説明

δ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法

【課題】δ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の提供。
【解決手段】式IIで表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、式IIIで表されるアルコールと、を反応させ式Iで表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体を製造する方法。


(式中、R11及びR21は脂肪族基、芳香族基、炭素で結合する複素環基を、R12〜R16は各々独立に水素、脂肪族基、芳香族基、又は炭素で結合する複素環基を、Y11は電子吸引性基を表す。R12とR13、R13とR15、R15とY11、Y11とR11、Y11とR21、R11とR14、R21とR14、R14とR16、R16とR12は、互いに結合して環を形成してもよく、R11とR21は、同じ基ではない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、δ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法に関する。更に詳しくは、例えば紫外線吸収剤等として有用な、特定のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体をエステル交換により、安全にかつ高収率、経済的に製造するδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
δ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法については古くから報告がなされており、例えばジアニル誘導体を経由する方法が開示されているが(例えば、特許文献1及び2、非特許文献1参照)、これらの製造方法は、反応経路が長く、総収率が低い。
【0003】
一方、ストレプトシアニン誘導体とカルボニル化合物を水素化ナトリウムとトリエチルアミンの存在下で反応させることによるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法が開示されているが(例えば、非特許文献2参照)、この製造方法で用いる水素化ナトリウムは発火性であり、安全性上工業的には好ましくなく、また収率も十分ではなかった。
【0004】
これらを克服する製造方法として、ストレプトシアニン誘導体とカルボニル化合物を安全な有機塩基の存在下で反応させる方法が開示されているが(例えば、特許文献3参照)、この方法では酢酸エステル誘導体を用いるため該エステルのアルキル基炭素数が多い(炭素数8以上)と反応性が低下して、低収率となるため、これらアルキル基でも高収率で製造する方法が求められていた。
【特許文献1】米国特許第2,165,339号公報
【特許文献2】米国特許第2,186,608号公報
【特許文献3】特開2003−277349号公報
【非特許文献1】エフ・エム・ハマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレイティッド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John−Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、チャプター(Chapter)XIII、第491頁
【非特許文献2】テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)第21巻、第3,155頁(1980年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、例えば紫外線吸収剤等として有用な、特定のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体を、エステル交換により、安全にかつ高収率、経済的に製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討の結果、下記本発明により前記目的が達成されることを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 下記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、下記一般式(III)で表されるアルコールと、を反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(I)〜(III)中、R11およびR21は、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、Y11は電子吸引性基を表す。R12とR13、R13とR15、R15とY11、Y11とR11、Y11とR21、R11とR14、R21とR14、R14とR16、およびR16とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。また、R11とR21は、同じ基であることはない。)
【0009】
<2> 前記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、前記一般式(III)で表されるアルコールと、を反応させる際に、チタン酸テトラアルキルを触媒として添加することを特徴とする<1>に記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【0010】
<3> 前記一般式(II)におけるR21がメチル基またはエチル基であることを特徴とする<1>または<2>に記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【0011】
<4> 前記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、前記一般式(III)で表されるアルコールとの反応を、900hPa以下で行うことを特徴とする<1>〜<3>の何れか1つに記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、例えば紫外線吸収剤等として有用な、特定のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体を、エステル交換により、安全にかつ高収率、経済的に製造する製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という場合がある。)は、下記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、下記一般式(III)で表されるアルコールと、を反応させることを特徴とする。本発明の製造方法により、所望のカルボン酸に結合する基を有する下記一般式(I)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体を安全にかつ高収率、経済的に製造することができる。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(I)〜(III)中、R11およびR21は、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、Y11は電子吸引性基を表す。R12とR13、R13とR15、R15とY11、Y11とR11、Y11とR21、R11とR14、R21とR14、R14とR16、およびR16とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。また、R11とR21は、同じ基であることはない。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
(本発明における基)
本発明の製造方法における化合物の説明に入る前に、本発明における基に関して詳細に説明する。
本明細書において脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基が好ましく挙げられる。
前記アルキル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルキル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜18であることが更に好ましい。
一方、前記置換アルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同様である。
【0017】
前記アルケニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルケニル基の炭素数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。
一方、置換アルケニル基のアルケニル部分は、前記アルケニル基と同様である。
【0018】
前記アルキニル基は分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。前記アルキニル基の炭素数は2〜20であることが好ましく、2〜18であることが更に好ましい。
一方、置換アルキニル基のアルキニル部分は、前記アルキニル基と同様である。
【0019】
前記アラルキル基および置換アラルキル基のアルキル部分は、前記アルキル基と同様である。また、前記アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分は後記アリール基と同様である。
【0020】
前記置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基および置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシルの各基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルの各基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イルの各基)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
【0021】
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルの各基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルの各基)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、
【0022】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニルの各基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルの各基)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、1−ピラゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルの各基)、
