説明

生体信号送信装置および生体信号送信方法

【課題】低消費電力で被験者の姿勢変化時にも安定した生体情報送信を実現する。
【解決手段】被験者に接触して配置される第1計測電極部2、第2計測電極部3および基準電極部4と、第1計測電極部2および第2計測電極部3に近接した位置にそれぞれ配置される第1アンテナ8および第2アンテナ9と、第1計測電極部2および基準電極部4の計測電位差である第1生体信号と、第2計測電極部3および基準電極部4の計測電位差である第2生体信号とのうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、第1計測電極部2および第2計測電極部3のいずれか一方に近接したアンテナを、第1アンテナ8および第2アンテナ9から選択するアンテナ選択部6と、第1生体信号および第2生体信号を、アンテナ選択部6が選択したアンテナから受信器10に対して送信する送信部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を計測し、計測した生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置等に関する。より具体的には、本発明は、被験者の身体状態を反映する生体信号を長時間にわたり連続的にワイヤレスで計測する場合に、被験者の動き又は状態によらず、安定して生体信号が送信できる生体信号送信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被験者の身体状態を反映する生体信号を長時間にわたりワイヤレスで計測する技術の開発が進んでいる。従来、被験者の生体信号を長時間にわたり計測する時には、被験者を病院等に入院させ、センサ類を被験者の身体に装着すると共に、被験者を安静状態にした上で、生体信号を計測している。しかしながら、通信デバイスおよび計測デバイスの技術の進化により、これらのデバイスの小型化、ワイヤレス化および低消費電力化が進み、病院外での簡易計測も可能になってきた。これにより、入院時の身体状態の急変に備えた身体状態のモニタリングから、家庭等での身体状態のモニタリングに生体信号計測技術の応用範囲が広がりつつある。
【0003】
身体状態のモニタリングにおいて想定される計測項目は、例えば脳波、眼電位、筋電位、心電図波形、体温、血中酸素濃度および血糖値等多岐にわたっている。生体信号の長時間の計測により、被験者の現在の病状だけでなく、被験者の健康状態、病気の進行度合い、病気になりそうかどうかまで把握が可能になる。
【0004】
生体信号を長時間計測する際に、被験者が安静状態を維持するのは困難である。例えば、被験者の就寝時には、寝返り等の体動が生じる。このような体動の影響により、生体信号を送信するアンテナが寝具と被験者の身体との間に挟まれて押し付けられるなどすることによりアンテナが被験者等により遮蔽されると、生体信号の受信器への伝播が妨害される。その結果、受信器において、生体信号を受信することができないという問題が生じる。そのような問題を解決するために、特許文献1の送信システムでは、複数のアンテナから同一の生体信号を送信する。これにより、いずれかのアンテナが被験者等により遮蔽されたとしても、他のアンテナから受信器に生体信号を送信することができ、受信器は生体信号を受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4453866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の送信システムは、複数のアンテナから同一の生体信号を送信している。このため、単一のアンテナから生体信号を送信する場合に比べて、消費電力が大きくなるという課題がある。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、低消費電力で連続して生体信号を送信することができる生体信号送信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に係る生体信号送信装置は、被験者の生体信号を計測し、計測した前記生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置であって、被験者の第1位置に接触して配置され、前記第1位置における前記被験者の電位を計測する第1計測電極部と、前記第1位置とは異なる前記被験者の第2位置に接触して配置され、前記第2位置における前記被験者の電位を計測する第2計測電極部と、前記第1位置および前記第2位置とは異なる前記被験者の第3位置に接触して配置され、前記第3位置における前記被験者の電位を計測する基準電極部と、前記第1計測電極部に近接した位置に配置される第1アンテナと、前記第2計測電極部に近接した位置に配置される第2アンテナと、前記第1計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第1生体信号と、前記第2計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第2生体信号とに基づいて、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナのいずれか一方を選択するアンテナ選択部と、前記第1生体信号および前記第2生体信号を、前記アンテナ選択部が選択したアンテナから前記受信器に対して送信する送信部とを備え、前記アンテナ選択部は、前記第1生体信号および前記第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部のいずれか一方に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する。
【0009】
この構成によると、第1計測電極部と第1アンテナとが近接した位置に配置され、第2計測電極部と第2アンテナとが近接した位置に配置される。このため、各計測電極部の測定結果と各アンテナの通信状態とを相関させることができる。よって、時間変動(時間的な変動)が少ないほうの生体信号の算出の基となる電位を計測したアンテナを選択し、選択した単一アンテナから生体信号を送信することができる。このため、複数のアンテナから同時に生体信号を送信する場合に比べ、低消費電力で連続して生体信号を送信することができる。また、選択したアンテナは通信状態が良好なアンテナである。このため、安定して生体信号を送信することもできる。
【0010】
なお、本発明は、このような特徴的な処理部を備える生体信号送信装置として実現することができるだけでなく、生体信号送信装置に含まれる特徴的な処理部が実行する処理をステップとする生体信号送信方法として実現することができる。また、生体信号送信装置に含まれる特徴的な処理部としてコンピュータを機能させるためのプログラムまたは生体信号送信方法に含まれる特徴的なステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなプログラムを、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体やインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体信号送信装置によれば、生体信号送信装置と受信器の位置関係がどのような場合であっても計測された生体信号を解析することによって適切なアンテナを選択することができ、選択されたアンテナから生体信号が送信されるため、低消費電力による長時間計測と、安定した生体信号の送信が両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明者らが実施したデータ送信実験における送信器と受信器の位置関係を示す図
【図2】本願発明者らが実施した実験における各送信器の位置での通信エラー発生数を示す図
