説明

invivoでのタンパク質の連続的な目的に適合した進化のための方法

本発明は、出発タンパク質と比較して改善された特性を有するタンパク質の変異体の製造方法であって、この変異体がin vivo進化方法により得られる製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、出発タンパク質と比較して改善された特性を有するタンパク質の変異体の製造方法であって、この変異体がin vivo進化方法により得られる製造方法に関する。
【0002】
発明の背景
医薬、化学産業及び農業経済の範囲におけるバイオテクノロジーの増加する重要性は、そのつどのその使用目的に最適に適合しているタンパク質をますます求めている。まずこれらのタンパク質は主として環境から、大抵はいわゆるメタゲノムスクリーニングの範囲内で単離される。ますます前記タンパク質は将来には様々な方法を介して予定される「人工的な」使用条件に適用される。
【0003】
従って、例えば、天然の変異体よりもより耐熱性であり、他の基質特異性を有するか又はより高い活性を示す酵素が必要とされる。医薬的タンパク質は例えば、より少なく投薬されることができるようにより長い半減期を示すか、又は、目的分子に対する高親和性かつ特異的な結合を介して、疾病に関連した物質代謝経路又は感染経路を阻害することが望ましい。
【0004】
技術水準
この適合は部分的には、合理的タンパク質設計アプローチ(rationale Protein Design Ansaetze)を介して行われる。しかしながらこれまでには、タンパク質の所望の機能−表現型−からその構造を推定するか又はタンパク質の3次元構造から相応する一次配列を導くための、極めて限定された手段のみが存在する。それにもかかわらずタンパク質の機能向上を達成すべく、現在のところ、「目的に指向した進化」(Directed Evolution)との概念にまとめられる部分的進化アプローチが使用される(Buskirk et al., 2003, "In vivo evolution of an RNA-based transcriptional activator". Chem. Biol. 10:533-540; de Crecy-Lagard et al., 2001 , "Long term adaptation of a microbial population to a permanent metabolic constraint: overcoming thymineless death by experimental evolution of Escherichia coli", BMC Biotechnology 1 :10; Fields and Song, 1989, "A novel genetic System to detect protein-protein interactions", Nature, 340: 245-246; Long-McGie et al., 1999, "Rapid in vivo evolution of a β-lactamase using phagemids", Biotechnol. Bioeng. 68:121-125; Rohde et al., 1995, "The mutant distribution of an RNA species replicated by Q beta replicase", J. Mol. Biol. 249:754-762)。
【0005】
現在の技術水準によれば、Directed Evolutionのこれまでの方法は実質的に、改良すべきタンパク質の多数の変異体(子孫)の産生及び改善された誘導体に応じたその選択に基づく。この際、検査すべき突然変異体の数は、部分的に極めて巨大である可能性があり、しかしながら通常は1011未満である。100個のみのアミノ酸のタンパク質を考慮する場合には、理論的に20100=10130個のこの相違する変異体が存在する。1011の大きさのライブラリー(Library)はこれに応じて、可能性のある変異体の極めて少ない部分のみをカバーする。このようなライブラリー中に理論的に最良の変異体が見出されることができる確率はほぼゼロである。
【0006】
その3つの前提条件−複製、突然変異及び選択−を用いた進化の原則は、所定の系のうちでの、単純にそして高度にまで適合された構造の指向された発達を引き起こすことを可能にする。いわゆる「ブラインドウォッチメーカー」のこのモデルは、計画的な助力無しに、かつ、構造データの必要とされる知識無しに、複雑性の作成を可能にする。
【0007】
目的分子に対して最大の親和性で多数の変異体をスクリーニングするために、既に多数のプロトコールが開発されている(例えば、酵母ツーハイブリッド(Yeast Two-Hybrid)、細菌ディスプレイ(Bacterial Display)、ファージディスプレイ(Phage Display)、リボソームディスプレイ(Ribosomal Display)、mRNAディスプレイ(mRNA Display))。他の特性、例えば酵素活性のスクリーニングのためには、大抵はアッセイフォーマット(Assay-Formate)が必要とされ、これは比較的少ない数の変異体(<106)のみの検査を可能にする。
【0008】
この方法は、ライブラリーの産生(=突然変異)並びに引き続くその選択に限定されている点で共通している。複製(=最後に行われる選択の「当選者」の突然変異体のすぐ次の世代(Generation))は、このプロトコールを用いて確かに手動で可能であるが、しかしながら先行する工程と同様に手間がかかる。従って、相応するアプローチは通例は、1〜2つの世代にわたるのみである。この理由から、述べられたプロトコールは、本来の意味合いにおける進化的アプローチではなく、むしろ存在する変異体プールの排他的選択である。
【0009】
