説明

γ−ブチロラクトン類の製造方法

【課題】置換基を有するγ−ブチロラクトン類を製造するに際し、温和な反応条を適用した簡便なγ−ブチロラクトン類の製造方法を提供する。
【解決手段】
このような置換基を有するγ−ブチロラクトン類の製造方法は、パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて反応系に還元剤を加え、該環状不飽和化合物の還元反応を行う工程を含むことを特徴とするγ−ブチロラクトン類の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、γ−ブチロラクトン類の製造方法に関する。より詳しくは、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とから環状不飽和化合物を製造し、続いて還元することにより置換基を有するγ−ブチロラクトン類を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−ブチロラクトンは、環内にエステル結合を有する五員環化合物である。従来、溶剤、電解液や、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドンといった化合物の原料として使用されてきたほか、近年、置換基を有するγ−ブチロラクトン(以下、簡単に置換γ−ブチロラクトン類とも言う)が、高沸点電解液や、香料、医農薬等の原料に適用できることが示されてきており、各分野において非常に有用な化合物であると言える。
【0003】
従来のγ−ブチロラクトン類の製造方法としては、マレイン酸やコハク酸およびその誘導体を水素化する方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、高圧水素下での反応であるため、高価な耐圧反応装置で製造上煩雑な工程が必要となり、また、置換基を有するγ−ブチロラクトン類を製造するためには、多段階を経て合成される置換基を有するマレイン酸類やコハク酸類を用意する必要があり、生産性、安全性、経済性の面から工夫の余地があった。
【0004】
また、1,4−ブタンジオールを脱水素する方法(例えば、特許文献3参照)や、ジヒドロフランを水の存在下に水和、脱水素する方法(例えば、特許文献4参照)が開示されている。しかしながら、高温条件下において副生成物として可燃性の水素が発生するばかりでなく、置換基を有するγ−ブチロラクトン類を製造するためには、多段階を経て合成される置換基を有する1,4−ブタンジオール類やジヒドロフラン類を用意する必要があり、生産性、安全性、経済性の面から工夫の余地があった。
【0005】
また、アクリル酸とアルコールをジ第三級ブチルパーオキシドの存在下に反応させ、γ−アルキル−γ−ラクトンを得る方法(例えば、特許文献5参照)が開示されている。しかしながら、高温条件下においてアクリル酸とパーオキシドを使用するため、ラジカル重合が副反応として暴走する危険性があり、安全性の面から工夫の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01−25771号公報
【特許文献2】特表2002−500221号公報
【特許文献3】特開平10−152485号公報
【特許文献4】特開平9−505067号公報
【特許文献5】特開平8−231525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、簡便かつ効率の良い置換γ−ブチロラクトン類の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、γ−ブチロラクトン類の効率的な製造方法について鋭意研究を重ねたところ、パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて該不飽和化合物を還元してγ−ブチロラクトン類を製造する方法に着目した。上記製造方法により、温和な反応条下、基質として使用するα,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物の組み合わせにより、様々な置換γ−ブチロラクトン類を簡便に製造できることを見出し、上記課題をみごと解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて還元剤存在下、該不飽和化合物を還元することにより、置換γ−ブチロラクトン類を製造する方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明は、パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて、環状不飽和化合物の製造に使用したパラジウム触媒を除去することなく、還元剤を系中に導入し、環状不飽和化合物を還元することにより、置換γ−ブチロラクトン類を製造する方法である。
本発明の製造方法は、パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて、環状不飽和化合物の製造に使用したパラジウム触媒を除去することなく、還元剤を系中に導入し、環状不飽和化合物を還元することにより、置換γ−ブチロラクトン類を製造する方法であって、環状不飽和化合物の製造工程と、それに続く還元工程を含むものである限り、その他の工程を含んでもよい。
【0011】
本発明の置換γ−ブチロラクトン類の製造方法に用いられるパラジウム触媒は、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とからの環状不飽和化合物の製造に一般に用いられるものを用いることができる(国際公開第2008/023823号パンフレット参照)。
【0012】
上記触媒とは、反応の活性化エネルギーを低くする作用を持つ物質で、基質と短寿命の中間体を形成することにより新しい反応経路を可能にし、反応速度を増大させる物質である。触媒は基質よりも相対的に少量である方が好ましいが、基質と当量若しくはそれ以上加えて反応させ、反応後に回収した後、2回目以降の反応にも使用することができる場合にも、ここでは触媒と呼ぶ。このとき、1回目の反応終了後に触媒活性を戻すために処理を施しても良いし、施さなくても良い。反応活性点の触媒作用を助ける助触媒成分を含んでいてもよい。本発明の製造方法において用いられる上記パラジウム触媒は、1種若しくは2種以上を使用することができる。
