いわゆるキャメルバック型の消波装置の改良
【課題】 基礎となる構造の消波効果を維持しつつも、水平方向および垂直方向の力と反転モーメントとを最小化することが可能な、「キャメルバック」型消波装置の改良を提供する。
【解決手段】 わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレートであって、水平プレートの垂直な上流端(12)および下流端(14)が自由水面上まで突出することにより、プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、上流端および下流端の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素(12A,14A)により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレートを備える消波装置であって、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に配置されたプレート部分すなわち浮き台(10A)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする消波装置。
【解決手段】 わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレートであって、水平プレートの垂直な上流端(12)および下流端(14)が自由水面上まで突出することにより、プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、上流端および下流端の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素(12A,14A)により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレートを備える消波装置であって、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に配置されたプレート部分すなわち浮き台(10A)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする消波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋液圧機器の分野に関し、より詳細には、欧州特許第0381572号に記載のいわゆる「キャメルバック」(camel’s back)型の消波装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
消波装置は周知である。消波装置により、たとえば海洋構造物、沿岸または沖合いの設備、さらには港といった場所に打ちつけてくる入射波のエネルギーから、それらの場所を保護することができる。
【0003】
最も普及している装置は、海洋基板上にある岩充填スロープやコンクリート構造体、またはそれら2つの組み合わせによるものであり、海底から隆起することで、入射波に対する直立障害物を形成している。
【0004】
海波は波動現象であるため、この現象を利用して保護対象となる場所に伝わる海波を獲得すると、入射海波の波と比較して振幅がかなり小さくなり、より有利であるように考えられた。これを目的としているのが、モナコ政府の名で発行された欧州特許第0282479号である。この特許は、とりわけ新規な原理を利用し、以後「固定された水の壁」(fixed wall of water)という名で知られている消波装置を開示している。
【0005】
この装置は、わずかに入射海波に浸った状態で保持されている水平プレートを備えている。この水平プレートの上流端および下流端は自由水面上まで上方に突出しており、このプレート上では入射海波が自由に伝播できないようになっている。入射海波に関してプレートを適切な寸法にすることにより、プレートの下に閉じ込められた水の塊は水平方向にしか移動することができず、全体として、入射海波に対して同質で且つ慣性をもった障害物であるが如く機能する。波はこの「固定された水の壁」で反射される。
【0006】
この装置は、持続期間の短い(5秒未満の)海波に対しては十分であるが、海波の持続期間が長くなるとラップ効果(lapping effect)が生じ、保護対象となる場所に伝わる波の振幅という点で不利に作用する。このような理由により、同じくモナコ政府の名で発行された上記欧州特許第0381572号では、このラップ効果を回避することが可能な、消波装置の改良が提案された。この種の改良装置の好適な実施例が、当該欧州特許の図6〜8に示されている。これらの図において、対称な輪郭を有する、いわゆる「キャメルバック」型の水平プレートが示されている。この改良装置の実施形態は、今日モナコ公国のコンダミン港にて運用されており、極めて広範囲にわたる波の持続期間に対して十分に対応している。しかし、持続期間の長い(6〜10秒)海波に対しては、水平方向および垂直方向の流体学的な力が著しく、また装置に作用する反転モーメント(moments of inversion)も著しい。したがって、それらを減少させることにより、消波装置の構造およびその支持体や接続体の構造の寸法を最小化できると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、基礎となる構造の消波効果を維持しつつも、水平方向および垂直方向の力と反転モーメントとを最小化することが可能な、「キャメルバック」型消波装置の改良を提供することである。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る消波装置は、わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレートであって、水平プレートの垂直な上流端および下流端が自由水面上まで突出することにより、プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、上流端および下流端の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレートを備える消波装置であって、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に配置されたプレート部分または浮き台とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィスが設けられていることを特徴とする消波装置。
【0009】
これらのオリフィスによって、特に大きな海波に関して、「キャメルバック」型の消波装置に作用する圧縮力を減少できるため、装置の作動が顕著に改善される。
【0010】
第1の実施形態によると、浮き台の表面の30%超にわたってオリフィスが設けられている。
【0011】
このように浮き台を穿孔すると、特に持続期間の長い海波に関して、水の壁によってプレート下で生じる垂直方向の力を著しく減少できる。この垂直方向の力は、このプレートを上げて波の通過させようとする傾向がある。
【0012】
この浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0013】