従って、多数の世代を越えた段階的な適合の潜在能力は利用されることができず、これはしかしながら、場合によっては自体で最も活性のある変異体を天文学的な数の可能性から同定するための必要な前提条件であるかも知れない。
【0010】
WO 2004/108926は、核酸及びタンパク質の進化のための方法を開示する。この方法は、RNAウィルス、特にバクテリオファージPhiの高い突然変異率及び適合能力の利用に基づく。β−ラクタマーゼ−遺伝子は、このバクテリオファージのゲノムPhi6中に、組み換えファージの形成下で挿入された。この組み換えPhi6ファージは細菌細胞中で、溶解の回避下で増殖し、その際アンピシリン及び更なる抗生物質の添加により選択圧力(Selektionsdruck)がおよぼされた。この生存する細菌細胞はファージ−RNA分子を含有し、これは当初の導入されたβ−ラクタマーゼ−遺伝子に対して核酸レベルで変更されたβ−ラクタマーゼ遺伝子を含有することが確認されている。この選択圧力は従って、β−ラクタマーゼ遺伝子の進化を生じた。同様に、進化の更なる可能性、例えば調節性タンパク質又はRNAs又は特異的な結合特性を有する分子の進化の更なる可能性が述べられている。しかしながら、機能に関して完全にそのつどの選択遺伝子の発現に依存しない任意のタンパク質の進化の手段は開示されていない。更に、WO 2004/108926は、別個の選択−/スクリーニング工程を予定している。特に、特定の結合能力を有する分子の進化に対する開示は、進化の各世代に応じてスクリーニングを必要とし、その結果この開示される系は完全には放置されることができない。
【0011】
本発明の課題は従って、手間のかかるスクリーニング方法に依存しないin vivo進化方法を提供する系を生じさせることであった。
【0012】
この課題は、タンパク質Yの変異体Y′の製造方法であって、タンパク質Yの変異体Y′が標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられ、以下の工程:
(a)次のものを含有する細胞の調整工程、
(a1)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(a2)標的分子Xをコードする第2核酸、及び
(a3)調節可能な発現制御配列の制御下で進化マーカーをコードする第3核酸、
その際この進化マーカーの発現は、Y及び/又はY′のXに対する結合により調節される、
(b)以下の条件下での細胞培養工程、
(b1)タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にする条件、及び
(b2) (a)からの細胞に対して調節された、進化マーカーの発現を示す細胞の選択を可能にする条件、及び
(c)進化マーカーの調節された発現を示す細胞の同定工程及び場合により単離工程、及び
(d)場合により、(c)からの細胞中のタンパク質Yの変異体Y′の同定工程及び/又は特性決定工程、
を含むタンパク質Yの変異体Y′の製造方法により解決される。
【0013】
本発明の内容は、一方では所定の変異体ライブラリーの選択を実験室中で可能にし、かつ同時に複製機構を包含する自律系である。この際、この選択は唯一、−及び天然の進化と同様に−より良好に適合された変異体の有利な複製を介して実現されることが望ましい。更に、使用される複製系は、十分な突然変異率が複製の間に許可されるように構成されている。このようにして理論的に試験される、出発コンストラクトの変異体の数は、1世代の当選者の子孫の数から、実験の世代の総数の累乗に対して計算される(例えば、1世代につき10個の子孫が400世代では=10400個の可能性のある変異体)。但し、この10400の個々の変異体の各々は明らかに実験において物理的に存在することは不可能であり、しかしながらこの系は自体で、複合体の仮想的な地帯の内部の「小道(Pfad)」を探索し、これは常に、絶対的な最大値へと導く。前記小道に沿った変異体のみが実験の間に存在していて、理論的には前記地帯の全ての点(変異体)が可能である。
【0014】
本発明による方法は従って、進化すべきタンパク質(これは本発明の目的のために「変異すべきタンパク質Y」と呼ばれる)が、in vivo発現の際にこのタンパク質の変異体Y′を生じる核酸によりコードされ、その際核酸レベルでの変異体の形成が行われ、例えばYをコードする核酸のコピー化(複製)、特定のエラー率を有するポリメラーゼ(例えば、というのもこれはプルーフリーディング機能を有しないから)により行われるという原則に基づく。
【0015】
この変異体Y′は次いで、様々な特性について選択されることができ、例えば、より高い親和性で特定の更なるタンパク質に対して結合するための特性について選択されることができる。このタンパク質Yの変異体Y′のより高い親和性の結合特性が進化マーカー遺伝子の発現の活性化及び/又は増強のために適している場合には、従って選択圧力の適用の際に自律的に進化が起こり、というのも、所望の改善された特性を有するタンパク質Yの変異体を発現する細胞のみが、生残するか又は増殖するか又はより迅速に増殖するからである。
【0016】
この種の系のためには原則的に、全ての種類の細胞が適し、これは原核細胞又は真核細胞であることができる。細胞の種類は、場合により選び取るべき選択系に依存し、その際当業者はそのつどの選択系のために適した細胞系を選択することができる。細菌細胞、酵母細胞、植物細胞及び脊椎動物細胞、特に哺乳類細胞、有利にはヒト細胞が使用されることができる。細胞の選択はそのつどの進化系に依存し、かつ、当業者により自体で選択されることができる。
【0017】
前述したとおり、本発明による方法は2つの群の工程を含み、即ち一方は複製及び突然変異、そして他方は選択である。両方の群の工程のために、既に技術水準においては方法及び系が公知である。
【0018】
