説明

トレミー管

【課題】プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができるトレミー管を提供する。
【解決手段】水中コンクリート4を打設するために用いるトレミー管10であって、遠隔操作で開閉可能なボールバルブ12を管路に備えるようにする。このようにすれば、プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができる。水中コンクリートの打上り高さを検知する電気比抵抗センサ18を管先端部に備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中コンクリートの打設に用いるトレミー管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中コンクリートの打設に用いるトレミー管が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このトレミー管によるコンクリートの打ち込みには、(1)トレミー管内にプランジャーを通して打設する方法(例えば、特許文献3参照)、または(2)先端開閉式のトレミー管で打設する方法(例えば、特許文献4参照)のいずれかで行われている。ここで、特許文献4のトレミー管の開閉弁は、管下端側面に沿って昇降可能に設けられた円筒状の開閉弁であり、この開閉弁を昇降させることで管下端側面の開口部を開閉して、コンクリートを吐出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭58−33333号公報
【特許文献2】特公昭58−32248号公報
【特許文献3】特開平8−199560号公報
【特許文献4】特開平11−21891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の(1)の方法の場合は、コンクリート打設の都度プランジャーを回収する必要があり、トレミー管の移動と打設を頻繁に繰り返す場合には効率が悪い。また、上記の(2)の方法の場合は、トレミー管先端の開閉部にコンクリート骨材が詰まり易く、その都度開閉が困難になるおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができるトレミー管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るトレミー管は、水中コンクリートを打設するために用いるトレミー管であって、遠隔操作で開閉可能なボールバルブを管路に備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係るトレミー管は、上述した請求項1において、水中コンクリートの打上り高さを検知する電気比抵抗センサを管先端部に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水中コンクリートを打設するために用いるトレミー管であって、遠隔操作で開閉可能なボールバルブを管路に備えるので、ボールバルブを開状態から閉状態に遠隔操作すると、ボールバルブの弁体が管路内を回転して管路を閉鎖する。管路内を流下していたコンクリートは回転した弁体の外面に確実に制止されることから、ボールバルブにはコンクリート骨材は詰まらない。また、プランジャーを用いないのでプランジャーの回収は不要である。したがって、本発明によれば、プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係るトレミー管の実施例を示す側面図であり、(a)はボールバルブが開状態の場合、(b)はボールバルブが閉状態の場合の図である。
【図2】図2は、ボールバルブの開閉状況を示す側断面図である。
【図3】図3は、電気比抵抗センサによるコンクリートの打上り高さの検知手段を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係るトレミー管の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1(a)または(b)に示すように、本発明に係るトレミー管10は、水中コンクリートを打設するために用いるものであって、遠隔操作で開閉可能なボールバルブ12をその管路に備える。このトレミー管10の上端部にはコンクリートを投入しやすいようにホッパー14が取り付けてあり、下端部にはコンクリート吐出口16が設けてある。この下端部の近傍には、水中2に打設したコンクリート4の天端6を検知するための電気比抵抗センサ18が設けてある。
【0012】
ボールバルブ12は、油圧シリンダ20を介して開閉駆動するものである。油圧シリンダ20は、2本の油圧ホース22を介して水面上の油圧制御器44に接続されており、この油圧制御器44からの遠隔操作で伸縮動作するようになっている。
【0013】
