説明

X線発生装置

【課題】 漏洩X線の遮へい及びX線発生装置の冷却を行うことができる小型でかつ軽量なX線発生装置を提供する。
【解決手段】 X線管球3及び絶縁油4を収納する封入容器2と、前記封入容器2の上面に設けられた伝熱器6と放熱器7から構成されるX線発生装置1において、伝熱器6と放熱器7との間にX線の遮へい材8を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置に関し、詳しくは食料品や工業製品などの被検査物に対してX線を放射して、X線の透過量から被検査物中の異物を検出する非破壊検査に用いられるX線発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食料品や工業製品などの被検査物中の異物を連続的に検出する手段として、X線を用いた非破壊の検査が行われている。この検査とは、X線発生装置から放射されたX線を被検査物に照射して、その透過量を画像処理することにより異物を検出するというものである。
【0003】
検査に用いられるX線発生装置は、通常は絶縁油に浸漬されたX線管球を金属製の封入容器内に密封した構造からなるが、X線管球がX線の放射に伴い発熱するため、X線管球から絶縁油に伝導された熱を装置の外部へ放出することにより冷却する必要がある。この冷却手段としては、X線発生装置の外部に熱交換器を設ける方法が用いられてきたが、最近では小型化・低コスト化のために封入容器の壁面の内外にそれぞれ設けられた冷却フィンを有する冷却器を通じて絶縁油の熱を外気中へ放出する空気冷却法が採用されている。
【0004】
この冷却器の材料には、通常は熱伝導性のよいアルミニウムが用いられるが、アルミニウムはX線の透過率が高いため、封入容器内で散乱したX線(散乱X線)が冷却器の部分から外部へ漏洩する可能性がある。
【0005】
このため、従来は、X線発生装置全体を鉛製の遮へいフード内に収納することにより、散乱X線の漏洩を防止する方法が取られてきたが、この遮へいフードにより冷却器からの放熱が妨げられてしまうため、冷却性能が悪くなるという欠点があった。
【0006】
そのため、遮へいフードを取り外し可能な構造とすることや、冷却性能を高めつつ漏洩X線の遮へいを行うことができる構造が提案されている。(特許文献1及び2を参照)。
【0007】
例えば、後者においては、図6に示すように、X線発生装置50の冷却フィン51の外側に略コ字形の遮へい部材52を設置し、その両側に角筒体53で直線上の通風路54を形成しており、通風路54により冷却フィン51の冷却を行うとともに、冷却フィン51から漏洩したX線を通風路54の内面で吸収散乱させることにより減衰させるようになっている。
【特許文献1】特開平11−183405号公報
【特許文献2】特開2001−318062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食料品や工業製品などの大量生産品を対象とした連続するX線検査においては、X線発生装置はそれらの製造ライン上に設けられることが一般的であるため、小型化と軽量化が要望されている。
【0009】
しかし、上記に説明した従来の構造では、遮へいフードや通風路を形成する角筒体などの散乱X線を遮へいする部材をX線発生装置の外部に設けなければならないため、X線発生装置が大型化するとともに重量が増加するという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、漏洩X線の遮へい及びX線発生装置の冷却を行うことができる小型でかつ軽量なX線発生装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るX線発生装置は、底板と側壁とからなり、上部に開口部を有する容器の前記底板近傍にX線を発生するX線管球を配置し、前記開口部を伝熱フィンを下方に林立して突出させた伝熱板で閉止し、更に前記伝熱板上に放熱フィンを上方に林立して突出させた放熱板を有し、前記容器内に絶縁油を封入して前記X線管球を冷却するとともに、絶縁油の熱を伝熱フィンに集熱し、前記伝熱板と放熱板との間に金属製のX線遮へい材を熱伝導良好に介在させて一体化してなるX線発生装置である。
【0012】
このように漏洩X線の遮へい材を伝熱板と放熱板の間に組み込むことにより、漏洩X線の遮へい及びX線発生装置の冷却を行うことができる小型でかつ軽量なX線発生装置を提供することができる。
【0013】
また、この漏洩X線の遮へい材として、遮へい性能及び伝熱器等との密着性に優れた鉛板を用いることにより、遮へい性能と冷却性能の向上を図ることができる。