変異すべきタンパク質Yを改善された特性を有する変異体Y′へと進化させるために、まず、in vivo環境、即ち、例えば細胞中で、このような変異体の発生手段を提供することが必要である。これは例えば核酸レベルで行われる。例えばDNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼが使用されることができ、これは所定のエラー率を示し、この結果、タンパク質Yをコードする核酸のコピー化及び/又は転写の際に、突然変異した核酸が生じ、これは次いで、例えば点突然変異、欠失又は挿入に基づいて、タンパク質レベルでの変異すべきタンパク質Yの変異体Y′を生じる。
【0019】
複製及び突然変異を担うポリメラーゼ、即ちDNA依存性及びRNA依存性のDNA−及びRNAポリメラーゼは、本発明の方法の選択される実施態様に応じて、既に細胞中に存在するか又は別個に提供されることもでき、例えばこれは、更なる核酸、例えばプラスミドによりコードされることができる。
【0020】
この変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸は、本発明により、核酸レベルでポリメラーゼにより細胞中で複製されることができる形態において存在する。有利な一実施態様においてこの第1核酸はRNAレプリコンの形態において存在する。
【0021】
本発明の目的のために、「レプリコン」は特に、RNA依存性RNAポリメラーゼにより、即ち、いわゆるレプリカーゼにより複製される核酸を意味する。レプリコンは従って、RNAであるかしかしながら又はレプリコンはDNAであることができ、これは第1の転写サイクル後にRNAレプリコンをコードする。このRNAレプリコンは有利には、線状RNA配列、RNAベースの生物からのゲノム、RNAプラスミド、RNAウィルス、例えばRNAバクテリオファージ及びRNA類似体から選択されている。本発明により適したレプリカーゼは、有利には、RNA依存性RNAポリメラーゼ、例えばQβ−、Phi6−、Phi8−、Phi9−、Phi10−、Phi11−、Phi13−及びPhi14−レプリカーゼ、及び類似物(例えばWO 2004/108926並びに以下に挙げるMakaev et al.による刊行物を参照のこと)から選択されている。
【0022】
レプリカーゼはDNAポリメラーゼよりもはるかに不正確であり、というのもこれはプルーフリーディング機能を有しないからである。このエラー率は、103〜104個の合成された塩基につき1つの突然変異である。この高いエラー率に加えてしかしながら、レプリカーゼ、特にQβ−レプリカーゼは、高い程度で基質特異的であり、かつ従って特異的な目的−RNAsに対して「検定される」ことができる。技術水準において公知のレプリカーゼは、例えばQβ−レプリカーゼ又はPhi−レプリカーゼである。Phi−レプリカーゼ及びその進化能力は既に技術水準において記載されていて、特にMakajev et al. Journal of Virology, 2004, 78巻, 4号, 2114〜2120頁, EMBO Journal, 2000, 19巻, 1号 , 124〜133頁及びVirus Research, 2004, 101 , 45-55並びに国際特許出願WO 2004/108926中に記載されている。前述の特許出願は、レプリコンとしてバクテリオファージPhi6の変更されたゲノムを、そしてレプリカーゼとしてウィルス性のPhi6−レプリカーゼを使用する系を記載している。ここに記載された系は、大腸菌(E.Coli)細胞中で実施される。この種の系は、本発明にも適している。
【0023】
第2核酸は標的分子をコードする。標的分子Xは、有利にはタンパク質であるが、しかしながら他の、第2核酸の発現により得られる遺伝子産物であることもでき、例えばmRNA又はその核酸誘導体である。この標的分子Xは、本発明の目的のために、タンパク質Y又はその変異体Y′が前記標的分子Xに結合し、かつ、X及びY又はX及びY′の結合が、進化マーカーの発現を調節できるように選択される。標的分子Xをコードする核酸は、それぞれの適した形態において提供されることができ、例えば細胞のトランスフェクション又はトランスフォーメーションに適しているプラスミドの形態において提供されることができる。前記プラスミドは従って有利には、選択マーカーを装備している。標的分子Xは、本発明の目的のために完全に自由に選択されることができ、従って、求められている、変異すべきタンパク質Yのための結合パートナーとして機能する全ての目的分子が選択されることができる。
【0024】
本発明による、目的に指向した進化を実施すべく、この選択される細胞系に対して所定の選択圧力が及ぼさなくてはならない。
【0025】
この理由から、第3核酸は、調節可能な発現制御配列の制御下で進化マーカーをコードし、その際進化マーカーの発現は、タンパク質Y又はその変異体Y′の標的分子Xに対する結合により調整される。第3核酸は有利には、プラスミドの形態で提供され、しかしながら、細胞中への導入に適した全ての形態において存在することができる。この調節可能な発現制御配列は、有利には少なくとも1種のプロモーター、特に有利には更なる配列、例えばエンハンサー及び類似物、特に上流−活性化配列、例えば、転写調節因子の結合、特に転写調節活性化因子の結合を可能にするDNA上の活性化配列を含有し、その際この転写調節因子の結合は、調節可能な発現制御配列により制御される相応する遺伝子の発現に対して影響を有する。
【0026】
本発明の目的のためには進化マーカーは、進化マーカーを発現する細胞に対する選択を可能にする遺伝子産物をコードする遺伝子である。真核細胞においては原則的に全ての抗生物質耐性遺伝子が適する。幾つかの例は、例えばアンピシリン耐性遺伝子、例えば、β−ラクタマーゼをコードするbla−遺伝子である。このような耐性遺伝子の更なる例は、例えばアミノグリコシド−3′−ホスホトランスフェラーゼ(nptII)をコードする耐性遺伝子であり、これはカナマイシン及びG418に対する耐性を媒介し、並びにクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)である。真核系のためには進化マーカーとしてcatが有利である。
