説明

ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】ゴム成分とカーボンブラック及び/又はシリカとの相互作用に特に優れ、これら充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物及び該組成物を用いてなる、上記特性を有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー(A)5〜90質量部と他のポリマー成分(B)95〜10質量部からなるゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(C)10〜150質量部、有機酸(D)を1質量部未満配合して得られることを特徴とするゴム組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物それを用いたタイヤに関する。さらに詳しくは、本発明は、ヒステリシスロスを低減させ、転がり抵抗が良好で、耐摩耗性に優れたタイヤを与えることが可能なゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的な要請及び環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化及び省資源化につながる耐摩耗性の向上に対する要求はより過酷なものとなりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の減少が求められてきている。タイヤの転がり抵抗を下げる手法としては、タイヤ構造の最適化による手法についても検討されてきたものの、ゴム組成物としてより発熱性の低い材料を用いることが最も一般的な手法として行われている。
【0003】
このような発熱性の低いゴム組成物を得るために、これまで、シリカやカーボンブラックを充填材とするゴム組成物用の変性ゴムの技術開発が多くなされてきた。その中でも特に、有機リチウムを用いたアニオン重合で得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端を充填材と相互作用する官能基を含有するアルコキシシラン誘導体で変性する方法が有効なものとして提案されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。
【0004】
これらのアルコキシシラン誘導体は、いずれも分子内に、ケイ素原子に直接結合するアルコキシ基を有すると共に、充填材と相互作用を有する含窒素官能基を含むケイ素化合物であって、これにより重合活性末端が変性されてなる変性共役ジエン系重合体は、タイヤの転がり抵抗を減少させると共に、破壊特性や耐摩耗性を向上させる効果を奏する。しかしながら、近年、省エネルギーや環境問題などの観点から、さらなる自動車の低燃費化(タイヤの転がり抵抗の減少)や耐摩耗性の向上が望まれている。
また、スチレン−ブタジエンを乳化重合するに当り、ポリマー中に含まれる乳化剤の量を特定の範囲(1〜3.5phr)に限定することによって耐摩耗性が向上することが開示されている(例えば、特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−103925号公報
【特許文献2】WO02/002356パンフレット
【特許文献3】特開2004−74960号公報
【特許文献4】特表2003−521574号公報
【特許文献5】特表2003−521575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況下で、ゴム成分とカーボンブラック及び/又はシリカとの相互作用に特に優れ、これら充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたゴム組成物及び該組成物を用いてなる、上記特性を有する空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマーが存在するとき、前記変性ポリマーの活性を低下させない為に、配合時に添加する加硫促進助剤として用いられるステアリン酸などの酸性成分である有機酸量を特定の値以下にすることにより上記目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
[1]酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー(A)5〜90質量部と他のポリマー成分(B)95〜10質量部からなるゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(C)10〜150質量部、有機酸(D)1質量部未満を配合して得られることを特徴とするゴム組成物、
[2]前記(B)成分が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムである上記[1]のゴム組成物、
[3]前記オニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基が、含窒素官能基である上記[1]又は[2]のゴム組成物、
[4]前記含窒素官能基が、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種である上記[3]のゴム組成物、
[5]前記変性ポリマー(A)が、有機アルカリ金属を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られた共役ジエン系合成ゴムの活性末端に、重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基(F)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む化合物(H)を反応させて得られる上記[1]〜[4]いずれかのゴム組成物、
[6]前記変性ポリマー(A)が、含窒素有機アルカリ金属(I)を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られる上記[1]〜[4]いずれかのゴム組成物、
[7]前記変性ポリマー(A)が、重合性官能基(J)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む変性モノマー化合物(K)を、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と共重合させて得られる上記[1]〜[4]いずれかのゴム組成物、
[8]共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである上記[5]〜[7]いずれかのゴム組成物、
[9]芳香族ビニル化合物がスチレンである上記[5]〜[7]いずれかのゴム組成物、
[10]前記官能基(F)が、C=X(Xは炭素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれる一種)で示される官能基、又はSiRn(3n)(Rは炭素数1〜18のヒドロカルビル基であり、Rが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良く、Yはハロゲン基又は炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、Yが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良い)で示される官能基である上記[5]のゴム組成物、
[11]前記官能基(G)が、保護された第一アミノ基、保護された第二アミノ基、第三アミノ基、イミノ基、ケチミン基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種である上記[5]のゴム組成物、
[12]前記化合物(H)が、前記官能基(F)と(G)が炭素数1〜20の二価のヒドロカルビルオキシ基によって連結された1分子化合物である上記[5]のゴム組成物、
[13]前記化合物(I)が、以下の一般式(1)もしくは(2)で示される化合物である上記[6]のゴム組成物、
