説明

ZSM−12の合成および使用

式:(n)YO:X(式中、Xは三価の元素であり、Yは四価の元素であり、nは約80〜約250である)のZSM−12の骨格構造を有する多孔質の結晶性材料の製造方法を記載する。当該方法では、前記結晶性材料を形成することのできる混合物を調製し、前記混合物が、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源、三価の元素(X)の酸化物、四価の元素(Y)の酸化物、ヒドロキシルイオン(OH)、水およびテトラエチルアンモニウムカチオン(R)を含み、前記混合物は、モル比で、YO/X=100〜300;HO/YO=5〜15;OH/YO=0.10〜0.30;M/YO=0.05〜0.30;およびR/YO=0.10〜0.20の範囲内の組成を有する。少なくとも約300°F(149℃)の温度で約50時間未満の時間、この混合物を反応させて、前記結晶性材料の結晶を形成し、その後、この結晶性材料を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年8月7日出願の米国仮出願第61/273,711号の優先権を主張するものである。
【0002】
分野
本発明は、制御されたメソ多孔質のZSM−12の合成方法に関する。また、本発明は、それにより得られたZSM−12の触媒プロセス(又は触媒過程)での使用、特にC+芳香族炭化水素のキシレンへの転化(又はコンバージョン)における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ZSM−12のテトラメチルアンモニウムまたはテトラエチルアンモニウム指向剤(directing agent)の存在下での従来の調製法およびZSM−12は、特許文献1(その開示内容全体が参照により本明細書中に援用される)に教示されている。ZSM−12は、固有のX線回折パターンを有し、それにより、ZSM−12は、その他の公知の結晶性材料と区別される。
【0004】
化学および精製の分野において、ZSM−12型の触媒材料の需要が高まっている。結果として、ZSM−12合成のための改善された技術を開発することに著しい関心がある。
【0005】
特許文献2は、ハロゲン化ジメチルピリジニウムおよびハロゲン化ジメチルピロリジニウムからなる群から選択される化合物を指向剤として含む反応混合物からのZSM−12の合成方法を開示している。
【0006】
特許文献3および特許文献4は、メチルトリエチルアンモニウムイオンを指向剤として含有する反応混合物からのZSM−12の合成方法を開示している。これらの特許は、ZSM−12の高いSiO/Al比の形態での製造に主に関し、この比は、特許文献3の場合には80よりも大きく、特許文献4の場合には200よりも大きい。さらに、メチルトリエチルアンモニウムイオンを指向剤として使用することについて特許文献3において述べられた利点の一つは、大きい結晶サイズ材料の製造にある。
【0007】
ZSM−12を合成するために使用されてきたその他の有機指向剤としては、DABCO−C−ジクワットイオン(式中、n=4、5、6または10である)(特許文献5を参照されたい)、ビス(ジメチルピペリジニウム)トリメチレンイオン(特許文献6を参照されたい)、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン(特許文献7を参照されたい)、ジベンジルジエチルアンモニウムイオン(特許文献8を参照されたい)、ジメチルジエチルアンモニウムイオン(特許文献9を参照されたい)、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン(特許文献10を参照されたい)、ビス(N−メチルピリジル)エチリニウムイオン(特許文献11を参照されたい)、ヘキサメチレンイミン(特許文献12)、およびデカメトニウムイオン(特許文献13を参照されたい)、ビス(メチルピロリジニウム)ジクワット−nイオン(式中、n=4、5または6である)が挙げられる。
【0008】
ZSM−12などの合成ゼオライトの結晶形態学(結晶モルホロジー)は、反応混合物のシリカ/アルミナのモル比、温度および撹拌などが変化することによって影響を受けるが、結晶化に使用される指向剤の選択によって主に支配される。たとえば、ZSM−12の場合、針状結晶は、ベンジルトリメチルアンモニウム指向剤を使用して製造することができ、米粒状結晶は、テトラエチルアンモニウム塩の存在下で製造することができ、六角形平板(ヘキサゴナルプレートレット)の束は、ヘキサメチレンイミン指向剤を用いて調製することができる。ゼオライトの結晶形態学の制御は、活性および安定性増強の見地から、非常に重要である。ほぼどんな触媒の用途でも、高い活性や安定性のためには小さい結晶サイズが望ましく、それは、小さな結晶材料の方が、より大きな表面積を有し、それ故、拡散経路(diffusion path)がより短くなるからである。
【0009】