【0027】
酵母系では進化マーカーとして次の遺伝子、例えばhis3、trp1、ura3又はleu2が使用されることができる。真核系及び酵母系においては、ここでは、例えば選択遺伝子his3が考えられ、これはヒスチジン原栄養体を媒介し、かつこの供与量効果は、媒体中の3−アミノトリアゾールの濃度を介して調整されることができる。その他の場合にも、例えば有利には哺乳類細胞の場合にも、類似の耐性遺伝子が進化マーカーとして使用されることができる。
【0028】
進化マーカーの発現は、例えば更に、進化マーカーを発現しないか又はより劣悪に発現する細胞(進化マーカーが耐性遺伝子である限り)と比較してより迅速に増加する細胞のみ、又は、発現マーカーをあまり良好に発現しないか又は全く発現しない細胞(進化マーカーが、細胞に対して不利となる遺伝子である場合に)が選択される選択を可能にする。
【0029】
従って、細胞の成長速度は、選択遺伝子の発現と直接的な関連にある。
【0030】
更に、市販の選択マーカーを進化マーカーとして使用することも可能である。この進化マーカーは、例えば抗生物質耐性遺伝子又はこの類似物をコードすることができる。
【0031】
選択系の更なる変形は、進化マーカーとして、細胞表面で発現するタンパク質をコードする遺伝子を使用することにある。次いで、このタンパク質を発現する細胞を、発現されるタンパク質の、固体のマトリックスにカップリングしている相応する結合パートナーに対する結合に基づいて、この固体のマトリックスに結合させることが可能である。これは次いで、進化マーカーを発現する細胞の、固体のマトリックスに対する結合ができない残りの細胞に対する選択を可能にする。
【0032】
この進化マーカーは、調節可能な発現制御配列の制御下にある。このために、in trans及び/又はin cis活性化可能なプロモーター、エンハンサー、及び類似の活性化配列の全ての種類が適する。有利な一実施態様において、発現制御配列とは、活性化のためにタンパク質の結合を必要とする配列を包含する配列である。一例は、「上流活性化配列(upstream activating sequence)」(UAS)である。
【0033】
有利には、進化マーカーのこの種の調節のためには、ツーハイブリッド系の原則が適用される。この系は、技術水準において十分に公知であり、かつ、タンパク質−タンパク質相互作用の検出のために用いられる。このツーハイブリッド系は、2つの融合タンパク質からなる複合体に基づいていて、その際このうち1つの融合タンパク質は、発現制御配列中に存在する活性化配列(UAS)のための、タンパク質Xに融合するか又はカップリングする結合ドメインを有する。この第2のタンパク質複合体は、検査すべきタンパク質Y及び活性化因子ドメインを含有し、これは、転写を担うポリメラーゼと相互作用する。X及びYの間での結合のみが生じる場合には、この発現制御配列が活性化され、かつこれにより制御される遺伝子、即ち選択遺伝子が発現されることができる。
【0034】
両方の結合パートナーX及びY又はY′の系が極めて良好に、本発明の方法に適用されることができることは当業者には明らかである。酵母−ツーハイブリッド系の大きな欠点はしかしながら、これが、2つの公知のタンパク質のタンパク質−タンパク質相互作用の検出又は既に産出されたタンパク質変異体のスクリーニングにのみ適していることである。この技術水準において公知のツーハイブリッド系は、タンパク質の進化の工程を示さない。
【0035】
本発明による方法はこれに対して、タンパク質Yの変異体Y′の産生を、提供された系、即ち細胞内部で自ずから可能にする。従って、変異すべきタンパク質Yを、自ら特定の方向へと発達させることが可能であり、これは、変異体Y′の標的分子Xに対する結合能により制御されることができる。
【0036】
系中で変異体Yが産生される場合には、これはXに対するより高い親和性を示すか、又はYとは対照的に概として最初からXのための親和性を示し、この結果、選択遺伝子の発現は、変異するタンパク質の、改善された特性を有する変異体Y′を示す細胞の、生存又はより迅速な増殖及び従って選択を可能にする。
【0037】
公知の酵母−ツーハイブリッド系においては、発現制御配列の活性化のために、上流−活性化配列のための結合ドメイン、並びに、ポリメラーゼと相互作用する活性化ドメインを示すタンパク質Gal4が使用される。Gal4タンパク質のこの両方のドメインを分離し、かつこのそれぞれのドメインをそのつど更なる分子と一緒に融合タンパク質として提供するか、又は、他の手法でカップリングさせることが可能であり、その際次いで、この更なる分子、例えばX及びY又はY′の間での相互作用は、この両方のGal4ドメインを再度、相互に対する空間的近傍にもたらすことを可能にし、これは次いで発現制御配列の調節を可能にする。
【0038】
この第2の及び第3の核酸は、別個の核酸として、例えばプラスミドの形で存在することができか、又は、これらは、両者が同一のプラスミド上に存在していることもできる。この第1核酸は、既に上記したように、複製可能な核酸、有利にはRNA−レプリコンを提示することが望ましく、これはRNA−レプリカーゼにより複製されることができる。無論、第1核酸を、プラスミド又はその他の、トランスフェクション可能な又はトランスフォーメーション可能な核酸の形で提供することも可能であり、その際この核酸は次いで、相応する複製可能な第1核酸をコードすることが望ましい。
【0039】
本発明の目的のために、公知の酵母−ツーハイブリッド系又は相応する系を使用することが可能であり、その際この相互作用、即ち、タンパク質Y及び/又はタンパク質Yの変異体Y′の標的分子Xに対する結合は、調節可能な発現制御配列の調節及び従って、進化マーカーの発現の調節を可能にする。
【0040】
