説明

toll様レセプターを標的とする併用療法およびその使用

【課題】1種以上のtoll様レセプター(例えば、2種以上のtoll様レセプター)に免疫特異的に結合する、抗体の組み合わせ(例えば、複数の中和モノクローナル抗体(MAb))または1種以上の多価抗体を含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、1種以上のtoll様レセプター(例えば、2種以上のtoll様レセプター)に免疫特異的に結合する複数の抗体(例えば、複数の中和抗体)を含む組成物、および炎症性障害の処置においてこれらの組成物を使用する方法を提供する。本発明はまた、炎症性障害の処置において抗体のこれらの組み合わせを使用する方法を提供する。上記炎症性障害は、例えば、敗血症、急性炎症および慢性炎症である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、1種以上のtoll様レセプター(例えば、2種以上のtoll様レセプター)に免疫特異的に結合する複数の抗体(例えば、複数の中和抗体)を含む組成物、および炎症性障害の処置においてこれらの組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
最初にショウジョウバエにおいて見出されたTollレセプターは、I型膜貫通タンパク質であり、そのタンパク質の細胞外部分にロイシンリッチリピート(LRR)および1つまたは2つのシステインリッチドメインを有する。上記ショウジョウバエTollレセプターの哺乳動物のホモログは、「Toll様レセプター」(TLR)として公知である。TLRは、微生物粒子を認識し、そしてこれらの微生物粒子の供給源に対して免疫細胞を活性化することによって先天免疫において役割を果たす。
【0003】
現在、Toll様レセプターの10種の型が、同定されている(TLR 1〜TLR 10)。これらのTLRは、IL−1レセプターの細胞内ドメインに対するそれらの細胞内ドメインの相同性、および細胞外のロイシンリッチリピートの存在によって特徴付けられる。
【0004】
TLRは、異なる型の微生物粒子によって活性化される。例えば、TLR4は、主にリポ多糖類(LPS)によって活性化されるが、TLR2は、リポテイコ酸(LTA)、リポアラビノマンナン(LAM);リポタンパク質(BLP)、およびペプチドグリカン(PGN)によって活性化される。Tollレセプターホモログ(例えば、RP105)もまた、同定されている。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)として公知である異なる型の微生物粒子によって活性化される。例えば、TLR4は、主にリポ多糖類(LPS)によって活性化されるが、TLR2は、リポテイコ酸(LTA)、リポアラビノマンナン(LAM)、リポタンパク質(BLP)、およびペプチドグリカン(PGN)によって活性化される。したがって、任意の所定の微生物は感染の間の任意の所定の時間にて、異なるTLRを並行して刺激し得ることが可能である。
【0005】
さらに、特定のTLRは、機能するためにアクセサリータンパク質の存在を必要とすることが示されている。例えば、TLR4は、細胞表面上で骨髄分化タンパク質−2(MD−2)と複合体を形成する。MD−2タンパク質は、TLR4と直接的に相互作用することが見出されており、MD−2は、TLR4の翻訳後修飾を可能にし、そして細胞表面へのTLR4の輸送を容易にする能力を有する。TLR4およびMD−2は、その細胞表面上で複合体を形成する。CD14は、TLR4の機能に関連している別のタンパク質であり、そしてさらに、CD14は、微生物に対するTLR2の認識に関わっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、1種以上のtoll様レセプター(例えば、2種以上のtoll様レセプター)に免疫特異的に結合する、抗体の組み合わせ(例えば、複数の中和モノクローナル抗体(MAb))または1種以上の多価抗体を含む組成物を提供する。本発明はまた、炎症性障害の処置において抗体のこれらの組み合わせを使用する方法を提供する。上記炎症性障害は、例えば、敗血症、急性炎症および慢性炎症である。例えば、慢性炎症は、自己免疫疾患または炎症性障害(例えば、炎症性腸障害、変形性関節症、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、アテローム硬化症、喘息またはCOPD(慢性閉塞性肺疾患))である。
【0007】
本発明はまた、各レセプター成分に対する中和モノクローナル抗体を使用する、グラム陰性菌の認識におけるTLR4、TLR2およびCD14の相対的寄与の同定、ならびにヒト全血におけるグラム陰性菌Escherichia coliに対する免疫応答の同定に関する。さらに、本発明は、免疫応答の阻害において組み合わせMAb処置の効果を検出する方法に関する。
【0008】
本発明は、複数の抗体を含む組成物または1種以上の多価抗体を含む組成物を提供する。上記抗体の組み合わせは、2種以上の抗体を含み、その抗体は、2種以上の標的(例えば、toll様レセプター4(TLR4)、toll様レセプター2(TLR2)、toll様レセプター1(TLRl)、toll様レセプター5(TLR5)、toll様レセプター6(TLR6)、MD−2およびCD14)に免疫特異的に結合する。例えば、上記組み合わせは、少なくとも2種の抗体(TLR4に免疫特異的に結合する抗体およびTLR2に免疫特異的に結合する抗体)を含む。例えば、上記組み合わせは、少なくとも3種の抗体(TLR4に免疫特異的に結合する抗体、TLR2に免疫特異的に結合する抗体およびMD−2を免疫特異的に結合する抗体)を含む。上記組み合わせは、少なくとも3種の抗体(例えば、TLR4に免疫特異的に結合する抗体、TLR2に免疫特異的に結合する抗体およびCD14を免疫特異的に結合する抗体)を含む。上記組み合わせは、少なくとも4種の抗体(TLR4を免疫特異的に結合する抗体、TLR2を免疫特異的に結合する抗体、MD−2を免疫特異的に結合する抗体、およびCD14を免疫特異的に結合する抗体)を含む。
【0009】
上記抗体は、例えば、モノクローナル抗体であり、そしてより具体的には、標的の生物学的活性または生物学的機能を遮断(例えば、中和)し得るモノクローナル抗体である。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」および「抗体(複数を含む)」とは、一価(すなわち、単一特異性)抗体および多価(例えば、二重特異性、三重特異性)抗体をいう。適切な抗体としては、例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体およびそれらのフラグメントが挙げられる。例えば、上記抗体は、LPS誘導性の炎症促進性サイトカイン産生を遮断し得る。本明細書中で使用される場合、用語「炎症促進性サイトカイン」とは、炎症を促進するか、そして/または炎症に関連する免疫調節性サイトカインをいう。炎症促進性サイトカインとしては、例えば、IL−6、IL−8、TNF−α、IL1−α、IL1−β、IFN−α、IFN−β、IFN−γ、IL−10、IL12、IL−23、IL17、およびIL18が挙げられる。
【0010】
上記抗体は、例えば、細胞表面上に発現されるTLR4/MD−2レセプター複合体を認識する。本発明の組成物および方法において使用される抗体としては、ヒトTLR4/MD−2レセプター複合体に結合し、そしてまたMD−2の存在とは独立してTLR4に結合する抗体が挙げられる。本発明の抗体はまた、ヒトTLR4/MD−2レセプター複合体のTLR4部分に結合する抗体が挙げられるが、その結合は、MD−2の存在に完全に依存する。さらに、本発明の抗体としては、ヒトTLR4/MD−2レセプター複合体を結合し、そしてまたTLR4の存在下においてのみMD−2を結合する抗体が挙げられる。他の適切な抗体としては、TLR4と複合体形成しない場合のMD−2を結合する抗体、TLR2を結合する抗体、TLR1を結合する抗体、TLR5を結合する抗体、TLR6を結合する抗体およびCD14を結合する抗体が挙げられる。
【0011】
本発明の例示の抗体としては、例えば、マウス18H10抗体、マウス16G7抗体、マウス15C1抗体、マウス7E3抗体、ヒト化18H10抗体、ヒト化16G7抗体、ヒト化15C1抗体、ヒト化7E3が挙げられる。これらの抗体は、ヒトTLR4/MD−2レセプター複合体に対する特異性を示し、そしてそれらは、LPSによるレセプター活性化、およびその後の細胞内シグナリングを阻害することが示されている。これらの抗体は、異なる特異性を有する。例えば、15C1は、MD−2の存在とは独立してTLR4を結合し、7E3は、TLR4に結合するが、その結合は、MD−2の存在に依存し、そして18H10は、MD−2に結合するが、このMAbは、MD−2の可溶性形態を結合しないので、TLR4の存在を必要とする。
【0012】
他の例示の抗体としては、28C5として公知である抗CD14モノクローナル抗体(例えば、米国特許第6,444,206号(その全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと)などのCD14を認識する抗体、およびTLR4を認識する抗体(例えば、T2.5として公知である抗TLR2モノクローナル抗体(例えば、WO 2005/028509(その全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと)を含む)が挙げられる。
【0013】
本発明の組み合わせおよび組成物において使用される適切な抗体は、配列番号2、12、22、32、41、42、45、47、48、51および56のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。適切な抗体は、配列番号7、17、27,37、43、44、46、49、53、および59のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。3個の重鎖CDRは、GGYSWH(配列番号23);YIHYSGYTDFNPSLKT(配列番号24);KDPSDGFPY(配列番号25);DSYIH(配列番号3);WTDPENVNSIYDPRFQG(配列番号4);GYNGVYYAMDY(配列番号5);TYNIGVG(配列番号33);HIWWNDNIYYNTVLKS(配列番号34);MAEGRYDAMDY(配列番号35)、TYGIN(配列番号62);GFTFTTYG(配列番号63);WIYPRDGSTNFNENFKD(配列番号64);IYPRDGST(配列番号65);ARLTGGTFLDY(配列番号66);SDSAWN(配列番号72)、YISYSGSTSYNPSLKS(配列番号73)およびGLRFAY(配列番号74)からなる群より選択される配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を含む。3個の軽鎖CDRは、RASQSISDHLH(配列番号28);YASHAIS(配列番号29);QNGHSFPLT(配列番号30);SASSSVIYMH(配列番号8);RTYNLAS(配列番号9);HQWSSFPYT(配列番号10);RASQDITNYLN(配列番号38);YTSKLHS(配列番号39);QQGNTFPWT(配列番号40);RASESVEYYGTSLMQ(配列番号67);ESVEYYGTSL(配列番号68);GASNVES(配列番号69);GAS(配列番号70);QQSRKLPWT(配列番号71)、RASESVDSYVNSFLH(配列番号75);RASNLQS(配列番号76)およびQQSNEDPYT(配列番号77)のアミノ酸配列からなる群より選択される配列と少なくとも90%、92%、95%、97%、98%、99%またはそれ以上同一のアミノ酸配列を含む。
【0014】
TLR4/MD−2複合体を免疫特異的に結合する抗体に関して、その抗体または多価抗体の一部は、配列番号61の残基289と残基375との間のヒトTLR4上の1個以上のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。例えば、上記抗体または多価抗体の一部は、配列番号61の少なくとも残基293〜残基295;配列番号61の少なくとも残基296および残基297;配列番号61の少なくとも残基319〜残基321;配列番号61の少なくとも残基328および残基329;配列番号61の少なくとも残基349〜残基351;ならびに配列番号61の少なくとも残基369〜残基371からなる群より選択される残基を含むエピトープに特異的に結合する。例えば、上記抗体または多価抗体の一部は、配列番号61の少なくとも残基328、残基329、残基349〜残基351および残基369〜残基371を含むエピトープに特異的に結合する。別の例において、上記抗体は、配列番号61の少なくとも残基293〜残基295、残基296、残基297および残基319〜残基321を含むエピトープに特異的に結合する。
【0015】
TLR4/MD複合体を結合する抗体に関して、その抗体または多価抗体の一部は、配列番号60の残基19と残基57との間のヒトMD−2上のエピトープに結合する。例えば、上記抗体は、配列番号60の少なくとも残基53を含むエピトープに特異的に結合する。
【0016】
TLR2を結合する抗体に関して、その抗体または多価抗体の一部は、TLR2の細胞外ドメイン(すなわち、TLR2ECD)のC末端部分にあるエピトープを結合する。
【0017】
本発明はまた、炎症性障害に関連する病理の症状を緩和する方法を提供し、その方法は、このような緩和が望まれる被験体に抗体の組み合わせを、その被験体においてその病理の症状を緩和するのに十分な量で投与する工程を包含する。上記被験体は、例えば、ヒトである。
【0018】
本発明の方法において使用される抗体の組み合わせは、2種以上の抗体を含み、その抗体は、例えば、toll様レセプター4(TLR4)、toll様レセプター2(TLR2)、MD−2およびCD14などの2種以上の標的に免疫特異的に結合する。例えば、上記組み合わせは、少なくとも2種の抗体(TLR4に免疫特異的に結合する抗体およびTLR2に免疫特異的に結合する抗体)を含む。例えば、上記組み合わせは、少なくとも3種の抗体(TLR4に免疫特異的に結合する抗体、TLR2に免疫特異的に結合する抗体およびMD−2を免疫特異的に結合する抗体)を含む。上記組み合わせは、少なくとも3種の抗体(例えば、TLR4に免疫特異的に結合する抗体、TLR2に免疫特異的に結合する抗体およびCD14を免疫特異的に結合する抗体)を含む。上記組み合わせは、少なくとも4種の抗体(TLR4を免疫特異的に結合する抗体、TLR2を免疫特異的に結合する抗体、MD−2を免疫特異的に結合する抗体、およびCD14を免疫特異的に結合する抗体)を含む。本発明の方法に使用される抗体としてはまた、TLR4、MD−2、TLR2およびCD14から選択される少なくとも2種の標的に免疫特異的に結合する多価抗体が挙げられる。
上記抗体の組み合わせは、処置される被験体において免疫応答の開始を予防するか、または減少させるのに十分な量である。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
炎症性障害に関連する病理の症状を緩和する方法であって、該方法は、該緩和を必要とする被験体に抗体の組み合わせを、該被験体において該病理の症状を緩和するのに十分な量で投与する工程を包含し、該抗体の組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体、およびMD−2を免疫特異的に結合する抗体からなる群より選択される2種以上の抗体を含む、方法。
(項目2)
前記被験体が、ヒトである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組み合わせにおいて、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体と、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体と、MD−2を免疫特異的に結合する抗体とを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記組み合わせにおいて、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体と、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体とを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)、toll様レセプター2(TLR2)、toll様レセプター1(TLRl)、toll様レセプター5(TLR5)およびtoll様レセプター6(TLR6)からなる群より選択されるtoll様レセプターを免疫特異的に結合する抗体を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記炎症性障害は、敗血症、自己免疫疾患、慢性炎症性障害または急性炎症性障害である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記炎症性障害は、炎症性腸障害、慢性関節リウマチ、変形性関節症、多発性硬化症、アテローム硬化症、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される慢性炎症障害である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記2種以上の抗体は、前記被験体において免疫応答の開始を予防するか、または減少させるのに十分である量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目9)
抗体の組み合わせを含む組成物であって、該抗体の組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体およびMD−2を免疫特異的に結合する抗体からなる群より選択される2種以上の抗体を含む、組成物。
(項目10)
前記組み合わせにおいて、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体と、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体と、MD−2を免疫特異的に結合する抗体とを含む、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記組み合わせは、18H10、16G7、15Cl、7E3、およびT2.5からなる群より選択される2種以上の抗体を含む、項目9に記載の組成物。
(項目12)
前記組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)、toll様レセプター2(TLR2)、toll様レセプター1(TLRl)、toll様レセプター5(TLR5)およびtoll様レセプター6(TLR6)からなる群より選択されるtoll様レセプターを免疫特異的に結合する抗体を含む、項目9に記載の組成物。
(項目13)
抗体の組み合わせを含む組成物であって、該抗体の組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体、tollレセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体およびMD−2を免疫特異的に結合する抗体からなる群より選択される2種以上の抗体を含み、そして該組み合わせは、10cfu/mlの濃度にて、全血における細菌誘導性のIL−6産生の50%より大きい阻害を示す、組成物。
(項目14)
前記組み合わせにおいて、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体と、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体とを含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
前記組み合わせにおいて、toll様レセプター4(TLR4)を免疫特異的に結合する抗体と、toll様レセプター2(TLR2)を免疫特異的に結合する抗体と、MD−2を免疫特異的に結合する抗体とを含む、項目13に記載の組成物。
(項目16)
前記組み合わせは、18H10、16G7、15Cl、7E3、およびT2.5からなる群より選択される2種以上の抗体を含む、項目13に記載の組成物。
(項目17)
前記組み合わせは、toll様レセプター4(TLR4)、toll様レセプター2(TLR2)、toll様レセプター1(TLRl)、toll様レセプター5(TLR5)およびtoll様レセプター6(TLR6)からなる群より選択されるtoll様レセプターを免疫特異的に結合する抗体を含む、項目13に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、HEK 293 hTLR4/MD2トランスフェクト体(図1A)のいずれかにおけるLPS誘導性のIL−8産生に対する、抗TLR4モノクローナル抗体(15C1と称される)および抗TLR2モノクローナル抗体(本明細書中でT2.5と称される)の効果を示すグラフである。図1Bは、HEK 293 hTLR2の安定なトランスフェクト体におけるPAM3CSK4誘導性のIL−8産生に対する、15C1抗TLR4 MAbおよびT2.5抗TLR2 MAbの効果を示すグラフである(図1B)。
【図2】図2Aは、全血におけるLPS誘導性のIL−6産生に対する15C1抗TLR4 MAb、T2.5抗TLR2 MAbおよび28C5抗CD14 MAbの効果を示す一連のグラフである。図2Bは、全血におけるPAM3CSK4誘導性のIL−6産生に対する15C1抗TLR4 MAb、T2.5抗TLR2 MAbおよび28C5抗CD14 MAbの効果を示す一連のグラフである。
【図3A】図3Aおよび3Bは、失活した野生型E.coliによって刺激される全血におけるIL−6産生に対する15C1抗TLR4 MAbと、T2.5抗TLR2 MAbと、28C5抗CD14 MAbとの組み合わせの効果を示す一連のグラフである。
【図3B】図3Aおよび3Bは、失活した野生型E.coliによって刺激される全血におけるIL−6産生に対する15C1抗TLR4 MAbと、T2.5抗TLR2 MAbと、28C5抗CD14 MAbとの組み合わせの効果を示す一連のグラフである。
