説明

架橋脂肪族ポリカルボナートおよびその製造方法

【課題】主鎖が高い交互規則性を有しかつ架橋構造を有する脂肪族ポリカルボナートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物と、両末端ジエポキシド化合物と、二酸化炭素とを共重合することを含む、架橋脂肪族ポリカルボナートの製造方法において、式(I)または式(II)で表されるコバルト錯体を触媒として用いて共重合を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋脂肪族ポリカルボナートおよびその製造方法に関する。より詳細には、主鎖が高い交互規則性を有しかつ架橋構造を有する脂肪族ポリカルボナートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族エポキシド化合物と二酸化炭素との共重合によって得られる脂肪族ポリカルボナートは、二酸化炭素を合成樹脂の原料に利用する点で興味深い。また、脂肪族ポリカルボナートは、透明性を有しかつ所定温度以上に加熱すると完全に分解するため、一般成形物、フィルム、ファイバーなどの用途に使用できることに加えて、光ファイバー、光ディスクなどの光学材料、あるいはセラミックバインダー、ロストフォームキャスティングなどの熱分解性材料として利用することも可能である。さらに、脂肪族ポリカルボナートは、生体内で分解可能であるため、徐放性の薬剤カプセルなどの医用材料、生分解性樹脂の添加剤または生分解性樹脂の主成分として応用できる。
【0003】
非特許文献1(P. Song, S. Wang, M. Xiao, F. Du, L. Gan, G. Liu, Y. Meng, J. Polym. Res. 2009, 16, p.91-97)には、Zn触媒を用いてプロピレンオキシド(PO)、二酸化炭素および無水マレイン酸を共重合して不飽和結合を主鎖に有する脂肪族ポリカルボナートを合成した後、架橋剤として過酸化ジクミルを用いて得られた架橋ポリカルボナートが記載されており、架橋による熱安定性の向上について言及されている。
【0004】
しかしながら、上記架橋ポリカルボナートの主鎖には無水マレイン酸に由来する単位が含まれるため、高い交互規則性を有する脂肪族ポリカルボナートより熱分解温度範囲が広くなる傾向がある。そのため、例えば、非特許文献1の架橋ポリカルボナートを熱分解性材料として使用した場合、十分に分解されずに残渣が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P. Song, S. Wang, M. Xiao, F. Du, L. Gan, G. Liu, Y. Meng, J. Polym. Res. 2009, 16, p.91-97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脂肪族ポリカルボナートの応用範囲をより多岐にわたるものとするため、熱分解温度がより高温でかつ優れた熱分解特性を有する脂肪族ポリカルボナートが必要とされている。本発明は、主鎖が高い交互規則性を有しかつ架橋構造を有する脂肪族ポリカルボナートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題を解決するために以下の発明を提供する。
【0008】
1.エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物と、両末端ジエポキシド化合物と、二酸化炭素とを共重合することを含む、架橋脂肪族ポリカルボナートの製造方法であって、式(I):
【化1】

または式(II):
【化2】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよく、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表されるコバルト錯体を触媒として用いて共重合を行うことを特徴とする方法。
【0009】
2.前記エポキシド化合物のモル量が、前記両末端ジエポキシド化合物のモル量の5倍以上、2000倍以下である、項目1に記載の方法。
【0010】
3.前記コバルト錯体が、式(II−a):
【化3】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R6は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択され、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
または式(II−b):
【化4】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であり、R7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシ基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR5と−C(=O)R7が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環を形成してもよく、該脂肪族環上の置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択され、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
で表される、項目1または2のいずれかに記載の方法。
【0011】
4.前記コバルト錯体が、式(II−a1):
【化5】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
で表される、項目3に記載の方法。
【0012】
5.前記両末端ジエポキシド化合物が式(IV)で表される、項目1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【化6】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2〜18の整数)
【0013】
6.前記エポキシド化合物がプロピレンオキシドである、項目1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【0014】
7.[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(III):
【化7】