この10%前後という有孔率により、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を顕著に改善しつつも消波性の目に見える低下はない。
【0014】
第2の実施形態によると、自由水面下における垂直な上流端の表面の50%超にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0015】
このように上流端を穿孔すると、特に持続期間の長い海波に関して、垂直方向の力を増大させるものの、入射海波により生じる水平方向の力を著しく減少できる。
【0016】
自由水面下における垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0017】
この30%前後という有孔率により、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を過度に悪化させることなく、水平方向の力を大幅に減少させることができる。
【0018】
好適な実施形態によると、浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられており、自由水面下における垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられている。
【0019】
このように、上流端および浮き台にオリフィスを分布させると、装置の消波性能を、全くまたはほとんど低下させることなく、流体学的な力を著しく減少させることができる。
【0020】
一実施形態によると、水平プレートが、海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体によって、または海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドによって、自由水面下で位置決めされていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の特徴を詳述するが、これは例示的なものであって制限を加えるものではない。
【0022】
まず、本出願人が保有し、本発明に係る改良の対象となっている欧州特許第0381572号に記載されている、いわゆる「キャメルバック」型の消波装置の構成が図8に示されている。
【0023】
この装置は、わずかに浸された水平プレート10を備えている。この水平プレート10の上流端12および下流端14は、自由水面上まで垂直上方に突出している。上流のタブ形状要素であるスタブ12Aは上流端に対応しており、下流のタブ形状要素であって上流のタブ形状要素と同じ形状を有するスタブ14Aは下流端に対応している。この種の装置は、たとえば保護対象となる海岸沿いに配置され、相当の長さを有するため、大きな海波が上流端を乗り越えた場合に、装置の一側端が2つあるだけでは、上流端と下流端との間に形成される水溜中の水を排出することができない。そのため、下流端にオリフィス16を設けて、連続する2つの海波の間に水溜に溜まった水を排出する必要がある。この装置の断面は、2つの突出部を有し、キャメルバックに似た形状となっている。考慮されている実施形態によると、このプレートは、十分な径を有するジャケットタイプ、または鉛直や斜めのパイルタイプの強固な支持体18によって水面下で固定されて海底上に堅固に固着されていてもよいし、あるいは、(プレート中に空間を設けて総重量をアルキメデスリフトよりも小さくすることによって)正の浮力を付与されて水面下で浮遊し、ストレッチケーブルまたはロッドにより海底に固着されていてもよい。
【0024】
図1に示す本発明の第1の実施形態は、上記2つの実施態様のいずれにも適用可能であるが、消波装置に作用する垂直方向の圧縮力を制限するという目的で、消波装置が正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドのシステムによって水面下で位置決めされている場合に適用するのが好ましい。本発明の第1の実施形態によると、オリフィス20は、装置の上流端と下流端との間に配置された浮き台(raft)として知られる水平プレートの部分10Aに設けられている。これらの小さいオリフィスは、浮き台表面の、30%超にわたって多数設けられている(この有孔率は、孔のあいた表面とオリフィスの支持面との比率である)。さらに、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、オリフィス20を介して排水されることになる。
【0025】
本発明に係る改良された消波装置の性能を、図2A〜2Dに示す。図2A〜2Dでは4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。
【0026】
これらの曲線は、数値計算に基づいて得られたものであり、試験によって裏付けられている。この試験は、海波の流れの中で、Wが30m、ドラフト(draught)Tが9.50m、水平面からの距離(levelling dimension)cが2m、およびタブ形状要素の横幅が5mである消波装置の1/30縮尺模型を用いて行われた。この消波装置は、海底から80mの深さで固定されるものとする。係数CTの計測は、地中海の平均海波の高さに対応するように、入射海波の頂部から谷部までの高さHが2mである状態で行った。一方、力FxおよびFy、そして反転モーメントMyの計測は、極めて例外的な、100年周期タイプの大しけ時の波に対応するように、入射海波の高さHが10mである状態で行った。
【0027】
図2Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、上記のように有孔率を異ならせた本発明に係る改良された消波装置とを比較することができる。従来技術では、透過係数は、8秒までの持続時間では0.1よりも小さく、その後徐々に増加し、T=10秒のときに0.40まで上昇し、12秒のときには0.70に達する。本発明では、有孔率が10%および20%のとき、当該係数CTは、短期的にはほとんど変化せず、長期的には上昇することがわかる。これらのパーセンテージを超えると、短期的な消波性が低下し始めるため、有孔率の限度を30%とすることができる。
【0028】
図2Bでは水平方向の力が比較されているが、これらはほとんど変化していないことがわかる。したがって、水平方向の力Fxは、有孔率が30%の場合でも105t/mから90t/mに減少するのみである。一方、垂直方向の力は、図2Cに示すように大幅に減少する。したがって、たとえばT=12という極端な持続期間の場合、垂直方向の力Fzは2つに分断され、30%の有孔率で50t/mから25t/mの範囲にわたる。
【0029】
図2Dにおいて、垂直方向の力が減少して水平方向の力が維持されるため、O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントが増大する
【0030】
一般に、浮き台10Aの穿孔による有孔率は、10〜20%である。多くとも30%であり、特に極度の大嵐の場合、垂直方向の力の著しい減少および対応する持続期間での消波装置の効果の向上が得られる。海波の振幅が小さい場合、すなわち持続期間T=5秒未満の場合、この効果はやや小さくなる。有孔率が10%前後の場合、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を顕著に改善しつつも消波性の目に見える低下はない。