有利には従って、第2の発現調節因子が使用され、その際この両方の発現調節因子の相互の相互作用は、直接的又は非直接的に、X及びY又はY′を介した、進化マーカーの発現制御配列の調節のために必要である。
【0041】
有利な一実施態様において、変異すべきタンパク質Yは、第1核酸、特にRNA−レプリコンによりコードされ、第1の又は第2の発現調節因子とカップリングされている。この際これは、Yと第1の発現調節因子との融合タンパク質、又は、Yと第2の発現調節因子との融合タンパク質であるか、又は、タンパク質Yは、他の手法で、例えばビオチン−ストレプトアビジン結合を介して、この両方の発現調節因子の1つとカップリングされる。
【0042】
この標的分子Xは、タンパク質であるか又は他の分子、例えば核酸であることができる。Xが、発現調節因子とカップリングしているか又はこれらと融合タンパク質を形成するか、又は自体で相応する発現調節因子を提示することが重要である。
【0043】
一実施態様において、例えば第1の(又は第2の)発現調節因子は、上流−活性化配列(UAS)に対して結合する分子である。この第2の(又は第1の)発現調節因子は、相応するポリメラーゼに対する結合により発現を調節し、その際この発現の調節は、同時に第1の(又は第2の)発現活性化因子がUASと相互作用し、かつ第2の(又は第1の)発現活性化因子がポリメラーゼと相互作用する場合にのみ行われる。この発現調節因子を用いてそのつど分子X及びY又はY′はこれらとカップリング又は融合していて、その際従ってX及びY又はX及びY′の間の相互作用は、この両方の発現調節因子が発現を調節することができることを可能にする。
【0044】
有利には本発明において、この調節可能な発現制御配列が活性化され、これによりこの進化マーカーが発現し、従って細胞は成長利点を手に入れる。しかしながら、調節が抑制化である系を使用することも可能である。
【0045】
ツーハイブリッド系を使用する有利な一実施態様において、タンパク質X及びタンパク質Yはそのつど、DNA結合ドメインを有する(有利にはX/結合ドメインとして)及び活性化因子ドメイン(有利にはY/結合ドメインとして)を有する融合タンパク質として提供される。しかしながら、融合タンパク質の代わりに、所望の単位を、更なる分子を介して相互にカップリングさせることも可能であり、例えばリンカー又はストレプトアビジン/ビオチン結合又は類似物を介してカップリングさせることも可能である。
【0046】
市販のツーハイブリッド系の代わりに、トリ−ハイブリッド系を使用することもでき、又は、複数のサブユニットを有するタンパク質複合体が使用されることもできる。
【0047】
ワンハイブリッド系を介して、更に、所定のDNA配列に結合するタンパク質Yは進化可能である。
【0048】
本発明の有利な一実施態様での実験的な手順は、まず、既に両方の異なる核酸を含有する酵母又は大腸菌株中への第1核酸のトランスフォーメーションを介して行われる。このトランスフォーメーションバッチを次いで、進化マーカー−選択条件下で液体培地中で生育させ、その際この培地の成長速度は常に観察される。この培地が対数期に移行する前に、このアリコットを新規の培地中に接種し(ueberimpfen)、この更なる成長を観察する。この接種はこの際、自動的であることも、又は連続的な培地添加及び培養液取り出しを介して行われることもできる。
【0049】
進化方法の終点は、選択圧力の向上にもかかわらず、成長速度の更なる上昇が観察されない場合にも達成される。個々のコロニーのレプリコン配列の単離及び配列決定は、将来的に個々にその遺伝子産物の親和性について検査される可能性のある候補を同定する。同様に、終点で系内に存在する全ての変異体の総数を、遺伝子バンクとして取り扱い、かつ再度最良の変異体を選択アッセイ(例えばファージディスプレイ)を介して同定することが可能である。
【0050】
図1は、以下に詳細に記載される、in vivo自律的進化の系の有利な一実施態様の図式を示す。
【0051】
本発明の更なる主題は、細胞であって、
(i)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(ii)標的分子Xをコードする第2核酸、その際Yは、標的分子Xに結合することができる、
(iii)進化マーカーを調節可能な発現制御因子の制御下でコードする第3核酸を含有し、
その際、この細胞は、タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にすることができ、その際タンパク質Yの変異体Y′は、標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられる、
細胞である。
【0052】
この細胞は相応する核酸を用いてトランスフォーメーション又はトランスフェクションされていることができ、その際市販の及び当業者に十分公知の、トランスフォーメーション及びトランスフェクション方法が使用されることができる。
【0053】
本発明の更なる主題は、本発明による方法を実施するための、即ち、任意のタンパク質Yの変異体Y′の開発のためのキットであって、その際タンパク質Yの変異体Y′が、標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられていて、
(i)場合により細胞、
(ii)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(iii)標的分子Xをコードする第2核酸、その際Yは、標的分子Xに結合することができる、
(iv)進化マーカーを調節可能な発現制御因子の制御下でコードする第3核酸、
その際、この細胞は、タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にすることができ、その際タンパク質Yの変異体Y′は、標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられる、並びに、
