説明

hPS細胞由来の胚体内胚葉からの特定の内胚葉の派生

本発明は、ヒト線維芽細胞由来幹(hBS)細胞を含むヒト多能性幹細胞の分化を制御し、特定の内胚葉細胞を得るための方法に関する。特に、本発明は、hPS細胞由来の胚体内胚葉細胞の分化を特定の内胚葉細胞に向けて制御するための特定濃度でのキーとなる因子としてのFGF2の使用に関する。本発明は、FGFRの使用およびMAPKシグナル伝達経路の活性化を含む内胚葉細胞を得る方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト胚盤胞由来幹(hBS)細胞を含むヒト多能性幹細胞の分化を制御し、特定の内胚葉細胞を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前腸派生物である膵臓、肺、甲状腺、肝臓、食道、および胃は、原腸陥入中に形成される3種の胚層のうちの1つである胚体内胚葉から生じる。特定の転写因子は胚体内胚葉の前後軸(A-P軸)に沿って特定の形で発現され、胚体内胚葉は最終的には原腸管を形成する。フォークヘッドボックスA1(FOXA1)およびFOXA2は両方とも全腸管内で発現され、したがってすべての胃腸管由来器官の発生にとって重要である(Angら、1993年)。前腸内胚葉の前部では、肺および甲状腺になる定めである領域は、NK2ホメオボックス1(NKX2.1)を発現し、肝臓は造血組織発現ホメオボックス(HHEX1)を発現する領域から発生する。膵臓および十二指腸は、膵臓十二指腸ホメオボックス1(PDX-1)を発現する前腸内胚葉の後部から生じる。腸内胚葉の後部は中腸および後腸に成長して尾部型ホメオボックス1(CDX1)およびCDX2を発現する小腸と大腸になる。
【0003】
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーは、細胞移動、増殖および分化などの発生の多くの局面を制御している。様々な親和性で異なるFGFリガンドに結合する少なくとも4種の異なるチロシンキナーゼ受容体(FGFR1〜FGFR4)が存在する。さらに、FGFR1〜FGFR3の交互スプライシングにより、別々の発現パターンおよびリガンド特異性を有する「lllb」および「lllc」アイソフォームが生じる。FGFシグナル伝達は、A-P軸に沿った腸管のパターン形成および膵臓分化中のパターン形成に関係づけられている。
【0004】
マウスおよびニワトリ胚移植に関する先行研究により、FGF1およびFGF2は心臓中胚葉により分泌されることおよび心臓中胚葉はこれらの因子の外因的添加により取って代わられ得ることが確証されている。初期胚発生中、腹側内胚葉は心臓中胚葉に隣接しており、背側内胚葉は脊索に接触している。心臓中胚葉は肝臓および肺の発生に必要とされる。具体的には、FGF2は濃度依存の形で多能性腹側前腸内胚葉を肝臓および肺にパターン形成し、心臓中胚葉およびFGFの不在は膵臓運命を促進する。FGF2の存在は腹側膵発生に絶対に必要とされるわけではないが、背側膵形成中の誘導性役割が実証されている。背側内胚葉は最初はアクチビンβBおよびFGF2を分泌する脊索に接触しており、その結果、Pdx1発現および背側膵発生に必要とされるShh発現が阻害される。さらに、FGF2のレベルが低いと、培養ニワトリ背側内胚葉においてPdx1発現が誘導される。さらに、FGF2は、発生中の膵臓において膵臓上皮細胞の増殖に誘導効果も有すると提唱されており、成体マウスベータ細胞において他のFGFと一緒に発現される。
【0005】
I型糖尿病罹患率の増大および屍体ドナー膵島の不足によって、ヒト胚盤胞幹細胞(hBS細胞)の分化をインスリン産生ベータ細胞へ方向付けるためのプロトコールの開発に大きな関心が生じている。膵臓内胚葉およびインスリン発現細胞へ向かうES細胞の細胞運命特定化の分子機構をさらによく理解するためには、精巧な培養条件が必要とされる。hPS細胞からのインスリン産生細胞のインビトロ派生を報告するいくつかの分化プロトコールが発表されているが、これらのうち、分化過程において用いられる個々の増殖因子の特定の役割を記載している、または根底にある分子機構を考察しているものはない。さらに、これらのインスリン発現細胞が本物のベータ細胞を表しているのかどうかは明白ではない。hPS細胞由来胚体内胚葉のPDX1陽性ベータ細胞前駆体への変換を理解しようと試みて、我々はFGF2の役割を調べた。
【0006】
我々の結果は、外因性FGF2の不在下において、胚体内胚葉は肝細胞および腸様細胞により特徴付けられる前腸および中腸内胚葉に分化することを示す。重要なのは、外因的に添加されたFGF2はhPS細胞由来胚体内胚葉を用量依存の形でパターン形成することである。具体的には、肝臓、膵臓、腸および前方前腸前駆体は、異なるFGF2濃度に応答して生み出される。さらに、増殖因子を段階的に添加すれば、膵臓特定化を調節する分子プログラムをさらに詳細に吟味することが可能になり、膵臓前駆体/PDX1発現の誘導は、MAPKシグナル伝達経路のFGF2媒介活性化に依存していることが示された。これは、初めて、hPS細胞由来膵臓内胚葉の分化にFGF2のみを関係づけるものであり、これの前には、膵臓内胚葉を派生させる方法は、レチン酸エステルとFGFメンバーなどの増殖因子の組合せの存在下で(国際公開第07/127927号参照)、またはB27などの追加の培地補足物と一緒のこれらの増殖因子の存在下で(国際公開第09/012428号)細胞を培養することに依拠していた。したがって、ここに示されるデータは、hPS細胞を前方および後方内胚葉派生物である肺、食道、胃、肝臓、膵臓および腸へ向けて誘導するための新規の再現性のあるプロトコールを開発するために役立つことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第07/127927号
【特許文献2】国際公開第09/012428号
【特許文献3】国際公開第03/055992号
【特許文献4】国際公開第2007/042225号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yuら、(2007) Science 318:5858頁
【非特許文献2】Takahashiら、(2007) Cell 131 (5):861頁
【非特許文献3】Cellartis、Gothenburg、www.cellartis.com
【非特許文献4】http://mcb.harvard.edu/melton/hues/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、hPS細胞の膵臓への分化に関する現在の知識は、主に、ニワトリ、マウスおよび程度に制限はあるがヒト細胞に関する研究を含む。hPS細胞分化プロトコールが報告されているが、そのインスリン含有量が低く生理学的グルコース媒介インスリン放出が不足しているせいで、これらのインスリン発現細胞が本物のベータ細胞を表しているのかどうかは明白ではない。これらのプロトコールは増殖因子組成、濃度および添加の時期が相異するという事実は、細胞分化を制御する方法を提供するためにこの分化過程における個々の増殖因子の特定の役割および作用様式を正確に定義する必要性が存在することを示唆している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、hPS細胞由来の胚体内胚葉細胞の特定の内胚葉細胞への分化を制御する特定濃度でのキーとなる因子としてのFGF2の使用に関する。
【0011】
本発明は、FGFRの使用およびMAPKシグナル伝達経路の活性化を含む内胚葉細胞を得る方法も提供する。
【0012】
図1Aに模式的に描かれているように、分化手順は、分化を胚体内胚葉に向けて方向付ける第1段階と、特定の内胚葉に向けての追加の分化を方向付ける第2段階との2段階などの、1つまたは複数の段階を含み得る。
