説明

α,β−不飽和ケトンの製造方法

【課題】有機溶媒を使用することなく酸化剤として過酸化水素を用い、簡易なプロセスで安全に効率よく、環状第三級アリルアルコールからα,β−不飽和ケトンを製造する方法を提供する。
【解決手段】アリルアルコールと過酸化水素水溶液を、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒の存在下で酸化反応させることを特徴とするα,β−不飽和ケトンの製造方法により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を合成する際の中間体として有用なα,β−不飽和ケトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α,β−不飽和ケトンは、香料や医薬品中間体の部分構造として、また有用な有機材料を製造する上で幅広く使用される基本骨格として知られている。
第三級アリルアルコールからα,β−不飽和ケトンを製造する方法としては、例えば、クロロクロム酸ピリジニウムを用いる方法が報告されている(非特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記の非特許文献1で使用されるクロム酸酸化剤は、毒性が高く工業的生産に問題がある。
【0004】
そこで、クロム酸酸化剤を使用しないで、第三級アリルアルコールからα,β−不飽和ケトンを製造する方法としては、酸化剤に超原子価ヨウ素を用いる方法が報告されている。例えば、1−ヒドロキシ−1,2−ベンズヨードキサル−3(1H)−オン−1−オキシド(IBX)を用いる方法(非特許文献2参照)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカルまたはその誘導体を用いる方法(非特許文献3,4参照)、2−ヨードキシベンゼンスルホン酸を用いる方法(非特許文献5参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Bablar, J. H. and Coghlan, M. J. Synth.Commun., 6, 469(1976)
【非特許文献2】Iwabuchi, Y. et al., Org.Lett., 6, 4303(2004)
【非特許文献3】Iwabuchi, Y. et al., J. Org. Chem., 73, 4750(2008)
【非特許文献4】Iwabuchi, Y. et al., Org.Lett., 10, 4715(2008)
【非特許文献5】Ishihara, K. et al., Org.Lett., 11, 3470(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の製造方法は、酸化剤由来のヨウ素や硫黄等を含む有機化合物が副生成物として目的物と当量生成する上に、アセトン、ジクロロメタンなどの有機溶媒を大量に使用するため、環境に与える負荷が大きく工業的生産に問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、有機溶媒を使用することなく酸化剤として過酸化水素を用い、簡易なプロセスで安全に効率よく、環状第三級アリルアルコールからα,β−不飽和ケトンを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、酸化物由来の有機化合物としての副生成物が大量に生成せず、有機溶媒を用いることなく環境に優れたα,β−不飽和ケトンの製造方法について鋭意検討した結果、酸化剤として過酸化水素を用いることにより、α,β−不飽和ケトンを極めて高収率で製造できる方法を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法は、アリルアルコールと過酸化水素水溶液を、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒の存在下で酸化反応させることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、酸化剤由来のヨウ素や硫黄等を含む有機化合物が副生成物として生成することなく、有機溶媒を使用しないため反応終了後の溶媒除去操作を必要とせず反応操作が簡便で、且つ環境や人体への影響を極めて小さくすることができ工業的生産に優れる。
【0011】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法において、前記アリルアルコールが、一般式(1)
【0012】
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、nは1〜4の整数を示す。)で表される構造を有する、ことが好ましい。
【0013】
この発明によれば、アリルアルコールとして上記の一般式(1)を用いるので、環状骨格を後から構築する手間を省き、かつ環状骨格を維持したまま、期待する位置にα,β−不飽和カルボニル構造を構築できる。
【0014】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法において、前記周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒が0価の金属触媒である、ことが好ましい。
【0015】
この発明によれば、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒が0価の金属触媒であり、2価の金属触媒を用いる場合に比べてアリルアルコールが配位しやすく、従って反応がスムーズに進行する。
【0016】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法において、前記0価の金属触媒が白金、炭素担体に担持された白金、炭素担体に担持されたルテニウムから選択される少なくとも1種である、ことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、0価の金属触媒が白金、炭素担体に担持された白金、炭素担体に担持されたルテニウムから選択される少なくとも1種であるので、容易に入手可能な金属触媒でかつ回収再使用を期待できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法によれば、酸化剤由来のヨウ素や硫黄等を含む有機化合物が副生成物として生成することなく、また有機溶媒を使用しないため反応終了後の溶媒除去操作を必要とせず反応操作が簡便で、且つ環境や人体への影響を極めて小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法について説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定解釈されるものではない。
【0020】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法は、アリルアルコールと過酸化水素水溶液を、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒の存在下で、酸化反応させる。以下、説明する。
【0021】
原料溶液は、アリルアルコールと過酸化水素水溶液である。アリルアルコールとしては、下記一般式(1)で示される環状第三級アリルアルコールが好適に用いられる。
【0022】
【化2】