【0023】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシの各基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシの各基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシの各基)、
【0024】
ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシの各基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシの各基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシの各基)、
【0025】
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0026】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
【0027】
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
【0028】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、
【0029】
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
【0030】
アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
【0031】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
【0032】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
【0033】
イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表す。
【0034】
また、上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換してもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニルの各基が挙げられる。
【0035】
一方、置換アラルキル基のアリール部分の置換基の例は、下記置換アリール基の置換基の例と同様である。
【0036】
本明細書において芳香族基は、アリール基および置換アリール基を意味する。またこれらの芳香族基は脂肪族環、他の芳香族環または複素環が縮合していてもよい。芳香族基の炭素数は6〜40が好ましく、6〜30が更に好ましく、6〜20が更に好ましい。またその中でもアリール基としてはフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。
【0037】
置換アリール基のアリール部分は、前記アリール基と同様である。置換アリール基の置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例として挙げたものと同様である。
【0038】
本明細書において複素環基は、5員または6員の飽和または不飽和複素環を含むことが好ましい。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環のヘテロ原子の例としては、B,N,O,S,SeおよびTeが挙げられる。ヘテロ原子としては、N,OおよびSが好ましい。複素環は炭素原子が遊離の原子価(一価)を有する(複素環基は炭素原子において結合する)ことが好ましい。
【0039】
好ましい複素環基の炭素数は1〜40であり、より好ましくは1〜30であり、更に好ましくは1〜20である。飽和複素環の例としては、ピロリジン環、モルホリン環、2−ボラ−1,3−ジオキソラン環および1,3−チアゾリジン環が挙げられる。不飽和複素環の例としては、イミダゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびキノリン環が挙げられる。複素環基は置換基を有していてもよい。この場合の置換基の例としては、先に置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基及び置換アラルキル基のアルキル部分の置換基の例として挙げたものと同様である。
【0040】
次に、前記一般式(I)〜(III)で表される化合物について説明する。前記一般式(I)及び(III)におけるR11は、反応収率が良好な点で、好ましくは脂肪族基、芳香族基であり、より好ましくは炭素数4〜30のアルキル基、炭素数4〜30のアルケニル基、炭素数4〜30のアルキニル基、炭素数7〜30のアラルキル基および炭素数6〜30のアリール基であり、更に好ましくは炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基および炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアルケニル基であり、最も好ましくは炭素数8〜20の1級アルキル基である。
【0041】
前記一般式(I)及び(II)におけるR12及びR13は、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基および炭素数6〜20のアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基および炭素数6〜10のアリール基であり、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基であり、最も好ましくは炭素数1〜5の1級アルキル基である。また、R12とR13とが同一であることも好ましい。
【0042】
前記一般式(I)及び(II)におけるR14、R15およびR16は、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0043】
前記一般式(II)におけるR21は、原料の入手性および本発明の反応で副生成物となったアルコールが留去しやすい点で、好ましくは脂肪族基、芳香族基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基または炭素数2〜5のアルキニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基であり、より更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基であり、最も好ましくはエチル基である。
【0044】
また、R11とR21とは同一ではなく、R11はR21より炭素数が4以上多いことが好ましい。
【0045】
前記一般式(I)及び(II)においてY11が示す電子吸引性基とは、その置換基のハメットの置換基定数σ値が正の数値となることを意味している。ここでハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則によりもとめられた置換基定数にはσ値とσ値があり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があるが、例えば、J.A.Dean編「Lange’sHandbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、122号、96〜103頁、1979年(南江堂)に詳しい。本発明においてY11はハメットの置換基定数σ値により規定されるが、これらの成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなくその値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に含まれる限り包含されることは勿論である。
【0046】
前記一般式(I)及び(II)におけるY11としては、好ましくはアルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールカルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。
11が表す基をさらに説明すると、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜15のアリールスルホニル基(例えば、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、p−クロロベンゼンスルホニル基、ナフタレンスルホニル基)、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜5のアシル基(例えば、ホルミル基、アセチル 基、プロピオニル基)、好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜15のアリールカルボニル基、ニトリル基、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜9のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、p−ニトロフェノキシカルボニル基)が好適に挙げられるが、好ましくは炭素数6〜15のアレーンスルホニル基であり、最も好ましくはベンゼンスルホニル基である。
【0047】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例として、例示化合物:(I−1)〜(I−20)を、一般式(II)で表される化合物の具体例の具体例として、例示化合物:(II−1)〜(II−10)を、一般式(III)で表される化合物の具体例の具体例として、例示化合物:(III−1)〜(III−10)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、以下の具体例において、「Ph」はフェニル基を示す。
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
次に前記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、前記一般式(III)で表されるアルコールとの反応(以下、「本発明に係る反応」という場合がある。)について説明する。
本発明に係る反応はエステル交換反応であり、金属酸化物またはチタン酸テトラアルキルを触媒として添加することが好ましく、チタン酸テトラアルキルを添加することがより好ましい。チタン酸テトラアルキルは、四塩化チタンと一般式(IV)で表される化合物から調製可能であり、また市販品として入手したものをそのまま使用することもできる。
【0053】
【化7】