【図4】図4A〜4Dは、血液の白血球、HUVEC細胞およびBEAS 2B細胞の表面上のTLR2、TLR4、MD−2ならびにCD14の発現を示す一連のグラフである。
【図5】図5Aおよび5Bは、特定の抗TLR MAbによる、ヒト全血における細菌によるPAMP誘導性のIL−6産生の阻害を示す一連のグラフである。
【図6】図6Aおよび6Bは、熱失活した細菌によってトランスフェクトされたHEK 293細胞におけるIL−8産生の誘導を示す一連のグラフである。
【図7】図7A〜7Cは、熱失活した細菌によるIL−6産生の誘導を示す一連のグラフである。
【図8A】図8A〜8Dは、特定の抗TLR MAbによる、細菌によるPAMP誘導性のIL−6産生の阻害を示す一連のグラフである。
【図8B】図8A〜8Dは、特定の抗TLR MAbによる、細菌によるPAMP誘導性のIL−6産生の阻害を示す一連のグラフである。
【図8C】図8A〜8Dは、特定の抗TLR MAbによる、細菌によるPAMP誘導性のIL−6産生の阻害を示す一連のグラフである。
【図8D】図8A〜8Dは、特定の抗TLR MAbによる、細菌によるPAMP誘導性のIL−6産生の阻害を示す一連のグラフである。
【図9】図9は、ヒト全血における熱失活した細菌および抗生物質によって失活した細菌によって誘導されるIL−6産生の比較を示す一連のグラフである。
【図10−1】図10A〜10Fは、mu18H10(図10E)の、VHヌクレオチド配列(配列番号1)(図10A)、VHアミノ酸配列(配列番号2)(図10B)、VLヌクレオチド配列(配列番号6)(図10D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号7)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号3、4および5)(図10C)およびVL CDR(配列番号8、9および10)(図10F)は、図10Bおよび10Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図10−2】図10A〜10Fは、mu18H10(図10E)の、VHヌクレオチド配列(配列番号1)(図10A)、VHアミノ酸配列(配列番号2)(図10B)、VLヌクレオチド配列(配列番号6)(図10D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号7)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号3、4および5)(図10C)およびVL CDR(配列番号8、9および10)(図10F)は、図10Bおよび10Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図11−1】図11A〜11Fは、mul6G7の、VHヌクレオチド配列(配列番号11)(図11A)、VHアミノ酸配列(配列番号12)(図11B)、VLヌクレオチド配列(配列番号16)(図11D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号17)(図11E)である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号13、14および15)(図11C)およびVL CDR(配列番号18、19および20)(図11F)は、図11Bおよび11Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図11−2】図11A〜11Fは、mul6G7の、VHヌクレオチド配列(配列番号11)(図11A)、VHアミノ酸配列(配列番号12)(図11B)、VLヌクレオチド配列(配列番号16)(図11D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号17)(図11E)である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号13、14および15)(図11C)およびVL CDR(配列番号18、19および20)(図11F)は、図11Bおよび11Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図12−1】図12A〜12Fは、mu15C1の、VHヌクレオチド配列(配列番号21)(図12A)、VHアミノ酸配列(配列番号22)(図12B)、VLヌクレオチド配列(配列番号26)(図12D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号27)(図12E)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号23、24および25)(図12C)およびVL CDR(配列番号28、29および30)(図12F)は、図12Bおよび12Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図12−2】図12A〜12Fは、mu15C1の、VHヌクレオチド配列(配列番号21)(図12A)、VHアミノ酸配列(配列番号22)(図12B)、VLヌクレオチド配列(配列番号26)(図12D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号27)(図12E)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号23、24および25)(図12C)およびVL CDR(配列番号28、29および30)(図12F)は、図12Bおよび12Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図13−1】図13A〜13Fは、mu7E3の、VHヌクレオチド配列(配列番号31)(図13A)、VHアミノ酸配列(配列番号32)(図13B)、VLヌクレオチド配列(配列番号36)(図13D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号37)(図13E)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号33、34および35)(図13C)およびVL CDR(配列番号38、39および40)(図13F)は、図13Bおよび13Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図13−2】図13A〜13Fは、mu7E3の、VHヌクレオチド配列(配列番号31)(図13A)、VHアミノ酸配列(配列番号32)(図13B)、VLヌクレオチド配列(配列番号36)(図13D)、およびVLアミノ酸配列(配列番号37)(図13E)を示す一連の図である。VH相補性決定領域(CDR)(配列番号33、34および35)(図13C)およびVL CDR(配列番号38、39および40)(図13F)は、図13Bおよび13Eにおいて下線付きのイタリック体で強調される。
【図14A】図14Aおよび14Bは、hu15C1の、ヒト化VHアミノ酸配列の2つのバージョン(配列番号41)、(配列番号42)(図14A)およびヒト化VLアミノ酸配列の2つのバージョン(配列番号43)、(配列番号44)(図14B)である。VH CDRおよびVL CDRもまた、示される。
【図14B】図14Aおよび14Bは、hu15C1の、ヒト化VHアミノ酸配列の2つのバージョン(配列番号41)、(配列番号42)(図14A)およびヒト化VLアミノ酸配列の2つのバージョン(配列番号43)、(配列番号44)(図14B)である。VH CDRおよびVL CDRもまた、示される。
【図15】図15は、18H10の、VHアミノ酸配列(配列番号45)およびVLアミノ酸配列(配列番号46)を示す図である。VH CDRおよびVL CDRもまた、示される。
【図16】図16は、hu7E3の、ヒト化VHアミノ酸配列の2つのバージョン(配列番号47)、(配列番号48)およびVLアミノ酸配列(配列番号49)を示す図である。そのVH CDRおよびVL CDRもまた、示される。
【図17】図17は、28C5重鎖の核酸配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号50および51)を示す図である。
【図18】図18は、28C5軽鎖の核酸配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号52および53)を示す図である。
【図19】図19は、T2.5可変重鎖の核酸配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号54〜55および56)を示す図である。
【図20】図20は、T2.5可変軽鎖の核酸配列およびアミノ酸配列(それぞれ、配列番号57−58および59)を示す図である。
【図21】図21は、成熟MD−2アクセサリータンパク質のアミノ酸配列(配列番号60)を示す図である。
【図22】図22は、ヒトtoll様レセプター4(TLR4)(配列番号61)のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
TLRは、微生物粒子を認識し、そしてこれらの微生物粒子の供給源に対して免疫細胞を活性化する(Takedaら、Annu.Rev.Immunol.、21:335−76(2003)(その全体が本明細書によって参考として援用される))。例えば、TLR4およびMD−2は、細胞表面上で複合体を形成することが見出されており、そして
MD−2の存在は、種々のリガンド(LPSを含む)に対するTLR4の反応性に必須であるようである。LPSは、先天免疫系を強力に活性化し得るグラム陰性菌の外膜糖脂質である。LPSは、グラム陰性菌感染から生じる重篤な全身性の炎症の間に免疫系を活性化する主要な因子の1つとして示唆されている(Lakhaniら、Curr.Opin.Pediatr.15:278−282(2003)(その全体が本明細書によって参考として援用される))。
【0021】
1990年代の後半における哺乳動物TLRの発見(Medzhitovら、Nature 1997;Rockら、PNAS 1998)に起因して、多数の活性化リガンドが、同定されている(Akira、Nat Immun 2004に概説される)。これらのリガンドの大多数は、種々の微生物に由来するPAMPとして公知である、精製された分子または合成の分子である。これらのリガンドは、個々のTLRに対する高レベルの特異性を示し、そしてそのリガンドは、宿主に組織内に進入する病原体の存在を検出させる。一般に、これらのPAMPは、その微生物の生存に必須であり、したがって検出を回避するために改変することができない。
【0022】
より最近、内因性分子に由来する第2のクラスのリガンドがTLRシグナリングを刺激することによって先天免疫を開始し得ることが、明らかとなった(Johnson、Crit.Rev.Immunol 2003に概説される)。これらのリガンドは、一般に、タンパク質分解のカスケードの活性化の結果として生じる高分子の分解を介して生成され、組織傷害または組織のストレスの間に開始する「危険シグナル」と見なされ得る。例えば、内因性リガンドは、TLR2、TLR4およびTLR9について同定されている(Johnsonら、Crit.Rev.Immunol.、第23巻(1−2)(2003))。
【0023】
TLRシグナリングは、高度に精製されたTLRリガンドを用いて研究されている。本明細書中に提供される実施例は、先天免疫応答の開始の間の、微生物全体のエラティブ(elative)なTLR利用を示す。E.coliは、TLRシグナリングを刺激し得る多くのPAMPから構成され得る。例えば、内在性の外膜成分LPSは、TLR4の非常に強力な刺激因子である。グラム陰性菌はまた、TLR2を介して特異的に免疫系を刺激することが公知であるリポタンパク質を有する(AkiraおよびTakeda、Nat.Rev.Immunol.、第4巻(7):499−511(2004))。したがって、グラム陰性菌全体は、並行して2種のTLRを介して免疫応答を開始することが可能である。
【0024】
本明細書中に提供される実施例に記載される研究において使用されるモデルは、ヒト全血における熱失活したE.coliグラム陰性菌の投与を必要とする。IL−6産生は、熱失活したE.coliによって誘導される免疫応答についての読み出しとしてモニタリングされた。TLR4、TLR2およびCD14に対するMAbを遮断することは、結果として生じる免疫反応において、これらのタンパク質の各々の寄与を決定する試みにおいて使用された。αTLR4処置によるIL−6の部分的な阻害が観察されたのに対して、αTLR2処置は、サイトカインレベルに影響しなかった。これらの結果は、TLR4リガンド(例えば、LPS)が免疫応答の主要な開始因子であることを示す。しかし、TLR4 MAbとTLR2 MAbとによる同時処置は、全てのドナー(n=3)において、IL−6レベルを、TLR4 MAb単独によって検出されたレベルを十分に下回るレベルまで著しく減少させた。このデータは、TLR2リガンドが、免疫応答の開始において役割を果たすが、これらは、優勢ではないことを示す。CD14がTLR4リガンドおよびTLR2リガンド(図2、図5)の両方に対する共受容体であるという事実に起因して、αCD14 MAbは、TLR4 MAb単独およびTLR2 MAb単独より大きい中和活性を有した。増大した阻害は、CD14 MAbが、TLR4もしくはTLR2またはその両方のいずれかと一緒に同時投与された場合に観察された。このことは、E.coliにおけるTLR2リガンドおよびTLR4リガンドがCD14依存性の機構を介してレセプターシグナリングを誘導し得ることを示す。
【0025】
本明細書中に記載される方法は、多くの用途を有する。例えば、本明細書中に記載される方法は、急性炎症疾患(例えば、敗血症)、および慢性炎症疾患(例えば、炎症性腸障害(IBD)、慢性関節リウマチ、多発性硬化症およびアテローム硬化症の状況(context)においてTLRを標的化するために使用される(O’Neill、Curr.Op.Pharmacology、第3巻:396−403(2003))。本明細書中に記載される方法は、単独療法としてよりも、並行して複数のTLRまたはそれらのアクセサリータンパク質を標的とする。例えば、グラム陰性菌感染から生じる全身性炎症は、敗血症および敗血症性ショックの開始にに関連する。本明細書中に記載される方法を使用して炎症を減少させることを目的とする治療アプローチは、1種より多いTLRまたは関連タンパク質を標的とする。さらに、本明細書中に記載される方法は、1種の個別のTLRまたは関連タンパク質よりもむしろ、1種より多いTLRまたは関連タンパク質を標的とするために、IBD(複数の細菌の微生物叢が疾患の発生において重要な役割を果たす)において使用される。本明細書中に記載される方法はまた、高分子分解産物または内因性リガンドが炎症を強力に再燃させる疾患(変形性関節症および慢性関節リウマチは、これに対する仮定的な適応である)においてTLR2およびTLR4を同時に標的するために使用され得、この方法は、いずれかの単独のTLRを標的とすることを上回る利益を提供する。
【0026】
したがって、1種より多いTLRまたは関連タンパク質を標的とすることは、例えば、グラム陰性菌感染によって誘導される急性の全身性炎症および敗血症などの障害の処置において、強力な治療ストラテジーである。
【0027】
(定義)
別に明記しない限り、本発明に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は、複数の存在を含み、そして複数形の用語は、単数の存在を含む。一般に、本明細書中に記載される細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質化学およびオリゴヌクレオチド化学またはポリヌクレオチド化学、ならびにハイブリダイゼーションに関して利用される用語、ならびにそれらの技術は、当該分野において周知であり、そして当該分野において一般的に使用される。標準的な技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養ならびに形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用される。酵素反応および精製技術は、製造業者の指示書に従って行なわれるか、当該分野において一般的に実行されるように行なわれるか、または本明細書中に記載されるように行われる。上述の技術および手順は、一般に、当該分野で周知である従来の方法に従って行なわれ、そして本明細書全体を通して引用され、そして議論される種々の一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように行われる。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))を参照のこと。本明細書中に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関して利用される用語、ならびにそれらの実験室手順および技術は、周知であり、そして当該分野において一般的に使用される。標準的な技術は、化学合成、化学分析、薬学的な調製、処方、および送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0028】
本発明の開示に従って利用される場合、特に示されない限り、以下の用語は、以下の意味を有すると理解される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分(すなわち、抗原を特異的に結合する(抗原と免疫反応する)抗原結合部位を含む分子)をいう。「特異的に結合する」または「と免疫反応する」または「免疫特異的に結合する」は、所望の抗原の1以上の抗原決定基と反応し、かつ他のポリペプチドと反応しないか、またはずっと低い親和性(K>10−6)でそれを結合する抗体を意味する。抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、dAb(ドメイン抗体)、単鎖抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab’)2フラグメント、scFv、ならびにFab発現ライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
基本的な抗体構造単位は、四量体を構成することが公知である。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を規定する。一般に、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgEおよびIgDのいずれかに関連し、これらのクラスは、上記分子に存在する重鎖の性質によって互いに異なる。特定のクラスは、サブクラス(例えば、IgG、IgGおよびその他)をも有する。さらに、ヒトにおいて、上記軽鎖は、κ鎖またはλ鎖であり得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」(MAb)または「モノクローナル抗体組成物」とは、固有の軽鎖遺伝子産物および固有の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む抗体分子の集団をいう。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、上記集団の全ての分子において同一である。MAbは、それに対する固有の結合親和性によって特徴付けられる抗原の特定のエピトープと免疫反応し得る抗原結合部位を含む。
【0032】
用語「抗原結合部位」または「結合部分」とは、抗原の結合に関与する免疫グロブリン分子の部分をいう。抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変領域(「V」)のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と称される重鎖および軽鎖のV領域内の3個の高度に分岐した範囲(stretch)は、「フレームワーク領域」または「FR」として公知であるより保存された隣接する範囲の間に挿入される。したがって、用語「FR」とは、免疫グロブリンにおける超可変領域の間、およびそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列をいう。抗体分子において、軽鎖の3個の超可変領域および重鎖の3個の超可変領域は、抗原結合表面を形成するために、3次元空間で互いに対して配置される。抗原結合表面は、結合された抗原の3次元表面に対して相補性であり、そして重鎖および軽鎖の各々の3個の超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。各ドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1987および1991))、またはChothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987)、Chothiaら、Nature 342:878−883(1989)の定義に従う。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞レセプターに特異的に結合し得る任意のタンパク質決定因子を含む。用語「エピトープ」は、免疫グロブリンまたはT細胞レセプターに特異的に結合し得る任意のタンパク質決定因子を含む。エピトープ決定因子は、通常、分子の化学的に活性な表面集団(surface grouping)(例えば、アミノ酸または糖側鎖)からなり、そして特定の3次元構造の特徴、および特定の電荷の特徴を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端ペプチドまたはC末端ペプチドに対して惹起され得る。抗体は、解離定数が≦1μM;好ましくは≦100nMそして最も好ましくは≦10nMである場合に抗原を特異的に結合するといわれる。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」とは、免疫グロブリン分子と上記免疫グロブリンが特異的である抗原との間に生じる型の非共有結合的相互作用をいう。免疫学的結合の相互作用の強度または親和性は、その相互作用の解離定数(K)に関して表され得、より小さいKは、より大きい親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当該分野で周知の方法を使用して定量化され得る。1つのこのような方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度の測定を伴い、これらの速度は、その複合体パートナーの濃度、その相互作用の親和性、および両方向における速度に等しく影響する幾何的パラメータに依存する。したがって、「結合(on)速度定数」(Kon)および「解離(off)速度定数」(Koff)の両方は、濃度ならびに会合および解離の実際の速度の計算によって決定され得る(Nature 361:186−87(1993)を参照のこと)。Koff/Konの比は、親和性に関連しない全てのパラメータの取り消しを可能にし、そして解離定数Kに等しい(一般に、Daviesら、(1990)Annual Rev Biochem 59:439−473を参照のこと)。本発明の抗体は、放射性リガンド結合アッセイまたは当業者に公知である同様のアッセイなどのアッセイによって測定された場合に、平衡結合定数(K)が、≦1μM、好ましくは≦100nM、より好ましくは≦10nM、そして最も好ましくは≦100pM〜約1pMであるとき、Toll様レセプター4(TLR4)/MD−2複合体またはMD−2と複合体形成されない場合のTLR4に特異的に結合するといわれる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」は、ゲノム起源、cDNA起源、もしくは合成起源またはそのいくつかの組み合わせからなるポリヌクレオチドを意味し、その起源によって、上記「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)その「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全てまたは一部に関連しないか、(2)天然において結合されないポリヌクレオチドに作動可能に結合されるか、または(3)より大きい配列の一部として天然に生じない。本発明に従うポリヌクレオチドは、配列番号2、12、22、32、41、42、45、47および48にて示される重鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子、ならびに配列番号7、17、27、37、43、44、46および53にて示される軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を含む。