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R、Rは、1〜12の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキルからなる群から選ばれ、同一でも異なっていてもよく、Rは、3〜12のメチレン基を有するアルキレン、オキシ−又はアミノ−アルキレン基からなる群から選ばれる一種である。)
[14]前記重合性官能基(J)が共役ジエン基又は芳香族ビニル基である上記[7]のゴム組成物、
[15]前記(D)成分の有機酸が、脂肪酸類、樹脂酸類、石炭酸類、ロジン酸類中から選ばれる少なくとも一種を含む上記[1]〜[14]いずれかのゴム組成物、
[16](C)成分の無機充填材が、カーボンブラック、シリカ及び一般式(3)
nM・xSiOy・zH2O・・・・・・・・(3)
[式中,Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種であり、n、x、y、及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも1種である上記[1]〜[15]のゴム組成物、
[17](C)充填材が、シリカ及び/又はカーボンブラックを含む上記[16]のゴム組成物、
[18]前記(D)成分以外の、硫黄、加硫促進剤、軟化剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、粘着付与剤、発泡剤、発泡助剤、樹脂の中から選ばれる配合剤を配合して得られる上記[1]〜[17]いずれかのゴム組成物、
[19]前記[1]〜[18]いずれかのゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ、及び
[20] タイヤ部材が、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーのいずれかである上記[19]の空気入りタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマーの存在下、配合時に添加するステアリン酸などの有機酸の酸性成分の合計量をゴム成分100質量部に対して、1質量部未満にすることによって、ゴム組成物、それを用いた空気入りタイヤの低発熱性、耐摩耗性を改良することができる。
すなわち、上記酸性成分を抑制することにより酸性成分によりオニウムカチオン化される変性基が少なくなるために、存在する変性基の活性が損なわれることなく充填材との相互作用に供されることで、低発熱性耐摩耗性を改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明のゴム組成物について説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー(A)5〜90質量部と他のポリマー成分(B)95〜10質量部からなるゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(C)10〜150質量部、有機酸(D)を1質量部未満配合して得られることを特徴とする。
【0013】
<(A)酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー>
上記オニウムカチオンとは、ヘテロ原子である酸素、硫黄、窒素などのような孤立電子対を持つ元素を含む化合物において、これらの孤立電子にプロトンあるいは他の陽イオン形の試薬などが配位結合して生じる化合物をいう。中でもオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基としては、含窒素官能基であることが特に好ましい。例えば、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基アミドラゾン基、ウレア基等が挙げられる。
【0014】
[共役ジエン系(共)重合体の合成]
本発明の組成物において、酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー(A)は有機アルカリ金属を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物(モノマー)単独、又は芳香族ビニル化合物(モノマー)とを有機溶媒中でアニオン重合させて得られた共役ジエン系(共)重合体の活性末端に、変性剤として重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基(F)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む化合物(H)を反応させて得られる。
【0015】
上記共役ジエン系(共)重合体の分子中に存在する活性部位の金属はアルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種であることが望ましく、アルカリ金属が好ましく、特にリチウム金属が好ましい。
【0016】
また、前記変性ポリマー(A)は、含窒素有機アルカリ金属(I)を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得ることができる。
【0017】
<モノマー例>
上記共役ジエン基としては、例えば1,3−ブタジエン基、イソプレン基、1,3−ペンタジエン基、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン基、2−フェニル−1,3−ブタジエン基、1,3−ヘキサジエン基などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエン基、イソプレン基及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン基が特に好ましい。
また、これらの共役ジエン基との共重合に用いられる芳香族ビニル基としては、例えばスチレン基、α−メチルスチレン基、1−ビニルナフタレン基、3−ビニルトルエン基、エチルビニルベンゼン基、ジビニルベンゼン基、4−シクロへキシルスチレン基、2,4,6−トリメチルスチレン基などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレン基が特に好ましい。
【0018】
さらに、単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、それぞれ1,3−ブタジエン及びスチレンの使用が、単量体の入手の容易さなどの実用性面、及びアニオン重合特性がリビング性などの点で優れることなどから、特に好適である。
【0019】
<重合性官能基(J)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む変性モノマー化合物(K)を含む変性ポリマー>
また、変性ポリマー(A)は、重合性官能基(J)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む変性モノマー化合物(K)を、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と共重合させて得ることができる。
重合法に関しては、変性モノマー化合物(K)と共役ジエン及び/又は芳香族ビニル化合物が共重合される限り、限定されず、アニオン重合、乳化重合等で目的の重合体を製造することができる。
この変性モノマー(K)に用いられる官能基(G)は、保護された第一アミノ基、保護された第二アミノ基、第三アミノ基、イミノ基、ケチミン基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基などが挙げられる。
代表的な変性モノマー化合物(K)としては、保護された4−ビニルアニリン(第一アミン)、保護されたアニリノスチレン(第二級アミン)等が挙げられる。
また、ピリジル基を有するビニルモノマーとしては、たとえば2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル2−ビニルピリジン等が挙げられる。特に、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が好ましい。
【0020】
<重合開始剤>