【0013】
上記パラジウム触媒としては、酢酸パラジウムやトリフルオロ酢酸パラジウム等に代表されるパラジウムカルボキシラート、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、水酸化パラジウム、テトラキス(アセトニトリル)パラジウムテトラフルオロボレート、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム等に代表される酸素配位性有機基を有するパラジウム、ビス(アセトニトリル)塩化パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)塩化パラジウム、ジクロロ(オクタジエン)パラジウム等に代表される不飽和結合含有有機基を有するパラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウム、窒素原子含有有機化合物が配位したパラジウム、硫黄原子含有有機化合物が配位したパラジウム、ニトロ基及び/又はニトロソ基が配位したパラジウム、酸化パラジウム等に代表される2価のパラジウムや、[Pd(CO)(OAc)]・2AcOHに代表される1価のパラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム黒等に代表される0価のパラジウム等が好ましい。また上記パラジウムは、3価若しくは4価のパラジウムでもよい。
【0014】
上記パラジウムを含む化合物としては、酢酸パラジウムやトリフルオロ酢酸パラジウム等に代表されるパラジウムカルボキシラート、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナート)パラジウム等に代表される酸素配位性有機基を有するパラジウム、ジクロロ(オクタジエン)パラジウム等に代表される不飽和結合含有有機基を有するパラジウム、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウム、窒素原子含有有機化合物が配位したパラジウム、硫黄原子含有有機化合物が配位したパラジウムが特に好ましい。
【0015】
パラジウムが配位子を有する場合には、該配位子は単座配位子でもよいし、二座以上の多座配位子でもよい。光学活性な配位子を有するパラジウムを触媒に用いた場合には、還元反応後、α位及び/又はβ位及び/又はγ位に光学活性点を有するγ−ブチロラクトン類を合成することが可能である。
【0016】
上記触媒は、1種若しくは2種以上を使用することができ、反応開始時に一括で添加してもよいし、反応中に逐次的に添加してもよい。
【0017】
上記パラジウム触媒は、多孔質担体等に担持されていてもよく、担持元素は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。多孔質担体としては、活性炭、濃硝酸等による酸化処理を施した活性炭、カーボンブラック、濃硝酸等による酸化処理を施したカーボンブラック、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンモレキュラーシーブス、イオン交換樹脂、カルボン酸担持イオン交換樹脂、電子吸引性基含有カルボン酸担持イオン交換樹脂、デンドリマー等に代表される有機化合物や、シリカ、ポーラスシリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム等に代表される酸化物や硫化物、ポリオキソメタレート、ポリオキソメタレート含有化合物、モンモリロナイト、アパタイト、ハイドロタルサイト、珪藻土、粘土化合物、ゼオライト、メソ多孔体、シリカ−アルミナ、シリカ−酸化チタン、酸化チタン−酸化ジルコニウム、燐酸アルミニウム等に代表される複合酸化物、表面有機修飾シリカ、有機−無機ハイブリッド等に代表される有機無機複合化合物等が挙げられる。
【0018】
担体の形態としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、ペレット状、押し出し形状、リング状等どの形態でもよい。ケイ素含有化合物等を用いて、有機基により表面処理を行ってもよい。
【0019】
また、上記パラジウム触媒は、担持中及び/又は担持前後に、酸化処理及び/又は還元処理を行ってもよい。パラジウムの担体上への担持形態としては、均一担持(Uniform)型、外層担持(Egg Shell)型、内層担持(Egg White)型、中心担持(Egg Yolk)型等いずれの形態でもよい。
【0020】
上記パラジウム触媒の上記担体への担持方法としては、沈殿法、共沈法、混錬法、ゲル化法、沈着法、含浸法(平衡吸着法、蒸発乾固法、Dry Impregnation法)、イオン交換法、溶融法、展開法、水熱合成法、蒸着法等が挙げられる。
【0021】
液相で担持を行う場合、液のpHや温度は使用する担体や担持手法により適宜設定すればよいが、pHは0.05以上13.9以下であることが好ましく、温度はマイナス20℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0022】
パラジウムと共に、それ以外の1種以上の元素を担体に担持して共存させてもよい。担持元素は同じ箇所に存在してもよいし、別々の箇所に存在してもよい。また、合金化してもよい。
【0023】
パラジウム以外の元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、珪素、ゲルマニウム、錫、鉛、窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、塩素、臭素、ヨウ素等が好ましく、パラジウムを担持する前に担体に担持してもよいし、該化合物を担持した後に担持してもよいし、該化合物を担持するのと同時に担持してもよい。
【0024】
担持の際に、酸、塩基、エチレンジアミン四酢酸等の配位性化合物、界面活性剤、緩衝剤、その他担持に必要若しくは有利に作用する添加剤等の化合物を共存させてもよい。
