説明

α−アルキル置換エステル化合物の製造方法

【課題】エステル化合物とジアルキルカーボネートとを、塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを高収率で製造する。
【解決手段】γ−ブチロラクトン等のエステル化合物とジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを塩基性触媒の存在下に反応させて、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のα−アルキル置換エステルを製造する方法において、反応系にエーテル結合を有する化合物を存在させる。反応系にエーテル結合を有する化合物を存在させることにより、エステル化合物とジアルキルカーボネートとの反応効率を高め、高収率でα−アルキル置換エステルを製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する方法に関する。
詳しくは、γ−ブチロラクトン等のエステル化合物とジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートを塩基性触媒の存在下に反応させて、α−メチル−γ−ブチロラクトン等のα−アルキル置換エステルを製造する方法に関する。
【0002】
本発明で製造されるα−メチル−γ−ブチロラクトンは、高機能弾性繊維の製造用原料であるポリエーテルポリオールを製造するためのモノマーとなる3−メチルテトラヒドロフランの製造中間体として工業的に極めて有用である。
【背景技術】
【0003】
テトラヒドロフラン(以下、THFと略記することがある)を開環重合させて得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略記することがある)を用いたポリウレタン樹脂は、弾性特性、低温特性、耐加水分解性などの機械的特性に優れるため、広く弾性繊維や熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして利用されている。このポリウレタン樹脂の機械的特性を向上させる目的で、ウレタン樹脂原料としてTHFに加えて3−メチルテトラヒドロフラン(以下、3−MeTHFと略記することがある)を共重合して得られるポリエーテルポリオールを用いることが行われている。ポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いた場合に比較してTHFと3−MeTHFを共重合したポリエーテルポリオールを用いて製造したポリウレタンは機械的特性が向上することが知られている(特開昭63−235320号公報)。
【0004】
3−MeTHFは有用な物質である一方で、製造の難度が高いため、広く合成法の検討がなされ、多くの製造方法が提案されているものの、既報の3−MeTHFの製造方法はいずれも、発熱量が大きい、原料として毒物を使用するため安全設備が必要であるなどの製造装置面にかかる負荷が大きい、といった課題や、原料が高価である、反応での選択性が低い、などの問題点があった。
【0005】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、安価で容易に入手可能な原料を用い、安全性に優れ、かつ収率が高く、工業的に実施可能な高純度な3−MeTHFの製造方法を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、γ−ブチロラクトン(以下、GBLと略記することがある)を出発原料として用い、GBLのα位をメチル化してα−メチル−γ−ブチロラクトン(以下、α−Me−GBLと略記することがある)を経て、3−MeTHFを製造することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、γ−ブチロラクトン(GBL)を原料とし、GBLのα位をメチル化してα−メチル−γ−ブチロラクトン(α−Me−GBL)を得る工程(1)と、α−Me−GBLから3−メチルテトラヒドロフラン(3−MeTHF)を得る工程(2)とを含むことを特徴とする3−メチルテトラヒドロフランの製造方法について、本出願人より先に特許出願を行った(特願2010−33941。以下、先願という。)。
【0006】
先願の方法では、具体的には、炭酸カリウムの存在下にGBLとジメチルカーボネート(以下、DMCと略記することがある)とを反応させてα−Me−GBLを製造している。
【0007】
なお、このように、炭酸カリウム等の塩基性触媒の存在下にGBLとDMCとを反応させてα−Me−GBLを製造する方法は、WO 02/10116号パンフレットにも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−235320号公報
【特許文献2】特願2010−33941
【特許文献3】WO 02/10116号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来法のアルキル化反応における反応成績は、反応温度215℃で、反応時間7時間経過時のGBL転化率が70%程度であり、かつα−Me−GBL収率は60%程度であった。このため、効率的な工業化プロセス構築のためには、転化率、収率の向上と、反応時間短縮を達成して生産効率を向上させることが望まれている。
【0010】
本発明は、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する際に、反応系にエーテル結合を有する化合物を存在させることにより、反応時間を短縮させることができ、またα−アルキル置換エステルの収率も向上させることができることを見出した。