【0036】
本明細書中に言及される用語「単離されたタンパク質」は、cDNA起源、組換えRNA起源、もしくは合成起源またはそのいくつかの組み合わせからなるタンパク質を意味し、その起源もしくは由来する供給源によって、上記「単離されたタンパク質」は、(1)天然に見出されるタンパク質に関連しないか、(2)同じ供給源に由来する他のタンパク質を含まない(例えば、マウスタンパク質を含まない)か、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、または(4)天然に存在しない。
【0037】
用語「ポリペプチド」は、ネイティブなタンパク質、フラグメント、またはポリペプチド配列のアナログをいう一般用語として本明細書中で使用される。したがって、ネイティブなタンパク質のフラグメント、およびアナログは、ポリペプチド分類(genus)の種である。本発明に従うポリペプチドは、配列番号2、12、22、32、41、42、45、47および48にて示される重鎖免疫グロブリン分子、ならびに配列番号7、17、27、37、43、44、46および49にて示される軽鎖免疫グロブリン分子、ならびに軽鎖免疫グロブリン分子(例えば、κ軽鎖免疫グロブリン分子)を有する重鎖免疫グロブリン分子(逆もまた同じ)を含む組み合わせによって形成される抗体分子を含み、そしてそのフラグメントおよびそのアナログを含む。
【0038】
本明細書中で使用される場合、対象に対して適用される用語「天然に存在する」とは、対象が天然において見出され得るという事実をいう。例えば、天然の供給源から単離され得る生物体(ウイルスを含む)において存在するポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列であり、そしてそれは、実験室において人によって意図的に改変されていないか、またはそうでなければ天然に存在する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「作動可能に結合される」とは、成分の意図された様式でその成分が機能することを許容する関係にある、そのように記載される成分の位置をいう。コード配列に「作動可能に結合される」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合性の条件下において達成されるような方法で連結される。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「制御配列」とは、それらが連結されるコード配列の発現およびプロセシングを達成するために必要なポリヌクレオチド配列をいう。このようなコントロール配列の性質は、原核生物においては宿主生物体に依存して異なり、このような制御配列としては、一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、および真核生物における転写終結配列が挙げられ、一般に、このような制御配列としては、プロモーターおよび転写終結配列が挙げられる。用語「制御配列」は、最低でも、その存在が発現およびプロセシングに必須である全ての成分、そしてまた、その存在が有益であるさらなる成分(例えば、リーダー配列および融合パートナー配列)を含み得ることが意図される。本明細書中に言及される用語「ポリヌクレオチド」は、少なくとも10塩基長のヌクレオチドのポリマー性ボロン(polymeric boron)、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのいずれか、あるいはいずれかの型のヌクレオチドの改変形態を意味する。この用語は、DNAの一本鎖形態および二本鎖形態を含む。
【0041】
本明細書中に言及される用語オリゴヌクレオチドは、天然に存在するオリゴヌクレオチドオリゴヌクレオチド結合および天然に存在しないオリゴヌクレオチド結合によって1つに結合された、天然に存在するヌクレオチドならびに改変ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、一般に、200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドのサブセットである。好ましいオリゴヌクレオチドは、10〜60塩基長であり、そして最も好ましくは12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、または20〜40塩基長である。オリゴヌクレオチドは、通常、一本鎖(例えば、プローブのため)であるが、オリゴヌクレオチドは、二本鎖(例えば、遺伝子変異体の構築に使用するため)であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかである。
【0042】
本明細書中に言及される用語「天然に存在するヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。本明細書中に言及される用語「改変ヌクレオチド」は、改変または置換の糖質基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書中に言及される用語「オリゴヌクレオチド結合」は、オリゴヌクレオチド結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレロエート(phosphoroselerloate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホロアニラデート(phoshoraniladate)、ホスホロンミデート(phosphoronmidate)など)を含む。例えば、LaPlancheら、Nucl.Acids Res.14:9081(1986);Stecら、J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984)、Steinら、Nucl.Acids Res.16:3209(1988)、Zonら、Anti Cancer Drug Design 6:539(1991);Zonら、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、pp.87−108(F.Eckstein編、Oxford University Press、Oxford England(1991));Stecら、米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543(1990)を参照のこと。オリゴヌクレオチドは、所望される場合、検出のための標識を含み得る。
【0043】
本明細書中に言及される用語「選択的にハイブリダイズする」は、検出可能かつ特異的に結合することを意味する。本発明に従うポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびそれらのフラグメントは、不特定の核酸に検出可能に結合する認識可能な量を最小限にするハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下において、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。高ストリンジェンシー条件は、当該分野において公知であるような選択的ハイブリダイゼーション条件を達成するために使用され得、そして本明細書中で考察される。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびフラグメントと、目的の核酸配列との間の核酸配列の相同性は、少なくとも80%であり、そしてより代表的には、少なくとも85%、90%、95%、99%、および100%のより上昇した相同性を有することが好ましい。2つのアミノ酸配列は、それらの配列の間に、部分的かまたは完全な同一性が存在する場合、相同である。例えば、85%相同は、2つの配列が最大限の整合を目的として整列される場合に、そのアミノ酸の85%が同一であることを意味する。整合の最大化において許容されるギャップ(整合させられる2つの配列のいずれかにおける)は、5以下のギャップ長が好ましい(2以下のギャップ長がより好ましい)。あるいは、そして好ましくは、2つのタンパク質配列(または少なくとも30アミノ酸長のタンパク質に由来するポリペプチド配列)は、それらが、変異データマトリックスおよび6以上のギャップペナルティーを用いたプログラムALIGNを使用して5(標準偏差単位(standard deviation unit)において)のアライメントスコアを有する場合、相同である(この用語が、本明細書中で使用される場合)。Dayhoff,M.O.、Atlas of Protein Sequence and Structure、pp.101−110(第5巻、National Biomedical Research Foundation(1972))およびこの巻に対する補遺2、pp.1−10を参照のこと。2つの配列またはその部分は、それらのアミノ酸が、ALIGNプログラムを使用して最適に整列されるときに50%以上同一である場合に、より好ましい相同である。用語「に対応する」は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同(すなわち、同一であり、厳密には、進化的に関連しない)であること、あるいはポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書中で使用される。対比して、用語「と相補的」は、相補配列が参照ポリヌクレオチド配列の全部または一部と相同であることを意味するために本明細書中で使用される。例として、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応し、そして参照配列「GTATA」と相補的である。
【0044】
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の、配列の関係を記載するために使用される:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の%」、および「実質的な同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基礎として使用される規定の配列であり、参照配列は、例えば、配列表において与えられる完全長cDNAまたは遺伝子配列のセグメントのようなより大きい配列のサブセットであり得るか、あるいは完全なcDNAまたは遺伝子配列を含み得る。一般に、参照配列は、少なくとも18ヌクレオチド長または6アミノ酸長であり、頻繁に少なくとも24ヌクレオチド長または8アミノ酸長であり、そしてしばしば少なくとも48ヌクレオチド長または16アミノ酸長である。2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ、(1)2つの分子間で類似する配列(すなわち、完全なポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の一部)を含み得、そして(2)その2つのポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間で相違する配列をさらに含み得るので、2つ(またはそれ以上)分子の間の配列比較は、代表的に、その2つの分子の配列を「比較ウィンドウ」にわたって比較して、配列類似性の局所領域を同定および比較することによって行われる。本明細書中で使用される場合、「比較ウィンドウ」とは、少なくとも18個の連続したヌクレオチド位置または6アミノ酸の概念的なセグメントをいい、ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、少なくとも18個の連続したヌクレオチドまたは6アミノ酸の参照配列と比較され得、そしてその比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、その2つの配列の最適なアライメントについて参照配列(付加または欠失を含まない)と比較される場合に20%以下の付加、欠失、置換など(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウィンドウを整列するための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:2444(1988)の類似法についての調査、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、(Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)、Geneworks、またはMacVectorソフトウェアパッケージにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または視診によって行われ得、そして種々の方法によって生成される最良のアライメント(すなわち、その比較ウィンドウに対して最も高い%の相同性をもたらす)が、選択される。
【0045】
用語「配列同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列がその比較ウィンドウにわたって同一(すなわち、それぞれのヌクレオチドベースまたはそれぞれの残基ベースで同一)であることを意味する。用語「配列同一性の%」は、比較のウィンドウにわたって2つの最適に整列した配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、UまたはI)または残基が両方の配列において生じる位置の数を決定して一致した位置の数を与え、一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の合計(すなわち、ウィンドウの大きさ)で除算し、そして配列同一の%を与えるために100を乗算することによって算出される。本明細書中で使用される場合、用語「実質的な同一性」は、ポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の特徴を示し、そのポリヌクレオチドまたはアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)位置の比較ウィンドウ、頻繁に少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)位置のウィンドウにわたる参照配列と比較した場合に、少なくとも85%の配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95%の配列同一性、より通常は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含み、配列同一性の%は、参照配列を、比較ウィンドウにわたって合計で20%以下の参照配列に欠失または付加を有し得る配列と比較することによって算出される。参照配列は、より大きい配列のサブセットであり得る。
【0046】
本明細書中で使用される場合、20種の従来のアミノ酸およびそれらの略記は、従来の使用法に従う。Immunology−A Synthesis(第2版、E.S.Golub and D.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland7 Mass.(1991))を参照のこと。上記20種の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸(例えば、α−,α−二置換アミノ酸)、N−アルキルアミノ酸、乳酸、および他の異例のアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドに適した成分であり得る。異例のアミノ酸の例としては、以下が挙げられる:4ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似するアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書中で使用されるポリペプチドの表記法において、標準的な使用法および慣例に従って、左手方向は、アミノ末端方向であり、そして右手方向は、カルボキシ末端方向である。
【0047】
同様に、特に明記されない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手側の末端は、5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は、5’方向と称される。新生のRNA転写物の付加の5’から3’の方向は、転写方向と称され、RNAと同じ配列を有し、そしてRNA転写物の5’末端に対して5’であるDNA鎖における配列領域は、「上流配列」と称され、RNAと同じ配列を有し、そしてRNA転写物の3’末端に対して3’であるDNA鎖における配列領域は、「下流配列」と称される。
【0048】
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な同一性」は、2つのポリペプチド配列が、(例えば、初期設定のギャップの重みを使用するプログラムGAPまたはプログラムBESTFITによって)最適に整列された場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、そして最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0049】
好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0050】
保存的アミノ酸置換とは、同様の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;そして硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0051】
本明細書中で考察されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における軽微なバリエーションは、本発明に包含されることが企図されるが、但しそのアミノ酸配列におけるバリエーションは、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、そして最も好ましくは99%を維持する。特に、保存的アミノ酸の置換が、企図される。保存的置換は、アミノ酸の側鎖において関連するアミノ酸のファミリー内で起きる置換である。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般に、ファミリーに分けられる:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり;(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、そして(4)非荷電アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、およびトレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸としては、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシンおよびバリンが挙げられる。アミノ酸の他のファミリーとしては、(i)セリンおよびトレオニン(これらは、脂肪族−ヒドロキシファミリーである);(ii)アスパラギンおよびグルタミン(これらは、アミド含有ファミリーである);(iii)アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン(これらは、脂肪族ファミリーである);ならびに(iv)フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン(これらは、芳香族ファミリーである)が挙げられる。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの独立した置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の独立した置換、セリンによるトレオニンの独立した置換、あるいは構造的に関連するアミノ酸によるアミノ酸の同様の置換が、特にそれらの置換がフレームワーク部位内のアミノ酸に関与しない場合に、得られる分子の結合または特性に対して大きく作用しないと予想することは、妥当である。アミノ酸の変化が機能的ペプチドをもたらすか否かは、ポリペプチド誘導体の特定の活性をアッセイすることによって容易に決定され得る。アッセイは、本明細書中に、詳細に記載される。抗体もしくは免疫グロブリン分子のフラグメントまたはアナログは、当業者によって容易に調製され得る。フラグメントまたはアナログの好ましいアミノ末端およびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造的ドメインおよび機能的ドメインは、ヌクレオチド配列データおよび/またはアミノ酸配列データと、公的または私的な配列データベースとの比較によって同定され得る。好ましくは、コンピューターによる比較方法は、公知の構造および/または機能からなる他のタンパク質に存在する、配列モチーフまたは予想されるタンパク質コンホメーションドメインを同定するために使用される。公知の3次元構造へと折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は、公知である。Bowieら、Science 253:164(1991)。したがって、上述の例は、当業者が、本発明に従う構造的ドメインおよび機能的ドメインを規定するために使用され得る配列モチーフおよび構造的コンホメーションを認識し得ることを示す。
