説明

おからペーストを使用した液状食品及びその製造方法

【課題】さらなる用途開発が望まれるおからを使用してソース、スープなどの液状食品において風味にコクやまろやかさを付与したりとろみをつけたりする方法およびその方法で得られる液状食品を提供すること。
【解決手段】おからペーストを0.1質量%以上10質量%以下含む液状食品及びその製造方法である。液状食品としては、牛乳又は生クリームを配合したソース、スープが好ましく、ソースはカルボナーラソース、クリームソース、トマトクリームソース、明太子クリームソース、スープはクリームスープ、トマトクリームスープ、ポタージュスープを挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おからペーストを使用した液状食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソースやスープなどの液状食品では風味にコクやまろやかさを付与したりとろみをつけたりすることを目的として、油脂や澱粉を配合することが行われている。
一般に油脂を使用する場合は、高カロリーとなる傾向があり好ましくない。
また、ホワイトソースなどではバターや生クリームを使用するが冷えるとなめらかさがなくなり、口溶けも悪くなる欠点がある。
とろみをつけるために生澱粉を使用する場合は冷凍・解凍すると離水したり糊のような食感になる欠点がある。
このような欠点を解決するためゼラチン、もち質澱粉を主体とした加工澱粉、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナンなどの天然糊料を使用したホワイトソース様食品が知られている(例えば特許文献1参照)。
油脂の粒子径を改良したものとしては、水、コーン、食塩、そして肉エキス、野菜エキス及び蛋白質加水分解物から選ばれた少なくとも一種の調味成分からなる液状コーンスープであって、更にその全体量に対して0.5〜5重量%の、粒子径が1μm以下の油滴の状態で分散されている油脂が含まれていることを特徴とする液状コーンスープが知られている(例えば特許文献2参照)。
ところで、さらなる用途が望まれる食品素材としておからがある。
おからは豆腐製造等の副産物として年間75万トン程度発生し、家畜飼料用のほか一部は食用とされるが、大半は焼却(埋め立て)処分されている。
おからをスープに利用した例として、大豆由来の水不溶性おからを、100℃を超える300℃までの温度で、かつ圧力がその温度における水の蒸気圧よりも高い圧力状態にある高温高圧水と、100kDa〜1000kDaの質量のおから分解生成物が得られるのに必要な時間接触させておからを部分分解する製造方法により製造された水溶性おから分解物が知られている(例えば特許文献3参照)。
また乾燥させたおからにマヨネーズを混ぜた食品であって、生野菜等にかけて使用する調味料に適したおからを用いた食品が知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−296864号公報
【特許文献2】特開平7−51030号公報
【特許文献3】特開2002−112724号公報
【特許文献4】特開2003−102414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、さらなる用途開発が望まれるおからを使用してソース、スープなどの液状食品において風味にコクやまろやかさを付与したりとろみをつけたりする方法およびその方法で得られる液状食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ソース、スープなどの液状食品におからペーストを特定量配合すると、風味にコクやまろやかさを付与したりとろみづけができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、おからペーストを0.1質量%以上10質量%以下含む液状食品及びその製造方法である。
液状食品としては、牛乳又は生クリームを配合したソース、スープが好ましく、ソースはカルボナーラソース、クリームソース、トマトクリームソース、明太子クリームソース、スープはクリームスープ、トマトクリームスープ、ポタージュスープを挙げることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の液状食品は、風味にコクやまろやかさが付与され、温度による粘度の変動が少ないとろみが付与されている。
また、冷凍・解凍した場合の離水耐性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において液状食品とは、ソース、スープなどの液状の食品をいう。
ソースの例としては、カルボナーラソース、クリームソース、トマトクリームソース、明太子クリームソース、チーズクリームソース、ホワイトソース、トマトソース、ミートソースを挙げることができる。
スープの例としては、クリームスープ、トマトクリームスープ、ポタージュスープ、オニオンスープ、コンソメスープ、ミネストローネ、さらにガスパチョ、ビシソワーズなどの冷製スープを挙げることができる。
クリーム系以外のソース、スープでは色が白くにごり見栄えが劣るので本発明の液状食品としては、牛乳、生クリームを含むクリーム系ソース、スープが好ましい。
