説明

X線CT装置

【課題】 被検者とガントリの接触を確実に検出することにより、被検者に対する安全性を向上させることができるX線CT装置を提供することである。
【解決手段】 被検者にX線を照射するX線管400と、X線管400に対向配置され被検者110を透過したX線を検出するX線検出部402と、X線管400とX線検出部402とが回転可能に配置され、被検者110を移動させるための開口部104を有したガントリ100とを備えるX線CT装置であって、透明部材で形成される覆設板208と、覆設板208に加えられた圧力を検出する接触検出部302とを備え、覆設板208は、ガントリ100に設置された表示部204又はレーザー投光器206を覆うように覆設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置において、被検者又は操作者に必要な情報を表示する表示部をガントリに備え、被検者が表示部付近のガントリに接触した際の被検者の安全を確保する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置には、X線管とX線検出部とが回転可能に配置され、被検者を挿入するための開口部を有したガントリが備えられている。X線を照射しながらX線管とX線検出部とを被検者の周りで回転させることにより、被検者を透過したX線をX線検出部で検出する。そして、X線検出部で検出されたデータに基づいて断層画像が構成される。
【0003】
ガントリには、面状の接触検出部が複数枚、各曲線部分を隣接させて装着され、ガントリが傾動し、開口部に挿入された被検者にいずれかの接触検出部が接触すると、ガントリの傾動の停止などがなされることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-257023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、ガントリに設けられている、レーザー光を照射させるためのスリット、操作者が操作するための操作部又は表示部には、被検者とガントリの接触を検出する接触検出部が設けられていない。よって、当該スリットや操作部に被検者が接触しても被検者とガントリの接触を検出することができないため、被検者に対する安全面が不十分であったものと思料する。
【0006】
本発明は、被検者とガントリの接触を確実に検出することにより、被検者に対する安全性を向上させることができるX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するため、被検者にX線を照射するX線管と、X線管に対向配置され被検者を透過したX線を検出するX線検出部と、X線管とX線検出部とが回転可能に配置され、被検者を移動させるための開口部を有したガントリとを備えるX線CT装置であって、透明部材で形成される覆設板と、覆設板に加えられた圧力に基づいて、被検者と覆設板との接触を検出する接触検出部とをガントリに備え、覆設板は、ガントリに設置された表示部又はレーザー投光器の表面を覆うように覆設される。よって、被検者とガントリの接触を確実に検出することができ、被検者に対する安全性を向上させることができる。
【0008】
表示部は、鉛直方向に対して斜め下方向に向いて設置され、被検者に対して被検者向け情報を表示する被検者用表示部である。表示部と前記ガントリで形成される空隙部と、レーザー投光器とガントリで形成される空隙部とを覆うように覆設板が覆設される。
表示部で表示された画像の可視光が透過する可視光透過領域とレーザー投光器から照射されるレーザー光が透過するレーザー光透過領域に該当する覆設板は透明部材で構成され、可視光透過領域とレーザー光透過領域以外の領域に該当する覆設板は不透明部材で構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者とガントリの接触を確実に検出することにより、被検者に対する安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のX線CT装置の外観図。
【図2】本発明の本発明のX線CT装置のガントリ100の特徴部を示す図。
【図3】本発明のX線CT装置のガントリ100を切断した断面図。
【図4】本発明のX線CT装置のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のX線CT装置について図を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
X線CT装置の全体構成を図1と図2を用いて説明する。図1は、X線CT装置の外観図である。X線CT装置は、X線管とX線検出部とが回転可能に配置され、開口部104を有したガントリ100と、被検者110を横臥させ、ガントリ100の開口部104に被検者110を移動させる駆動部を有したテーブル102と、X線検出部により検出された計測データを演算処理してCT画像の再構成を行う画像処理部120と、CT画像を表示する表示部122と、操作者が被検者氏名、検査日時、撮影条件などを入力するとともに、上記各構成要素の操作を行う操作部124と、操作部124の指示に基づいて上記各構成要素の制御を行う制御部126を備える。
【0013】
図1の右側に示されている、画像処理部120と表示部122と操作部124と制御部126とを形成している操作表示ユニットは、撮影室の外部に設置されている。なお、制御部126は、ガントリ100内に設置されていてもよい。
