説明

mRNAをトランスフェクションした抗原提示細胞

RNAを増幅して、大部分、センス配向であり、そしてアンチセンス配向であるRNA分子を欠いている、RNA分子を得る方法。免疫原性抗原をコードするセンスRNAを含み、そしてアンチセンスRNAおよびdsRNAを本質的に欠いている組成物を、抗原提示細胞にトランスフェクションする方法、並びに該方法にしたがって調製した樹状細胞もまた、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/525,076号、2003年11月25日出願に優先権を請求し、該出願の開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に開示する主題は、RNAを増幅し、望ましい機能に応じて、大部分、センス配向またはアンチセンス配向であるRNA分子を得る方法に関する。抗原提示細胞に、腫瘍抗原または微生物抗原をコードするセンスRNAをトランスフェクションする方法、並びに本明細書に開示する方法にしたがって調製した抗原提示細胞もまた、提供する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
Tリンパ球は、感染性病原体および腫瘍細胞に対する免疫応答において、並びに臓器移植拒絶および自己免疫において、重要な役割を果たす。T細胞は、抗原提示細胞表面上のMHC分子に結合した小さい断片の形で、抗原が提示されている場合にのみ、抗原を認識する。T細胞が応答するためには、休止中のTリンパ球に、抗原提示細胞(APC)によって、2つのシグナルが提供されなければならない。免疫応答に特異性を与える第一のシグナルは、主要組織適合複合体(MHC)と関連して提示された外来抗原性ペプチドの認識後、T細胞受容体(TCR)を介して伝達される。第二のシグナルは、T細胞が増殖するように誘導し、そして機能させる。したがって、抗原提示は、免疫応答誘導における重要な工程である。
【0004】
特定の抗原に対する免疫応答を誘導する試みの中で、APCに抗原を搬送する多様なアプローチが用いられてきている。これらには、ウイルスベクターの使用、リポソーム中への抗原の挿入、および精製抗原または組換えタンパク質を用いた細胞の直接パルス処理が含まれる。
【0005】
より最近は、RNAのAPCへのトランスフェクションに基づく抗原搬送系が記載されてきている。RNAを装填した抗原提示細胞を用いて、癌および病原体感染を治療するかまたは予防する方法が、本明細書に援用される、米国特許第6,306,388号および第5,853,719号、並びに関連特許および出願に開示される。簡潔には、総腫瘍RNAまたは腫瘍抗原をコードする選択されるRNAを増幅し、そして樹状細胞にトランスフェクションする。病原体由来RNAでトランスフェクションした抗原提示細胞もまた、感染性疾患の治療に使用可能である。
【0006】
抗原で修飾した樹状細胞に基づくワクチンは、有効な抗腫瘍免疫のため非常に有望であり、そしてRNAは、樹状細胞(DC)への抗原搬送のビヒクルとして広く認められている(MitchellおよびNair、2000;NairおよびBoczkowski、2002;Ponsaertsら、2003;並びにPonsaertsら、2002)。抗原をコードする腫瘍RNAは、最も広いありうる腫瘍抗原レパートリーを提供し、特定のHLAハプロタイプも、また総RNA集団中に存在する定義される腫瘍抗原の同定および性質決定も必要としないため、抗原搬送の他の方法に内在する制限を克服する。
【0007】
RNAをトランスフェクションしたDCが、一次細胞溶解性T細胞(CTL)応答を刺激可能であることは、現在、確実に確立されている(Boczkowskiら、1996)。多くの研究によって、多様なモデルにおけるこのアプローチの実現可能性が確認されてきている。総腎細胞癌腫RNAをトランスフェクションしたDCを用いた1つの研究によって、原発性腫瘍および転移腫瘍に対するT細胞反応性が有効に刺激されることが立証された(Heiserら、2001a)。他のin vitro研究によって、自家性腫瘍RNAを装填されたDCが、膀胱癌(Schmittら、2001)、多発性骨髄腫(Milazzoら、2003)、乳癌腫(Muellerら、2003)および結腸直腸癌(Nencioniら、2003)に対する特異的CTLを誘導可能であることが立証されている。結腸直腸癌(Rainsら、2001)、腎細胞癌腫(Suら、2003)および悪性神経膠腫(Kobayashiら、2003)に対して、自家性総腫瘍RNAを装填したDCを用いたワクチン接種戦略を試験する臨床試験が行われている。総RNAの2〜3%という少ない割合のみが、mRNAまたは抗原コード種に対応する。RNAのmRNAを濃縮すると、DCに搬送される同量のRNA中、コードRNA種の比率が増加する。コードRNA種を濃縮する1つの方法は、物理的分離法を用いて、ポリA+ RNAを単離することである。前立腺細胞株mRNAを細胞にトランスフェクションして、DCに基づく臨床等級のワクチンを生成する方法が記載されてきており(Muら、2004)、そして開発されたアプローチを用いた臨床試験が開始された(Muら、2003)。コードRNA集団を濃縮する別の方法は、ポリアデニル化された種のみを偏向して増幅するRNA増幅である。小さい腫瘍標本からRNAを多量に増幅して、コード種を濃縮可能であり、そして生物学的機能の損失を伴わずに増幅が起こることを立証する研究が行われた(Boczkowskiら、2000)。総腫瘍RNAから増幅したRNAが生物学的活性を保持するかどうかを決定することを目的とする研究において、黒色腫細胞株から増幅したRNAをトランスフェクションしたネズミDCは、抗腫瘍CTL応答を生じた。この研究に記載されるRNA増幅プロトコルはまた、顕微解剖レーザー切片由来の前立腺腫瘍細胞にも適用されており、この場合は、自家性患者材料を用いて、腫瘍特異的CTLが誘導されることが報告された(Heiserら、2001b)。したがって、腫瘍RNAを抗原供給源として用いると、RNAを抽出し、そして増幅することが可能な投入腫瘍組織を少量しか必要としないというさらなる利点が提供される。
【0008】
mRNA(ポリA+ RNA)の相補DNAへの変換、およびそれに続く配列の増幅は、分子生物学分野の当業者に周知の基本的技術である。基本的技術の多様な順列の説明は、米国特許第5,962,271号、第5,962,272号および第6,593,086号に見出されることも可能であり、これら特許の内容は、本明細書に援用される。例えば、RNA増幅の公開されているプロトコルは、テンプレート切り替え技術を利用する(Chenchikら、1998)。この技術の略図を図1Aに示す。この技術は、MMLV逆転写酵素のRNアーゼH欠損突然変異体に特有の特性を利用して、さらなる残基、主にシトシンを、合成された第一鎖cDNAの5’端に取り込む。いくつかの連続するG残基を3’端に含有するオリゴヌクレオチドが、第一鎖合成反応に存在する場合、ワトソン−クリック塩基対形成がGおよびCヌクレオチドの間に生じるであろう。逆転写酵素が転写物の5’端に到達すると、該酵素はテンプレートを切り替え、そしてアニーリングしたオリゴヌクレオチドの定義される配列からの転写を続ける。cDNAの3’端は、他の定義される配列を含有するポリdTオリゴヌクレオチドをアニーリングさせることによって定義される。第一鎖cDNAの定義される3’端および5’端は、PCRに基づく限定されない増幅を可能にするであろう。続いて、増幅した産物中の抗原配列の転写および翻訳を可能にするため、PCR反応に用いるGを含有するオリゴヌクレオチドにT7プロモーター配列を付加する(キャップスイッチ)ことによって、T7 RNAポリメラーゼ・プロモーター配列を導入する。元来はChenchikらに記載されたテンプレート切り替えプロトコルは、操作、およびそれに続くプラスミドベクターへのサブクローニングを容易にするために設計された。
【0009】
このプロトコルでは、キャップスイッチおよびポリdTオリゴヌクレオチドはどちらも重複配列を含有する。これによって、PCR反応において、単一オリゴヌクレオチドを用いた増幅が可能になる。例えば、T7含有オリゴヌクレオチドを第一鎖cDNA合成に用い、そしてT7含有オリゴヌクレオチドをPCR工程に用いる場合、このオリゴヌクレオチドを、cDNAの5’端および3’端両方にアニーリングさせることも可能である。最終PCR産物は、両端にT7 RNAポリメラーゼ結合性部位を有するであろう。したがって、続く転写反応において、RNAポリメラーゼは、5’端および3’端両方に結合して、センス配向およびアンチセンス配向両方で、RNAを合成するであろう。
【0010】
センス配向およびアンチセンス配向両方のRNAを抗原提示細胞にトランスフェクションすると、有望な結果が生じてきている。しかし、抗原提示細胞に対するこうした方法の負の影響は、以前には認識されてきていなかった。したがって、樹状細胞および他の抗原提示細胞におけるmRNAコード抗原の発現を最適化する方法が必要である。本発明は、この必要性を満たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
概要
本明細書に開示する主題の1つの態様において、抗原提示細胞に少なくとも1つのmRNAをトランスフェクションする方法を提供する。該方法は、アンチセンス配向RNAおよび二本鎖RNAを本質的に欠き、そして少なくとも1つのセンス配向mRNAを含む調製物を:
(i)試料から少なくとも1つのmRNAを増幅して、ポリヌクレオチド・テンプレートを産生し、ここで該ポリヌクレオチド・テンプレートは、該ポリヌクレオチド・テンプレートのセンス鎖のみに機能可能であるように連結された、in vitro転写に適したプロモーターを含む;そして
(ii)該ポリヌクレオチド・テンプレートをin vitro転写して、少なくとも1つのセンス配向mRNAを産生する、ここで該ポリヌクレオチド・テンプレートは、クローニングされたテンプレートではない
ことによって、調製し;そして
少なくとも1つの抗原提示細胞に、調製物由来の少なくとも1つのセンス配向mRNAをトランスフェクションすることを含む。方法のいくつかの態様において、試料からのmRNAの増幅は、試料からmRNAを逆転写して、cDNAを含むポリヌクレオチド・テンプレートを産生し;そして第一のプライマーおよび第二のプライマーを用いて、該ポリヌクレオチド・テンプレートcDNAを増幅する、ここで第一のプライマーおよび第二のプライマーの一方のみが、該ポリヌクレオチド・テンプレートcDNAに、in vitro転写に適したプロモーターを挿入することを含む。いくつかの態様において、第一のプライマーは、ポリTストレッチ、および第二のプライマーに配列相同性を本質的に持たない5’配列を含み、そして第二のプライマーは、in vitro転写に適したプロモーターを含む。
【0012】
本明細書に開示する主題の別の態様において、上述の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞を提供する。いくつかの態様において、抗原提示細胞は樹状細胞である。さらに、いくつかの態様において、樹状細胞は成熟樹状細胞である。他の態様において、樹状細胞は未成熟樹状細胞である。
【0013】
さらなる態様において、キャリアー中に、上に開示する、mRNAが装填された新規抗原提示細胞の少なくとも1つを含む、組成物を提供する。
さらなる態様において、少なくとも1つの抗原に対して、被験者において免疫応答を生じる方法を提供する。該方法は、上述のmRNAが装填された新規抗原提示細胞を被験者に導入することを含み、ここでmRNAが装填された抗原提示細胞は、被験者の免疫系に少なくとも1つの抗原を提示し、それによって少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を生じる。
【0014】
さらなる態様において、被験者において障害を治療する方法を提供する。該方法は、治療が必要な被験者に、少なくとも1つのセンス配向mRNAを含み、そしてアンチセンス配向RNAおよび二本鎖RNAを本質的に欠いているRNA調製物をin vitroでトランスフェクションした少なくとも1つの抗原提示細胞を含む、療法的有効量の組成物を投与することを含み、ここで、少なくとも1つのセンス配向mRNAが、上述の方法によって産生され、そしてポリヌクレオチド・テンプレートがin vitro転写されて、少なくとも1つのセンス配向mRNAが産生され、ポリヌクレオチド・テンプレートはクローニングされたテンプレートではない。いくつかの態様において、障害は癌である。他の態様において、障害は微生物感染の結果である。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、治療される被験者から得られる、自家性抗原提示細胞である。
【0015】
したがって、本明細書に開示する主題の目的は、RNAを増幅し、望ましい機能に応じて、大部分、センス配向またはアンチセンス配向であるRNA分子を得る、新規方法を提供することである。この目的および他の目的が、本明細書に開示する主題によって、完全にまたは部分的に達成される。
【0016】
本明細書に開示する主題の目的が、上に言及されてきているが、付随する図および以下に記載する実施例と関連付けて解釈すると、説明が進むに連れて、他の主題および側面が明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
詳細な説明
本明細書に開示する主題の実行は、別に記載しない限り、当該技術分野の技術範囲内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の慣用的技術を使用する。こうした技術は、文献に完全に説明されている。これらの方法は、以下の刊行物に記載される。例えばSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL, 第2版(1989);CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M. Ausubelら監修(1987));METHODS IN ENZYMOLOGYシリーズ(Academic Press, Inc.);PCR:A PRACTICAL APPROACH(M. MacPhersonら IRL Press at Oxford University Press(1991));PCR 2:A PRACTICAL APPROACH(M.J. MacPherson, B.D. HamesおよびG.R. Taylor監修(1995));ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL(HarlowおよびLane監修(1988));USING ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL(HarlowおよびLane監修(1999));およびANIMAL CELL CULTURE(R.I. Freshney監修(1987))を参照されたい。