【0031】
図3に、本発明の第2の実施形態を示す。この実施例は、消波装置に作用する水平方向の圧縮力を制限するという目的で、天然の海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体上に消波装置が固定されている場合に適用するのが好ましいが、この限りではない。この実施例によると、オリフィス22が装置上流端12に設けられており、この上流端表面の50%超にわたって設けられている。また、上記と同じように、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、連続する2つの海波間の逆流中にオリフィス22を介して排水される。したがって、残存水のマットレスの形成を回避することにより、上流端と下流端との間に形成される水溜を急速に空にすることができる。当該消波装置の性能を、図4A〜4Dに示す。図4A〜4Dでは、上記と同様に4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。試験条件は前回と同じで、自由水面下D=−4mの距離からオリフィスの形成が始まっている。
【0032】
図4Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、これら異なる3種類の有孔率を有する本発明の第2実施形態に係る改良された消波装置とを比較することができる。特に持続期間が長期的である場合(10〜14秒)に、消波装置の効果が大幅に向上しているのがわかる。持続期間Tが10秒のとき、30%の有孔率において、CTは0.40から0.25になる。
【0033】
同様に、有孔率の上昇に伴い、図4Bに示される水平方向の力が大幅に減少している。有孔率が30%になると、水平方向の力Fxの最大値が105t/mから50t/mにまで減少していることがわかる。一方垂直方向の力は、有孔率が30%になると、図4Cに示すように、特に持続期間T=12秒未満のときに著しく増加している。
【0034】
図4Dにおいてもまた、垂直方向の力の増大にもかかわらず水平方向の力が減少しているため、O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントが増大する。
【0035】
一般に、上流端12を穿孔すると、消波装置の全体的な作動に有益である。しかし、垂直方向の力の増大を厳密に制御しなければならない。上流端の穿孔を多くする(特に50%を超える有孔率にする)ことにより、消波装置の構造が非対称に近いものとなり、下流端のみを有する水平プレートとして後部が機能することで、流体学的な力に対して逆らうように作用することがわかるであろう。
【0036】
図5Aに、本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態では、装置に作用する垂直方向の圧縮力および水平方向の圧縮力の両方を制限するという目的で、装置の上流端と下流端との間に配置された浮き台として知られる水平プレートの部分10Aにオリフィス20を設けるとともに、装置の上流端12にオリフィス22を設けている。これらのオリフィスは、上流端表面と同様に、浮き台表面の30%超にわたって設けられている。また、上記と同じように、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、オリフィス20または22を介して排水される。
【0037】
当該消波装置の性能を、図6A〜6Dに示す。図6A〜6Dでは4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の同一有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。試験条件は前回と同じで、自由水面下D=−4mの距離から上流端のオリフィスの形成が始まっている。
【0038】
図6Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、上記の異なる3種類の有孔率を有する本発明の第3実施形態に係る改良された消波装置とを比較することができる。消波装置の効果が、浮き台のみを穿孔した場合の効果と類似していることがわかる。
【0039】
その一方で、上流端を穿孔した場合と同様に、有孔率の上昇に伴い、図4Bに示される水平方向の力が大幅に減少している。有孔率が30%になると、平方向の力Fxの最大値が105t/mから60t/mにまで減少していることがわかる。しかし、図6Cに示すように垂直方向の力も減少しており、たとえば持続期間Tが12秒のときに、有孔率が30%になると40t/mから25t/mにまで減少している。
【0040】
O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントは、図3の構成(上流端のみ穿孔されている)の場合と比較して、ほとんど変化していない。
【0041】
一般に、浮き台10Aおよび上流端12の穿孔を組み合わせると、水平方向の力および垂直方向の力の両方が減少するのに対して消波性はほとんど変化しないため、消波装置の全体的な作動にいっそう有益である。さらに補足的な試験から以下のことがわかった。すなわち、広範囲の海波に対する消波性を目に見えて低下させることなく水平方向の力および垂直方向の力の両方を顕著に改善するためには、浮き台の有孔率と上流端の有孔率とは必ずしも同一である必要はないということ、そして、浮き台の有孔率を10%前後(±5%)に、上流端の有孔率を30%前後(±10%)にすると、消波効果と流体学的な力との比率の点で最適の折衷点が得られること、がわかった。最後の構成は、消波装置が正の浮力を付与され、図5Bに示すように、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドのシステムによって水面下に固定されている場合に、特に効果的である。図5Bでは、上流端12および下流端14を有する水平プレートが示されており、錨26によって海底に固着されているケーブル24がこの水平プレートを保持している。この水平プレートには様々な空間が設けられている。たとえば、参照番号28の空間を設けることによって、水平プレートの総重量がアルキメデスリフト以下となり、水平プレートに正の浮力が付与される。
【0042】
図7A〜7Dでは、この種の最適な構成(図中、参照符号am)と、従来技術による消波装置(実線カーブ)および構成を逆転させた場合(図中、参照符号av)との比較が示されている。構成が逆転させた場合とは、下流端が30%の有孔率で穿孔され、浮き台が10%の有孔率を保持している場合である。この比較により、上流端のオリフィスの機能は、下流端のオリフィスの機能とは全く異なることがわかる。
【0043】
実際、オリフィスが上流端に設けられているか下流端に設けられているかの違いによって、装置の消波性に対する効果(図7A)がさほど変わらないのであれば、特に低い海波または中程度の海波の持続期間において、上流端の穿孔は(浮き台の穿孔と共に)、水平方向の力および垂直方向の力の減少に甚だしく寄与するのに対して、下流端の穿孔はこれらの力に対して実質的に何ら効果を及ぼさないどころか、高い海波の期間においてはこれらの力をごくわずかに増大させることが図7Bおよび7Cからわかる。反転モーメントに関しても同様で、上流端を穿孔すると向上するが、下流端を穿孔するとごくわずかに減少する。