重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及び前述の含窒素有機アルカリ金属(I)であるリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0021】
上記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物などが挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0022】
<含窒素有機アルカリ金属(I)>
一方、窒素原子を含むリチウムアミド化合物としては、以下の一般式(1)、
【0023】
【化3】

【0024】
[式中、R1、R2は、1〜12炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアラルキルからなる群から選ばれ、同一でも異なっても良い。Liはリチウムを示す。]または、一般式(2)
【0025】
【化4】

【0026】
[式中、R3は、3〜12のメチレン基を有するアルキレン、オキシ-又はアミノ−アルキレン基からなる群から選ばれる。Liはリチウムを示す。]
上記一般式(1)又は(2)で表される窒素原子を含むリチウムアミド化合物としては例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
【0027】
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0028】
前記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0029】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
<ランダマイザー>
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加など、あるいは共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエンースチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイサーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタンなどのエーテル類及び三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−tert−アミレート、カリウム−tert−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−tert−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。
【0031】
これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
【0032】
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0033】
この重合においては、重合開始剤、溶媒、単量体など、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物などの反応阻害物質を除去したものを用いることが望ましい。
得られる共役ジエン系重合体の示差熱分析法により求めたガラス転移温度(Tg)は−95℃〜−15℃であることが好ましい。ガラス転移温度を上記範囲にすることによって、粘度が高くなるのを抑え、取り扱いが容易な共役ジエン系重合体を得ることができる。
【0034】
[変性剤]
<重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基(F)>
前記官能基(F)は、C=X[式中Xは炭素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれる一種。]で示される官能基、又はSiRn(3n)[Rは炭素数2〜18のヒドロカルビル基であり、Rが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良く、Yはハロゲン基又は炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、Yが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良い。]で示される官能基である。
C=X型の変性剤の例としては、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリン−2−チオン、1−メチルピロリドン、1−メチルピロリドン−2−チオン、1−メチルシリルピロリドン、メチレンビス(1,4−フェニレン)ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記化合物のメチル、エチル等を他のアルキル基に替えた化合物も使用することが出来る。
【0035】
また、SiRn(an)で示される官能基において、Rは、炭素数1〜18のヒドロカルビル基であり、Yはハロゲン基又は炭素数1〜18のヒドロカルビルオキシ基であり、ハロゲン、炭素数1〜18のアルコキシ基、若しくはアルケニロキシ基、炭素数6〜18のアリーロキシ基、炭素数7〜18のアラルキロキシ基等が挙げられるが、これらの中で、良好な反応性を有する観点から、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましい。このアルコキシ基を構成するアルキル基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよい。このようなアルコキシ基としては、例えばエトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基、各種ヘプトキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、シクロペチロキシ基、シクロヘキシロキシ基などを挙げることができ、これらの中で、反応性の観点から、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0036】
前記Rで表される炭素数1〜18のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基などが挙げられるが、これらの中で、変性剤の反応性や性能の観点から、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましい。このアルキル基は、直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。これらの中で、変性剤の反応性や性能の観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0037】
<オニウムカチオンを生成し得る官能基(G)>
オニウムカチオンを生成し得る官能基(G)としては上述のように、含窒素官能基であることが好ましい。含窒素官能基(G)としては、保護された一級アミノ基、保護された二級アミノ基、三級アミノ基、イミノ基、ケチミノ基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレアなどが挙げられる。
【0038】
前記官能基(G)のうちの飽和環状三級アミン化合物残基としては、例えばヘキサメチレンイミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ヘプタメチレンイミノ基、ドデカメチレンイミノ基などを挙げることができ、不飽和環状三級アミン化合物残基としては、例えばイミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基、オキサゾール残基、ピリジル基などを挙げることができる。
前記官能基(G)としては、性能の観点から、アルジミン基、ケチミン残基、飽和環状三級アミン化合物残基、イミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、及び脱離可能な官能基を有するアミノ基の中から選ばれる少なくとも1種の含窒素官能基を有する一価の基であることが好ましく、飽和環状三級アミン化合物残基、ケチミン残基、イミダゾール残基、ジヒドロイミダゾール残基、及び脱離可能な官能基を有する一級アミノ基、二級アミノ基の中から選ばれる少なくとも1種を有する一価の基であることが、より好ましい。