【0052】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させる置換、(2)酸化に対する感受性を減少させる置換、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる置換、(4)結合親和性を変化させる置換、および(4)このようなアナログの他の物理化学的特性または機能的特性を与えるか、あるいは改変する置換である。アナログは、天然に存在するペプチド配列以外の、配列の種々のムテインを含む。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列(好ましくは、分子間の接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分)において行われ得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させないはずである(例えば、置換アミノ酸は、親配列に存在するヘリックスを破壊する傾向を有さないか、または親配列を特徴付ける他の型の二次構造を破壊しないはずである)。当該分野において認識されるポリペプチドの二次構造および三次構造の例は、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton編、W.H.Freeman and Company、New York(1984));Introduction to Protein Structure(C.BrandenおよびJ.Tooze編、Garland Publishing、New York、N.Y.(1991));およびThorntonら、Nature 354:105(1991)に記載される。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチドフラグメント」とは、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドをいうが、その残りのアミノ酸配列は、例えば、完全長cDNA配列から推定される天然に存在する配列において対応する位置と同一である。フラグメントは、代表的に、少なくとも5、6、8または10アミノ酸長であり、好ましくは少なくとも14アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり、通常は少なくとも50アミノ酸長であり、そしてよりさらに好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。本明細書中で使用される場合、用語「アナログ」とは、推定されるアミノ酸配列の一部に対する実質的な同一性を有する少なくとも25アミノ酸のセグメントから構成され、かつ適切な結合条件下でTLR4/MD2複合体または単独のTLR4に対する特異的な結合を有するポリペプチドをいう、代表的に、ポリペプチドアナログは、天然に存在する配列に対する保存的アミノ酸置換(または付加もしくは欠失)を含む。アナログは、代表的に、少なくとも20アミノ酸長、好ましくは少なくとも50アミノ酸長またはそれ以上であり、そしてしばしば、天然に存在する完全長ポリペプチドと同じ長さであり得る。
【0054】
ペプチドアナログは、鋳型のペプチドの特性に類似する特性を有する非ペプチド薬物として、製薬産業において一般的に使用される。これらの型の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣物(peptide mimetic)」または「ペプチド模倣体(peptidomimetic)」と称される。Fauchere、J.Adv.Drug Res.15:29(1986)、VeberおよびFreidinger TINS p.392(1985);ならびにEvansら、J.Med.Chem.30:1229(1987)。このような化合物は、しばしば、コンピューターによる分子モデリングの助けを借りて開発される。治療的に有用なペプチドに構造的に類似するペプチド模倣物は、等価な治療効果または予防効果をもたらすために使用され得る。一般に、ペプチド模倣体は、ヒト抗体などのパラダイムポリペプチド(すなわち、生化学的特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似するが、当該分野で周知の方法により、以下からなる群より選択される結合によって必要に応じて置換される1以上のペプチド結合を有する:−−CHNH−−、−−CHS−、−−CH−CH−−、−−CH=CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH−−、CH(OH)CH−−、および−CHSO−−。同じ型のD−アミノ酸によるコンセンサス配列の1個以上のアミノ酸の系統的置換(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)は、より安定なペプチドを産生するために使用され得る。さらに、コンセンサス配列または実質的に同一なコンセンサス配列のバリエーションを含む制約されたペプチドは、当該分野において公知である方法(RizoおよびGierasch、Ann.Rev.Biochem.61:387(1992);例えば、そのペプチドを環状にする分子内ジスルフィド架橋を形成し得る内部システイン残基を付加すること)によって産生され得る。
【0055】
用語「薬剤」は、本明細書中で、化学物質、化学物質の混合物、生物学的高分子、または生物学的材料から作製される抽出物を記載するために使用される。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「標識」または「標識される」とは、検出可能なマーカーの組み込み(例えば、放射性標識アミノ酸の組み込みまたは特徴的なアビジン(例えば、光学的方法または熱量測定の方法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドに対する結合による)をいう。特定の状況において、標識またはマーカーはまた、治療的であり得る。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する種々の方法は、当該分野において公知であり、そしてそれらの方法が、使用され得る。ポリペプチドに対する標識の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光体、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパーの対の配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの実施形態において、標識は、潜在的な立体障害を減少させるために、種々の長さのスペーサーアーム(spacer arm)によって結合される。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的因子または薬物」とは、患者に対して適切に投与される場合に所望の治療効果を誘導し得る化学物質または組成物をいう。
【0057】
本明細書中の他の化学用語は、The McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(Parker,S.編、McGraw−Hill、San Francisco(1985))によって例示されるような、当該分野における従来の使用法に従って使用される。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「実質的に純粋」は、対象の化学種が、存在する優勢な化学種である(すなわち、モル濃度に基づいて、その化学種が、その組成におけるあらゆる他の個別の化学種より豊富である)ことを意味し、そして好ましくは、実質的に精製された分画は、対象の化学種が、存在する全ての高分子化学種うちの少なくとも約50%(モル濃度に基づく)を構成する組成である。
【0059】
一般に、実質的に純粋な組成は、その組成に存在する全ての高分子化学種の、約80%より多くを構成し、より好ましくは、約85%、90%、95%、および99%より多くを構成する。最も好ましくは、対象の化学種は、本質的に均一(夾雑物の化学種が、従来の検出方法によって、その組成において検出される可能性がない)になるまで精製され、その組成は、本質的に、単一の高分子化学種からなる。
【0060】
用語「患者」は、ヒト被験体および獣医学の被験体を含む。
【0061】
(抗体)
本発明のモノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体またはヒト化抗体)は、LPS誘導性の炎症促進性サイトカイン産生を阻害する能力を有する。阻害は、例えば、本明細書中に記載されるヒト全血のアッセイおよびhuTLR4/MD2トランスフェクトHEK 293細胞のアッセイにおいて決定される。例示のモノクローナル抗体としては、例えば、本明細書中で、マウス18H10モノクローナル抗体(「mu18H10」)、ヒト18H10モノクローナル抗体(「hu18H10」)、マウス16G7モノクローナル抗体(「mu16G7」)、マウス15C1モノクローナル抗体(「mu15C1」)、ヒト15C1モノクローナル抗体(「hu15C1」)、マウス7E3モノクローナル抗体(「mu7E3」)およびヒト7E3モノクローナル抗体(「hu7E3」)と称される抗体が挙げられる。mu18H10抗体およびhu18H10抗体は、TLR4/MD−2複合体を認識するが、TLR4と複合体形成されない場合のMD−2タンパク質を認識しない。mu16G7モノクローナル抗体、mu15C1モノクローナル抗体、hu15C1モノクローナル抗体、mu7E3モノクローナル抗体およびhu7E3モノクローナル抗体は、TLR4/MD−2複合体を認識する。mu15C1、hu15C1および16G7はまた、MD−2と複合体形成されない場合のTLR4を認識する。他の例示の抗体としては、TLR2、MD−2またはCD14を認識するモノクローナル抗体(例えば、「28C5」として公知である抗CD14モノクローナル抗体および「T2.5」として公知である抗TLR2モノクローナル抗体)が挙げられる。
【0062】
本明細書中に記載される抗体と同じエピトープに結合する抗体もまた、本発明に含まれる。例えば、本発明の抗体は、TLR4/MD−2複合体を免疫特異的に結合し、その抗体は、配列番号61の残基289と残基375との間のヒトTLR4上の1個以上のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。本発明の抗体は、TLR4/MD2複合体を免疫特異的に結合し、その抗体は、配列番号60の残基19と残基57との間のヒトMD−2上のエピトープに結合する。TLR2を結合する抗体に関して、その抗体または多価抗体の一部は、TLR2の細胞外ドメイン(すなわち、TLR2ECD)のC末端部分にあるエピトープに結合する。
【0063】
当業者は、モノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体またはヒト化抗体)が本明細書中に記載されるモノクローナル抗体(例えば、mu18H10、hu18H10、mu16G7、mu15C1、hu15C1、mu7E3、hu7E3、28C5および/またはT2.5)と同じ特異性を有する場合、後者がその抗体の標的(例えば、TLR4/MD−2複合体、MD−2と複合体形成されない場合のTLR4、TLR4と複合体形成されない場合のMD−2、TLR4に複合体形成されない場合のMD−2、TLR2およびCD14)に結合することを、前者が妨げるか否かを確認することによって、過度の実験を伴わずに決定することが可能であることを認識する。試験されるモノクローナル抗体が、本発明のモノクローナル抗体よる結合の低下によって示されるように、本発明のモノクローナル抗体と競合する場合、その2つのモノクローナル抗体は、同じか、または密接な関係にあるエピトープに結合する。モノクローナル抗体が本発明のモノクローナル抗体の特異性を有するか否かを決定するための代替的な方法は、本発明のモノクローナル抗体を、TLR4/MD−2複合体または可溶性TLR4タンパク質(それは、正常に反応する)と一緒にプレインキュベートし、次いで試験されるモノクローナル抗体が、その標的(例えば、TLR4/MD−2複合体、TLR4、MD−2、TLR2またはCD14)を結合するその能力において阻害されるか否かを決定するために、試験されるモノクローナル抗体を添加することである。試験されるモノクローナル抗体が阻害される場合、ほぼ確実に、その抗体は、本発明のモノクローナル抗体と同じか、または機能的に等価であるエピトープに対する特異性を有する。本発明のモノクローナル抗体をスクリーニングする方法はまた、LPS誘導性のIL−8産生を測定し、そして試験モノクローナル抗体がLPS誘導性のIL−8産生を中和できるか否かを決定することによって実施され得る。スクリーニングはまた、PAMCSK誘導性のIL−6産生を測定し、そして試験モノクローナル抗体がPAMCSK誘導性のIL−6産生を中和できるか否かを決定することによって実施され得る。
【0064】
当該分野で公知である種々の手順は、上記TLR4/MD−2複合体、MD−2に複合体形成されない場合のTLR4、MD−2、MD−2、TLR2もしくはCD14に対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の産生、あるいはその誘導体、フラグメント、アナログ、ホモログ、オルソログに対するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の産生のために使用され得る(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、Harlow E、およびLane D、1988、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0065】
抗体は、周知の技術(例えば、主に免疫血清のIgG分画を提供する、プロテインAまたはプロテインGを使用するアフィニティーカラムクロマトグラフィー)によって精製される。その後か、または代替的に、求められた免疫グロブリンの標的である特定の抗原、またはそのエピトープは、免疫親和性クロマトグラフィーによって免疫特異的抗体を精製するためにカラム上に固定化され得る。免疫グロブリンの精製は、例えば、D.Wilkinson(The Scientist、The Scientist,Inc.出版、Philadelphia PA、第14巻、第8号(2000年4月17日)、pp.25−28)によって考察される。
【0066】
本発明の抗体(例えば、hu18H10、16G7、hu15C1およびhu7E3)は、モノクローナル抗体である。TLR4/MD−2複合体によって媒介されるLPS−シグナリングを中和するモノクローナル抗体は、例えば、それらの表面上に高レベルのTLR4およびMD−2を発現する細胞トランスフェクト体と、柔軟なリンカー配列によって係合(tether)されたTLR4およびMD−2の両方を含む組換え可溶性キメラタンパク質との組み合わせによってBALB/cマウスを免疫化することによって産生される。次いで、骨髄腫/B細胞融合から生じるハイブリドーマが、このTLR4/MD−2複合体に対する反応性についてスクリーニングされる。
【0067】
モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495(1975)によって記載される方法)を使用して調製される。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物は、代表的に、免疫化因子に特異的に結合する抗体を産生するか、またはそれを産生し得るリンパ球を引き出すために、免疫化因子によって免疫化される。あるいは、上記リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。
【0068】
上記免疫化因子は、代表的に、タンパク質抗原、そのフラグメントまたはその融合タンパク質を含む。一般に、ヒト起源の細胞が望ましい場合、末梢血リンパ球が使用されるか、あるいは非ヒト哺乳動物の供給源が望ましい場合、脾臓細胞またはリンパ節細胞が使用されるかのいずれかである。次いで上記リンパ球は、適切な融合因子(例えば、ポリエチレングリコール)を使用して、ハイブリドーマ細胞由来の不死化細胞株と融合される(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、(1986)pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞(特に、げっ歯類起源、ウシ起源およびヒト起源の骨髄腫細胞)である。通常、ラット骨髄腫細胞株またはマウス骨髄腫細胞株が、利用される。上記ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合していない不死化細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を含む適切な培地において培養され得る。例えば、親細胞が、酵素であるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、上記ハイブリドーマのための培地は、代表的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含み(「HAT培地」)、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を妨害する。
【0069】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの発現を補助し、そして培地(例えば、HAT培地)に対して感受性である不死化細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、California and the American Type Culture Collection、Manassas、Virginiaから入手され得るマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫細胞株およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、モノクローナル抗体の産生に関して記載されている。(Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker,Inc.、New York、(1987)pp.51−63)を参照のこと)。
【0070】
上記ハイブリドーマ細胞が培養される培地は、次いで、上記抗原に対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。好ましくは、上記ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA))によって決定される。このような技術およびアッセイは、当該分野において公知である。上記モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard、Anal.Biochem.、107:220(1980)のScatchard分析によって決定され得る。さらに、モノクローナル抗体の治療適用において、高い程度の特異性および標的抗原に対する高い結合親和性を有する抗体を同定することが、重要である。
【0071】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、そのクローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、そして標準的な方法によって増殖され得る。(Coding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、(1986)pp.59−103を参照のこと)。この目的に適した培地としては、例えば、Dulbecco改変Eagle培地およびRPMI−1640培地が挙げられる。あるいは、上記ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物中の腹水のような、インビボで増殖され得る。
【0072】
上記サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、上記培地または腹水流体から、単離あるいは精製され得る。