【図3】(a)国際10−20法の電極部位置を示す図、(b)本願発明者らが実施した実験における電極部位置を示す図
【図4】睡眠時に計測された生体信号の例を示す図
【図5】本発明の実施の形態1に係る生体信号送信装置の構成を示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る生体信号送信装置の実現形態を示す図
【図7】本発明の実施の形態1に係る生体信号送信装置のハードウェア構成を示す図
【図8】従来の生体信号送信装置と実施の形態1に係る生体信号送信装置との実現形態の違いを示す図
【図9】生体信号送信装置が実行する処理のフローチャート
【図10】寝ている姿勢の違いによる第1アンテナおよび第2アンテナと受信器の位置関係を説明するための図
【図11】生体信号送信装置の動作例を説明するための図
【図12】体動発生および電極部ずれ発生の判定方法を説明するための図
【図13】本発明の実施の形態1の変形例に係る生体信号送信装置の構成を示す図
【図14A】本発明の実施の形態2に係る生体信号送信装置および受信器の装着例を示す図
【図14B】本発明の実施の形態2に係る生体信号送信装置の実現形態を示す図
【図15】(a)被験者が立っているときの計測例を示す図、(b)被験者がデスクワークをしているときの計測例を示す図
【図16】本発明の実施の形態2の動作例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。本発明は、特許請求の範囲だけによって限定される。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。
【0014】
本発明の一実施態様に係る生体情報送信装置は、被験者の生体信号を計測し、計測した前記生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置であって、被験者の第1位置に接触して配置され、前記第1位置における前記被験者の電位を計測する第1計測電極部と、前記第1位置とは異なる前記被験者の第2位置に接触して配置され、前記第2位置における前記被験者の電位を計測する第2計測電極部と、前記第1位置および前記第2位置とは異なる前記被験者の第3位置に接触して配置され、前記第3位置における前記被験者の電位を計測する基準電極部と、前記第1計測電極部に近接した位置に配置される第1アンテナと、前記第2計測電極部に近接した位置に配置される第2アンテナと、前記第1計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第1生体信号と、前記第2計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第2生体信号とに基づいて、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナのいずれか一方を選択するアンテナ選択部と、前記第1生体信号および前記第2生体信号を、前記アンテナ選択部が選択したアンテナから前記受信器に対して送信する送信部とを備え、前記アンテナ選択部は、前記第1生体信号および前記第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部のいずれか一方に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する。
【0015】
この構成によると、第1計測電極部と第1アンテナとが近接した位置に配置され、第2計測電極部と第2アンテナとが近接した位置に配置される。このため、各計測電極部の測定結果と各アンテナの通信状態とを相関させることができる。よって、時間変動が少ないほうの生体信号の算出の基となる電位を計測したアンテナを選択し、選択した単一アンテナから生体信号を送信することができる。このため、複数のアンテナから同時に生体信号を送信する場合に比べ、低消費電力で連続して生体信号を送信することができる。また、選択したアンテナは通信状態が良好なアンテナである。このため、安定して生体信号を送信することもできる。
【0016】
好ましくは、前記アンテナ選択部は、(i)第1所定時間における、前記第1生体信号の最大振幅および前記第2生体信号の最大振幅のいずれもが第1閾値よりも大きく、かつ(ii)前記第1所定時間よりも後の第2所定時間における、前記第1生体信号の平均値と前記第2生体信号の平均値との差分の絶対値が第2閾値よりも大きい場合に、平均値が小さいほうの生体信号の算出の基となる電位を計測した電極部に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する。
【0017】
(i)の判断条件を満たす場合には、両方の生体信号に体動によるノイズが混入したと考えることができる。(ii)の判断条件を満たす場合には、平均値が大きいほうの生体信号に電極部がずれることによるノイズが混入したと考えることができる。このため、体動と電極部ずれを判断することができ、被験者が様々な姿勢をとったとしても、電極部ずれが起こっていない送信状態の良好なアンテナを選択することができる。よって、常に最小の送信電力で生体信号の連続送信が可能になる。
【0018】
さらに好ましくは、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部は、それぞれ、前記被験者の左および右のこめかみ周辺に配置され、前記被験者の眼電位を計測する。
【0019】
この構成によると、睡眠時の被験者の眼電位を計測することができ、睡眠時に被験者が様々な姿勢をとったとしても、電極部ずれが起こっていない送信状態の良好なアンテナを選択することができる。
【0020】
さらに好ましくは、前記受信器は、前記被験者が寝ている場所の上方の天井付近に設置される。
【0021】
また、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部は、それぞれ、前記被験者のいずれかの手首の手の平側および手の甲側に設置され、前記被験者の皮膚電位を計測しても良い。
【0022】
上記位置に電極部を配置することで、立っている姿勢や、座って机の上に手を置いている姿勢など様々な姿勢を取った場合であっても、電極部ずれが起こっていない送信状態の良好なアンテナを選択することができる。よって、常に最小の送信電力で生体信号の連続送信が可能になる。
【0023】
好ましくは、前記受信器は、前記第1計測電極部及び前記第2計測電極部が設置された手首と同じ側の腰付近に設置される。
【0024】
本発明の他の実施形態に係る生体情報送信システムは、上述の生体信号送信装置と、前記受信器とを備える。
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る生体信号送信装置の各実施形態を説明する。
【0026】
本発明による生体信号送信装置の技術的ポイントは、ウェアラブル型の生体モニタリング装置において、被験者の身体状態の変化(体動)に応じて、生体信号を送信するアンテナを切り替えることである。これにより、ロバストな通信が可能になる。生体信号送信装置の構成の説明に先立ち、本願発明者らが実施した実験とその実験結果を説明し、得られた実験データから見出した、被験者に貼付されたウェアラブル型センサの生体信号と通信品質の特性について説明する。
【0027】
本願発明者らは以下の2つの実験を行った。一つ目は被験者に貼付された送信器(アンテナ)の通信品質についての実験であり、もう一つは、被験者に貼付された生体電位センサによる計測信号の品質についての実験である。以下、順に説明する。
【0028】
(ウェアラブルセンサにおける通信品質実験)
