説明

α−ヒドロキシ酸エステルの製造方法

【課題】本発明は、医薬品、農薬、液晶および高分子の原料として有用なα―ヒドロキシ酸エステルを、工業的に簡便な操作で、高純度かつ高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】反応溶媒として原料と同じアルコールを用いて、酸触媒存在下、α−ヒドロキシ酸をエステル化した後、揮発性の塩基を加えて酸触媒を中和し、その後、反応溶媒を蒸留除去するという簡便な操作で、α−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、液晶および高分子の原料として有用なα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸触媒の存在下、非水溶媒中で還流脱水によりα−ヒドロキシ酸をアルコールとエステル化反応させてα−ヒドロキシ酸エステルを製造する場合、反応液から目的のα−ヒドロキシ酸エステルを回収する操作が必要になる。
α−ヒドロキシ酸エステルなどのエステル化合物の回収方法としては、エステル化反応後、有機塩基により酸触媒を中和して水溶性の有機塩基塩を形成させ、水を加えて生成した有機塩基塩を水相に移行させることにより、エステル化合物と酸触媒とを分離し、その後、目的のエステル化合物を含む非水溶媒相を蒸留する方法が知られている(特許文献1:特開2002−302491号公報参照)。しかし、この方法では、有機塩基が酸触媒に対して不足すると、酸触媒を完全に中和できないために平衡がエステルの加水分解方向にずれてしまう。他方、塩基が酸触媒に対して過剰であると、未反応の塩基と反応で生成した水により、やはり平衡がエステルの加水分解方向にずれてしまう。このため、過剰の酸触媒または塩基の存在により、エステル化合物の収率を低下させるだけでなく、エステル化合物の純度が低下してしまう。
また、エステル化反応させた後、水で抽出処理して、酸およびアルコールを抽出水相に移行させた後、該水相をアルコール回収蒸留塔に送って、過剰のアルコール類を塔頂から回収し、塔下部水溶液の一部を抽出工程に循環使用することにより、生成したエステル化合物を回収する方法も知られている(特許文献2:特開昭62−99345号公報参照)。しかし、この方法では、精製工程が煩雑になるという問題がある。
【特許文献1】特開2002−302491号公報
【特許文献2】特開昭62−99345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記実情に鑑み、工業的により簡便な操作で、α−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で製造する方法を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、α−ヒドロキシ酸エステルを製造する際に、理論当量または過剰量の揮発性の塩基により酸触媒を中和した後、残存するアルコール、塩基および反応で生成した水を蒸留除去するという簡便な操作で、α−ヒドロキシ酸エステルの加水分解を最小限に抑制しながら、α−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、以下に示すα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法を提供するものである。
[1]下記一般式(I):
【化4】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基であり、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基である。]
で表されるα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法であって、
下記一般式(II):
【化5】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるα−ヒドロキシ酸を、一般式(III):
【化6】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるアルコールに溶解し、酸触媒の存在下、前記アルコールと反応させた後、理論当量または過剰量の揮発性の塩基により前記酸触媒を中和し、残存するアルコール、塩基および前記反応で生成した水を蒸留除去することを特徴とする、α−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
[2]前記揮発性の塩基がトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンまたはアンモニアであることを特徴とする[1]記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
[3]前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基であり、前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基である、[1]または[2]に記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
[4]前記α−ヒドロキシ酸および前記α−ヒドロキシ酸エステルが光学活性体である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好ましい態様によれば、工業的に簡便な方法で目的のα−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で得ることができる。また、原料に光学活性体を用いた場合、光学純度を低下させることなく、高い光学純度でα−ヒドロキシ酸エステルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法について具体的に説明する。
本発明は、下記一般式(I):