【0014】
テーブル102(天板)は、ガントリ100とともに撮影室の床面に設置され、鉛直方向と水平方向に移動することができる。図示しないが、テーブル102は、被検者110を横臥させる天板と、天板を鉛直方向と水平方向に移動する駆動部と、天板の位置を検出する位置検出部(例えば、ポテンショメータ)とを有している。
【0015】
図2は、本発明のX線CT装置のガントリ100の特徴部を示す図である。図2(a)は、ガントリ100の特徴部の位置を示す図である。図2(b)は、ガントリ100の特徴部である領域200の拡大図を示す図である。領域200は、図2(a)において破線で囲まれた領域である。
【0016】
図2(a)に示すように、ガントリ100の特徴部である領域200は、ガントリ100の開口部104の上方に位置している。ガントリ100の特徴部である領域200は、ガントリ100を傾斜させたり、テーブル102を上方に移動させたりしたときに被検者110に接触する可能性がある領域である。
【0017】
ガントリ100の特徴部である領域200を拡大した図2(b)に示すように、ガントリ100には、テーブル102の位置や撮影条件などの操作者向け情報を操作者に対して表示する操作者用表示部202と、X線の照射状況や被検者110の息継ぎなどの被検者向け情報を被検者110に対して表示する被検者用表示部204と、被検者110の撮影正中線を設定するためにレーザー光を照射するレーザー投光器206と、被検者用表示部204とレーザー投光器206の表面を覆うように
設けられた覆設板208とが備えられている。被検者用表示部204とガントリ100で形成される空隙部と、レーザー投光器206とガントリ100で形成される空隙部とを覆うように覆設板208が覆設されている。
【0018】
覆設板208は、主に、レーザー投光器206から照射されるレーザー光、被検者用表示部204で表示された画像の可視光、赤外光などの光を透過することができる透明部材で構成されている。よって、覆設板208にレーザー投光器206が覆われていても、レーザー投光器206は覆設板208にレーザー光を通過させてガントリ100の外側に照射することができる。また、覆設板208に被検者用表示部204が覆われていても、被検者用表示部204に表示された情報である可視光が覆設板208を通過するので
、被検者110はガントリ100の外部から被検者用表示部204に表示された情報を確認することができる。なお、本実施例では、被検者用表示部204とレーザー投光器206の表面を一つの覆設板208で覆っているが、被検者用表示部204とレーザー投光器206のそれぞれを個別の覆設板208で覆ったり、操作者用表示部202や他のガントリ100に設置されたスイッチや被検者が接触しそうなガントリ100の外装カバーを覆う覆設板208を設けたりしてもよい。
【0019】
操作者用表示部202は、その表示面が鉛直方向に対してほぼ接するようにガントリ100に設置されており、操作者が見やすいようにガントリ100の正面に向けて設置されている。よって、操作者は立位の状態で操作者用表示部202を見ることができ、操作者用表示部202に表示された情報を確認することができる。
【0020】
被検者用表示部204は、鉛直方向に対して斜め下方向に向いて設置されており、被検者110が見やすいように、被検者110が横臥するテーブル102の方向に向いて設置されている。よって、被検者110はテーブル102に横臥した状態で被検者用表示部204を見て、被検者用表示部204に表示された情報を確認することができる。
【0021】
レーザー投光器206は、被検者用表示部204と同様に、ガントリ100の開口部104の斜め下方向に向いて設置され、被検者110が横臥するテーブル102の方向に向いて設置されている。レーザー投光器206は、X線管によるX線照射及びX線検出部によるX線検出の妨げにならない位置に設置されている。
【0022】
ここで、X線CT装置のガントリ100の特徴部について図3を用いて詳細に説明する。図3は、図2(b)に示されるA-A´断面におけるガントリ100断面図である。
【0023】
被検者用表示部204は、ガントリ100の外装カバーの背面に設置された固定部300を介して、ガントリ100の内側に内設されている。ガントリ100の内側とは、X線管やX線検出器が設置されている側である。
【0024】
被検者110の撮影正中線を設定するためにレーザー光を照射するレーザー投光器206は、例えば、テーブル102の長手方向に沿った左右方向の位置合わせするレーザー光を被検者110に向けて照射するものである。レーザー光照射範囲210は、レーザー投光器206から照射されるレーザー光の照射範囲を示している。
【0025】
覆設板208は、接触検出部302を介して、ガントリ100の外装カバーに設置されている。覆設板208は板状であり、被検者用表示部204とレーザー投光器206の表面を覆う面積を有している。つまり、覆設板208は、被検者用表示部204又はレーザー投光器206、それらの周辺と被検者110との接触を検知することができる面スイッチとなっている。
【0026】
覆設板208は、被検者110と接触すると若干撓むとともに、接触検出部302に被検者110などの外部から加えられた圧力を伝達する適度な剛性を有している。被検者110と接触すると若干撓むのは、被検者110に対する安全上の配慮に基づくものである。
【0027】