まずウェアラブルセンサにおける通信品質の検証実験を行った。実験には本願発明者らが試作中のウェアラブルセンサを用いた。ウェアラブルセンサは複数チャンネルの生体電位変化が計測可能であり、例えば睡眠状態のモニタリングに使う場合には、脳波計測や眼電位の計測に用いられる。計測された信号は、AD変換後に、通信チップを介して受信器に向けてデータ送信される。通信チップは超低消費電力型のnRD24L01+(Nordic Semiconductor社製)であり、出力は0dBm(1mW)、見通し状況においては10m以上の通信が可能な性能を有している。
【0029】
図1に、通信品質の検証実験における送信器22と受信器21の位置関係を示す。受信器21から1mのところに身体があるとする。身体の前後左右50cmの距離の8箇所と、身体の前後左右に密着する4箇所との計12箇所に送信器22を配置した。
【0030】
これらの送信器22と受信器21の位置関係を維持した状態で10秒間のデータ送信を行い、その通信エラー発生数をカウントした。センサ部のサンプリングレートは1024Hzであり、サンプリング1回ごとに25バイトのデータが生成され、データ送信周期は1秒間に512回であった。受信器21側では、サンプリングごとのデータが正しく受信されたかが確認され、正しく受信されなかった場合のエラー発生数をカウントした。通信状況は、計測ごとに変動するために、各場所で複数回の計測を行い、特に通信状況が悪い位置では10回程度の計測を行い、その平均エラー発生数を算出した。
【0031】
通信エラーの発生頻度の概数を図2に示す。丸印が送信器22の位置を示し、ハッチングの違いがエラー発生数の違いを示す。白丸23はエラーが発生しなかった送信器22の位置を示している。網掛け丸24はエラー発生数が平均220回程度であった送信器22の位置を示している。黒丸25はエラー発生数が平均1400回程度であった送信器22の位置を示している。図2より、見通し状態において10m以上の通信が可能な通信チップを使用した場合に、送信器22と受信器21が見通せている場所ではエラーは発生しない。しかし、送信器22と受信器21の間に身体が挟まった場合には、通信品質が悪化することがわかる。
【0032】
特に、ウェアラブルセンサを用いることを想定した黒丸25の位置では、身体が障害となって通信品質が維持できない。サンプリングレートが1024Hzで10秒間のデータ送信が行われる。このため、10000回程度のデータ送信のうち、1割以上のデータが欠落して、モニタリングが安定してできていないと言える。
【0033】
このようにウェアラブルセンサを用いる状況では、ウェアラブルセンサが身体に近接しているために通信品質が著しく悪化する場合があることがわかる。
【0034】
(ウェアラブルセンサにおける生体信号品質実験)
次に、生体信号の特性を見るための評価実験を行った。睡眠時の生体信号計測を想定して、脳波と眼電位の同時計測を行った。脳波計測のために、国際10−20法におけるC3、C4の位置に計測電極部を設置し、眼電位計測のために、左右こめかみ部に計測電極部(EOG1、EOG2)を設置した。図3に電極部位置を示す。図3(a)は、国際10−20法における電極部位置を示す。C3、C4は頭頂部周辺の位置である。また図3(b)は、実験で使用した電極部位置を示す。上面から見えるC3(位置301)、C4(位置302)が電極部位置である。また、正面から見えるEOG1(位置303)、EOG2(位置304)が電極部位置である。さらに、右マストイド(位置305)が基準電極部の位置であり、左マストイド(位置306)がアースの位置である。
【0035】
被験者は就寝前に上記各位置に電極部を装着し、起床までの電位の連続計測を行った。通信品質の影響を受けていない状況での生体信号の特性を把握するために、計測は有線の脳波計で行った。
【0036】
図4は睡眠時の生体信号の例を示す。本データは、被験者の体動時の振幅も表示できるよう1000μVレベルの振幅も表現可能な縮尺で表示している。頭部(C3)は、C3(位置301)で計測された電位を示し、頭部(C4)は、C4(位置302)で計測された電位を示す。眼電(右)は、EOG1(位置303)で計測された電位を示し、眼電(左)は、EOG2(位置304)で計測された電位を示す。
【0037】
図4(a)に、体動のない安静状態で計測された電位を示す。縮尺を小さくしているので、電位の変動がほぼ直線的に描かれているが、実際には数十マイクロボルトの電位の変動が記録されている。この変動の中から、脳波の周波数解析や眼球運動の解析等が実施され、この状況で得られたデータが生体信号モニタリングで必要とされる情報である。
【0038】
図4(b)には、体動が生じた場合の電位を示す。体動時には、安静時と比べると首または上半身の各種筋肉が活動し、筋電位が各電極部の計測電位に混入する。このため、脳波または眼電位と比較してかなり大きな電位差が発生する。それらの影響は頭部または顔面部にも及ぶため、それぞれの電極部位置からも、それぞれの影響が数百μV以上の信号変化として計測される。この状況は、生体信号計測からすると大きなノイズの混入区間であり、従来は解析不可能な不要な情報として除去されていた。しかし、通信品質の変化タイミングを示す有意義な情報として使用可能であると本願発明者は考えた。
【0039】
図4(c)に、特に寝返りのときに左の眼電位の状況が良くない場合の例を示す。寝返り等によってどの電極部にも大きな変動が観測される。眼電位(右)については、最初に変動が見られた後はすぐに安定的に情報が取得できている。これに対して、眼電位(左)については、長い間変動が続いている。この変動は、図4(b)のように全体に同じだけのノイズが混入した場合とは異なり、寝返りによって、左側の顔を下にして寝る体勢に変化したと考えられる。それは、眼電位(右)は最初の変動後に安定しているが、眼電位(左)は頭部が枕に押し当てられることにより何度か変動を繰り返していることから分かる。計測信号の特性として、電極部をなんらかの形で押さえたりずらしたりする場合には、一時的にインピーダンスが変動して大きな信号変化が見られる。しかし、電極部ずれが収まると、また計測可能な状態に戻る性質がある。眼電位(左)が変動を繰り返しているのは、頭部が枕に押し当てられ、頭部が動くことにより、しばらくの間インピーダンスが変動するからである。
【0040】
以上のように、ウェアラブルセンサによる睡眠モニタリングで発生する信号品質の歪みは、体動による筋電位の混入により計測電極部全体に影響を及ぼすものと、体動により電極部が寝具等に圧迫され、電極部と皮膚の位置関係が変化すること(電極部ずれ)による、特定の計測電極部のみに影響が現れるものの両方から構成されている。これらの歪みは寝返りに連動して発生することが明らかになった。
【0041】
本願発明者らは、ウェアラブルセンサによる睡眠モニタリングを行っている状況において、寝返り等により送信器と受信器の位置関係が変化することにより計測状況の悪化が発生することを発見した。また、その計測状況の悪化時の計測信号を分析することにより、寝返りの発生タイミングを検出し、電極部ずれが発生した電極部を特定することができることを発見した。この着眼に基づいて、各計測電極部と近接した場所に、送信部もしくはアンテナを設置することで、計測電極部の状況と通信状況が関連付けられることに想到した。これによって、送信器と受信器の位置関係が適切となっているアンテナを選択し、選択したアンテナから生体信号を送信することにより、低消費電力を維持しながら通信が継続できると考えた。
【0042】
以下、この着想に基づく生体信号送信装置の構成、処理の詳細等について図面を用いながら説明する。
【0043】
(実施の形態1)
図5に、実施の形態1に係る生体信号送信システムの機能的な構成を示す。生体信号送信システムは、生体信号送信装置20と、生体信号送信装置20から送信される生体信号を受信する受信器10とを含む。
【0044】