【0018】
抗原提示細胞(APC)は、腫瘍および感染性疾患の治療に重要な役割を果たす。APCは抗原をプロセシングし、そして細胞表面上に提示する。抗原提示細胞に抗原を搬送する1つの方法は、RNAトランスフェクションを通じる。RNAトランスフェクションの方法は、論文に記載されている:Boczkowskiら、2000およびGrunebachら、2003。核酸トランスフェクションのさらなる方法が当業者に知られる。
【0019】
抗原コードRNAは、定義されるRNA、総RNA、または選択される抗原(単数または複数)をコードする増幅されたRNAであることも可能である。APCにRNAが装填されたならば、RNAはAPC内で翻訳され、そして生じたタンパク質はプロセシングされて、そしてMHC分子と関連して提示される。これによって、提示されたペプチドに特異的な免疫応答が開始される。
【0020】
RNAは、米国特許第5,962,271号および第5,962,272号に記載されるCAPスイッチ技術の修飾型または5’端に定義される配列を生じる他の方法いずれかを用いて、増幅可能である。他の方法には、限定されるわけではないが、欧州特許第0 625 572号に記載されるものなど、RNAの5’端への定義される配列の連結を伴う方法が含まれる。上述の特許は各々、本明細書に援用される。
【0021】
RNAを増幅する既知の方法の大部分は、センスおよびアンチセンス両方のRNA分子を含むRNA集団を生じる。しかし、先行技術は、こうしたアンチセンスmRNAが抗原提示細胞のトランスフェクションにおいて有しうる有害な影響を認識していなかった。アンチセンス配向のPCRテンプレートの転写は、センス配向のテンプレートの収量の減少を導く。さらに、アンチセンス種は、センス転写物にアニーリングして、配列特異的二本鎖RNA仲介性遺伝子サイレンシングを導きうる(ZamoreおよびAronin、2003およびDykxhoornら、2003)。これらの問題を以下に詳細に論じる。
【0022】
反対配向の転写物は、dsRNAセンス−アンチセンス二重鎖を形成する潜在能力を有する。dsRNA二重鎖が関与すると考えられる制御現象の数および種類は、迅速に拡大しつつある。例えば、dsRNAは、ベータ細胞機能を阻害し、そして一酸化窒素の産生を刺激することによって、膵島損傷を誘導することが示されてきている(Blairら、2002)。二本鎖RNAはまた、ワクシニアウイルス感染細胞において、アポトーシスを誘発することも示されてきている(Kiblerら、1997)。dsRNAが誘発する細胞死に関与する中間体に対してはかなりの研究が行われてきているが、二本鎖RNAによるアポトーシス誘導の機構は完全には性質決定されていない。
【0023】
dsRNA二重鎖の潜在的に有害な影響に加えて、アンチセンスRNAは、抗原提示細胞の生存および機能に重要な遺伝子をサイレンシングする際に役割を果たすことも可能である。アンチセンスRNAの存在はまた、細胞において機能するタンパク質の合成に利用可能なテンプレートの量の減少も導く。さらに、アンチセンスRNAの存在は、TLR3に活性化されるRNA依存性プロテインキナーゼによる、細胞中のタンパク質翻訳の配列非依存性阻害を促進可能である。
【0024】
しかし、上述の影響に加えて、アンチセンスRNAまたは二本鎖RNAの形のアンチセンスRNAを用いて、生物学的機能を実行することも可能である。この1つの限定されない例は、DCにおけるToll受容体経路を誘発することによって、成熟刺激を提供することである。
【0025】
抗原搬送の目的のため、APCをトランスフェクションするには、センスRNA組成物が好ましく、これは、センスRNAがmRNAにコードされる抗原の翻訳を導くためである。抗原提示細胞のトランスフェクションに前に使用したアンチセンスRNAが、組成物中に存在すると、有害な影響が生じる可能性もある。これらの影響には、限定されるわけではないが、(a)細胞において機能するタンパク質の合成用のセンス配向のテンプレートの減少;(b)siRNA、アンチセンスRNAまたは二本鎖RNA機構を介した、形質導入された細胞遺伝子の配列特異的サイレンシング、および(c)TLR3に活性化されるRNA依存性プロテインキナーゼに仲介される、細胞におけるタンパク質翻訳の配列非依存性阻害が含まれる。特定のアンチセンスRNAに特異的なプローブを用いたノーザンブロット分析などの多様な方法を用いて、アンチセンスRNAの存在を検出することも可能である。例えば、ユビキチン・アンチセンスRNAを認識するプローブを用いて、増幅法を評価することも可能である。
【0026】
一方、特定の状況では、アンチセンス組成物が好ましい。例えば、アンチセンス組成物は、特定の遺伝子をサイレンシングするのに好ましい可能性もある。この場合、センス配向分子を本質的に欠いている組成物を得ることが望ましいであろう。
【0027】
本明細書に開示する主題は、増幅産物の配向を調節可能な、改善されたRNA増幅プロセスを提供する。該方法は、本質的に一方向性であるRNA分子の調製物を生じる。言い換えると、RNAは、大部分、センス配向またはアンチセンス配向であり、そして反対方向のRNA分子、および反対配向のRNA分子の相補的結合から生じるdsRNAを本質的に欠いているであろう。センス配向であり、そしてアンチセンス配向の分子を本質的に欠いている定方向RNA調製物を提供する。本明細書に開示するように、アンチセンス不含増幅RNAは、mRNAが由来する元来の細胞、例えば癌細胞に発現される遺伝子の忠実な再現である。さらに、本明細書の実施例において立証するように、アンチセンス不含RNAを細胞にトランスフェクションすると、DCの回収がより高くなり、これはDCに基づく大規模なワクチン製造に重要な意味があり、そして従来知られている方法の改善である。
【0028】
センス配向分子を本質的に欠いているアンチセンス分子の調製物もまた、提供する。
I.定義
「増幅」は、プライマーおよび核酸ポリメラーゼを用いた核酸増幅法を指し、ターゲット核酸配列の多数のコピーを生じる。こうした増幅反応は当業者に知られ、そして限定されるわけではないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR、U.S.4,682,195、4,683,202および4,965,188を参照されたい)、RT−PCR(U.S. 5,322,770および5,310,652を参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(LCR、EP 0 320 308を参照されたい)、NASBAまたはU.S. 5,399,491に記載されるTMAおよびギャップLCR(GLCR、U.S. 5,427,202を参照されたい)などの類似の反応が含まれる。核酸ターゲットがRNAである場合、逆転写酵素を用いて、RNAをまず相補DNA鎖にコピーすることも可能である(U.S. 5,322,770および5,310,652を参照されたい)。
【0029】
「抗原」は、本明細書において、抗体またはT細胞受容体(TCR)に結合する分子を指す。用語「抗原」は、本明細書において、全分子、および抗体またはTCRに結合する全分子の特定の部分(エピトープ)の両方を含む。TCRは、APC表面上のMHC分子と複合体形成した際のペプチド断片のみに結合し、これをAPCによる「抗原提示」と称する。
【0030】
「抗原提示細胞(APC)」は、免疫系の特定のエフェクター細胞によって認識可能な抗原−MHC複合体の形で、1以上の抗原を提示し、そしてそれによって提示しようとする単数または複数の抗原に対する有効な細胞性免疫応答を誘導することが可能な、細胞クラスを指す。APCは、マクロファージ、B細胞、内皮細胞、活性化T細胞、および樹状細胞などの、損なわれていない(intact)全細胞;あるいは天然存在または合成の他の分子、例えばβ2−ミクログロブリンと複合体形成した精製MHCクラスI分子であることも可能である。多くの種類の細胞が、T細胞認識のため、細胞表面上に抗原を提示可能であるが、樹状細胞のみが、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答のために未刺激(naive)T細胞を活性化するのに十分な量の抗原を提示する能力を有する。
【0031】
「癌」によって、比較的自律性の増殖を示す細胞の異常な存在を意味し、したがって、癌細胞は、細胞増殖制御の重大な損失によって特徴付けられる異常な増殖表現型を示す。癌性細胞は、良性であることもまたは悪性であることも可能である。多様な態様において、癌は、膀胱、血液、脳、乳房、結腸、消化管、肺、卵巣、膵臓、前立腺、または皮膚の細胞に影響を及ぼす。癌細胞の定義は、本明細書において、原発性癌細胞のみでなく、癌細胞祖先に由来するいかなる細胞も含む。これには、転移癌細胞およびin vitro培養物および癌細胞由来の細胞株が含まれる。癌には、限定されるわけではないが、固形腫瘍、液性腫瘍、血液学的悪性腫瘍、腎細胞癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫、腺腫、肉腫、癌腫、芽腫などが含まれる。好ましくは、癌細胞は、腎癌細胞、多発性骨髄腫細胞または黒色腫細胞である。
【0032】
「クローニング」は、本明細書において、本発明の方法にしたがってRNAを増幅することによって作成したcDNAを、ベクター、たとえばプラスミドベクター内に挿入することを意味する。ベクターは、通常、ベクターを増幅するための複製起点、およびクローニングされた目的のポリヌクレオチド配列を含む。クローニングは、本明細書において、目的のポリヌクレオチド配列の増幅を一般に含まず、そして特に、ポリメラーゼ連鎖反応増幅を含まない。本明細書に開示する主題の方法は、in vitro転写のためのクローニングされたテンプレートの使用を除外する。特に、本明細書に開示する主題の方法は、in vitro転写のため、テンプレートをクローニングする必要を伴わずに、抗原提示細胞のトランスフェクション用の、本質的にセンスであるRNAを提供する手段を提供する。
【0033】
「樹状細胞(DC)」は、多様なリンパ系組織および非リンパ系組織に見られる形態学的に類似の細胞種の多様な集団を指す(Steinman、1991)。樹状細胞は、生物において、最も強力でそして好ましいAPCを構成し、そしてT細胞活性化および増殖に必要なシグナルを提供する。樹状細胞は、骨髄前駆細胞由来であり、末梢血中、少数で循環し、そして未成熟ランゲルハンス細胞または最終分化成熟細胞のいずれかとして見られる。樹状細胞はまた、単球から分化することも可能である。樹状細胞は単球から分化することも可能であるが、これらは異なる表現型を所持する。例えば、特定の分化マーカー、CD14抗原は、樹状細胞には見られないが、単球には存在する。また、成熟樹状細胞は、食作用を持たないが、単球は非常に食作用性の細胞である。成熟DCがT細胞活性化および増殖に必要なすべてのシグナルを提供可能であることが示されてきている。抗原提示細胞(APC)の単離法、並びに樹状細胞前駆体および成熟樹状細胞の産生法が当業者に知られる。例えば、本明細書にその内容が援用される、Bergerら、2002;米国特許出願20030199673および20020164346;並びにWO 93/20185を参照されたい。好ましい態様において、その内容が本明細書に援用される、Romaniら、1994またはSallustoら、1994に記載される方法によって、CD14+末梢血単球細胞(PBMC)から樹状細胞を調製する。あるいは、Cauxら、1996の方法によって、CD34+細胞から樹状細胞を調製することも可能である。
【0034】
「本質的に欠いている」は、センスmRNA分子の10%未満、好ましくは5%、4%、3%、2%、または1%未満の量で、アンチセンスRNA分子およびdsRNAが存在する調製物を指すように用いられる。好ましくは、アンチセンス分子およびdsRNA分子は検出不能である。
【0035】
「mRNA」は、翻訳可能なRNAを意味する。mRNAは、リボソーム結合性部位および開始コドンを含有するであろう。好ましくは、mRNAはまた、5’キャップ、停止コドンおよびポリAテールも含有するであろう。
【0036】
「機能可能であるように連結された」および「機能的に連結された」は、本明細書において、交換可能に用いられ、そしてヌクレオチド配列の転写がプロモーター領域に調節され、そして制御されるような方式で、ヌクレオチド配列に連結されているプロモーター領域を指す。同様に、ヌクレオチド配列は、機能可能であるように連結されたプロモーターの「転写調節」下にあると言う。ヌクレオチド配列にプロモーター領域を機能的に連結するための技術が当該技術分野に知られる。
【0037】