【0073】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号に記載される方法)によって作製され得る。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブの使用)を用いて、容易に、同定および配列決定され得る。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。一旦単離されると、上記DNAは、発現ベクター中に配置され得、次いでその発現ベクターは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)にトランスフェクトされる。上記DNAはまた、例えば、相同性のマウス配列の代わりに、ヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison、Nature 368、812−13(1994)を参照のこと)か、または上記免疫グロブリンのコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全部もしくは一部を共有結合させることによって改変され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、キメラ二価抗体を作製するために、本発明の抗体の定常ドメインに置換され得るか、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位(antigen−combining site)の可変ドメインに置換され得る。
【0074】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体を含む。これらの抗体は、投与される免疫グロブリンに対するヒトによる免疫応答を引き起こさないでヒトに投与することに適している。抗体のヒト化形態は、原理的に、ヒト免疫グロブリンの配列から構成され、そして非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体の他の抗原結合性の下位配列)である。ヒト化は、例えば、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら、Nature、321:522−525(1986);Riechmannら、Nature、332:323−327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534−1536(1988))にしたがって(対応するヒト抗体の配列をげっ歯類のCDRまたはCDR配列で置換することによって)行なわれる。(米国特許第5,225,539号も参照のこと)。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、例えば、レシピエント抗体にも取り入れられたCDR配列またはフレームワーク配列にも見出されない残基を含む。一般に、上記ヒト化抗体は、少なくとも1個の可変ドメイン、および代表的に2個の可変ドメインを含み、ここで非ヒト免疫グロブリンおよびフレームワーク領域の全てか、または実質的に全てに対応するCDR領域の、全てかあるいは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。上記ヒト化抗体はまた、必要に応じて、少なくとも免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、代表的にヒト免疫グロブリンの一部を含む(Jonesら、1986;Riechnann.ら、1988;およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593−596(1992))。
【0075】
完全ヒト抗体は、軽鎖および重鎖の両方の完全な配列(CDRを含む)がヒト遺伝子から生じる抗体分子である。このような抗体は、本明細書中で、「ヒト抗体」、または「完全ヒト抗体」と称される。モノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983 Immunol Today 4:72を参照のこと);およびモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら、1985、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss,Inc.、pp.77−96を参照のこと)を用いて調製され得る。モノクローナル抗体が、利用され得、そしてそのモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを使用すること(Coteら、1983.Proc Natl Acad Sci USA 80:2026−2030を参照のこと)によってか、またはインビトロでエプスタイン−バーウイルスを用いてヒトB細胞を形質転換すること(Coleら、1985、MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss,Inc.、pp.77−96)によって調製され得る。
【0076】
さらに、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含むさらなる技術を使用して産生され得る(HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol、222:581(1991)を参照のこと)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が一部かまたは完全に不活化されているマウス)に導入することによって作製され得る。チャレンジ(challenge)の際に、ヒト抗体産生は、観察され、それは、あらゆる点でヒトにおいて見られるもの(遺伝子の再配列、組み立て、および抗体レパートリーを含む)に近似する。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、およびMarksら、Bio/Technology 10、779−783(1992);Lonbergら、Nature 368 856−859(1994);Morrison、Nature 368、812−13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14、845−51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14、826(1996);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13 65−93(1995)に記載される。
【0077】
ヒト抗体はさらに、抗原によるチャレンジに応じた動物の内因性抗体よりもむしろ完全ヒト抗体を産生するように改変されるトランスジェニック非ヒト動物を使用して産生され得る。(PCT公開W094/02602を参照のこと)。非ヒト宿主中の免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖をコードする内因性遺伝子は、不能にされ、そしてヒト重鎖免疫グロブリンおよびヒト軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な遺伝子座は、宿主のゲノムに挿入される。上記ヒト遺伝子は、例えば、必須のヒトのDNAセグメントを含む酵母人工染色体を使用して組み込まれる。所望の改変の全てを提供する動物は、次いで、改変の完全補体より少ないものを含む中間トランスジェニック動物を雑種にすることによって子孫として得られる。このような非ヒト動物の例は、PCT公開WO 96/33735および同WO 96/34096に開示されるようなXenomouseTMと称されるマウスである。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。上記抗体は、目的の免疫原によって免疫化された後の動物(例えば、ポリクローナル抗体の調製として)、あるいは動物に由来する不死化B細胞(例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ)から直接得られ得る。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子は、抗体を直接得るために回収および発現され得るか、または抗体のアナログ(例えば、単鎖Fv(scFv)分子のような)を得るためにさらに改変され得る。
【0078】
非ヒト宿主(内因性免疫グロブリン重鎖の発現を欠くマウスとして例示される)を産生する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示される。その宿主は、その遺伝子座の再配列を妨害するため、および再配列された免疫グロブリン重鎖遺伝子座の転写物の形成を妨害するために、胚性幹細胞中の少なくとも1つの内因性重鎖遺伝子座からJセグメント遺伝子を削除すること、選択可能なマーカーをコードする遺伝子を含むベクターを標的化すること;ならびに体細胞および生殖細胞が選択可能なマーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを胚性幹細胞から産生することによって達成される削除を含む方法によって得られ得る。
【0079】
目的の抗体(例えば、ヒト抗体)を産生するための1つの方法は、米国特許第5,916,771号において開示される。この方法は、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを1つの哺乳動物宿主細胞に導入すること(培養において)、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを別の哺乳動物宿主細胞に導入すること、およびハイブリッド細胞を形成するために2つの細胞を融合することを包含する。上記ハイブリッド細胞は、その重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0080】
この手順に対するさらなる改良において、免疫原上の臨床的に関連するエピトープを同定するための方法、および高い親和性を伴って関連するエピトープに免疫特異的に結合する抗体を選択するための相関のある方法が、PCT公開WO 99/53049において開示される。
【0081】
上記抗体は、上に記載される単鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターによって発現され得る。
【0082】
これらは、ベクター、リポソーム、むき出し(naked)のDNA、アジュバントに補助されるDNA、遺伝子銃、カテーテルなどを含み得る。ベクターは、WO 93/64701に記載されるような化学的結合体を含み、それは、標的化する部分(例えば、細胞表面レセプターに対するリガンド)、および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)、ウイルスベクター(例えば、DNAウイルスベクターまたはRNAウイルスベクター)、PCT/US 95/02140(WO 95/22618)に記載されるような融合タンパク質(これは、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含む融合タンパク質である)、プラスミド、ファージなどを有する。上記ベクターは、染色体性、非染色体性または合成のものであり得る。
【0083】
好ましいベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質および化学的結合体を含む。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルスが挙げられる。DNAウイルスベクターが、好ましい。これらのベクターとしては、ポックスベクター(例えば、オルトポックスベクターまたはアビポックスベクター)、ヘルペスウイルスベクター(単純ヘルペスI型ウイルス(HSV)ベクター(Geller,A.I.ら、J.Neurochem、64:487(1995);Lim,F.ら、DNA Cloning:Mammalian Systems、D.Glover編(Oxford Univ.Press、Oxford England)(1995);Geller,A.I.ら、Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.90:7603(1993);Geller,A.I.ら、Proc Natl.Acad.Sci USA 87:1149(1990)を参照のこと)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalleら、Science、259:988(1993);Davidsonら、Nat.Genet 3:219(1993);Yangら、J.Virol.69:2004(1995)を参照のこと)およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt,M.G.ら、Nat.Genet.8:148(1994)を参照のこと)が挙げられる。
【0084】
ポックスウイルスベクターは、細胞質に上記遺伝子を導入する。アビポックスウイルスベクターは、上記核酸の短期間のみの発現をもたらす。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、上記核酸を神経細胞に導入するのに好ましい。上記アデノウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月間)より短期間(約2ヶ月間)の発現をもたらし、次にその期間は、HSVベクターより短い。選択された特定のベクターは、標的細胞および処理される条件に依存する。上記導入は、標準的な技術(例えば、感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換)によって行われ得る。遺伝子移入の様式の例としては、例えば、むき出しのDNA、CaPO沈殿、DEAF、デキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが挙げられる。
【0085】
上記ベクターは、任意の所望の標的細胞を本質的に標的化するために使用され得る。例えば、定位注入が、ベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に指向させるために使用され得る。さらに、その粒子は、小型ポンプ注入システム(例えば、SynchroMed Infusion System)を使用する脳室内(icv)注入によって送達され得る。対流と称される大きな流れ(bulk flow)に基づく方法はまた、大きい分子を脳の拡大した領域に送達することにおいて有効であることを証明し、そして上記ベクターを上記標的細胞に送達するのに有用であり得る(Boboら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:2076−2080(1994);Morrisonら、Am.J.Physiol.266:292−305(1994)を参照のこと)。使用され得る他の方法としては、カテーテル、静脈内注射、非経口注射、腹腔内注射および皮下注射、ならびに経口経路または他の公知である投与経路が挙げられる。
【0086】
これらのベクターは、種々の方法(例えば、サンプル中のTLR4/MD−2複合体または別の標的(例えば、TLR4、MD2、TLR2および/またはCD14)の存在を検出すること)において使用され得る大量の抗体を発現するために使用され得る。上記抗体はまた、TLR4/MD2複合体、TLR2および/もしくはCD14に結合して、それらに関連するか、それらによって媒介されるか、またはモジュレートされるシグナリングを途絶させる試みのために使用され得る。
【0087】
技術は、本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に適合され得る(例えば、米国特許第4,946,778号を参照のこと)。さらに、方法は、タンパク質あるいはその誘導体、フラグメント、アナログまたはホモログに対する所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ有効な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーの構築に適合され得る(例えば、Huseら、1989 Science 246:1275−1281を参照のこと)。タンパク質抗原に対するイディオタイプを含む抗体フラグメントは、当該分野において公知である技術によって産生され得、その技術としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(i)抗体分子のペプシン消化によって産生されるF(ab’)2フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによってもたらされるFabフラグメント;(iii)パパインおよび還元剤を用いる抗体分子の処理によってもたらされるFabフラグメント、ならびに(iv)Fフラグメント。
【0088】
本発明はまた、F、Fab、Fab’およびF(ab’)2の抗TLR4/MD2複合体フラグメント、抗TLR4フラグメント、抗MD2フラグメント、抗TLR2フラグメント、抗CD14、TLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2および/もしくはCD14を認識し、そして結合する単鎖抗体、TLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2および/もしくはCD14を認識し、そして結合する二重特異性抗体、ならびにTLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2および/もしくはCD14を認識し、そして結合するヘテロ結合体化抗体を含む。
【0089】
二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有する抗体である。本発明の場合において、結合特異性の1つは、TLR4/MD2複合体、TLR4、MD−2、TLR2またはCD14に対するものである。第2の結合標的は、任意の他の抗原であり、そして好都合には、細胞表面タンパク質または細胞表面レセプターもしくは細胞表面レセプターサブユニットである。
【0090】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該分野において公知である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖の対の同時発現に基づき、その2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello、Nature、305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖のランダムな組み合わせに起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ(quadromas))は、1種のみが正しい二重特異性構造を有する10種の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生する。上記正しい分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって達成される。類似の手順が、WO 93/08829(1993年5月13日公開)、およびTrauneckerら、EMBO J.、10:3655−3659(1991)において開示される。
【0091】
所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。上記融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。少なくとも1つの融合体に存在する軽鎖の結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが、好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体をコードするDNAおよび必要とされる場合に、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主生物体に同時にトランスフェクトされる。二重特異性抗体の産生のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121:210(1986)を参照のこと。
【0092】
WO 96/27011に記載される別のアプローチにしたがって、抗体分子の対の間の界面は、組換え細胞培養から回収されるのへテロダイマーの割合を最大にするように操作され得る。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面からの1以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)によって置換される。そのより大きい側鎖と同一か、または類似するサイズの代償性の「腔(cavity)」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)によって置換することによって、第2の抗体分子の界面上に形成される。これは、他の望ましくない最終産物(例えば、ホモダイマー)を上回るヘテロダイマーの産生を増加させるための機構を提供する。
【0093】
二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメント(例えばF(ab’)二重特異性抗体)として調製され得る。抗体フラグメントから二重特異性抗体を産生するための技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学的架橋を使用して調製され得る。Brennanら、Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体が、F(ab’)フラグメントを産生するためにタンパク質分解によって切断される手順を記載する。これらのフラグメントは、ジチオール複合体形成因子である亜ヒ酸ナトリウムの存在下において還元されて、近接するジチオールが安定化され、そして分子間のジスルフィド形成が妨げられる。次いで、産生されたFab’フラグメントは、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体の1つは、メルカプトエチルアミンを用いた還元によってFab’−チオールに再度変換され、そして二重特異性抗体を形成するために等モル濃度の量の他のFab’−TNB誘導体と混合される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための因子として使用され得る。
【0094】