【0012】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する方法において、反応系に、エーテル結合を有する化合物を存在させることを特徴とするα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【0014】
[2] 前記エーテル結合を有する化合物の炭素数が6以上であり、かつエーテル結合数が2以上である[1]に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【0015】
[3] 前記エーテル結合を有する化合物が、カチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基を有する[1]又は[2]に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【0016】
[4] 前記カチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基が水酸基、アミノ基及びイミノ基から選ばれる1以上である[3]に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【0017】
[5] 前記エーテル結合を有する化合物が、クラウンエーテル、ポリアルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1つである[1]ないし[3]のいずれかに記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する際に、反応系にエーテル結合を有する化合物を存在させることにより、α−アルキル置換エステルを効率よく、かつ高収率で製造することが可能となる。
本発明によれば、高機能弾性繊維の製造用原料であるポリエーテルポリオールを製造するためのモノマーとなる3−メチルテトラヒドロフランの製造中間体として工業的に極めて有用なα−メチル−γ−ブチロラクトンを高収率で製造することが可能となり、これにより、3−メチルテトラヒドロフラン、更にはポリエーテルポリオールの生産効率の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法は、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する方法において、エーテル結合を有する化合物の存在下に反応を行うことを特徴とする。
【0021】
[作用機構]
本発明において、反応系にエーテル結合を有する化合物を存在させることにより、α−アルキル置換エステル化反応の反応速度の向上が達成される効果の作用機構については、以下のように考えられる。
【0022】
即ち、本発明に係るα−アルキル化反応では、塩基性触媒によりまずエステル化合物のα位の水素原子が引き抜かれ、水素原子が引き抜かれた箇所とジアルキルカーボネートとの反応により、中間体のカルボアルコキシ誘導体に変換される。前記中間体は系内に存在する塩基(塩基性触媒やジアルキルカーボネート由来のアルコキシド等)によって再度α位が脱プロトン化され、生じるアニオンとジアルキルカーボネートが反応することによってα位のアルキル化が進行する。
α位のアルキル化を受けた前記中間体と系内に存在するアルコキシドとの反応により、ジアルキルカーボネートが再生され、前記中間体はα位がアニオン化されたα−アルキル置換エステルを経て、アルコールとのプロトン交換反応により目的物であるα−アルキル置換エステルとなる。
【0023】
この反応過程でエステル化合物のα位の水素原子が引き抜かれたアニオンの近傍にカチオンが存在すると、カチオン−アニオン間の電気的中和やカチオンの立体的な込み合いによってカルボニル基α位アニオンの反応性が低下し、エステル化合物とジアルキルカーボネートの反応が阻害されるものと考えられる。
また、反応の各段階で塩基、又は求核剤として作用するアルコキシドアニオンがカチオンと相互作用しうる場合、アニオンの負電荷はカチオン正電荷によって電気的中和を受け反応性が低下する。
【0024】
このような反応系に、本発明に従って、カチオンと相互作用可能なエーテル結合を有する化合物を存在させることにより、反応機構の各段階でのアニオン種はカチオンとの静電的、立体的な相互作用を受けない、又は受けにくくなる結果、反応性が向上し、反応速度も向上するものと推定される。
【0025】
[α−アルキル化反応]
本発明におけるエステル化合物のα−アルキル化反応とは、エステル化合物のα位の炭素にアルキル基を導入する反応をいう。ここで導入するアルキル基は、水酸基等の置換基を有していてもよく、好ましくは置換基を有さないアルキル基である。
具体的には例えば、以下の反応式(1)で表される反応である。
【0026】
【化1】

【0027】
上記反応式において、Rは水素原子又は炭素数10以下の1価のアルキル基、Rは炭素数10以下の1価のアルキル基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成していてもよい。X、Yはそれぞれ独立に通常炭素数1以上10以下の1価のアルキル基であり、XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。好ましくは環を形成していないものが好ましく、より好ましくは直鎖状のアルキル基であり、さらに好ましくはXとYが同一のものが好ましい。
【0028】