【0025】
上記パラジウムを担持する前後、若しくは担持操作中に、ろ過、水洗、乾燥、熱処理、焼成、酸化処理、還元処理等の操作を行ってもよく、該操作を組み合わせて行ってもよい。
【0026】
パラジウムの担持量としては、担体100質量%に対して0.00001質量%以上900質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.0001質量%以上800質量%以下であり、更に好ましくは、0.001質量%以上600質量%以下である。
【0027】
上記環状不飽和化合物を製造する際、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、銅、銀、金、ホウ素、アルミニウム、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン及びテルルからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含む化合物1種類以上を、系中若しくは触媒に共存させてもよい。この時、上記元素含有化合物は、反応系中で単独に存在してもよいし、触媒と複核化合物や合金等を形成してもよい。
【0028】
このように、多成分系の触媒において、主成分が単独で示す触媒反応を強化する作用を持つ補助成分を助触媒と呼ぶ。助触媒は実施する反応条件に即して適宜選択することができ、無機物でもよいし有機物を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の製造方法において用いられるパラジウム触媒の使用量は、不飽和有機化合物100mol%に対して、100mol%以下であることが好ましい。より好ましくは、50mol%以下であり、更に好ましくは、20mol%以下であり、特に好ましくは、10mol%以下である。また、0.0000001mol%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.0000005mol%以上であり、更に好ましくは、0.000001mol%以上であり、特に好ましくは、0.000005mol%以上である。触媒の使用量が、100mol%を超えると、目的物の収率が特に向上しないことから経済的に不利となる場合がある。0.0000001mol%未満であると、触媒の量が少ないことから、反応が充分に進行しなくなるおそれがある。
【0030】
上記環状不飽和化合物を製造する際、反応中及び/又は反応後に触媒と再酸化剤を使用することが好ましいが、上記再酸化剤としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されるものではなく、1種若しくは2種以上使用することができる。
【0031】
中でも、キノン類、過酸化物、酸素、酸化物、遷移金属含有化合物、鉱酸、一酸化窒素、一酸化二窒素、亜硝酸エステル等が好ましい。より好ましくは、ベンゾキノン、アントラキノン、2−(シクロヘキシルスルフィニル)−ベンゾキノン、2−(フェニルスルフィニル)−ベンゾキノン、過酸化水素、過酸化水素水、過酢酸、t−ブチルハイドロパーオキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、オキソン、空気、分子状酸素、分子状酸素含有気体、原子状酸素、オゾン、酸化ルテニウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化セレン、酸化テルル、ポリオキソメタレート、酸化バナジウム、バナジルアセチルアセトナート等のバナジウム含有化合物、二酸化マンガン、酢酸マンガン等のマンガン含有化合物、酸化鉄、硝酸鉄、鉄含有フタロシアニン化合物類等の鉄含有化合物、酸化コバルト、コバルト含有ポルフィリン化合物類、コバルト含有サレン化合物類等のコバルト含有化合物、酸化銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、銅アセチルアセトナート類等の銅含有化合物、塩酸、硝酸、硫酸、一酸化窒素、一酸化二窒素、亜硝酸エステル等が好ましい。分子状酸素を再酸化剤の一つとして使用することがより好ましい。
【0032】
上記環状不飽和化合物の製造に使用されたパラジウム触媒は、引き続き該環状不飽和化合物を還元して置換γ−ブチロラクトン類を製造する触媒として使用することができるが、該パラジウム触媒に加えて、これとは異なる触媒を新たに添加して還元反応を行い、置換γ−ブチロラクトン類を製造してもよい。上記還元反応に新たに添加して使用される触媒としては、チタン、ジルコニウム、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金等が挙げられ、1種若しくは2種以上を使用することができる。上記触媒は、均一系触媒であってもよいし、担体等に担持した不均一系触媒であってもよい。
【0033】
上記還元剤としては、水素;アルカリ金属・アルカリ土類金属のヒドリド化合物やその誘導体;ホウ素やアルミニウムのヒドリド誘導体;遷移金属のヒドリド錯体;錫・鉄・亜鉛・亜鉛アマルガム等の金属と塩酸・硫酸等の酸とを組み合わせたもの;ナトリウム・リチウム・アルミニウム・マグネシウム・亜鉛等の金属とアルコールとを組み合わせたもの;塩化第一錫・硫酸第一鉄・水酸化第一鉄・三塩化チタン等の低原子価金属化合物;蟻酸とアミン類とを組み合わせたもの;ヒドラジン類;アルコール類;ヒドロキシルアミン類;蟻酸・蟻酸ナトリウム・蟻酸カリウム、蟻酸マグネシウム、蟻酸カルシウム、蟻酸バリウム;チオ硫酸ナトリウム・亜硫酸水素ナトリウム・ハイドロサルファイトナトリウム等の還元剤を用いることができるが、これらの中でも、水素、アルカリ金属・アルカリ土類金属のヒドリド化合物やその誘導体、ホウ素やアルミニウムのヒドリド誘導体、蟻酸とアミン類とを組み合わせたもの、ヒドラジン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、蟻酸・蟻酸ナトリウムが好ましく、より好ましくは、水素、ヒドラジン、蟻酸とアミン類とを組み合わせたもの、蟻酸・蟻酸ナトリウムである。特に好ましくは、水素、蟻酸とアミン類とを組み合わせたもの、蟻酸である。すなわち、還元剤が、水素、蟻酸、及び、蟻酸とアミン類とを組み合わせたものからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の一つである。なお、(1)水素、(2)蟻酸、(3)蟻酸とアミン類とを組み合わせたものを3種とすれば、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