「病原体」は、疾患の病因に関与するウイルスまたは生物いずれかを指し、そしてまた、その弱毒化派生物も指す。こうした病原体には、限定されるわけではないが、細菌、原生動物、真菌およびウイルス病原体、例えば、ピロリ菌(Helicobacter pylori)などのヘリコバクター属(Helicobacter)、サルモネラ属(Salmonella)種、赤痢菌属(Shigella)種、エンテロバクター属(Enterobacter)種、カンピロバクター属(Campylobacter)種、ハンセン菌(Mycobacterium leprae)などの多様な放線菌、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ペスト菌(Yersinia pestis)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ属(Brucella)種、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)などのブドウ球菌属(Staphylococcus)種、連鎖球菌属(Streptococcus)種、クロストリジウム属(Clostridium)種、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プラスモディウム属(Plasmodium)種、リーシュマニア属(Leishmania)種、トリパノソーマ属(Trypanosoma)種、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト・パピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヘルペスウイルス(例えば1型単純疱疹ウイルス、2型単純疱疹ウイルス、コロナウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスおよびエプスタイン−バーウイルス)、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、および風疹ウイルスが含まれる。本発明の方法は、HIVおよびHCVなどのレトロウイルス病原体に適用した際、特に有用である。
【0038】
病原体RNAは、病原体ゲノム(例えばレトロウイルス・ゲノム)または病原体mRNAの形であることも可能であり、スプライシングされていることもまたされていないことも可能である。例えば、HIVの場合、HIV RNAは、ウイルス粒子から単離されたかまたはウイルス複製中に宿主細胞から単離された、ウイルスRNAゲノムの形であることも可能であるし、そしてまたスプライシングされたかまたはされていないHIV mRNAの形であることも可能である。好ましい態様において、病原体RNAは、HIVビリオンから単離されたHIVゲノムRNAである。病原体RNAを逆転写してcDNAを産生することも可能であり、これが次いで、核酸増幅のテンプレートとして働くことも可能である。
【0039】
好ましくは、病原体RNAは、感染個体に存在する多数の病原体種からのものであり、またはこれらに由来する。この文脈において、「由来する」は、核酸が、少なくとも部分的に、病原体、または病原体核酸を含有する細胞(単数または複数)から精製されているか、あるいは核酸が病原体核酸から増幅されていることを意味する。個体に存在する多数の病原体種から核酸を得ることによって、生じるワクチンは、個体に存在する病原体種すべてに対して、潜在的に免疫応答を誘発しうる。
【0040】
II. mRNAの増幅法およびin vitro転写法
本明細書に開示する主題の代表的な利点は、標準的増幅法に、本明細書に開示する新規方法を一般的に図式的に比較することでわかる。図1Aにおいて、標準的増幅法に含まれる工程を図式的に例示する。本明細書に開示する主題の新規方法の一例に含まれる工程を図1Bに示す。
【0041】
図1Aを参照すると、標準的RNA増幅は、SMART増幅法(Clontech)の修飾型であり、方法に用いられる突然変異体RT(Powerscript逆転写酵素、Clontech)に特有の特性によって、1つのRT反応で、第一鎖cDNAの定義される3’端および5’端が提供される。mRNAの5’端に連結されたオリゴヌクレオチドは、逆転写酵素がmRNAの5’端に到達した際に、該酵素がテンプレートを切り替え、そして連結されたオリゴヌクレオチドの端を通じて進むように、短い伸長したテンプレートとして働く。したがって、cDNAの5’端は、相補定義配列またはCDSと呼ばれる、定義された配列を有する。
【0042】
図1Aに示すように、cDNAの3’端は、定義される配列(CDS)、並びにポリT伸長を含有するオリゴを供給することによって、定義される。このオリゴのポリT部分は、mRNAのポリA領域にアニーリングし、そして第一鎖cDNA合成のアンカーとして働く。この方式で、cDNAの3’端はCDS定義配列を含有する。定義されるオリゴヌクレオチド配列がcDNAの両端に存在することで、PCR反応でcDNAを増幅することが可能になる。PCRプライマーは以下のように提供される:3’プライマーとしてTTTT[CDS]、および5’プライマーとしてT7[CDS]。5’プライマーのT7部分はT7 RNAポリメラーゼ結合性部位であり、該部位はT7プロモーターを含むポリヌクレオチド・テンプレートの産生を可能にし、該プロモーターは最終工程でポリヌクレオチド・テンプレートのRNA転写を容易にする。図1Aに示すこの標準的プロトコルでは、元来の3’プライマーおよび5’プライマーは共通の配列を共有し、そしてしたがって、T7[CDS]プライマーは、両端にアニーリング可能である。その結果、T7[CDS]配列を含有するポリヌクレオチド・テンプレート、例えばcDNAは、両方の配向で合成され、そしてこれは最終的に、両方の配向のRNAの形成を導く。
【0043】
この増幅法では、望ましい産物はRNAであってDNAではない。したがって、RNAポリメラーゼ結合性配列が、PCR工程中にポリヌクレオチド・テンプレートの両端に取り込まれる。RNAポリメラーゼ結合性配列がポリヌクレオチド・テンプレートcDNAの3’端にアニーリングすると、アンチセンスRNAが産生され、そしてRNAポリメラーゼ結合性ドメインがポリヌクレオチド・テンプレートcDNAの5’端にアニーリングすると、センスRNAが産生される。したがって、最終産物は、両方向に配向したRNAを含有する。上に論じたように、産物中にセンスおよびアンチセンス両方のRNAが存在すると、RNA産物をトランスフェクションした細胞に有害な影響を有しうる、dsRNAの生成が生じうる。
【0044】
RNAの配向および方向は、目的の遺伝子をコードするもの(センス配向)またはセンス配向の反対(アンチセンス配向)のいずれかと定義される。
本明細書に開示する主題は、先行技術の方法に勝る、いくつかの利点を提供する。センスRNAのみまたはアンチセンスRNAのみを産生する方法を提供することによって、dsRNAの存在が排除される。本明細書に開示する主題の組成物は、反対配向のRNAを本質的に欠いているため、他の方法によって産生される組成物より優れている。これは、互いに配列相同性を本質的に持たないプライマーを用いることによって達成される。プライマーの一方は、RNAポリメラーゼ結合性部位を挿入する。RNAポリメラーゼ結合性部位を5’端にまたは3’端に挿入するかに応じて、cDNAがRNAに転写される際に、センスRNAのみまたはアンチセンスRNAのみが産生されるであろう。
【0045】
II.A.アンチセンスRNAおよびdsRNAを本質的に欠いているセンス配向RNAを産生する方法
本明細書に開示する主題の1つの側面において、アンチセンスRNAの形成をブロッキングする。増幅しようとする出発RNAは、典型的にはポリA+ RNAであり、該RNAは慣用法を用いることによって単離可能である(例えばポリdTクロマトグラフィーの使用)。細胞質RNAおよび核RNAはどちらも、一緒にまたは別個に、本明細書に開示する主題において有用である。本明細書に開示する主題においてやはり有用なのは、腫瘍または病原体に特有の、腫瘍または病原体抗原またはエピトープに対応するRNA、および「ミニ遺伝子」に対応するRNA(すなわち定義されるエピトープをコードするRNA配列)である。腫瘍特異的RNAまたは病原体特異的RNAは、当該技術分野に一般的に知られるいくつかの方法のいずれかによって、総RNA集団から特有の抗原を分離することによって得られうる。1つの限定されない例として、総RNA集団から特有のRNAを分離するのに、サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法が利用可能である。サブトラクティブ・ハイブリダイゼーションのための方法は、当業者に知られる。例えば、本明細書にその内容が援用される、米国特許第5,256,536号および第6,800,734号、並びにUttら、1995を参照されたい。限定されない例として、癌細胞(例えば腎細胞癌)由来の総mRNAを基質として用いて、発現される遺伝子すべてに対応するcDNA分子セットを調製することも可能である。ターゲット細胞に特異的でない(またはターゲット細胞で優先的に発現されていない)配列を取り除くため、cDNA調製物を、対応する正常細胞(例えば正常腎組織)のmRNAと徹底的にハイブリダイズさせる。この工程によって、2つの細胞種に共通の配列すべてが、cDNA調製物から取り除かれる。他のmRNAとハイブリダイズするcDNA配列すべてを廃棄した後、残ったものは、総mRNA集団の選択された分画を含み、そして癌細胞のmRNA集団に特有の配列を含有する。
【0046】
図1Bは、本明細書に開示する主題の1つの態様を例示する。この例示ではT7ポリメラーゼが用いられるが、PCRのため、in vitro転写に適したRNAポリメラーゼ、および関連オリゴヌクレオチド中のその対応する結合性部位のいずれもまた、当てはまるであろう。同じ結果を達成するのに、異なるプライマーおよび異なるポリメラーゼが使用可能であることが明らかである。示す方法を修飾して、アンチセンス分子のみを産生することも可能であることもまた、明らかである。本明細書に開示する主題は、1つの配向のRNAを優先的に産生するための一般化されたスキームを含む。
【0047】
図1Bに示す、本明細書開示の新規方法において、アンチセンスRNAの生成がブロッキングされる。これは、5’プライマーに相同性がまったくない、特有の配列を含有するように、元来のポリT含有プライマーを再設計することによって達成される。これによって、ポリヌクレオチド・テンプレート、好ましくはcDNAの形成が導かれ、該テンプレートは、特定のポリメラーゼ、例えばT7ポリメラーゼによって転写されることも可能な別個のそして特有の末端を含有する。T7[CDS]プライマーは、5’端のみにアニーリングし、そして3’端にはアニーリングせず、そしてしたがってT7プロモーターを含有するアンチセンスcDNAはまったく合成されない。したがって、アンチセンス配向のRNA合成が影響を受け、そしてアンチセンス配向のRNA分子を本質的に欠いているRNA調製物が合成されるということになる。
【0048】
上述の方法は、アンチセンスRNAを本質的に欠いているRNA分子の調製物を生成し、すなわち調製物にはアンチセンスRNAは実質的にまったく存在しない。本明細書に開示する主題の調製物は、他のRNA調製物よりも抗原提示細胞により毒性でないという好都合な特徴を有する。この調製物をトランスフェクションした抗原提示細胞は、健康な細胞をより高い収量で生じる。理論によって限定されるのではないが、トランスフェクション細胞に対するこの驚くべき影響は、アンチセンス配向またはdsRNAの有害な影響が排除されているためである可能性もある。これによって、定量的および定性的両方の意味で増進したトランスフェクション細胞産生を生じる。センスRNAのみをトランスフェクションした細胞は、センスRNAおよびアンチセンスRNA両方をトランスフェクションした細胞集団に比較した際、より高い生存度を示し、そして得られる用量数がより多い。RNAをエレクトロポレーションするDCワクチン製造は、比較的高価であるため、得られる用量数が増加していることは、有意な経済的利点を有する。得られる用量数が増加していることはまた、治療される患者の健康上の利点でもある。
【0049】
II.B.核酸検出法
センスRNA、アンチセンスRNAおよびdsRNAを定量化する多様な方法が知られ、そして限定されるわけではないが、ハイブリダイゼーションアッセイ(ノーザンブロット分析)およびPCRに基づくハイブリダイゼーションアッセイが含まれる。
【0050】
Sambrookら、1989に示される方法にしたがって、多様な溶解酵素または化学的溶液を用いてmRNAを単離することも可能であるし、あるいは製造者に提供される付随の使用説明書にしたがって、商業的に入手可能な核酸結合性樹脂によってmRNAを抽出することも可能である。次いで、標準法にしたがって、核酸プローブおよび/またはプライマーを用いて、抽出された核酸試料に含有されるmRNAを、それぞれ、ハイブリダイゼーション(例えばノーザンブロット分析)および/または増幅法によって検出する。
【0051】
少なくとも10のヌクレオチドを有し、そして検出しようとする核酸に配列相補性または配列相同性を示す核酸分子を、診断法において、ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることも可能である。当該技術分野において、「完全にマッチした」プローブは、特異的ハイブリダイゼーションに必要でないことが知られている。少数の塩基の置換、欠失または挿入によって達成されるプローブ配列中の小規模な変化は、ハイブリダイゼーション特異性に影響を及ぼさない。一般的に20%もの塩基対ミスマッチ(最適に並列させた場合)が許容されうる。断片全体のサイズ、並びに相補的伸長のサイズは、特定の核酸セグメントの意図される使用または適用に応じるであろう。遺伝子のより小さい断片は、一般的に、ハイブリダイゼーション態様において使用を見出し、この場合、検出しようとする相補配列にしたがって、相補領域の長さは多様であることも可能であり、例えば約10〜約100ヌクレオチドの間、または全長であることも可能である。
【0052】
長さ約10ヌクレオチドより長い伸長に渡って相補配列を有するヌクレオチド・プローブは、ハイブリッドの安定性および選択性を増加させ、それによって、得られる特定のハイブリッド分子の特異性を改善するであろう。長さ約25ヌクレオチドより長い、そしてさらにより好ましくは約50ヌクレオチドより長い、または望ましい場合、さらに長い、遺伝子相補性伸長を有する核酸分子を設計することも可能である。こうした断片は、例えば、化学的手段により断片を直接合成することによって、本明細書に援用される米国特許第4,603,102号に記載されるような2つのプライミング・オリゴヌクレオチドを用いたPCRTM技術などの核酸再生技術を適用することによって、または組換え産生のため、選択される配列を組換えベクターに導入することによって、容易に調製可能である。
【0053】