たとえば、特許文献14は、60未満のシリカ対アルミナのモル比を有するZSM−12の合成を開示しており、この材料の平均結晶サイズは、0.1ミクロン未満であり、メシチレンでの拡散パラメータ(Diffusion Parameter)は、100℃の温度および2トルのメシチレン圧力で測定したとき、少なくとも1000×10−6/秒である。三価の元素Xの酸化物の供給源、四価の元素Yの酸化物の供給源、テンプレートとしてのメチルトリエチルアンモニウムカチオン(R)、原子価nのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属イオンの供給源M、および水を含む反応混合物を結晶化させることによって合成は行われる。ここで、混合物は、モル比で、以下の組成を有する。YO/Xは40〜80であり、HO/YOは15〜40であり、OH/YOは0.15〜0.4であり、M/YOは0.15〜0.4であり、R/YOは0.15〜0.4である。170℃以下の温度で約50〜500時間の間、結晶化は実施される。
【0010】
さらに、特許文献15は、0.1μm未満の一次結晶サイズ;および4〜10nmの細孔半径範囲において30〜200mm/gの、4000バールの最大圧力での水銀ポロシメトリーによって測定される、比体積を有するZSM−12の製造方法を開示している。この方法は、アルミニウムの供給源、沈澱シリカなどのケイ素の供給源、TEAなどのテンプレート、原子価nのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属イオンの供給源Mならびに水を含む合成ゲル組成物の結晶化を含み;組成物中でのHO:SiOのモル比は5〜15の間で選択され、M2/nO:SiOのモル比は0.01〜0.045の範囲内であり、TEA/SiOのモル比は約0.10〜0.18の間であり、SiO/Alのモル比は50〜150の範囲内である。約120〜200℃、好ましくは約140〜180℃の温度で、約50〜500時間、特に約100〜250時間の間、結晶化が実施される。
【0011】
本発明によれば、反応混合物および反応温度を変更することによって、ZSM−12の合成に要する時間を約50時間未満にまで減らし、それによって、生産処理量(生産スループット)を上げることができること、ならびに、合成の全体コストを削減できることを見出した。さらに、合成条件に依存して、得られたZSM−12は、密充填(closely packed)または緩充填(loosely packed)の小さなZSM−12結晶の凝集塊の形態である。
【0012】
ZSM−12は、通常、アルミノシリケートとして合成されるが、骨格アルミニウムを、ホウ素、鉄および/またはガリウムなどのその他の三価の元素で部分的にまたは完全に置き換えることができ、そして骨格ケイ素を、ゲルマニウムなどのその他の四価の元素で部分的にまたは完全に置き換えることができることは十分理解されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献2】米国特許第4,391,785号明細書
【特許文献3】米国特許第4,452,769号明細書
【特許文献4】米国特許第4,537,758号明細書
【特許文献5】米国特許第4,482,531号明細書
【特許文献6】米国特許第4,539,193号明細書
【特許文献7】米国特許第4,552,738号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第A−167,232号明細書
【特許文献9】米国特許第4,552,739号明細書
【特許文献10】米国特許第4,585,637号明細書
【特許文献11】米国特許第4,585,746号明細書
【特許文献12】米国特許第5,021,141号明細書
【特許文献13】米国特許第5,192,521号明細書
【特許文献14】米国特許第6,893,624号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2008/0035525号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一態様として、
式:(n)YO:X
(式中、Xが三価の元素であり、Yが四価の元素であり、nが約80〜約300である)
のZSM−12の骨格構造(フレームワーク構造)を有する多孔質の結晶性材料の製造方法にあり、当該方法は、以下の工程
(a) 前記結晶性材料を形成することができる混合物を調製する工程であり、前記混合物が、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源、三価の元素(X)の酸化物、四価の元素(Y)の酸化物、ヒドロキシルイオン(OH)、水およびテトラエチルアンモニウムカチオン(R)を含み、前記混合物が、モル比で、
YO/X=100〜300;
O/YO=5〜15;
OH/YO=0.10〜0.30;
M/YO=0.05〜0.30;および