【0014】
更に、放熱板の長手方向に外気の取り入れ口である吸入口を設けて、放熱フィンの上方に空気ファンを設けることにより、X線発生装置の冷却性能の一層の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、漏洩X線の遮へい及びX線発生装置の冷却を行うことができる小型でかつ軽量なX線発生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る実施の形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明に係るX線発生装置の構造を示した断面図である。
【0018】
本発明に係るX線発生装置1は、X線管球3及び絶縁油4を収納する上面が開口した金属製の封入容器2からなり、伝熱器6と放熱器7がその上面の開口を閉止するように取り付けられている。
【0019】
X線管球3は、一般に、真空ガラス内に封入されたアノード10とカソード11間に高電圧を付加して、カソード11からの熱電子をアノード10に衝突させることにより、X線放射口13からX線12を発生させるものである。
【0020】
X線管球3は、X線放射口13が封入容器2の底面に対向するように設置されており、X線発生装置1の下方に置かれた図示しない被検査物に対してX線12を照射できるようになっている。
【0021】
なお、X線放射口13以外からのX線の放出を防止するために、X線管球3の表面はX線放射口13を除いて円筒形状の鉛製遮へいカバー14により覆われている。
【0022】
X線管球3はX線12を放出する際に発熱するため、その徐熱と高電圧による放電防止とを兼ねて、絶縁油4の中に浸漬されている。なお、X線管球3の徐熱により温度上昇した絶縁油4の膨張を吸収するために、封入容器2の側面部にはベローズ9が設けられている。
【0023】
封入容器2の上面には、アルミニウム製の伝熱器6及び放熱器7が取り付けられている。
【0024】
伝熱器6の斜視図を図2に示す。
【0025】
伝熱器6は絶縁油4を徐熱するものであり、平板状の台座20の上に格子状に配列された複数の略直方体状の突出部からなる伝熱フィン21を有している。
【0026】
このような形状の伝熱フィン21を用いることにより、封入容器2内で対流する絶縁油4との接触面積が大きくなり、徐熱効率を高めることができる。
【0027】
また、放熱器7は伝熱器6から伝えられた熱を外気中に放熱するものであり、伝熱器6の上下を逆にした形状及び構造を有している。
【0028】
伝熱器6と放熱器7を組み合わせた構造の斜視図を図3に示す。
【0029】
伝熱器6と放熱器7は、X線の遮へい材8を挟んで互いの台座部分20、22が対応するように配置され、複数の箇所に設けられた貫通孔を介して固定ボルト24で締め付けることにより固定されている。
【0030】
このX線の遮へい材8としては一般的に鉄や鉛などがあるが、ここでは伝熱器6及び放熱器7との密着性及び遮へい性能の観点から、比較的軟らかくて比重の高い鉛を用いる。
【0031】
このようにして互いに固定された伝熱器6と放熱器7は、図1に示すように、伝熱フィン21が絶縁油4の中に浸漬し、反対側の放熱フィン23が外気にさらされるように、封入容器2の上部の開口部に取り付けられる。
【0032】
そして、散乱X線を遮へいするための遮へい材8を、伝熱器6及び放熱器7の一部として取り付けているため、X線発生装置1を小型で軽量なものとすることができる。
【0033】
以上に説明した実施の形態における作用について説明する。
【0034】
X線管球3でX線の発生に伴い発生した熱は、X線管球3に接する絶縁油4に伝導され、それにより加熱・昇温された絶縁油4は対流により封入容器2内の上部へ移動する。そして、上部へ移動した絶縁油4から伝熱フィン21へ熱が伝わり、台座20や遮へい材8を伝わって放熱フィン23から外気へ放熱されることになる。ここで、上記の絶縁油4の対流はランダムな方向に発生するが、伝熱フィン21は図2に示すような形状を有するため、絶縁油4から効率的に集熱することができる。
【0035】
そして、伝熱器6と放熱器7との間に薄板状の遮へい材5を介在させて、これらをボルトで締め付けることにより一体的に形成しており、絶縁油4の熱は放熱フィン23を介して空冷により放熱されるので、冷却ファン等による排気作用により絶縁油4の熱を効率的に放出してX線管球3を低温に維持してX線の放射効率を高めることができる。
【0036】