特定の態様において、ハイブリダイゼーションを検出し、そしてしたがって相補配列を検出するため、標識などの適切な手段と組み合わせて、本明細書に開示する主題の核酸配列を使用することが好都合であろう。非常に多様な適切な指標手段が当該技術分野に知られ、検出可能シグナルを生じることが可能な、蛍光、放射性、酵素性または他のリガンド、例えばアビジン/ビオチンが含まれる。放射性試薬または他の環境的に望ましくない試薬の代わりに、蛍光標識または酵素タグ、例えばウレアーゼ、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼもまた、使用可能である。酵素タグの場合、人間の目でまたは分光光度的に可視である手段を提供して、相補核酸含有試料との特異的ハイブリダイゼーションを同定するのに使用可能な、比色指標基質が知られる。
【0054】
異なる「ストリンジェンシー」の条件下で、ハイブリダイゼーション反応を行うことも可能である。該当する条件には、温度、イオン強度、インキュベーション時間、反応混合物中のさらなる溶質、例えばホルムアミドの存在、および洗浄法が含まれる。より高いストリンジェンシーの条件は、より高い温度およびより低いナトリウムイオン濃度などの条件であり、安定なハイブリダイゼーション複合体が形成されるためには、ハイブリダイズする要素間により高い最低相補性を必要とする。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増加させる条件は広く知られ、そして当該技術分野に公表されている。Sambrookら、1989を参照されたい。
【0055】
定量的PCRまたはハイスループット分析、例えばVelculescuら、1995に記載されるような遺伝子発現の連続分析(SAGE)を用いて、mRNAレベルまたはmRNA発現を検出し、そして定量化することも可能である。簡潔には、該方法は、転写物を含有すると推測される細胞または組織試料から多数のmRNAを単離することを含む。場合によって、遺伝子転写物をcDNAに変換することも可能である。遺伝子転写物の試料標本を配列特異的分析に供して、そして定量化する。これらの遺伝子転写物配列の存在量を、罹患患者および健康な患者の通常のデータセットを含む参照データベース配列の存在量に比較する。患者は、患者のデータセットが最も密接に相関し、そして本出願に関しては、転写物の差異を含む、疾患(単数または複数)を有する。
【0056】
特定の側面において、ポリヌクレオチドを、RNAの増幅および/または検出用のヌクレオチド・プローブまたはプライマーとして使用することが必要である可能性もある。示差発現されるmRNAを検出するのに有用なプライマーは、遺伝子またはポリヌクレオチドの匹敵するサイズの相同領域に、少なくとも約80%同一である。本明細書に開示する主題の目的のため、増幅は、合理的な忠実度で、ターゲット配列を複製可能なプライマー依存性ポリメラーゼを使用する、いかなる方法も意味する。T7 DNAポリメラーゼ、大腸菌(E. coli)DNAポリメラーゼのクレノウ断片、および逆転写酵素などの天然または組換えDNAポリメラーゼによって、増幅を行うことも可能である。
【0057】
PCRの一般的な方法がMacPhersonら、1991に解説される。しかし、各適用反応に用いられるPCR条件は実験的に決定される。いくつかのパラメーターが、反応の成功を左右する。これらの中に、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+ ATP濃度、pH、並びにプライマー、テンプレート、およびデオキシリボヌクレオチドの相対的濃度がある。
【0058】
増幅後、アガロースゲル電気泳動を行った後にエチジウムブロミド染色および紫外線照射で視覚化することによって、生じたDNA断片を検出することも可能である。増幅されたDNA断片が、予測されるサイズを有し、予測される制限消化パターンを示し、そして/または正しくクローニングされたDNA配列にハイブリダイズすることを立証することによって、示差発現される目的の遺伝子が特異的に増幅されたことを確認することも可能である。遺伝子発現を検出する他の方法が当業者に知られる。例えば、PCT出願第WO 97/10365号;米国特許第5,405,783号;第5,412,087号;第5,445,934号;第5,405,783号;第5,412,087号;第5,445,934号;第5,578,832号;および第5,631,734号;およびTijssen(監修)、1993を参照されたい。
【0059】
III. APCにトランスフェクションする方法
本明細書に開示する主題は、センス配向RNAをトランスフェクションしたAPCの組成物を提供する。抗原提示細胞を培養し、そしてトランスフェクションする方法が、一般的に知られる。典型的な方法が、係属中の米国仮特許出願第60/522,512号に開示され、該出願の内容は本明細書に援用される。しかし、トランスフェクション法は、本発明に決定的に重要ではない。
【0060】
III.A. APCの単離および培養
抗原提示細胞を単離し、そして培養する方法が当業者に知られる。限定されない例として、未成熟DCを単離するか、またはDC前駆細胞を含有する適切な組織供給源から調製し、そしてin vitroで分化させて、未成熟DCを産生することも可能である。例えば、適切な組織供給源は、骨髄細胞、末梢血前駆細胞(PBPC)、末梢血幹細胞(PBSC)、および臍帯血細胞の1以上であることも可能である。1つの態様において、組織供給源は、末梢血単核細胞(PBMC)である。組織供給源は新鮮であることもまたは凍結されていることも可能である。別の側面において、非幹細胞または前駆細胞の増殖および分化を促進する有効量の増殖因子で、細胞または組織供給源をあらかじめ処理し、次いで、これらを目的の細胞からより容易に分離する。これらの方法は、当該技術分野に知られ、そしてRomaniら、1994およびCaux, C.ら、1996に記載される。
【0061】
抗原提示細胞(APC)には、限定されるわけではないが、マクロファージ、内皮細胞、B細胞および樹状細胞、例えば未成熟樹状細胞、成熟樹状細胞およびランゲルハンス細胞が含まれる。プロフェッショナル抗原提示細胞、特に樹状細胞(DC)は、CD4+およびCD8+ T細胞両方に対する影響を通じて、細胞仲介性免疫の刺激のための、強力なビヒクルを提供する(Banchereau、1998およびBanchereau、2000)。その機能に本質的であることだが、APCは、MHCクラスIおよびクラスII産物両方の上でCD4+およびCD8+ T細胞に提示するため、抗原を効率的にプロセシングする。表面抗原濃縮技術を通じて、末梢血または骨髄から単離されるか、あるいはPBMCの培養物から採取される樹状細胞に、特定の候補抗原を装填することも可能であるし、そして次いで、こうした樹状細胞は、未刺激T細胞または休止T細胞に、該当する抗原(単数または複数)を提示することが可能である(Heiser、2000およびMitchell、2000)。好ましくは、抗原提示細胞は、ワクチン接種される個体に対して自家性であり、そして病原体または癌細胞RNAもまた、患者から単離されるかまたは患者に由来する。
【0062】
III.A.1. PBMCからのAPCの単離
1つの側面において、未成熟DCは、末梢血単核細胞(PBMC)から単離される。好ましい態様において、PBMCが未成熟DCに分化するように、インターロイキン4(IL−4)および/またはIL−13の存在下または非存在下で、有効量の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)でPBMCを処理する。最も好ましくは、本明細書に開示する主題の方法で使用するのに適した未成熟DCを産生するため、GM−CSFおよびIL−4の存在下で、PBMCをおよそ6日間培養する。
【0063】
III.A.2.幹細胞からのAPCの単離
in vitro拡大および分化のため、幹細胞を単離する、多くの方法が当該技術分野に知られる。以下の説明は、例示目的のみのためであり、そして本明細書に開示する主題の範囲を制限することをまったく意図しない。
【0064】
望ましくない細胞、例えばCD4およびCD8(T細胞)、CD45(汎B細胞)およびGR−1に結合する抗体で、骨髄細胞をパニングすることによって、骨髄細胞から幹細胞を単離することも可能である。このプロトコルの詳細な説明に関しては、Inabaら、1992を参照されたい。
【0065】
臍帯血、骨髄、および動員化(mobilized)末梢血を含む、多様な供給源からヒトCD34細胞を得ることも可能である。抗体親和性法によって、CD34細胞の精製を達成することも可能である。例えば、Paczesnyら、2004;Hoら、1995;Brenner、1993;およびYuら、1995を参照されたい。
【0066】
末梢血中に頻出するが、増殖性でないCD14前駆体(単球)から、GM−CSF+IL−4の保護下で、DCを生成することもまた可能である(例えば、WO 97/29182を参照されたい)。この方法は、SallustoおよびLanzavecchia、1994、並びにRomaniら、1994に記載される。簡潔には、CD14前駆体は豊富であり、したがって大部分の場合、患者をあらかじめG−CSF(末梢血において、CD34細胞およびより拘束された前駆体を増加させるのに用いられる)などのサイトカインで処理することは不要と報告されている。Romaniら、1996を参照されたい。他の研究者らは、このアプローチによって生成されるDCが、かなり均質であるようであり、そして未成熟状態または完全に分化したかもしくは成熟した状態で産生可能であると報告している。成熟刺激として、自家性単球馴化培地を用いることによって、FCS(ウシ胎児血清)などの非ヒトタンパク質を回避し、そして完全に、そして不可逆的に成熟しそして安定なDCを得ることが可能であることが示された。Romaniら、1996;Benderら、1996。しかし、本明細書に開示する主題とは対照的に、これらの研究は、IL−12レベルが増加し、そして/またはIL−10レベルが減少した成熟DCを生じなかった。
【0067】
適切なサイトカインと細胞をインキュベーションすることによって、幹細胞を樹状細胞に分化させることも可能である。Inabaら、1994は、ネズミGM−CSFと幹細胞をインキュベーションすることによって、ネズミ幹細胞が樹状細胞にin vitro分化することを記載した。簡潔には、標準RPMI増殖培地中、1〜200ng/mlのネズミGM−CSF、そして好ましくは約20ng/mlのGM−CSFと単離幹細胞をインキュベーションする。ほぼ1日おきに1回、培地を新鮮な培地と交換する。培養7日後、表面マーカーの発現および形態によって評価すると、大部分の細胞が樹状細胞である。蛍光活性化細胞分取(FACS)によって、または他の標準法によって、樹状細胞を単離する。
【0068】
CD34造血幹細胞または前駆細胞から、未成熟樹状細胞を調製することも可能である。骨髄細胞、末梢血前駆細胞(PBPC)、末梢血幹細胞(PBSC)、および臍帯血細胞からなる群より選択される組織供給源から、CD34造血幹細胞または前駆細胞を単離することも可能である。ヒト細胞CD34造血幹細胞は、好ましくは、ヒトGM−CSFおよびTNF−αと細胞を培養することによって、in vitro分化される。例えばSzabolcsら、1995を参照されたい。
【0069】
マウスDCに関しては、培養中の幹細胞をネズミGM−CSFとインキュベーションすることによって、ネズミ幹細胞を樹状細胞に分化させることも可能である。典型的には、培養中のGM−CSF濃度は、少なくとも約0.2ng/mlであり、そして好ましくは少なくとも約1ng/mlである。しばしば、範囲は約20ng/ml〜200ng/mlの間であろう。多くの好ましい態様において、用量は、約100ng/mlであろう。場合によって、ネズミDCを作成するため、類似の範囲でIL−4を添加する。
【0070】
ヒト細胞に形質導入する場合、ヒトGM−CSFを類似の範囲で用い、そして分化を促進するため、TNF−αもまた添加する。TNF−αもまた、典型的には、ほぼ同じ範囲で添加される。場合によって、SCFまたは他の増殖リガンド(例えばFlt3)を類似の用量範囲で添加して、ヒトDCを作成する。
【0071】
当業者には明らかであろうように、幹細胞を分化させるための上述の用量範囲はすべて、およそのものである。異なる供給者のサイトカイン、および同じ供給者由来の異なるロットのサイトカインでは、サイトカイン活性が変化する。当業者は、各サイトカインを容易に滴定可能であり、これを用いて、特定のサイトカインいずれかに関する最適用量を決定する。
【0072】
III.B. APCのトランスフェクション
本明細書に開示する主題の新規方法を用いて、提示されるペプチドに対する免疫応答を誘導するかまたは調節することが望ましい、多様な療法適用のため、RNAをトランスフェクションした抗原提示細胞を提供することも可能である。本明細書に開示する主題の1つの態様において、腫瘍細胞由来のセンス配向RNAの調製物を用いて、抗原提示細胞にトランスフェクションして、癌免疫療法として有用な細胞組成物を提供する。本明細書に開示する主題の別の態様において、1以上の病原体由来のセンス配向RNAの調製物を用いて、細胞にトランスフェクションし、そして感染性疾患の治療および/または予防に有用な組成物を提供することも可能である。さらに、本明細書に開示する主題の別の態様において、免疫寛容誘発ペプチドをコードする、センス配向RNAもまた、自己免疫疾患の治療に有用なAPCの調製物に使用可能である。
【0073】
抗原提示細胞にトランスフェクションする方法は、当業者に知られ、そして限定されるわけではないが、エレクトロポレーション、受動的取り込み、リポフェクション、陽イオン性試薬、ウイルス形質導入、CaPO4、ナノ粒子仲介性トランスフェクション、ペプチド仲介性トランスフェクション等が含まれる。例えば、ペプチド仲介性トランスフェクションのための方法が、米国特許出願第20030125242号および第20030087810号に開示され、該出願の内容が本明細書に援用される。ペプチド仲介性トランスフェクションの他の方法が当業者に知られる。好ましくは、ペプチドは陽イオン性ペプチドである。ナノ粒子仲介性トランスフェクションのための方法もまた、当業者に知られる。例えば、その内容が本明細書に援用される、米国特許出願第20040038406号を参照されたい。トランスフェクション法は、本明細書に開示する主題に決定的に重要ではなく、そしてしたがって、方法の先行するリストは例示であることを意図され、そして本明細書に開示する主題の範囲を限定することはまったく意図されない。