前記官能基(G)で表される一価の基における官能基の中で、脱保護可能な保護された一級アミノ基の例として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基、2,2,5,5テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン基、また、二級アミノ基の例としては、N−(トリメチルシリル)アミノ基などを挙げることができる。
【0039】
本発明で用いられる変性剤は、アニオン重合させて得られた共役ジエン系合成ゴムの活性末端に、重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基(F)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む化合物(H)を反応させる。前記官能基(F)と(G)は炭素数1〜20の二価ヒドロカルビル基によって連結された1分子化合物(H)であってもよく、(F)=(G)であっても良い。また、ポリマーと結合して(F)→(G)になる場合も含む。
炭素数1〜20の二価のヒドロカルビル基としては、変性剤の性能の観点から、炭素数1〜20のアルカンジイル基が好ましく、炭素数2〜10のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数2〜6のアルカンジイル基がさらに好ましい。
【0040】
<官能基(F)と(G)を二価のヒドロカルビル基によって連結された化合物(H)>
上記化合物(H)は、例えば,保護基を有する官能基(G)の保護基が−SiRabcで表されるトリアルキルシリル基(ここで、Ra、Rb及びRcはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、プロピル基またはブチル基が好ましい。)を2つ有する、保護された一級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。この保護された一級アミノ基を有する場合、具体例として、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
また、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)メトキシクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)エトキシクロロシランなどの二官能アルコキシクロロシラン化合物;N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)ジクロロシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチル(メチル)ジクロロシランなどの二官能クロロシラン化合物等を挙げることができる。
【0041】
また、上記化合物(H)は、例えば,保護基を有する官能基(G)の保護基が−SiRabcで表されるトリアルキルシリル基を1つ有する、保護された二級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が挙げられる。この保護された二級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物の具体例としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられ、中でもN−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシランが好ましい。
また、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)メトキシクロロシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)エトキシクロロシラン等のクロロシラン化合物が挙げられる。
【0042】
さらに、上記化合物(H)は、例えば、官能基(G)がケチミン残基を有する場合、具体例として、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−[1−メチルプロピリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン及びこれらのジエトキシ(メチル)シリル化合物に対応するジエトキシ(エチル)シリル化合物,ジプロポキシ(メチル)シリル化合物,ジプロポキシ(エチル)シリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−[ジエトキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−1−プロパンアミンが好適である。
また、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−[1−メチルプロピリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−1−プロパンアミン及びこれらのエトキシ(メチル)クロロシリル化合物に対応するエトキシ(エチル)クロロシリル化合物,プロポキシ(メチル)クロロシリル化合物,プロポキシ(エチル)クロロシリル化合物等を挙げることができる。
【0043】
また、上記化合物(H)は、例えば官能基(G)がイミダゾール残基又はジヒドロイミダゾール残基を有する場合、具体例として、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを挙げることができるが、これらの中で1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール及び1−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールが好適である。
また、1−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−イミダゾール、1−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾールなどを挙げることができる。
【0044】
また、上記化合物(H)は、例えば官能基(G)がピリジル基、又はニトリル基を有する場合、具体例として、2−[2−[ジエトキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、2−[2−[ジプロポキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、2−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[2−[ジエトキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、4−[2−[ジプロポキシ(メチル)シリル]エチル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−ピリジンなどのピリジン化合物、1−シアノ−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジエトキシ(エチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−シアノ−3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]−プロパンなどのシアノ化合物を挙げることができる。これらの中で、2−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−ピリジン、1−シアノ−3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン及び1−シアノ−3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパンが好適である。