(式中、R9は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を、前記コバルト錯体と組み合わせた触媒システムを用いて共重合を行うことを特徴とする、項目1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【0015】
8.項目1〜7のいずれか1つに記載の方法によって得られる、架橋脂肪族ポリカルボナート。
【0016】
9.エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物ならびに二酸化炭素からなるカルボナート単位と、両末端ジエポキシド化合物および二酸化炭素からなる架橋カルボナート単位とを含む、架橋脂肪族ポリカルボナート。
【0017】
10.前記両末端ジエポキシド化合物が式(IV)で表される、項目9に記載の架橋脂肪族ポリカルボナート。
【化8】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2〜18の整数)
【0018】
11.前記エポキシド化合物がプロピレンオキシドである、項目9または10のいずれかに記載の架橋脂肪族ポリカルボナート。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応に用いるエポキシド化合物と両末端ジエポキシド化合物の比によって、架橋脂肪族ポリカルボナートに導入される架橋単位の割合を容易に制御できる。また、本発明によれば、架橋構造のない対応する脂肪族ポリカルボナートと比べて、熱分解温度を高温にシフトさせつつ良好な熱分解特性を有する、架橋脂肪族ポリカルボナートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】例6の架橋脂肪族ポリカルボナートの1H NMRチャートである。
【図2】例11の架橋脂肪族ポリカルボナートの1H NMRチャートである。
【図3】例19の架橋脂肪族ポリカルボナートの1H NMRチャートである。
【図4】例9の架橋脂肪族ポリカルボナートの精製前の1H NMRチャートである。
【図5】例10の架橋脂肪族ポリカルボナートの精製前の1H NMRチャートである。
【図6】例8の架橋脂肪族ポリカルボナートの熱分解測定チャートである。
【図7】例12の架橋脂肪族ポリカルボナートの熱分解測定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施態様は、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物と、両末端ジエポキシド化合物と、二酸化炭素とをコバルト錯体を用いて共重合して、架橋脂肪族ポリカルボナートを製造する方法である。
【0022】
エポキシド化合物は、目的とするポリカルボナートの物性、例えばガラス転移温度Tg、熱分解温度Td、使用するコバルト錯体のタイプなどに応じて、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの組み合わせから選択することができる。交互規則性の非常に高い、例えば実質的に完全な交互規則性を有するポリカルボナートを得ようとする場合、一般にプロピレンオキシドが有利に使用できる。使用するコバルト錯体のタイプによっては、エチレンオキシドが好適に使用できる場合もある。
【0023】
両末端ジエポキシド化合物は、架橋脂肪族ポリカルボナートにおいて架橋構造を構成する要素であり、二価の連結基の両末端にエポキシ基が結合している。二価の連結基は、飽和または不飽和の脂肪族基、芳香族基、またはその組み合わせを含んでもよく、他の置換基で置換されていてもよく、連結基の骨格に1以上のヘテロ原子、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子などを含んでもよい。
【0024】
両末端ジエポキシド化合物の2つのエポキシ基の距離を適切な範囲とすることが、架橋構造の形成に有利である。例えば、二価の連結基の主鎖骨格を構成する原子数は2以上とすることが架橋構造の形成に望ましい。一方で、十分な架橋点を確保しながらも、架橋脂肪族ポリカルボナートにカルボナート単位以外の構造を不要に導入したくない場合は、二価の連結基の主鎖骨格を構成する原子数を、例えば18以下、12以下または10以下とすることが有利である。
【0025】
架橋脂肪族ポリカルボナートの他の部分構造との化学的性質の類似性から、二価の連結基は、アルキレン基、またはオキシアルキレン基もしくはポリオキシアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。アルキレン基として、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基などが挙げられる。オキシアルキレン基およびポリオキシアルキレン基として、例えば、(ポリ)オキシメチレン基、(ポリ)オキシエチレン基、(ポリ)オキシプロピレン基、(ポリ)オキシブチレン基などが挙げられ、ポリオキシアルキレン基中のアルキレン部分の炭素数がそれぞれ異なっていてもよい。ここで、(ポリ)オキシメチレン基とは、オキシメチレン基およびポリオキシメチレン基の両方を意味し、他の基についても同様である。
【0026】
二価の連結基は、例えば炭素数1〜6または1〜3のアルキル基またはアルケニル基、アルコキシ基、窒素原子上に活性水素をもたないアミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アリール基などの他の置換基で置換されていてもよく、置換基の数および位置は適宜設定することができる。
【0027】
上記両末端ジエポキシド化合物の具体例として、以下の式(IV)で表されるものが挙げられる。
【化9】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2以上、18以下、12以下または10以下の整数)
【0028】
式(IV)の両末端ジエポキシド化合物として、例えば、1,2:5,6−ジエポキシヘキサン、1,2:7,8−ジエポキシオクタン、1,2:9,10−ジエポキシデカン、1,2:13,14−ジエポキシテトラデカンなどの脂肪族ジエポキシド化合物;1,2:9,10−ジエポキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2:11,12−ジエポキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカンなどのフッ素化脂肪族ジエポキシド化合物、などが挙げられる。