【化7】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基であり、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基である。]
で表されるα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法であって、
下記一般式(II):
【化8】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるα−ヒドロキシ酸を、一般式(III):
【化9】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるアルコールに溶解し、酸触媒の存在下、前記アルコールと反応させた後、理論当量または過剰量の揮発性の塩基により前記酸触媒を中和し、残存するアルコール、塩基および前記反応で生成した水を蒸留除去することにより、目的のα−ヒドロキシ酸エステルを製造することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、酸触媒の存在下、α−ヒドロキシ酸をアルコールと反応させてα−ヒドロキシ酸エステルを製造する際に、該アルコールを反応溶媒として用い、α−ヒドロキシ酸をこれに溶解して反応させ、その後、揮発性の塩基を用いて酸触媒を中和して、反応後にこれらを蒸留除去するという工業的に簡便な方法で、目的のα−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で製造することを可能にするものである。
【0009】
まず、本発明においては、α−ヒドロキシ酸をアルコールに溶解させ、酸触媒の存在下、該アルコールとエステル化反応させる。
【0010】
本発明において、α−ヒドロキシ酸エステルの原料として用いられるα−ヒドロキシ酸は、一般式(II):
【化10】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表される。
【0011】
一般式(II)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基である。「置換基を有してもよいアルキル基」のアルキル基は、特に制限されるものではないが、分岐状または直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
「置換基を有していてもよいアリール基」のアリール基は、特に制限されるものではないが、C〜C12アリール基であることが好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリルが挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換を有していてもよいアミノ基(例えば、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノなど)、ニトロ基およびトリフルオロメチル基などが挙げられる。あるいは、隣接する炭素原子が有する置換基が一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよい。
【0012】
一般式(II)で表されるα−ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸、マンデル酸、2−クロロマンデル酸、3−クロロマンデル酸、4−クロロマンデル酸、2−メチルマンデル酸、3−メチルマンデル酸、4−メチルマンデル酸、2−ヒドロキシマンデル酸、3−ヒドロキシマンデル酸、4−ヒドロキシマンデル酸、2−メトキシマンデル酸、3−メトキシマンデル酸、4−メトキシマンデル酸、2−トリフルオロメチルマンデル酸、3−トリフルオロメチルマンデル酸、4−トリフルオロメチルマンデル酸、2−アミノマンデル酸、3−アミノマンデル酸、4−アミノマンデル酸、2−ニトロマンデル酸、3−ニトロマンデル酸、4−ニトロマンデル酸、2,4−ジクロロマンデル酸、2,4−ジフルオロマンデル酸、3,4−メチレンジオキシマンデル酸などが挙げられる。なお、これらα−ヒドロキシ酸はラセミ体でも光学活性体でもよい。
【0013】
本発明において、α−ヒドロキシ酸エステルの原料としてだけでなく、反応溶媒としても用いられるアルコールは、一般式(III):
【化11】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表される。
一般式(III)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基である。「置換基を有していてもよいアルキル基」の説明および例示は、上記Rにおけるものと同じである。
【0014】
一般式(III)で表されるアルコールは、特に制限されなく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどが好ましい。その使用量は、α−ヒドロキシ酸に対して1.0〜10.0倍量が好ましく、2.0〜5.0倍量であることがさらに好ましい。アルコールの量が多すぎる場合は、反応後に蒸留除去する際に時間を要することから、工業的に好ましくない。一方、溶媒量が少なすぎる場合は、α−ヒドロキシ酸とアルコールとの反応が平衡反応であることから、収率を低下させてしまう。
【0015】
本発明に用いられる酸触媒は、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸などの鉱酸、およびメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸などが挙げられる。その使用量はα−ヒドロキシ酸に対して0.10モル当量以下が好ましく、0.05モル当量以下がさらに好ましい。酸触媒の使用量が多すぎる場合は、反応速度が速くなるものの、酸触媒を中和するために必要となる塩基の量が多くなり、析出する塩を除去する必要があるなど操作が煩雑になる。一方、酸触媒が少なすぎる場合は、反応速度が低下し、反応を完結させるための時間が長くなるなど効率が悪くなる。