生体信号送信装置20は、被験者1の身体に装着され、被験者1の生体信号を連続的に計測しながらその信号を連続的に受信器10に対して送信し続ける機能を持っている。ここでは、生体信号計測装置20は、2つの計測電極部を有し、その2つの計測電極部から得られる情報を連続して受信器10に対して送信するものとする。
【0045】
生体信号送信装置20は、第1計測電極部2と、第2計測電極部3と、基準電極部4と、生体信号増幅部5と、アンテナ選択部6と、送信部7と、第1アンテナ8と、第2アンテナ9とを含む。
【0046】
第1計測電極部2、第2計測電極部3および基準電極部4は、被験者1の身体に装着される。つまり、第1計測電極部2は、被験者1の第1位置に接触して配置され、第1位置における被験者1の電位を計測する。第2計測電極部3は、第1位置とは異なる被験者1の第2位置に接触して配置され、第2位置における被験者1の電位を計測する。基準電極部4は、第1位置および第2位置とは異なる被験者1の第3位置に接触して配置され、第3位置における被験者1の電位を計測する。これらの電極部は、生体信号増幅部5に接続されている。
【0047】
生体信号増幅部5は、基準電極部4と第1計測電極部2との計測電位の電位差である第1生体信号を増幅する。また、生体信号増幅部5は、基準電極部4と第2計測電極部3との計測電位の電位差である第2生体信号を増幅する。生体信号増幅部5は、内蔵するAD変換部を用いて、増幅した第1生体信号および第2生体信号をデジタル信号に変換する。
【0048】
第1アンテナ8は、第1計測電極部2に近接した位置に配置される。第2アンテナ9は、第2計測電極部3に近接した位置に配置される。
【0049】
アンテナ選択部6は、生体信号増幅部5で生成された第1生体信号と第2生体信号を受信する。アンテナ選択部6は、第1生体信号と、第2生体信号とに基づいて、第1アンテナ8および第2アンテナ9のいずれか一方を選択する。つまり、アンテナ選択部6は、第1生体信号および第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、第1計測電極部2および第2計測電極部3のいずれか一方に近接したアンテナを、第1アンテナ8および第2アンテナ9から選択する。
【0050】
送信部7は、生体信号増幅部5から第1生体信号および第2生体信号を受信し、受信した第1生体信号および第2生体信号を、アンテナ選択部6が選択したアンテナから受信器10に対して送信する。
【0051】
このような構成により、身体動作が生じた場合であっても安定した生体信号の送信が可能になる。
【0052】
図6に、生体信号送信装置20の実現形態の例を示す。図6は、左右の眼電位計測により簡易に睡眠の品質を評価するための生体信号送信装置20の実現形態の一例を示している。
【0053】
被験者1は、生体信号送信装置20を頭部に装着する。生体信号送信装置20は、睡眠時の左右の眼球運動を計測する。睡眠時の眼球運動は、睡眠時に周期的に現れるとされるレム睡眠(REM Sleep:Rapid Eye Movement Sleep)とノンレム睡眠の計測に用いられる。急速眼球運動(REM)が、規則正しく見られるかどうかによって睡眠の質の判定が可能である。
【0054】
図6の生体信号送信装置20は、ヘッドバンド型の筐体に各種装置が組み込まれた一体型の装置である。被験者1は頭部にヘッドバンド型の生体信号送信装置20を巻きつけることにより、生体信号送信装置20を容易に装着することができる。図5に示した生体信号送信装置20の構成要素に対応する構成要素には同一の参照符号を付した上で、図6の生体信号送信装置20の構成について説明する。全ての構成要素はヘッドバンドに組み込まれた形態で実現される。生体信号送信装置20が計測する生体信号は左右の眼電位である。このため、第1計測電極部2と第2計測電極部3は、それぞれ左右の目のこめかみ部の近辺、例えば、図6においてはこめかみ部の少し上に装着される。計測電極部による計測信号とアンテナからの送信状態とを相関させるために、計測電極部とアンテナ部は近接している必要がある。例えば、計測電極部とアンテナは一体化して構成されてもよい。基準電極部4は、被験者1の顔面中央部に設置され、左右の目の動きが均等に眼電位として計測されるようにしてあればよい。また、アースとして他の電極部が設置されているのが望ましく、各計測電極部から離れている場所に設置されると良い(図示せず)。その他の処理部である、生体信号増幅部5、アンテナ選択部6および送信部7は、一体化して設置される。これらの処理部に関しては、特定の場所の制約はなく、配線やデザインの都合で任意に設置してよい。このような構成により、被験者1はケーブル等にわずらわされることなく、睡眠中の生体信号を送信し続けることができる。
【0055】
次に、図7に実施の形態1に係る生体信号送信装置20のハードウェア構成を示す。生体信号送信装置20は、生体計測部50と、信号処理部60と、送信処理部70とを備える。
【0056】
各処理部は、バス101を介して相互に接続され、相互にデータの授受を行う。また、各処理部には、バッテリ部100から電力が供給される。
【0057】
生体計測部50は、第1計測電極部2と、第2計測電極部3と、基準電極部4と、生体アンプ5aと、AD変換部5bとを含む。
【0058】
信号処理部60は、CPU6aと、RAM6bと、ROM6dとを含む。
【0059】
送信処理部70は、第1アンテナ8と、第1アンテナ8と第2アンテナ9と、送信部7とを含む。
【0060】
生体アンプ5aおよびAD変換部5bが、図5の生体信号増幅部5を構成する。生体アンプ5aには第1計測電極部2と第2計測電極部2と基準電極部4が接続され、これらの電極部は被験者1の頭部に装着されている。生体アンプ5aは、基準電極部4と、第1計測電極部2および第2計測電極部3の各々との間の電位差である第1生体信号および第2生体信号を増幅する。AD変換部5bは、生体アンプ5aで増幅された後のアナログの第1生体信号および第2生体信号をデジタル信号に変換する。AD変換部5bは、デジタルの第1生体信号および第2生体信号を、各種処理または送信可能な生体信号として、バス101を経由してCPU6aに送信する。
【0061】
CPU6aは、RAM6bに格納されているコンピュータ実行可能なプログラム6cを実行する。プログラム6cには、後述するフローチャートに示される処理手順が記述されている。CPU6aは、このプログラム6cに従って、生体計測部50のAD変換部5bより出力されるデジタルの第1生体信号および第2生体信号を解析し、適切なアンテナを選択する。なお、プログラム6cはROM6dに格納される場合もある。信号処理部60が、図5のアンテナ選択部6を構成する。
【0062】
送信処理部70に含まれる送信部7は、CPU6aから受け取った第1生体信号および第2生体信号を、第1アンテナ8または第2アンテナ9から送信する。どちらのアンテナから両生体信号を送信するかは、信号処理部60にて判定されている。
【0063】
なお、信号処理部60と送信部7と生体アンプ5aとAD変換部5bとは、1つの半導体回路にコンピュータプログラム組み込んだDSP(Digital Signal Processor)等のハードウェアとして実現されてもよい。これらを一つの半導体回路で構成することにより、消費電力が低減される効果が得られる。また、第1アンテナ8と第1計測電極部2、および第2アンテナ9と第2計測電極部3は、それぞれ近接している必要がある。計測電極部とアンテナとが近接することにより、計測された生体信号の特性と送信状態とが関係づけられる。つまり、生体信号が安定している場合には、送信状態が安定していると関係付けることができ、生体信号が乱れている場合には、送信状態も乱れていると関係付けることができる。
【0064】