【0013】
第1段階は、胚体内胚葉への分化を促進するが、図1Aに模式的に描かれ実施例2において例示されているように、第1段階中に変更される異なる増殖培地組成物を含み得る。
【0014】
本発明は、優先的に、胚体内胚葉細胞から始まる第2段階に関する。分化を特定の内胚葉細胞に方向付けるためには、増殖および生存能力を確保するのにいくつかの条件が必要である。さらに、分化を制御するのに増殖因子としてキーとなる成分が必要である。
【0015】
本発明では、胚体内胚葉細胞の分化は、胚体内胚葉細胞を異なった濃度の線維芽細胞増殖因子のFGF2に晒すことにより、ある種の特定の内胚葉細胞に方向付けられる。FGF2の濃度が低ければ、肝臓内胚葉細胞に、FGF2の濃度が中程度であれば膵臓内胚葉細胞に、FGF2濃度が比較的高ければ腸および/もしくは肺内胚葉細胞またはその混合物になる。FGF2の濃度は培地中の濃度であり、0.1〜500ng/mlの範囲である。
【0016】
分化を肝臓細胞運命に向けて導くために、FGF2を、0.1〜16ng/mlまたは0.1〜10ng/mlの範囲で培地に添加してよい。これにより、AFPを発現する肝臓内胚葉細胞が生成され、FOXA2、アルブミン(ALB)、HNF4A、HNF6(ONECUT1)、Prox1、CK17、CK19、Hex、FABp1、AAT、Cyp7A1、Cyp3A4、Cyp3A7およびCyp2B6から選択される1つまたは複数のマーカーが肝臓内胚葉細胞において発現される。一般に、肝臓内胚葉細胞は以下のマーカー:AFP、ALB、HNF6、およびHNF4Aならびに/またはAFP、HNF4A、Prox1を発現する。本発明の一態様では、FGF2の濃度は、5ng/mlなどの4ng/ml〜6ng/mlの範囲であり、特定の内胚葉細胞は肝臓内胚葉細胞である。
【0017】
通常、肝臓内胚葉細胞はAFPを発現し、上記マーカーのうちの少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、またはすべてが得られた肝臓内胚葉細胞により発現される。
【0018】
本明細書で開示されるように、胚体内胚葉細胞を低濃度のFGF2(0.1〜16ng/ml)に晒すことにより得られる肝臓内胚葉細胞は、AFP、ALB、ONECUT1、HNF4Aを発現する。
【0019】
形態学的研究に基づいて、肝細胞様細胞が、アクチビンAのみを用いてまたは4ng/mlなどの低FGF2濃度で処置された培養物において明白に観察されたが、これらの細胞は、16〜256ng/mlなどのさらに高いFGF2濃度では見られなかった。さらに、FGF2濃度が増加するに従って、コロニーはより密になり、厚いクラスターが現れた。
【0020】
図1B)で示されるように、アルブミン(ALB)発現細胞の量はFGF2濃度が増加するに従って、減少する。さらに、抗体染色により(示されていない)、ALBとAFPの一貫した同時発現が明らかにされた。肝細胞関連マーカーのALB、HNF4AおよびONECUTは、アクチビンAのみを用いて処置された参照試料と比べると、FGF濃度が増加するに従って下方調節される。したがって、本発明の一態様は、hPS細胞の分化を肝臓細胞運命に向けて制御する(すなわち、促進するまたは阻害する)ためのFGF2の使用に関する。
【0021】
DE細胞の分化を膵臓内胚葉に向けて導くために、FGF2は、64ng/mlなどの16〜150ng/mlの範囲で培地に添加されると、膵臓内胚葉細胞の形成を刺激する。得られた膵臓内胚葉細胞は、PDX-1ならびに以下のマーカーNGN3、CPA1、SOX9、HNF6、HNF1b、E-カドヘリン、MNX1、PTF1AおよびNKX6-1のうちの1つまたは複数を発現する。一般に、膵臓内胚葉細胞は、PDX1および上記マーカーのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つまたはすべてを発現する。
【0022】
本明細書の実施例からわかるように、得られる膵臓内胚葉細胞は、PDX1およびNKX6-1ならびに/またはPDX1、SOX9、ONECUT1およびFOXA2を発現する。
【0023】
さらに、膵臓内胚葉細胞は、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチドおよびグレリンからなる群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する。
【0024】
胚体内胚葉細胞の分化を腸および/または肺内胚葉に向けて導くために、FGF2は150〜500ng/mlの範囲で培地に添加される。
【0025】
得られる腸内胚葉細胞は、CDX2ならびに以下のマーカーCDX1、FOXA2、PITX2、FABp2、TCF4、ビリンおよびMNX1のうちの1つまたは複数を発現する。一般に、得られる腸内胚葉細胞は、CDX1および上記マーカーのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つまたはすべてを発現する。本明細書の実施例から、得られる腸内胚葉細胞はCDX1、CDX2およびMNX1を発現することが明らかにされている。
【0026】
得られる肺内胚葉細胞は、以下のマーカーNKX2-1、SHH、PTCH1、FGF10およびSPRY2のうちの1つまたは複数を発現する。一般には、得られる肺内胚葉細胞は、上記マーカーのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つまたはすべてを発現する。
【0027】
得られる前方前腸内胚葉細胞はSOX2を発現する。
【0028】
FGF2が150〜500ng/mlの濃度で使用される場合、この範囲の低いほうの端の濃度を使用すると腸内胚葉細胞が優勢に得られ、この範囲の高いほうの端の濃度を使用すると肺内胚葉細胞が優勢に得られると考えられる。腸と肺内胚葉細胞の混合物も得ることができる。
【0029】
特定の内胚葉細胞を得るための出発原料は胚体内胚葉細胞である。胚体内胚葉細胞は、hPS細胞を適切なプロトコールに供することにより得ることが可能であり(たとえば、図1A最初の2つの欄もしくは実施例2参照)、または胚体内胚葉は、iPS細胞もしくは胚体内胚葉に分化する潜在能力を示す細胞などの他の種類の多能性細胞系統により得ることができる。
【0030】
胚体内胚葉細胞は、以下のマーカーSOX17、FOXA2、CXCR4の発現およびマーカーSOX7の下方調節により特徴付けられる。
【0031】
さらに具体的には、胚体内胚葉細胞はSOX17とCXCR4をタンパク質レベルで同時発現し、ケルベロス、Foxa2、GSC、HHEXの遺伝子発現を示す。Oct-4は、アクチビンA処置試料においては3日目に下方調節されている(実施例3参照)。
【0032】
特定の内胚葉細胞へ胚体内胚葉細胞の発生(上参照)を方向付けるために、胚体内胚葉細胞は、上記選択された濃度のFGF2の存在下で適切な培地において培養することに供せられる。さらに多くの詳細な点は本明細書の実施例に与えられている。手短に言えば、胚体内胚葉細胞の分化は、8〜12日間などの最長20日間FGFを含有する適切な培地(たとえば、KO-DMEM培地)において細胞を培養することにより誘導され、培地は抗生物質(たとえば、ペニシリン-ストレプトマイシンを、たとえば1%の濃度で)、培地に通常存在する1つもしくは複数の栄養素または他の物質(たとえば、1%のGlutamax、1%非必須アミノ酸、0.1mMベータメルカプトエタノール)およびノックアウト血清代替物(たとえば、12%などの10〜15%)を含有していてもよい。培地は、新鮮におよび長時間一様な濃度レベルで保たれる。
【0033】