また、2−[2−[エトキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、2−[2−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、2−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、2−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[2−[エトキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、4−[2−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]エチル]−ピリジン、4−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジン、4−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−ピリジンなどのピリジン化合物、1−シアノ−3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−シアノ−3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]−プロパンなどのシアノ化合物を挙げることができる。
【0045】
また、上記化合物(H)は、例えば官能基(G)が(チオ)イソシアナート基又はオキサゾール残基を有する場合、具体例として、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(エチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]−プロパンなどのイソシアナート化合物、上記イソシアナート化合物におけるイソシアナートをチオイソシアナートに置き換えたチオイソシアナート化合物、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジエトキシ(エチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[ジプロポキシ(エチル)シリル]プロピル]−オキサゾールなどのオキサゾール化合物などを挙げることができる。これらの中で、1−イソシアナート3−[ジエトキシ(メチル)シリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]−プロパン、4−[3−[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾール及び4−[3−[ジプロポキシ(メチル)シリル]プロピル]−オキサゾールが好適である。
なお、本発明においては、オキサゾール残基はイソオキサゾール残基をも包含する。
また、1−イソシアナート3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]−プロパン、1−イソシアナート3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]−プロパンなどのイソシアナート化合物、上記イソシアナート化合物におけるイソシアナートをチオイソシアナートに置き換えたチオイソシアナート化合物、4−[3−[エトキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[エトキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[プロポキシ(メチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾール、4−[3−[プロポキシ(エチル)クロロシリル]プロピル]−オキサゾールなどのオキサゾール化合物などを挙げることができる。
【0046】
また、本発明に用いられる変性共役ジエン系ポリマーの変性剤由来のアミノ基は、保護されていても、脱保護して一級アミン又は二級アミンに変換されていても、いずれの場合でも好適である。もし脱保護処理を行なう場合には以下の手順が用いられる。
すなわち、該保護アミノ基上のシリル保護基を加水分解することによって遊離したアミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、一級アミノ基または二級アミノ基を有する乾燥したポリマーが得られる。
この加水分解反応に用いる水の量は、開始剤のLiなどのモル量より過剰なモル量、例えば2〜4倍のモル量であることが好ましい。加水分解時間は、通常10分〜数時間程度である。
【0047】
<変性共役ジエン系(共)ポリマー(A)>
このようにして得られた変性共役ジエン系(共)ポリマー(A)はムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
また、前記変性共役ジエン系(共)ポリマーを配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニ−粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系(共)ポリマーは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1〜8であることが好ましく、1.1〜5であることがより好ましい。
又、末端カップリング等により分子量分布をコントロール可能な場合、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3.5、更に好ましくは1.5〜3.0である。
変性共役ジエン系(共)ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内にすることで該変性共役ジエン系(共)ポリマーをゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0048】
また、本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系(共)ポリマーは、数平均分子量(Mn)が100,000〜800,000であることが好ましく、より好ましくは、120,000〜500,000、更に好ましくは、150、000〜300,000である。変性共役ジエン系(共)ポリマーの数平均分子量を前記範囲内にすることによって加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該変性共役ジエン系合成ゴムを含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系ポリマーは1種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
<その他のゴム成分(B)>
本発明においては、ゴム成分として、前述の(A)成分の変性共役ジエン系合成ゴム5〜90質量と、その他のゴム成分として(B)成分の天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴム95〜10質量%とから構成される。
上記(A)成分の変性共役ジエン系合成ゴムと併用されるゴム成分としては、天然ゴム及び他のジエン系合成ゴムが挙げられ、他のジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。
中でも、天然ゴム、スチレンブタジエン共重合体(SBR)ポリブタジエン(BR)及びポリイソプレン(IR)が好ましい。
【0050】
<無機充填材(C)>
本発明に係るゴム組成物においては、(C)成分として充填材を、前述の(A)成分及び(B)成分からなるゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部含むことが必要である。よりこのましくは、20〜120質量部、更に好ましくは30〜100質量部である。無機充填材の量を上記範囲にすることによって、優れた低発熱性、及び耐摩耗性の効果を発揮することができる。