図8に、参考までに回路構成レベルでの従来との比較を示す。図8(a)は、従来の一般的な生体信号送信装置の回路構成を示し、図8(b)は、本発明の実施の形態1に係る生体信号送信装置20の回路構成を示す。従来と異なる部分は、アンテナが2本になっており、CPU6aが、2つの生体信号を解析し、解析結果に応じて、2つの生体信号を送信すべきアンテナを切り替える構成になっている。アンテナ切り替え処理について以下に具体例を示しながら説明する。
【0065】
図9は、本実施の形態に係る生体信号送信装置20が実行する処理のフローチャートである。また、図10に、被験者1の睡眠時の体勢の違いによる第1アンテナ8および第2アンテナ9と受信器10との位置関係の違いを図示する。
【0066】
以下の説明では最初に図10(a)のように、被験者1が上を向いて寝ていて、途中に図10(b)のように、被験者1が横を向いて寝る体勢に変わり、再度、図10(a)の体勢に戻る場合を想定して説明する。図10(a)の被験者1の体勢を体勢Aとし、図10(b)の被験者1の体勢を体勢Bとして説明する。また、受信器10は天井付近に設定され、生体信号の計測開始時点では、各アンテナと受信器10との間にはなるべく遮蔽物がなく、互いに見通せる場所に置かれているものとする。
【0067】
また、図11には、計測された第1生体信号および第2生体信号の変化の事例(第1生体信号41、第2生体信号42と記載、信号は仮想的に生成)と、そのときの送信状況の良し悪し(第1生体信号の送信状況43、第2生体信号の送信状況44)と、アンテナの選択結果45とを示す。アンテナの選択結果45は、初期状態では第1アンテナ8であるものとする。また、ここでは、生体信号として眼電位を想定しているが、生体信号は眼電位に限定されるものではない。
【0068】
図9を参照して、ステップS10において、生体信号増幅部5は、基準電極部4と第1計測電極部2との計測電位の電位差である第1生体信号を増幅する。また、生体信号増幅部5は、基準電極部4と第2計測電極部3との計測電位の電位差である第2生体信号を増幅する。生体信号増幅部5は、内蔵するAD変換部を用いて、増幅した第1生体信号および第2生体信号をデジタル信号に変換する。生体信号が眼電位または脳波であれば、電位差として、数μVから数百μV程度の値が想定される。
【0069】
ステップS22では、アンテナ選択部6が、第1生体信号および第2生体信号のそれぞれについて、最大振幅を取得する。最大振幅は、過去の所定の時間区間(第1所定時間)、例えば5秒間における生体信号の最大値と最小値との差の絶対値を計算することにより取得される。最大振幅の単位はμVで表現される。
【0070】
ステップS23では、アンテナ選択部6が、第1生体信号および第2生体信号のそれぞれの最大振幅に基づいて、被験者1の体動が発生したか否かを判定する。体動は、例えば、図10にて上向きに寝ている体勢Aから横向きに寝ている体勢Bに寝返りをした場合、体勢Bから体勢Aに寝返りをした場合などに発生する。通常の眼電位の範囲は、200μV以下であるのに対し、体動変化が生じた場合には500μVから2000μV程度のノイズが混入する。このため、この大きさの違いが生体信号の計測状態を判断する基準となる。例えば、第1閾値を300μVと設定し、第1生体信号および第2生体信号の両方の最大振幅が第1閾値を超えた場合にのみ、体動が発生したと判定すればよい。体動は、大きな筋肉の活動等に由来して、広範囲に影響が及ぶと考えられるからである。
【0071】
なお、第1閾値は、実験条件、電極部材料、電極部位置、および電極部の装着方法によって変化すると想定される。このため、生体信号送信装置20の具体的な構成によって設定し直すのが望ましい。
【0072】
体動が発生したと判断された場合には(ステップS23でYES)、ステップS24に進み、体動が発生したと判断されていない場合には(ステップS23でNO)、ステップS60に進む。
【0073】
ステップS24では、アンテナ選択部6は、第1生体信号および第2生体信号を比較する。つまり、アンテナ選択部6は、左右の眼電位である第1生体信号および第2生体信号の平均値の差分の絶対値を算出する。平均値は、現在の時刻までの過去の所定の時間(上記第1所定時間よりも後の第2所定時間)、例えば過去1秒間における生体信号の平均値によって求められる。所定の時間は眼電位もしくは脳波等の変動の性質、または電極部が動いた場合のノイズの性質によって決定される。例えば、所定の時間を5秒間とすることにより、より長周期のノイズの影響も考慮した比較処理が可能になる。
【0074】
ステップS25では、アンテナ選択部6は、ステップS24での比較結果に基づいて、電極部ずれが発生しているか否かを判定する。つまり、アンテナ選択部6は、第1生体信号および第2生体信号の平均値の差分の絶対値が第2閾値よりも大きい場合に、電極部ずれが発生していると判定する。
【0075】
ここで、体動が生じる場合には次の2通りの状況が考えられる。一つは体動のみ発生して電極部ずれ(電極部と皮膚の位置関係の変動)は発生しなかった場合である。もう一つは、体動と電極部ずれが両方とも発生した場合である。前者の場合には、計測された生体信号に、体動の動きの影響によるノイズのみが混入する。このため、第1生体信号と第2生体信号とで同程度の生体信号の変動が観測される。これに対して、後者の場合には、計測された生体信号に、体動と電極部ずれの両方の影響が現れ、特定の生体信号についてはもう一方より変動が大きくなると想定できる。例えば、図10(a)の体勢Aから図10(b)の体勢Bに被験者1の体勢が変わった場合を想定する。この場合には、体動の影響は、第1計測電極部2および第2計測電極部3の両方に生じるため、体動の影響によるノイズは第1生体信号および第2生体信号の両方に混入する。また、電極部ずれの影響は、被験者1と枕との間に挟まれる第2計測電極部3にのみ生じるため、電極部ずれの影響によるノイズは第2生体信号のみに混入する。その逆に体勢Bから体勢Aに変わった場合には体動の影響のみが発生すると想定される。この状況の違いに基づいて、アンテナ選択部6は、ステップS24における生体信号の比較結果である第1生体信号および第2生体信号の平均値の差分の絶対値が、第2閾値、例えば200μV以下の場合には、体動のみが発生していると判定する。また、アンテナ選択部6は、上記差分の絶対値が第2閾値よりも大きい場合には、体動と電極部ずれとの両方が発生していると判定する。また、アンテナ選択部6は、電極部ずれが発生している場合には、第1生体信号および第2生体信号のうち、平均値が大きいほうの生体信号の算出の基となる電位を計測した電極部において電極部ずれが発生していると判断する。
【0076】
電極部ずれが発生している場合には(ステップS25でYES)、ステップS26に進み、電極部ずれが発生していない場合には(ステップS25でNO)、ステップS60に進む。
【0077】
なお、第2閾値は、実験条件、電極部材料、電極部位置、および電極部の装着方法によって変化すると想定される。このため、生体信号送信装置20の具体的な構成によって設定し直すのが望ましい。
【0078】
ステップS26では、アンテナ選択部6は、第1生体信号および第2生体信号の送信に用いるべきアンテナを決定する。すでにステップS25で電極部ずれの発生したほうの計測電極部はすでに求められており、その計測電極部に近接するアンテナは送信状態が悪いと考えられる。このため、アンテナ選択部6は、もう一方のアンテナを、送信に用いるべきアンテナとして決定する。例えば、図10(b)に示すように被験者1の左側面が下になる寝返りが発生した場合、第1計測電極部2に電極部ずれが発生し、第1生体信号にノイズが混入する。それと共に、第1計測電極部2に近接した第1アンテナ8は、枕と頭部との間に遮蔽され、天井付近の受信器10との通信状態の悪化が想定される。このため、アンテナ選択部6は、電極部ずれが発生していない第2計測電極部3に近接した第2アンテナ9を選択する。