本発明の重要な態様は、幹細胞分化の正確で簡単な誘導を可能にするが、FGF2単独で膵臓特異的遺伝子の誘導に十分であるという所見である。
【0034】
図2に例示されるように、PDX1、SOX9およびNGN3は、4ng/ml FGF2のみを用いて処置された場合のPDX1を除いて、FGF2処置試料のすべてにおいて上方調節されており、このことは対照試料と比べても無変化のままである。64ng/ml FGF2を用いて処置されると、NGN3は上方調節されたが、32ng/ml FGF2および256ng/ml FGF2よりも上方調節の程度は低く、おそらく、PDX1/NKX6-1とNGN3の発現間の負の相関関係を示しており、または、おそらく、より高レベルのNGN3を発現している細胞よりも64ng/ml FGF2でPDX1/NKX6-1陽性細胞のほうが豊富に存在することを示していた。NKX6-1とPDX1の両方が、FGF2が64ng/ml周辺濃度で添加されている試料においてピーク発現を示している。これらの観察結果は、一致するパターンを示している64ng/ml FGF2でのPDX1陽性コロニーの免疫蛍光染色によりさらに支持されている。さらに、PDX1陽性細胞はすべてSOX9、ONECUT1およびFOX2A陽性であり、大多数のPDX1陽性細胞は腸マーカーCDX2および増殖マーカーPH-3に対しては陰性であることは明らかである。PDX1とNKX6-1の両方を発現している一部の細胞は、PDX1陽性コロニー内で見出され得る。
【0035】
DE細胞の特殊化した内胚葉細胞への効率的な分化を可能にするために、異なる濃度のFGF2がDE細胞に添加される。FGF2濃度に応答した転写変化を明らかにするために、RNA解析により発現パターンがモニターされる。図3に描かれているその結果から、NKX2-1、SHH、PTCH1、SPRY2およびFGF10を含む肺関連マーカーならびに小腸マーカーCDX2およびMNX1はすべて、256ng/ml FGF2で明確な上方調節およびピーク発現を示しているために、FGF2が分化を方向付けていることが明白に示されている。CDX2とは反対に、小腸マーカーCDX1は試験された範囲ではFGF2レベルの影響を受けないままである。
【0036】
256ng/ml FGF2でのPDX1陽性集団の補助的免疫蛍光研究により、PDX1陽性細胞はすべてSOX9およびONECUT1陽性であり、僅かなPDX1陽性細胞のみがCDX2陽性であったことがさらに明らかにされている。PDX1陽性細胞はどれもNKX6-1もSOX2も同時発現しなかった。さらに、SOX2陽性細胞はCDX2陰性であった。
【0037】
さらに、免疫蛍光二重染色により、CDX2陽性細胞のほぼすべてが、256ng/ml FGF2で増殖されるとFOXA2を同時発現し、MK67を発現するCDX2陽性細胞はごくわずかであることが明らかにされている。
【0038】
図4Aに描かれているように、FGF2は、FGFR(FGF受容体)遺伝子の転写に用量依存の形で影響を及ぼす。図4Aから明らかなように、FGFR1およびFGFR3はFGF2濃度が増加するのに応答して上方調節され、FGFR2およびFGFR4は正反対の機構を示し、FGF2レベルの増加の結果として転写レベルが減少する。
【0039】
本発明は、i)肝臓内胚葉細胞を調製するための方法であって、0.1〜16ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日間または9〜12日間などの約6〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法、ii)そのような方法により入手可能な肝臓内胚葉細胞、およびiii)そのような方法により得られ、本明細書で定義される特徴を有する肝臓内胚葉細胞も提供する。
【0040】
さらに、本発明は、i)膵臓内胚葉細胞を調製するための方法であって、16〜150ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日間などの約2〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法、ii)そのような方法により入手可能な膵臓内胚葉細胞、およびiii)そのような方法により得られ、本明細書で定義される特徴を有する膵臓内胚葉細胞も提供する。
【0041】
さらに、本発明は、i)腸および/または肺内胚葉細胞を調製するための方法であって、150〜500ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日間などの約6〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法、ii)そのような方法により入手可能な腸および/または肺内胚葉細胞、ならびにiii)そのような方法により得られ、本明細書で定義される特徴を有する腸および/または肺内胚葉細胞も提供する。
【0042】
肝臓、膵臓または腸内胚葉細胞を調製するための方法はFGFRを誘導する段階を含み、特にFGFRはFGFR1、FGFR2、FGFR3および/またはFGFR4であると仮定されている。
【0043】
FGFRは、胚体内胚葉細胞の培養物にFGFを添加することにより誘導される。適切なFGFは、FGF2単独から選択されてもよいし、以下の:FGF4、FGF7およびFGF10ならびにその任意の組合せから選択される第2のFGFと組み合わせてもよい。本発明者らにより実施された実験によれば、FGF4、FGF7またはFGF10のどれも、FGF2の代わりに単独で使用された場合は、hPS由来胚体内胚葉の分化をPDX-1陽性膵臓内胚葉へ向けて誘導することはできないことが明らかにされている。図4BおよびCに記載されるように、MAPKシグナル伝達経路はFGFR-誘導により活性化されると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】特定の内胚葉に向けた2段階分化手順の模式図である。分化プロトコールは2段階に分けられ;第1段階は分化を胚体内胚葉に方向付け、第2段階は分化を特定化された内胚葉に方向付ける。
【図1B】肝細胞関連マーカーALB、HNF4AおよびONECUT1はすべて、アクチビンAのみを用いて処置された対照試料と比べて、FGF2濃度(ng/ml)が増加するに従って下方調節されたことを示す図である。HHEXも前方前腸内胚葉において発現されるとき、HHEXは最高FGF2濃度256ng/mlではその他の肝臓マーカーと同じ程度には下方調節されなかった。試料は11日目にリアルタイムPCR解析のために採取された。データは、平均発現+/-SEM(n=4)として示されている。グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図2A】FGF2は膵臓特異的遺伝子の誘導に十分であることを示す図である。PDX1、SOX9およびNGN3は、4ng/ml FGF2のみを用いて処置された場合のPDX1を除いて、FGF2処置試料のすべてにおいて上方調節され、このことは対照試料と比べて無変化のままであった。64ng/mlを用いて処置された場合、NGN3は上方調節されたが、32ng/mlおよび256ng/mlよりも上方調節された程度は低く、おそらくPDX1/NKX6-1とNGN3の発現間の負の相関関係を示している、またはおそらく、PDX1/NKX6-1陽性細胞のほうが、より高レベルのNGN3を発現している細胞よりも64ng/ml FGF2において豊富に存在することを示している。NKX6-1は、64ng/mlのみで上方調節された。PDX1とNKX6-1の両方は、64ng/mlにおいてピーク発現を有していた。FOXA2およびCPA1は、試料のすべてにおいて検出され、無変化のままであった。試料は11日目にリアルタイムPCR解析のために採取された。