【0029】
このような両末端ジエポキシド化合物は、当業者に周知の方法によって合成することができる。例えば、対応するジエン化合物を、3−クロロ過安息香酸、Oxone(登録商標)、過酸化水素などを用いて酸化することによって得ることができる。
【0030】
触媒として用いるコバルト錯体は、式(I):
【化10】

または式(II):
【化11】

で表される。
【0031】
1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよい。
【0032】
1およびR2の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0033】
1およびR2の置換または非置換のアリール基としては、炭素数6〜10の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
1およびR2の置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜10の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
また、2個のR1または2個のR2は、互いに結合して置換または非置換の飽和または不飽和の脂肪族環を形成してもよく、炭素数4〜10の置換または非置換の脂肪族環を形成することが好ましい。例えば、R1とR2が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキサン環を形成する。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0036】
3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよい。
【0037】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状の置換または非置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルケニル基としては、炭素数2〜10の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖状のアルケニル基、例えば、ビニル基、2−プロペニル基などが挙げられる。アルケニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
3、R4およびR5のアリール基としては、炭素数6〜10の置換または非置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0040】
3、R4およびR5の置換または非置換のヘテロアリール基としては、炭素数5〜10の置換または非置換のヘテロアリール基が好ましく、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラリジニル基、キノリル基、イソキノリル基などの置換または非置換のヘテロアリール基が挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0041】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルコキシ基としては、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、アダマンチルオキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
3、R4およびR5のアシル基としては、炭素数1〜20のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基などの脂肪族アシル基またはフッ素化脂肪族アシル基、ベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4,6−トリメトキシベンゾイル基、2,6−ジイソプロポキシベンゾイル基、1−ナフチルカルボニル基、2−ナフチルカルボニル基、9−アントリルカルボニル基などのアリールアシル基などが挙げられる。
【0043】
3、R4およびR5の置換または非置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜20の置換または非置換のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、シクロオクチルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。アルコキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0044】
3、R4およびR5の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20の置換または非置換のアリールオキシカルボニル基が好ましく、例えば、フェノキシカルボニル基が挙げられる。アリールオキシカルボニル基は、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0045】
3、R4およびR5の置換または非置換のアラルキルオキシカルボニル基としては、炭素数7〜20のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基などが挙げられる。アラルキルオキシカルボニル基は、例えば、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、シアノ基、スルホ基、ホルミル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシアルキレンオキシ基、例えばメトキシエチレンオキシ基などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0046】
さらに、隣り合う炭素原子上のR4とR5は、互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよく、この場合、炭素数4〜10の置換または非置換の脂肪族環または芳香環を形成することが好ましい。例えば、R4とR5が−(CH24−を介して互いに結合した場合、シクロヘキセン環を形成する。R4とR5が4個の炭素原子を介して結合してベンゼン環を形成することが好ましい。このように形成された環は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、ハロゲン原子などから選択される1または2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0047】
Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。アニオン性配位子はエポキシド化合物のエポキシド炭素に対して求核性を有する場合がある。Zの具体例として、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、プロピオナート、シクロヘキシルカルボキシラートなどの脂肪族カルボキシラート;ベンゾアート、p−メチルベンゾアート、3,5−ジクロロベンゾアート、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート、4−ジメチルアミノベンゾアート、4−tert−ブチルベンゾアート、ペンタフルオロベンゾアート、ナフタレンカルボキシラートなどの芳香族カルボキシラート;メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシドなどのアルコキシド;フェノキシド、o−ニトロフェノキシド、p−ニトロフェノキシド、m−ニトロフェノキシド、2,4−ジニトロフェノキシド、3,5−ジニトロフェノキシド、3,5−ジフルオロフェノキシド、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシド、1−ナフトキシド、2−ナフトキシドなどのアリールオキシドなどが挙げられる。Zは、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0048】
このようなコバルト錯体として、式(II−a):
【化12】

(式中、R1、R2およびZは上記のとおり、R6は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択される。)で表される、いわゆるコバルト−サレン錯体が好ましい。
【0049】
6の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などのアルコキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基、F、Cl、Br、Iなどが挙げられる。
【0050】
また、式(II−b):
【化13】

(式中、R1、R2、R5およびZは上記のとおり、R7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシ基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR5と−C(=O)R7が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環を形成してもよく、脂肪族環上の置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択される。)で表される、コバルト−ケトイミナト錯体も好ましい。このようなコバルト−ケトイミナト錯体は、エポキシド化合物がエチレンオキシドであるときに有利に使用できる場合がある。
【0051】
7の具体例として、R3〜R5で説明したようなアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基およびアルコキシ基に加えて、炭素数6〜20のアリールオキシ基、例えばフェノキシ基、炭素数6〜20のアラルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などが挙げられる。また、隣り合う炭素原子上のR5と−C(=O)R7が互いに結合して脂肪族環を形成すると、オキソ−シクロペンテン環、オキソ−シクロヘキセン環などになり、脂肪族環は、R6で説明したような炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0052】
これらの中で、式(II−a1):
【化14】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表される、コバルト−サレン錯体が特に好ましい。
【0053】
これらのコバルト錯体は公知の方法に従って合成することができる。例えば、コバルト−サレン錯体については米国特許出願公開第2006/0089252号など;コバルト−ケトイミナト錯体については、Y. Nishida, et al,. Inorg. Chim. Acta, 38,213(1980)、E.G. Jager, Z. Chem., 8,30, 392 and 475(1968)などを参照のこと。
【0054】
上記コバルト錯体に助触媒を組み合わせた触媒システムを用いて、エポキシド化合物と二酸化炭素の共重合を行うこともできる。助触媒を併用することにより、共重合の反応速度を高める、および/または共重合体の交互規則性を高める、および/または副生成物である環状カルボナートの生成を抑制することができる。
【0055】
上記コバルト錯体と組み合わせることが可能な助触媒の一例は、リンおよび/または窒素を含むカチオンと対アニオンとからなる塩である。そのような助触媒として、[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(III):
【化15】

(式中、R9は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩を使用できる。
【0056】
上記塩を構成するカチオン[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+における、R8の具体例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などの、直鎖または分岐のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、メシチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントリル基などの置換または非置換のアリール基が挙げられる。式(III)のイミダゾリウムにおけるR9およびR10の具体例として、R8について上述したような、直鎖または分岐のアルキル基、シクロアルキル基、および置換または非置換のアリール基が挙げられる。これらのR8、R9およびR10は、上記カチオン([R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+、式(III)のイミダゾリウム)が全体として共重合反応に有利な立体的効果を発揮する、すなわち適切な嵩高さを有するように、選択して組み合わせることができる。