さらに、Fab’フラグメントは、E.coliから直接回収され得、そして二重特異性抗体を形成するように化学的にカップリングされ得る。Shalabyら、J.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の産生を記載する。各Fab’フラグメントは、E..coliから別個に分泌され、そして二重特異性抗体を形成するようにインビトロでの化学的なカップリングに供された。したがって、形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合し得、そしてヒト乳房腫瘤標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を引き起こす。
【0095】
組換え細胞培養物から二重特異性抗体フラグメントを直接作製および単離するための種々の技術もまた、記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelnyら、J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fosタンパク質およびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に結合された。上記抗体ホモダイマーは、ヒンジ領域にて還元されてモノマーを形成し、次いで再度酸化されて抗体ヘテロダイマーを形成した。この方法はまた、抗体ホモダイマーの産生に利用され得る。Hollingerら、Proc.Natl.Acad..Sci.USA 90:6444−6448(1993)によって記載される「ダイアボディー(diabody)」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替機構を提供している。上記フラグメントは、同じ鎖上の2つのドメインの間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つのフラグメントのVドメインおよびVドメインは、は別のフラグメントの相補的なVドメインおよびVドメインと対形成させられ、したがって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーもまた、報告されている。Gruberら、J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
【0096】
2より多い価を有する抗体が、企図される。例えば、三重特異性抗体が、調製され得る。Tuttら、J.Immunol.147:60(1991)。
【0097】
例示の二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得、そのエピトープの少なくとも1つは、本発明のタンパク質抗原において生じる。あるいは、免疫グロブリン分子の抗抗原性のアームは、特定の抗原を発現する細胞に対する細胞防御機構に集中するように、T細胞レセプター分子などの白血球上の誘発分子(triggering molecule)(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)、またはIgGに対するFcレセプター(FcγR)(例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16))に結合するアームと合わされ得る。二重特異性抗体はまた、特定の抗原を発現する細胞に対して細胞傷害性因子を指向させるために使用され得る。これらの抗体は、抗原結合アーム、および細胞傷害性因子または放射性核種キレート剤(EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETA)を結合するアームを有する。目的とする別の二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるタンパク質抗原を結合し、そして組織因子(TF)をさらに結合する。
【0098】
ヘテロ結合体化抗体もまた、本発明の範囲内である。ヘテロ結合体化抗体は、2つの共有結合した抗体から構成される。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して免疫系細胞を標的性にすること(米国特許第4,676,980号を参照のこと)、およびHIV感染の処置(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089を参照のこと)について提案されている。抗体が、架橋剤を含むものが挙げられる合成タンパク質化学において公知の方法を使用してインビトロで調製され得ることが、企図される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用するか、またはチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的に適した試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチリミデート(mercaptobutyrimidate)ならびに例えば、米国特許第4,676,980号において開示されるものが挙げられる。
【0099】
エフェクター機能に関して本発明の抗体を、例えば、異常なLPSシグナリングに関連する疾患および障害の処置において上記抗体の有効性を増強するために改変することが、望まれ得る。例えば、システイン残基は、Fc領域に導入され得、それによってこの領域において鎖間のジスルフィド結合の形成を可能にする。したがって、産生されるホモダイマーの抗体は、改善した内在化性能(internalization capability)を有し得るか、そして/または補体媒介性の細胞の殺傷および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を増大させ得る。(Caronら、J.Exp Med.、176:1191−1195(1992)およびShopes、J.Immunol.、148:2918−2922(1992)を参照のこと)。あるいは、二重のFc領域を有する抗体が、操作され得、そして増強した補体による溶解およびADCC性能を有し得る。(Stevensonら、Anti−Cancer Drug Design、3:219−230(1989)を参照のこと)。
【0100】
本発明はまた、細胞傷害性因子(例えば、毒素(例えば、細菌起源、真菌起源、植物起源、または動物起源の酵素的に活性な毒素、あるいはそのフラグメント))、または放射性同位体(すなわち、放射性結合体(radioconjugate))に結合体化される抗体を含む免疫結合体に関連する。
【0101】
使用され得る酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖(ジフテリア毒素の非結合性の活性フラグメント)、体外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosa由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeecin)A鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、Phytolaca americanaタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、momordica charantiaインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、sapaonaria officinalisインヒビター、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセンが挙げられる。種々の放射性核種は、放射性結合体化抗体の産生に利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられる。
【0102】
抗体と細胞傷害性因子との結合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤(例えば、N−スクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミノエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL)、活性なエステル(例えば、ジスクシニミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス−ジアゾ化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン))を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、上記抗体に対する放射性核種の結合体化のための例示の錯化剤である。(W094/11026を参照のこと)。
【0103】
当業者は、多様な可能である部分が本発明の結果的に得られる抗体にカップリングされ得ることを認識する。(例えば、「Conjugate Vaccines」、Contributions to Microbiology and Immunology、J.M.CruseおよびR.E.Lewis,Jr(編)、Carger Press、New York、(1989)(その内容全体は、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0104】
カップリングは、抗体およびその他の部分がそれらのそれぞれの活性を保持する限りは、2つの分子を結合する任意の化学反応によって達成され得る。この結合は、多くの化学的機構を含み得、例えば、共有結合、親和結合(affinity binding)、インターカレーション、配位結合および複合体形成を含み得る。しかし、好ましい結合は、共有結合である。共有結合は、存在する側鎖の直接的な縮合または外部架橋分子の組み込みのいずれかによって達成され得る。多くの二価カップリング剤または多価カップリング剤は、タンパク質分子(例えば、本発明の抗体)を他の分子にカップリングするのに有用である。例えば、代表的なカップリング剤としては、チオエステル、カルボジイミド、スクシニミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼンおよびヘキサメチレンジアミンなどの有機化合物が挙げられ得る。この一覧は、当該分野において公知である種々のクラスのカップリング剤を包括することを意図しないが、むしろより一般的なカップリング剤の例示である。(KillenおよびLindstrom、Jour.Immun.133:1335−2549(1984);Jansenら、Immunological Reviews 62:185−216(1982);ならびにVitettaら、Science 238:1098(1987)を参照のこと)。
【0105】
好ましいリンカーは、文献に記載される。(例えば、MBS(M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシニミドエステル)の使用を記載するRamakrishnan,S.ら、Cancer Res.44:201−208(1984)を参照のこと)。オリゴペプチドリンカーによって抗体をカップリングするハロゲン化アセチルハイブリダイズ誘導体の使用を記載する米国特許第5,030,719号もまた参照のこと。特に好ましいリンカーとしては、以下が挙げられる:(i)EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩;(ii)SMPT(4−スクシニミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル−ジチオ)−トルエン(Pierce Chem.Co.,Cat.,(21558G);(iii)SPDP(スクシニミジル−6 [3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.,カタログ番号21651G);(iv)スルホ−LC−SPDP(スルホスクシニミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオナミド(propianamide)]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ番号2165−G);および(v)EDCに結合体化されたスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシニミド:Pierce Chem.Co.カタログ番号24510)。
【0106】
上に記載されるリンカーは、異なる特質を有する成分を含み、したがって異なる物理学的特性を有する結合体をもたらす。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ−NHSエステルは、芳香族カルボキシレートのスルホ−NHSエステルより安定である。NHS−エステル含有リンカーは、スルホ−NHSエステルより可溶性が低い。さらに、上記リンカーSMPTは、立体障害の大きいジスルフィド結合を含み、そして上昇した安定性を有する結合体を形成し得る。ジスルフィド結合は、一般に、他の結合より安定性が低い。なぜならばそのジスルフィド結合はインビトロで切断されて、より利用性の低い結合体を生じるからである。特に、スルホ−NHSは、カルボジイミドカップリング剤の安定性を上昇させ得る。スルホ−NHSとの結合体化において使用される場合のカルボジイミドカップリング剤(例えば、EDC)は、カルボジイミドカップリング反応単独より加水分解に対して抵抗性であるエステルを形成する。
【0107】
本明細書中に開示される抗体はまた、イムノリポソームとして処方され得る。上記抗体を含むリポソームは、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:3688(1985);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA、77:4030(1980);および米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるような当該分野において公知である方法によって調製される。上昇した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。
【0108】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相エバポレーション法によって産生され得る。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを得るために規定された孔径のフィルターを通して押し出される。本発明の抗体のFab’フラグメントは、Martinら、J.Biol.Chem.、257:286−288(1982)に記載されるように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームに結合体化され得る。
【0109】
(TLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2、CD14およびその組み合わせに対する抗体の使用)
本発明に従う治療的実体の投与が、改善された輸送、送達、耐性などを提供するために処方物中に組み込まれる、適切なキャリア、賦形剤、および他の薬剤と一緒に投与されることが、認識される。多くの適切な処方物が、全ての薬剤師において公知である処方集において見出され得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版、Mack Publishing Company、Easton、PA(1975)、その中の特に第87章、Blaug,Seymour)。これらの処方物としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオンまたはアニオン)含有小胞(例えば、LipofectinTM)、DNA結合体、無水物吸着ペースト、水中油型エマルションおよび油中水型エマルション、エマルションカルボワックス(carbowax)(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。任意の前述の混合物は、本発明に従う処置および治療において適切であり得るが、処方物中の活性成分は、処方によって不活化されず、そして生理学的に適合性であり、かつ投与経路に関して許容され得る。Baldrick P.、「Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.」、Regal.Toxicol Pharmacol.32(2):210−8 (2000)、Wang W.、「Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.」、Int.J.Pharm.203(1−2):1−60(2000)、Charman WN、「Lipids、lipophilic drags,and oral drug delivery−some emerging concepts.」、J Pharm Sci.89(8):967−78(2000)、Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」、PDA J Pharm Sci Technol.52:238−311(1998)、ならびに薬剤師に公知である処方物、賦形剤、およびキャリアに関連するさらなる情報に関する本明細書中の引用を参照のこと。
【0110】
本発明のモノクローナル抗体(例えば、マウスモノクローナルまたはヒト化モノクローナル抗体)を含む本発明の治療用処方物は、免疫に関連する障害に関する症状を処置するか、または緩和するために使用される。本発明はまた、免疫に関連する障害に関する症状を処置する方法、または免疫に関連する障害に関する症状を緩和する方法を提供する。治療レジメンは、免疫に関連する障害を罹患する(または免疫に関連する障害を発症する危険性がある)被験体(例えば、ヒト患者)を、標準的な方法を使用して同定することによって実施される。
【0111】
LPS誘導性の炎症促進性サイトカイン産生を阻害し得る本発明の抗体は、例えば、急性炎症および微生物生成物(例えば、LPS)によって誘導される敗血症およびこの急性炎症から生じる増悪(例えば、慢性閉塞性肺疾患および喘息)などの障害の処置において有用な治療手段である(O’Neill、Curr.Opin.Pharmacol.3:396−403(2003)(その全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと)。このような抗体はまた、神経変性性の自己免疫疾患を処置するのに有用である(Lehnardtら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:8514−8519(2003)(その全体が本明細書によって参考として援用される))。
【0112】
さらに、本発明の抗体はまた、機械的ストレスによって引き起こされ、次にTLR4を誘発する内因性の可溶性「ストレス」因子を誘導する、例えば、変形性関節症のような疾患において治療用試薬として有用である。内因性の可溶性ストレス因子としては、例えば、Hsp60(Ohashiら、J.Irmnunol.164:558−561(2000)を参照のこと)およびフィブロネクチン(Okamuraら、J.Biol.Chem.276:10229−10233(2001)を参照のこと)および硫酸ヘパリン、ヒアルロナン、gp96、β−ディフェンシン−2またはサーファクタント蛋白A(例えば、Johnsonら、Crit.Rev.Immunol.、23(1−2):15−44(2003)(これらの各々は、その全体が本明細書によって参考として援用される))が挙げられる。本発明の抗体はまた、例えば、レスピレータ、人工呼吸器および他の呼吸補助デバイスにおかれる被験体および患者に関連する機械的ストレスなどの機械的ストレスに関連する種々の障害の処置において有用である。例えば、本発明の抗体は、人工呼吸器関連肺傷害(「VALI」)とも称される人工呼吸による肺の傷害(「VILI」)の処置に有用である。
【0113】
TLR4/MD2、TLR4、MD2、TLR2および/またはCD14の機能を阻害することが有益であり得る他の疾患の領域としては、例えば、慢性炎症(例えば、アレルギー状態に関連する慢性炎症および喘息)、自己免疫疾患(例えば、炎症性腸障害、慢性関節リウマチ、多発性硬化症)およびアテローム硬化症が挙げられる(O’Neill、Curr.Opin.Pharmacol.3:396−403(2003)(その全体が本明細書によって参考として援用される)を参照のこと)。
【0114】
これらの免疫に関連する障害に関する症状としては、例えば、炎症、発熱、全身倦怠、発熱、疼痛(しばしば炎症領域に局在する)、早い脈拍数、関節の疼痛または痛み(関節痛)、早い呼吸または他の異常な呼吸パターン、悪寒、錯乱、失見当、激越、めまい感、咳、呼吸困難、肺感染、心不全、呼吸器不全、浮腫、体重増加、粘液膿性の再発(mucopurulent relaps)、悪液質、喘鳴、頭痛、および異常な症状(例えば、異常な疼痛、下痢または便秘)が挙げられる。
【0115】
処置の効力(efficaciousness)は、特定の免疫に関連する障害を診断するか、または処置するための任意の公知の方法に関連して決定される。免疫に関連する障害の1つ以上の症状の緩和は、抗体が臨床上の利益を提供することを示す。
【0116】
所望の特異性を有する抗体のスクリーニングのための方法としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)および当該分野において公知である他の免疫学的に媒介される技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
