説明

サンプル回収システム及び方法

水を除去して溶液中の分析物を濃縮するための器具または方法において、濃縮された分析物のサンプルは、ガスクロマトグラフィオートサンプラで使用されることが可能なオートサンプラバイアルのようなバイアルに直接移送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年5月1日に出願された米国仮特許出願番号60/746105号の優先権を主張し、その教示が参照としてここに組み込まれる。
【0002】
本発明の開示は、一般に分析のためのサンプルの回収及び取扱いに関し、より詳細には蒸発濃縮器システムからサンプルの回収に向けられる。
【背景技術】
【0003】
サンプルが微量の有機化合物を分析するために必要なとき、サンプルは、一般的に有機溶媒から抽出される。選択的な化学反応に起因して、有機溶媒は、サンプルから有機化合物を抽出する。抽出された化合物は、分析物(analytes)と称され、一般的に残留水が溶媒から取り除かれて溶媒が大量に蒸発するまで分析されない。溶媒中の残留水は、残留水が化合物の分析に不利な影響をもたらすため、除去されるべきである。溶媒は、大量に蒸発されるべきであり、分析物が分析のために使用される分析装置内で濃縮した状態で存在することを確実にする。抽出、残留水の除去及び蒸発それぞれの工程は、時間がかかりかつ操作者に依存しており、そのため一般的に分析物の一致性のない回収をもたらす。また、封止されていない市販の蒸発ユニットにおける連続的な蒸発に起因する分析物の損失は、一致性のない分析物の回収を構成しうる。さらに、サンプルを蒸発ユニットから分析装置に移送する必要性は、サンプルの損失及び汚染の危険性を増大させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、水を除去して溶媒中の分析物を濃縮するための器具の1つの例示的な形態に関し、当該器具は、溶媒の第1溶液、残留水及び分析物を収容する容器であって、当該容器は、当該容器から排出させるための開口部を有する容器と、フッ素ポリマー材料よりなる疎水性の膜層であって、膜層は、上記開口部と直列に位置付けられた膜層と、を備える。そして、ベッセルは、前記膜を通過した第2溶液を収容するために提供されており、上記ベッセルは、上記溶液の溶媒のレベルを低減することが可能である。サンプル回収バイアルは、ベッセルに直接接続されており、バイアルは、ガスクロマトグラフィ回収オートサンプラを使用することが可能である。
【0005】
また、本発明は、他の例示的な形態において、分析のための溶液中の分析物のサンプルを回収して取り扱うための器具に関する。器具は、サンプル溶液から水を除去するための第1セクションと、第1セクションに接続されて溶液中のサンプルを濃縮するための第2セクションと、を有する。また、第2セクションは、首部分を有し、首部分は、サンプル回収バイアルと係合するように構成されており、サンプル回収バイアルは、サンプルに例えば自動化されたガスクロマトグラフィシステムをもたらすことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の特徴及び有利点は、本発明と一致する例示的な実施形態の記載であって当該記載が添付の図面と共に読まれるべきである記載を通して説明される。
【0007】
本発明は、例えば、ガスクロマトグラフィ、質量分析などを介して分析されるサンプルを回収して取り扱うためのシステム及び方法を提供する。このような試験をするためのサンプルのサイズは、一般に比較的小さく、特定レベルのサンプルの純度及び濃度を必要とすることがある。それに応じて、サンプルは、水及び余分な溶媒、汚染物質などを例えば抽出工程から除去するため並びにサンプルの濃度を高めるために濃縮することを受けることがある。本発明と一致して、サンプルは、所望レベルまたは堆積まで直接例えば分析装置と共に使用するためのサンプルバイアルの中へ直接濃縮されることがある。
【0008】
図1を参照すると、一実施形態において、サンプルは、蒸発濃縮システム10から直接回収される。蒸発濃縮システム10は、比較的濃縮されたサンプルを形成し、過剰な溶媒などの除去を促進する。示されるように、一実施形態において、蒸発濃縮システム10は、サンプルを乾燥するための例えばサンプルから水を除去する第1ステージ12を有する。水の除去は、例えば硫酸ナトリウム、真空、乾燥ガスの散布、膜分離など化学乾燥剤を用いて実行される。そして、乾燥されたサンプルは、濃縮され、例えば過剰な溶媒は、除去されるなどする。
【0009】
そのため、注目は、その教示が本明細書で参照として組み込まれる米国特許第6749755号明細書にまず向けられる。そこで開示されているように、装置及び方法は、溶媒から残留水を分離するために提供されている。装置は、残留水を含む溶媒を含むよう液を収容する容器を備え、容器は、溶液が容器から排出されることを可能とする開口部を有する。膜層は、フッ素ポリマーの層を備えて設けられており、膜の材料は、25psi(172kPa)以上のIPAのバブルポイント(Bubble Point)を有する。膜は、容器の開口部と直列に位置付けられている。真空は、膜層の一方で発生され、水を含む溶媒は、溶媒から水を除去しながら膜層の中を通過し、1ppm以下の水レベルを有する溶媒を供給する。
【0010】