(v)場合により適した選択培地
を含有するキットである。
【0054】
ここに開示された方法は、手間のかかるスクリーニング方法が大部分は回避され、かつ任意のタンパク質を進化させることができるという利点を有する。
【0055】
特に、目的に指向した進化と、酵母−ツーハイブリッド系に基づく系との組み合わせにより、標的分子Xに対する改善された結合特性を有するタンパク質の進化を自律的に達成することが可能である。この際、各世代の後に形成された変異体を単離及び特性決定することがもはや必要でなく、この系は複数の世代にわたり、相応する選択された標的分子Xのための最良の結合特性を有するタンパク質Yの変異体Y′が自ずから形成されるまで放置される。
【0056】
RNAレプリコンを介して支持されるin vivo進化が、細胞外タンパク質(例えば、免疫グロブリン、アンチカリン(Anticalin)、その他)、受容体その他の改善をも可能にするためには、目的分子Xは細胞中で、細胞表面に又は周辺質中へと前記細胞が輸送され、この区画中で固定されたままであるように発現されることができる。レプリコン−コードされる相互作用の変形は同様に、細胞表面で固定され、かつ、場合により柔軟なリンカー−ドメインを介して目的細胞Xと相互作用できる。高められた相互作用は一方では(場合によっては、相互作用により排除される第3の分子を介して)、当該細胞の選択利点を生じる。このシグナルは、例えば、膜アンカードメインのコンフォメーション変更を介して、これに引き続くシグナルカスケードにより細胞核中で行われることができる(例えば、インシュリンのインシュリンレセプターに対する親和性の最適化)。
【0057】
また、細胞内部中への重要分子が又は可能性のある細胞毒が前記細胞から輸送される、膜トランスポーターの制御も考えられる。
【0058】
また、ジ−、トリ−又はマルチマーのタンパク質としての標的分子Xの発現も考えられ、これにより前記分子間での増加する親和性の際に、自体の架橋及びこの表面でのクラスター形成が生じる。これは、前記細胞の表面での付着に影響を及ぼすことができ、これにより再度強力に付着性の細胞の選択が可能になり、その一方で余り強力に付着しない細胞は増加するストリンジェンシーでもって除去される。
【0059】
同様に、付着を介して、レプリコン−コードされる相互作用変異体Y′の選択が行われ、これは細胞中で細胞表面上で引き続く経路で発現される。標的分子X(タンパク質、ペプチド、核酸、他のポリマー、小分子量の有機又は無機の粒子(例えば、酵素により触媒作用される反応の中間状態))はこの際、固体又は液体のマトリックス(又はミセル)に結合し、細胞懸濁液と接触する。より高い親和性の変異体を発現した細胞は、この固体のマトリックスに対してより高い親和性を有する。増加するストリンジェンシー(例えば、塩、pH、結合競争その他)でもって、弱く付着する細胞は洗い流され、残存する細胞は新規の培地に曝され、かつ新規のマトリックスが提供され、その一方で古いマトリックスの一部は除去される。この工程は、容易に自動化できる。
【0060】
極めて良好なバインダーを発現する細胞は、この表面からもはや剥離されない。それにもかかわらずこの細胞は場合により更に細胞分裂できる。娘細胞は、確保された直ぐ近くの環境で、新規のマトリックスを有する離れた領域に達成することができる機会を有する。工程から工程へと(その際、「工程」は、新規の媒体の接種から、このマトリックスの一部を用いた次の接種までが定義される)、この際このマトリックスタイプは交換されることができる。即ち、例えば磁気ビーズ及びポリビニル表面(イライザプレート)である。これにより、ある1工程から次工程まで常に「新規に確保されるマトリックス」のみが移送される。
【0061】
いかなる場合においても(細胞内−、同様に細胞外)、この親和性をタンパク質に対して高めるのみでなく、小さい有機又は無機の分子に対しても高める可能性が存在する。このためにこの分子は例えば、ビオチンに対して共役的に結合していることができる。この分子は、細胞質又は細胞外培地中に導入される(場合により、前記分子は膜透過性である)。目的分子Xの代わりに、この場合にはストレプトアビジン(ツーハイブリッドの場合に融合体として)が発現される。この目的分子/ビオチン−キメラは、ストレプトアビジンに結合し、かつ従って前記目的分子を親和性標的として機能すべく提示する。
【0062】
図の説明
図1:in vivoでの自律的進化のための系の図式
プラスミド1は、上流転写活性化配列(UAS)の制御下で、より迅速な成長を媒介する進化マーカーをコードする。DNA結合ドメイン及び成分X(結合/X)からなる融合タンパク質は、プラスミド2によりコードされ、かつUASに結合する。成分X及びタンパク質Y又はY′の間の相互作用の強度に応じて、この融合される活性化ドメイン(活性化因子)は細胞固有の転写複合体を動員することができ、かつ、進化マーカーの依存性発現を生じる。この融合タンパク質Y/活性化因子は、自律的にかつ不正確に、RNA依存性RNAポリメラーゼ(Phi)により複製されるレプリコンによりコードされる。
【0063】
実施例
合成遺伝子から出発して、以下の要素を含有するPCR産物を産生した:T7−プロモーター+酵母タンパク質Gal4の活性化ドメインのためのリーディングフレーム(Fields及びSternglanz, 1994)、30個のランダムなアミノ酸のペプチドと一緒に融合している(=Act/30X)。30個のC末端アミノ酸のランダム性により、約109個の異なる変異体の数を含有する遺伝子バンクを産生した。転写反応において、前記PCR産物5pmolを100μlのT7−ポリメラーゼを用いて反応100μl中で転写した(=Act/30X レプリコン)。
【0064】
