説明

pH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法

【課題】従来は不可能であった、衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の絶対的緩衝効果を迅速に判定できる試験方法を提供する。
【解決手段】pHが7より小の酸性領域で2水準以上、pHが7より大のアルカリ性範囲で酸性領域と同水準で、酸性領域およびアルカリ性領域での各水準のpHがpH7に対してほぼ対称である異なったpH試験液を試験片に含浸させ、試験片表面のpHを固体表面用のフラット型電極を使用して測定し、各水準のpHの試験液に対して得られた試験片表面の各pH測定値につきそれらの総平均と標準偏差とより緩衝効果を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法に関するものである。より詳しくは、衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果を迅速判定できる試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸性雨や人体の汗のようなpHを変動させる(pH刺激)成分が付着しても皮膚表面と同じ弱酸性に保つ(緩衝効果)ということを謳ったいわゆるpHコントロール繊維またはpH緩衝繊維が近年多く上市されてきている。これらの多くは繊維の表面上にpH緩衝作用を持つ化合物を付着させたり、繊維そのものを化学装飾してpH緩衝作用を付与することによって製造されている。
【0003】
このようなpH刺激に対する緩衝効果の試験方法についても色々の方法が提案されている。これら従来法の例を、主に試験片とpH試験液との重量比に着目して分類してみると、次のようになる。
【0004】
分類1:試験液中に試験片を浸漬し、浸漬液のpHを測定する方法。この場合、試験片と試験液との重量比は1:10〜1:50である(特許文献1〜5)。
【0005】
分類2:ロート上に乗せた試験片に試験液を透過させ、ろ液のpHを測定する方法。この場合、試験片と試験液との重量比は1:25である(特許文献6〜7)。また一般に、より少量の試験液を用いても、試験液は重力の影響でロートの円錐部の下部に移行する。
【0006】
分類3:試験片に試験液を付着浸潤させたときの試料のpHを測定する方法。この場合、試験片と試験液との重量比は1:5である(特許文献8〜10)。
【0007】
分類4:試験片を浸漬した試験浴のpHを常に一定にするように試験液を添加し、等量点を測定する方法。この場合、試験片と試験液との重量比は1:500である(特許文献11〜15)。
【0008】
一方、例えば実際に綿製の衣服を着用して雨に濡れた場合を想定すると、衣服生地の含気率は平均75%、綿の比重は1.54であるから、空気が雨で置換されたとすると、生地と雨との重量比は1:1.9と計算される。したがって、上記の従来法では実際に衣服を着用した状態よりもかなり多量の試験液を使用しており、実際に衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果を試験する方法の開発が望まれる。
【0009】
また試験に要する時間を調べてみると、分類2〜分類4では不明であるが、分類1では10分〜24時間、特に60分以上を要している例がほとんどである。したがって、より迅速に行える試験方法の開発が望まれる。
さらにpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果の判定方法を調べてみると、次のとおりである。
【0010】
従来判定法1:特定のpHの試験液を使用して試験片を浸漬した際の、浸漬液のpHが中性に近いほどpH緩衝性があると判断する。
【0011】
従来判定法2:酸性液中でpHを0.2〜4.0上昇させかつアルカリ液中でpHを0.2〜4.0降下させる能力を有する場合にpH緩衝性があると判断する。
【0012】
従来判定法3:pH緩衝性を(μeq/g)=1000Y/x(ここにx:試料量、Y:水溶液の消費量)と定義し、比較する。
【0013】
従来判定法1では複数の試験片間のpH緩衝効果の相対比較は可能であるが、一つの試験片について、pH緩衝効果の絶対的判定基準が不明確である。従来判定法2では一つの試験片についての判定基準は示されているが、異なるpH試験液での測定結果それぞれについてpH緩衝効果を判定しなければならず時間を要するうえ、広いpH領域内での総合的pH緩衝効果の判定基準が不明確である。従来判定法3では平衡状態に達した際の絶対的判定には適しているが、実着用の際には例えば雨に濡れた直後の非平衡状態でのpH緩衝効果の判定が必要である。したがってpH緩衝効果の判定法も、衣服を着用した状態により近い条件での広い領域のpH刺激に対する繊維製品の絶対的緩衝効果を迅速に判定する方法の開発が望まれる。