【0057】
上記塩を構成するカチオンとして、[R84N]+、[R83P=N=PR83+、または式(III)のイミダゾリウムを使用することが好ましく、[R83P=N=PR83+を使用することがより好ましい。
【0058】
四級アンモニウム[R84N]+の具体例として、テトラブチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、トリシクロヘキシルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウムなどが挙げられる。
【0059】
四級ホスホニウム[R84P]+の具体例として、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、テトラシクロヘキシルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、テトラ(メトキシフェニル)ホスホニウムなどが挙げられる。
【0060】
ビス(ホスホラニリデン)アンモニウム[R83P=N=PR83+の具体例として、ビス(トリブチルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(エチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(n−ブチルジフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(ジメチルフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリトリルホスホラニリデン)アンモニウム、ビス(トリナフチルホスホラニリデン)アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムが好ましい。
【0061】
式(III)のイミダゾリウムの具体例として、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0062】
上記塩を構成するアニオンとして、Zについて上述したものを挙げることができ、F-、Cl-、Br-、I-、アセタート、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、ベンゾアート、またはペンタフルオロベンゾアートであることが好ましく、F-、Cl-、Br-、I-、トリフルオロアセタート、トリクロロアセタート、またはペンタフルオロベンゾアートであることがより好ましく、F-、Cl-またはペンタフルオロベンゾアートであることが特に好ましい。
【0063】
上記カチオンおよびアニオンからなる塩として、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムフルオリド(PPNF)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)、ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアート、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチル−イミダゾリウムクロリドなどが挙げられ、PPNF、PPNClおよびビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムペンタフルオロベンゾアートが好ましい。
【0064】
コバルト錯体と助触媒を組み合わせた触媒システムにおいて、触媒システムの重合活性が高く、かつ得られる脂肪族ポリカルボナートの立体規則性がより高いことから、コバルト錯体を上記式(II−a)または式(II−b)の化合物とすることが好ましく、式(II−a1)の化合物とすることがより好ましい。
【0065】
エポキシド化合物および両末端ジエポキシド化合物と二酸化炭素の共重合は、加圧可能な公知の重合反応装置、例えばオートクレーブを用いて行うことができる。共重合の反応温度は、一般に約0℃以上、約100℃以下とすることができ、約10℃以上、約90℃以下であることが好ましく、約20℃以上、約60℃以下であることがより好ましい。共重合を低温で行うと環状カルボナートの生成を抑制でき、高温で行うと反応速度が増加してTOF(Turnover Frequency、触媒中の金属の単位モル数当たり、単位時間当たりの、エポキシド化合物のポリマーへの転化量)および/またはTON(Turnover Number、触媒(助触媒含む)の単位質量当たりのポリマーの収量)を向上させることができる。
【0066】
共重合時の二酸化炭素の分圧は、一般に約0.1MPa以上、約10MPa以下とすることができ、約5MPa以下であることが好ましく、約3MPa以下であることがより好ましい。窒素、アルゴンなどの不活性ガスが二酸化炭素と一緒に反応雰囲気中に存在してもよい。
【0067】
エポキシド化合物と両末端ジエポキシド化合物のモル比は、目標とする熱分解温度Tdに応じて選択することができる。一般にエポキシド化合物の量は、モル数を基準として、両末端ジエポキシド化合物の約5倍以上、約2000倍以下であり、約10倍以上、約20倍以上、または約50倍以上であってよく、一方で約1000倍以下、約500倍以下、約200倍以下、または約100倍以下であってよい。熱分解温度Tdを大幅に(例えば非架橋のものと比べて約20℃以上)向上させるには、エポキシド化合物の量を、モル数を基準として、両末端エポキシド化合物の約100倍以下として、熱安定性の向上に十分な架橋構造を架橋脂肪族ポリカルボナートに導入することが好ましい。
【0068】
エポキシド化合物と両末端ジエポキシド化合物の合計と、触媒であるコバルト錯体とのモル比は、一般にエポキシド化合物の合計:コバルト錯体=約1000:1以上とすることができ、約2000:1以上であることが経済性の観点から好ましい。錯体濃度が低いと一般に反応時間が長くなるため、エポキシド化合物の合計:コバルト錯体=約100000:1以下、または約50000:1以下とすることが一般的である。必要に応じて使用される助触媒の量は、コバルト錯体1モルに対して、一般に約0.1〜約10モルとすることができ、約0.5〜約5モルであることが好ましく、約0.8〜約1.2モルであることがより好ましい。