プラスミドpAS(Fields及びSternglanz, 1994)中に、RNA依存性のRNAポリメラーゼQβ(Acc. No. AAM33128)のための酵母発現カセットをクローニングした(=pAS−Qβ)。前記プラスミドは、トリプトファン−原栄養体に対する酵母中での選択を可能にした。
【0065】
HIVインテグラーゼ(Acc. No. AAC61700.1)のためのリーディングフレームを、Gal−DNA−結合ドメインと融合してプラスミドpAS−Qβ中にクローニングし(=pAS−Qβ−Int)、酵母株Y190中にトランスフォーメーションし、かつトリプトファン−原栄養体に対して選択した。
【0066】
pAS−Qβ−Intを用いてトランスフォーメーションした酵母培養液を、Act/30X レプリコンRNA10μgを用いてトランスフォーメーションし(トランスフォーメーション率、約500000)及び直接的にトリプトファン/ヒスチジン−ドロップアウト液体培地50ml中に12mM 3Aアミノトリアゾール(3−AT)の添加下で30℃で振盪下でインキュベーションした。
【0067】
OD(600nm)3.0の達成後に、新規培地50mlを前記培養液200μlで接種し、かつ新たに、OD 3.0の達成まで振盪した(これは、8倍の世代数に相当する)。8で割ったこのODに達するまでの時間は、この酵母集団の産生時間に相当する。
【0068】
この世代時間は60分間に近づき、この3−AT濃度をまず、25mM(5回の接種後に)に、次いで50mM(8回の接種後に)に高めた。10回の接種後に、85分間の世代時間に達し、これは更なる接種によっても更に減少しない。
【0069】
10回の接種培養液の酵母培養液20μlをトリプトファン/ヒスチジン−ドロップアウトプレート上に配置し、かつ3日間30℃でインキュベーションした。この最も大きなコロニーをトリプトファン/ヒスチジン−ドロップアウト媒体30ml中に接種し、OD 3.0まで増大させ、かつ遠心分離した。この細胞ペレットをガラスビーズを用いてSTET緩衝液、フェノール及びクロロホルム中で分解し、この水性の上清を2回クロロホルムを用いて振出し、含有される核酸をエタノールを用いて沈殿させた。この乾燥させたペレット(DNA及びRNA)を10mMトリス100μl中に再懸濁した。この懸濁液5μlを、レプリコン特異的なオリゴヌクレオチドを用いて、逆転写酵素を用いてDNAに転写し、かつPCRを介して増幅させた。このPCR産物を適したベクター中でサブクローニングし、かつ大腸菌中でトランスフォーメーションした。
【0070】
この384大腸菌クローンの配列評価は、進化したAct/30X変異体をコードする相違する配列の統計学的分布を生じ、この変異体はHIVインテグラーゼに対する高められた親和性を示す。より詳細な検査は、この変異ペプチド(30X)中の繰り返されるアミノ酸モチーフを示し、これは高められた親和性を担う。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、in vivoでの自律的進化のための系を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質Yの変異体Y′の製造方法であって、タンパク質Yの変異体Y′が標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられ、以下の工程:
(a)次のものを含有する細胞の調整工程、
(a1)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(a2)標的分子Xをコードする第2核酸、及び
(a3)調節可能な発現制御配列の制御下で進化マーカーをコードする第3核酸、
その際この進化マーカーの発現は、Y及び/又はY′のXに対する結合により調節される、
(b)以下の条件下での細胞培養工程、
(b1)タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にする条件、及び
(b2) (a)からの細胞に対して調節された、進化マーカーの発現を示す細胞の選択を可能にする条件、及び
(c)進化マーカーの調節された発現を示す細胞の同定工程及び場合により単離工程、及び
(d)場合により、(c)からの細胞中のタンパク質Yの変異体Y′の同定工程及び/又は特性決定工程、
を含むタンパク質Yの変異体Y′の製造方法。
【請求項2】
細胞が、原核細胞又は真核細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞が、大腸菌、酵母細胞、植物細胞及び脊椎動物細胞、特に哺乳類細胞から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1核酸が、天然の変異率に対して高められた変異率で複製及び/又は転写される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第1核酸がRNA−レプリコンの形で存在し、かつ(a)からの細胞が更に、前記RNAレプリコンを変異体の形成下で複製することができるレプリカーゼを含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
RNAレプリコンが、線状RNA配列、RNAベースの生物からのゲノム、RNAプラスミド、RNAバクテリオファージ及びRNA類似体から選択されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
レプリカーゼが、RNA依存性RNAポリメラーゼ、例えばQβ−、Phi6−、Phi8−、Phi9−、Phi10−、Phi11−、Phi13−及びPhi14−レプリカーゼから選択されている、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
進化マーカーが、発現が細胞のより迅速な増殖を可能にする遺伝子から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