還元剤によりパラジウムは0価となり、かつ、環状不飽和化合物の不飽和結合部位が水添され、置換γ−ブチロラクトン類が生成することになる。
【0034】
上記還元剤の使用量としては、生成した液中に存在する環状不飽和化合物に対して、1〜1000000当量であることが好ましい。1〜1000000当量である場合、充分な還元反応を行うことが可能となる。より好ましくは、1.1〜100000当量であり、更に好ましくは、1.2〜10000当量である。
【0035】
上記製造方法は溶媒の存在下で反応させてもよい。上記溶媒は、反応の進行を阻害しない限り特に限定されるものではなく、炭化水素、芳香族炭化水素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、ニトリル、スルフィド、スルホキシド、アミン、アミド、イミド、含ハロゲン化合物、カーボネート、イオン性液体等が使用できる。
【0036】
α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和有機化合物及び/又はγ−ブチロラクトン類が反応温度で液体である場合には、これら基質を溶媒として使用することもできる。上記溶媒は、1種若しくは2種以上を使用することができ、環状不飽和化合物の製造工程と、還元によるγ−ブチロラクトンの製造工程における溶媒とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
上記溶媒としては、中でも炭化水素、芳香族炭化水素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、エーテル、ニトリル、スルホキシド、アミン、アミド、含ハロゲン化合物、カーボネート、イオン性液体が好ましい。例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、イソブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ラクトン、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコールエーテル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルジエタノールアミン、ヘキサメチルトリエタノールアミン、ホルムアミド、アセトアミド、ピロリドン、イミダゾリジノン、アクリルアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、カーボネート、イオン性液体等が挙げられ、1種若しくは2種以上を用いることができる。
【0038】
環状不飽和化合物の製造工程と、還元による置換γ−ブチロラクトン類の製造工程における溶媒とは、同じであることが特に好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、酢酸、プロピオン酸、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、カーボネートが反応速度の面で特に好ましい。
【0039】
上記環状不飽和化合物を製造する工程と、該環状不飽和化合物を還元して置換γ−ブチロラクトン類を製造する工程は、回分式、半回分式、流通式(固定床・流動床)、高速ジェットを利用したループリアクター等のような拡散律速反応に適した反応形式等いずれの反応様式を使用してもよく、環状不飽和化合物の製造工程と、還元による置換γ−ブチロラクトンの製造工程における反応様式は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
本発明の置換γ−ブチロラクトン類の製造方法において、上述した環状不飽和化合物の製造工程における反応条件としては、例えば、反応温度は20℃以上が好ましく、また、200℃以下が好ましい。より好ましくは、60℃以上、150℃以下である。
【0041】
反応時間は、1時間以上が好ましく、また、96時間以下が好ましい。より好ましくは、4時間以上、90時間以下である。反応圧力としては、常圧以上、ゲージ圧200kg/cm以下が好ましい。上限は、100kg/cmがより好ましく、50kg/cmが更に好ましく、25kg/cmが特に好ましい。
【0042】
還元による置換γ−ブチロラクトン類の製造工程における還元反応条件としては、例えば、反応温度は0℃以上が好ましく、また、200℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上、150℃以下である。
【0043】
反応時間は、1時間以上が好ましく、また、96時間以下が好ましい。より好ましくは、4時間以上、90時間以下である。反応圧力としては、常圧以上、ゲージ圧10kg/cm以下が好ましい。
【0044】
還元反応工程においては、還元剤の種類と上記温度及び反応時間の設定により、環状不飽和化合物の還元反応を進行させることなく、パラジウム触媒の還元反応のみを進行させ、触媒回収だけを行うことも可能である。
【0045】
圧力調整や気相部組成の管理が必要な場合には、それに使用する気体としては、反応に悪影響を及ぼさなければ特に限定されないが、窒素、水素、酸素、空気、酸素/窒素標準ガス、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。上記気体は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0046】
本発明の製造方法に用いられるα,β−不飽和カルボン酸は、特に制限されるものではないが、下記一般式(1)若しくは(2)で表されるものが好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