R/YO=0.10〜0.20
の範囲内の組成を有する、工程、
(b) 前記混合物を少なくとも300°F(149℃)の温度で反応させて前記材料の結晶を形成する工程、および
(c) 約50時間未満の時間が経過した後に前記工程(b)を終了し、前記結晶性材料を回収する工程
を含む。
【0015】
一実施形態によると、前記温度は、約300°F(149℃)〜330°F(166℃)、例えば約320°F(160℃)である。
【0016】
都合よくは、約40時間以下の時間、例えば約30時間〜約40時間が経過した後に前記工程(b)を終了する。
【0017】
都合よくは、HO/YOのモル比は、約10〜約14である。
【0018】
都合よくは、OH/YOのモル比は、約0.20〜約0.30である。
【0019】
都合よくは、M/YOのモル比は、約0.15以下、例えば0.13未満である。
【0020】
都合よくは、R/YOのモル比は、約0.15以下である。
【0021】
一般には、前記結晶性材料は、アルゴン物理吸着によって測定された約10Å〜40Å、典型的には約10Å〜35Åのメジアンメソポア半径(median mesopore radius)を有するZSM−12結晶の凝集塊を含む。さらに、ZSM−12結晶は、典型的には、その全表面積の約10〜約20%の外部表面積を有する。
【0022】
さらなる態様によると、本発明は、本発明で製造したZSM−12のC+芳香族炭化水素のキシレンへの転化(コンバージョン)での使用にある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1a】実施例1の生成物のアルゴン物理吸着スペクトルを示す。
【図1b】実施例1の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図2a】実施例3の生成物のアルゴン物理吸着スペクトルを示す。
【図2b】実施例3の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図3a】実施例4の生成物のアルゴン物理吸着スペクトルを示す。
【図3b】実施例4の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【図4a】実施例5の生成物のアルゴン物理吸着スペクトルを示す。
【図4b】実施例5の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
0.05ミクロン未満の平均結晶サイズを典型的に有する、密充填(closely packed)または緩充填(loosely packed)の小さいZSM−12結晶の凝集塊のハイスループットかつ短いサイクル時間での合成を可能にする、ZSM−12の合成のための高固形分、高温プロセスを本明細書中に記載する。得られたZSM−12結晶の、C+芳香族炭化水素のキシレンへの転化(コンバージョン)における使用もまた本明細書中に記載する。
【0025】
本発明の方法においては、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)のカチオンの供給源、通常はナトリウムと、三価の元素(X)の酸化物、通常はアルミナと、四価の元素(Y)の酸化物、通常はシリカと、テトラエチルアンモニウムカチオン(R)と、ヒドロキシルイオンと、水とを含む合成混合物を調製する。この合成混合物は、以下の通り、酸化物のモル比で表される組成を有する:
【0026】
【表1】

【0027】
一実施形態においては、M/YOのモル比は、0.13未満である。
【0028】
アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の一部または全部は、水酸化物としてではなく、NaCl、NaBrなどの金属塩として添加されてもよく、低いOH/YOの比を維持するのに役立ち、M/YOの比を望ましい範囲内に維持しながら、シリカの利用(収率)を向上させることができる。
【0029】
本発明の合成方法は、核形成種(シード)を添加しても、添加しなくても、機能する。好ましい実施形態においては、反応混合物は、ZSM−12の0.05〜5重量%の核形成種を含有する。
【0030】
少なくとも300°F(149℃)、好ましくは約300°F(149℃)〜330°F(166℃)、例えば約320°F(160℃)の比較的高い温度で、撹拌状態下あるいは静止状態下のいずれかで、好ましくは撹拌状態下で結晶化を実施する。50時間未満、一般には、約30時間〜約40時間など、約40時間以下の時間で結晶化を行い、その後得られたZSM−12結晶を母液から分離して回収する。その高い固形分および短い結晶化時間のおかげで、本発明の方法は、ZSM−12のハイスループット合成を可能にする。
【0031】