【0014】
【特許文献1】特開平06−041871号公報
【特許文献2】特開平08−246334号公報
【特許文献3】特開平09−049169号公報
【特許文献4】特開平09−217269号公報
【特許文献5】特開2003−000636号公報
【特許文献6】特開平06−041870号公報
【特許文献7】特開平06−041871号公報
【特許文献8】特開平06−041870号公報
【特許文献9】特開平06−041871号公報
【特許文献10】特開平10−131046号公報
【特許文献11】特開平07−216730号公報
【特許文献12】特開平08−325938号公報
【特許文献13】特開平09−059872号公報
【特許文献14】特開平09−302553号公報
【特許文献15】特開2001−009450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の絶対的緩衝効果を迅速判定できる試験方法を提供することにある。
【0016】
本発明は第1に、pH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法において、pH試験液として、(1)pHが7より小の酸性領域で2水準以上、(2)pHが7より大のアルカリ性領域で酸性領域と同水準で、(3)酸性領域およびアルカリ性領域での各水準のpHがpH7に対してほぼ対称である異なるpHをもつpH試験液を用い、これらpH試験液を試験片に含浸させた試験片表面のpHを測定し、各水準のpHの試験液に対して得られた試験片表面の各pH測定値につきそれらの総平均と標準偏差とより緩衝効果を判定することを特徴とするpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
【0017】
本発明は第2に、pHがおおよそ2〜12の試験液を使用する上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
本発明は第3に、試験片とこれに含浸させる試験液との重量比が1:1〜1:3である上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
【0018】
本発明は第4に、試験片表面のpHの測定を連続的に行う上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
本発明は第5に、試験液を試験片に含浸させてから3分以上経過後の試験片表面のpHの測定値を用いる上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
【0019】
本発明は第6に、試験片表面のpH測定値の総平均がpH試験液のpHの総平均(理想的には7.0)未満でかつ、試験片表面のpH測定値の標準偏差が1.2以下であることを基準として緩衝効果を判定する上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
【0020】
本発明は第7に、試験液のpHの調整を、電離度の大きな強酸または強アルカリを使用して行う上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
本発明は第8に、試験片表面のpHの測定を固体表面用のフラット型電極を用いて行う上記のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、従来は不可能であった衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の絶対的緩衝効果を迅速に判定できる試験方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明において、試験の対象とする試料は繊維製品で、主として織物、編物、コーティング布(基布)、不織布、シート等の繊維素材のほか、紙等の多孔質素材である。通常はこれら試料から試験片を採取して試験に用いる。
【0023】