また、本発明に係るゴム組成物においては、無機充填材としてシリカ及び/又はカーボンブラックを含有することが好ましい。また、ゴム成分である(A)成分の変性共役ジエン系ポリマーの変性剤として用いられる化合物が一分子中に窒素原子とケイ素原子を同時に含んでいるために窒素原子を導入した場合はカーボンブラック配合ゴム組成物において、ケイ素原子を導入した場合はシリカなどの補強性無機充填材を配合したゴム組成物において発熱を抑制することができるので好ましい。
【0051】
当該充填材が、カーボンブラック、シリカ及び一般式(3)
nM・xSiOy・zH2O・・・・・・・・(3)
[式中,Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種であり、n、x、y、及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも1種である。
ここで、カーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記の加硫ゴム物性を満たすためには、例えば、SAF、HAF、ISAF、FEF、GPFなど種々のグレードのカーボンブラックを単独に又は混合して使用することができる。
シリカは特に限定されないが、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカが好ましい。中でも破壊特性の改良効果並びにウエットグリップ性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。これらは単独に又は混合して使用することができる。
【0052】
前記一般式(3)で表わされる無機充填材は、具体的には、γ−アルミナ、α−アルミナ等のアルミナ(Al23)、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al23・H2O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3]、炭酸アルミニウム[Al2(CO32]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al23)、クレー(Al23・2SiO2)、カオリン(Al23・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al23・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al23・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニ
ウム(Al2SiO5 、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2・SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al23・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO32]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などが使用できる。
また、一般式(3)で表される無機充填材としては、Mがアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、それらの水和物、及びアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも1種のものが好ましい。
中でも充填材としてはカーボンブラック、シリカが好ましい。
【0053】
<シランカップリング剤>
本発明のゴム組成物においては、補強用充填材としてシリカを用いる場合、その補強性及び低発熱性をさらに向上させる目的で、シランカップリッグ剤を配合することができる。
このシランカップリング剤としては、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−卜リエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられるが、これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド及び3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分として、分子活性部位にシリカとの親和性の高い官能基が導入された変性重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合より低減することができる。好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類などにより異なるが、シリカに対して、このましくは1〜20質量%の範囲で選定される。この量が1質量%未満ではカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、20質量%を超えるとゴム成分のゲル化を引き起こすおそれがある。カップリング剤としての効果およびゲル化防止などの点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、5〜15質量%の範囲である。
【0055】
<有機酸(D)>
本発明に係るゴム組成物においては、ゴム成分100質量部に対して、(D)有機酸を1質量部未満配合することが必要である。下限値については特に制限はないが0.1質量部程度である。
前述のように有機酸のほとんどはカルボン酸であり、カルボキシル基(−COOH)を持っているものであれば特に制限はない。加硫促進助剤として使用される脂肪酸(主にステアリン酸)等が挙げられる。
加硫促進助剤は、硫黄加硫系に金属酸化物(主に亜鉛華)及び脂肪酸(主にステアリン酸)の組み合わせで使用され、加硫促進剤を活性にし、加硫(架橋)効率を向上するために使用する。
【0056】
(ゴム組成物の調製、用途)
本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば硫黄、加硫促進剤、軟化剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、粘着防止剤、発泡剤、発泡助剤及び樹脂などを含有させることができる。
また、本発明のゴム組成物は、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後に加硫を行ない、各種ゴム製品に適用可能である。例えば、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォールサイド補強ゴム及びビードフィラーなどのタイヤ用途に用いることができるが、特に、低発熱性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに優れた、低燃費用タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤのトレッド用ゴムとして好適に使用される。
【0057】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、前述した本発明の硫黄架橋性ゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とする。タイヤ部材としては、トレッド、ベーストレット、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーを好ましく挙げることができ、これらのいずれかに、本発明の硫黄架橋性ゴム組成物を用いることができるが、特にトレッドに用いることが好ましい。
本発明の硫黄架橋性ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、転がり抵抗が低く低燃費性に優れると共に、破壊特性及び耐摩耗性が優れる。なお、本発明のタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスが挙げられる。
本発明のゴム組成物をトレッドに用いる場合は、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、変性スチレン−ブタジエンゴム(変性SBR)のミクロ構造(結合ビニル含量、結合スチレン含量)及び加硫後のゴム組成物の損失正接(tanδ)と耐摩耗性を下記の方法により評価した。