用いる合成条件によって、本発明の方法で製造されるZSM−12は、密充填あるいは緩充填の小さな結晶、典型的には0.05ミクロン未満の平均結晶サイズを有する結晶の凝集塊の形態をとることができる。特に、密充填の小さな結晶の凝集塊は、0.1以下のNa/Siのモル比および少なくとも320°F(160℃)の合成温度で製造される傾向がある。対照的に、緩充填の小さな結晶の凝集塊は、0.1より大きいNa/Siのモル比、および320°F(160℃)未満のさらに高い合成温度で製造される傾向がある。
【0032】
ZSM−12結晶の密充填は、アルゴン物理吸着で測定されるように、約10Å〜約30Å、典型的には約15Å〜約25Åの範囲にある、結晶間メソポア(インタークリスタリンメソポア)のメジアン半径で実証される。ZSM−12結晶の緩充填は、アルゴン物理吸着で測定されるように、約20Å〜約50Å、典型的には約25Å〜約45Åの範囲にある、結晶間メソポアのメジアン半径で実証される。さらに、密充填ZSM−12結晶は、典型的には、その全表面積の約10〜約20%の外部表面積を有するが、緩充填結晶は、その全表面積の20%より大きい外部表面積を有する。
【0033】
その合成された状態の形態において、本発明によって製造されたZSM−12は、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)のカチオン、ならびに、その合成を導くために使用される有機材料を含有する。触媒または吸着剤としてZSM−12を使用する前に、材料は、合成された状態で、通常どおり処理され、有機成分の一部またはすべてを除去する。これは、好都合なことに、合成されたままの材料を約250℃〜約550℃の温度で1時間〜約48時間加熱することによって達成される。
【0034】
望ましい程度まで、合成された状態の材料に元々存在するナトリウムおよび/またはカリウムのカチオンは、当該技術分野において周知の技術に従って、その他のカチオンとのイオン交換によって、少なくとも部分的に置換することができる。好ましい置換カチオンとしては、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(たとえば、アンモニウムイオン)およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいカチオンは、特定の炭化水素転化反応のために、触媒活性を調整するものである。これらには、水素、希土類金属、ならびに元素の周期表の第IIA、IIIA、IVA、VA、IB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIBおよびVIII族の金属が挙げられる。
【0035】
本方法に従って製造されたZSM−12は、以下の表1のX線回折線によって特徴付けられるX線回折パターンを有する。
【0036】
【表2】

【0037】
これらのX線回折データは、銅K−アルファ線放射を用いたScintag回折計で集められた。回折データは、シータがBragg角である2シータの0.02度で、なおかつ、各ステップについて1秒の計数時間でステップ走査することによって記録された。面間隔(d)は、オングストローム単位(Å)で計算され、線の相対強度(I/I)(Iは、バックグランド上、最強の線の強度の100分の1である)は、プロファイル・フィッティング・ルーチン(profile fitting routine)(または二次導関数アルゴリズム)を使って誘導された。強度は、Lorentz効果および分極効果について補正されていない。相対強度は、記号vs=非常に強い(75〜100)、s=強い(50〜74)、m=中程度(25〜49)およびw=弱い(0〜24)の観点から示される。この試料について単一線(一重線)として列挙した回折データは、結晶子サイズの差または非常に高い実験解像度または結晶学的変化など、特定の条件下では、分離したまたは部分的に分離した線のように見える可能性のある複数の重複線からなり得ることが理解されるべきである。典型的には、結晶学的変化は、構造の位相(トポロジー)の変化なしに、単位格子パラメータの微小変化および/または結晶対称の変化を含むことができる。また、これらの微小効果は、相対強度の変化を含み、カチオン含有率、骨格(フレームワーク)組成、細孔(ポア)充填の特質および程度、ならびに熱および/または熱水履歴の差の結果として現れることができる。
【0038】
本発明の方法に従って製造された結晶性材料ZSM−12は、モルに関連した組成:
:(n)YO
(式中、Xは、アルミニウム、ホウ素、鉄、インジウムおよび/またはガリウム、好ましくはアルミニウムなどの三価の原子であり;Yは、ケイ素、スズおよび/またはゲルマニウム、好ましくはケイ素などの四価の元素であり;nは、約80〜約300、好ましくは約150〜約250である)
を有する。本発明の結晶性材料は、その合成された状態の形態では、以下の式:
(0.01〜2)MO:(0.01〜2)RO:X:(n)YO
(式中、Mはアルカリまたはアルカリ土類金属であり、好ましくはナトリウムであり、Rはテトラエチルアンモニウムカチオンである)