【0069】
共重合は無溶媒で行ってもよく、必要に応じて溶媒を使用して行ってもよい。使用可能な溶媒として、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミドなどのアミド、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテルおよびそれらの組み合わせを用いることができ、ジクロロメタン、トルエン、ジメチルホルムアミドおよび1,2−ジメトキシエタンが好ましく、ジクロロメタンおよび1,2−ジメトキシエタンがより好ましい。溶媒を使用する場合、その量は、エポキシド化合物の合計1質量部に対して、一般に約0.1〜約100質量部とすることができ、約0.2〜約50質量部であることが好ましく、約0.5〜約20質量部であることがより好ましい。
【0070】
所望量のエポキシド化合物および両末端ジエポキシド化合物が重合した後、公知の後処理を行うことができる。例えば、塩酸、メタノール、塩酸/メタノール混合物などを反応停止剤として反応混合物に投入し、必要に応じて昇温および/または攪拌して反応を終了することができる。その後、例えば、貧溶媒としてメタノール、ヘキサンなどを用いてポリマーを再沈殿してもよく、ソックスレー抽出器を利用して固体状混合物から錯体を抽出してもよい。また、カラムクロマトグラフィーなどの周知の手段を用いて、ポリマーをさらに精製してもよい。架橋度がある程度以上の架橋脂肪族ポリカルボナートは不溶性となることが多く、その場合は溶媒添加およびデカンテーションを繰り返して行うことによる洗浄、ソックスレー抽出器を用いた錯体の抽出・分離、などにより、架橋脂肪族ポリカルボナートを精製することができる。
【0071】
このようにして、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物ならびに二酸化炭素からなるカルボナート単位と、両末端ジエポキシド化合物および二酸化炭素からなる架橋カルボナート単位とを含む、架橋脂肪族ポリカルボナートを得ることができる。
【0072】
上記架橋脂肪族ポリカルボナートにおけるエポキシド化合物は、目的とするポリカルボナートの物性例えばガラス転移温度Tg、熱分解温度Tdなどに応じて選択することができ、上記方法を使用して容易に合成できることから、プロピレンオキシドとすることが一般に有利である。上記方法で使用する錯体によっては、エチレンオキシドとすることが有利な場合もある。
【0073】
上記架橋脂肪族ポリカルボナートにおける両末端ジエポキシド化合物は、上記方法で説明したとおりであり、以下の式(IV)で表されるものであることが有利である。
【化16】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2以上、18以下、12以下または10以下の整数)
【0074】
上記架橋脂肪族ポリカルボナートは、非架橋の対応する脂肪族ポリカルボナートと比べて、熱分解温度がより高温でありかつ良好な熱分解特性を有する。そのため、例えば光学材料、熱分解性材料、医用材料、生分解性樹脂などとして使用することができ、それらの用途の中でも、より高温での熱分解が要求される用途、あるいは熱安定性が要求される用途に有利に使用できる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、これらは本発明の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
プロピレンオキシド(PO)、1,2:5,6−ジエポキシヘキサン、1,2:7,8−ジエポキシオクタン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、3−クロロ過安息香酸は東京化成工業株式会社から購入したものを用いた。1,2:9,10−ジエポキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカンはダイキン化成品販売株式会社から購入したものを用いた。ビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)はSigma-Aldrich Co.より購入した。実験に使用したクロロホルム、メタノールは関東化学株式会社から購入したものを用いた。式(II−a1)(Z=ペンタフルオロベンゾアート、-OCOC65)のコバルト−サレン錯体はJ. Am. Chem. Soc. 2005, 127, p.10869-10878に記載された方法を用いて合成した。1,2:9,10−ジエポキシデカンおよび1,2:13,14−ジエポキシテトラデカンは、Chem. Eur. J. 2007, 13, p.8325-8332に記載された方法に従い、それぞれ1,9−デカジエンと1,13−テトラデカジエンを3−クロロ過安息香酸を用いてエポキシ化することにより合成した。
【0077】
1H NMR分析は、日本電子株式会社製のJEOL−EX270およびGX−400において、溶媒として重クロロホルム、内部標準にはテトラメチルシランを用い、温度25℃で実施した。
【0078】
DSC測定は、島津製作所製DSC−60において、窒素雰囲気下、最初に−50℃から100℃に昇温(昇温速度10℃/分)し、その後−50℃まで冷却した後、再び−50℃から100℃まで昇温(昇温速度10℃/分)したときに行った。
【0079】
TG測定は、島津製作所製TGA−50において、空気雰囲気下、40℃から400℃に昇温(昇温速度10℃/分)したときに行った。
【0080】
架橋ポリプロピレンカルボナートの分子量測定は、高速液体クロマトグラフィーシステム(島津製作所製CTO−6A、日立製作所製L−6200、L−4200、D−2520、日本分光株式会社製RI−2031Plus、DG2080−53、LC−NetII/ADC)とSHODEX社製KF−804Lカラム2本を用いてテトラヒドロフランを溶出液として(40℃,1.0mL/分)、ポリスチレン標準を基準に換算して測定し、解析ソフトウェア(日本分光株式会社製ChromNAVクロマトグラフィデータステーションのGPC計算プログラム)で処理して求めた。
【0081】
例1