また、注目は、その教示が本明細書で参照として組み込まれる米国特許出願第11/190513号明細書に向けられる。そこで開示されているように、装置及び方法は、溶媒から水を分離して溶媒を除去するために提供されている。方法は、溶媒及び残留水と分析物とを含む溶液を準備する工程を有する。溶液は、膜を通過して水の含有量を低減し、分析物は、最初の濃縮物に存在する。そして、これは、溶液から溶媒を除去する工程によって続かれる。膜は、先と同様に、25psi(172kPa)以上のIPAのバブルポイントを有する材料を備える。特に、膜は、フッ素ポリマー材料よりなる疎水性の膜層を有する。また、水の含有量は、1.0ppm以下に低減される。
【0011】
それに応じて、乾燥されたサンプルは、サンプルを濃縮して過剰な溶媒を除去するなどのための第2ステージ14に供給される。例えば、サンプルは、ヒータ18、散布ガスの供給部20及び真空除去部22を有する蒸発管部16に搬送される。加熱、散布及び真空の組み合わせは、サンプルから溶媒を蒸発させるために使用される。濃縮されたサンプルは、蒸発管部16の下領域24に回収される。
【0012】
図2及び図3を参照すると、サンプル回収システムの実施形態は、サンプルバイアル26に結合された蒸発管部16を有して示されている。サンプルバイアル26は、例えばガスクロマトグラフィオートサンプラバイアルを有する。ガスクロマトグラフィオートサンプラバイアルは、自動化されたガスクロマトグラフィシステムでガスクロマトグラフィ分析のためのサンプルを収容する。そのため、オートサンプルバイアルは、ロボットアームとの係合に適しかつ/またはトレー回転技術の使用などに適しているとして理解されている。したがって、このようなバイアルは、キャップのためのネジ部分を有し、オートサンプラの使用またはサンプルの保存のための固体キャップのための開放孔を有する。単一部品のポリプレンのキャップ及び膜は、同様に使用されうる。また、本明細書のオートサンプラのバイアルは、圧着頂部、スナップ封止バイアルまたはシェルバイアル(shell vial)を含んでもよい。さらに、本明細書のオートサンプラのバイアルは、さまざまなサイズからなってもよく、適切な耐化学性の隔壁を使用してもよい。
【0013】
蒸発管部16は、結合部28によってサンプルバイアル26に結合されている。サンプルが蒸発濃縮システム10によって処理されるにつれて、濃縮されたサンプルは、直接サンプルバイアル26に回収される。このようなサンプルバイアル26におけるサンプルの直接的な回収は、サンプルを蒸発管部16からサンプルバイアル26であってこれからサンプルが分析されるサンプルバイアル26まで離れて移送する必要性を排除する。それに応じて、サンプルを準備するために必要な時間を削減できる。例えばこぼすこと、取扱いミスなどのサンプルの損失の危険性は、低減されまたはなくなる。
【0014】
図示されるように、一実施形態において、蒸発管部16及びサンプルバイアル26は、外ネジ首部30、32を有する。結合部28は、協働する内ネジ部を有する。そのため、結合部28は、蒸発管部16及びサンプルバイアル26を互いに締め付ける。さらに、結合部28は、蒸発管部16及びサンプルバイアル26の首部30、32を一様に整列させ、蒸発管部16からサンプルバイアル26に損失、汚染などなくサンプルを流動させることを可能とする。さまざまな他の実施形態において、結合部は、蒸発管部及びサンプルバイアルを係合するためのネジ部以外の機構を有してもよい。例えば、結合部及び蒸発管部は、協働する精密なテーパ部を有する。さらに、結合部が任意の適切な材料で製造される一方、蒸発管部またはサンプルバイアルと係合する結合部の少なくとも表面は、結合部と蒸発管部またはサンプルバイアルとの間の圧入を可能とする例えばプラスチック材料など変形可能なまたは弾性を有する材料を含む。例えば、弾性材料は、約300000psi(約207×10kPa)未満の屈曲係数及び/または約50%を越える破断伸び(elongation at break)を有する材料よりなってもよい。そのため、結合部は、蒸発管部またはサンプルバイアルと開放可能に係合するため、エラストマ材料(例えば、100%以上の伸びを有する材料)を含んでもよくかつ/またはリブなどのような弾性的に変形可能な機構を有してもよい。
【0015】
同様に図4を参照すると、蒸発管部16及びサンプルバイアル26は、例えば蒸発濃縮システム10において例えばサンプルの濃縮中にクレードル34で支持されている。図示のように、クレードル34は、蒸発管部16及びサンプルバイアル26をセンサハウジング36に対して支持する。センサハウジング36は、蒸発濃縮工程中においてサンプルバイアル26内に収容されているサンプルのさまざまな特性を検出する1以上のセンサを有する。例えば、1以上のセンサは、蒸発濃縮の限度を制御して所望の最終的なサンプル容量を達成するためのサンプルバイアル26の充填レベルを決定するために設けられている。また、サンプルまたはサンプルバイアルのさまざまな他の特徴は、検出されてもよい。
【0016】
同様に図示のように、クレードルスペーサ38は、蒸発管部16及びクレードル34の少なくとも一部分の間に設けられている。クレードルスペーサ38は、蒸発管部16に対して概ね補完的な形状を有しており、結合部28及び/またはサンプルバイアル26の少なくとも一部分を受けるための開口部を有する。1を越えるクレードルスペーサは、異なる高さを有するサンプルバイアルが使用される一方、センサハウジングに対してサンプルバイアルの所望位置付けをさらに実現することを可能とするように設けられている。例えば、異なるスペーサは、センサハウジングに対して異なるそれぞれの高さで蒸発管部16を保持する。
【0017】