を有し、この式は、無水を基準とするものであり、nモルのYOに対する各酸化物のモル数を示す。MおよびR成分は、結晶化中にそれらが存在する結果として本材料に付随し、上記のポスト結晶化法によって容易に除去される。
【0039】
本明細書に記載される結晶性ZSM−12は、吸着剤として、あるいは有機化合物転化プロセスにおける触媒として用いられる場合、少なくとも部分的に脱水されるべきである。脱水は、空気または窒素などの雰囲気中、かつ大気圧あるいは大気圧より低い圧力または大気圧を超える圧力で30分〜48時間で、200℃〜約370℃の範囲の温度に加熱することによって実施することができる。また、脱水は、ZSM−12をただ真空中(減圧下)に置くことによって、室温で行うこともできるが、より長い時間が十分な量の脱水を得るために必要とされる。
【0040】
本発明に従って製造された合成ZSM−12結晶は、合成されたままの形態、水素形態または別の一価もしくは多価のカチオンの形態のいずれかで使用することができる。また、合成ZSM−12結晶は、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガンあるいは白金もしくはパラジウムなどの貴金属などの水素化成分と、均質に組み合わせて使用することができ、その場合には水素化−脱水素化機能が奏されるべきである。このような成分は、組成物中へと変換されるか、あるいはその中に含浸させるか、またはそれと物理的に均質に混ぜ合わせることができる。このような成分は、ZSM−12中にまたはZSM−12上に含浸させることができ、たとえば、白金の場合、本材料を白金金属含有イオンで処理することなどで含浸させることができる。この目的に好適な白金化合物としては、クロロ白金酸、塩化第一白金、ならびに白金アミン錯体を含有する様々な化合物が挙げられる。また、金属の組み合わせ、および金属を導入する方法を用いることもできる。
【0041】
触媒として使用する場合、本発明のZSM−12を、耐熱性があり、かつある種の有機転化プロセスにおいて用いられるその他の条件に耐える別の材料と組み合わせることが望ましい場合もある。このようなマトリックス材料としては、活性および不活性材料、合成もしくは天然起源ゼオライト、ならびに、粘土、シリカおよび/または金属酸化物(たとえば、アルミナ、チタニアおよび/またはジルコニア)などの無機材料が挙げられる。無機材料は、天然起源のもの、シリカと金属酸化物との混合物を含む、ゼラチン状の沈澱物の形態、ゾルもしくはゲルの形態のいずれであってもよい。ZSM−12と併用した、すなわちそれと組み合わせた、活性である材料の使用は、特定の有機転化プロセスにおいて、転化率および/または触媒の選択性を高め得る。不活性材料は、好適には、希釈剤として役立ち、所定のプロセスにおいて、転化の量(コンバージョンの量)を制御し、その結果、反応の速度(速度または反応)を制御するその他の手段を用いることなく、生成物を経済的かつ規則的に得ることができるようになる。よくあることだが、結晶性触媒材料は、天然起源粘土(例えば、ベントナイトおよびカオリン)に配合されている。これらの材料、すなわち、粘土、酸化物などは、触媒用のバインダーとして、一部、機能する。良好な破砕強度を有する触媒を提供することが望ましい。それは、石油精製において、触媒は、多くの場合、手荒い取り扱いを受けるので、それにより触媒が粉末状物質へと破砕され、処理中に問題を引き起こす傾向があるからである。
【0042】
本発明によって合成される結晶性材料と複合化することができる天然起源粘土としては、モンモリロナイトおよびカオリン族(サブベントナイトを含む)が挙げられる。カオリンは、Dixie、McNamee、GeorgiaおよびFlorida粘土として一般に知られている。あるいは、主鉱物成分がハロイサイト、カロリナイト、ディッカイト、ナクライトもしくはアナウキサイトであるその他の粘土が挙げられる。このような粘土は、元々採掘されたままの未加工の状態で使用するか、あるいは、最初に焼成するか、酸処理もしくは化学変性に付して使用することができる。
【0043】
前述の材料に加えて、本発明の結晶は、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、アルミナ−チタニア、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、ならびにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシアおよびシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの三元組成物などの多孔質マトリックス材料と複合化することができる。マトリックスはコゲル(cogel)の形態であってもよい。また、これらの成分の混合物を使用してもよい。
【0044】
ZSM−12とマトリックスとの相対割合は幅広く変動し、このときZSM−12の含有率は、複合材料の約1〜約90重量パーセントの範囲、より通常は約2〜約50重量パーセントの範囲である。