具体的には、ボールバルブ12を開くときは油圧シリンダ20上部につなげた一方の油圧ホース22を通して作動用オイルを油圧制御器44のオイルタンクから圧送するとともに油圧シリンダ20下部につなげた他方の油圧ホース22から作動用オイルをオイルタンクに戻すことで油圧シリンダ20のピストンを伸長させる。ボールバルブ12を開から閉にするときには作動用オイルを他方の油圧ホース22から圧送するとともに一方の油圧ホース22から作動用オイルをオイルタンクに戻すことで油圧シリンダ20のピストンを退縮させる。ここで、図1(a)は、油圧シリンダ20が伸張してボールバルブ12が開いている状態を示しており、図1(b)は、油圧シリンダ20が収縮してボールバルブ12が閉じている状態を示している。
【0014】
図2(a)は、開状態のボールバルブの断面図であり、図2(b)は、閉状態のボールバルブの断面図である。図2(a)に示すように、このボールバルブ12は、コンクリート用の入口24と出口26とが直線状に形成されたバルブ本体28内に連通孔30を備えたボール弁体32を回転自在に収容したものである。このボール弁体32は、図2(b)に示すように、回転軸34を介して外部の油圧シリンダ20(図1を参照)をバルブ駆動源として回転することでバルブ内の開閉を瞬時に行うようになっている。
【0015】
上記構成の動作および作用を説明する。
ボールバルブ12を開状態から閉状態に遠隔操作すると、ボール弁体32がバルブ本体28内を回転して管路を閉鎖する。トレミー管10内を流下していたコンクリートは回転したボール弁体32の外面に確実に制止されることから、ボールバルブ12にはコンクリート骨材は詰まらない。また、本発明のトレミー管はプランジャーを用いないのでプランジャーの回収は不要である。したがって、本発明によれば、プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができる。
【0016】
ところで、コンクリートを濁水中に打設する場合や水深が大きい地点に打設する場合など、潜水士の目視による確認作業に支障をきたすおそれがある場合には、コンクリートの打上り高さの管理が困難となってしまう。そこで、トレミー管10の下端部に設けた電気比抵抗センサ18によりコンクリートの打上り高さを検知する。
【0017】
図3に示すように、この電気比抵抗センサ18は、ウェンナー式の四極法のセンサで構成され、管先端部に上下方向に等間隔に配置した4つの電極36、38、40、42を有している。各電極は外部に露出しており、最上下端の一対の電極36、42間に電流Iを流し、この間に配置された一対の電極38、40間の電圧Vを測定して比抵抗Rを求める。
【0018】
この比抵抗Rは、R=(V/V)×Rで算定することができる。ここで、電圧Vは、既知の抵抗Rを用いてV=R×Iである。比抵抗Rはコンクリートと水とで異なることを利用してコンクリートと水とを識別し、これによりコンクリートの打上り高さを検知する。このようにすることで、コンクリートの打上り高さの管理が容易となり、潜水士の目視による確認作業を省略することができる。
【0019】
なお、電気比抵抗センサ18は、図示しない制御線によって水面上の制御装置(不図示)と接続してあり、電極間の電流制御および電圧測定値の取得はこの制御装置からの遠隔操作で行うことが可能である。また、比抵抗値の演算およびコンクリートの打上り高さの出力もこの制御装置で行うことができる。
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、水中コンクリートを打設するために用いるトレミー管であって、遠隔操作で開閉可能なボールバルブを管路に備えるので、ボールバルブを開状態から閉状態に遠隔操作すると、ボールバルブの弁体が管路内を回転して管路を閉鎖する。管路内を流下していたコンクリートは回転した弁体の外面に確実に制止されることから、ボールバルブにはコンクリート骨材は詰まらない。また、プランジャーを用いないのでプランジャーの回収は不要である。したがって、本発明によれば、プランジャーの回収が不要で、かつ、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明に係るトレミー管は、水中コンクリートを効率的に打設するのに有用であり、特に、開閉部のコンクリート骨材の詰まりを防止するのに適している。
【符号の説明】
【0022】
2 水中
4 コンクリート
6 コンクリートの天端
10 トレミー管
12 ボールバルブ
14 ホッパー
16 コンクリート吐出口
18 電気比抵抗センサ
20 油圧シリンダ
22 油圧ホース
34 回転軸
44 油圧制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中コンクリートを打設するために用いるトレミー管であって、
遠隔操作で開閉可能なボールバルブを管路に備えることを特徴とするトレミー管。
【請求項2】
水中コンクリートの打上り高さを検知する電気比抵抗センサを管先端部に備えることを特徴とする請求項1に記載のトレミー管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251344(P2012−251344A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123766(P2011−123766)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】