データは、平均発現+/-SEM(n=4)として示されている。グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図2B】異なったFGF2濃度で処置されたhPS細胞の定量化されたPDX1免疫蛍光染色を示す図である。アクチビンAのみまたは4ng/ml FGF2で処置された培養物中にPDX1陽性細胞は不在であり、32、64および256ng/ml FGF2で処置された培養物中にはPDX1陽性細胞は常に存在している。64ng/mlでは最も高い百分率のPDX1陽性細胞が観察された。これは、顕微鏡検査と、図2B)におけるバーにより定量化されるImaris Imagingソフトウェアの使用との両方によって評価された。データは、平均+SEM(n=7〜10)として表されている。以下のP値が得られた:対照対32ng/ml(P<0.01)、対照対64ng/ml(P<0.001)、対照対256ng/ml(P<0.001)、32ng/ml対64ng/ml(P<0.001)、32ng/ml対256ng/ml(P<0.01)および64ng/ml対256ng/ml(P<0.01)。P<0.05は有意であると見なされた。
【図3】肺および腸特異的マーカーのRNA解析を示す図である。前方前腸特異的マーカーSOX2は、256ng/mlで著しく上方調節されおり、NKX2-1、SHH、PTCH1、SPRY2およびFGF10などの肺関連マーカーはすべて256ng/mlでピーク発現を有していた。 小腸マーカーCDX1は影響を受けないままであったが、しかし小腸のもう1つのマーカーであるCDX2およびMNX1は両方とも256ng/mlで上方調節された。試料は11日目にリアルタイムPCR解析のために採取された。データは、平均発現+/-SEM(n=4)として示されている。 グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図4A】11日目のFGF受容体発現を示す図である。FGFR1およびFGFR3発現は、FGF2濃度が高くなるに従って上方調節され、同時にFGFR2およびFGFR4は下方調節された。リアルタイムPCR解析用の試料はすべて11日目に採取された。データは、平均発現+/-SEM、n=3〜4として示されている。グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図4B】FGF2により活性化される細胞内シグナル伝達経路、および赤色で示されるその対応する阻害因子の模式図である。
【図4C】FGFシグナル伝達が阻害されると、インビトロでのPDX1発現は減少したを示す図である。FGFシグナル伝達をSU5402(10μM)またはMAPK阻害因子U1026(10μM)を用いてアンタゴナイズすると、PDX1発現は著しく減少し、PI3K阻害因子LY294002(12.5μM)を用いて処置すると、PDX1発現に著しい効果を及ぼすことはなかった。データは、平均発現+/-SEM、n=4〜6として示されている。グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図4D】肝臓、膵臓および肺を生じるのに必要な異なるFGF2閾値を示す模式図である。FGF2濃度が低いと、分化を肝細胞様細胞に向けて促進し(ALB発現によりマークされる)、中程度のFGF2レベルはhPS細胞由来前腸内胚葉を膵臓に分化させ(PDX1発現によりマーカーされる)、高濃度では分化を肺および腸細胞に向けて促進する(NKX2-1およびCDX2発現によりマークされる)。
【図5】4つの異なる細胞系統を使用する4つの独立した実験におけるPDX、NKX6-1およびAlbのRNA発現解析を示す図である。すべての実験において、PDX1発現は、それが下方調節されているかまたは消失している256ng/mlを除いて、対照(AAのみで処置されている)と比べてFGF2処置試料において上方調節された。さらに、PDX1のピーク発現は常に64ng/mlであった。NKX6-1発現も、FGF濃度が高くなるに従って上方調節されたが、SA121 tryp、HUES-4およびHUES15において256ng/mlでは下方調節されず、これは11日目のHUES-3およびSA181 trypにおいても同じであった。Alb発現は、FGF2濃度が高くなるに従って一貫して下方調節された。上のパネルは、細胞系統SA181 tryp、SA121 trypからのデータであり、下のパネルはHUES-4およびHUES15である。試料は11日目にリアルタイムPCR解析のために採取された。データは、平均発現+/-SEM (n=2〜3)として示されている。グラフは、11日目に対照試料において検出される発現と比べた倍増加を表している。対照試料は、任意に値1に設定された。
【図6】PCRおよび遺伝子発現解析のために使用された遺伝子特異的プライマーの一覧表である。
【図7】胚体内胚葉、肝臓内胚葉、膵臓内胚葉および腸内胚葉に特徴的な細胞マーカーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
略称
AA;アクチビンA
アルブミン(ALB)
アルファ-フェトプロテイン(AFP)
尾部型ホメオボックス2(CDX2)
ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(CXCR4)
胚体内胚葉(DE)
FBS;胎仔ウシ血清
FGF2;線維芽細胞増殖因子2
線維芽細胞増殖因子(FGF)
フォークヘッドボックスA2(FOXA2)
造血組織発現ホメオボックス(HHEX)
肝細胞核因子4、アルファ(HNF4A)
hBS細胞;ヒト胚盤胞由来幹細胞
hPS細胞;ヒト多能性幹細胞
KO-SR;ノックアウト血清代替物
膵臓および十二指腸ホメオボックス1(PDX1)
運動ニューロンおよび膵臓ホメオボックス1(MNX1)
NK2ホメオボックス1(NKX2-1)
NK6ホメオボックス1(NKX6-1)
ソニックヘッジホッグホモログ(ショウジョウバエ)(SHH)
SRY(性決定領域Y)-ボックス9(SOX9)
SRY(性決定領域Y)-ボックス17(SOX17)
【0046】
定義
本明細書で使用されるように、「ヒト多能性幹細胞」(hPS)とは、いかなる供給源由来でもよく、適切な条件下で、3種の胚層(内胚葉、中胚葉、外胚葉)のすべての派生物である異なる細胞型のヒト子孫を産生することができる細胞のことである。hPS細胞は、生後8〜12週間のSCIDマウスにおいてテラトーマを形成する能力および/または組織培養において3種の胚葉すべての同定可能な細胞を形成する能力を有し得る。ヒト多能性幹細胞の定義に含まれるのは、文献ではヒト胚性幹(hES)細胞(たとえば、Thomsonら(1998)、Heinsら(2004)参照)の他にも誘導多能性幹細胞(たとえば、Yuら、(2007) Science 318:5858頁; Takahashiら、(2007) Cell 131 (5):861頁参照)として表示されることの多いヒト胚盤胞由来幹(hBS)細胞を含む様々な種類の胚細胞である。本明細書に記載される様々な方法および他の実施形態は、多種多様な供給源由来のhPS細胞を必要とするまたは利用し得る。たとえば、使用するのに適したhPS細胞は発生中の胚から得ることができる。さらにまたは代わりに、適切なhPS細胞は、樹立細胞系統および/またはヒト誘導多能性幹(hiPS)細胞から得ることができる。
【0047】