式中、上記R、R、R、R、R、Rは、特に限定されず、同一若しくは異なって、水素原子、水酸基、炭素数1以上60以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上60以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、ハロゲン基、イソニトリル基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸基、カルボニル基(例えば、ケトンやアルデヒド)、アミノ基、アミンオキシド基、ニトロン基、アミド基、アジド基、アセタール基、アゾ基、アゾキシ基、アジン基、イミノ基、イミド基、エナミン基、エナミド基、オルトエステル基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケタール基、オニウム塩、複素環式化合物、ヘテロ芳香族化合物若しくはヘテロ元素等を有する原子団が好ましい。
【0050】
より好ましくは、水素原子、炭素数1以上30以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上30以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、アミノ基、アミド基若しくはオニウム塩を有する原子団であり、更に好ましくは、水素原子、炭素数1以上18以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基若しくは芳香族基含有基、又は、炭素数0以上18以下のエステル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基若しくはアミノ基を有する原子団である。上記R、R、R、R、Rは、結合し、環構造を形成してもよい。
【0051】
上記Rは、水素原子、炭素数1以上12以下のアルコシキ基、炭素数1以上12以下のアシルオキシ基がより好ましい。更に好ましくは、水素原子、メトキシ基、エトキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等であり、特に好ましくは、α,β−不飽和カルボン酸がアクリル酸、クロトン酸、ソクロトン酸、β,β−ジメチルアクリル酸、桂皮酸、α−メトキシアクリル酸、α−エトキシアクリル酸、α−アセトキシアクリル酸、α−ベンゾイルオキシアクリル酸であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の製造方法において用いられる不飽和有機化合物は、特に制限されるものではないが、下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
【0053】
【化3】

【0054】
式中、R、R、R10及びR11としては、水素原子、水酸基、炭素数1以上60以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上60以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、ハロゲン基、イソニトリル基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸基、カルボニル基(例えば、ケトンやアルデヒド)、アミノ基、アミンオキシド基、ニトロン基、アミド基、アジド基、アセタール基、アゾ基、アゾキシ基、アジン基、イミノ基、イミド基、エナミン基、エナミド基、オルトエステル基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケタール基、オニウム塩、複素環式化合物、ヘテロ芳香族化合物若しくはヘテロ元素等を有する原子団が好ましい。より好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上30以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上30以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、アミノ基、アミド基若しくはオニウム塩を有する原子団を表す。更に好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上18以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基若しくは芳香族基含有基、又は、炭素数0以上18以下のエステル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基若しくはアミノ基を有する原子団を表す。上記R、R、R10、R11は、結合し、環構造を形成してもよい。
【0055】
上記不飽和有機化合物は、炭素数が18以下であることが特に好ましい。中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、1−オクテン、1,7−オクタジエン、1−デセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。
【0056】
本発明の製造方法においては、上記α,β−不飽和カルボン酸を、不飽和有機化合物100mol%に対して、0.00001mol%以上、1000000mol%以下で使用することが好ましい。0.00001mol%未満であっても、1000000mol%を超えても、環状不飽和化合物の充分な収率を得ることができなくなるおそれがある。上記下限は、0.0001mol%がより好ましく、0.001mol%が更に好ましい。更に好ましくは0.01mol%であり、更により好ましくは0.1mol%であり、特に好ましくは1mol%である。上記上限は、500000mol%がより好ましく、250000mol%が更に好ましい。更に好ましくは、100000mol%であり、更に好ましくは、50000mol%であり、特に好ましくは、25000mol%である。
上記α,β−不飽和カルボン酸や不飽和有機化合物は、1種若しくは2種以上を使用することができ、反応開始時に一括で添加してもよいし、反応中に逐次的に添加してもよい。
【0057】