【0074】
成熟または未成熟の場合、樹状細胞をin vitroで装填し、そして次いで、ワクチン接種前にin vitroで、またはワクチン接種後にin vivoで、成熟させることも可能である。あるいは、in situで核酸を抗原提示細胞に搬送することも可能である。in situトランスフェクションの方法は当業者に知られる。例えば、その内容が本明細書に援用される、米国特許出願第20040082530号および第20030032615号、PCT出願第WO 01/23537号、米国特許第6,603,998号、Hoerrら、2000、Liuら、2002;Lisziewicsら、2003;およびO’Hagen、2001を参照されたい。
【0075】
好ましくは、トランスフェクションされるAPCは、樹状細胞またはマクロファージなどのプロフェッショナルAPCである。あるいは、人工的に生成されたAPCを使用することも可能である。慣用法を用いて、APCにセンスRNAをトランスフェクションすることも可能である。例えば、APCを、陽イオン性脂質の存在下で、腫瘍由来RNAと接触させることも可能である。他の既知のトランスフェクション法を用いて、APCにRNAを導入することもまた可能である。米国特許第6,306,388号は、RNAをAPCにトランスフェクションする方法を開示する。増幅法の出発材料として、本質的にいかなる種類の癌細胞または病原体由来のRNAを用いることも可能である。他の状況では、免疫寛容誘発タンパク質をコードするRNAを増幅することが望ましい可能性もある。
【0076】
IV. in vivo療法
本明細書に開示する主題の方法によって産生されたT細胞または樹状細胞を、被験者に直接投与して、選択される免疫原に対して活性であるT細胞を産生することも可能である。投与は、被験者の血液または組織細胞と最終的に接触するように、成功裡に細胞を搬送する、当該技術分野に知られる方法によることも可能である。
【0077】
薬学的に許容しうるキャリアーとしばしば一緒に、適切な方式いずれかで、細胞を投与する。本明細書に開示する主題と関連する細胞を被験者に投与する、適切な方法が利用可能であり、そして特定の細胞組成物を投与するのに、1より多い経路を用いることも可能であるが、特定の経路が、別の経路よりも、しばしばより迅速で、そしてより有効な反応を提供することも可能である。
【0078】
薬学的に許容しうるキャリアーは、部分的に、投与される特定の組成物によって、そして組成物を投与するのに用いられる特定の方法によって、決定される。したがって、本明細書に開示する主題の薬剤組成物に適した、非常に多様な配合物がある。最も典型的には、品質管理(微生物学、クローン形成アッセイ、生存度試験)を行い、そしてジフェンヒドラミンおよびヒドロコルチゾンの投与を先に行って、細胞を被験者に再注入する。例えば、Korblingら、1986およびHaasら、1990を参照されたい。
【0079】
関節内(関節の中)、静脈内、筋内、皮内、腹腔内、および皮下経路による投与などの非経口投与に適した配合物、並びにキャリアーには、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と配合物を等張にする溶質を含有することも可能な、水性等張性無菌注射溶液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含むことも可能な、水性および非水性の無菌懸濁物が含まれる。静脈内投与または腹腔内投与が、本明細書に開示する主題の樹状細胞またはT細胞の投与の好ましい方法である。
【0080】
被験者に投与する細胞(例えば活性化T細胞または樹状細胞)の用量は、有効量であり、時間とともに、被験者において望ましい有益な療法応答を達成するか、または癌細胞の増殖を阻害するか、または感染を阻害するのに有効である。
【0081】
例示目的のみのため、後で分析し、そして比較するため、注入前に被験者から血液試料を得て、そして取り置くことによって、方法を実施することも可能である。一般的に、少なくとも約10〜10、そして典型的には1x10〜1x1010の細胞を、おおよそ60〜120分に渡って、70kgの患者に静脈内注入するか、または腹腔内注入する。1つの側面において、投与は静脈内注入による。生命徴候を、そしてパルス酸素濃度計によって酸素飽和を、綿密に監視する。注入5分後および1時間後に血液試料を得て、そして分析のために取り置く。1年の期間中、総数10〜12回の処置で、おおよそ毎月、細胞再注入を反復する。最初の処置後、臨床医の自由裁量で、外来診療に基づいて、注入を行うことも可能である。再注入が外来診療で行われる場合、療法後、少なくとも4時間、被験者を監視する。
【0082】
被験者の全体の健康状態に適用する際に、投与のため、本明細書に開示する主題の細胞を、細胞種のLD−50(または毒性の他の測定値)、および多様な濃度の細胞種の副作用によって決定した速度で、投与することも可能である。投与は単回用量または分割用量を介して達成可能である。本明細書に開示する主題の細胞は、細胞傷害性剤、ヌクレオチド類似体および生物学的応答修飾剤を含む、既知の慣用療法によって、状態の他の治療を補足することも可能である。同様に、場合によって、生物学的応答修飾剤が、本明細書に開示する主題のDCまたは活性化T細胞による治療に付加される。例えば、場合によって、アジュバント、あるいはGM−CSF、IL−12またはIL−2などのサイトカインと一緒に、細胞を投与する。
【0083】
V.免疫原性を評価する方法
本明細書に開示する主題の方法によって産生された、抗原提示細胞または抗原に感作された(educated)T細胞の免疫原性を、周知の方法論によって決定することも可能であり、こうした方法論には、限定されるわけではないが、以下のものが含まれる:
51Cr放出溶解アッセイ。抗原特異的T細胞によってペプチドパルス処理した51Cr標識ターゲットの溶解を比較することも可能である。「より活性である」組成物は、時間の関数としてターゲットのより多い溶解を示すであろう。溶解の動力学、並びに固定した時点(例えば4時間)での全体のターゲット溶解を用いて、性能を評価することも可能である。Wareら、1983。
【0084】
サイトカイン放出アッセイ。修飾APCと接触させた際、T細胞によって分泌されるサイトカインの種類および量の分析は、機能活性の測定値であることも可能である。サイトカインを、ELISAまたはELISPOTアッセイによって測定して、サイトカイン産生の速度および総量を決定することも可能である。Fujihashiら、1993;TanquayおよびKillion、1994。
【0085】
in vitro T細胞感作。正常ドナーまたは患者由来のPBMCから、反応性T細胞集団を誘発する能力に関して、本明細書に開示する主題の組成物をアッセイすることも可能である。この系では、溶解活性、サイトカイン放出、ポリクローナル性および抗原性エピトープに対する交差反応性に関して、誘発されたT細胞を試験することも可能である。Parkhurstら、1996。
【0086】
トランスジェニック動物モデル。本明細書に開示する主題の組成物を、HLAトランスジェニックマウスにワクチン接種し、そして誘導される免疫応答の性質および度合いを決定することによって、in vivoで免疫原性を評価することも可能である。あるいは、hu−PBL−SCIDマウスモデルは、ヒトPBLの養子移植によって、マウスにおいてヒト免疫系の再構築を可能にする。Shiraiら、1995;Mosierら、1993に先に言及されたように、これらの動物に、組成物をワクチン接種し、そして免疫応答に関して分析することも可能である。
【0087】
増殖アッセイ。T細胞は、反応性組成物に応答して増殖するであろう。例えばH−チミジン取り込みを測定することによって、増殖を定量的に監視することも可能である。Carusoら、1997。
【0088】
霊長類モデル。非ヒト霊長類(チンパンジー)モデル系を利用して、HLA制限リガンドのin vivo免疫原性を監視することも可能である。チンパンジーは、ヒトMHC分子と重複するMHC−リガンド特異性を共有し、したがって相対的in vivo免疫原性に関して、HLA制限リガンドを試験することが可能であることが立証されている。Bertoniら、1998。
【0089】
TCRシグナル伝達事象の監視。いくつかの細胞内シグナル伝達事象(例えばリン酸化)は、MHC−リガンド複合体によるTCR結合の成功と関連する。これらの事象の定性的分析および定量的分析は、組成物がTCR結合を通じてエフェクター細胞を活性化する相対的能力と相互に関連付けられてきている。Salazarら、2000;Isakovら、1995。
【0090】
VI.ワクチンおよび使用法
本明細書に開示する主題は、上述の装填された抗原提示細胞を含むワクチン組成物をさらに提供する。こうしたワクチンにおいて、装填された抗原提示細胞は、被験者への療法投与に適した緩衝液中にあるであろう。ワクチンは、抗原提示細胞またはT細胞を刺激する因子のためのアジュバントをさらに含むことも可能である。薬剤組成物を配合する方法が当業者に知られる。例えばRemington’s Pharmaceutical Scienceの最新版を参照されたい。
【0091】
樹状細胞ワクチンに最適な免疫間隔を当業者が決定することも可能である。好ましい態様において、被験者は、用量あたり1x10〜1x10の間の、RNAが装填された生存DCを5回ワクチン接種されるであろう。ワクチン接種のために選択される用量レベルは安全であり、そしてよく許容されることが期待される。
【0092】
抗原提示細胞を単離し、調製し、トランスフェクションし、配合し、そして患者に投与する方法が当該技術分野に知られる。例えば、その内容が本明細書に援用される、Fayら、2000;Fongら、2001;Ribasら、2001;Schuler−Thurneretら、2002;およびStiftら、2003を参照されたい。
【0093】
APC投与を臨床的に使用する経路には、限定されるわけではないが、静脈内(IV)、皮下(SC)、皮内(ID)、およびリンパ内が含まれる。IV、SC、およびID投薬後に、客観的な臨床応答が報告されてきている。真皮が樹状細胞の通常の常在部位であり、そこから樹状細胞が排出リンパ節に遊走することが知られるため、現在、ID投与の優先傾向が発展してきている。ネズミモデルにおいて、SC注入樹状細胞は、後に、排出リンパ節のT細胞領域に見られ、そしてIV免疫後より優れた防御性抗腫瘍免疫を誘発する。防御性抗腫瘍免疫または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を生成する際、リンパ節に樹状細胞を直接注入する経路が、他の搬送経路より優れているというネズミでの証拠がある(その内容が本明細書に援用される、Lambertら、2001)。これによって、単一の排出リンパ節または流域に影響を及ぼすように(出来るだけ多くのリンパ節に関与する多数の部位に用量を分割するのではなく)、すべての樹状細胞用量を搬送しなければならないことが示唆される。
【0094】
ワクチンの免疫原性を評価するため、CD4+およびCD8+ T細胞の成熟プロフィールを追うことによって、ワクチン接種した個体の免疫応答を監視することも可能である。例えば、エフェクターT細胞、CD45 RA+ CCR7−の表現型を発現し、そして上昇したレベルのγ−IFNおよびグランザイムBを分泌する細胞の存在によって、癌細胞特異的または病原体特異的エフェクター細胞機能を決定することも可能である。HIV−RNA回復HIV特異的記憶T細胞区画をトランスフェクションした樹状細胞で刺激した後、細胞がIL−2を産生し、そしてCFSE低となる能力によって、HIV特異的増殖応答の回復を決定することも可能である。
【0095】
フローサイトメトリーアッセイを用い、表面マーカーおよび細胞内マーカーを用いて、ワクチンに誘導される特異的T細胞の成熟を測定することも可能である。TCR、CD45RA、CCR7およびCD107を含む表面マーカー、あるいはグランザイムβまたはγ−IFNなどの細胞内分子を染色することによって、CD8+ T細胞が監視されるであろう。CD3、CD4、CCR7およびIL−2は、CD4+ T細胞を監視するのに使用可能である。患者由来の自家性HIV配列を含むペプチドとインキュベーションした後、こうしたアッセイを用いて、免疫応答を監視することも可能である。ベースライン、および各回の新規ワクチン接種前の毎月の細胞性免疫応答を比較することによって、細胞性免疫応答の大きさに対するワクチンの影響を決定することが可能になる。免疫応答の大きさはまた、CFSE増殖アッセイを用いても測定可能である。
【0096】
VII.さらなる適用
本明細書に開示する主題は、抗原提示細胞への抗原搬送に限定されない。本明細書に開示する主題を、いかなる細胞株または組織細胞への定義されるターゲットの搬送に適用することも可能である。本明細書に開示する主題のRNAを用いて他の細胞種をトランスフェクションして、細胞において機能するタンパク質を合成するテンプレートを提供することもまた可能である。
【0097】
1つの配向を優先的に増幅することが望ましい、増幅したRNAまたはcDNAの使用に基づくいかなるプロセスも、本明細書に開示する新規方法から利益を得るであろう。
ターゲットが特定の供給源からPCR増幅される場合、本明細書に開示する主題を、定義される抗原ターゲットの産生に適用することもまた可能である。
【0098】
本明細書に開示する主題の方法、RNA調製物および細胞組成物は、先行技術に勝る重大な利点を提供する。本明細書に開示する主題は、定性的に優れたRNA調製物の産生のための非常に効率的な方法、および細胞組成物におけるその使用を提供する。
【0099】
方法論は、センスRNAの優先的な増幅に関して、より十分に、詳細に記載されてきているが、同じ概念を他方の配向に適用して、アンチセンスRNAを優先的に増幅することも可能であることが明らかである。アンチセンスRNAでのトランスフェクションもまた、多くの療法目的および研究目的を有する。
【0100】