具体的にパスタソースはカルボナーラソース、クリームソース、トマトクリームソース、明太子クリームソース、チーズクリームソース、スープはクリームスープ、トマトクリームスープ、ポタージュスープを挙げることができる。
【0008】
本発明において使用するおからペーストとは、おからを磨砕処理等でペースト状に加工したおからをいう。
このようなおからペーストの製造方法として、特開平7−51014「おから加工品およびその製造方法」に開示している方法が採用できる。
これは、おからを、加水せずにまたは水を加えて加水処理して、繊維間物質の放出を伴う解粒処理を行い、しかる後、水を加えて加水処理後、撹拌して水可溶性多糖類を水和させ、高粘性液体を得ることを特徴とするおから加工品の製造方法である。
【0009】
本発明において使用するおからペーストの配合量は、液状食品中、0.1質量%以上10質量%以下である。
好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下である。
0.1質量%未満であると十分な効果を得ることができない。
10質量%を超えるとおからペースト自体の風味が目立ち、おもく、口どけが悪くなる。
なお、おからペーストは90質量%程度の水分を含んでいるが本願発明において、おからペーストの質量は水分を90質量%に換算した値である。
【0010】
本発明の液状食品は通常のソース、スープと同様にして食すことができる。
また、冷凍して保存でき、解凍するとき離水が少なく滑らかな食感である。
また、レトルト処理も可能である。
さらに、無菌充填で使用される連続式高温短時間殺菌処理、バッチ式高温短時間殺菌処理も可能である。
【実施例】
【0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜6、比較例1〜3]冷凍カルボナーラソース
1.バッターミキサーでタピオカ澱粉0.8質量部、チキンエキス5.5質量部、食塩1.0質量部、グルタミン酸ナトリウム0.5質量部、香辛料0.04質量部を5分間混合し混合物を得た。
2.別のバッターミキサーで表1に示す割合の水及びおからペースト又は生おから並びにショ糖脂肪酸エステル(HLB15)0.3質量部、卵3質量部を3分間ミキシングし、牛乳40質量部、タマリンドガム0.3質量部、パーム油10質量部、チーズ8質量部を加えさらにチーズの塊がなくなるまで3分間ミキシングした。
なお、本発明の実施例及び比較例には、おからペーストの水分量が90質量%のものを使用した。
3.ニーダーで加熱攪拌を行い、85℃達温後10分間攪拌しながら保温してカルボナーラソースを得た。
4.前記カルボナーラソースをポンプを使用してすぐに高圧ホモジナイザー機に移し高圧ホモジナイザー処理を行った。
4.高圧ホモジナイザー処理を行ったカルボナーラソースを、1kgずつ包装し、−35℃で急速冷凍し冷凍カルボナーラソースを得た。
【0012】
[試験]
実施例1〜6、比較例1〜3により得られた冷凍カルボナーラソースを1週間、−18℃で保存し冷水で解凍した。
解凍したカルボナーラソースを電子レンジで80℃まで加熱して10名のパネラーにより表2に示す評価基準によって官能評価を行った。
結果を表3に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】
おからペーストの配合量が0.1質量%以上10質量%で、味のバランス、食感とも優れており離水防止の効果も優れていた。
おからペーストの配合量が0.05質量%になると、コクがないため味のバランスが悪く、やや離水した。
おからペーストの配合量が13質量%では、味のバランス、食感とも劣っていた。
生おからを使用した比較例3では、味のバランスが悪く、ザラつきを感じた。また、離水もみられた。
【0017】
[実施例7]レトルトスープ
1.バター2.5質量部を加熱・溶解し、小麦粉2.5質量部を加え100℃以上で加熱しルウを作った。
2.チーズ3質量部とイミテーションクリーム20質量部をミキサーで攪拌し、チーズを適度に細かくした。
なお、イミテーションクリームとはクリームに含まれる動物油脂の一部、または全部を植物油脂に置き換えたクリーム代替品である。
3.水煮マッシュルーム10質量部をフードプロセッサで10mm以下にカットした。
4.食塩0.4質量部、グルタミン酸ナトリウム0.3質量部、粉末ブイヨン0.2質量部、香辛料0.1質量部を25質量部の水で水溶きしておいた。
5.おからペースト3質量部を10質量部のお湯で湯溶きしておいた。
6.上記の1〜5の工程で作成した材料及び水23質量部をニーダーに投入し85℃まで加熱しスープを得た。
7.上記スープをレトルトパウチに160gに小分けして密封した。
8.レトルトパウチをレトルト釜にいれ121℃で25分間加熱後、常温まで冷却し、レトルトスープを得た。
【0018】
[比較例4]レトルトスープ
実施例7において、おからペーストの代わりにエーテル化リン酸架橋ワキシーコーンスターチ(加工澱粉)0.3質量部を使用し、工程6において水を25.7質量部に変更した以外は実施例7と同様にしてレトルトスープを得た。
【0019】
[試験]
実施例7及び比較例4で得たレトルトスープをパウチごと沸騰水中で5分間加熱し、スープ皿に移して10名のパネラーにより以下に示す評価基準によって官能評価を行った。