本発明の製造方法において用いられる環状不飽和化合物は、特に制限されるものではないが、下記一般式(4)や(5)で表されるものが好ましい。
【0058】
【化4】

【0059】
【化5】

【0060】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11は、上記R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11と同様である。
【0061】
本発明の環状不飽和化合物として特に好ましい化合物の具体例としては、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチレン−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−プロピル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ペンチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ,γ−ジメチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−γ−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−エチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−プロピル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ブチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ペンチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β,β−ジメチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−フェニル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−メチル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−エチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−プロピルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ブチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ジメチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ジエチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ジプロピルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ジブチルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−シクロヘキシレン−γ−ブチロラクトン、α−フェニルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ジフェニルメチレン−γ−ブチロラクトン、α−ビニル−γ−ブチロラクトン、α−ビニル−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、γ−プロピル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ペンチル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−α−ビニル−γ−ブチロラクトン、α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、α−メチルビニル−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−プロピル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ペンチル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−α−メチルビニル−γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0062】
本発明の製造方法により製造される置換γ−ブチロラクトン類は、特に制限されるものではないが、下記一般式(6)で表されるものが好ましい。
【0063】
【化6】

【0064】
式中、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、水素原子、水酸基、炭素数1以上60以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上60以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、ハロゲン基、イソニトリル基、シアナート基、イソシアナート基、チオシアナート基、イソチオシアナート基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン酸基、カルボニル基(例えば、ケトンやアルデヒド)、アミノ基、アミンオキシド基、ニトロン基、アミド基、アジド基、アセタール基、アゾ基、アゾキシ基、アジン基、イミノ基、イミド基、エナミン基、エナミド基、オルトエステル基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケタール基、オニウム塩、複素環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ元素等を有する原子団が好ましい。より好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上30以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基、芳香族基含有基、直鎖不飽和アルキル基、分岐不飽和アルキル基若しくは脂環式不飽和アルキル基、又は、炭素数0以上30以下のエステル基、ニトリル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、アミノ基、アミド基、オニウム塩を有する原子団を表す。更に好ましくは、水素原子、水酸基、炭素数1以上18以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基若しくは芳香族基含有基、又は、炭素数0以上18以下のエステル基、カルボン酸基、エーテル基、水酸基、スルホン酸基、カルボニル基、アミノ基を有する原子団を表す。上記R14、R15、R16、R17は、結合し、環構造を形成してもよい。