【0045】
本発明の方法によって製造されるアルミノシリケートZSM−12は、有機化合物、特に炭化水素の転化反応の触媒として有用である。なお、この転化反応では、高い活性が重要である。特に、白金、パラジウムまたはレニウムなどの水素化成分と組み合わせる場合、ZSM−12は、単独、あるいはトルエンおよび/またはベンゼンの存在下のいずれかで、キシレンを生成するC+アルキル芳香族炭化水素の触媒転化に有用である。このような転化は、典型的には、約650〜約950°F(340〜510℃)、好ましくは約750〜約850°F(400〜450℃)の温度、約100〜約600psig(790〜4240kPa)、好ましくは約200〜約500psig(1480〜3550kPa)の圧力、約0.1〜約200時間−1、好ましくは約0.5〜約20時間−1の重量空間速度(WHSV)、および約1〜約5、好ましくは約1〜約3の水素(H):対炭化水素(HC)のモル比で達成される。
【0046】
本明細書中に記載されるZSM−12をC+アルキル芳香族炭化水素の触媒転化に使用する場合、ZSM−12は、3〜12の拘束係数(constraint index)を有する第2のモレキュラーシーブ、例えばZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57およびZSM−58などと組み合わせて使用してもよい。ZSM−12および第2のモレキュラーシーブは、別々の触媒床に配置されてもよく、供給物(フィード)は、ZSM−12を含む触媒床から、第2のモレキュラーシーブを含有する床へと移す。あるいは、ZSM−12および第2のモレキュラーシーブは、1つの触媒床中で組み合わせることができる。
【実施例】
【0047】
本発明の特性および本発明を実施する方法をより十分に例示するために、以下の実施例が提示される。
【0048】
実施例において、および本明細書の全体にわたって、多孔度(porosity)の値は、Omnisorp Dynamic Physisorption Characterizationシステムを用いるアルゴン物理吸着によって測定した。約200〜250mgの「受け取ったままの」試料をきれいな試料セル(風袋重量は控除した)に入れ、1×10−5トルの減圧下で16時間乾燥し、再秤量して乾燥質量を測定し、分析に用いた。分析は、液体アルゴンの沸点(−87°K)で0.20cc/分のアルゴン流量で動的に行った。アルゴンを流し(アルゴンの1気圧飽和圧力の99.5%以内)、次いで、吸着されたアルゴンを減圧除去(約280トル(37kPa)の圧力)することによって、完全等温線を作成した。古典的なBETモデルを用いて全表面積を計算した。アルゴンの膜厚を用いたt−プロットモデルを用いて、試料のマイクロポア体積および外部表面積を計算した。BJH脱着モデルを用いて、メソポアサイズ分布および大凡の平均メソポアサイズを出した。
【0049】
実施例1
以下のモル組成を有する混合物を、水、TEAOH(35%水溶液)、NaOH(50%水溶液)、アルミン酸ナトリウム(45%水溶液)、およびUltrasilシリカから調製した:
SiO/Al 約250
O/SiO =14
OH/SiO =0.205
Na/SiO =0.075
TEA/SiO =0.13
【0050】
この混合物を、5ガロンオートクレーブ中で250RPMで撹拌しながら320°F(160℃)で36時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。この合成されたままの材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な単一層(pure phase)を示した。この合成されたままの材料のSEM(図1(b))は、この材料が、より密に充填された0.05ミクロン未満の平均結晶サイズの小さな結晶の凝集塊から成ることを示す。アルゴン物理吸着は、生じたH(水素)型の生成物が、全表面積の約17.5%の外部表面積および約22Åのメソポア半径を有することを示す(図1(a)を参照されたい)。
【0051】
実施例2
以下のモル組成を有する混合物を、水、TEAOH(35%水溶液)、NaOH(50%水溶液)、アルミン酸ナトリウム(45%水溶液)、およびUltrasilシリカから調製した:
SiO/Al 約250
O/SiO =14
OH/SiO 約0.24
Na/SiO =0.125
TEA/SiO =0.13
【0052】
この混合物を、5ガロンオートクレーブ中で250RPMで撹拌しながら320°F(160℃)で36時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。この合成されたままの材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な単一層を示した。この合成されたままの材料のSEMは、この材料が、あまり密に充填されていない0.05ミクロン未満の平均結晶サイズの小さらな結晶の凝集塊から成ることを示す。アルゴン物理吸着は、生じたH(水素)型の生成物が、実施例1の生成物と比べて、約19.5%(全表面積に対して)の増加した外部表面積および約28Åのさらに大きな(中程度の)メソポア半径を示すことを実証する。