5 味のバランスが非常に良い
4 味のバランスが良い
3 味のバランスが良くも悪くもない
2 味のバランスが悪い
1 味のバランスが非常に悪い
食感
5 舌触りが滑らかで、非常に口溶けが良い
4 舌触りが滑らかで、口溶けが良い
3 舌触りがやや滑らかで、口溶けは特に良くも悪くもない
2 舌触りが重く、口溶けがやや悪い
1 舌触りが非常に重く、口溶けが非常に悪い
【0020】
実施例7は味4.8点、食感4.5点、比較例4は味3.6点、食感2.4点であった。
スープにおからペーストを3%配合することで風味が改善でき、味のバランスが非常によくなった。
また舌触りが滑らかで口溶けに優れたスープを得ることができた。
【0021】
[実施例8〜11、比較例5]生クリーム代替試験
1.食塩1.0質量部、チキンエキス粉末0.5質量部、香辛料0.2質量部、タピオカ澱粉2質量部を十分混合し、混合物を得た。得られた混合物に20質量部の水を加え水溶きしておいた。
2.バッターミキサーにチーズ10質量部、牛乳15質量部、水15質量部を加え、チーズが粉砕されるまで撹拌した。
3.上記製造工程1、2で得られた混合物と表4に示す量の生クリーム及びおからペースト、白ワイン5質量部、加熱溶解したバター5質量部、水11.3質量部をニーダーに投入し、撹拌・加熱した。85℃達温後、5分間保持した。
4.1kgずつ包装し、−35℃で急速冷凍し、冷凍クリームソースを得た。
5.これら5種類のソースを解凍し、200gの冷却した茹でスパゲッティにそれぞれ100gづつトッピングし、600W電子レンジで2分間加熱し、10名のパネラーにより参考例1をコントロールとして官能評価を行った。
6.生クリームをおからペーストに1.0、2.5質量部、5質量部代替したものは、おからペーストを含まないものと同等の風味、食感であった。
10質量部置き換えたものはおからの風味が出ており、わずかに重い食感であったが代替は可能な範囲であった。
11質量部置き換えたものはおからの風味が目立ち、重い食感で代替は無理であった。
【0022】
【表4】

【0023】
[実施例11]オニオンスープ
1.
食塩1.0質量部、粉末ブイヨン0.5質量部、香辛料0.3質量部を十分混合し
20質量部の水を加えて水溶きした。
2.
ソテーオニオン25質量部、オニオンコンク1.5質量部を製造工程1の混合物に
加えた。
3.製造工程2にそれぞれ、おからペーストを1.0質量部、水で合計が100質量部になるよう調整しスープを得た。
4.上記スープをニーダーに投入し、85℃まで加熱撹拌した。さらにレトルトパウチに160gづつ充填し、レトルト処理(121℃、25分)を行った。
5.得られたオニオンスープは風味が非常に良かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
おからペーストを0.1質量%以上10質量%以下含む液状食品。
【請求項2】
液状食品がカルボナーラソース、クリームソース、トマトクリームソース、明太子クリームソース、クリームスープ、トマトクリームスープ又はポタージュスープである請求項1に記載の液状食品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液状食品の製造方法。


【公開番号】特開2011−45289(P2011−45289A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196524(P2009−196524)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】