【0054】
一般式(IV)中、R41は脂肪族基、芳香族基または炭素原子で結合する複素環基を表す。
また、一般式(IV)で表される化合物を過剰に用い、異なるアルキル基を有するチタン酸テトラアルキル、例えばチタン酸テトラブチルを添加すると、平衡的に一般式(IV)のアルキルを有するチタン酸テトラアルキルが系内で生成することにより、反応を行うことができる。
【0055】
添加するチタン酸テトラアルキルにおけるアルキルとしては、炭素数が1〜20のアルキルであることが好ましく、炭素数が2〜10のアルキルであることがより好ましい。前記チタン酸テトラアルキルの具体例としては、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトラブチルおよびチタン酸テトラ(2−エチルヘキシル)などが挙げられ、入手性および反応性の点でチタン酸テトライソプロピルおよびチタン酸テトラブチルが好ましく、チタン酸テトラブチルが最も好ましい。
本発明に係る反応に添加するチタン酸テトラアルキルの好ましい量は、一般式(II)で表される化合物1モルに対して0.0001〜0.9モルであり、更に好ましくは0.001〜0.7モルであり、更に好ましくは0.01〜0.5モルであり、特に好ましくは0.05〜0.2モルである。
【0056】
一方、本発明に係る反応に用いる一般式(III)で表される化合物の好ましい量は、一般式(II)で表される化合物1モルに対して0.8〜100モルであり、より好ましくは0.9〜20モルであり、更に好ましくは1.0〜7モルであり、特に好ましくは1.5〜5モルであり、最も好ましくは2〜4モルである。
【0057】
本発明に係る反応に用いる溶媒としては、例えばアミド系溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルー2−ピロリドン)、スルホン系溶媒(例えばスルホラン)、スルホキシド系溶媒(例えばジメチルスルホキシド)、ウレイド系溶媒(例えばテトラメチルウレア)、エーテル系溶媒(例えばジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル)、炭化水素系溶媒(例えばトルエン、キシレン、n−デカン)、ハロゲン系溶媒(例えばテトラクロロエタン,クロロベンゼン)、ピリジン系溶媒(例えばピリジン、γ―ピコリン、2,6−ルチジン)およびニトリル系溶媒(例えばアセトニトリル)が挙げられ、これらを単独或いは併用して用いる。
【0058】
このうち好ましくはスルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒およびニトリル系溶媒であり、更に好ましくはエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒およびニトリル系溶媒であり、更に好ましくはエーテル系溶媒、炭化水素系溶媒およびハロゲン系溶媒である。また、無溶媒系で反応を行うことが最も好ましい。
【0059】
本発明に係る反応における反応温度は、0〜250℃が好ましく、より好ましくは30〜220℃、更に好ましくは50〜200℃、特に好ましくは80〜180℃である。
【0060】
また、本発明に係る反応では、残留するR21−OHで表されるアルコールを反応系外へ除去することが好ましく、そのために反応を常圧あるいは減圧下で行うことが好ましく、減圧下にて行うことが更に好ましい。具体的には、本発明に係る反応を900hPa以下で行うことが好ましく、800hPa以下で行うことがより好ましく、650hPa以下で行うことが更に好ましい。一方本発明に係る反応は20hPa以上で行うことが好ましい。
【0061】
一方、本発明に係る反応における反応時間は、5分〜20時間であり、更に好ましくは30分〜15時間であり、更に好ましくは1〜10時間である。また反応の途中で温度を20〜60℃上昇させて、反応を完結させることも好ましい。
【0062】
本発明に係る反応に用いる原料の一般式(II)で表される化合物は、特開2003−277349号公報に記載の方法を参考に合成することができる。
【実施例】
【0063】
以下に本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
例示化合物(I―2)の合成
下記スキームに従い、例示化合物(I―2)を合成した。
【0064】
【化8】