また、X線発生装置1から発生した散乱X線については、伝熱器6と放熱器7の間に配置された薄板状の遮へい材5により遮へいされるため、封入容器2の上面を通じてX線発生装置1の外部へ漏洩することはない。
【0037】
本発明に係るX線発生装置1を実際に使用する場合の構成例を図4及び図5に示す。図4は当該構成例の正面の断面図であり、図5は図4のA−A面における断面図である。
【0038】
本構成例においては、X線発生装置1は収納ケース30内に納められており、図4に示すように、その上部側面には吸気口31が一カ所ずつ設けられている。
【0039】
また、図5に示すように、収納ケース30の下端にはX線発生装置1の長手方向に沿って、吸気口の役割をする隙間35が設けられている。
【0040】
収納ケース30の上面には複数台の空気ファン32が設置されており、収納ケース30内で加熱された空気を外部へ排出することができるようになっている。
【0041】
吸気口31を通じて外部から吸い込まれた空気33は、放熱フィン23の間を流れる間に加熱され、空気ファン32を通じて収納ケース30の上方から外部へ排気されることになる。
【0042】
また、収納ケース30の下端の隙間35から流入して垂直方向へ流れる空気33により、X線発生装置1の壁面も同時に冷却することができるようになっている。
【0043】
このように、空気ファン32を用いた強制的な冷却を行うことにより、放熱フィン23からの放熱効率を向上させ、X線発生装置1の冷却性能を高めることができる。
【0044】
ここで、X線発生装置1内で発生して上面方向へ向かう散乱X線34は、伝熱器6と放熱器7との間に設けられた遮へい材8により遮へいされるため、X線発生装置1の外部へ漏洩することはない。なお、水平方向へ向かう散乱X線については、封入容器2や収納ケース30により容易に遮へいすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るX線発生装置を示す断面図である。
【図2】伝熱器の形状を示す斜視図である。
【図3】伝熱器と放熱器を組み合わせた構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示すX線発生装置の構成例における断面図である。
【図5】図4に示すA−A矢視の断面図である。
【図6】従来のX線発生装置の構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 X線発生装置
2 封入容器
3 X線管球
4 絶縁油
6 伝熱器
7 放熱器
8 遮へい材
9 ベローズ
10 アノード
11 カソード
12 X線
13 X線放射口
14 遮へいカバー
20 伝熱器台座部
21 伝熱フィン
22 放熱器台座部
23 放熱フィン
24 固定ボルト
30 収納ケース
31 吸気口
32 空気ファン
33 空気の流れ
34 散乱X線
35 隙間
50 X線発生器
51 冷却ファン
52 遮へい部材
53 角筒体
54 通風路
55 載置台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と側壁とからなり、上部に開口部を有する容器の前記底板近傍にX線を発生するX線管球を配置し、
前記開口部を伝熱フィンを下方に林立して突出させた伝熱板で閉止し、
更に前記伝熱板上に放熱フィンを上方に林立して突出させた放熱板を有し、
前記容器内に絶縁油を封入して前記X線管球を冷却するとともに、
絶縁油の熱を伝熱フィンに集熱し、前記伝熱板と放熱板との間に金属製のX線遮へい材を熱伝導良好に介在させて一体化してなるX線発生装置。
【請求項2】
前記X線の遮へい材は、鉛板であることを特徴とする請求項1に記載のX線発生装置。
【請求項3】
前記放熱板の長手方向に吸入口を有し、
前記放熱フィンの上方に空気ファンを設け、
前記放熱フィンの間に冷却空気を流入させ、前記放熱フィンより遠ざかる方向に空気を放出させることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のX線発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−26800(P2007−26800A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205340(P2005−205340)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500561263)株式会社ジョブ (6)
【Fターム(参考)】