より具体的には、エステル化合物としてγ−ブチロラクトン(GBL)を用い、ジアルキルカーボネートとしてジメチルカーボネート(DMC)を用い、塩基性触媒として炭酸カリウム(KCO)を用いた場合のα−メチル化反応は以下の反応式(2)で表される(Meはメチル基)。
【0029】
【化2】

【0030】
[エステル化合物]
本発明においてα−アルキル化の原料となるエステル化合物は、前述の如く、R−CH−C(=O)−ORで表され、Rは水素原子又は炭素数10以下の1価のアルキル基、好ましくは水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である。Rは炭素数10以下の1価のアルキル基、好ましくは炭素数1以上6以下の1価のアルキル基である。
,Rは互いに結合して環を形成してもよい。この場合、RとRとが結合して形成される環の炭素数は3以上10以下であることが好ましく、形成される環は、酸素原子1つを有する4〜8員環であることが好ましい。
【0031】
本発明において、原料となるエステル化合物は、製造されるα−アルキル置換エステルの工業的な有用性からγ−ブチロラクトンであることが好ましい。
【0032】
γ−ブチロラクトン(GBL)は従来公知の物質であり、公知の方法に従って製造して使用することも、市販品を入手して使用することもできる。GBLは1,4−ブタンジオールをRu触媒で酸化して得る方法(特開2002−167380)、無水マレイン酸をNi−Re触媒で部分的に還元して得る方法(特開06−306069)、同じく無水マレイン酸をNi−Pd触媒で部分的に還元する方法(特開06−321926)などの公知の方法により得られたものが用いられる。
【0033】
用いるGBLは高純度のものが好ましい。即ち、GBLの開環で生じる4−ヒドロキシ酪酸は、GBLの不純物の1つであるが、このものは本発明の製造方法で使用される塩基性触媒と中和反応を起こし、反応で用いられる触媒有効成分の減少を起こすため極力少ない方が良い。
【0034】
[ジアルキルカーボネート]
本発明において、α−アルキル化試薬となるジアルキルカーボネートは、前述の如く、XO−C(=O)−OYで表され、X、Yはそれぞれ独立に通常炭素数1以上10以下の1価のアルキル基、好ましくは炭素数1以上6以下の1価のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1以上6以下の1価の直鎖状アルキル基である。さらに好ましくはXとYが同一のものである。
【0035】
また、XとYは互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成した場合、炭素数は特に限定されないが、通常1以上10以下、好ましくは6以下である。
XとYが環を形成したもの(以下、環状カーボネートということがある)を、本発明においてジアルキルカーボネートとして用いた場合、ヒドロキシアルキル基が導入されたω−ヒドロキシアルキルエステル化合物を得ることができる。
本発明において用いられるジアルキルカーボネートは、好ましくは工業的な有用性から、XとYが互いに環を形成していない、炭素数1以上10以下の1価のアルキル基を有するものであり、より好ましくはX,Yが同一のものである。
【0036】
製造されるα−アルキル置換エステルの工業的な有用性及び反応性から、ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)であることが好ましい。
【0037】
ジメチルカーボネート(DMC)は、公知の化合物であり、公知の方法に従って製造して使用することも、市販品を入手して使用することもできる。
【0038】
DMCは低毒性であり、調達が容易で、工業的な量の入手が可能である。α−Me−GBL製造に使用されるDMCは特に限定されないが、純度が高いものが望ましく、特に含有水分、メタノールの含有量は少ないほど好ましい。
【0039】
本発明におけるα−アルキル化反応に使用するジアルキルカーボネートの使用量は、特に限定されるものではないが、通常、エステル化合物1モルに対して下限が理論等量である1.0モル、好ましくは1.2モル、さらに好ましくは1.5モルである。上限は特に制限はないが、通常10.0モル、好ましくは5.0モル、さらに好ましくは3.0モルである。前記上限超過では、反応器容積に対するジアルキルカーボネートの占有容量が大きくなり空間生産効率が低下してしまう場合がある。
【0040】
[塩基性触媒]
本発明におけるα−アルキル化反応に使用される塩基性触媒は特に限定されるものではないが、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属;リチウムジイソプロピルアミドなどの金属アミド;アミン類;アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、酢酸塩等のカルボン酸塩、酸化物などの金属化合物;金属アルコキシドが用いられる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属の複合酸化物、塩基処理ゼオライトなどの不均一系塩基性触媒を用いることもできる。
【0041】