本明細書で使用されるように、「hiPS細胞」とは、ヒト誘導多能性幹細胞のことである。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「胚盤胞由来幹細胞」はBS細胞と表示され、ヒト型は「hBS細胞」と呼ばれる。文献では、細胞は胚性幹細胞、さらに具体的には、ヒト胚性幹細胞(hESC)と呼ばれることが多い。したがって、本発明において使用される多能性幹細胞は、たとえば、国際公開第03/055992号および国際公開第2007/042225号に記載の胚盤胞から調製される胚性幹細胞である、または市販されているhBS細胞もしくは細胞系統であることが可能である。しかし、本発明においては、たとえば、Yuら、2007、Takahashiら 2007およびYuら 2009に開示されているOCT4、SOX2、NANOGおよびLIN28などのある種の転写因子を用いて成人細胞を処置することにより多能性細胞に再プログラムされる分化した成人細胞を含むいかなるヒト多能性幹細胞でも使用することが可能であるとさらに予想されている。
【0049】
本明細書で使用されるように、フィーダー細胞は、単独でまたは組み合わせて使用される支持細胞型を意味すると意図されている。細胞型はさらにヒトまたは他の種起源であり得る。フィーダー細胞が由来し得る組織には、胚性、胎児性、新生児の、若年性または成人組織が挙げられ、組織は、包皮、臍帯、筋肉、肺、上皮、胎盤、卵管、腺、間質または乳房を含む皮膚由来の組織がさらに挙げられる。フィーダー細胞は、ヒト線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、ケラチノサイト、内皮細胞および上皮細胞からなる群に属する細胞型に由来し得る。フィーダー細胞を引き出すために使用され得る特定の細胞型の例には、胚性線維芽細胞、胚外内胚葉細胞、胚外中胚葉細胞、胎児性線維芽細胞および/または線維細胞、胎児性筋細胞、胎児性皮膚細胞、胎児性肺細胞、胎児性内皮細胞、胎児性上皮細胞、臍帯間葉系細胞、胎盤線維芽細胞および/または線維細胞、胎盤内皮細胞が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「mEF細胞」は、マウス胚性線維芽細胞を意味するよう意図されている。
【0051】
本明細書で使用されるように、用語「小分子」は、好ましいシグナル伝達経路を活性化する化合物を意味するよう意図されている。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
ヒトES細胞のインビトロ培養
未分化hPS(D.A. Melton, Howard Hughes Medical Institute (Harvard University、Cambridge、MA)から得られたトリプシン適応SA181およびSA121 (Cellartis、Gothenburg、www.cellartis.com)、HUES-3、HUES-4ならびにHUES-15(Cowanら、2004年))を以下の通りに増殖させ(Cowanら、2004年; Heinsら、2004年)、プロトコールもhttp://mcb.harvard.edu/melton/hues/で入手可能である。手短に言えば、KO-DMEM、10%ノックアウト血清代替物、10ng/ml bFGF、1%非必須アミノ酸、1%Glutamax、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、ベータメルカプトエタノール(全試薬がGIBCO、Invitrogen社製より)および10%プラスマネート(Talecris Biotherapeutics Inc社製)を含有するhBS培地において有糸分裂的に不活化されたマウス胚線維芽細胞(MEF)(Department of Experimental Biomedicine/TCF from Sahlgrenska Academy at the University of Gothenburg、Sweden)上で細胞は維持された。細胞は0.05%トリプシン/EDTA(GIBCO、Invitrogen社製)を用いて継代され、分割比1:3から1:6の間で再度プレーティングされた。細胞系統は、the Institute of Clinical Genetics、University of Linkoping、Swedenによって標準Gバンド形成により核型決定(karyotype)された。解析ごとに、15〜20の分裂中期が評価された。SA121、HUES-4およびHUES-15は核型的に正常であり、HUES-3(サブクローン52)は過剰染色体17(82%)を得ておりSA181は過剰染色体12(45%)を得ていた。
【0053】
(実施例2)
図1に従ったhPS細胞の胚体内胚葉細胞および特定の内胚葉細胞への分化
hPS細胞は、密度12,000〜24,000細胞/cm2で播種され、コンフルエンスまで培養された。次にhPS細胞は、上記の通りに胚体内胚葉に分化された(D’Amourら、2005年)。手短に言えば、細胞はPBS中で洗浄され、低血清(0〜0.2% FBS)中3日間100ng/mlアクチビンA(R&D systems社製)およびRPMI 1640(GIBCO、Invitrogen社製)中25ng/ml WinglessタイプMMTV組込み部位ファミリーメンバー3A(Wnt3a)を用いて処置された。
【0054】
3日目、細胞はPBSで洗浄され、ヒトFGF2(Invitrogen社製)は、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、1%Glutamax、1%非必須アミノ酸、0.1mMベータメルカプトエタノールおよび12%ノックアウト血清代替物(全試薬がInvitrogen社製)を含有するKO-DMEMベースの培地において異なる濃度(結果における特定化に従って、0〜256ng/ml)で添加された。培地は毎日交換された。FGF2のない対照培養物は並行して増殖され、細胞形態は毎日モニターされた。各時点で、個々の実験ごとに、2つから4つの生物学的複製物が採取された。さらに具体的には、各ウェルは、解析される時点の数に応じて、4〜5の等しい小片に分割された。
【0055】
(実施例3)
特定の内胚葉細胞の特徴付け
FGF阻害アッセイ
FGF受容体阻害アッセイは、3日目にDE誘導に続いて培地にSU5402(Calbiochem社製; 10M)、LY294002(Cell Signalling technology社製; 12.5μM)およびU1026(Cell Signalling technology社製; 10μM)を添加することにより実施された。対照培養物は等量の希釈DMSOを用いて処置された。適切な阻害剤を補充された新鮮な培地が毎日添加された。個々の実験ごとにmRNA解析のために異なる時点(9〜12日目)で別々のウェルから2から3つの試料が採取された。
【0056】
RNA抽出、逆転写およびリアルタイムPCR
全RNAは、GenElute Mammalian total RNA kit (Sigma-Aldrich社製)を用いて抽出された。全RNA濃度は、NanoDrop ND-1000分光光度計(Nanodrop Technologies社製)を用いて測定された。逆転写は、2.5μMランダムヘキサマーおよび2.5μMオリゴ(dT)(Invitrogen社製)を使用して製造業者の使用説明書に従って、SuperScriptIIIを用いて実施された。リアルタイムPCR測定は、ABI PRISM 7900HT Sequence Detector System (Applied Biosystems社製)上で実施された。10μl SuperMix-UDG w/ROX、400nMの各プライマー、0.125×SYBR Green I(全試薬がInvitrogen社製)を含有する20μl反応物が使用された。プライマー配列は、補助データとして利用可能である(図6)。予想PCR産物の形成は、アガロースゲル電気泳動および融解曲線解析により確証された。遺伝子発現データはACTBまたはRPL7発現に対して正規化された。追加の正規化対照として、データは全RNA濃度に対しても正規化され、類似のデータを得た。リアルタイムPCRデータ解析は記載の通りに実施された(Bustin、2000年; Stahlbergら、2005年)。