【0044】
本発明のオリフィスは、従来技術による装置、特にケーソンタイプの装置に設けられているオリフィスとは異なり、装置の下流端に設けられた場合は、ケーソンに吸収された入射波とケーソンから回復した波との間に遅延を生じしめることを、またこれらケーソンの水平な隔壁に設けられた場合は、ケーソン中の水の振動を減衰させてエネルギー損失を起こすことを、その本質的な目的とする。これら2つのケースにおいては、オリフィスにおいて圧力損失が起こり、振動の伝播を減衰させるか、またはその障壁となる。
【0045】
一方、本発明によると、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に設けられたプレート部分(浮き台)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面の部分を穿孔するが、その目的は、装置に作用する垂直方向の圧縮力および水平方向の圧縮力を著しく制限することによって、消波装置の構造およびその支持体や接続体の構造の寸法を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る消波装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図2B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図2C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図2D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る消波装置の第2の実施形態を示す図である。
【図4A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図4B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図4C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図4D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図5A】本発明に係る消波装置の第3の実施形態を示す図であり、ジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体上に後部が載置されている。
【図5B】本発明に係る消波装置の第3の実施形態の変形例を示す図であり、この装置が正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドによって位置決めされている。
【図6A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図6B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図6C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図6D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図7A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図7B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図7C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図7D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図8】従来技術による「キャメルバック」型の消波装置を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 水平プレート
10A 浮き台
12 上流端
12A 下流端
14 下流端
14A 下流端
16 オリフィス
18 支持体
20 オリフィス
22 オリフィス
24 ケーブル
26 錨
28 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋液圧機器の分野に関し、より詳細には、欧州特許第0381572号に記載のいわゆる「キャメルバック」(camel’s back)型の消波装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
消波装置は周知である。消波装置により、たとえば海洋構造物、沿岸または沖合いの設備、さらには港といった場所に打ちつけてくる入射波のエネルギーから、それらの場所を保護することができる。
【0003】
最も普及している装置は、海洋基板上にある岩充填スロープやコンクリート構造体、またはそれら2つの組み合わせによるものであり、海底から隆起することで、入射波に対する直立障害物を形成している。
【0004】
海波は波動現象であるため、この現象を利用して保護対象となる場所に伝わる海波を獲得すると、入射海波の波と比較して振幅がかなり小さくなり、より有利であるように考えられた。これを目的としているのが、モナコ政府の名で発行された欧州特許第0282479号である。この特許は、とりわけ新規な原理を利用し、以後「固定された水の壁」(fixed wall of water)という名で知られている消波装置を開示している。
【0005】
この装置は、わずかに入射海波に浸った状態で保持されている水平プレートを備えている。この水平プレートの上流端および下流端は自由水面上まで上方に突出しており、このプレート上では入射海波が自由に伝播できないようになっている。入射海波に関してプレートを適切な寸法にすることにより、プレートの下に閉じ込められた水の塊は水平方向にしか移動することができず、全体として、入射海波に対して同質で且つ慣性をもった障害物であるが如く機能する。波はこの「固定された水の壁」で反射される。
【0006】
この装置は、持続期間の短い(5秒未満の)海波に対しては十分であるが、海波の持続期間が長くなるとラップ効果(lapping effect)が生じ、保護対象となる場所に伝わる波の振幅という点で不利に作用する。このような理由により、同じくモナコ政府の名で発行された上記欧州特許第0381572号では、このラップ効果を回避することが可能な、消波装置の改良が提案された。この種の改良装置の好適な実施例が、当該欧州特許の図6〜8に示されている。これらの図において、対称な輪郭を有する、いわゆる「キャメルバック」型の水平プレートが示されている。この改良装置の実施形態は、今日モナコ公国のコンダミン港にて運用されており、極めて広範囲にわたる波の持続期間に対して十分に対応している。しかし、持続期間の長い(6〜10秒)海波に対しては、水平方向および垂直方向の流体学的な力が著しく、また装置に作用する反転モーメント(moments of inversion)も著しい。