前記アミン類の例としては、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチレンヘキサミン、トリオクチルアミンなどの鎖状脂肪族アミン類;1,4−ジメチルピペラジン、ピペラジン、ピペリジン、1−ベンジルピペリジン、1−メチル−2,2−ジメチル−6,6−ジメチルピペリジン、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ウンデセン)のような環状アミン類;トリフェニルアミンなどのような芳香族アミン類;N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−フェニルジベンジルアミンなどのベンジルアミン類;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、TBZ(2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−のようなイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン又は亜リン酸トリフェニルのような3価のリン化合物、ホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0042】
これらのうち、鎖状脂肪族アミン類、環状アミン類、塩基性が強く脱プロトン化が進行しやすい点でホスファゼン化合物が好ましい。鎖状脂肪族アミン類としては、反応生成物との分離が容易に行える点でトリオクチルアミン等の長鎖アルキル鎖を有する鎖状脂肪族三級アミンが好ましく、環状アミン類としては、好ましくはアシル中間体の形成が進行することで反応活性を高めることが可能な、DBU、DBN等のエン−イミン構造を持つ環状アミン類が好ましい。
【0043】
前記アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0044】
前記アルカリ土類金属化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0045】
前記金属アルコキシドの例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシド、カリウム−t−ブトキシド等のカリウムアルコキシド等が挙げられる。
【0046】
不均一系塩基性触媒の例としてはカルシウム−バリウム−ナトリウム酸化物、カルシウム−バリウム−カリウム酸化物、カルシウム−バリウム−セシウム酸化物などのアルカリ金属−アルカリ土類金属複合酸化物、マグネシウム−カルシウム−バリウム酸化物、マグネシウム−ストロンチウム−バリウム酸化物などのアルカリ土類金属複合酸化物、ナトリウム、カリウムイオンなどで処理した塩基処理ゼオライトなどが挙げられる。
【0047】
これらの中でもアルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩が反応性が高い点で好ましく、さらにはナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムが好ましい。さらには、価格、入手性からナトリウムメトキシド、炭酸カリウムが特に好ましい。
【0048】
これらの塩基性触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
これら塩基性触媒の使用量は、特に限定されないが、通常エステル化合物1モルに対して5.0モル以下、好ましくは3.0モル以下、より好ましくは1.0モル以下である。前記上限超過では製造コストの増大や反応器内容物の攪拌効率の低下が起こる場合がある。また通常エステル化合物1モルに対して0.01モル以上、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上である。前記下限未満では実用的な反応速度が得られない場合がある。
【0050】
[エーテル結合を有する化合物]
本発明において、α位アルキル化反応系に存在させるエーテル結合を有する化合物は、好ましくは、炭素数が6以上でありかつエーテル結合数が2以上のものである。
【0051】
エーテル結合を有する化合物の炭素数が6未満では、前述のカチオン排斥作用を十分に得ることができない。カチオン排斥作用の面で、この炭素数は8以上、特に10以上であることが好ましい。エーテル結合を有する化合物の炭素数の上限には特に制限はないが、ジアルキルカーボネートやエステル化合物に対する当該エーテル結合を有する化合物の溶解性の維持、エーテル/カチオンのモル比を一定とした場合の使用量低減でのコスト抑制、反応器容積の有効活用の面から通常40以下であり、特に30以下が好ましい。
【0052】
同様に、エーテル結合を有する化合物のエーテル結合の数が2未満であると、前述のカチオン排斥作用を十分に得ることができない。カチオン排斥作用の面で、このエーテル結合数は3以上、特に5以上であることが好ましい。エーテル結合を有する化合物のエーテル結合数の上限には特に制限はないが、ジアルキルカーボネートやエステル化合物に対する当該エーテル結合を有する化合物の溶解性の維持、エーテル/カチオンのモル比を一定とした場合の使用量低減でのコスト抑制、反応器容積の有効活用の面から20以下、特に15以下が好ましい。
【0053】
本発明で用いるカチオンに配位又は静電的相互作用をすることが可能なエーテル結合を有する化合物は、カチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基を有する化合物であることがカチオン排斥作用の面で好ましい。このカチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基としては、好ましくは水酸基、アミノ基、イミノ基などが挙げられる。
【0054】
また、本発明で用いるエーテル結合を有する化合物は、カチオン排斥作用を高める目的でカチオン種と強く配位又は静電的相互作用をしうる官能基を有した化合物が好ましい。カチオン種と強く配位又は静電的相互作用しうる官能基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基といった孤立電子対を有する官能基が挙げられる。