(式中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、nは1〜4の整数を示す。)で表される構造を有する。
【0023】
上記一般式(1)において、R及びRの置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、この中でも、メチル基、ブチル基が好ましい。
【0024】
及びRの置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、炭素数3〜20、好ましくは3〜10の単環、多環又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられ、この中でも、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0025】
及びRの置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜20、好ましくは6〜14の単環、多環又は縮合環式の芳香族炭化水素基が挙げられる。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられ、この中でも、フェニル基、トリル基が好ましい。
【0026】
及びRの置換基を有していてもよいアラルキル基としては、炭素数7〜20、好ましくは7〜15の単環、多環又は縮合環式のアラルキル基が挙げられる。具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、この中でも、ベンジル基、フェネチル基が好ましい。
【0027】
及びRの置換基を有していてもよい複素環基としては、環中に少なくとも1個以上の窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を有する3〜15員環、好ましくは3〜10員環であって、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基等の炭素環式基と縮合していてもよい飽和又は不飽和の単環、多環又は縮合環式のものが挙げられる。具体的には、オキシラニル基、ピリジル基、チエニル基、フェニルチエニル基、チアゾリル基、フリル基、ピペリジル基、ピペラジル基、ピロリル基、イミダゾリル基、キノリル基、ピリミジル基等が挙げられ、この中でも、ピリジル基、フリル基が好ましい。
【0028】
及びRの置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状又は分岐状のアシル基が挙げられる。具体例には、アセチル基、ベンゾイル基、ヘプタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基等が挙げられ、この中でも、ベンゾイル基、ヘプタノイル基が好ましい。
【0029】
及びRの置換基を有していてもよいアミド基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状又は分岐状のアミド基が挙げられる。具体例には、メチルアミド基、エチルアミド基、i−プロピルアミド基、テトラデシルアミド基等が挙げられ、この中でも、メチルアミド基、i−プロピルアミド基が好ましい。
【0030】
及びRの置換基を有していてもよいホスホリル基としては、ジヒドロキシホスホリル基、ジメトキシホスホリル基等が挙げられ、この中でも、ジヒドロキシホスホリル基が好ましい。
【0031】
及びRのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基の置換基としては、当該反応に悪影響を及ぼさないものであればどのような置換基でも良いが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、例えばフェニル基、ナフチル基等のアリール基、例えばオキシラニル基、ピリジル基、フリル基等の複素環基、例えばメトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等のアルコキシ基、例えばメトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、スルホン酸基、シアノ基、ニトロ基、例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のシリル基、ヒドロキシ基、例えば無置換アミド基、メチルアミド基、プロピルアミド基、テトラデシルアミド基等のアミド基、例えばアセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、例えばジヒドロキシホスホリル基、ジメトキシホスホリル基等のホスホリル基、例えばメチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基等のスルフィニル基、例えばメチルスルホニル基、フェニルスルホニル基等のスルホニル基、例えばメチルスルホナート基、フェニルスルホナート基等のスルホナート基等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、一般式(1)で示される環状第三級アリルアルコールとして、種々のものを用いることができるが、好ましくは、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール、1−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オール、1−フェニル−2−シクロヘプテン−1−オール、1−フェニル−2−シクロオクテン−1−オール、1−フェニル−2−シクロペンテン−1−オール等が挙げられ、この中でも、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール、1−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オールが好ましい。
【0033】
本発明においては、酸化剤として過酸化水素が用いられる。過酸化水素の濃度は特に制限はなく、市販の30%過酸化水素水でもよく、水で希釈して用いてもよい。過酸化水素の使用量は、環状第三級アリルアルコールのヒドロキシル基に対して1.0〜5.0モル倍、好ましくは1.0〜3.0モル倍の範囲である。
【0034】
本発明においては、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒を用いる。周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒としては、これらの金属の担持金属、金属粉末、金属錯体等が用いられるが、いわゆる0価の金属触媒を用いることが好ましい。0価の金属触媒とは、広義に解釈し、形式的に金属上の酸化数が0価の金属触媒を指し、配位子の有無は問わないものとする。
【0035】
このような触媒としては、例えば、炭素を担体として白金を担持した触媒(以下、白金/炭素のように表記する。)、白金/シリカ、白金/アルミナ、白金ブラック(ヘキサクロロ白金(IV)酸等をアルカリ性水溶液中で、還元すると得られる黒色で微粉末の白金)、ビス(ジベンジリデンアセトン)白金、ビス(1、5−シクロオクタジエン)白金、パラジウム/炭素、パラジウム/シリカ、パラジウム/アルミナ、パラジウムブラック(白金ブラック同様に還元法によって得られる黒色で微粉末のパラジウム)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、ニッケル/炭素、ニッケル/シリカ、ニッケル/アルミナ、ニッケル粉末、ニッケルブラック(白金ブラック同様に還元法によって得られる黒色で微粉末のニッケル)、ロジウム/炭素、ロジウム/シリカ、ロジウム/アルミナ、ロジウムブラック(白金ブラック同様に還元法によって得られる黒色で微粉末のロジウム)、コバルト粉末、ルテニウム/炭素、ルテニウム/シリカ、ルテニウム/アルミナ、ルテニウムブラック(白金ブラック同様に還元法によって得られる黒色で微粉末のルテニウム)等が挙げられるが、白金/炭素、白金ブラック、ルテニウム/炭素が好ましい。第8族〜第10族の0価の金属触媒類は単独で使用しても、2種類以上を混合使用してもよい。
【0036】
周期律表第8族〜第10族の0価の金属触媒の使用量は、基質の環状第三級アリルアルコールに対して0.0001〜10モル%、好ましくは0.0005〜5モル%の範囲である。
【0037】
本発明の反応条件には、特に制限はないが、反応温度は30〜120℃、好ましくは50〜100℃の範囲である。反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでも良いが、常圧で行うことが望ましい。
【0038】
本発明においては、環状第三級アリルアルコールと触媒を混合した溶液を反応温度に設定し、次いで過酸化水素水溶液を徐々に滴下して撹拌しながら反応させる方法が採られる。過酸化水素水溶液を滴下する前に、あらかじめ水を混合しなくても反応は進行するが、水をあらかじめ混合することで、反応速度が速く、反応を容易に進行させることができる。水の使用量は特に制限はないが、原料である環状第三級アリルアルコール1gあたり、0.1〜200mlの範囲である。
【0039】
本発明の酸化反応の反応時間は、所望する副反応抑制の程度により適宜決定することができる。通常は6時間以内で、好ましくは3時間以内で行われる。
【0040】
このようにして生成したα,β−不飽和ケトンは、反応終了後に水相から分離して取り出し、再結晶や蒸留、昇華等の通常の方法によって精製される。
【0041】
このようにして得られるα,β−不飽和ケトンとしては、一般式(2)
【0042】
【化3】