【0065】
更に好ましくは、R14、R15が水素原子であり、かつ、α位とγ位にのみ上記置換基を有するγ−ブチロラクトン類である。特に好ましくは、R14、R15が水素原子であり、かつ、R12、R13、R16、R17が炭素数1以上12以下の直鎖飽和アルキル基、分岐飽和アルキル基、脂環式飽和アルキル基若しくは芳香族基含有基であるγ−ブチロラクトン類である。
【0066】
本発明の製造方法により製造される置換γ−ブチロラクトン類として特に好ましい化合物の具体例としては、α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ペンチル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−α−メチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β−メチル−γ−ブチロラクトン、β−エチル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β−プロピル−γ−ブチロラクトン、β−ブチル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β−ペンチル−γ−ブチロラクトン、β−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β−フェニル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−β−メチル−γ−メチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−ブチロラクトン、α−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−ブチル−γ−ブチロラクトン、α−ペンチル−γ−ブチロラクトン、α−ジメチルメチル−γ−ブチロラクトン、α−ジエチルメチル−γ−ブチロラクトン、α−ジプロピルメチル−γ−ブチロラクトン、α−シクロヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−ブチロラクトン、α−ジフェニルメチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−バレロラクトン、α−エチル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−エチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−ペンチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、α−プロピル−γ−バレロラクトン、γ−エチル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−エチル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−プロピル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−ブチル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−ペンチル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−ヘキシル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、γ−フェニル−α−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−バレロラクトン、α−ベンジル−γ−エチル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−ブチル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−ペンチル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ベンジル−γ−フェニル−γ−ブチロラクトンが挙げられる。
【0067】
還元反応終了後は、必要に応じて、蒸留、ろ過、抽出、遠心分離、再結晶、乾燥、カラムクロマトグラフィー等の工程を経て分離・精製することにより、目的のγ−ブチロラクトン類を得ることができる。このような分離・精製工程としては、例えば、還元反応後の反応液、触媒を分離後の反応液、分液等の所定の操作を行った抽出液等に対し、常圧蒸留(精留)又は減圧蒸留(精留)や再結晶等の操作を施すことにより、生成物である置換γ−ブチロラクトン類を単離・精製することができる。未反応のα,β−不飽和カルボン酸、不飽和有機化合物の分離・回収を行う場合には、該操作は還元反応を行う前に実施するのが好ましい。未反応のα,β−不飽和カルボン酸、不飽和有機化合物及び溶媒は、高純度で回収されるので、反応に再度使用することができる。蒸留における重合防止剤としては、上記重合防止剤のいずれも使用できるが、中でも、フェノチアジン等のアミン化合物;テトラメチルピペリジン−N−オキシド、4−ヒドロキシ−テトラメチルピペリジン−N−オキシド等の安定遊離基含有化合物;ジチオカルバミン酸銅等の金属含有化合物等の1種又は2種以上を用いることがより好ましい。
【発明の効果】
【0068】