【0055】
エーテル結合を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、具体的には、クラウンエーテル、ポリアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数は1〜6)、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(アルキレン基の炭素数は1〜6、アルキル基の炭素数は1〜6)、ポリエーテルポリアミン、シクロデキストリンなどが挙げられる。
【0056】
前記クラウンエーテルとしては、
12−クラウン−4、ベンゾ12−クラウン−4、ジベンゾ12−クラウン−4、シクロヘキシル12−クラウン−4、ジシクロヘキシル12−クラウン−4、(2−ヒドロキシエチル)12−クラウン−4、(3−ヒドロキシプロピル)12−クラウン−4、ビス(2−ヒドロキシエチル)12−クラウン−4、ビス(3−ヒドロキシプロピル)12−クラウン−4等の12−クラウンエーテル類;
15−クラウン−5、ベンゾ15−クラウン−5、ジベンゾ15−クラウン−5、シクロヘキシル15−クラウン−5、ジシクロヘキシル15−クラウン−5、(2−ヒドロキシエチル)15−クラウン−5、(3−ヒドロキシプロピル)15−クラウン−5、ビス(2−ヒドロキシエチル)15−クラウン−5、ビス(3−ヒドロキシプロピル)15−クラウン−5等の15−クラウンエーテル類;
18−クラウン−6、ベンゾ18−クラウン−6、ジベンゾ18−クラウン−6、シクロヘキシル18−クラウン−6、ジシクロヘキシル18−クラウン−6、(2−ヒドロキシエチル)18−クラウン−6、(3−ヒドロキシプロピル)18−クラウン−6、ビス(2−ヒドロキシエチル)18−クラウン−6、ビス(3−ヒドロキシプロピル)18−クラウン−6等の18−クラウンエーテル類;
などが挙げられる。
【0057】
これらのクラウンエーテルは反応に用いられるカチオンとの親和性を考慮して使用されることが好ましい。つまりクラウンエーテルと相互作用して超分子錯体を形成する際にはカチオンのイオン半径とクラウンエーテルの環内径が一致するものがイオン排斥作用を強く発現する。エステルのα位の反応で、塩基性触媒としてナトリウム化合物を用いる場合には15−クラウンエーテル類を使用することが好ましく、塩基性触媒としてカリウム化合物を用いる場合には18−クラウンエーテル類を使用することが好ましい。また、クラウンエーテルのカチオン捕捉能向上のため、カチオンと静電的相互作用の可能な官能基を有するクラウンエーテルも好適に用いられる。
【0058】
前記ポリアルキレングリコールとしては、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール等が挙げられる。
また、ポリアルキレングリコールは単一成分である必要は無く、分子中に含まれる炭素数、エーテル数が上記の望ましい範囲に含まれるものであれば使用することが出来る。これに含まれる化合物としてはエチレングリコールで平均分子量300(平均炭素数12.8、エーテル結合数6.4)のもの、プロピレングリコールで平均分子量350(平均炭素数17.7、エーテル結合数5.9)のものなどが挙げられる。
【0059】
前記ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラトリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリス(テトラメチレングリコール)ジメチルエーテル、テトラキス(テトラメチレングリコール)ジメチルエーテル等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテルポリアミンとしては、テトラエチレングリコールビス(α、ω−2−アミノエチル)エーテル、ペンタエチレングリコールビス(α、ω−2−アミノエチル)エーテル、1−(2−メトキシ−3−アミノプロピル)テトラエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0061】
シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンが挙げられる。また各種シクロデキストリンの水酸基がイオン性官能基を有する連結基と結合したでパー(2−アミノエチル)シクロデキストリン、パー(2、3−ジヒドロキシプロピル)シクロデキストリンなどが挙げられる。
【0062】
エーテル結合を有する化合物はカチオンを強く捕捉し、カチオンとエステル類や触媒のアルコキシドアニオンとの静電的相互作用を低下させることが可能な化合物ほど活性向上をもたらすことが予想される。この点から、反応活性向上の程度は用いるエーテル結合を有する化合物とカチオンの錯形成定数で比較可能であると考えられる。
【0063】
塩基性触媒として炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩を使用する場合、イオン半径と一致する内径を有するクラウンエーテル類が最も錯形成定数が大きく、続いて長鎖ポリアルキレングリコール/長鎖ポリアルキレングリコールアミン、長鎖ポリアルキレングリコールジエーテルであり、クラウンエーテル類が最も活性向上をもたらす化合物であると予想され、このことは実施例の結果と一致する。
【0064】
ポリアルキレングリコールのトリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコールや、これらの混合物である平均分子量250、300、400などのポリエチレングリコール類は工業的に入手が容易であり、添加物コストを抑制するという点で優れている。
また、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしてトリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルなども安価に入手できる点で好ましい。
シクロデキストリン類は安価に入手可能である点で利用可能であるほか、鎖状、環状エーテル類と比較して嵩高い疎水性の有機アミン類を触媒として用いる場合に反応系内で生じるアンモニウムイオンを取り込みやすい点で優れる。
【0065】
これらのエーテル結合を有する化合物のうち、クラウンエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが、工業的にも性能的にも優れており好ましい。
【0066】
エーテル結合を有する化合物の具体例をさらに構造式で以下に示すが、本発明は何ら以下のものに限定されるものではない。
なお、以下において、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、Buはブチル基を示す。
【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
【化5】

【0070】
【化6】

【0071】
【化7】

【0072】
これらのエーテル結合を有する化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0073】
エーテル結合を有する化合物の使用量は特に限定されないが、通常反応に用いられる塩基性触媒1モルに対して3モル以下、好ましくは2モル以下、より好ましくは1モル以下である。また通常塩基性触媒1モルに対して0.01モル以上、好ましくは0.05モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。前記上限超過では、エーテル結合を有する化合物の使用量が増大し、反応器容積効率が低下する;過度の攪拌動力が必要となる;分離工程での時間が長く必要となる;場合がある。また、前記下限未満では、カチオン排斥作用が充分でなく、エーテル結合を有する化合物を添加することで得られる反応速度の向上効果が得られない場合がある。
【0074】
エーテル結合を有する化合物を反応に用いる場合の方法はどのような方法でも構わない。例えば反応の仕込み時、エステル化合物、ジアルキルカーボネート、塩基性触媒と同時に反応器に入れて反応を開始する方法、使用される原料に溶解させて溶液状として反応器に添加する方法、エーテル結合を有する化合物単独を溶媒に溶解又は懸濁させて反応器に添加する方法などが挙げられる。
また、エーテル結合を有する化合物は反応に用いる量を一度に反応器に加えてもよく、また、分割して反応器内に添加することも構わない。例えば、反応速度の向上効果が不十分である場合などに、反応の途中で追加して反応器に添加することも出来る。最も実施容易な方法は反応開始時に全量を投入し、他の原料、触媒種とともに加熱をして反応させるものである。
【0075】
[溶媒]
本発明に係るα−アルキル化反応は、無溶媒で行うことも、溶媒を使用して行うことも共に可能である。溶媒を使用する場合は、α−アルキル化反応に影響を与えない限り、使用する溶媒に特に制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒などが好適に用いられる。
【0076】
また、カルボニル基α位に水素原子を持たずアルキル化反応を受けないエステル類は溶媒として使用できる。このようなものとしては、安息香酸エステル、ピバル酸エステルなどが挙げられる。さらに使用するジアルキルカーボネートと同じアルキル基を有するアルコールのエステルであれば交差アルキル化を起こさないため使用することが出来る。
【0077】
これら溶媒は単独で用いてもかまわないし、任意の複数の溶媒を混合して使用してもかまわない。
好ましくは無溶媒で反応を行う。
【0078】
[添加剤]
本発明に係るα−アルキル化反応を行う際は、上記エーテル結合を有する化合物以外の適当な添加剤を用いてもかまわない。
【0079】
[反応形式]
本発明に係るα−アルキル化反応の形式としては、バッチ方式、連続方式、共に採用可能である。
【0080】
[反応条件]
本発明におけるα−アルキル化反応の際の温度は特に限定されるものではないが、副反応の進行を抑制するために重要である。上限は、通常250℃、好ましくは230℃、最も好ましくは220℃であり、下限は、通常170℃以上、好ましくは190℃以上、より好ましくは200℃以上である。前記上限超過の場合は、例えばGBLとDMCとの反応の場合には、原料のGBL、生成物のα−Me−GBLの開環反応で生じる4−アルコキシドとDMCとの反応生成物である4−(メトキシカルボキシ)酪酸メチル、4−(メトキシカルボキシ)−2−メチル酪酸メチルやメチル化生成物である4−メトキシ酪酸メチル、4−メトキシ−2−メチル酪酸メチルが生じる副反応が起こる場合がある。前記下限未満の場合、実用的な反応速度が得られない場合や、GBL環が開環した副生物、さらには2分子がエステル化して2量化した副生物が生成してしまう場合がある。
【0081】