本発明がその例示的な実施形態を参照して説明されている一方、本発明がその原理から逸脱していなければ具体化されてもよく、そのような他の実施形態が本発明の範囲内になるように意図されることは、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明と関連して使用される蒸発濃縮システムの一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明と一致するサンプル回収システムの一実施形態を示す図である。
【図3】本発明と一致するサンプル回収システムの一実施形態を示す部分破断斜視図である。
【図4】本発明と一致するサンプル回収システムの一実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 蒸発濃縮システム、12 第1ステージ(第1セクション)、14 第2ステージ(第2セクション)、16 蒸発管部(容器)、26 サンプルバイアル、28 結合部、30 外ネジ首部,首部、34 クレードル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を除去して溶媒中の分析物を濃縮するための器具であって、
溶媒の第1溶液、残留水及び分析物を収容する容器であって、当該容器は、当該容器から排出させるための開口部を有する容器と、
フッ素ポリマー材料よりなる疎水性の膜層であって、当該膜層は、前記開口部と直列に位置付けられた膜層と、
前記膜層を通過した第2溶液を収容するためのベッセルであって、当該ベッセルは、前記第1溶液における前記溶媒のレベルを低減することが可能であるベッセルと、
前記ベッセルに接続されるサンプル回収バイアルと、
を備えることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記ベッセルに接続される前記サンプル回収バイアルは、サンプルに自動化されたガスクロマトグラフィシステムをもたらすことが可能であるガスクロマトグラフィのオートサンプラバイアルを備えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記膜層を通過する前記第2溶液を収容するための前記ベッセルは、外ネジ部を含むネジ首部分であって前記外ネジ部が当該ネジ首部分に取り付けられる内ネジ部を有する結合部を有するネジ首部分を有し、
前記サンプル回収バイアルは、同様に前記結合部に取り付けられる外ネジ部を有することを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記結合部は、弾性材料よりなることを特徴とする請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記ベッセル及び前記サンプル回収バイアルを支持するクレードルをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項6】
溶媒中の水を除去して分析物を濃縮するための器具であって、
溶媒の第1溶液、残留水及び分析物を収容するための容器であって、当該容器は、当該容器から排出するための開口部を有する容器と、
フッ素ポリマー材料よりなる疎水性の膜層であって、当該膜層は、前記開口部と直列に位置付けられた膜層と、
前記膜層を通過する第2容器を収容するためのベッセルであって、当該ベッセルは、前記第1溶液における前記溶媒のレベルを低減することが可能なベッセルと、
サンプルに自動化されたガスクロマトグラフィシステムをもたらすことが可能なガスクロマトグラフィオートサンプラバイアルと、を備え、
前記膜層を通過する前記第2溶液を収容するための前記第2ベッセルは、外ネジ部を含むネジ首部分であって前記外ネジ部が当該ネジ首部分に取り付けられる内ネジ部を有する結合部を有するネジ首部分を有し、
前記ガスクロマトグラフィ回収オートサンプラバイアルは、同様に前記結合部に取り付けられる外ネジ部を有することを特徴とする容器。
【請求項7】
前記結合部は、弾性材料よりなることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
分析のための溶媒中の分析物サンプルを回収して取り扱うための器具であって、
(a) 前記サンプルの溶媒から水を除去するための第1セクションと、
(b) 前記第1セクションに接続されて前記溶媒中の前記サンプルを濃縮するための第2セクションと、
(c) 前記第2セクションにある首部分と、
を備え、
前記首部分は、サンプル回収バイアルに係合されるように構成され、
前記サンプル回収バイアルは、サンプルに自動化されたガスクロマトグラフィシステムをもたらすことが可能であることを特徴とする器具。
【請求項9】
前記首部分は、外ネジ部を含むネジ首部分であって前記外ネジ部が当該ネジ首部分に取り付けられる内ネジ部を有する結合部を有するネジ首部分を備え、
前記サンプル回収バイアルは、前記結合部に取り付けられる外ネジ部を有することを特徴とする請求項8に記載の器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−535650(P2009−535650A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510035(P2009−510035)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/067950
【国際公開番号】WO2007/130991
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503013185)ホライズン・テクノロジー・インク (1)
【Fターム(参考)】