本発明の置換γ−ブチロラクトン類の製造方法は、上述の構成よりなり、温和な反応条件下で置換基を有するγ−ブチロラクトン類を効率的かつ簡便に、中間体を単離することなく得ることができるため、工業的製造に利用することができる有用な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお収率は、参考例1で得られたγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン類を100とした場合の収率(モル%)である。
【0070】
(参考例1)γ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンの製造
1L四つ口セパラブルフラスコにアクリル酸(150mmol)、1−オクテン(900mmol)、トルエン(450mL)、トリフルオロ酢酸パラジウム(6mmol)、ステアリン酸銅(24mmol)を加えた。ここに、アクリル酸(900mmol)及び1−オクテン(990mmol)をフィードポンプで反応開始から3時間かけて添加すると同時に、酸素を300mL/分の速さで系中に加え、ディーンシュターク装置で発生する水を除去しながら、90℃で24時間攪拌した。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、目的化合物であるγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンが、860mmol/Lの濃度で系中に存在することが分かった。
【0071】
(実施例1)
参考例1で得られたγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを含む反応液5mL(4.3mmol)を試験管に採り、ここに蟻酸(7.6mmol)、トリエチルアミン(2.3mmol)を加えて、空気常圧下90℃で24時間攪拌した。この時、パラジウム黒の沈殿が観測された。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、目的化合物であるγ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン(収率:47%)が得られていることを確認した。
【0072】
(実施例2)
参考例1で得られたγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを含む反応液5mL(4.3mmol)を試験管に採り、ここに蟻酸(8.0mmol)を加えて、空気常圧下90℃で24時間攪拌した。この時、パラジウム黒の沈殿が観測された。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、目的化合物であるγ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン(収率:31%)が得られていることを確認した。
【0073】
(実施例3)
参考例1で得られたγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを含む反応液10mL(8.6mmol)を試験管に採り、水素常圧下110℃で24時間攪拌した。この時、パラジウム黒の沈殿が観測された。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、目的化合物であるγ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン(収率:75%)が得られていることを確認した。
【0074】
(実施例4)
参考例1で得られたγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトンを含む反応液10mL(8.6mmol)をオートクレーブに採り、水素3kg/cm2(ゲージ圧)下110℃で24時間攪拌した。この時、パラジウム黒の沈殿が観測された。冷却後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析し、目的化合物であるγ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン(収率:96%)が得られていることを確認した。
【0075】
上記実施例より、パラジウム触媒存在下、アクリル酸(α,β−不飽和カルボン酸)と1−オクテン(不飽和有機化合物)よりγ−ヘキシル−α−メチレン−γ−ブチロラクトン(環状不飽和化合物)を製造し、続いて還元剤を導入して還元反応を行うことにより、パラジウムが0価になると同時に、水添反応が進行して、α位及びγ位にアルキル置換基を有するγ−ヘキシル−α−メチル−γ−ブチロラクトン(γ−ラクトン類)を収率良く簡便に、中間体を単離することなく製造できることが明らかとなった。この時、パラジウム触媒は沈殿するため、その回収も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の置換基を有するγ−ブチロラクトンの製造方法は、上述の構成よりなり、温和な条件下で簡便かつ効率的に反応が進行するため、工業的に利用することができる有用な製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム触媒存在下、α,β−不飽和カルボン酸と不飽和有機化合物とを反応させて環状不飽和化合物を製造した後、続いて反応系に還元剤を加え、該環状不飽和化合物の還元反応を行う工程を含むことを特徴とするγ−ブチロラクトン類の製造方法。
【請求項2】
前記還元剤は、水素、蟻酸、及び、蟻酸とアミン類とを組み合わせたものからなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1に記載のγ−ブチロラクトン類の製造方法。

【公開番号】特開2011−20953(P2011−20953A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167223(P2009−167223)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】