(1)変性SBRの共役ジエン部分の結合ビニル含量(ジエン部分全体に対する%)
270MHz1H−NMRによって求めた。測定結果を第1表に示す。
(2)変性SBRの結合スチレン含量(ポリマー中の質量%)
270MHz1H−NMRによって求めた。測定結果を第1表に示す。
(3)損失正接(tanδ)
米国レオメトリックス社製の動的スペクトロメーターを使用し、引張動歪1%、周波数10Hz、50℃の条件で測定し、コントロールのtanδの逆数を100として指数表示した。
尚、各配合種の各S−SBRで、コントロールはステアリン酸の配合添加量が1.5質量部の結果を100とし、ステアリン酸配合量を変化させた時の結果を指数表示した。指数の値が大きいほど、低発熱性に優れることを示す。測定結果を第2表−1及び−2に示す。
(4)耐摩耗性
ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率が25%の摩耗量を測定し、コントロールの摩耗量の逆数を100として指数表示した。尚、各配合種の各S−SBRで、コントロールはステアリン酸の配合添加量が1.5質量部の結果を100とし、ステアリン酸配合量を変化させた時の結果を指数表示した。指数の値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。測定結果を第2表−1及び−2に示す。
【0059】
製造比較例1
SBR Lの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.29mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行なった。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
その後、重合反応系に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、常法に従い乾燥しSBR Lを得た。得られたSBR Lの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0060】
製造実施例1
SBR Mの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン0.36mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(BuLi)0.72mmolを加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行なった。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
次に、重合反応系に、N、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン0.65ミリモルを加え、さらに50℃で30分間変性反応をおこなった。その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、常法に従い乾燥しSBR Mを得た。得られたSBR Mの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0061】
製造実施例2〜9
SBR N〜Uの製造
上記SBR Mの製造におけるN、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシランに替えて、第1表に示す変性剤を用いることで、SBR
N〜Uを得た。SBR N〜Uの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0062】
製造比較例2
SBR Vの製造
上記SBR Mの製造におけるN、N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシランに替えて、(3−グリシドオキシプロピル)トリエチルシランを用いることでSBR Vを得た。SBR Vの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0063】
製造実施例10
SBR Wの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように注入し、ヘキサメチレンイミン0.72ミリモル、n−ブチルリチウム0.72モル、及び2,2−テトラヒドロフリルプロパン0.36ミリモルを順次加えた後、50℃で2.5時間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。
その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させ、微量の塩酸及びイソプロパノール中で沈殿させた後、常法にて乾燥しSBR Wを得た。SBR Wの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0064】
製造実施例11
SBR Xの製造
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液、及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエン60g及びスチレン15gとなるように加え、2,2−テトラヒドロフリルプロパン0.360ミリモル及びN,N−ビス(トリメチルシリル)−4−ビニルアニリン3.6ミリモルを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率はほぼ100%であった。その後、重合反応系に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのイソプロパノール5質量%溶液0.5mlを加えて重合反応を停止させた後、微量のポリマーセメントをガスクロマトグラフィーにより分析し、ビニルアニリン由来の未反応のモノマー化合物が含まれていないことを確認した。この残りのポリマーセメントを常法に従い乾燥することでSBR Xを得た。SBR Xの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0065】
製造実施例12
SBR Yの製造
SBR Xの製造におけるN,N−ビス(トリメチルシリル)−4−ビニルアニリンに替えて、4−ビニルピリジン3.60ミリモルを用いることで、SBR Yを得た。SBR Yの結合スチレン含量及びブタジエン部分の結合ビニル含量を第1表に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜25及び比較例1〜33
表1に記載する製造実施例1〜12及び製造比較例1〜2の未変性及び変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)を用い、第4表〜第7表に記載の配合組成に基づいてゴム組成物を調製し、常法により加硫を行い、tanδ及び耐摩耗性を評価した。
評価結果を第2表−1及び2に示す。尚、第2表−1及び2にはステアリン酸の配合量、各配合組成のNo.と前記未変性及び各変性S−SBR種との組み合わせを示す。尚、各S−SBRの変性剤種については第1表に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
[注]
*1.変性及び未変性S―SBR:製造実施例1〜12及び製造比較例1で得られた未変性S−SBR、製造比較例2で得られた未変性S−SBRを用いた。
*2.BR:高シスBR[BR01]、JSR社製
*3.オイル:アロマティックオイル、富士興産社製「アロマックス#3」
*4.カーボンブラック:HAF(N330)、旭カーボン社製「旭#70」
*5.シリカ:東ソー・シリカ製、商標「ニプシルAQ」
*6.シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、デグサ社製、商標「Si69」
*7.老化防止剤 6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
*8.加硫促進剤 DPG:ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