次に本発明では、試験液が、pHが7より小の酸性領域で2水準以上、pHが7より大のアルカリ性範囲で酸性領域と同水準で、酸性領域およびアルカリ性領域での各水準のpHがpH7に対してほぼ対称である異なったpH試験液を用いる。ここで、「pHが7より小の酸性領域で2水準以上」とは、2水準の場合を例に説明すると、pHがたとえば3と5という適宜の2水準の試験液を選択することをいい、「pHが7より大のアルカリ性範囲で酸性領域と同水準で、酸性領域およびアルカリ性領域での各水準のpHがpH7に対してほぼ対称である異なったpH試験液」とは、酸性領域でたとえば上記の2水準を選択した場合には、アルカリ性領域でも2水準を選択すると共に、2水準のpHがpH7に対して酸性領域で選択した3と5と対象である11と9を選択することをいう。この条件を満たす限り、選択すべき水準の数とpH値は基本的には任意であり、実質上全pH範囲に亘ってできるだけ詳細に試験することが理想だが、試験液のpHに対する試験片表面のpHは、試験液のpHが5以下および9以上で変化が大となる。それ故、実用的には例えばpHがおおよそ3、5、9、11の試験液、3、5、7、9、11の試験液、3、4、5、7、9、10、11、あるいは2、3、4、5、7、9、10、11、12の試験液等を用いることが望ましい。試験液のpHは2〜12の広い範囲から選択することが好ましく、5〜9の狭い範囲の例えばpHが5、6、7、8、9の試験液を用いると、強酸性領域あるいは強アルカリ性領域での緩衝効果も総合した判定が困難になる。尚pH7の試験液の使用は必須ではないが、pH7の試験液を用いることが好ましい。
【0024】
本発明方法にしたがって試験液のpHを選択すると、これら試験液のpHの単純平均は7となる。しかしながらpH試験液は空気中の二酸化炭素等を吸収してそのpHが徐々に変化するので、試験片の表面のpHを測定する際に、試験液のpHをすべて正確に整数のpHに調整しておくことは当業者でも困難である。したがって現実的にはpH試験液のpHの総平均(理想的には7.0)を一つの基準として用いるのがよい。これら試験液を含浸させて一定時間後の試験片表面のpHの単純平均がpH試験液のpHの総平均(理想的には7.0)未満であることを、pH刺激に対する繊維製品の緩衝効果があるという判断基準の一つの要件とすることができる。この場合意図する試験液のpHと実際のpHのずれは0.3以内であることが好ましい。即ちpH7の試験液の調整を意図した場合には、その現実のpHは6.7〜7.3の範囲にあるように配慮することが望ましい。
【0025】
ここで用いる試験液の調整について述べると、本発明は少量の試験液を用いて衣服を着用した状態を再現し、かつ迅速に試験を行うことを目的にしているので、従来の長時間の測定を行う方法や、さらに長時間の平衡状態での測定を行う方法をそのまま用いることはできない。その意味で本発明では電離度の大きな強酸および強アルカリを用いて試験液を調整することが好ましい。電離度の小さな試験液を用いた場合には、試験液の電離過程で試験液自身の緩衝効果が発現して全体として複雑な系となるので、測定したpH緩衝効果を試験片によるものと試験液自身によるものとに区別することが困難になる。より具体的には、例えば無機の強酸および無機の強アルカリをそれぞれ希釈して調製することが、試験液自身の緩衝効果を排除し、試験片表面のpHの測定値の変動を抑制するために好ましい。無機の強酸としては、塩酸、臭酸、硫酸等適宜の強酸を用いうるが、塩酸が特に好ましく、無機のアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の適宜の強アルカリを用いうるが、水酸化ナトリイムが特に好ましい。
【0026】
次に、使用するpH試験液の量については、前述のように従来法では実際に衣服を着用した状態よりもかなり多量(重量比で1:5〜1:500)の試験液を使用して、試験片を浸潤あるいは浸漬させている。しかしながら衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の絶対的緩衝効果を試験するためには試験片と試験液との重量比はより小さくしなければならない。試験片と試験液との重量比をより小さくした本発明の状態を従来法の場合と区別するため、本発明では含浸ということにする。
【0027】
衣服を着用した状態により近い試験を行うためには、試験片の含気率と繊維の比重とを勘案すると、試験片と含浸させるpH試験液との重量比は1:1〜1:3であることが好ましい。重量比1:2程度であることがより好ましい。試験片と含浸させるpH試験液との重量比が1:1より小となると、試験片表面のpH測定値の変動がより大となり、試験片と含浸させるpH試験液との重量比が1:3より大となると、衣服を着用した状態を再現することが困難になる。
【0028】