容量30mLのステンレス製オートクレーブに、式(II−a1)(Z=-OCOC65)のコバルト−サレン錯体(Co(salen)−OCOC65)4.7mg(5.7μmol)およびビス(トリフェニルホスホラニリデン)アンモニウムクロリド(PPNCl)3.3mg(5.7μmol、コバルト−サレン錯体に対して1当量)を入れた。プロピレンオキシド(PO)1.64g(28.3mmol)および両末端にエポキシ基を有するジエポキシド化合物(BO)として1,2:5,6−ジエポキシヘキサン32.3mg(283μmol)(PO:BO=100:1(モル比)、全エポキシ化合物:コバルト−サレン錯体=5000:1(モル比))を加え、二酸化炭素を圧力をかけて注入して全圧が2.0MPaとなるように調整した。撹拌しながら30℃で4時間反応させた後、二酸化炭素を抜き、この反応混合物について1H NMRを測定し、残存するPOおよびBOのPPC(POおよび二酸化炭素に由来するカルボナート単位)およびPBC(BOおよび二酸化炭素に由来するカルボナート単位)の特性ピーク(カルボナート単位に隣接するメチン水素、それぞれ5.00ppm、4.92ppm)の積分値から、ピークのオーバーラップを考慮した上で転化率を決定した。POおよびBOの転化率はそれぞれ60%および50%であった。
【0082】
その後、反応混合物をクロロホルムに溶解させ、0.5mol/Lメタノール性塩酸を加えた後、メタノールを用いて再沈殿させ、架橋したポリプロピレンカルボナート(PPC)を白色固体として収率29%で得た。この架橋PPCについて、130℃、減圧下(〜5mmHg)で3時間乾燥した後、1H NMR、DSC、TGおよびGPC測定を行い、架橋PPC中のPPC:PBC比(転化率と同様に各メチン水素のピークを使用)、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、ガラス転移温度Tg、熱分解温度Tdを求めた。結果を表1に示す。
【0083】
例2
全エポキシド化合物:コバルト−サレン錯体の比を変更せずに、POとBO(1,2:5,6−ジエポキシヘキサン)の仕込み比が表1となるようにし、反応時間を表1に記載したとおりとした以外は、例1と同様に共重合を行った。二酸化炭素を抜き、この反応混合物を取り出したところ、1H NMRの測定溶媒である重クロロホルムに溶解しない不溶成分があったため、転化率を決定せずに以下の処理を行った。
【0084】
反応混合物にクロロホルムを加えて膨潤させ、そこにメタノールを加えて約3時間放置した後上澄みを除く操作を三回繰り返して、非架橋PPCおよび比較的低分子量の架橋PPCを含む可溶成分、ならびに錯体を除去することにより、不溶成分である比較的高分子量の架橋PPCを透明から白色の固体として得た。上記操作の上澄みを全て合わせ、溶媒を減圧除去して可溶成分を濃縮し、そこに0.5mol/Lメタノール性塩酸を加えた後、メタノールを用いて再沈殿させ、非架橋PPCおよび比較的低分子量の架橋PPCを可溶成分として得た。不溶成分および可溶成分の収率は、それぞれ25%および28%であった。不溶成分についてのみガラス転移温度Tgおよび熱分解温度Tdを測定した。結果を表1に示す。
【0085】
例3〜22
BOとして、1,2:5,6−ジエポキシヘキサン(例3)、1,2:7,8−ジエポキシオクタン(例4〜8)、1,2:9,10−ジエポキシデカン(例9〜18)、1,2:13,14−ジエポキシテトラデカン(例19、20)、1,2:9,10−ジエポキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン(例21、22)を用い、全エポキシド化合物:コバルト−サレン錯体の比を変更せずに、POとBOの仕込み比が表1となるようにし、反応時間を表1に記載したとおりとした以外は、例1と同様に共重合を行った。不溶成分がない場合は例1、不溶成分がある場合は例2と同様に精製して、得られた架橋PPCを評価した。結果を表1に示す。表中、測定値が得られなかった項目を「N.D.」と示す。
【0086】
比較例1
全エポキシド化合物:コバルト−サレン錯体の比を変更せずに、POのみを使用し、反応時間を8時間とした以外は、例1と同様に共重合を行い精製して、非架橋PPCを収率41%で得た。結果を表1に示す。
【0087】
PO:BO=10:1〜100:1として得られた架橋PPCのTdは約250〜280℃であり、いずれもPO/CO2のみから得られる非架橋PPCのTdより約20〜50℃高かった。また、BOを少量使用した場合(PO:BO=200:1〜1000:1)でも、架橋PPCのTdは非架橋PPCと比べて約1〜15℃高かった。以上のことから、架橋構造を導入するとPPCの熱分解温度が非架橋のものと比べて高くなり、その架橋構造の量がある程度以上であれば、さらに大幅に熱分解温度が向上することが分かった。
【0088】
両末端ジエポキシドのみが異なる例6、11、19において、表1のPO:BO比とPPC:PBC比を比較すると、nの大きさに拘わらず、POとBOの仕込み比が反応生成物中のPPCとPBCの比とよく相関していることが分かる。表1と合わせて、図1〜3(それぞれ例6、11、19に対応)の1H NMRチャートの5.00ppmおよび4.92ppmのピーク積分値を参照のこと。したがって、本発明の方法では、分子量および官能基数の異なる2種類のエポキシド化合物が、同程度の反応性でバランスよく重合反応に消費されると考えられる。このように、本発明の方法によれば、POとBOの仕込み比によって反応生成物の組成比、すなわち導入される架橋単位の割合を容易に制御することができる。
【0089】
また、反応時間のみが異なる例9と例10において、表1のPO:BO比とPPC:PBC比を比較すると、反応時間および転化率の異なる段階において反応生成物のPPC:PBC比が同程度であることから、本発明の方法では、反応全体を通して、POおよびBOの反応性の相対比はほぼ一定であると考えられる(表1を参照、参考までに例9および10の架橋PPCの精製前の1H NMRチャートを図4および図5にそれぞれ示す)。また、このことと、上述したPOおよびBOの仕込み比と反応生成物の組成比との関係を合わせて考えると、不溶でPPC:PBC比が測定できない架橋PPCについても、その組成比はPOとBOの仕込み比により制御されると考えられる。
【0090】
図6および7に、それぞれ例8および12の熱分解(TG)測定チャートを示す。いずれにおいても、所定温度以上になると非常に速やかに架橋PPCが分解されていることが分かる。このことから、本発明によれば、熱分解温度がより高温でありながらも優れた熱分解特性を有する架橋脂肪族ポリカルボナートが得られる。