【0065】
3ツ口フラスコに例示化合物(II−2)(特開2003−277349号公報の実施例1に従って合成した。収率82%、HPLC面積比100%)100g、例示化合物(III−2)112g、チタン酸テトラブチル10.0gを入れ、内温150℃で6時間加熱攪拌した。この間フラスコ内を600hPa〜28hPaにて減圧し、150mlの留出物を除いた。その後内温を20℃として、n−ヘキサン2000mlと水1000mlと飽和食塩水200mlを添加して抽出し、得られた有機層を水1000mlと飽和食塩水200mlの混合液で3回洗浄した。こうして得られた有機層をロータリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的の例示化合物(I―2)123gを得た(収率98%、HPLC面積比99.7%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=421であった。また、このもののNMRデータは以下のとおりである。NMR(CDCl):δ=7.993(1H,d、J=12.8Hz)、7.888(2H、dd、J=1.6Hz、8.0Hz)、7.3〜7.5(3H、m)、7.154(1H、d、J=12.8Hz)、6.537(1H、t、J=12.8Hz)、4.010(2H,t、J=6.8Hz)、3.3〜3.4(4H、m)、1.452(2H,dd、J=7.2Hz,7.2Hz)、1.0〜1.4Hz(16H、m)、0.897(3H、t、J=7.0Hz)
【0066】
<実施例2>
例示化合物(I―2)の合成
下記スキームに従い、例示化合物(I―2)を合成した。
【0067】
【化9】

【0068】
3ツ口フラスコに例示化合物(II−2)(特開2003−277349号公報の実施例1に従って合成した。収率82%、HPLC面積比100%)100g、例示化合物(III−2)112g、チタン酸テトライソプロピル8.4gを入れ、内温150℃で8時間加熱攪拌した。この間フラスコ内を550hPa〜35hPaにて減圧し、140mlの留出物を除いた。その後内温を25℃として、n−ヘキサン2000mlと水1000mlと飽和食塩水200mlを添加して抽出し、得られた有機層を水1000mlと飽和食塩水200mlの混合液で3回洗浄した。こうして得られた有機層をロータリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的の例示化合物(I―2)121gを得た(収率97%、HPLC面積比99.7%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=421であった。
【0069】
<実施例3>
例示化合物(I―1)の合成
下記スキームに従い、例示化合物(I―1)を合成した。
【0070】
【化10】

【0071】
3ツ口フラスコに例示化合物(II−1)(特開2003−277349号公報の実施例1に従って合成した。収率80%、HPLC面積比99.7%)29.5g、例示化合物(III−3)54.0g、チタン酸テトラブチル4.5gを入れ、内温145℃で6時間加熱攪拌した。この間フラスコ内を600hPa〜26hPaにて減圧し、150mlの留出物を除いた。その後内温を20℃として、n−ヘキサン800mlと水400mlと飽和食塩水100mlを添加して抽出し、得られた有機層を水400mlと飽和食塩水100mlの混合液で3回洗浄した。こうして得られた有機層をロータリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的の例示化合物(I―1)44.1gを得た(収率98%、HPLC面積比99.9%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=449であった。
【0072】
<実施例4>
例示化合物(I―7)の合成
下記スキームに従い、例示化合物(I―7)を合成した。
【0073】
【化11】