【0079】
ステップS27では、アンテナ選択部6は、ステップS26で選択したアンテナに応じて、アンテナ切り替えが必要かどうかを判定する。つまり、選択したアンテナを既に使用して第1生体信号および第2生体信号を受信器10に送信している場合には、アンテナ選択部6は、アンテナの切り替えが不要であると判定し、選択したアンテナ以外のアンテナを使用して上記生体信号を受信器10に送信している場合には、アンテナの切り替えが必要であると判定する。アンテナの切り替えが必要であると判定した場合には(ステップS27でYES)、ステップS28に進み、アンテナの切り替えが不要であると判定した場合には(ステップS27でNO)、ステップS60に進む。
【0080】
ステップS28では、アンテナ選択部6が、ステップS26で選択したアンテナへのアンテナ切り替えを実行する。具体的には、アンテナ選択部6は、送信部7に対して、現在送信に使用しているアンテナとは異なるアンテナを使用させるための制御信号を出力する。制御信号を受け取った送信部7は、現在送信に使用しているアンテナとは異なるアンテナに、各生体信号を送信するアンテナを切り替える。
【0081】
以上説明した体動発生および電極部ずれ発生の判定方法を図12を用いて再度説明する。図12(a)および図12(b)は、第1生体信号および第2生体信号をそれぞれ示しており、図12(c)は、第1生体信号および第2生体信号の所定の時間毎の平均値の差分の絶対値を示している。各生体信号には、最大振幅が大きくなる箇所が2箇所あり、両箇所において、最大振幅が第1閾値を超えている。このため、両箇所において体動が生じていると判断される。また、差分の絶対値に着目すると、前半箇所においては差分の絶対値が第2閾値を下回っている。このため、前半箇所においては電極部ずれは生じていないと判断される。しかし、後半箇所においては、最大振幅が第1閾値を越えた後に、差分の絶対値が第2閾値を上回っている。このため、後半箇所において、電極部ずれが生じていると判断される。
【0082】
実施の形態1では、アンテナ選択部6の動作をサンプリング周期ごとに行う方式について説明したが、生体信号の時間変動が大きくなる場合には、複数周期の信号を継続的に観測して判断がなされる場合も多い。例えばサンプリング周波数が1024Hzであれば、1秒間に1000回以上、送信アンテナの判定が行われるが、体動は1秒から数秒間続くことも考えられるので、長時間の生体信号の時系列変化を見て、ステップS23やステップS25の判定を行う手法も妥当である。これにより、頻繁に送信アンテナの切り替わりが生じるのを防ぐことができる。
【0083】
図11を用いてその動作例をさらに説明する。図11は、図6に示す睡眠時の眼電位をモニタリングするための生体信号送信装置20の動作例を示す。図11は上から順に、被験者1の左眼の眼電位信号である第1生体信号41、右眼の眼電位信号である第2生体信号42、第1生体信号の送信状況43、第2生体信号の送信状況44、アンテナ選択部6によって選択されているアンテナの選択結果45を示している。
【0084】
計測開始からの最初の区間では、被験者1は体勢Aであるとすると、第1生体信号の送信状況43も第2生体信号の送信状況44も、天井付近に設置された受信器10との通信は良好になる。また、アンテナの選択結果45としては、初期値として第1アンテナが選択されているとする。次に、寝返りタイミング31において上向きの体勢Aから横向きの体勢Bに変動した場合には、第1生体信号は、丸印32で囲った部分の波形のように変化し、筋電位の混入と共に、電極部ずれも発生する。このため、丸印33で囲った部分の第2生体信号の波形の変化と比較すると、振幅と総変動量が多くなっている。このため、両方の生体信号の振幅が第1閾値よりも大きくなることから体動発生と判定される(ステップS23)。また、その後の生体信号の比較処理により第1計測電極部2において電極部ずれが発生している判定される(ステップS25)。このため、生体信号の送信アンテナとして第2アンテナ9を使用することが決定される(ステップS26)。そして現在は第1アンテナが選択されており、第2アンテナへの切り替えが必要と判定され(ステップS27)、アンテナ切り替えが実施される(ステップS28)。これによって寝返り発生に連動したアンテナ切り替えが実現される(図11の丸印34におけるアンテナ切り替え)。
【0085】
同様の処理によって、体勢Bから体勢Aへの寝返りの発生タイミング35においては、体動が発生したと判定されるが、第1計測電極部2および第2計測電極部3のいずれにも電極部ずれは発生していないと判定されるため、アンテナ切り替えは必要なしと判定され、そのまま第2アンテナの選択が継続される(図11の丸印38においてアンテナ切り替えが行われない)。体勢Aにおいては、どちらのアンテナ位置でも送信状態は良好であるため、送信不良の問題は生じない。
【0086】
以上の処理によって、体動により混入するノイズと、電極部ずれにより混入するノイズを区別することで、送信状態が適切なアンテナを選択し続けられる。
【0087】
このような構成と処理によって、被験者1が寝返り等で様々な姿勢を取ったとしても、より適切な方のアンテナが選択されるため、常に最小の送信電力で生体信号の連続送信が可能になる。
【0088】
(実施の形態1の変形例)
次に、実施の形態1の変形例について説明する。送信部とアンテナとの間の距離が離れているとアンテナまでの配線にノイズが混入する可能性がある。このため、理想的には送信部とアンテナの距離は近い方が良い。この考え方に基づいた、本変形例に係る生体信号送信装置の構成を図13に示す。
【0089】
図13は、本発明の実施の形態1における生体信号送信装置の構成の別の形態である。図13に示す生体信号送信装置30は、図5に示した生体信号送信装置20の構成を変更したものであり、図5と同じブロックについては、同一の参照符号を付し、その説明は省略する。生体信号送信装置30は、生体信号送信装置20と異なり、送信部7の代わりに第1送信部7aおよび第2送信部7bを備える。第1送信部7aおよび第2送信部7bが第1アンテナ8および第2アンテナ9にそれぞれ近接して配置されている。
【0090】
この場合、アンテナ選択部6は、生体信号を送信すべきアンテナの選択に加えて、送信すべき生体信号の受け渡しも担当する。つまり、アンテナ選択部6は、生体信号を送信すべきアンテナとして第1アンテナ8を選択した場合には、生体信号増幅部5から受け取った生体信号を第1送信部7aに出力し、第2アンテナ9を選択した場合には、生体信号を第2送信部7bに出力する。
【0091】
第1送信部7aまたは第2送信部7bは、アンテナ選択部6から出力される制御信号に応答して、いずれか一方が起動され、アンテナからの送信処理が実行できるようになる。その後、起動した送信部は、当該送信部に対応するアンテナから生体信号を、受信器10に対して送信する。
【0092】
このような処理によって、送信部とアンテナの物理的な距離を最小限に抑えることで、アンテナまでの経路へのノイズ混入を抑えつつ、消費電力を低減したままた連続的に生体信号を送信することができる。
【0093】
なお、本実施の形態では、送信用のアンテナが、被験者1の体の一部に近接していることを想定している。また、設置されているアンテナの近辺に電極部を装着することで、被験者1の体勢の状態を、間接的に検出し、適切なアンテナを選択する。特に、体全体が動いた場合と、枕や衣服との接触により、電極部ずれが発生した場合とを区別して検出することができる。一方で、被験者1の体が枕等と接触したり、押し付けられたりすることで、血流量の変化等が発生することがある。例えば、頭が枕に押し付けられることで、血流量が減少し、頭部の一部分の体温が低下することがある。このため、アンテナが設置されている体の表面に、電極部だけでなく、血流量センサまたは体温センサを設置することで、アンテナが開放状態にあるか否かを、間接的に測定することが可能になる。