したがって、それらを減少させることにより、消波装置の構造およびその支持体や接続体の構造の寸法を最小化できると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、基礎となる構造の消波効果を維持しつつも、水平方向および垂直方向の力と反転モーメントとを最小化することが可能な、「キャメルバック」型消波装置の改良を提供することである。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る消波装置は、わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレートであって、水平プレートの垂直な上流端および下流端が自由水面上まで突出することにより、プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、上流端および下流端の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレートを備える消波装置であって、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に配置されたプレート部分または浮き台とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィスが設けられていることを特徴とする消波装置。
【0009】
これらのオリフィスによって、特に大きな海波に関して、「キャメルバック」型の消波装置に作用する圧縮力を減少できるため、装置の作動が顕著に改善される。
【0010】
第1の実施形態によると、浮き台の表面の30%超にわたってオリフィスが設けられている。
【0011】
このように浮き台を穿孔すると、特に持続期間の長い海波に関して、水の壁によってプレート下で生じる垂直方向の力を著しく減少できる。この垂直方向の力は、このプレートを上げて波の通過させようとする傾向がある。
【0012】
この浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0013】
この10%前後という有孔率により、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を顕著に改善しつつも消波性の目に見える低下はない。
【0014】
第2の実施形態によると、自由水面下における垂直な上流端の表面の50%超にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0015】
このように上流端を穿孔すると、特に持続期間の長い海波に関して、垂直方向の力を増大させるものの、入射海波により生じる水平方向の力を著しく減少できる。
【0016】
自由水面下における垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられていることが好ましい。
【0017】
この30%前後という有孔率により、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を過度に悪化させることなく、水平方向の力を大幅に減少させることができる。
【0018】
好適な実施形態によると、浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられており、自由水面下における垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられている。
【0019】
このように、上流端および浮き台にオリフィスを分布させると、装置の消波性能を、全くまたはほとんど低下させることなく、流体学的な力を著しく減少させることができる。
【0020】
一実施形態によると、水平プレートが、海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体によって、または海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドによって、自由水面下で位置決めされていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、添付図面を参照しつつ本発明の特徴を詳述するが、これは例示的なものであって制限を加えるものではない。
【0022】
まず、本出願人が保有し、本発明に係る改良の対象となっている欧州特許第0381572号に記載されている、いわゆる「キャメルバック」型の消波装置の構成が図8に示されている。
【0023】
この装置は、わずかに浸された水平プレート10を備えている。この水平プレート10の上流端12および下流端14は、自由水面上まで垂直上方に突出している。上流のタブ形状要素であるスタブ12Aは上流端に対応しており、下流のタブ形状要素であって上流のタブ形状要素と同じ形状を有するスタブ14Aは下流端に対応している。この種の装置は、たとえば保護対象となる海岸沿いに配置され、相当の長さを有するため、大きな海波が上流端を乗り越えた場合に、装置の一側端が2つあるだけでは、上流端と下流端との間に形成される水溜中の水を排出することができない。そのため、下流端にオリフィス16を設けて、連続する2つの海波の間に水溜に溜まった水を排出する必要がある。この装置の断面は、2つの突出部を有し、キャメルバックに似た形状となっている。考慮されている実施形態によると、このプレートは、十分な径を有するジャケットタイプ、または鉛直や斜めのパイルタイプの強固な支持体18によって水面下で固定されて海底上に堅固に固着されていてもよいし、あるいは、(プレート中に空間を設けて総重量をアルキメデスリフトよりも小さくすることによって)正の浮力を付与されて水面下で浮遊し、ストレッチケーブルまたはロッドにより海底に固着されていてもよい。
【0024】
図1に示す本発明の第1の実施形態は、上記2つの実施態様のいずれにも適用可能であるが、消波装置に作用する垂直方向の圧縮力を制限するという目的で、消波装置が正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドのシステムによって水面下で位置決めされている場合に適用するのが好ましい。本発明の第1の実施形態によると、オリフィス20は、装置の上流端と下流端との間に配置された浮き台(raft)として知られる水平プレートの部分10Aに設けられている。これらの小さいオリフィスは、浮き台表面の、30%超にわたって多数設けられている(この有孔率は、孔のあいた表面とオリフィスの支持面との比率である)。さらに、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、オリフィス20を介して排水されることになる。
【0025】
本発明に係る改良された消波装置の性能を、図2A〜2Dに示す。図2A〜2Dでは4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。
【0026】
これらの曲線は、数値計算に基づいて得られたものであり、試験によって裏付けられている。この試験は、海波の流れの中で、Wが30m、ドラフト(draught)Tが9.50m、水平面からの距離(levelling dimension)cが2m、およびタブ形状要素の横幅が5mである消波装置の1/30縮尺模型を用いて行われた。この消波装置は、海底から80mの深さで固定されるものとする。係数CTの計測は、地中海の平均海波の高さに対応するように、入射海波の頂部から谷部までの高さHが2mである状態で行った。一方、力FxおよびFy、そして反転モーメントMyの計測は、極めて例外的な、100年周期タイプの大しけ時の波に対応するように、入射海波の高さHが10mである状態で行った。