上記開示は、一般的に、本明細書に開示する主題を説明する。以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解が得られうる。これらの実施例は、単に、例示の目的のためにのみ記載され、そして本明細書に開示する主題の範囲を限定することを意図しない。状況によって、好都合であると示唆されるかまたは好都合とされうるため、形の変化および同等物での置換が意図される。本明細書において、特定の用語が使用されているが、こうした用語は説明の意味で意図され、そして限定目的には意図されない。
【実施例】
【0101】
実施例
(実施例1)
慣用的オリゴヌクレオチドに比較した、新規オリゴヌクレオチドを用いたRNA増幅
A. RNA増幅に用いるオリゴヌクレオチド
【0102】
【化1】

【0103】
B. RNA増幅
1μMキャップスイッチ・プライマー、1μMのCDS64TまたはCDS 64T+オリゴプライマー、1μl POWERSCRIPTTM逆転写酵素(BD Biosciences Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)、1x第一鎖合成緩衝液、1μM dNTP、2mM DTTを含有する10μl逆転写酵素反応中、SKMel28細胞株または腎細胞癌腫腫瘍標本由来の総RNA 1マイクログラムを用いた。反応混合物を42℃で1時間インキュベーションした。
【0104】
次いで、0.4μM f T7キャップスイッチおよびCDS64TまたはCDS 64T+オリゴプライマー、0.4μM dNTP、1xKlen Taq PCR緩衝液および1μl Advantage Klen Taqポリメラーゼ混合物(BD Biosciences Clonetech)を含有する100μlのPCR反応混合物中に2μlのRT産物を希釈した。20周期の95℃5秒間、65℃5秒間、68℃6分間にしたがって、増幅を達成した。PCR精製キット(QIAGEN、米国カリフォルニア州バレンシア)を用いて、増幅されたcDNAを精製した。製造者の使用説明書にしたがって、T7 MMACHINE MMESSAGE(登録商標)キット(Ambion、米国テキサス州ウッドワード)を用いて、3μgの各cDNAをin vitro転写反応で転写した。RNA清浄化のプロトコルにしたがって、RNeasyミニカラム(QIAGEN)を用いて、最後のRNAを精製した。
【0105】
(実施例2)
慣用的オリゴヌクレオチドを用いて増幅したRNA集団におけるアンチセンスRNAの存在の決定
A.ノーザンブロット分析
1.2%変性アガロースゲル上でRNAを分離し、そして10xSSC中のキャピラリー・トランスファーを用いて、ナイロン膜にトランスファーした。一晩トランスファーした後、RNAを膜に架橋した。EXPRESSHYBTM溶液(BD Biosciences Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)中、68℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、2xSSC、0.5%SDS、室温の低ストリンジェンシー洗浄、および1xSSC、0.1%SDS、55℃の高ストリンジェンシー洗浄で、膜を洗浄し、そしてPhohsphoimagerスクリーンに曝露した。
【0106】
ヒト・ユビキチンmRNA、GenBank寄託番号M26880のユビキチンNCBI mRNA配列に相補的であるように、センス方向およびアンチセンス方向のRNAを検出するのに用いる一本鎖プローブを設計した。
【0107】
【化2】

【0108】
製造者の使用説明書を用い、Deka Prime IIキット(Ambion、米国テキサス州ウッドワード)を用いて、すべての二本鎖プローブの標識を行った。KINASEMAXTM末端標識キット(Ambion)を用いて、すべての一本鎖プローブの標識を行った。
【0109】
B.結果
図1Aは、慣用的オリゴヌクレオチドを用いてアンチセンスRNAを生じる機構の略図を提供する。アンチセンス配向で転写されるRNAが、慣用的プライマーを用いて増幅したRNA集団に存在するかどうかを実験的に決定するため、センス配向およびアンチセンス配向のユビキチンRNAに相補的なオリゴヌクレオチド・プローブを用いて、ノーザンブロット分析を行った(図2)。ユビキチンmRNAのヌクレオチド1691−1953に相補的なオリゴヌクレオチド・プローブは、ユビキチンmRNAアイソフォームに対応する総RNA集団において、2.3kbおよび1.3kbのバンドを認識する。
【0110】
より高い強度であるが、増幅したRNA集団においてもまた、2つのユビキチン転写物が検出される。ノーザンブロット分析に、等量(10μg)の総RNAおよび増幅したRNAを用いたため、増幅した集団において、ユビキチンmRNAに関するより高いシグナル強度が得られたことから、増幅したRNAの試料RNAには、質量あたり、より高いレベルの転写物が存在することが示される。これは、増幅法がポリアデニル化mRNA種を濃縮し、そして総RNAの3〜5%のみがポリA+ RNAで構成されるためである。アンチセンス転写物に相補的なユビキチン・プローブを用いて行ったノーザンブロット分析によって、増幅したRNA集団にアンチセンス・ユビキチン転写物が存在することが明らかになる。予期されるように、アンチセンス配向のユビキチン転写物は、総RNA集団には見られない(図2、右のパネル、T)。
【0111】
(実施例3)
アンチセンスRNAの合成をブロッキングするための新規オリゴヌクレオチド配列の利用
A.ノーザンブロット分析
実施例2におけるように、1.2%変性アガロースゲル上でRNAを分離し、そして10xSSC中のキャピラリー・トランスファーを用いて、ナイロン膜にトランスファーした。一晩トランスファーした後、RNAを膜に架橋した。EXPRESSHYBTM溶液(BD Biosciences Clontech、米国カリフォルニア州パロアルト)中、68℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション後、2xSSC、0.5%SDS、室温の低ストリンジェンシー洗浄、および1xSSC、0.1%SDS、55℃の高ストリンジェンシー洗浄で、膜を洗浄し、そしてPhohsphoimagerスクリーンに曝露した。
【0112】
ヒト・ユビキチンmRNA、GenBank寄託番号M26880のユビキチンNCBI mRNA配列に相補的であるように、センス方向およびアンチセンス方向のRNAを検出するのに用いる一本鎖プローブを設計した。
【0113】
【化3】

【0114】
製造者の使用説明書を用い、Deka Prime IIキット(Ambion、米国テキサス州ウッドワード)を用いて、すべての二本鎖プローブの標識を行った。KINASEMAXTM末端標識キット(Ambion)を用いて、すべての一本鎖プローブの標識を行った。
【0115】
B.結果
図1Aに示し、そして実施例2で立証するように、全長転写物の3’端および5’端を定義するのに用いる慣用的プライマー中の重複オリゴヌクレオチド配列によって、PCR中にT7プライマーがアニーリングすることが可能になる。新規プライマーCDS64T+オリゴにおいて、64T含有オリゴヌクレオチドの配列を変化させて、配列の5’端を定義するのに用いるオリゴヌクレオチドに対する相同性を除去すると、T7キャップスイッチ・プライマーのアニーリングが妨げられる。これは、最終的に、アンチセンス配向のユビキチンの転写を妨げる。キャップスイッチ・プライマーに対する相同性を排除するため、ポリT含有オリゴヌクレオチド(CDS64T)を再設計した。続いて、RNA増幅のため、新規プライマー(CDS64T+オリゴ)を用いた。
【0116】
CDS 64TおよびCDS 64T+オリゴを用いて増幅したRNAを、ノーザンブロット分析によって分析した。アンチセンスRNAの存在が、特定の細胞株由来のRNA増幅法のアーティファクトである可能性を排除するため、腎細胞癌腫腫瘍標本由来の総RNAに対してもまた増幅プロトコルを実行した(図3)。
【0117】
ノーザンブロット分析によって、64T含有オリゴヌクレオチドを再設計すると、細胞株および腫瘍材料から単離したRNAのどちらにおいても、アンチセンス・ユビキチンRNA合成の完全なブロッキングが生じることが示される。表1に示すように、どちらのオリゴヌクレオチドを用いた増幅法で得られた増幅RNAの収量も同様であった。
【0118】
表1
【0119】
【表1】

【0120】
(実施例4)
アンチセンスRNAを含有する集団中の二本鎖RNAの検出
A.リボヌクレアーゼ保護実験
RPA IIITMリボヌクレアーゼ保護アッセイキット(Ambion、米国テキサス州ウッドワード)を用いて、リボヌクレアーゼ保護アッセイ(RPA)を行い、増幅したRNA中に二本鎖種が存在するかどうかを決定した。該実験において、90μgの64T+オリゴまたはCDS64Tで増幅したRNAを分析した。3つの実験条件を用いて、各RNAを分析した:1)未処理(対照)、2)RNアーゼT1消化のみ、および3)RNアーゼT1後、RNアーゼIII消化。
【0121】
RPAのため、30μgのRNAをエタノール沈殿し、10μlのRPA IIIハイブリダイゼーション緩衝液中で再構成し、そして56℃で慣用的CDS64Tオリゴヌクレオチド・プライマーと一晩インキュベーションして、相補RNA鎖のアニーリングを可能にした。インキュベーション後、150μlのRNアーゼT1消化緩衝液および8UのRNアーゼT1酵素を試料に添加して、そして37℃で1時間インキュベーションした。エタノール沈殿を反復した。
【0122】
RNアーゼIIIでさらに消化する試料を、10μlのRNアーゼIII消化緩衝液および15Uの酵素中に再懸濁した。37℃で1時間インキュベーションした後、試料をエタノール沈殿した。対照試料は、いずれかのヌクレアーゼの代わりに、ヌクレアーゼ不含水を含有した。エタノール沈殿後、すべての試料を20μlのヌクレアーゼ不含水中で再構成し、そしてAgilent Bioanalyzer 2100(Agilent、米国カリフォルニア州パロアルト)上でRNA 6000ナノチップを用いて、各試料1μlを分析した。
【0123】
B.結果
アンチセンスRNAが存在することによって生じる懸念の1つは、アンチセンスRNAがコード対応物にアニーリングして、二本鎖RNAを生じうることである。これは、続いて、有害な影響、例えばsiRNAが仲介する機構を介した配列依存性サイレンシングを導きうる。慣用的CDS64Tオリゴヌクレオチドを用いて増幅したRNA集団が、二本鎖RNA種を含有するかどうかを調べるため、RNアーゼ保護実験を行った。
【0124】
慣用的(CDS 64T)または新規(CDS 64T+オリゴ)ポリT含有オリゴヌクレオチドのいずれかを用いて増幅したRNA集団をまず、一本鎖RNAに特異的なRNアーゼT1で消化し、そして次いで、二本鎖RNA種に特異的なRNアーゼIIIでさらに消化した(図4)。
【0125】
増幅されたRNAは、スメアとして移動し、分子量分布は200bp〜6kbの間であり、強度ピークは1.5kb前後であった(図4、未消化の曲線)。この分子量分布は、典型的なmRNA集団に特徴的である。これはまた、増幅プロセス中に、ポリアデニル化mRNA集団のみが濃縮されるという主張とも一致する。一本鎖特異的RNアーゼ(T1)で消化した後、CDS 64Tを用いて増幅したRNA集団において、約400bpの単一ピークが検出される(図4、右のパネル)。物質は、一本鎖RNアーゼによる切断から保護されていたため、二本鎖RNA種で構成されている可能性が最も高い。
【0126】
保護された集団の二本鎖RNAの性質を確認するため、RNAを二本鎖特異的RNアーゼIIIでさらに消化し、そしてピークは完全に消滅した(図4、左のパネル)。これによって、400bpの物質は二本鎖RNAで構成されていることがさらに示唆される。
【0127】
注目すべきことに、CDS 64T+オリゴを用いて増幅した集団では、一本鎖特異的RNアーゼT1で消化した後、保護されるRNAピークがまったくなかったことから(図4、右のパネル)、増幅された集団が、二本鎖RNA種をまったく含有しないことが示唆される。
【0128】
(実施例5)
増幅したRNAの品質および忠実度の試験
A.マイクロアレイ分析
SK Mel 28細胞株由来の総RNA、各10μgの4アリコット、および増幅したRNA各2μgの4アリコットを、この研究に用いた。第一鎖cDNA合成後、シアニン3または5(Cy3/Cy5)蛍光分子いずれかにアミノアリル基をカップリングすることによって、アミノアリル標識ヌクレオチドでの間接的標識を用いて、総RNAおよび増幅したRNAの2アリコットを、各々標識した。それぞれ、Cy5およびCy3を用いた間接的標識プロトコルを用いて、総RNAおよび増幅したRNAの残りのアリコットを標識して、色素交換実験を行った。製造者の使用説明書にしたがって、標識cDNAをAgilentヒトゲノムIAマイクロアレイ(Agilent、米国カリフォルニア州パロアルト)にハイブリダイズさせた。
【0129】
マイクロアレイ1および2を、Cy3で標識した総RNAおよびCy5で標識した増幅RNAとハイブリダイズさせる、4つの反復実験を行った。マイクロアレイ3および4を、Cy5で標識した総RNAおよびCy3で標識した増幅RNAとハイブリダイズさせた。
【0130】
Axonスキャナーを用いて、マイクロアレイ画像を収集した。インターネット上、tigr.org.で入手可能な、TIGR TM4一式を用いて、データ分析を行った。GeneSpring(Silicon Genetics、米国カリフォルニア州レッドウッドシティ)を用いて、さらなる分析を行った。
【0131】
B.結果
実施例1に記載する増幅プロトコルを用いて増幅したRNAの品質および忠実度の最初の実験を、マイクロアレイ技術を用いて行った。実験データの品質を評価するため、2つの最初の分析:クラスターおよび色素交換を行った。
【0132】
マイクロアレイをグループ分けするため、階層的クラスター形成を用いた。実験誤差が存在しなければ、反復実験(すなわちマイクロアレイ)は、一緒にクラスター形成するであろう。4つのマイクロアレイからの結果は、同一標識RNA集団で探査した(probed)マイクロアレイが一緒にクラスター形成することを示した。マイクロアレイ1および2は一緒にクラスター形成し、そしてマイクロアレイ3および4は一緒にクラスター形成した。