【0016】
エステル化反応終了後、本発明においては、反応液に塩基を添加して酸触媒を中和する。
【0017】
本発明において、酸触媒を中和するために用いる塩基は、揮発性であり、目的とするα−ヒドロキシ酸エステルより沸点が低く、エステル化反応終了後に蒸留除去することができるものであれば特に制限されない。本発明に好ましく用いられる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンまたはアンモニアなどが挙げられる。本発明において、揮発性の塩基の添加量は、理論当量以上であればよいが、1.0〜2.0当量が好ましく、1.0〜1.5当量であることがさらに好ましい。塩基の使用量が多すぎる場合は、溶媒を蒸留除去した後に未反応の塩基と反応で生成した水によりエステル化合物が加水分解し、収率が低下するなど、工業的に好ましくない。一方、塩基の使用量が少なすぎると、酸触媒が残存することによりエステル化合物が、反応で生成した水により加水分解し、収率を低下させる要因になってしまう。
【0018】
本発明において、揮発性の塩基の滴下温度は、50℃以下が好ましく、30℃以下がさらに好ましい。温度が高くなりすぎると、過剰量の塩基によりエステルが加水分解し、収率を低下させるだけでなく、原料に光学活性体を用いた場合は、ラセミ化による光学純度も低下してしまう。
【0019】
揮発性の塩基により酸触媒を中和した後、本発明においては、残存するアルコール、塩基および前記反応で生成した水を蒸留除去する。
【0020】
本発明において、残存するアルコール、塩基および反応で生成した水を蒸留除去する際の温度は、使用したアルコールおよび塩基の沸点以上であれば問題なく、特に限定されないが、温度が高すぎると、不純物が増加するとともに、反応液が着色するため、100℃以下が好ましく、60℃以下がさらに好ましい。圧力に関しては、溶媒を濃縮することが可能であればよく、常圧でも減圧下でも問題ない。
【0021】
残存するアルコール、塩基および反応で生成した水を蒸留除去する際に用いられる装置は、溶媒等の蒸留除去に通常用いられるものであれば特に制限されない。例えば、回分式の単蒸留装置、フラッシュ蒸留装置、薄膜蒸留装置などが挙げられる。
【0022】
以上の操作により、簡便な操作で、目的とするα−ヒドロキシ酸エステルを高純度かつ高収率で得ることができる。本発明の好ましい態様によれば、化学純度95%以上の高品質な製品を取得することができる。
【0023】
本発明により製造される一般式(I)で表されるα−ヒドロキシ酸エステルの具体例としては、乳酸メチルエステル、マンデル酸メチルエステル、2−クロロマンデル酸メチルエステル、3−クロロマンデル酸メチルエステル、4−クロロマンデル酸メチルエステル、2−メチルマンデル酸メチルエステル、3−メチルマンデル酸メチルエステル、4−メチルマンデル酸メチルエステル、2−ヒドロキシマンデル酸メチルエステル、3−ヒドロキシマンデル酸メチルエステル、4−ヒドロキシマンデル酸メチルエステル、2−メトキシマンデル酸メチルエステル、3−メトキシマンデル酸メチルエステル、4−メトキシマンデル酸メチルエステル、2−トリフルオロメチルマンデル酸メチルエステル、3−トリフルオロメチルマンデル酸メチルエステル、4−トリフルオロメチルマンデル酸メチルエステル、2−アミノマンデル酸メチルエステル、3−アミノマンデル酸メチルエステル、4−アミノマンデル酸メチルエステル、2−ニトロマンデル酸メチルエステル、3−ニトロマンデル酸メチルエステル、4−ニトロマンデル酸メチルエステル、2,4−ジクロロマンデル酸メチルエステル、2,4−ジフルオロマンデル酸メチルエステル、3,4−メチレンジオキシマンデル酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、マンデル酸エチルエステル、2−クロロマンデル酸エチルエステル、3−クロロマンデル酸エチルエステル、4−クロロマンデル酸エチルエステル、2−メチルマンデル酸エチルエステル、3−メチルマンデル酸エチルエステル、4−メチルマンデル酸エチルエステル、2−ヒドロキシマンデル酸エチルエステル、3−ヒドロキシマンデル酸エチルエステル、4−ヒドロキシマンデル酸エチルエステル、2−メトキシマンデル酸エチルエステル、3−メトキシマンデル酸エチルエステル、4−メトキシマンデル酸エチルエステル、2−トリフルオロメチルマンデル酸エチルエステル、3−トリフルオロメチルマンデル酸エチルエステル、4−トリフルオロメチルマンデル酸エチルエステル、2−アミノマンデル酸エチルエステル、3−アミノマンデル酸エチルエステル、4−アミノマンデル酸エチルエステル、2−ニトロマンデル酸エチルエステル、3−ニトロマンデル酸エチルエステル、4−ニトロマンデル酸エチルエステル、2,4−ジクロロマンデル酸エチルエステル、2,4−ジフルオロマンデル酸エチルエステル、3,4−メチレンジオキシマンデル酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル、マンデル酸プロピルエステル、2−クロロマンデル酸プロピルエステル、3−クロロマンデル酸プロピルエステル、4−クロロマンデル酸プロピルエステル、2−メチルマンデル酸プロピルエステル、3−メチルマンデル酸プロピルエステル、4−メチルマンデル酸プロピルエステル、2−ヒドロキシマンデル酸プロピルエステル、3−ヒドロキシマンデル酸プロピルエステル、4−ヒドロキシマンデル酸プロピルエステル、2−メトキシマンデル酸プロピルエステル、3−メトキシマンデル酸プロピルエステル、4−メトキシマンデル酸プロピルエステル、2−トリフルオロメチルマンデル酸プロピルエステル、3−トリフルオロメチルマンデル酸プロピルエステル、4−トリフルオロメチルマンデル酸プロピルエステル、2−アミノマンデル酸プロピルエステル、3−アミノマンデル酸プロピルエステル、4−アミノマンデル酸プロピルエステル、2−ニトロマンデル酸プロピルエステル、3−ニトロマンデル酸プロピルエステル、4−ニトロマンデル酸プロピルエステル、2,4−ジクロロマンデル酸プロピルエステル、2,4−ジフルオロマンデル酸プロピルエステル、3,4−メチレンジオキシマンデル酸プロピルエステル、などが挙げられる。これらのα−ヒドロキシ酸エステルは、対応するα−ヒドロキシ酸とアルコールとを反応させることにより得ることができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