本発明におけるα−アルキル化反応の反応時間は、特に限定されるものではないが、上限は、通常50時間以下、好ましくは30時間以下、最も好ましくは20時間以下であり、下限は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。前記上限超過の場合は、例えば原料としてGBLを用いた場合、GBL環の開環反応が進行する場合があり、一方前記下限未満では、原料であるGBL等のエステル化合物が多く残存してしまう場合がある。
【0082】
本発明におけるα位アルキル化反応では、反応の進行と共にCOが発生する。COは、反応に用いる塩基性触媒を被毒する場合があるので、連続的にあるいは非連続的にCOを系内から除去しながら反応を行っても良い。この場合、COを除去する際にα−アルキル化剤のジアルキルカーボネートも同時に除去される時は、除去されたジアルキルカーボネート分を補充して反応を継続することも可能である。さらには、反応器に還流管を装着して発生するCOを系外に排出しながら気化したジアルキルカーボネートは還流により反応系に戻す方式を採用してもかまわない。或いは、分離膜を用いてCOを選択的に除去する方法も適用可能である。一方、連続的にCOを除去しないで反応を行う場合には、反応器を圧力容器とし、生成するCOを反応器内にため込みながら反応を行うこともできる。
【0083】
[後処理]
本発明に係るα−アルキル化反応終了後は、蒸留や精製等の通常の後処理によりα−アルキル置換エステルを得ることができる。例えば、そのまま減圧下に過剰に使用したジアルキルカーボネートと副生したアルコールを留去し、引き続き減圧蒸留してα−アルキル置換エステルを留出させて得ることができる。反応系に添加したエーテル結合を有する化合物は、この蒸留時にα−アルキル置換エステルと分離される。また、ジアルキルカーボネートとアルコールを留去後に溶媒を用いて抽出しても良い。その際に使用可能な溶媒は、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、クロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒などであり、価格や入手の容易性から好ましくは酢酸エチルやジエチルエーテル、トルエンである。溶媒抽出後は溶媒を留去、必要に応じて蒸留することにより精製することができる。特にGBL等の環状エステル化合物を原料とする場合は、さらに、ジアルキルカーボネートとアルコールを留去後にアルカリ水溶液を添加して副生したオリゴエステルやカーボネート化合物を加水分解し、引き続き塩酸や硫酸などの酸を添加して液性を酸性にするとα−Me−GBL等に環化することができる。この後に抽出操作を行っても良い。特に反応において副生物が多い場合にこの操作を行うと目的のα−Me−GBLの収率が上がる。
【0084】
[反応成績]
本発明において、上記反応条件で実施した場合の原料エステル化合物の転化率は特に限定されるものではないが、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
また、目的物であるα−アルキル置換エステルの収率は特に限定されるものではないが、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
【0085】
また、得られるα−アルキル置換エステルの純度は、特に限定されるものではないが、ガスクロマトグラフィー(GC)などで分析すると、通常、80モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、上限は特に制限はないが、好ましくは100モル%である。
【0086】
本反応で得られるα−アルキル置換エステルに含まれる主な不純物は、特に限定されるものではないが、例えば、α−アルキル化剤としてDMCを用いた場合には、通常メタノール、DMC、4−(メトキシカルボキシ)−2−メチル−酪酸メチル、4−メトキシカルボキシ−酪酸メチル、原料エステル化合物、これら化合物が組み合わせ反応したオリゴエステル等である。上記主な不純物の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、GBLについては、THFへ誘導することができるのでこのような不純物が20モル%程度含まれていても共重合ポリオール原料としてそのまま次工程に供することができる。ただし後段の精製工程の負荷の軽減するため、GBL含有量は好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【実施例】
【0087】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
なお、以下の実施例及び比較例における反応生成物の分析条件は以下の通りである。
【0088】
<GC測定条件>
装置:島津製作所製 GC−14
カラム:GLサイエンス社製キャピラリーカラム TC−1701
キャリア:ヘリウムガス
検出器:FID
分析はテトラグライムを用いる内部標準物質添加法により行った。
【0089】
[実施例1:18−クラウン−6使用]
内容積70mlのオートクレーブ内部を窒素ガスで置換し、炭酸カリウム2.62g(19.0mmol)、18−クラウン−6(エーテル結合数6、炭素数12)2.05g(7.8mmol)を入れて反応器内部を再度窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下のまま原料投入口からγ−ブチロラクトン3.28g(38.1mmol)とジメチルカーボネート11.93g(132mmol)を加え、電気炉上、215℃で加熱攪拌を行った。
2時間加熱攪拌を行って反応を終了したときの回収反応液のGC分析で求めた、γ−ブチロラクトンの転化率は97%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は70%であった。