このように試験片とこれに含浸させるpH試験液との重量比を小さくすると、前述の従来法のように浸漬液のpHを測定したり、ろ液のpHを測定したり、浸潤液のpHを測定することはできず、新たなpH測定法を工夫する必要がある。大量の試験液を用いる場合に使用されるpHセンサー、代表的には前述の従来法で使用されている汎用型ガラス電極(例えば商品名F−12、13等)や簡易型ガラス電極(例えば商品名TwinB等)を使用することは事実上不可能となる。本発明では、固体表面用のフラット型電極を使用することによって簡単に適正なpHの測定を行うことができる。
【0029】
また試験片と含浸させるpH試験液との重量比を小さくすると、pH刺激に対する繊維製品の緩衝作用は短時間で進行する。そのため、試験片にpH試験液を含浸させた直後から試験片表面のpHの変化をpHメーターにより連続的に測定し、pHメーターとパソコンとをネットワーク接続し、経時的なデータ採取や採取後のデータ処理等が簡便に行えるようにすることが好ましい。本発明者らの研究によれば、試験片にpH試験液を含浸させた直後の試験片表面のpHの変化は複雑でかつ試料間で異なる挙動を示す。その意味で、少なくともこれらの変動要因がなくなった時点以後のpHの測定値を用いるべきであり、含浸後3分以上経過後の測定値を用いることが一つの目安となる。一例としては、試験片にpH試験液を含浸させた直後から10分間、さらに好ましくは試験片表面のpH測定値がほぼ安定する5分間の短時間測定を行い、後述の測定値解析法と組み合わせることでより適切な結果を得ることができる。
【0030】
さらに、試験片と含浸させるpH試験液との重量比を小さくとすると、pHの測定値の変動が大となる。したがって従来以上に注意して試験の準備や実施を行うべきである。例えば試験装置の静電気を事前に除去することが好ましい。さらに本発明で用いる固体表面用のフラット型電極の場合、測定の再現性を向上させるためには、pHセンサーと試験片との接触圧力を55〜60g/cmとすることが好ましい。
【0031】
同一のpHの試験液での試験では測定を繰り返すことが望ましいことは言うまでもないが、同一のpHの試験液での試験の繰り返しは1回であっても、後述の測定値解析法と組み合わせることによりpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果が明確に判定できるということは、驚くべきことである。
【0032】
以上により得られた測定値の解析法について、次に述べる。上述のように広い範囲のpH試験液を含浸させた試験片表面のpH測定値は、試験液の1水準のpHについて試験片表面のpH測定を1回行う場合はそのまま用いる。試験液の1水準のpHについて試験片表面のpH測定を繰り返し行う場合は、測定値を平均して用いる。次いでこれら各水準のpHの試験液に対して得られた試験片表面の各pH測定値または各pH測定値の平均につきそれらの総平均と標準偏差とを求める。本発明者らの研究によると、試験片表面のpH測定値の総平均が試験液のpHの総平均、理想的には7.0未満でかつ、生地表面のpH測定値の標準偏差が1.2以下であると、pH刺激に対する繊維製品の緩衝効果があるといえることが判った。
以下に、本発明を実施例によって例証する。
【実施例1】
【0033】
(試料)
JIS L 0803に規定の添付白布(綿、絹、毛、アクリル、レーヨン、ナイロン、ポリエステル)7種類、および市販の加工商品5種類の、合計12種類を用いた。5種の市販の加工商品はいずれもpHコントロール繊維として市販されている商品であり、市販試料の1はアクリル、2はポリエステル、3は綿、4はポリエステル、5は綿/ポリエステルの各改質品である。
【0034】
(サンプリング)
上記試料より5cm×5cmの試験試料を採取した。これを約1.7cmの試験片に9分割した。この試験片の枚数を試料毎に変え、試験片の合計質量が各試料間でできるだけ同程度(0.05g〜0.06g)になるように揃えて試験に用いた。
【0035】
(pH試験液)
無機の酸・塩基を使用し、酸性側では塩酸を用いた。pH3の溶液は0.25%塩酸を100倍稀釈して調整した。pH3用に調整した溶液を更に稀釈することによりpH4およびpH5の溶液を調整した。アルカリ側では水酸化ナトリウムを用いた。pH11の溶液は5%水酸化ナトリウムを400倍稀釈して調整した。pH11用に調整した溶液を更に稀釈することによりpH9およびpH10の溶液を調整した。pH7は純水を用いた。滴下液のpHは3、4、5、7、9、10、11の7種類に設定した。各液は測定前に煮沸処理を行って二酸化炭素を取り除き冷却したものを使用した。
【0036】
(pHメータおよび電極)
経時的に測定できる高速度応答のpHメーターとして、(株)堀場製作所製のpHメーター(F−55T)を使用した。この装置はパソコンとのネットワーク接続が可能なため、経時的なデータ採取や採取後のデータ処理等が簡便に行える。