覆設板208は、レーザー投光器206から照射されるレーザー光が屈折されないように設置されている。具体的には、覆設板208は、レーザー投光器206から照射されるレーザー光が覆設板208の面に対して垂直に入射されるように設置されている。
【0028】
覆設板208に被検者110が接触すると、被検者110から加えられた圧力が接触検出部302に伝達される。接触検出部302に圧力が伝達されると、ガントリ100の傾動やテーブル102の天板の移動は、停止される。
【0029】
なお、覆設板208では、被検者用表示部204で表示された画像の可視光が透過する可視光透過領域304と、レーザー投光器206から照射されるレーザー光が透過するレーザー光透過領域306は、透明部材で構成されている。可視光透過領域304とレーザー光透過領域306以外の領域は、透明部材で構成することも可能であるが、接触検出部302が透過されて外部から見えてしまうことになる。そこで、本実施例では、覆設板208の可視光透過領域304とレーザー光透過領域306以外の領域(接触検出部302に内接されている領域)は、ガントリ100の美観を損なわないように、不透明部材で構成することもできる。つまり、被検者用表示部204で表示された画像の可視光が透過する可視光透過領域304とレーザー投光器206から照射されるレーザー光が透過するレーザー光透過領域306に該当する覆設板208は透明部材で構成され、可視光透過領域304とレーザー光透過領域306以外の領域に該当する覆設板208は不透明部材で構成される。例えば、可視光透過領域304とレーザー光透過領域306以外の領域に該当する覆設板208の色をガントリ100と同一色にする。
【0030】
本発明のX線CT装置の内部構成について図4を用いて説明する。ガントリ100は、テーブル102に横臥された被検者110が入る開口部104を有した回転円盤部106と、回転円盤部106に搭載されたX線管400及びX線検出部402とを備えている。回転円盤部106は、X線管400及びX線検出部402とともに、被検者110の周囲を回転する。また、ガントリ100は、回転円盤部106の回転軸がテーブル102の上面に対して傾斜した状態(ガントリ100の傾動)で回転円盤部106が回転できるようにする傾動機構を有している。
【0031】
X線管400はテーブル102に横臥された被検者110にX線を照射する装置である。X線管400と被検者110の間に設置されるコリメータ404は、X線管400から照射されるX線の照射範囲を制限する装置である。X線検出部402は、回転円盤部106上でX線管400と対向配置され、被検者110を透過したX線を検出する装置である。X線検出部402は、多数のX線検出素子を回転円盤部106の回転方向に配列したもの、若しくは回転円盤部106の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。
【0032】
画像処理部120は、X線検出部402から送出される計測データを演算処理してCT画像の再構成を行う装置である。画像処理部120は、CT画像の画像データを記憶する機能も有している。表示部122は、画像処理部120で作成されたCT画像を表示する装置である。
【0033】
操作部124から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づいて制御部126がX線管400に入力される電力を制御することにより、X線管400は撮影条件に応じたX線を被検者110に照射する。X線検出部402は、X線管400から照射され被検者110を透過したX線をX線検出部402の多数のX線検出素子で検出し、透過X線の分布を計測する。
【0034】
回転円盤部106の回転速度や、回転軸の傾動角度(ティルト)等が、操作部124で設定される。テーブル102は、制御部126によって制御され、操作部124で設定された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいてテーブル102の天板が移動する。
【0035】
X線管400からのX線照射とX線検出部402による透過X線分布の計測が回転円盤部106の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からの投影データが取得される。取得された様々な角度からの投影データは画像処理部120に伝達される。画像処理部120は伝達された様々な角度からの投影データを逆投影処理することによりCT画像を再構成する。再構成して得られたCT画像は表示部122に表示される。
【0036】
制御部126は、操作者用表示部202と被検者用表示部204とレーザー投光器206と接触検出部302とテーブル102とX線管400に接続されている。制御部126の一部は、ガントリ100内に設置されていてもよい。
【0037】
覆設板208に被検者110が接触すると、被検者110から加えられた圧力が接触検出部302に伝達される。接触検出部302において圧力が検出され、制御部126に伝達されると、制御部126は被検者110が覆設板208に接触したと判定する。制御部126は当該判定を行なう機能(判定部)を有している。
【0038】
ガントリ100が傾動している時に接触検出部302が被検者110と接触したと判定された場合、制御部126は、ガントリ100の傾動を停止させる。ガントリ100の退避については操作者が操作部124で行う。
【0039】