【0027】
図2Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、上記のように有孔率を異ならせた本発明に係る改良された消波装置とを比較することができる。従来技術では、透過係数は、8秒までの持続時間では0.1よりも小さく、その後徐々に増加し、T=10秒のときに0.40まで上昇し、12秒のときには0.70に達する。本発明では、有孔率が10%および20%のとき、当該係数CTは、短期的にはほとんど変化せず、長期的には上昇することがわかる。これらのパーセンテージを超えると、短期的な消波性が低下し始めるため、有孔率の限度を30%とすることができる。
【0028】
図2Bでは水平方向の力が比較されているが、これらはほとんど変化していないことがわかる。したがって、水平方向の力Fxは、有孔率が30%の場合でも105t/mから90t/mに減少するのみである。一方、垂直方向の力は、図2Cに示すように大幅に減少する。したがって、たとえばT=12という極端な持続期間の場合、垂直方向の力Fzは2つに分断され、30%の有孔率で50t/mから25t/mの範囲にわたる。
【0029】
図2Dにおいて、垂直方向の力が減少して水平方向の力が維持されるため、O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントが増大する
【0030】
一般に、浮き台10Aの穿孔による有孔率は、10〜20%である。多くとも30%であり、特に極度の大嵐の場合、垂直方向の力の著しい減少および対応する持続期間での消波装置の効果の向上が得られる。海波の振幅が小さい場合、すなわち持続期間T=5秒未満の場合、この効果はやや小さくなる。有孔率が10%前後の場合、広範囲にわたる海波持続期間に関して、良好な折衷点が得られる。すなわち、垂直方向の力を顕著に改善しつつも消波性の目に見える低下はない。
【0031】
図3に、本発明の第2の実施形態を示す。この実施例は、消波装置に作用する水平方向の圧縮力を制限するという目的で、天然の海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体上に消波装置が固定されている場合に適用するのが好ましいが、この限りではない。この実施例によると、オリフィス22が装置上流端12に設けられており、この上流端表面の50%超にわたって設けられている。また、上記と同じように、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、連続する2つの海波間の逆流中にオリフィス22を介して排水される。したがって、残存水のマットレスの形成を回避することにより、上流端と下流端との間に形成される水溜を急速に空にすることができる。当該消波装置の性能を、図4A〜4Dに示す。図4A〜4Dでは、上記と同様に4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。試験条件は前回と同じで、自由水面下D=−4mの距離からオリフィスの形成が始まっている。
【0032】
図4Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、これら異なる3種類の有孔率を有する本発明の第2実施形態に係る改良された消波装置とを比較することができる。特に持続期間が長期的である場合(10〜14秒)に、消波装置の効果が大幅に向上しているのがわかる。持続期間Tが10秒のとき、30%の有孔率において、CTは0.40から0.25になる。
【0033】
同様に、有孔率の上昇に伴い、図4Bに示される水平方向の力が大幅に減少している。有孔率が30%になると、水平方向の力Fxの最大値が105t/mから50t/mにまで減少していることがわかる。一方垂直方向の力は、有孔率が30%になると、図4Cに示すように、特に持続期間T=12秒未満のときに著しく増加している。
【0034】
図4Dにおいてもまた、垂直方向の力の増大にもかかわらず水平方向の力が減少しているため、O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントが増大する。
【0035】
一般に、上流端12を穿孔すると、消波装置の全体的な作動に有益である。しかし、垂直方向の力の増大を厳密に制御しなければならない。上流端の穿孔を多くする(特に50%を超える有孔率にする)ことにより、消波装置の構造が非対称に近いものとなり、下流端のみを有する水平プレートとして後部が機能することで、流体学的な力に対して逆らうように作用することがわかるであろう。
【0036】
図5Aに、本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態では、装置に作用する垂直方向の圧縮力および水平方向の圧縮力の両方を制限するという目的で、装置の上流端と下流端との間に配置された浮き台として知られる水平プレートの部分10Aにオリフィス20を設けるとともに、装置の上流端12にオリフィス22を設けている。これらのオリフィスは、上流端表面と同様に、浮き台表面の30%超にわたって設けられている。また、上記と同じように、下流端にはオリフィスがなく、海波が上流端を乗り越えてきた場合、オリフィス20または22を介して排水される。
【0037】
当該消波装置の性能を、図6A〜6Dに示す。図6A〜6Dでは4つのグラフが再現されており、それぞれ、透過係数CTの漸進的変化、水平方向の力Fxの漸進的変化、垂直方向の力Fzの漸進的変化、および反転モーメントMyの漸進的変化を示している。これらは、海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の同一有孔率がそれぞれ10%、20%、30%の場合のグラフである。試験条件は前回と同じで、自由水面下D=−4mの距離から上流端のオリフィスの形成が始まっている。
【0038】
図6Aより、実線カーブで示される従来技術による「キャメルバック」型消波装置の透過係数CTと、上記の異なる3種類の有孔率を有する本発明の第3実施形態に係る改良された消波装置とを比較することができる。消波装置の効果が、浮き台のみを穿孔した場合の効果と類似していることがわかる。
【0039】
その一方で、上流端を穿孔した場合と同様に、有孔率の上昇に伴い、図4Bに示される水平方向の力が大幅に減少している。有孔率が30%になると、平方向の力Fxの最大値が105t/mから60t/mにまで減少していることがわかる。しかし、図6Cに示すように垂直方向の力も減少しており、たとえば持続期間Tが12秒のときに、有孔率が30%になると40t/mから25t/mにまで減少している。
【0040】
O(消波装置の上側表面上の地点で、浮き台の中心)を通る水平軸に関する反転モーメントは、図3の構成(上流端のみ穿孔されている)の場合と比較して、ほとんど変化していない。
【0041】