【0057】
hPS細胞の免疫組織化学的解析
hPS細胞は、室温で15分間4%パラホルムアルデヒドに固定化され、PBS-T(PBS中0.1% TritonX-100)中で3回洗浄された。固定化された細胞は15分間PBS中0.5% Triton X-100を用いて透過処理され、室温で1時間5%正常ロバ血清(Jackson Immunoresearch社製)を補充したPBS-T中でブロックされ、その後、細胞は以下の主要抗体および希釈度:ヤギポリクローナル抗体(pAb)抗FOXA-2(Palle Serupから寄贈; Santa Cruz Biotechnology; 1:200)、モルモットpAb抗PDX-1(Chris Wright; BetaCellBiologyConsortium社製; 1:1500)、ヤギ抗PDX-1(Chris Wright; BetaCellBiologyConsortium社製; 1:1500)、ウサギpAb抗NKX6-1(BetaCellBiologyConsortium社製; 20 1:4000)、マウス抗CDX-2(Jonathan Draperから寄贈; Biogenex社製; 1:500)、ウサギpAb抗SOX-9(Chemicon社製; 1:500)、ウサギ抗HNF-6(Santa Cruz Biotechnology社製; 1:400)、マウスmAb-抗PH-3(Cell Signaling technology社製; 1:50)、ウサギpAb抗MKi67(Novocastra; 1:200)、ウサギ抗SOX2(Palle Serupから寄贈; Chemicon社製; 1:250)、ヤギ抗アルブミン(Bethyl laboratories社製; 1:300)と一緒に4℃で一晩インキュベートされた。一晩のインキュベーション後、細胞はPBS中で5分間3回洗浄され、室温で5%血清を補充されたPBS-T中60分間対応する蛍光二次抗体(Alexa 488、Cy3 and 647; Jackson Immunoresearch and Invitrogen社製;製造業者の使用説明書に従って希釈される)と一緒にインキュベートされた。細胞核は、4分間の4’-6’ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI) (Sigma-Aldrich社製; 1:1000)インキュベーションにより視覚化された。免疫蛍光染色は落射蛍光顕微鏡(Zeiss Axioplan 2)により検出され解析された。
【0058】
データ解析
PDX1陽性細胞の百分率は、Imaris Imagingソフトウェア(Bitplane)を使用して計算された。パラメータごとに10の無作為に選択されたフィールドが選択された。DAPI染色を使用して、該ソフトウェアが細胞の全面積を推定した。PDX1陽性細胞の面積は同じように計算された。最後に、PDX1陽性細胞の百分率は、PDX1陽性細胞の面積をDAPI陽性面積で割ることにより計算された。リアルタイムPCR測定からの生データはSDS 2.2.1からエクスポートされ、Microsoft Excelグラフパッドにより解析された。すべてのデータは、ボンフェローニ補正を用いて多変量比較(one-way ANOVA)により統計学的に解析された。すべての値は、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表され、p<0.05の場合に有意と見なされた。
【0059】
(実施例4)
FGF2の低用量は、肝臓細胞運命を促進するが、中間FGF2濃度はhPS細胞の分化を膵臓細胞運命に向けて方向付ける
本発明では、アクチビンA/Wnt3a処置hPS細胞が、それぞれ腹側および背側膵臓が生じる前方前腸内胚葉と後方前腸内胚葉の両方を生み出すことができるのかどうかが調べられた。実際、特徴的な前腸/中腸マーカーの発現を評価することにより、アクチビンA/Wnt3a処置hPS細胞が自発的に前腸および中腸内胚葉に分化することを我々は明らかにしている(図1B)。さらに、前腸由来臓器のうち、肝臓前駆体が優勢であった(図1B、2A)。全体で、これらの所見から、前方前腸内胚葉は自発的に肝臓に分化するが、前方前腸内胚葉も後方前腸内胚葉も、それぞれ腹側および背側膵臓内胚葉に自発的に特定化しないことが示唆される。FGF2が前腸内胚葉の分化を膵臓運命に方向付けることができるのかどうかを試験するために、異なる濃度のFGF2(0、4、16、32、64および256ng/ml)がPDX1発現を誘導する能力を評価した。濃度は一部マウス外稙片研究に基づいていた(Deutschら、2001年)。分化プロトコール(図1A)が、5つの異なる細胞系統;HUES-3:サブクローン52、HUES-4、HUES-15ならびに細胞系統特異的最適化を回避するためのトリプシン適応SA181およびSA121に適用された。FGF2濃度(16〜256ng/ml)で処置された細胞のほうが密になり多くのクラスターを含有していた。低用量のFGF2(4ng/ml)を用いて処置されたhPS細胞培養物中に肝細胞様細胞が見られた。mRNA解析および免疫蛍光染色により、肝臓マーカーアルブミン(ALB)、one cutホメオボックス1(以前はHNF6として知られていたONECUT1)、肝細胞核因子4アルファ(HNF4A)の用量依存発現が明らかにされ、HHEX発現は非用量依存的な形で中程度に減少しただけであった(少なくとも試験されたFGF2濃度の範囲内では)。FGF2濃度を増加すると、ALB、ONECUT1およびHNF4Aの発現は下方調節された。これは、ALB染色によるタンパク質レベルでも確証され、0および4ng/ml FGF2では豊富なALB陽性細胞が見られたが、256ng/ml FGF2では見られなかった(図1B)。
【0060】
複数の転写因子が、膵臓特定化に関与していることが知られている。しかし、これらの因子の大半は、他の臓器でも発現される。したがって、分化した細胞の膵臓運命を決定するためにマーカーの組合せが選択され、PDX1、SRY(性決定領域Y)-ボックス9(SOX9)、NK6ホメオボックス1(NKX6-1)、bHLH転写因子ニューロゲニン-3(NGN3)、FOXA2およびカルボキシペプチダーゼA1(CPA1)発現もモニターされた。後方前腸関連マーカーの発現はすべての試料において検出され、PDX1、NKX6-1、SOX9およびNGN3を含むいくつかの膵臓内胚葉マーカーの発現はFGF2用量依存的な形で上方調節された。低レベルのNKX6-1は、すでに9日目には大部分の実験において検出することができたが、発現は11日目から以降のほうが明白になった。CPA1およびFOXA2はすべての試料において発現されたが、FGF2処置に影響されなかった(図2A、補足、図1)。塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)転写因子ファミリーのメンバーであり、初期膵臓内胚葉において発現される膵臓特異的転写因子1a(PTF1A)は、低mRNAレベルで発現された(データは示されていない)。
【0061】
すべての膵臓組織はPdx1陽性集団由来であるので、およびmRNAデータを確証するため、PDX1染色が実施された。我々は、32〜256ng/ml FGF2を用いて処置された試料においてのみPDX1陽性細胞を検出した(図2B)。PDX1陽性細胞の数は、FGF2を用いて処置されなかった対照細胞と比べて、FGF2処置細胞(32〜256ng/ml)では有意に多かった。最も数の多いPDX1陽性細胞(15〜20%)は、64ng/ml FGF2を用いて処置された培養物において得られた(図2B)。最も高いFGF2濃度の効果は細胞系統間で異なったが、傾向は同じであり、PDX1発現は256ng/mlでは減少するかまたは消失した(補足、図1)。