攪拌機および温度計を備えた1000mL三口フラスコに、R−3−クロロマンデル酸50.0g(0.27mol)を量り取り、メタノール173gを加えてこれに溶解させた。この溶液に酸触媒として98%硫酸0.3g(0.002mol)を加えた後、75℃まで昇温し、75℃で5時間煮沸還流した。その後、反応液を30℃まで冷却し、トリエチルアミン0.30g(0.003mol)を加え、酸触媒を中和した。その後、50℃、200mmHgの減圧下で溶媒を蒸留除去し、R−3−クロロマンデル酸メチルエステル52.0g(0.26mol)を収率96.0%で得た。得られたR−3−クロロマンデル酸メチルエステルについて、高速液体クロマトグラフィーにより純度分析を行ったところ、R−3−クロロマンデル酸メチルエステルの化学純度は98.5%であった。また、光学純度は99.9%ee以上であった。分析条件は下記のとおりである。
【0026】
〔分析条件〕
α−ヒドロキシ酸エステルの高速液体クロマトグラフィーによる化学純度分析
試料調製方法:試料25mgを溶離液25mLに溶解
装置:カラムオーブン 日本分光社製 865−CO
UV 日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター 島津製作所社製 C−R3A
カラム:ODS−2(GLサイエンス社製)
キャリヤー:アセトニトリル:10mMリン酸水溶液=30/70
カラム温度:40℃
流速:1mL/min
波長:230nm

α−ヒドロキシ酸エステルの高速液体クロマトグラフィーによる光学純度分析
試料調製方法:試料25mgを溶離液25mLに溶解
装置:カラムオーブン 日本分光社製 865−CO
UV 日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター 島津製作所社製 C−R3A
カラム:CHIRALCEL OD(ダイセル化学工業社製)
キャリヤー:n−ヘキサン/2−プロパノール=95/5
カラム温度:35℃
流速:0.5mL/min
波長:254nm
【0027】
[比較例1]
攪拌機および温度計を備えた1000mL三口フラスコに、R−3−クロロマンデル酸50.0g(0.27mol)を量り取り、メタノール173gを加えてこれに溶解させた。この溶液に酸触媒として98%硫酸0.3g(0.002mol)を加えた後、75℃まで昇温し、75℃で5時間煮沸還流した。その後、50℃、200mmHgの減圧下で溶媒を蒸留除去し、R−3−クロロマンデル酸メチルエステル47.9g(0.24mol)を収率88.5%で得た。得られたR−3−クロロマンデル酸メチルエステルについて、前述の分析条件を用いて高速液体クロマトグラフィーにより純度分析を行ったところ、R−3−クロロマンデル酸メチルエステルの化学純度は95.1%であった。また、光学純度は99.9%ee以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、反応溶媒としてアルコールを用いて、酸触媒の存在下、α−ヒドロキシ酸をエステル化した後、揮発性の塩基を加え、溶媒を蒸留除去するという簡便な操作で、高純度かつ高収率でα−ヒドロキシ酸エステルを製造することができる。また、本発明によれば、原料として光学活性体を用いた場合、高い光学純度で目的のα−ヒドロキシ酸エステルを得ることができる。得られたアルカンジオールは、医薬品、農薬、液晶および高分子の原料として幅広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基であり、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基である。]
で表されるα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法であって、
下記一般式(II):
【化2】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるα−ヒドロキシ酸を、一般式(III):
【化3】

[式中、Rは、前記と同じ意味を表す。]
で表されるアルコールに溶解し、酸触媒の存在下、前記アルコールと反応させた後、理論当量または過剰量の揮発性の塩基により前記酸触媒を中和し、残存するアルコール、塩基および前記反応で生成した水を蒸留除去することを特徴とする、α−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記揮発性の塩基がトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリンまたはアンモニアであることを特徴とする請求項1記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有していてもよいフェニル基であり、前記Rが、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基である、請求項1または2に記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記α−ヒドロキシ酸および前記α−ヒドロキシ酸エステルが光学活性体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のα−ヒドロキシ酸エステルの製造方法。

【公開番号】特開2010−1219(P2010−1219A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158616(P2008−158616)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】