【0091】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、二酸化炭素を炭素源として利用した架橋脂肪族ポリカルボナートを工業的に製造するのに非常に有用である。また、本発明によって得られる架橋脂肪族ポリカルボナートは、例えば光学材料、熱分解性材料、医用材料、生分解性樹脂などとして、様々な用途で利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物と、両末端ジエポキシド化合物と、二酸化炭素とを共重合することを含む、架橋脂肪族ポリカルボナートの製造方法であって、式(I):
【化1】

または式(II):
【化2】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR4とR5が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環または芳香環を形成してもよく、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)で表されるコバルト錯体を触媒として用いて共重合を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エポキシド化合物のモル量が、前記両末端ジエポキシド化合物のモル量の5倍以上、2000倍以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コバルト錯体が、式(II−a):
【化3】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R6は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択され、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
または式(II−b):
【化4】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基、または置換もしくは非置換のヘテロアリール基であるか、あるいは2個のR1もしくは2個のR2が互いに結合して置換もしくは非置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族環を形成してもよく、R5は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、アシル基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシカルボニル基であり、R7は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、または置換もしくは非置換のアラルキルオキシ基であるか、あるいは隣り合う炭素原子上のR5と−C(=O)R7が互いに結合して置換もしくは非置換の脂肪族環を形成してもよく、該脂肪族環上の置換基は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリール基、F、Cl、BrまたはIから選択され、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
で表される、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記コバルト錯体が、式(II−a1):
【化5】

(式中、Zは、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオン性配位子である。)
で表される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記両末端ジエポキシド化合物が式(IV)で表される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【化6】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2〜18の整数)
【請求項6】
前記エポキシド化合物がプロピレンオキシドである、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
[R84N]+、[R84P]+、[R83P=N=PR83+(式中、R8は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)および式(III):
【化7】

(式中、R9は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基であり、R10は、イミダゾリウム環の炭素上の0〜3個の置換基であって、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基もしくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6〜20のアリール基である。)からなる群から選択されるリンおよび/または窒素を含むカチオンと、F-、Cl-、Br-、I-、N3-、脂肪族カルボキシラート、芳香族カルボキシラート、アルコキシド、およびアリールオキシドからなる群から選択されるアニオンとの塩からなる助触媒を、前記コバルト錯体と組み合わせた触媒システムを用いて共重合を行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法によって得られる、架橋脂肪族ポリカルボナート。
【請求項9】
エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびそれらの組み合わせの中から選択されるエポキシド化合物ならびに二酸化炭素からなるカルボナート単位と、両末端ジエポキシド化合物および二酸化炭素からなる架橋カルボナート単位とを含む、架橋脂肪族ポリカルボナート。
【請求項10】
前記両末端ジエポキシド化合物が式(IV)で表される、請求項9に記載の架橋脂肪族ポリカルボナート。
【化8】

(式中、Xはそれぞれ独立して水素原子またはフッ素原子、nは2〜18の整数)
【請求項11】
前記エポキシド化合物がプロピレンオキシドである、請求項9または10のいずれかに記載の架橋脂肪族ポリカルボナート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102343(P2011−102343A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256954(P2009−256954)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】