【0074】
3ツ口フラスコに例示化合物(II−7)(特開2003−277349号公報の実施例1に従って合成した。収率86%、HPLC面積比99.8%)22.2g、例示化合物(III−1)43.3g、チタン酸テトラブチル1.5gを入れ、内温150℃で12時間加熱攪拌した。この間フラスコ内を600hPa〜31hPaにて減圧し、140mlの留出物を除いた。その後内温を30℃として、n−ヘキサン1000mlと水500mlと飽和食塩水100mlを添加して抽出し、得られた有機層を水500mlと飽和食塩水100mlの混合液で3回洗浄した。こうして得られた有機層をロータリーエバポレーターで濃縮して得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的の例示化合物(I―7)31.7gを得た(収率99%、HPLC面積比99.9%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=320であった。
【0075】
<比較例1>
下記スキームに従い、例示化合物(I―2)を合成した(特開2003−277349号公報に従った合成(その1))。
【0076】
【化12】

【0077】
1,3−ビス−ジエチルアミノトリメチニウム・二酢酸塩(化合物1、ジエチルアミンおよび酢酸を加熱後、濃縮して得られる)30.0g、N,N−ジメチルアセトアミド60ml、化合物2 31.2gを混合し、DBU(有機塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)30.2gを滴下して室温にて6時間攪拌した。次いで酢酸エチル500mlと水400mlと飽和食塩水100mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル層を水400mlと飽和食塩水100mlの混合液で4回洗浄した。こうして得られた酢酸エチル層をロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製して目的の例示化合物(I―2)を16.9g得た(収率40%、HPLC面積比99.6%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=421であった。
【0078】
<比較例2>
比較例1と同様に、例示化合物(I―2)を合成した(特開2003−277349号公報に従った合成(その2))。
1、3−ビス−ジエチルアミノトリメチニウム・二酢酸塩(化合物1、ジエチルアミンおよび酢酸を加熱後、濃縮して得られる)30.0g、N,N−ジメチルアセトアミド60ml、化合物2 31.2gを混合し、DBU(有機塩基:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)30.2gを滴下して室温にて6時間攪拌した後、更に50℃で7時間加熱攪拌してTLC(薄層クロマトグラフィー)にて原料の化合物2が反応系で消失していることを確認した。次いで酢酸エチル500mlと水400mlと飽和食塩水100mlを添加して抽出し、得られた酢酸エチル層を水400mlと飽和食塩水100mlの混合液で4回洗浄した。こうして得られた酢酸エチル層をロータリーエバポレーターで濃縮して、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーで精製して目的の例示化合物(I―2)を19.4g得た(収率46%、HPLC面積比99.6%)。このもののマススペクトルを測定したところM/E=421であった。
【0079】
<実施例5>
実施例1において、チタン酸テトラブチル10.0gをジルコニウムアセチルアセトナート14.3gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、目的の例示化合物(I―2)105.4gを得た(収率84%、HPLC面積比99.6%)。
【0080】
<実施例6>
実施例1において、フラスコ内を600〜28hPaにて減圧する代わりに、終始常圧にて行った以外は実施例1と同様の操作を行い、目的の例示化合物(I―2)100gを得た(収率80%、HPLC面積比99.6%)。
【0081】
以上より、実施例は、所望のカルボン酸に結合する基(例えば、炭素数8〜20の1級アルキル基)を有する前記一般式(I)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体を安全にかつ高収率、経済的に製造することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、下記一般式(III)で表されるアルコールと、を反応させることを特徴とする下記一般式(I)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【化1】

(一般式(I)〜(III)中、R11およびR21は、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、または炭素原子で結合する複素環基を表し、Y11は電子吸引性基を表す。R12とR13、R13とR15、R15とY11、Y11とR11、Y11とR21、R11とR14、R21とR14、R14とR16、およびR16とR12は、互いに結合して環を形成してもよい。また、R11とR21は、同じ基であることはない。)
【請求項2】
前記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、前記一般式(III)で表されるアルコールと、を反応させる際に、チタン酸テトラアルキルを触媒として添加することを特徴とする請求項1に記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(II)におけるR21がメチル基またはエチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(II)で表されるδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体と、前記一般式(III)で表されるアルコールとの反応を、900hPa以下で行うことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のδ−アミノペンタジエン酸エステル誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2008−81445(P2008−81445A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263438(P2006−263438)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】