(式中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、nは1〜4の整数を示す。)で表される構造を有する。
【0043】
上記の酸化反応工程で得られるα,β−不飽和ケトンとしては、例えば、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オン、3−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3−フェニル−2−シクロヘプテン−1−オン、3−フェニル−2−シクロオクテン−1−オン、3−フェニル−2−シクロペンテン−1−オン等が挙げられる。
【0044】
本発明に係るα,β−不飽和ケトンの製造方法においては、上記の触媒を用いたことから、ジクロロメタン、アセトンや酢酸エチル等の有機溶媒を使用しなくても該過酸化水素酸化反応を効果的に実施することができ、対応するα,β−不飽和ケトンを高収率で製造することができる。また、反応操作が簡便で反応終了後の溶媒除去操作等を不要とすると共に、環境や人体への影響・毒性がきわめて小さく、環境に対する負荷を軽減する効果も有し、安全かつ簡便で効率的にα,β−不飽和ケトンを得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実施例と比較例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0046】
(実施例1)
白金ブラック(2mg,0.01mmol)、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)および水(1mL)を混合し、90℃で3分間撹拌した。その混合溶液に30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンを収率91%で得た。
【0047】
(実施例2)
白金ブラック(2mg,0.01mmol)、1−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オール(154mg,1.0mmol)、および水(1.0mL)を混合し、90℃で3分間撹拌した。その混合溶液へ30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オンを収率85%で得た。
【0048】
(実施例3)
5%白金/炭素(5%Pt/C)(40mg,0.01mmol)、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)、および水(1.0mL)を混合し、90℃で3分間撹拌した。その混合溶液へ30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンを収率18%で得た。
【0049】
(実施例4)
5%ルテニウム/炭素(5%Ru/C)(20mg,0.01mmol)、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)、および水(1.0mL)を混合し、90℃で3分間撹拌した。その混合溶液へ30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンを収率37%で得た。
【0050】
(比較例1)
1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)および水(1mL)を混合し、触媒である白金ブラックを添加せずに90℃で3分間撹拌した。その混合溶液へ30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製したところ、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンの収率は0%であった。
【0051】
(比較例2)
白金ブラック(2mg,0.01mmol)、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)および水(1mL)を混合し、過酸化水素水を添加せずに90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製したところ、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンの収率は2%であった。
【0052】
(比較例3)
塩化白金(II)カリウム(4mg,0.01mmol)、1−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オール(174mg,1.0mmol)を混合し、その混合溶液へ30%過酸化水素水溶液(340mg,3.0mmol)を徐々に滴下し、90℃で3時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却した。次いで、反応混合物をろ過し、減圧下で濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製したところ、3−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オンの収率は0%であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリルアルコールと過酸化水素水溶液を、周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒の存在下で酸化反応させることを特徴とするα,β−不飽和ケトンの製造方法。
【請求項2】
前記アリルアルコールが、一般式(1)
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、Rは、水素原子、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アシル基、アミド基、ホスホリル基、nは1〜4の整数を示す。)で表される構造を有する、請求項1に記載のα,β−不飽和ケトンの製造方法。
【請求項3】
前記周期律表第8族〜第10族の金属化合物を含有する触媒が0価の金属触媒である、請求項1又は2に記載のα,β−不飽和ケトンの製造方法。
【請求項4】
前記0価の金属触媒が白金、炭素担体に担持された白金、炭素担体に担持されたルテニウムから選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のα,β−不飽和ケトンの製造方法。



















【公開番号】特開2012−224555(P2012−224555A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91047(P2011−91047)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発/廃棄物、副生成物を削減できる革新的プロセス及び化学品の開発/革新的酸化プロセス基盤技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】