質量の減少を伴うため、軽量化の観点では好ましい。また、支持支柱24の数n1の減少は、部品点数の減少であるから、部品の製造や取付に要する作業時間の減少を伴い、低コスト化の観点からも好ましい。
【0070】
また、図7に示すように、B=b1/b2の増加に伴って、被支持部品群22の発生応力は単調に減少する。また、Bの増加に伴って、筐体26に発生する応力は単調に増加する。X線検出器30の健全性の確保のためには、これらの許容応力で規格化した発生応力がいずれも1未満、すなわち、発生応力が許容応力を下回るようにする必要がある。したがって、Bを所定の範囲にする必要がある。
【0071】
また、支持支柱24と取付穴25との間の距離を小さくすると、筐体26が支持支柱24と取付穴25の間で変形を起こす程度を小さくすることできる。このため、X線画像検出器30の検査装置システム側の筐体からの落下の危険性をより小さくすることができる。
【0072】
図8に示すように、lmaX/Lの増加に伴って、筐体26に発生する応力は単調に増加する。X線検出器30の健全性の確保のためには、筐体26の許容応力で規格化した発生応力がいずれも1未満、すなわち、発生応力が許容応力を下回るようにする必要がある。したがって、lmaX/Lを所定の値以下にする必要がある。
【0073】
被支持部品群22は、ガラス基板11を有している。このため、被支持部品群22に許容される応力は、実質的にガラス基板11の許容応力と考えてよい。したがって、被支持部品群22の許容応力は、筐体26の許容応力に比べて小さい。その結果、図6に示すように、A=1、すなわち、支持支柱24と取付穴25が同数である場合には、ガラス基板11の発生応力の許容応力に対する比は、筐体26の発生応力の許容応力に対する比に比べて大きい。したがって、ガラス基板11の破損を防ぎ、X線検出器30の健全性を確保するためには、Aが1以上である必要がある。筐体26の破損を防ぎ、X線検出器30の健全性を確保するためには、Aが2以下である必要がある。
【0074】
また、図7から、ガラス基板11の破損を防ぎ、X線検出器30の健全性を確保するためには、被支持部品群22の単位質量あたりの支持支柱24の数b1=n1/m1がX線平面検出器の単位質量あたりの固定点の数b2=n2/m2以上である必要があることがわかる。また、筐体26の破損を防ぎ、X線検出器30の健全性を確保するためには、B=b1/b2が3.5以下である必要があることがわかる。
【0075】
さらに、図8から、lmaX/Lを超えると筐体26の発生応力が急激に大きくなることがわかる。このため、筐体26の破損を防ぎ、X線検出器30の健全性を確保するためには、lmaX/L≦0.2である必要があることがわかる。
【0076】
このように、被支持部品群22やX線画像検出器30の質量に応じて支持支柱24および取付穴25の数を適切に選定することによって、効果的にガラス基板11および筐体26の変形を抑制することができる。特に、支持支柱24の数n1が20以下であって、取付穴25の数n2が16以下である場合にはその効果が大きい。なお、本実施の形態では、X線検出パネル31は間接変換型であったが、これに限定されるものではなく、直接変換型のX線検出パネルであってもよい。
【0077】
支持支柱24および取付穴25の数を適切に選定することによって、低コスト・軽量で、検査装置システム側の筐体へのX線画像検出器30の取付操作性を簡略化でき、かつガラス基板へのダメージと筐体の変形を効果的に抑制することができる。その結果、ガラス基板11の破損や筐体26の変形によるX線画像検出器30の検査装置システムからの落下の可能性を抑制できる。
【0078】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10…TFT回路層、11…ガラス基板、12…画像検出部、13…ゲート線、14…薄膜トランジスタ、15…コンデンサ、16…フォトダイオード、17…信号線、18…X線遮蔽板、19…回路基板、20…フレキシブル基板、21…支持プレート、22…被支持部品群、23…入射窓、24…支持支柱、25…取付穴、26…筐体、30…X線画像検出器、31…X線検出パネル、32…ゲートドライバ、33…積分増幅器、34…A/D変換器、35…行選択回路、36…画像合成回路、37…X線、38…蛍光変換膜、40…底板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を備えてX線を検出して電気信号に変換するX線検出パネルと、前記X線検出パネルの前記X線の入射面の反対側に設けられたX線遮蔽板と、を含む被支持部品群と、
外部装置に固定するための取付穴がn2か所に形成された底板を備えて前記被支持部品群を収納する金属製の筐体と、
前記被支持部品群と前記筐体との間に延びてこれらに固定されたn1本の支持支柱と、
を具備し、
n1≧n2であることを特徴とするX線画像検出器。
【請求項2】
前記被支持部品群の総質量をm1、前記X線画像検出器の総質量をm2、b1=n1/m1、b2=n2/m2としたときに、b1≧b2であることを特徴とする請求項1に記載のX線画像検出器。
【請求項3】
前記n1本のそれぞれの前記支持支柱から最短距離に配置されている前記取付穴までの距離のうちの最大値をlmaXとし、前記底板の対角の長さをLとしたとき、lmaX/L≦0.2であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検出器。
【請求項4】
n1/n2≦2であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のX線画像検出器。
【請求項5】
b1/b2≦3.5であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のX線画像検出器。
【請求項6】
n1≦20かつn2≦16であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のX線画像検出器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19794(P2013−19794A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153944(P2011−153944)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】