【0053】
実施例3
以下のモル組成を有する混合物を、水、TEAOH(35%水溶液)、NaOH(50%水溶液)、アルミン酸ナトリウム(45%水溶液)、およびUltrasilシリカから調製した:
SiO/Al 約250
O/SiO 約13.8
OH/SiO 約0.20
Na/SiO =0.147
TEA/SiO =0.13
【0054】
この混合物を、5ガロンオートクレーブ中で250RPMで撹拌しながら320°F(160℃)で36時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。この合成されたままの材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な単一相を示した。この合成されたままの材料のSEM(図2(b))は、この材料が、あまり密に充填されていない0.05ミクロン未満の平均結晶サイズの小さな結晶の凝集塊から成ることを示す。アルゴン物理吸着は、生じたH(水素)型の生成物が、実施例2の生成物と比べて、約20%(全表面積に対して)の外部表面積および約32Åの増加した中程度のメソポア半径を示すことを実証する(図2(a))。
【0055】
実施例4
以下のモル組成を有する混合物を、水、TEAOH(35%水溶液)、NaOH(50%水溶液)、アルミン酸ナトリウム(45%水溶液)、およびUltrasilシリカから調製した:
SiO/Al 約250
O/SiO 約13.8
OH/SiO 約0.20
Na/SiO 約0.15
TEA/SiO =0.13
【0056】
この混合物を、5ガロンオートクレーブ中で250RPMで撹拌しながら320°F(160℃)で36時間反応させた。この生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。この合成されたままの材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な単一相を示した。この合成されたままの材料のSEM(図3(b))は、この材料が、密に充填されていない0.05ミクロン未満の平均結晶サイズの小さな結晶の凝集塊から成ることを示す。アルゴン物理吸着は、生じたH(水素)型の生成物が、実施例2の生成物と比べて、約20%(全表面積に対して)の外部表面積および約32Å(図3(a))の増加した中程度のメソポア半径示すことを実証する。
【0057】
実施例5
以下のモル組成を有する混合物を、水、TEAOH(35%水溶液)、NaOH(50%水溶液)、アルミン酸ナトリウム(45%水溶液)、およびUltrasilシリカから調製した:
SiO/Al 約250
O/SiO 約13.8
OH/SiO 約0.20
Na/SiO 約0.15
TEA/SiO =0.13
【0058】
この混合物を、5ガロンオートクレーブ中で250RPMで撹拌しながら300°F(150℃)で36時間反応させた。生成物を濾過し、脱イオン(DI)水で洗浄し、250°F(120℃)で乾燥させた。この合成されたままの材料のXRDパターンは、ZSM−12トポロジーの典型的な単一相を示した。この合成されたままの材料のSEM(図4(b))は、この材料が、さらに密に充填されていない0.05ミクロン未満の平均結晶サイズの小さな結晶の凝集塊から成ることを示す。アルゴン物理吸着は、生じたH(水素)型の生成物が、実施例3の生成物と比べて、約20%(全表面積に対して)の外部表面積および約39Å(図4(a))の増加した中程度のメソポア半径を示すことを実証する。
【0059】
本発明は、特定の実施形態を参照することにより記載され、例示されてきたが、当業者は、本発明が本明細書中に必ずしも例示されていないバリエーションと結び付くことを十分理解するであろう。そのため、本発明の真の範囲を決定するという目的のためには、添付の特許請求の範囲が専ら参照されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:(n)YO:X
(式中、Xが三価の元素であり、Yが四価の元素であり、nが約80〜約250である)
のZSM−12の骨格構造を有する多孔質の結晶性材料の製造方法であり、以下の工程
(a) 前記結晶性材料を形成することのできる混合物を調製する工程であり、前記混合物が、アルカリまたはアルカリ土類金属(M)の供給源、三価の元素(X)の酸化物、四価の元素(Y)の酸化物、ヒドロキシルイオン(OH)、水およびテトラエチルアンモニウムカチオン(R)を含み、前記混合物が、モル比で、
YO/X=100〜300;
O/YO=5〜15;
OH/YO=0.10〜0.30;
M/YO=0.05〜0.30;および