一般に、浮き台10Aおよび上流端12の穿孔を組み合わせると、水平方向の力および垂直方向の力の両方が減少するのに対して消波性はほとんど変化しないため、消波装置の全体的な作動にいっそう有益である。さらに補足的な試験から以下のことがわかった。すなわち、広範囲の海波に対する消波性を目に見えて低下させることなく水平方向の力および垂直方向の力の両方を顕著に改善するためには、浮き台の有孔率と上流端の有孔率とは必ずしも同一である必要はないということ、そして、浮き台の有孔率を10%前後(±5%)に、上流端の有孔率を30%前後(±10%)にすると、消波効果と流体学的な力との比率の点で最適の折衷点が得られること、がわかった。最後の構成は、消波装置が正の浮力を付与され、図5Bに示すように、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドのシステムによって水面下に固定されている場合に、特に効果的である。図5Bでは、上流端12および下流端14を有する水平プレートが示されており、錨26によって海底に固着されているケーブル24がこの水平プレートを保持している。この水平プレートには様々な空間が設けられている。たとえば、参照番号28の空間を設けることによって、水平プレートの総重量がアルキメデスリフト以下となり、水平プレートに正の浮力が付与される。
【0042】
図7A〜7Dでは、この種の最適な構成(図中、参照符号am)と、従来技術による消波装置(実線カーブ)および構成を逆転させた場合(図中、参照符号av)との比較が示されている。構成が逆転させた場合とは、下流端が30%の有孔率で穿孔され、浮き台が10%の有孔率を保持している場合である。この比較により、上流端のオリフィスの機能は、下流端のオリフィスの機能とは全く異なることがわかる。
【0043】
実際、オリフィスが上流端に設けられているか下流端に設けられているかの違いによって、装置の消波性に対する効果(図7A)がさほど変わらないのであれば、特に低い海波または中程度の海波の持続期間において、上流端の穿孔は(浮き台の穿孔と共に)、水平方向の力および垂直方向の力の減少に甚だしく寄与するのに対して、下流端の穿孔はこれらの力に対して実質的に何ら効果を及ぼさないどころか、高い海波の期間においてはこれらの力をごくわずかに増大させることが図7Bおよび7Cからわかる。反転モーメントに関しても同様で、上流端を穿孔すると向上するが、下流端を穿孔するとごくわずかに減少する。
【0044】
本発明のオリフィスは、従来技術による装置、特にケーソンタイプの装置に設けられているオリフィスとは異なり、装置の下流端に設けられた場合は、ケーソンに吸収された入射波とケーソンから回復した波との間に遅延を生じしめることを、またこれらケーソンの水平な隔壁に設けられた場合は、ケーソン中の水の振動を減衰させてエネルギー損失を起こすことを、その本質的な目的とする。これら2つのケースにおいては、オリフィスにおいて圧力損失が起こり、振動の伝播を減衰させるか、またはその障壁となる。
【0045】
一方、本発明によると、垂直な上流端と、上流端および下流端の間に設けられたプレート部分(浮き台)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面の部分を穿孔するが、その目的は、装置に作用する垂直方向の圧縮力および水平方向の圧縮力を著しく制限することによって、消波装置の構造およびその支持体や接続体の構造の寸法を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る消波装置の第1の実施形態を示す図である。
【図2A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図2B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図2C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図2D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図1の装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図3】本発明に係る消波装置の第2の実施形態を示す図である。
【図4A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図4B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図4C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図4D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図3の装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図5A】本発明に係る消波装置の第3の実施形態を示す図であり、ジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体上に後部が載置されている。
【図5B】本発明に係る消波装置の第3の実施形態の変形例を示す図であり、この装置が正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブルまたはロッドによって位置決めされている。
【図6A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図6B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図6C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図6D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、浮き台および上流端の有孔率がそれぞれ10%、20%、30%である場合の、図5Aの装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図7A】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における透過係数CTの漸進的変化を示すグラフである。
【図7B】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における水平方向の力Fxの漸進的変化を示すグラフである。
【図7C】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における垂直方向の力Fzの漸進的変化を示すグラフである。
【図7D】海波の持続期間が4〜14秒の範囲であって、上流端および下流端の有孔率が30%である場合の、図5Bの装置および下流端にオリフィスが設けられた装置における反転モーメントMyの漸進的変化を示すグラフである。
【図8】従来技術による「キャメルバック」型の消波装置を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 水平プレート
10A 浮き台
12 上流端
12A 下流端
14 下流端
14A 下流端
16 オリフィス
18 支持体
20 オリフィス
22 オリフィス
24 ケーブル
26 錨