【0094】
なお、本実施の形態においては、計測電極部の個数が2つの場合の例について説明したが、計測電極部の個数が3つ以上の場合であっても同様の考え方を適用可能である。生体モニタリングにおいては、3つ以上の信号を取得する場合も多く、睡眠のモニタリングにおいても、脳波、眼電位または筋電位等を同時に記録することが行われる。
【0095】
(実施の形態2)
実施の形態1では、頭部に装着された睡眠時の眼電位計測の事例について説明したが、本実施の形態2においては、眼電位計測以外の事例として、手首に装着された皮膚電位センサによる皮膚電位計測について説明する。例えば、被験者1は、手首に超軽量の生体信号送信装置を装着し、ベルト等によって腰部に受信器を装着する。本構成によれば手の動きを制限せずに、手首の情報を連続的に送信することができる。腰部の受信器は例えば携帯電話機等によっても実現される。携帯電話機等は、常に被験者1に装着される場合が多いため、手、頭部、または胸部に設置された生体センサの受信器として利用可能である。
【0096】
皮膚電位は、皮膚表面の発汗状態等によって連続的に値が変化する。皮膚電位は、温冷感以外にも、精神的な疲労または緊張度合いを反映して変化する。この皮膚電位の変化を連続的にモニタすることで、精神的な健康状態が計測可能になる。実施の形態2では、睡眠時のように、被験者1が同じ場所に留まることは想定できないため、歩行を含めて、様々な日常生活に対応できる必要がある。
【0097】
図14Aに実施の形態2に係る生体信号送受信システムを構成する生体信号送信装置51および受信器52の装着例を示す。生体信号送信装置51は手首に装着され、受信器52は手首と同側の腰部に装着されているとする。こうすることで、生体信号送信装置51と受信器52の物理的な距離が近くなり、送信出力の低減が可能になる。
【0098】
図14Bには、生体信号送信装置51の実施形態を示す。生体信号送信装置51は、実施の形態1に係る生体信号送信装置20と同様の構成を有する。生体信号送信装置20がヘッドバンド型であったのに対し、生体信号送信装置51はリストバンド型である。手首の電位変化を計測するために、基準電極部4とは別に、第1計測電極部2と第2計測電極部3が手首に接触するように設置される。第1計測電極部2は手の甲側、第2計測電極部3は手の平側に設置される。また、第1計測電極部2には第1アンテナ8が、第2計測電極部3には第2アンテナ9が近接して設置される。また、基準電極部4は、第1計測電極部2または第2計測電極部3の設置場所以外の位置に設置される。このような配置にすることで、生体信号送信装置51と受信器52の位置関係において、手首が両者間の遮蔽物となる可能性を低減することができる。生体信号増幅部5とアンテナ選択部6と送信部7からなる処理部53については、位置の制限はない。このため、手首の周囲のベルトの任意の位置に設定可能である。
【0099】
なお、生体信号送信装置51が実行する処理は、実施の形態1に係る生体信号送信装置20が実行する処理と同様であり、生体信号送信装置51が実行する処理は図9に示すフローチャートの通りである。このため、その詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0100】
次に、実施の形態2における生体信号送信装置51の動作の例について説明する。図15(a)に被験者1が立っているときの計測例を示す。被験者1が立っている場合には、生体信号送信装置51と受信器52の位置関係からすると、手の平側がより受信器52に近い状態になっていると考えられるので、手の平側に近い第1アンテナ8が選択されるのが望ましい。
【0101】
一方、図15(b)に被験者1がデスクワークをしているときの計測例を示す。デスクワーク時には、手の平側は机等の遮蔽物54に接触することが多く、反対に手の甲側はさえぎるものがない状態である。この場合には、手の平側の第1計測電極部2は、手首と机との間に挟まれ、第1計測電極部2と皮膚の位置関係が変化する。このことにより、第1計測電極部2で計測される生体信号には、電極部ずれにより生じるノイズ成分の混入が想定され、電極部ずれにより生じるノイズ成分を検出することで、手の甲側の第2アンテナ9からの送信状況の方が、手の平側の第1アンテナ8からの送信状況に比べて良好であると判断できる。
【0102】
図16は、立ち姿勢の被験者1が座り姿勢になり、その後、また立ち姿勢に戻った場合の結果を示す図である。上から順に、手の平側の第1計測電極部2で計測される第1生体信号、手の甲側の第2計測電極部3で計測される第2生体信号、手の平側の第1生体信号の送信状況、手の甲側の第2生体信号の送信状況、アンテナ選択部6によって選択されているアンテナの選択結果を示している。初期状態では第1アンテナ8が生体信号の送信アンテナとされる。
【0103】
立ち姿勢から座り姿勢への姿勢変化タイミング61においては、第1生体信号は、丸印62で囲った部分の波形のように変化し、筋電位の混入と共に、電極部ずれによるノイズも混入する。このため、丸印63で囲った部分の第2生体信号の波形の変化と比較すると、振幅と総変動量が多くなっている。このため、両方の生体信号の振幅が第1閾値よりも大きくなることから体動発生と判定される(図9のステップS23)。また、その後の生体信号の比較処理により第1計測電極部2において電極部ずれが発生している判定される(ステップS25)。このため、生体信号の送信アンテナとして第2アンテナ9を使用することが決定される(ステップS26)。そして現在は第1アンテナが選択されているため、第2アンテナへの切り替えが必要と判定され(ステップS27)、アンテナ切り替えが実施される(ステップS28)。これによって座り姿勢への変更に連動したアンテナ切り替えが実現される(図16の丸印64におけるアンテナ切り替え)。
【0104】
同様の処理によって、座り姿勢から立ち姿勢への姿勢変化タイミング65においては、体動が発生したと判定されるが、第1計測電極部2および第2計測電極部3のいずれにも電極部ずれは発生していないと判定されるため、アンテナ切り替えは必要なしと判定され、そのまま第2アンテナの選択が継続される(図16の丸印68においてアンテナ切り替えが行われない)。
【0105】
以上の処理によって、体動により混入するノイズと、電極部ずれにより混入するノイズを区別することで、送信状態が適切なアンテナを選択し続けられる。
【0106】
このような構成と処理によって、立っているときや机での作業中など、被験者1が様々な状況にあるときでも適切なアンテナが選択されるため、常に最小の送信電力で生体信号の連続送信が可能になる。
【0107】
なお、皮膚電位以外の、脈拍数、体温および血糖値等を計測対象とする場合であっても、センサと身体の接触具合の変化によるノイズの混入を考慮すれば同様の処理に基づく生体信号送信装置が構成できる。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る生体信号送信装置によれば、消費電力の低減と安定した生体信号の送信が両立できるため、本発明は、生体信号をモニタリングする装置等に適用できる。具体的には、メディカル分野またはヘルスケア分野において、脳波、眼電位、筋電位、心電図波形、皮膚電位、体温、血中酸素濃度、または血糖値等の、電気的に計測可能な物理量を連続的に計測し送信する生体信号送信装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1 被験者
2 第1計測電極部
3 第2計測電極部
4 基準電極部
5 生体信号増幅部
5a 生体アンプ
5b AD変換部
6 アンテナ選択部
6a CPU
6b RAM
6c プログラム
6d ROM
7 送信部