TLR4/MD−2複合体に対する抗体、またはMD−2に複合体形成されない場合のTLR4(またはそのフラグメント)、TLR4に複合体形成されない場合のMD2(またはそのフラグメント)、TLR2(またはそのフラグメント)、もしくはCD14(またはそのフラグメント)に対する抗体の組み合わせ、あるいはTLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2およびCD14から選択される2種以上の標的を認識する多重特異性抗体は、使用するためのこれらの標的の位置決定および/または定量化に関連する分野において公知の方法において使用され得る(例えば、適切な生理学的サンプル内の上記標的のレベルの測定に使用するため、診断方法において使用するため、上記タンパク質の画像化に使用するためなど)。所与の実施形態において、TLR4/MD−2複合体、TLR4、MD2、TLR2もしくはCD14に対して特異的な抗体の組み合わせ、またはこれらの標的のうちの2種以上を認識する多重特異性抗体、あるいは上記抗体由来の抗原結合ドメインを含むその誘導体、フラグメント、アナログもしくはホモログが、薬理学的に活性な化合物(以下、本明細書中で「治療薬(therapeutics)」と称される)として利用される。
【0118】
TLR4/MD−2複合体、TLR4、MD2、TLR2もしくはCD14に対して特異的な抗体の組み合わせ、または少なくとも2種のこれらの標的を認識する多重特異性抗体は、イムノアフィニティー、クロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的な技術によって単離されたTLR4/MD−2複合体、TLR4、MD2、TLR2もしくはCD14に対して使用され得る。TLR4/MD2複合体、TLR4、MD2、TLR2および/またはCD14(またはそれらのフラグメント)に対する抗体は、臨床試験手順の一部(例えば、所与の処置レジメンの効力を決定するため)として組織のタンパク質レベルをモニタリングするために診断的に使用され得る。検出は、その抗体を検出可能な物質にカップリングする(すなわち、物理的に結合する)ことによって促され得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、および放射性材料が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリンが挙げられ;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生体発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、そして適切な放射性材料の例としては、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0119】
本発明の抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体および完全ヒト抗体を含む)は、治療剤として組み合わせて使用され得る。このような薬剤は、一般に、被験体において異常なTLR4シグナリング、TLR2シグナリングもしくはCD14シグナリングに関連する疾患または病理を処置するか、あるいは予防するために利用される。抗体調製物(好ましくは、その標的抗原に対する高い特異性および高い親和性を有するもの)は、上記被験体に投与され、そしてその抗体調製物は、一般に、その標的に対するその結合に起因する効果を有する。上記抗体または抗体の組み合わせの投与は、上記標的(例えば、TLR4/MD−2複合体、TLR2、CD14)のシグナリング機能を廃絶し得るか、阻害し得るか、または妨害し得る。上記抗体の投与は、標的(例えば、TLR4)と、その標的が天然に結合する内因性リガンド(例えば、TLR4またはMD−2アクセサリータンパク質)との結合を廃絶し得るか、阻害し得るか、または妨害し得る。例えば、上記抗体または抗体の組み合わせは、上記標的に結合し、そしてLPS誘導性の炎症促進性サイトカイン産生を中和する。
【0120】
本発明の抗体または抗体の組み合わせの治療有効量は、一般に、治療対象を達成するのに必要とされる量に関連する。上に記載されるように、これは、特定の場合において、上記標的の機能することを妨害する、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。さらに、投与されるのに必要とされる量は、その特定の抗原に対する上記抗体の結合親和性に依存し、そしてその量はまた、投与される抗体がその抗体が投与される被験体の自由体積(free volume)から枯渇する速度に依存する。本明細書中に記載される抗体、抗体の組み合わせまたは抗体フラグメントの治療的に有効な投薬のための一般的な範囲は、約0.1mg/kg体重〜約50mg/kg体重であり得るが、これに限定されない。一般的な投薬頻度は、例えば、1日2回〜週に1回の範囲であり得る。
【0121】
TLR4/MD−2複合体、TLR4、MD2、TLR2もしくはCD14またはそのフラグメントを特異的に結合する本発明の抗体は、異常なLPSシグナリングに関連する障害の処置のために、薬学的組成物の形態で投与され得る。このような組成物の調製に関する原則および検討事項、ならびに成分の選択における指針は、例えば、Remington:The Science And Practice Of Pharmacy、第19版(Alfonso R.Gennaroら、編集者)Mack Pub.Co.、Easton、Pa.:1995;Drug Absorption Enhancement:Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers、Langhorne、Pa.、1994;およびPeptide And Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences、第4巻)、1991、M.Dekker、New Yorkにおいて提供される。
【0122】
抗体フラグメントが使用される場合、上記標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最も小さい抑制性フラグメントが、好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、上記標的タンパク質配列を結合する能力を保持するペプチド分子が、設計され得る。このようなペプチドは、化学的に合成され得るか、そして/または組換えDNA技術によって産生され得る。(例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sei.USA、90:7889−7893(1993)を参照のこと)。処方物はまた、処置される特定の適応に必要であるような1種より多い活性化合物(好ましくは、互いに不利に影響しない補完的な活性を有する化合物)を含み得る。代替的か、またはそれに加えて、上記組成物は、その機能を増強する薬剤(例えば、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、化学療法剤、または増殖抑制剤)を含み得る。このような分子は、意図される目的に対して有効である量で、組み合わせにおいて安定に存在する。
【0123】
上記活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術、または界面重合によって調製されるマイクロカプセル中に捕捉され得、そのマイクロカプセルは、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおいて、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース−マイクロカプセルまたはゼラチン−マイクロカプセル、およびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)である。
【0124】
インビボ投与のために使用される処方物は、無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0125】
持続放出調製物が、調製され得る。持続放出調製物の適切な例としては、上記抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、そのマトリックスは、成形された物品の形態(例えば、フィルム、またはマイクロカプセル)である。持続放出マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性のエチレン−ビニルアセテート、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー(例えば、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア))、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日間以上にわたって分子の放出を可能にする一方で、特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。
【0126】
(薬学的組成物)
本発明の抗体または可溶性キメラポリペプチド(本明細書中で「活性化合物」とも称される)、ならびにその誘導体、フラグメント、アナログおよびホモログは、投与に適した薬学的組成物中に組み込まれ得る。このような組成物は、代表的に、上記抗体または可溶性キメラポリペプチド、および薬学的に受容可能なキャリアを含む。本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。適切なキャリアは、Remington’s Pharmaceutical Sciences(当該分野における標準的な参考の教科書)の最新版(本明細書中に参考として援用される)に記載される。このようなキャリアまたは希釈剤の好ましい例としては、水、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび非水性ビヒクル(例えば、固定油)もまた、使用され得る。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が上記活性化合物と不適合である限りを除いて、上記組成物におけるその使用が企図される。補足の活性化合物もまた、上記組成物中に組み込まれ得る。
【0127】
本発明の薬学的組成物は、その意図された投与経路に適合するように処方され得る。投与経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与)、経口投与(例えば、吸入)、経皮投与(すなわち、局所投与)、経粘膜投与、および直腸投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:無菌の希釈剤(例えば、注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成の溶液);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)および張度の調整のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調整され得る。非経口調製物は、ガラス製もしくはプラスチック製のアンプル、使い捨て可能な注射器または複数用量バイアルに入れられ得る。
【0128】
注射可能な用途に適した薬学的組成物としては、無菌の水溶液(水溶性である)または分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製のための無菌の粉末が挙げられる。静脈内投与について、適切なキャリアは、生理食塩水、静菌水(bacteriostatic water)、Cremophor ELTTM(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、上記組成物は、無菌でなければならず、そしてその組成物は、容易な注射器通過性(syringeability)が存在する限りは流体であるはずである。それは、製造および保管の条件下において安定でなければならず、そして微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保護されなければならない。上記キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動率は、例えば、コーティング剤(例えば、レシチン)の使用、必要とされる粒径の維持(分散物の場合)、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合において、組成物中に等張化剤(例えば、糖類、ポリアルコール(例えば、マンニトール)、ソルビトール、塩化ナトリウム)を含むことが、好ましい。注射可能な組成物の延長した吸収は、その組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0129】
無菌の注射可能な溶液は、必要とされる量で活性化合物を、上に列挙される成分の1つまたはその組み合わせと一緒に適切な溶媒中に取り込み、必要とされる場合、次いで濾過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散物は、基礎の分散媒および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む無菌のビヒクル中に上記活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌の粉末の場合において、調製の方法は、活性成分に任意のさらなる所望の成分を加えた粉末を、その予め濾過滅菌した溶液から生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。
【0130】
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用キャリアを含む。それらは、ゼラチンカプセル中に封入され得るか、または錠剤へと圧縮され得る。経口の治療的投与の目的のために、上記活性化合物は、賦形剤と一緒に組み込まれ得、そして錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用され得る。経口組成物はまた、含そう剤として使用するための流体キャリアを使用して調製され得、その流体キャリア中の化合物は、経口的に適用され、そしてスウィッシュ(swish)されて、吐き出されるか、または嚥下される。薬学的に適合性の結合剤および/またはアジュバント材料が、上記組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、任意の以下の成分、または同様の性質の化合物を含み得る:バインダー(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたは乳糖)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプン);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;流動促進剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);または香味剤(例えば、ペパーミント、メチルサリチレート、またはオレンジ香味料)。
【0131】
吸入による投与について、化合物は、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素などの気体)を含む加圧された容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0132】
全身投与はまた、経粘膜手段または経皮手段によるものであり得る。経粘膜投与または経皮投与に関して、透過されるべき障壁に適切な浸透剤が、上記処方物において使用される。このような浸透剤は、一般に、当該分野において公知であり、そしてその浸透剤としては、例えば、経粘膜投与については、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用によって達成され得る。経皮投与に関して、上記活性化合物は、一般に、当該分野において公知であるような、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリーム中に処方される。
【0133】
上記化合物はまた、直腸送達のために坐剤(例えば、従来の坐剤の基剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリド)を用いる)または保留浣腸の形態で調製され得る。
【0134】
1つの実施形態において、上記活性化合物は、その化合物を、身体からの迅速な排泄に対して保護するキャリアを用いて調製される(例えば、インプラントおよびマイクロカプセル化した送達システムを含む制御放出処方物)。生分解性の、生体適合性ポリマーが、使用され得る(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)。このような処方物の調製のための方法は、当業者にとって明らかである。その材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから市販され得る。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞を標的化するリポソームが挙げられる)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知である方法に従って調製され得る。
【0135】
経口組成物または非経口組成物を投与の容易さおよび投薬の均一性のために投薬単位形態で処方することは、特に有益である。本明細書中で使用されるような投薬単位形態とは、処置される被験体に対する統一された投薬として適した物理的に別個の単位をいう;必要とされる薬学的キャリアと共同して所望の治療効果をもたらすために算出された所定の量の活性化合物を含む各単位。本発明の投薬単位形態についての明細は、上記活性化合物の独特な特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を調合する分野における固有の制限によって決定付けられる。
【0136】
上記薬学的組成物は、投与のための指示書と一緒に容器、パック、またはディスペンサー中に含まれ得る。
【0137】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載され、この実施例は、特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例】
【0138】
(実施例1:材料および方法)
(試薬)
α−ヒトCD14 MAb 28C5およびα−ヒトTLR2 MAb T2.5の両方は、以前に記載されている(Weingartenら、J Leukoc Biol.53(5):518−24(1993);Puginら、Blood、104(13):4071−79(2004);Mengら、J.Clin.Invest、113(10):1473−81(2004);米国特許第6,444,206号および国際公開WO 2005/028509を参照のこと)。T2.5は、eBioscienceから販売された。α−ヒトTLR4 MAb 15C1(マウスIgG1κ)およびα−ヒトMD−2 MAb 18H10(マウスIgG2b)を、以前に記載されたプロトコルを使用した飼育において産生した(例えば、Puginら、Blood、第104巻(13):4071−79(2004)を参照のこと)。全てのIgGアイソタイプコントロールは、BD biosciences(San Jose CA)から販売された。図1および2にしめす実験において、非常に純粋(ultrapure)なLPS Re595(TLR4リガンド)は、List Biochemicalsから販売され、そしてPAM3CSK4(TLR2と相互作用する合成トリアシル化脂質)は、Invivogenから販売された。細菌株E.coli wild 1およびK12 W3110を、Dr.J.Pugin、CMU、Genevaから得た。残りの実験において、非常に純粋なLPS K12のLPSおよびPseudomonas aeruginosa 10のLPSは、Sigma Aldrichから販売された。精製されたフラゲリンおよびPAM3CSK4は、Invivogenから販売された。細菌株E.coli wild type 1、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pnsumoniaおよびStaphlococcus aureus(SAUR2)を、HCG、Genevaから入手し;そしてK12 W3110を、Pierre Genevaux、CMU、Genevaから入手した。BEAS 2B細胞およびHEK 293細胞を、ATCCから入手した。E.coliを、90℃にて30分間加熱すること、または20ug/mlの濃度におけるゲンタマイシンによる処理によって不活化した。不活化を、LB寒天培地上にプレートして、コロニーの非存在を確認することによって検証した。
【0139】
(HEK 293細胞アッセイ、HUVEC細胞アッセイ、BEAS 2B細胞アッセイ)
図1A〜1Bに示す結果に関して、hTLR4/MD−2またはhTLR2のいずれかを発現する安定なトランスフェクト細胞(本明細書中で「HEK 293 hTLR4/MD2トランスフェクト体」(図1A)および「HEK 293 hTLR2安定トランスフェクト体(図1B)と称される)を、以前に記載された方法論を使用して産生した(例えば、Puginら、Blood 2004を参照のこと)。細胞を、実験の前日に、ウェル1つあたり6×10個の細胞で、200μl DMEM 10% FCS培地にプレートした。上記MAb(15C1(抗TLR4)およびT2.5(抗TLR2))を、50μl DMEM基本培地に150μg/mlの濃度まで希釈し、上記細胞を添加し、そして37℃にて1時間インキュベートした。LPS Re595(10ng/mlの最終濃度)(図1A)またはPAM3CSK4(100ng/mlの最終濃度)(図1B)を、1% FCSを含む100μl RPMI 1640に希釈し、上記細胞を添加し、そして37℃にて21時間インキュベートしたままにした。培養上清中のIL−8分泌を、ELISA(Endogen)によってモニタリングした。
【0140】
残りの細胞ベースの実験に関して、細胞を、実験の前日に、ウェル1つあたり6×10個の細胞で、200μl培地10% FCSにプレートした。HUVEC細胞に関して、プレートを、プレートする前に2%ゼラチン(Sigma Aldrich)によって10分間コーティングした。その培地を、実験の前日に除去し、そして6%の熱失活したヒト血清を含む30μlの培地を、添加した(最終濃度2%)。次いで、適切なMAbを、適切な濃度まで30μlの基本培地に希釈し、そして37℃にて1時間にわたって上記細胞を添加した。熱失活した細菌(適切な濃度における)を、30μlの培地に希釈し、上記細胞を添加し、そして37℃にて21時間インキュベートしたままにした。培養上清中のIL−6(HUVECおよびBEAS 2B)分泌またはIL−8(HEK 293)分泌を、ELISA(Endogen)によってモニタリングした。