進化マーカーが、細胞の固体のマトリックスに対する結合を可能にする、表面常設タンパク質をコードする遺伝子から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
方法を細胞内で実施する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
タンパク質Y及びその変異体Y′がそれぞれ、第1の発現調節因子にカップリングしていて、かつXが第2の発現調節因子にカップリングしていて、その際進化マーカーの発現の調節のために、第1の発現調節因子及び第2の発現調節因子と進化マーカーをコードする核酸との相互作用が必要である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
Xがタンパク質である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
第1核酸がY及び第1の発現調節因子からなる融合タンパク質をコードし、かつ第2核酸がX及び第2の発現調節因子からなる融合タンパク質をコードするか、
又は、
その際、第1核酸がY及び第2の発現調節因子からなる融合タンパク質をコードし、かつ第2核酸がX及び第1の発現調節因子からなる融合タンパク質をコードする、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
第1の発現調節因子が、ポリメラーゼのための調節因子である、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
第2の発現調節因子が、ポリメラーゼのための調節因子である、請求項11から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
第3核酸上の調節可能な発現制御配列が上流活性化配列(UAS)を含有し、かつ、第2の発現調節因子が、特異的にUASに結合することができる結合タンパク質である、請求項14記載の方法。
【請求項17】
第3核酸上の調節可能な発現制御配列が上流活性化配列(UAS)を含有し、かつ、第1の発現調節因子が、特異的にUASに結合することができる結合タンパク質である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
調節可能な発現制御配列が、タンパク質Gal4の結合を可能にする上流活性化配列(UAS)を含有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
Y及び/又はY′のXに対する結合は、第3核酸上の調節可能な発現制御配列の活性化を可能にする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
細胞であって、
(i)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(ii)標的分子Xをコードする第2核酸、
その際Yは標的分子Xに結合することができる、
(iii)進化マーカーを調節可能な発現制御因子の制御下でコードする第3核酸を含有し、
その際、この細胞は、タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にすることができ、その際タンパク質Yの変異体Y′は、標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられる、細胞。
【請求項21】
第1核酸がRNA−レプリコンの形で存在し、かつ細胞が更に、RNAレプリコンを変異体の形成下で複製することができるレプリカーゼを含有する、請求項20記載の細胞。
【請求項22】
原核細胞又は真核細胞である、請求項20又は21記載の細胞。
【請求項23】
タンパク質Yの変異体Y′の製造のためのキットであって、タンパク質Yの変異体Y′が標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられ、
(i)場合により細胞、
(ii)変異すべきタンパク質Yをコードする第1核酸、
(iii)標的分子Xをコードする第2核酸、その際
Yは標的分子Xに結合することができる、
(iv)進化マーカーを調節可能な発現制御因子の制御下でコードする第3核酸、
その際、この細胞は、タンパク質Yの変異体Y′の形成を可能にすることができ、その際タンパク質Yの変異体Y′は、標的分子Xに対する変更された結合特性により特徴付けられる、並びに、
(v)場合により適した選択培地
を含有する、タンパク質Yの変異体Y′の製造のためのキット。
【請求項24】
タンパク質Yの変異体Y′の製造のためのキットであって、
(i)請求項20から22までのいずれか1項に定義された細胞、
(ii)細胞を、選択遺伝子の調節された発現に基づいて選択することができる選択培地
を含有する、タンパク質Yの変異体Y′の製造のためのキット。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504144(P2009−504144A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525457(P2008−525457)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007797
【国際公開番号】WO2007/017228
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508042032)ゲネアルト アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】GENEART AG
【住所又は居所原語表記】Josef−Engert−Strasse 11, D−93053 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】