【0037】
また試料へ溶液が含浸された状態での測定を実現するためには、電極に求められる性能として、微量の滴下液が試験片に含浸された状態で測定が可能であることが要求される。そこで(株)堀場製作所製フラット型電極(6261−10C)を使用した。この電極はpH応答腹と液絡部が同一面にあるため、皮膚・皮革・紙・植物の葉など物体の表面のpH値を測定でき、また液が極微量でも測定できる。
【0038】
(pH測定)
測定前にpH4、7、9の標準液を使用して装置の校正を行った。次に試料ごとに設定した試験片枚数を金メッキの金属板の上に置き、その上にフラット型電極を試験片面に対して垂直になるように設置した。また金属板と測定装置間の電位差をなくすためアースを取った。これは静電気の帯電によるpH値への影響をなくすためである。試験片表面のpHが安定した後に測定を開始し、測定開始10秒後に0.1mlのpH試験液を試験片とフラット型電極の境界線上にマイクロピペットで滴下した。なお滴下後5分間の挙動を経時的に測定した。pH測定は7水準(3、4、5、7、9、10、11)で、上記12試料について行った。
【0039】
(測定結果)
上記12試料、pH試験液7水準(試験液のpH総平均は7.2)について、pH試験液滴下後5分目の試験片表面のpH測定結果を表1に示す。
またその測定値の解析結果を表2に示す。
【0040】
この際、各pH試験液の総平均pHは7.2であった。
表2の判定結果から明らかなように、本発明の試験方法により試験および判定を行うことにより、絹、毛、および市販試料5種は衣服を着用した状態により近い条件でpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果があることを迅速に判定できることが判る。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法において、pH試験液として、(1)pHが7より小の酸性領域で2水準以上、(2)pHが7より大のアルカリ性範囲で酸性領域と同水準で、(3)酸性領域およびアルカリ性領域での各水準のpHがpH7に対してほぼ対称である異なるpHをもつpH試験液を用い、これらpH試験液を試験片に含浸させた試験片表面のpHを測定し、各水準のpHの試験液に対して得られた試験片表面の各pH測定値につきそれらの総平均と標準偏差とより緩衝効果を判定することを特徴とするpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項2】
pHがおおよそ2〜12の試験液を使用する請求項1記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項3】
試験片とこれに含浸させる試験液との重量比が1:1〜1:3である請求項1または2記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項4】
試験片表面のpHの測定を連続的に行う請求項1〜3のいずれか1項記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項5】
試験液を試験片に含浸させてから3分以上経過後の試験片表面のpHの測定値を用いる請求項1〜4のいずれか1項記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項6】
試験片表面のpH測定値の総平均がpH試験液のpHの総平均未満でかつ、試験片表面のpH測定値の標準偏差が1.2以下であることを基準として緩衝効果を判定する請求項1〜5のいずれか1項記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項7】
試験液のpHの調整を、強酸または強アルカリを使用して行う請求項1〜6のいずれか1項記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。
【請求項8】
試験片表面のpHの測定を固体表面用のフラット型電極を用いて行う請求項1〜7のいずれか1項記載のpH刺激に対する繊維製品の緩衝効果試験方法。

【公開番号】特開2006−58041(P2006−58041A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237687(P2004−237687)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(593012745)財団法人日本化学繊維検査協会 (6)