*9.加硫促進剤 DM:ジベンゾチアジルジサルファイド、大内新興化学工業社製「ノクセラーDM」
*10.加硫促進剤 CZ:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
本発明の実施例は、比較例に比べ低発熱性及び耐摩耗性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分とカーボンブラック及び/又はシリカとの相互作用に特に優れ、これら充填材の分散性をより改善することができ、低発熱性、耐摩耗性に優れたタイヤを与えることができる。
本発明のタイヤは、上記性状を有することから、乗用車用ラジアルタイヤ、軽乗用車用ラジアルタイヤ、軽トラック用ラジアルタイヤ、トラック・バス用ラジアルタイヤ、建設車両用タイヤ等の各種空気入りタイヤに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸によりオニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基を含む変性ポリマー(A)5〜90質量部と他のポリマー成分(B)95〜10質量部からなるゴム成分100質量部に対して、補強性充填材(C)10〜150質量部、有機酸(D)1質量部未満を配合して得られることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、天然ゴム及び/又はジエン系合成ゴムである請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記オニウムカチオンを生成し得るヘテロ官能基が、含窒素官能基である請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記含窒素官能基が、アミノ基、イミノ基、ピリジル基、ニトリル基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記変性ポリマー(A)が、有機アルカリ金属を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られた共役ジエン系合成ゴムの活性末端に、重合ポリマー中間体の活性アニオン部位と結合を生成する官能基(F)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む化合物(H)を反応させて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記変性ポリマー(A)が、含窒素有機アルカリ金属(I)を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られる請求項1〜4いずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記変性ポリマー(A)が、重合性官能基(J)とオニウムカチオンを生成し得る官能基(G)を1分子中に含む変性モノマー化合物(K)を、共役ジエン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物と共重合させて得られる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
共役ジエン化合物が1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンである請求項5〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項5〜7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記官能基(F)が、C=X(Xは炭素原子、窒素原子、硫黄原子の中から選ばれる一種)で示される官能基、又はSiRn(3n)(Rは炭素数1〜18のヒドロカルビル基であり、Rが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良く、Yはハロゲン基又は炭素数2〜8のヒドロカルビルオキシ基であり、Yが複数存在する場合は互いに同一でも異なっていても良い)で示される官能基である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項11】
前記官能基(G)が、保護された保護された第一アミノ基、保護された第二アミノ基、第三アミノ基、イミノ基、ケチミン基、アルジミノ基、ピリジル基、ニトリル基、イソシアネート基、ヒドラジン基、アミジン基、アミドラゾン基、ウレア基、チオウレア基の中から選ばれる少なくとも一種である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記化合物(H)が、前記官能基(F)と(G)が炭素数1〜20の二価のヒドロカルビルオキシ基によって連結された1分子化合物である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記化合物(I)が、以下の一般式(1)もしくは(2)で示される化合物である請求項6に記載のゴム組成物。
【化1】

【化2】

(式中,R1は、1〜12の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキルからなる群から選ばれ、同一でも異なっていてもよく、R2は、3〜12のメチレン基
を有するアルキレン、オキシ−又はアミノ−アルキレン基からなる群からえらばれる一種である。)
【請求項14】
前記重合成官能基(J)が共役ジエン基又は芳香族ビニル基である請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項15】
前記(D)成分の有機酸が、脂肪酸類、樹脂酸類、石炭酸類、ロジン酸類中から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1〜14のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項16】
(C)成分の無機充填材が、カーボンブラック、シリカ及び下記一般式(3);
nM・xSiOy・zH2O・・・・・・・・(3)
[式中,Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる金属、これらの金属の酸化物または水酸化物、それらの水和物、及び前記金属の炭酸塩の中から選ばれる少なくとも1種であり、n、x、y、及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である。]
で表される無機充填材の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜15のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項17】
(C)充填材が、シリカ及び/又はカーボンブラックを含む請求項16に記載のゴム組成物。
【請求項18】
前記(D)成分以外の、硫黄、加硫促進剤、軟化剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、粘着付与剤、発泡剤、発泡助剤、樹脂の中から選ばれる配合剤を配合して得られる請求項1〜17のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載のゴム組成物をタイヤ部材に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項20】
タイヤ部材が、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラーのいずれかである請求項19に記載の空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−172119(P2012−172119A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37713(P2011−37713)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】