28 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレート(10)であって、前記水平プレートの垂直な上流端(12)および下流端(14)が前記自由水面上まで突出することにより、前記プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、前記上流端(12)および前記下流端(14)の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素(12A,14A)により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレート(10)を備える消波装置であって、
前記垂直な上流端と、前記上流端および下流端の間に配置されたプレート部分または浮き台(10A)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィス(20,22)が設けられていることを特徴とする消波装置。
【請求項2】
前記浮き台の表面の30%超にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消波装置。
【請求項3】
前記浮き台の表面の約10%にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の消波装置。
【請求項4】
前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の50%超にわたってオリフィス(22)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消波装置。
【請求項5】
前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィス(22)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の消波装置。
【請求項6】
前記浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられており、前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられていることを特徴とする請求項2および4に記載の消波装置。
【請求項7】
前記プレートが、海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体(18)によって前記自由水面下で位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の消波装置。
【請求項8】
前記プレートが、正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブル(24)またはロッドによって前記自由水面下で位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の消波装置。
【請求項1】
わずかに入射海波に浸され、自由水面下で位置決めされた水平プレート(10)であって、前記水平プレートの垂直な上流端(12)および下流端(14)が前記自由水面上まで突出することにより、前記プレート上で入射海波が自由に伝播できないようになっており、前記上流端(12)および前記下流端(14)の各々の基部が、同一の長さを有するタブ形状の要素(12A,14A)により延在しており、これによりアセンブリが、対称断面を有するいわゆる「キャメルバック」型の構成となっている水平プレート(10)を備える消波装置であって、
前記垂直な上流端と、前記上流端および下流端の間に配置されたプレート部分または浮き台(10A)とで構成される2つの要素のうち、少なくとも片方の表面上にわたってオリフィス(20,22)が設けられていることを特徴とする消波装置。
【請求項2】
前記浮き台の表面の30%超にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消波装置。
【請求項3】
前記浮き台の表面の約10%にわたってオリフィス(20)が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の消波装置。
【請求項4】
前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の50%超にわたってオリフィス(22)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消波装置。
【請求項5】
前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィス(22)が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の消波装置。
【請求項6】
前記浮き台の表面の約10%にわたってオリフィスが設けられており、前記自由水面下における前記垂直な上流端の表面の約30%にわたってオリフィスが設けられていることを特徴とする請求項2および4に記載の消波装置。
【請求項7】
前記プレートが、海底に固着されたジャケットまたはパイルタイプの強固な支持体(18)によって前記自由水面下で位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の消波装置。
【請求項8】
前記プレートが、正の浮力を付与され、海底に固着されたストレッチケーブル(24)またはロッドによって前記自由水面下で位置決めされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の消波装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【公開番号】特開2006−177141(P2006−177141A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−305314(P2005−305314)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505391791)モナコ公国 (1)
【氏名又は名称原語表記】GOUVERNEMENT MONEGASQUE represente par le Ministre d’Etat
【住所又は居所原語表記】Hotel du Gouvernement Place de la Visitation MC−98000 MONACO
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305314(P2005−305314)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(505391791)モナコ公国 (1)
【氏名又は名称原語表記】GOUVERNEMENT MONEGASQUE represente par le Ministre d’Etat
【住所又は居所原語表記】Hotel du Gouvernement Place de la Visitation MC−98000 MONACO
【Fターム(参考)】
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