【0062】
Pdx1は後方胃、十二指腸およびCNS(mRNA転写物のみ)においても発現されているので、追加の膵臓マーカーの発現を使用して、膵臓運命に向かう分化を検証した。すべてのPDX1陽性細胞がFOXA2、ONECUT1およびSOX9を同時発現した。圧倒的多数のPDX1陽性細胞は中腸/後腸マーカーCDX2を同時発現しなかったが、数個の二重陽性細胞が検出された。PDX1およびNKX6-1は、マウスおよびヒト膵臓上皮において同時発現されるが、十二指腸および胃では同時発現されない(Nelsonら、2007年)。PDX1およびNKX6-1を同時発現している膵臓前駆体は、それぞれ32ng/mlおよび64ng/ml FGF2を用いて処置された試料においてのみ見出された(図2A)。しかし、NKX6-1陽性細胞の数は、PDX1陽性集団と比べて比較的少なかった。32〜256ng/ml FGF2でのPDX1発現のロバスト誘導は、5つの異なるhPS細胞系統を使用して複数の実験において再現された(補足、図1)。したがって、FGF2濃度を増加すれば、肝臓細胞運命を犠牲にして膵臓細胞運命に有利に働いた(図2Aおよび補足、図1)。増殖マーカーホスホヒストンH3(PH3)の免疫蛍光検出により、僅かなPDX1陽性細胞のみが複製することが実証され、PDX1陽性細胞の出現は、既存のPDX1陽性細胞の増殖ではなく、分化の結果であることが示唆された。
【0063】
(実施例5)
高用量のFGF2は、hPS細胞の分化を前方前腸および小腸細胞に方向付ける
肝細胞マーカーのALB、HNF4AおよびONECUT1の発現は、FGF2濃度が増加するに従って減少するために(図1B)、前方前腸関連マーカーSRY(性決定領域Y)-ボックス2(SOX-2)の発現レベルは増加し、最高レベルは256ng/mlにおいて見られた(図2A)。一貫して、Sox-2発現は、E13.5マウス胚においては、食道、肺および胃などの前方前腸派生物に限定されていた(補足、図2)。肺および甲状腺は前方前腸内胚葉の同一領域から生じるために、これらの臓器に関連するマーカーの発現パターンはmRNA解析により評価された。甲状腺特異的マーカーのサイログロブリン(TG)は、FGF2の濃度が増加するに従って下方調節されたが(データは示されていない)、肺および甲状腺特定化の最初期のマーカーであるNKX2-1 (Serlsら、2005年)は256ng/mlで上方調節されており、肺細胞型への分化を示唆していた。線維芽細胞増殖因子10(FGF10)、sproutyホモログ2(ショウジョウバエ)(SPRY2)、ソニックヘッジホッグホモログ(ショウジョウバエ)(SHH)およびSHH受容体patchedホモログ1(ショウジョウバエ)(PTCH1)などの肺運命の誘導に関連するがこれに限定されない追加のマーカーも上方調節されていた(図3)。II型肺胞上皮細胞により産生される肺サーファクタントタンパク質C(SP-C)およびクララ細胞10kDaタンパク質(CC10)はmRNA試料において検出することはできず、NKX2-1陽性細胞は初期肺前駆体細胞を表していることを示唆していた。
【0064】
中腸/後腸マーカーのCDX2およびMNX1の発現は、最高のFGF2濃度(256ng/ml)において著しく増加し、高濃度のFGF2は腸細胞型の形成も誘導することを示唆していた。CDX1発現は無変化のままであり、大腸マーカーのCDX4はどんな濃度でも検出されなかった。CDX2発現はタンパク質レベルで確証され、最高数のCDX2陽性細胞は256ng/mlにおいて得られた。重要なことに、CDX2陽性細胞は、栄養外胚葉の形成を除いて、FOXA2を同時発現した。CDX2陽性細胞の数が増加したのは中腸内胚葉の増殖の結果なのか再特定化の結果なのかを決定するために、増殖マーカーのMKI67を用いた二重染色が実施された。大多数のCDX2陽性細胞はMKI67抗原に対しては陰性であり、増殖ではなく再特定化を含意していた。
【0065】
多くのPDX1陽性細胞が256ng/ml FGF2においてまだ発現されたが、その細胞のうちNKX6-1を発現するものはなく、FGF2濃度を64から256ng/mlに増加すると、膵臓内胚葉の形成が阻止されることを示唆していた(図5)。さらに、大多数のPDX1陽性細胞はCDX2陰性であるが、64ng/mlと比べて256ng/mlにおいてより多くのPDX1陽性/CDX2陽性細胞が見られた。E18.5マウス胚のPDX1/CDX2二重染色に基づいて、我々はPDX1陽性/CDX2陽性細胞は十二指腸細胞型を表すと結論付ける。さらに、我々は、PDX1陽性細胞もCDX2陽性細胞も、分化hPS細胞においておよびE18.5マウス胚においてSOX2を同時発現しないことを確証することができた。要約すると、これらのデータから、外来性FGF2に応答した肝臓、膵臓、肺および腸マーカーの用量依存誘導が示唆される(図4D)。
【0066】
(実施例6)
ERK1/2マイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達はPDX1誘導に必要とされる
FGFはその対応するFGFRを通じて、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)およびERK1/2マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)を含むいくつかのシグナル伝達経路を活性化する(図4B)。FGFR mRNA発現はすべての試料において検出された。さらに、上昇レベルのFGFR1およびFGFR3ならびに減少レベルのFGFR2およびFGFR4に向かう傾向は、FGF2濃度が増加するに従って見られた(図4A)。FGFR媒介シグナル伝達が膵臓内胚葉に向かう分化のために必要かどうかを決定するため、FGFRチロシンキナーゼ阻害剤のSU5402、MAPK阻害剤のU1026およびPI3K阻害剤のLY294002の効果が調べられた(図4C)。SU5402を用いた処置によりPDX1陽性細胞の数は著しく減少し、FGF2(64ng/ml)がFGFRを通じてPDX1陽性細胞の誘導を媒介していることが示唆される。さらに、U1026の存在下でFGF2を用いた処置により、PDX1発現は減少し、FGFRシグナル伝達によるMAPK経路の活性化はPDX1の誘導に必要であることが示されている。これとは対照的に、細胞がLY294002の存在下でFGF2を用いて処置されても、PDX1発現は無変化のままであり、活性なPI3K経路はPDX1の誘導に必要ではないことが示唆される。これらの結果により、hPS細胞におけるFGF2誘導PDX1発現は、FGFRシグナル伝達のMAPK経路下流の特定の活性化に依拠していることが実証されている。
【0067】
[配列表フリーテキスト]
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

[参考文献]



【特許請求の範囲】
【請求項1】
hPS細胞由来の胚体内胚葉細胞の特定の内胚葉細胞への分化を制御する特定濃度でのFGF2の使用。
【請求項2】
前記hPS細胞がhBS細胞である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
培地中のFGF2の濃度が500ng/ml以下である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
FGF2の濃度が約0.1〜約16ng/mlの範囲であり、特定の内胚葉細胞が肝臓内胚葉細胞である、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