また、テーブル102の天板を移動している時に接触検出部302が被検者110と接触したと判定された場合、制御部126は、テーブル102の駆動部に対して、天板の移動を停止させる。
【0040】
このように、被検者110がテーブル102に横臥した状態でテーブル102が移動し、被検者110が面スイッチとなっている覆設板208に接触すると、制御部126は、テーブル102の移動を停止したり、ガントリ100の傾動を停止したりする。テーブル102の移動が停止した時、又はガントリ100の傾動が停止した時、制御部126は、被検者110が覆設板208に接触したという警報を操作者に対して伝達する。
【0041】
具体的には、被検者110が覆設板208に接触した時、制御部126は、被検者110が覆設板208に接触したという情報を操作者用表示部202に表示する。よって、操作者は、操作者用表示部202に表示された情報を確認することにより、被検者110を安全な位置に適宜移動させることができる。
【0042】
また、被検者110が覆設板208に接触した時、制御部126は、レーザー投光器206から照射されるレーザー光の照射形態を変更する。例えば、レーザー投光器206はレーザー光を点滅させる。よって、操作者は、レーザー光の照射形態を確認することにより、被検者110を安全な位置に適宜移動させることができる。
【0043】
以上、本実施例によれば、被検者にX線を照射するX線管400と、X線管400に対向配置され被検者110を透過したX線を検出するX線検出部402と、X線管400とX線検出部402とが回転可能に配置され、被検者110を移動させるための開口部104を有したガントリ100とを備えるX線CT装置であって、透明部材で形成される覆設板208と、覆設板208に加えられた圧力を検出する接触検出部302とを備え、覆設板208は、ガントリ100に設置された表示部204又はレーザー投光器206を覆うように覆設される。
【0044】
被検者110とガントリ100の接触を確実に検出することにより、被検者110に対する安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0045】
100 ガントリ、102 テーブル、104 開口部、106 回転円盤部、110 被検者、120 画像処理部、122 表示部、124 操作部、126 制御部、202 操作者用表示部、204 被検者用表示部、206 レーザー投光器、208 覆設板、302 接触検出部、400 X線管400 X線検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者にX線を照射するX線管と、前記X線管に対向配置され前記被検者を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線管と前記X線検出部とが回転可能に配置され、前記被検者を移動させるための開口部を有したガントリとを備えるX線CT装置であって、
透明部材で形成される覆設板と、前記覆設板に加えられた圧力を検出する接触検出部とを備え、前記覆設板は、前記ガントリに設置された表示部又はレーザー投光器を覆うように覆設されることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記表示部は、鉛直方向に対して斜め下方向に向いて設置され、前記被検者に対して被検者向け情報を表示する被検者用表示部であることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記表示部と前記ガントリで形成される空隙部と、前記レーザー投光器と前記ガントリで形成される空隙部とを覆うように前記覆設板が覆設されることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記覆設板は、前記被検者と接触すると若干撓むとともに、前記接触検出部に前記被検者から加えられた圧力を伝達する剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記覆設板は、前記レーザー投光器から照射されるレーザー光が前記覆設板の面に対して垂直に入射されるように設置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記表示部で表示された画像の可視光が透過する可視光透過領域と前記レーザー投光器から照射されるレーザー光が透過するレーザー光透過領域に該当する前記覆設板は透明部材で構成され、前記可視光透過領域と前記レーザー光透過領域以外の領域に該当する前記覆設板は不透明部材で構成されることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記可視光透過領域とレーザー光透過領域以外の領域に該当する覆設板の色は、前記ガントリと同一色であることを特徴とする請求項6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記接触検出部で検出された圧力に基づいて、前記被検者が前記覆設板に接触したと判定する制御部を備え、前記ガントリが傾動している時に前記接触検出部が前記被検者と接触したと判定された場合、前記制御部は、前記ガントリの傾動を停止させることを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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