【0141】
(フローサイトメトリー)
HUVEC細胞およびBEAS 2B細胞の表面上のTLR2、TLR4、MD−2ならびにCD14を検出するために、1mlあたり1×10個の細胞を、1% BSA、および10μg/mlのいずれかの適切な抗体を補充した1×PBSにおいてインキュベートした。細胞を、1回洗浄し、次いでその細胞を、APC結合体化ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(1:250希釈;Molecular Probes)と一緒に同じ緩衝液においてインキュベートした。細胞を、FL−4チャネルにおいてFACScaliburを使用して分析した。循環する白血球に関して、上記適切な抗体を、10μg/mlの最終濃度までヒト全血に添加した。1×PBS、1% BSAにおける2つの洗浄工程の後、細胞を、Fc媒介性の相互作用を防ぐために100μg/mlヒトIgG(Sigma Aldrich)を含む二次抗体(1:250に希釈したAPC結合体化抗マウスIgG(H+L))と一緒にインキュベートした。赤血球を、溶解緩衝液(Becton Dickinson)を使用して溶解することによって除去し、そして残りの細胞を、2回洗浄した。細胞を、FL−4チャネルにおいてFACScaliburを使用して分析した。異なる白血球集団を、前方散乱および側方散乱に基づいて区別した。
【0142】
(全血アッセイ)
図1および2に示す実験の第1のセットにおいて、2人の健康なヒトボランティアから得た新鮮な血液(腕の静脈における静脈穿刺)を、ヘパリン(10μl/mlの血液)と混合し、そしてRPMI 1640基本培地によって1:2に希釈した。血液を、ウェル1つあたり100μlの容量でプレートし、そして37℃にて15分間静置させた。マウスMAbの15C1(抗TLR4)、T2.5(抗TLR2)および28C5(抗CD14)を、RPMI 1640基本培地(50μlの最終容量)において希釈した示される濃度に調製し、そして上記血液に添加した。それぞれの場合において、調製したMAbの総量を、コントロールIgG MAbを使用した3重のMAb処理において与えられる量に正規化した。37℃にて1時間インキュベートした後、熱失活したE.coli(10CFU/mlの最終濃度)、LPS Re595(1ng/mlの最終濃度)(図2A)またはPAM3CSK4(100ng/mlの最終濃度)(図2B)のいずれか50μlを、上記血液に添加し、そして6時間インキュベートした。次いで血漿を、ELISA(Endogen)によってIL−6含量について分析した。
【0143】
図3Aおよび3Bに示す実験の第2のセットにおいて、3人の健康なヒトボランティアから得た新鮮な血液を、ヘパリン(10μl/mlの血液)と混合し、RPMI 1640基本培地によって1:2に希釈し、そしてウェル1つあたり100μlの容量でプレートした。マウスMAbの15C1(抗TLR4)、T2.5(抗TLR2)および28C5(抗CD14)、ならびにそれらの組み合わせを、RPMI 1640基本培地(50μlの最終容量)において希釈した示される濃度に調製し、そして上記血液に添加し、そして細胞上で1時間インキュベートした。50mlの容量の熱失活したE.coli(10CFU/mlの最終濃度)を、上記血液に添加した。熱失活したE.coliを、野生型株(図3A)またはK12 W3110として公知であるE Coliの一般的な実験室株(図3B)のいずれかであった。6時間インキュベートした後、血漿IL−6レベルを、ELISAによって測定した。
【0144】
図5、7および8に示す実験の第3のセットにおいて、健康なヒトボランティアから得た新鮮な血液(腕の静脈における静脈穿刺)を、ヘパリン(10μl/mlの血液)と混合し、そしてRPMI 1640基本培地によって1:2に希釈した。血液を、ウェル1つあたり60μlの容量でプレートし、そして37℃にて15分間静置させた。適切な場合、MAbを、RPMI 1640基本培地(30μlの最終容量)において希釈した示される濃度に調製し、そして上記血液に添加した。1時間後、熱失活した細菌(適切な濃度)、LPS K12(4ng/mlの最終濃度)、PAMCSK(100ng/mlの最終濃度)またはフラゲリン(300ng/mlの最終濃度)のいずれか30μlを、上記血液に添加し、そして6時間にわたってインキュベートした。次いで、血漿を、ELISA(Endogen)によってIL−6含量について分析した。
【0145】
(実施例2.血液の白血球、HUVEC細胞およびBEAS 2B細胞上のTLR2、TLR4、MD−2ならびにCD14の発現)
異なるTLRリガンドに対するこの研究における細胞集団の反応性を予測するために、TLR2、TLR4ならびにTLRアクセサリー分子MD−2およびCD14の細胞表面での発現を、特異的なMAbを使用するFACS分析によって試験した。
【0146】
大きさおよび粒度によって区別されるヒト全血細胞集団において、TLR4、MD−2およびTLR2の有意な表面レベルが、CD14の高い表面レベルと共に観察された。顆粒球は、CD14についてポジティブであり、そして弱いが検出可能なレベルのTLR2、TLR4およびMD−2を発現した(図4、A〜B)。リンパ球は、あらゆる検出可能なレベルの試験されたタンパク質を、発現しなかった。
【0147】
HUVECは、TLR4およびMD−2の発現についてはポジティブであったが、TLR2およびCD14についてはネガティブであったのに対して、BEAS 2B細胞は、有意なレベルのCD14と共に、弱いが検出可能なレベルのTLR2、TLR4およびMD−2を発現した(図4、C〜D)。
【0148】
(実施例3.TLR2 MAb、TLR4 MAb、MD−2 MAbおよびCD14
MAbを遮断することによる、ヒト全血におけるTLRアゴニスト誘導性の炎症促進性サイトカイン産生の阻害)
図1A〜1Bにおいて、各MAbの特異性を、TLR4およびTLR2に特異的なリガンド(それぞれ、LPSおよびPAMCSK)を使用して調査した。図1Aは、α−TLR4遮断MAb(15C1)が、ヒトTLR4/MD−2トランスフェクトHEK 293細胞においてLPS依存性のIL−8産生を、効率的に阻害することを示す。抗TLR2特異的MAb(T2.5)は、コントロールMAbと同様に、IL−8産生に対する効果を有さなかった。対照的に、T2.5は、PAMCSKによって誘導されるIL−8産生を遮断したが、15C1およびコントロールMAbは、効果を有さなかった(図1B)。
【0149】
ヒト全血において、15C1および抗CD14遮断MAb 28C5が、用量依存的な様式で、LPS誘導性のIL−6産生を遮断した一方で、T2.5およびコントロールMAbは、効果を有さなかった(図2a)。T2.5および28C5の両方は、用量依存的な様相で、PAMCSK誘導性のIL−6産生を遮断した一方で、15C1およびコントロールMAbは、効果を有さなかった(図2b)。
【0150】
図5において、E.coli K12 LPS(TLR4アゴニスト)、およびPAMCSK(TLR2アゴニスト)によって刺激したヒト全血における中和TLR2 MAb、中和TLR4 MAb、中和MD−2 MAbおよび中和CD14 MAbの特異性ならびに効力を調べた。
【0151】
E.coli K12 LPSは、IL−6産生を強力に誘導した。この産生は、抗TLR4 MAbおよび抗CD14 MAbによって強力に阻害された。抗MD−2 MAbが、IL−6レベルを、より低いが有意な効果で阻害したのに対して、抗TLR2 MAbは、有意な中和能を示さなかった。これらの結果は、E.coli LPSの認識におけるTLR4、MD−2およびCD14の役割に従う。
【0152】
Pseudomonas LPSによって誘導されるIL−6産生は、抗TLR2 MAb、抗TLR4 MAb、抗MD−2 MAb、および抗CD14 MAbによって部分的(約50%)に阻害され得る。TLR2 MAbとTLR4 MAbとの組み合わせは、IL−6産生を完全に阻害し、これは、この特定の株のLPSがTLR2およびTLR4によって認識され得ることを示唆する。
【0153】
PamCSKは、細菌性リポタンパク質のアシル化されたアミノ末端を模倣し、そしてTLR2を介してシグナル伝達する合成のトリパルミトイル化(tripalmitoylated)リポペプチドである。ヒト全血において、低いが有意なレベルのIL−6が、この精製したアゴニストによる処理後に検出され得る。IL−6の誘導は、TLR2 MAbによって大きく消失した。さらに、抗CD14処理もまた、この効果を強力に阻害し、これは、TLR2によるその分子の認識におけるこのアダプタータンパク質の役割を示唆する。抗TLR4 MAbおよび抗MD−2 MAbは、IL−6レベルに対して有意な効果を有さなかった。
【0154】
フラゲリンは、広範な細菌種おいて運動性を提供する細菌の鞭毛フィラメントの主要な成分である。それは、おそらくTLR4とのヘテロダイマーとしてTLR5を介してシグナル伝達することが示されている(Mizelら、J.Immunol.、第170巻:6217−6223(2003))。ヒト全血において、フラゲリンは、IL−6の産生を強力に誘導した。抗TLR2 MAb処理は、この誘導に対して効果を有さなかった。対照的に、抗TLR4 MAb、抗MD−2 MAbおよび抗CD14 MAbは、この応答を有意に阻害し得、これは、以前に報告された(Mizelら、J.Immunol.、第170巻:6217−6223(2003))ような、フラゲリンに対する先天免疫応答におけるこれらのタンパク質の役割を示唆する。
【0155】
それとともに、これらの結果は、上記特異性を確認し、そしてこの研究において使用される抗TLR2 MAb、抗TLR4 MAb、抗MD−2 MAbおよび抗CD14遮断MAbの効力を示す。
【0156】
(実施例4.α−TLR2 MAb、α−TLR4 MAbおよびα−CD14 MAbによる、ヒト全血における熱失活したE.coliの阻害)
微生物が1種より多いTLRレセプターを並行して刺激し得るという仮説を試験するために、ヒト全血における熱失活したE.coliに対する先天免疫反応の阻害におけるα−TLR4遮断MAb、α−TLR2遮断MAbおよびα−CD14遮断MAbの効果を、調査した。MAbの異なる組み合わせ、および一抗体、二抗体または三抗体のいずれかによる処理を伴うE.coliの2種の株(WTおよびK12)を、免疫応答の活性化における優勢なTLR、およびこれらの免疫応答の阻害において1種より多いTLRレセプターを遮断する効果を決定するために使用した。
【0157】
図3aは、異なるMAbの組み合わせの、熱失活したWT E.coliによって刺激される全血におけるIL−6産生を阻害する能力を示す。3人の異なる健康なドナーからの血液は、E.coli調製物(10cfu/ml)に対して強力に応答した。この応答は、αTLR4遮断MAbの添加によって僅かに消失したが、αTLR2遮断MAbによって消失しなかった。両方のMAbの組み合わせは、E.coliに対する全血の応答を強力に阻害した。αCD14 MAb単独による処理はまた、非常に強力であった。αCD14とαTLR4との組み合わせまたはαCD14とαTLR2との組み合わせは、αCD14単独よりも効率的な遮断を示した。これは、数種のE.coli由来のTLR4リガンドおよびTLR2リガンドがCD14の独立した機構を介して作用していることを示す。CD14、TLR4およびTLR2の遮断は、IL−6産生の阻害において最も強力な処理であった。同様の結果が、E coliの一般的な実験室株(K12 W3110;図3bを参照のこと)を使用して見出された。
【0158】
(実施例5.異なる細菌株による、トランスフェクトしたHEK 293細胞、ヒト全血、HUVEC細胞およびBEAS 2B細胞における炎症促進性サイトカイン産生の誘導)
異なる細菌株の炎症促進性サイトカイン産生を刺激する能力を示すために、上記の細胞型を、漸増用量の熱失活したE.coli WT株およびK12株、Pseudomonas aeruginosa、Klebsiella pneumoniaならびにstaphylococcus aureasによって処理した。
【0159】
各細菌株の、TLR2またはTLR4/MD−2複合体のいずれかによってトランスフェクトしたHEK 293細胞を刺激する能力を、試験した。TLR2トランスフェクトHEK 293細胞において、試験した全てのグラム陰性株は、試験した最も高い用量(10cfu/ml)における最大のIL−8応答と共に、5×10cfu/ml以上で検出可能な応答を誘導した。pseudomonasは、試験した全ての株のうちで最も高い応答をもたらした。これらの結果は、以前に報告されたように、この研究において試験したグラム陰性細菌株内におけるTLR2を刺激し得るリポタンパク質などのPAMPの存在を確認する。興味深いことに、グラム陽性のS.aureusは、任意のIL−8応答を誘導し損ない、これは、TLR2単独では、この細菌株由来のPAMP(例えば、LTA)を認識するのに不十分であること、およびTLR2と組み合わせられるが、TLR2トランスフェクトHEK 293細胞上に存在しない他のTLR(すなわち、TLR1およびTLR6)が、おそらく、応答を誘導するのに必要とされることを示唆した。TLR4とMD−2とによってトランスフェクトしたHEK 293細胞もまた、E.coli株およびKlebsiellaの両方に対して強く応答した。5×10cfu/mlは、応答を誘導し得る最も低い用量であった。上記細胞は、pseudomonasに対する応答が乏しく、5×10cfu/mlおよび1×10cfu/mlにおいて、弱いが有意な応答が見られた。上記細胞は、試験した全ての濃度において、S.aureasに応答しなかった。非トランスフェクトHEK 293細胞は、全ての細菌に応答しなかった(データ示さず)。
【0160】
ヒト全血において、全てのグラム陰性細菌株に対する強い応答が、観察された(図1A)。IL−6産生の誘導が、2×10cfu/mlと同程度の低さで観察され得、それは、約5×10cfu/mlにて応答のプラトーを有した。一般に、グラム陽性細菌株S.aureasは、全血において応答を誘導するのに非効率的であった。図7Aに示した特定のドナーに関して、小さいが有意な応答が、10cfu/mlを上回る細菌の用量にて見られた(図1A)。試験した他のドナーにおいて、低レベルのIL−6応答が、10cfu/mlと同程度に低い細菌によって検出され得た。この応答は、代表的に、試験した最も高い用量(10cfu/ml)までに、僅かに増大した。HUVEC(図1B)において、IL−6産生は、E.coli細菌株およびKlebsiella細菌株に関して、10cfu/mlを上回る用量によって誘導された。その応答のプラトーは、10cfu/mlを上回る用量にて見られた。pseudomonasは、試験した最も高い用量(10cfu/ml)においてのみ見られる非常に弱い応答を伴う、IL−6産生の弱い誘導因子であった。Staphlococcusは、試験した全ての用量において、HUVECに対して有効ではなかった。BEAS 2B細胞は、10cfu/mlを上回る試験した全ての細菌株に対して応答した。各株に対する最大の応答は、10cfu/ml(試験した最も高い用量)において観察された(図6C)。
【0161】
これらの結果に基づいて、10cfu/mlおよび10cfu/mlの細菌を、ヒト全血を刺激するために選択し、それは、HUVECおよびBEAS 2Bに対する細菌用量として選択した10を伴う。
【0162】
(実施例6.抗TLR2 MAb、抗TLR4 MAb、抗MD−2 MAbおよび抗CD14 MAbによる、細菌全体に対するIL−6応答の阻害)
異なるTLRによって構成される、細菌全体に対する細胞の応答に対する寄与を理解するために、この研究に含まれる異なる細胞型を、上に概説される遮断MAbと一緒にプレインキュベートした後に熱失活した細菌に曝した。
【0163】
ヒト全血における10cfu/ml(図8A)にて、TLR4の遮断は、E.coli株およびKlebsiella株によって誘導されるIL−6産生を強力に減少させ、そしてpsendomonasによって見られるレベルを部分的に減少させた。抗TLR4 MAbは、StaphlococcusによるIL−6の誘導に対して効果を有さなかった。MD−2の遮断は、pseudomonas誘導性のIL−6産生を、より強力に阻害したことを除いて、TLR4の遮断を大きく反映した。TLR2の遮断は、E.coli誘導性のIL−6産生およびKelbsiella誘導性のIL−6産生に対して、有意な効果を有さず、そしてpseudomonasおよびstaphylococcusの両方を部分的に阻害した。TLR2の遮断とTLR4の遮断との組み合わせは、試験した全てのグラム陰性株に対する応答を強力に阻害した一方で、その組み合わせは、Staphlococcusを部分的にのみ阻害した。抗CD14処理は、TLR2/TLR4同時処理と大きく似ていた。それとともに、これらの結果は、この選択した用量の細菌において、TLR4/MD−2を介するPAMPシグナリングが、E.coliおよびKlebsiellaに対する免疫応答の誘導において非常に優勢であることを示唆する。Pseudomonasは、もっぱらTLR4/MD−2レセプター複合体およびTLR2含有レセプター複合体を介してシグナル伝達するようであるが、Staphlococcus誘導性のIL−6産生は、TLR2に部分的に依存し、そしてTLR4/MD−2とは独立している。この結果は、他のTLRまたは関連タンパク質がStaphlococcus誘導性のIL−6産生に含まれなければならないことを示唆する。抗CD14 MAbによって見られる阻害パターンは、TLR2およびTLR4の両方を介してシグナル伝達するリガンドの認識におけるこのタンパク質の役割を意味する。
【0164】
ヒト全血における10cfu/ml(図8B)にて、TLR4の遮断およびMD−2の遮断は、部分的に、E.coli、KlebsiellaおよびPseudomonasによるIL−6誘導の阻害をもたらした。TLR2の遮断は、試験した全ての細菌株に関して有効ではなかった。興味深いことに、TLR2とTLR4との組み合わせ処理は、E.coli誘導性のIL−6産生およびKlebsiella誘導性のIL−6産生の完全な阻害をもたらした。これは、より高い用量の細菌において、TLR2リガンドがTLR4シグナリングの非存在下においてIL−6産生を刺激し得ることを示唆する。10cfu/mlのpseudomonasによるIL−6の誘導は、部分的に、TLR4/MD−2の遮断またはTLR2の遮断のいずれかによって阻害され、TLR2とTLR4との同時処理後に見られる強力な阻害を伴い、その強力な阻害は、10cfu/mlにおいて観察されたものを反映する。10cfu/mlの細菌におけるCD14の遮断のパターンもまた、10cfu/mlによって見られるものを反映し、また、阻害は、一般に、僅かに低い効力であった。
【0165】
10cfu/mlにおけるE.coliまたはKlebsiellaのいずれかによって処理したHUVECにおける、TLR2シグナリングおよびTLR4シグナリングの遮断のIL−6産生に対する効果を、試験した。HUVECの表面上のTLRの発現プロフィール(TLR2−、TLR4/MD−2+)から予想された通り、E.coliおよびKlebsiellaの両方の活性が、抗TLR4遮断MAb、抗MD−2遮断MAbおよび抗CD14遮断MAbによって阻害されたのに対して、抗TLR2 MAbは、効果を有さなかった(図8C)。
【0166】
10cfu/mlにおけるBEAS−2Bの細菌刺激に対するTLRの遮断を、試験した。表面の染色は、TLR2およびTLR4の低レベルの発現を示した(図AD)、細胞は、比較的強い様式で、グラム陰性細菌株およびグラム陽性細菌株の両方の高濃度による刺激に応答する(図1C)。TLR4またはMD−2のいずれかの遮断は、IL−6産生に対する最小限の抑制効果をもたらした。対照的に、TLR2の遮断は、IL−6産生を強力に消失させ、このことは、TLR4よりもむしろTLR2がこの上皮細胞株の細菌刺激を機能的に担うことを示唆する。これは、グラム陽性株S.aureasを含む試験した全ての細菌についての場合であった。試験した全4種の細菌株の認識におけるCD14の寄与もまた、抗CD14遮断MAbを使用して実証した(図8D)。
【0167】
(実施例7.全血の細菌刺激における熱失活 対 抗生物質による失活の評価)
PAMPの完全性に対する熱失活の効果および試験した細菌株の先天免疫応答を刺激するその後の能力を、評価した。熱失活した細菌によって誘導されるIL−6産生を、抗生物質(ゲンタマイシン)処理によって失活した細菌のIL−6産生と比較した。ゲンタマイシンを、この抗生物質が細菌DNAのレベルで作用し、したがって構造的なPAMPが不活化のこの方法に関してインタクトなままであることに起因して選択した。図9に示す通り、両方の方法によって失活した細菌は、10cfu/ml(Staphlococcus aureusについては、10cfu/ml)の用量において、循環する単球を刺激してIL−6を産生する等価な性能を保持した。抗TLR2、抗TLR4、抗MD−2および抗CD14を使用したサイトカイン産生の阻害のレベルもまた、匹敵し、これは、関連するTLRリガンドが、使用した不活化の方法にかかわらずそれらの効力を保持したことを示唆する。これらの結果は、細菌の熱失活が、細菌に由来するTLRアゴニストによる先天免疫系の刺激を研究するための有効な方法であることを示唆する。
【0168】
(他の実施形態)
本発明は、その詳細な説明に関連して記載されているが、上述の説明は、例示を目的とし、かつ添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではない。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−197316(P2012−197316A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−160271(P2012−160271)
【出願日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【分割の表示】特願2007−545023(P2007−545023)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(506198562)
【Fターム(参考)】