R/YO=0.10〜0.20
の範囲内の組成を有する、工程、
(b) 前記混合物を少なくとも300°F(149℃)の温度で反応させて前記材料の結晶を形成する工程、および
(c) 50時間未満の時間が経過した後に前記工程(b)を終了し、前記結晶性材料を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記温度が300°F(149℃)〜330°F(166℃)であり、好ましくは約320°F(160℃)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
約40時間以下の時間、好ましくは30時間〜40時間が経過した後に前記工程(b)を終了する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記HO/YOのモル比が10〜14である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記M/YOのモル比が0.1〜0.2である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記M/YOのモル比が0.13以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記R/YOのモル比が0.1〜0.15である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記M/YOのモル比が0.1以下であり、前記温度が少なくとも320°F(160℃)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶性材料が、アルゴン物理吸着で測定した約15Å〜25Åのメジアンメソポア半径を有する密充填ZSM−12結晶の凝集塊を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記密充填ZSM−12結晶の凝集塊が、その全表面積の約10〜約20%の外部表面積を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記M/YOのモル比が0.1より大きく、前記温度が320°F(160℃)未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記結晶性材料が、アルゴン物理吸着で測定した約25Å〜45Åのメジアンメソポア半径を有する緩充填ZSM−12結晶の凝集塊を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記緩充填ZSM−12結晶の凝集塊が、その全表面積の20%より大きい外部表面積を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Xがアルミニウムを含み、Yがケイ素を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法によって製造されるZSM−12の骨格構造を有する多孔質の結晶性材料。
【請求項16】
+芳香族炭化水素をキシレンに転化するための方法であり、少なくとも1つのC+芳香族炭化水素を含む供給物と、請求項15に記載の多孔質の結晶性材料を含む触媒とを転化条件下で接触させる工程を含む方法。

【図1a】
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【図2a】
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【図3a】
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【図4a】
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【図1b】
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【図2b】
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【図3b】
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【図4b】
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【公表番号】特表2013−501697(P2013−501697A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523943(P2012−523943)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/044527
【国際公開番号】WO2011/017506
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】