【0133】
マイクロアレイデータおよびRNAの品質に関する第二の試験は、cDNAを標識するのに用いるシアニン色素を「交換」することである。実験誤差または標識偏向(すなわち、cDNAの一方の集団が、色素の一方で優先的に標識されること)が存在しなければ、標識RNAを比較した際に、直接の相関関係がある。図5は、色素交換比較を示す。遺伝子は堅固にグループ分けされ、そして直接の相関関係を示す。Agilentヒト1Aアレイ(Agilent、米国カリフォルニア州パロアルト)は、〜22,575のターゲット遺伝子を含有し、このうち15,742が一方のRNA集団で検出され、そして15,599がもう一方で検出された。ヒト1Aマイクロアレイが、SK Mel 28細胞で発現されないいくつかの遺伝子ターゲットを含有するため、どちらの集団も22,575遺伝子のすべてにはハイブリダイズしないと予期される。
【0134】
(実施例6)
アンチセンス対応物を含有しないRNAをトランスフェクションした細胞の収量および回収の分析
A. DC培養物の生成およびRNAでのエレクトロポレーション
健康な志願者からの白血球搬出物を、Lifeblood(米国テネシー州メンフィス)によるAutoPBSC法を用いて、COBE(登録商標)SPECTRATM(Gambro BCT、米国コロラド州レイクウッド)上に収集した。Ficoll密度勾配(HISTOPAQUE(登録商標)−1007 HYBRI−MAX(登録商標)、Sigma、米国ミズーリ州セントルイス)を用いて、フェレーシスから末梢血単核細胞を単離し、そして単球接着のため、1〜2時間培養した。非接着細胞を取り除き、そして1000U/mlのGM−CSF(LEUKINE(登録商標)液、Berlex、米国ニュージャージー州モントビル)およびIL−4(R&D Systems、米国ミネソタ州ミネアポリス)各々を補ったX−VIVO 15TM(Cambrex、米国ニュージャージー州イーストラザフォード)培地中で残った単球を6〜7日間培養した。
【0135】
生じた単球由来樹状細胞を採取し、AO/PI(アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピディウム)を用いて定量化し、そして100万細胞あたり2μgまたは4μgのRNAを用いてエレクトロポレーションした。800U/ml GM−CSF、500U/ml IL−4、並びにIL−1β、TNF−α、IL−6、およびPGEの成熟カクテルを含むX−VIVO 15中、トランスフェクションした細胞を一晩培養した。成熟樹状細胞を採取し、そしてAO/PI(アクリジンオレンジ/ヨウ化プロピディウム)を用いて定量化した。
【0136】
B.結果
アンチセンスRNAおよび二本鎖RNAが負の影響を引き起こすかどうか決定するため、DCのRNAトランスフェクションを行った。PBMCから未成熟DCを生成し、そして2つの実験群(arm)に分けた。1つの実験群には、CDS 64Tを用いて増幅したLNCaP細胞株由来のRNA集団をトランスフェクションし、そして第二の実験群には、CDS 64T+オリゴを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした。この実験で用いたRNA濃度は、100万DCあたり2μgであった。成熟サイトカイン(TNFα、IL−6およびIL−1β)およびPGE2を含有する培地に細胞を一晩戻し、採取し、そして表現型マーカー発現および生存度に関して分析した。
【0137】
結果によって、CDS64Tを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした細胞よりも、CDS64T+オリゴを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした細胞で、生存巨大細胞の割合がより高いことが示される(図6)。CDS64T RNAをトランスフェクションした集団は、R1ゲートの左に顕著な彗星様のテールを示した。R1ゲートは、主に樹状細胞である巨大細胞集団を含有する。R1ゲートから生じる彗星様のテールは、細胞破片および死んだ細胞を含有する。CD64T+オリゴを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした集団では、テールはより顕著でない。さらに、R1ゲート中の細胞数もまた、より多い(この例では、54%対48%)。これらの観察を総合すると、エレクトロポレーション後に回収される生存巨大細胞の数は、新規オリゴヌクレオチドおよび新規方法を用いて増幅したRNAをトランスフェクションしたDC集団において、より高い。
【0138】
2つの方法を用いて増幅したRNAをトランスフェクションした成熟生存DCの表現型は異ならなかった(図7)。生存成熟樹状細胞の回収を比較するため、未成熟DCに、異なるRNAをトランスフェクションし、成熟させ、採取し、そして分析した。表2は、3人の独立した健康な志願者における、白血球搬出物質で行った3回の大規模実験からのデータを要約する。表2に要約するデータは、回収された細胞の総数が、CDS 64T+オリゴを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした実験群におけるより、CDS64T+オリゴを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした実験群において、より高いことを立証する。これは、新規オリゴヌクレオチドおよび新規増幅法を用いてトランスフェクションした細胞の回収および収量が、より高いことを示す。
【0139】
表2
【0140】
【表2】

【0141】
実施例の考察
DCへの抗原搬送のビヒクルとしてのRNAは、DCに基づくワクチン産生の多くの制限を克服する。少量の腫瘍から、RNAを抽出し、そして増幅して、自家性DCをトランスフェクションするのに十分な量を生成することが可能であることが、利点の1つである。ワクチン試験は、最小全身腫瘍組織量(tumor burden)の患者の末期疾患に対するワクチン調製および治療を可能にする。最小全身腫瘍組織量の患者は、より免疫無防備状態でないため、特に、免疫療法から利益を受ける可能性がある。
【0142】
少量の出発材料から十分な量のRNAを生成するため、本明細書および別の箇所(Boczkowskiら、2000およびHeiserら、2001b)に論じる増幅プロトコルを用いる。該プロトコルは、テンプレート切り替え原理に基づき、そして高品質の全長RNAの増幅を生じる。実施例によって、元来のプロトコルが、アンチセンスRNAを含有する増幅したRNA集団を生じることが立証された。
【0143】
元来のプロトコルは、cDNAライブラリー構築のために開発され、そしてセンスおよびアンチセンスcDNA鎖の両方の増幅を必要とするため、アンチセンスRNAが形成される。これは、重複配列を含有する3’端および5’端の両方にアニーリングする、単一のPCRプライマーの使用によって達成された。RNA転写を後に可能にするため、PCRプライマーは、T7プロモーター配列を含有する。その結果、3’端にアニーリングした際、該プロモーターは、3’端にT7を含有するcDNAを産生し、そして続いてアンチセンスRNAを産生する。定量的分析によって、CDS64Tを用いて増幅したRNAの5〜7%がアンチセンス配向であると概算される。しかし、アンチセンスRNAは、新規CDS64T+オリゴを用いて増幅したRNAでは検出不能である。ヌクレオチド組成を変化させるのではなく、配列を変化させる(CDS64TからCDS64T+オリゴ)ことによって、5’および3’オリゴヌクレオチドの配列の重複性がなくなった場合、アンチセンス産物は排除される。あるいは、5’端を定義する(キャップスイッチ)オリゴヌクレオチドの配列変化もまた、アンチセンスRNA形成を妨げるであろう。したがって、本明細書に提示するのは、慣用法およびオリゴヌクレオチド・プライマーを用いた場合にアンチセンスRNAが存在する実験的証拠である。本明細書に開示する主題は、部分的に、センスRNAのみが転写されるようにプライマーを修飾することによって、アンチセンスRNAおよびdsRNAを排除する解決法を考案する。
【0144】
新規プロトコルを用いて増幅したRNAの忠実度を、マイクロアレイ分析を行って評価した。4つの技術反復を用いて、増幅したRNAを出発総RNA集団と比較した。クラスター分析によって、同一標識RNAで標識したマイクロアレイが一緒にグループ分けされ:マイクロアレイ1および2が一緒に、そしてマイクロアレイ4および3が一緒にグループ分けされた。色素交換実験によって、遺伝子が堅固にグループ分けされ、そして調べた2つのグループ間で直接の相関関係があることが明らかになった。これらの分析はどちらも、標識、ハイブリダイゼーションおよびデータ抽出が高品質であることを確認した。これらはまた、この研究に用いたRNAが高品質であることも確認した。
【0145】
示差遺伝子発現のこの最初のマイクロアレイ分析からの最も重要な結果の1つは、2つのRNA集団(総RNA対増幅したRNA:それぞれ15,742および15,599)の間に、0.9%の相違(143遺伝子)しかないことである。これらの相違には、総RNA試料では検出され、そして増幅した集団では検出されない遺伝子(真の陰性)、および総RNA試料では検出されないが、増幅した集団では検出される遺伝子(偽陽性)が含まれる。どちらの場合も、増幅法によって導入される偏向に相当しうる。最も重要なことに、この数は非常に小さく、そして出発総RNA集団における転写物の圧倒的多数は、最終的に増幅されたRNA集団に提示される。これは、開発された新規方法を用いて増幅したRNAが非常に高忠実度であることを示す。したがって、本明細書において、総腫瘍RNAから増幅したRNAは、出発腫瘍材料で発現される遺伝子の定性的レベルおよび定量的レベルを正確に代表し、したがって自家性DCにトランスフェクションした場合、完全に患者にマッチした特異的ワクチンが可能になることが立証される。
【0146】
実施例は、増幅したRNAにおける、アンチセンスRNAの存在およびdsRNA種の存在の間の相関関係を、さらに確立する。RNアーゼ保護実験(RPA)を用いて、アンチセンスRNAを含有する集団がまた、二本鎖種も含有し、そしてアンチセンスRNAの欠失が、二本鎖RNAの欠失と相関することもまた立証された。dsRNAが仲介するサイレンシングの機構がよく立証されている(Heiserら、2001bおよびChenchikら、1998)ため、DCをトランスフェクションするのに用いた集団中に二本鎖RNAが存在すると、懸念が生じる。
【0147】
RPA実験で用いられるRNアーゼIIIは、高分子量二本鎖RNAを22ヌクレオチドの二本鎖RNAに切断するのに関与する細胞内RNアーゼであるダイサーと類似の配列特異性を有する。この短い22ヌクレオチドdsRNA分子は次に、配列特異的遺伝子サイレンシングのためのRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)の活性構成要素を形成する。一本鎖特異的RNアーゼでの消化は、100ヌクレオチド未満の分子量分布を持つdsRNA種の集積を引き起こす(図4、左のパネル)。
【0148】
配列特異的RNA仲介性サイレンシングは、ターゲット遺伝子の選択的サイレンシングのため、DCで見られ、そして適用に成功している、進化的に保存された機構である(Laderachら、2003)。したがって、巨大dsRNAを含有するRNAをトランスフェクションした後、DCで形成される小さいdsRNAは、RISC形成を導き、そしてDC機能表現型に不都合に影響を及ぼしうる。
【0149】
二本鎖種を含有するRNAのトランスフェクションが、負の影響を導くかどうかを決定することを目的とした実験において、単一ドナー由来のDCを生成し、そして次いで未成熟DCを2つの実験群に分けた。元来の方法または本明細書に開示する新規方法を用いて、同じ出発総RNAから増幅したRNA、そしてしたがって、それぞれdsRNAを含有するおよびdsRNAを含有しないRNAを、各実験群に並列してトランスフェクションした。3人の別個のドナーにおいて、研究を行った。この研究の結果によって、dsRNA種を含有しないRNAのトランスフェクションは、より高い細胞収量を生じることが立証された。2つのRNA集団の唯一の相違は、dsRNAが存在するかまたは存在しないかだけであるため、元来のプロトコルを用いて増幅したRNAをトランスフェクションした実験群において、収量が減少したのは、dsRNAの存在のためであると結論付けることも可能である。これは、dsRNAがDCに対して有害な影響を導きうるという、本明細書に論じる予測と一致する。しかし、いずれかのRNA集団をトランスフェクションした生存回収細胞は、表現型にいかなる相違も示さなかった。
【0150】
本明細書に示すデータは、明らかに、そして驚くべきことに、二本鎖種を含まない、増幅したRNAが、より高い細胞回収を生じることを立証する。したがって、本明細書に開示する新規プロトコルおよびオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて増幅したRNAを細胞にトランスフェクションすると、予期せぬことに、成熟した自家性RNAトランスフェクション細胞の収量が増加し、これは患者ワクチン接種のために生成される用量の数に正比例する(表2)。細胞回収の増加は、したがって、ワクチン製造のコストを減少させ、そして延長された患者ワクチン接種を可能にし、これはこれまでに知られる方法に勝る、重要な利点である。
【0151】
参考文献
【0152】
【化4−1】

【0153】
【化4−2】

【0154】
【化4−3】

【0155】
【化4−4】

【0156】
【化4−5】

【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1Aおよび図1Bは、増幅プロセスの略図を示す。図1Aは、慣用的増幅法を示す。概略図は、cDNAの3’端および5’端を定義するオリゴヌクレオチド中に存在する重複配列が、T7含有プライマー下流でのアニーリングを導き、そしてその結果、アンチセンス配向で転写されるRNA種の形成を導くことを示す。図1Bは、アンチセンスRNA産生の問題に取り組む、本明細書に開示する増幅法を示す。