7a 第1送信部
7b 第2送信部
8 第1アンテナ
9 第2アンテナ
10、21、52 受信器
20、30、51 生体信号送信装置
50 生体計測部
54 遮蔽物
60 信号処理部
70 送信処理部
100 バッテリ部
101 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の生体信号を計測し、計測した前記生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置であって、
被験者の第1位置に接触して配置され、前記第1位置における前記被験者の電位を計測する第1計測電極部と、
前記第1位置とは異なる前記被験者の第2位置に接触して配置され、前記第2位置における前記被験者の電位を計測する第2計測電極部と、
前記第1位置および前記第2位置とは異なる前記被験者の第3位置に接触して配置され、前記第3位置における前記被験者の電位を計測する基準電極部と、
前記第1計測電極部に近接した位置に配置される第1アンテナと、
前記第2計測電極部に近接した位置に配置される第2アンテナと、
前記第1計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第1生体信号と、前記第2計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第2生体信号とに基づいて、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナのいずれか一方を選択するアンテナ選択部と、
前記第1生体信号および前記第2生体信号を、前記アンテナ選択部が選択したアンテナから前記受信器に対して送信する送信部と
を備え、
前記アンテナ選択部は、前記第1生体信号および前記第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部のいずれか一方に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する
生体信号送信装置。
【請求項2】
前記アンテナ選択部は、(i)第1所定時間における、前記第1生体信号の最大振幅および前記第2生体信号の最大振幅のいずれもが第1閾値よりも大きく、かつ(ii)前記第1所定時間よりも後の第2所定時間における、前記第1生体信号の平均値と前記第2生体信号の平均値との差分の絶対値が第2閾値よりも大きい場合に、平均値が小さいほうの生体信号の算出の基となる電位を計測した電極部に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する
請求項1記載の生体信号送信装置。
【請求項3】
前記第1計測電極部および前記第2計測電極部は、それぞれ、前記被験者の左および右のこめかみ周辺に配置され、前記被験者の眼電位を計測する
請求項1または2に記載の生体信号送信装置。
【請求項4】
前記受信器は、前記被験者が寝ている場所の上方の天井付近に設置される
請求項3記載の生体信号送信装置。
【請求項5】
前記第1計測電極部および前記第2計測電極部は、それぞれ、前記被験者のいずれかの手首の手の平側および手の甲側に設置され、前記被験者の皮膚電位を計測する
請求項1または2に記載の生体信号送信装置。
【請求項6】
前記受信器は、前記第1計測電極部及び前記第2計測電極部が設置された手首と同じ側の腰付近に設置される
請求項5記載の生体信号送信装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体信号送信装置と、
前記受信器と
を備える生体信号送受信システム。
【請求項8】
被験者の生体信号を計測し、計測した前記生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置による生体信号送信方法であって、
前記生体信号送信装置は、
被験者の第1位置に接触して配置され、前記第1位置における前記被験者の電位を計測する第1計測電極部と、
前記第1位置とは異なる前記被験者の第2位置に接触して配置され、前記第2位置における前記被験者の電位を計測する第2計測電極部と、
前記第1位置および前記第2位置とは異なる前記被験者の第3位置に接触して配置され、前記第3位置における前記被験者の電位を計測する基準電極部と、
前記第1計測電極部に近接した位置に配置される第1アンテナと、
前記第2計測電極部に近接した位置に配置される第2アンテナと
を備え、
前記生体信号送信方法は、
前記第1計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第1生体信号と、前記第2計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第2生体信号とに基づいて、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナのいずれか一方を選択アンテナ選択ステップと、
前記第1生体信号および前記第2生体信号を、前記アンテナ選択部が選択したアンテナから前記受信器に対して送信する送信ステップと
を含み、
前記アンテナ選択ステップでは、前記第1生体信号および前記第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部のいずれか一方に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する
生体信号送信方法。
【請求項9】
被験者の生体信号を計測し、計測した前記生体信号を受信器に送信する生体信号送信装置を制御するためのコンピュータ実行可能なプログラムであって、
前記生体信号送信装置は、
被験者の第1位置に接触して配置され、前記第1位置における前記被験者の電位を計測する第1計測電極部と、
前記第1位置とは異なる前記被験者の第2位置に接触して配置され、前記第2位置における前記被験者の電位を計測する第2計測電極部と、
前記第1位置および前記第2位置とは異なる前記被験者の第3位置に接触して配置され、前記第3位置における前記被験者の電位を計測する基準電極部と、
前記第1計測電極部に近接した位置に配置される第1アンテナと、
前記第2計測電極部に近接した位置に配置される第2アンテナと
を備え、
前記プログラムは、
前記第1計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第1生体信号と、前記第2計測電極部で計測された電位および前記基準電極部で計測された電位の電位差である第2生体信号とに基づいて、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナのいずれか一方を選択アンテナ選択ステップと、
前記第1生体信号および前記第2生体信号を、前記アンテナ選択部が選択したアンテナから前記受信器に対して送信する送信ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記アンテナ選択ステップでは、前記第1生体信号および前記第2生体信号のうち時間変動が少ない方の生体信号の算出の基となる電位を計測した、前記第1計測電極部および前記第2計測電極部のいずれか一方に近接したアンテナを、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナから選択する
プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−78536(P2013−78536A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221250(P2011−221250)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】