FGF2の濃度が5ng/mlなどの4ng/ml〜6ng/mlの範囲であり、特定の内胚葉細胞が肝臓内胚葉細胞である、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記肝臓内胚葉細胞がAFPおよび以下のマーカー:FOXA2、アルブミン(ALB)、HNF4A、HNF6(ONECUT)、Prox1、CK17、CK19、Hex、FABp1、AAT、Cyp7A1、Cyp3A4、Cyp2B6、Cyp3A7のうちの1つまたは複数を発現する、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
前記肝臓内胚葉細胞が以下のマーカー:ALB、HNF6およびHNF4Aを発現する、請求項4または5に記載の使用。
【請求項8】
前記肝臓内胚葉細胞が以下のマーカー:AFP、HNF4A、Prox1のうちの2つ以上を発現する、請求項4から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
FGF2の濃度が64ng/mlなどの約16〜約150ng/mlの範囲であり、特定の内胚葉細胞が膵臓内胚葉細胞である、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記膵臓内胚葉細胞がPDX1ならびに以下のマーカー:NGN3、CPA1、SOX9、HNF6、HNF1b、E-カドヘリン、MNX1、PTF1AおよびNKX6-1のうちの1つまたは複数を発現する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記膵臓内胚葉細胞がPDX1およびNKX6-1を発現する、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記膵臓内胚葉細胞が以下のマーカー:SOX9、ONECUT1、FOXA2を発現する、請求項9から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記膵臓内胚葉細胞が、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、膵臓ポリペプチドおよびグレリンからなる群から選択される少なくとも1つの膵臓ホルモンを発現する、請求項9から12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
FGF2の濃度が約150〜約500ng/mlの範囲であり、特定の内胚葉細胞が腸および/または肺内胚葉細胞である、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記特定の内胚葉細胞が、CDX2ならびに以下のマーカー:CDX1、FOXA2、PITX2、FABp2、TCF4、ビリンおよびMNX1のうちの1つまたは複数を発現する腸細胞である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記特定の内胚葉細胞がCDX1、CDX2およびMNX1を発現する腸内胚葉細胞である、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
前記特定の内胚葉細胞が、以下のマーカー:NKX2-1、SHH、PTCH1およびSPRY2のうちの1つまたは複数を発現する肺内胚葉細胞である、請求項14に記載の使用。
【請求項18】
前記分化が、それぞれ請求項4、9および14に記載の所望の内胚葉運命への分化に適している濃度でFGF2を含有する培地において胚体内胚葉細胞をインキュベートすることを含む、請求項1から17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
肝臓内胚葉細胞を調製するための方法であって、0.1〜16ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日または9〜12日などの約2〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法により入手可能である肝臓内胚葉細胞。
【請求項21】
請求項6から8のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項18に記載の肝臓内胚葉細胞。
【請求項22】
膵臓内胚葉細胞を調製するための方法であって、16〜150ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日などの約2〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法により入手可能な膵臓内胚葉細胞。
【請求項24】
請求項10から13のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項21に記載の膵臓内胚葉細胞。
【請求項25】
腸および/または肺内胚葉細胞を調製するための方法であって、150〜500ng/ml FGF2を含有する培地において、6〜8日などの約2〜20日間胚体内胚葉細胞をインキュベートする段階を含む方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法により入手可能な腸および/または肺内胚葉細胞。
【請求項27】
請求項14から17のいずれか一項に記載の特徴を有する、請求項24に記載の腸および/または肺内胚葉細胞。
【請求項28】
FGFRを誘導する段階を含む、肝臓、膵臓または腸内胚葉細胞を調製するための方法。
【請求項29】
FGFRがFGFR1、FGFR2、FGFR3および/またはFGFR4である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記FGFRがFGFを胚体内胚葉細胞の培養物に添加することにより誘導される、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
MAPKシグナル伝達経路がFGFR誘導により活性化される、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
i)請求項6から8のいずれか一項に記載の特徴を有する肝臓内胚葉細胞、ii)請求項10から13のいずれか一項に記載の特徴を有する膵臓内胚葉細胞、またはiii)請求項15から17のいずれか一項に記載の特徴を有する腸および/もしくは肺細胞を調製するための、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記膵臓内胚葉細胞が、MKI67、PH3、Brduなどの増殖についてのマーカーを発現する前駆体細胞を含む、請求項1から32のいずれかに記載の方法。

【図1A】
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【図7】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527880(P2012−527880A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512399(P2012−512399)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057465
【国際公開番号】WO2010/136583
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【出願人】(511288511)セラーティス・アーベー (1)
【Fターム(参考)】