同様の反応を6時間行ったときのγ−ブチロラクトンの転化率は100%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は66%であった。
【0090】
[実施例2:テトラエチレングリコールジメチルエーテル使用]
内容積70mlのオートクレーブ内部を窒素ガスで置換し、炭酸カリウム2.62g(19.0mmol)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(エーテル結合数5、合計炭素数10)2.05g(7.8mmol)を入れて反応器内部を再度窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下のまま原料投入口からγ−ブチロラクトン3.28g(38.1mmol)とジメチルカーボネート11.93g(132mmol)を加え、電気炉上、215℃で加熱攪拌を行った。
2時間加熱攪拌を行って反応を終了したときの回収反応液のGC分析で求めた、γ−ブチロラクトンの転化率は85%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は67%であった。
同様の反応を6時間行ったときのγ−ブチロラクトンの転化率は95%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は57%であった。
【0091】
[実施例3:ポリエチレングリコール使用]
内容積70mlのオートクレーブ内部を窒素ガスで置換し、炭酸カリウム1.77g(12.8mmol)、ポリエチレングリコール300(平均分子量300、平均エーテル結合数6.4、平均の合計炭素数12.8)1.29gを入れて反応器内部を再度窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下のまま原料投入口からγ−ブチロラクトン3.70g(43.0mmol)とジメチルカーボネート11.61g(129mmol)を加え、電気炉上、215℃で加熱攪拌を行った。
2時間加熱攪拌を行って反応を終了したときの回収反応液のGC分析で求めた、γ−ブチロラクトンの転化率は92%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は63%であった。
【0092】
[比較例1]
内容積70mlのオートクレーブ内部を窒素ガスで置換し、ここに炭酸カリウム2.61g(19.0mmol)を入れて反応器内部を再度窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下のまま原料投入口からγ−ブチロラクトン3.37g(39.2mmol)とジメチルカーボネート12.15g(135mmol)を加え、電気炉上、215℃で加熱攪拌を行った。
2時間加熱攪拌を行って反応を終了したときの回収反応液のGC分析で求めた、γ−ブチロラクトンの転化率は65%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は36%であった。
同様の反応を6時間行ったときのγ−ブチロラクトンの転化率は95%、α−メチル−γ−ブチロラクトンの収率は55%であった。
【0093】
以上の結果から、本発明によれば、エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させて、α−アルキル置換エステルを高収率で製造することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化合物とジアルキルカーボネートとを塩基性触媒の存在下に反応させてα−アルキル置換エステルを製造する方法において、反応系に、エーテル結合を有する化合物を存在させることを特徴とするα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記エーテル結合を有する化合物の炭素数が6以上であり、かつエーテル結合数が2以上である請求項1に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記エーテル結合を有する化合物が、カチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基を有する請求項1又は2に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記カチオンに配位又は水素結合をすることが可能な置換基が水酸基、アミノ基及びイミノ基から選ばれる1以上である請求項3に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記エーテル結合を有する化合物が、クラウンエーテル、ポリアルキレングリコール、及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1つである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のα−アルキル置換エステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−251927(P2011−251927A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126014(P2010−126014)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】