【図2】図2は、センスRNAまたはアンチセンスRNAに相補的なユビキチン・プローブを用いて、総RNA試料(T)、並びに慣用的プライマーおよびプロセスを用いて増幅した試料(A)に対して行った、ノーザンブロット分析を示すオートラジオグラフのデジタル画像である。等量の各RNA(10μg)を各レーンに装填した。ゲルは、ユビキチンのアンチセンスRNAが、増幅したRNA集団に存在することを示す。
【図3】図3は、5’端および3’端プライマーの間の配列相同性を除去して、アンチセンスRNAの形成をブロッキングした場合のノーザンブロット分析を示すオートラジオグラフのデジタル画像である。SK−Mel28 RNAまたはヒト腫瘍RNAから増幅した試料に対して、ノーザンブロット分析を行った。慣用的な増幅法を用いて(レーン1)または本明細書に開示する主題を用いて(レーン2)、RNAを増幅した。センス・ユビキチンRNAまたはアンチセンス・ユビキチンRNAを認識するプローブを用いて、ノーザンブロット分析を行った。
【図4】図4は、慣用的プライマー(CDS64T)を用いて増幅したRNAが、二本鎖RNAを含有することを示す。RNアーゼ消化前および消化後のRNA試料の電気泳動図。増幅したRNA集団を、一本鎖RNAに特異的なRNアーゼ(T1)で、またはさらに二本鎖RNAを認識するRNアーゼ(RNアーゼIII)で消化した。左のパネルは、慣用的CDS64Tオリゴを用いて増幅したRNAを示し、そして右のパネルは、本明細書に開示する主題のCDS64T+オリゴを用いて増幅したRNAを示す。
【図5】図5は、マイクロアレイ1対マイクロアレイ3の色素フリップ(dye flip)である。すべての色素フリップ比較で、同一データが得られた。
【図6】図6は、異なるRNAをトランスフェクションした樹状細胞のスキャッターフロープロット分析である。未成熟樹状細胞(左のパネル)に、慣用的CDS 64Tオリゴ(中央パネル)または新規CDS 64T+オリゴ(右のパネル)を用いて増幅したLNCaP細胞株由来のRNAを、100万細胞あたり2μgトランスフェクションした。D03−017実験ゲートR1は、DCを含有する生存巨大細胞集団の輪郭を描く。右下隅の数字は、試料に存在する巨大生存細胞のパーセントを示す。
【図7】図7は、RNAの2集団をトランスフェクションした成熟DCの表現型が異ならないことを示すグラフである。未成熟樹状細胞を第6日に採取し、そして:1)慣用的増幅法(dsRNA存在);2)本明細書に開示する主題(dsRNAはまったく存在しない);または3)対照としてのGFP RNAを用いて増幅したRNAを細胞にエレクトロポレーションした。細胞を馴化培地に戻して一晩成熟させ、そして表現型マーカー発現に関して分析した:HLA−DR、CD83およびCD14。Y軸は、分析した各マーカーの陽性細胞パーセントを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞に少なくとも1つのmRNAをトランスフェクションする方法であって:
(a)アンチセンス配向RNAおよび二本鎖RNAを本質的に欠き、そして少なくとも1つのセンス配向mRNAを含む調製物を:
(i)試料から少なくとも1つのmRNAを増幅して、ポリヌクレオチド・テンプレートを産生し、ここで該ポリヌクレオチド・テンプレートは、該ポリヌクレオチド・テンプレートのセンス鎖のみに機能可能であるように連結された、in vitro転写に適したプロモーターを含む;そして
(ii)該ポリヌクレオチド・テンプレートをin vitro転写して、少なくとも1つのセンス配向mRNAを産生する、ここで該ポリヌクレオチド・テンプレートは、クローニングされたテンプレートではない
ことによって、調製し;そして
(b)少なくとも1つの抗原提示細胞に、調製物由来の少なくとも1つのセンス配向mRNAをトランスフェクションする
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
試料中のmRNAが、細胞またはビリオン由来である、請求項1の方法。
【請求項3】
細胞が、癌細胞および微生物細胞からなる群より選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
癌細胞が、血液学的悪性腫瘍、腎細胞癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫、腺腫、肉腫、癌腫、および芽腫からなる群より選択される癌に由来する、請求項3の方法。
【請求項5】
微生物細胞が、ヘリコバクター属(Helicobacter)種、サルモネラ属(Salmonella)種、赤痢菌属(Shigella)種、エンテロバクター属(Enterobacter)種、カンピロバクター属(Campylobacter)種、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)種、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ペスト菌(Yersinia pestis)、野兎病菌(Francisella tularensis)、ブルセラ属(Brucella)種、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)種、連鎖球菌属(Streptococcus)種、クロストリジウム属(Clostridium)種、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、プラスモディウム属(Plasmodium)種、リーシュマニア属(Leishmania)種、およびトリパノソーマ属(Trypanosoma)種からなる群より選択される、請求項3の方法。
【請求項6】
ビリオンが、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト・パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス、単純疱疹ウイルス1、単純疱疹ウイルス2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、および風疹ウイルスからなる群より選択される、請求項2の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのセンス配向mRNAが抗原をコードし、そして該抗原が、少なくとも1つのトランスフェクションされた抗原提示細胞によって、少なくとも1つのセンス配向mRNAから翻訳される、請求項1の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのトランスフェクションされた抗原提示細胞が、発現された抗原を提示する、請求項7の方法。
【請求項9】
試料由来の少なくとも1つのmRNAが複数のmRNAである、請求項1の方法。
【請求項10】
複数のmRNAが、細胞またはビリオン由来の総mRNA集団を含む、請求項9の方法。
【請求項11】
複数のmRNAが、細胞またはビリオン由来の総mRNA集団の選択される分画を含む、請求項9の方法。
【請求項12】
サブトラクティブ・ハイブリダイゼーション法を利用して、総mRNA集団の選択される分画を選択する、請求項11の方法。
【請求項13】
総mRNA集団の選択される分画が癌細胞に由来し、そして選択される分画が癌細胞に特有の抗原をコードするmRNAを含む、請求項11の方法。
【請求項14】
請求項1の方法であって、試料からのmRNAの増幅が:
(a)試料からmRNAを逆転写して、cDNAを含むポリヌクレオチド・テンプレートを産生し;そして
(b)第一のプライマーおよび第二のプライマーを用いて、該ポリヌクレオチド・テンプレートcDNAを増幅する、ここで第一のプライマーおよび第二のプライマーの一方のみが、該ポリヌクレオチド・テンプレートcDNAに、in vitro転写に適したプロモーターを挿入する
ことを含む、前記方法。
【請求項15】
in vitro転写が、プロモーターに特異的なポリメラーゼを用いて、ポリヌクレオチド・テンプレートcDNAをセンス配向mRNAにin vitro転写することを含む、請求項14の方法。
【請求項16】
ポリメラーゼがT7ポリメラーゼである、請求項15の方法。
【請求項17】
第一のプライマーおよび第二のプライマーが、互いに配列相同性を本質的に共有しない、請求項14の方法。
【請求項18】
第一のプライマーが、ポリTストレッチ、および第二のプライマーに配列相同性を本質的に持たない5’配列を含み、そして第二のプライマーが、in vitro転写に適したプロモーターを含む、請求項14の方法。
【請求項19】
第一のプライマーが、配列番号2の配列を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
エレクトロポレーション、ナノ粒子仲介性トランスフェクション、ペプチド仲介性トランスフェクションおよびリポフェクションからなる群より選択される方法を用いて、トランスフェクションを達成する、請求項1の方法。
【請求項21】
抗原提示細胞が、樹状細胞およびマクロファージからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項22】
樹状細胞が未成熟樹状細胞である、請求項21の方法。
【請求項23】
樹状細胞が成熟樹状細胞である、請求項21の方法。
【請求項24】
トランスフェクションがin vitroである、請求項1の方法。
【請求項25】
トランスフェクションがin situである、請求項1の方法。
【請求項26】
請求項1の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項27】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項26のmRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項28】
請求項2の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項29】
請求項3の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項30】
請求項4の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項31】
請求項5の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項32】
請求項6の方法によって産生される、mRNAが装填された抗原提示細胞。
【請求項33】
キャリアー中に、請求項26のmRNAが装填された抗原提示細胞の少なくとも1つを含む、組成物。
【請求項34】
少なくとも1つの抗原に対して、被験者において免疫応答を生じる方法であって、請求項26のmRNAが装填された抗原提示細胞を被験者に導入することを含み、ここでmRNAが装填された抗原提示細胞は、被験者の免疫系に少なくとも1つの抗原を提示し、それによって少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を生じる、前記方法。
【請求項35】
mRNAが、細胞またはビリオン由来の少なくとも1つの抗原をコードする、請求項34の方法。
【請求項36】
細胞が、癌細胞および微生物細胞からなる群より選択される、請求項35の方法。
【請求項37】
癌細胞が、血液学的悪性腫瘍、腎細胞癌、黒色腫、乳癌、前立腺癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫、腺腫、肉腫、癌腫、および芽腫からなる群より選択される癌に由来する、請求項36の方法。
【請求項38】
微生物細胞が、ヘリコバクター属種、サルモネラ属種、赤痢菌属種、エンテロバクター属種、カンピロバクター属種、マイコバクテリウム属種、炭疽菌、ペスト菌、野兎病菌、ブルセラ属種、レプトスピラ・インテロガンス、ブドウ球菌属種、連鎖球菌属種、クロストリジウム属種、カンジダ・アルビカンス、プラスモディウム属種、リーシュマニア属種、およびトリパノソーマ属種からなる群より選択される、請求項36の方法。
【請求項39】
ビリオンが、ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト・パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス、単純疱疹ウイルス1、単純疱疹ウイルス2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、および風疹ウイルスからなる群より選択される、請求項35の方法。
【請求項40】
試料由来の少なくとも1つのmRNAが複数のmRNAである、請求項34の方法。
【請求項41】
抗原提示細胞が、樹状細胞およびマクロファージからなる群より選択される、請求項34の方法。
【請求項42】
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項41の方法。
【請求項43】
抗原提示細胞が未成熟樹状細胞である、請求項42の方法。
【請求項44】
抗原提示細胞が成熟樹状細胞である、請求項42の方法。
【請求項45】
抗原提示細胞が、被験者から得たかまたは被験者に由来する、自家性抗原提示細胞である、請求項44の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2007−512030(P2007−512030A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541704(P2006−541704)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039535
【国際公開番号】WO2005/052128
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506175781)アルゴス・セラピューティクス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】