説明

お香

【課題】香炉のデザインをさらにフレキシブルにすることができるお香を提供する。
【解決手段】お香1は、環状または環状の一部を欠く形状の本体11を有する。このお香1は、香炉の小径の円形の開口の縁に沿うように、香炉の蓋の裏面に取り付けることにより、香炉に他の穴が無くてもお香1を継続して燃焼させることができる。したがって、密閉に近い構成の香炉をはじめとする多様なデザインの香炉に適したお香を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼する(焚く)ことにより香りおよび煙を発生させるお香に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、お香を焚いて香りを楽しむことが見直されている。お香は薫物とも称されるが、お香の1つの形態は棒状の線香であり、線香を垂直に挿した状態で焚く香炉と共に用いられることが一般的である。お香の他の形態の1つは、円錐状に成形されたものであり、香炉の底において焚いたり、燃焼皿の上で焚いたりすることが一般的である。特許文献1には、全体が横長形状であって、上壁に複数の開口部が設けられた香炉が開示されている。この香炉では、線香を香炉内の底に横置きにした状態で燃焼(焚焼)させるように構成されている。
【特許文献1】特開平10−137109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
線香は、挿したり、横に置いたりするタイプの香炉において使用される。円錐状のお香は、それ自体を、皿などの上に置いた状態で使用される。したがって、香炉の形態は、これらの形状のお香が燃焼しやすいものであることが要求され、デザインが限定される。例えば、線香であれば、線香を立てるか、あるいは横にした状態で収納できる形態となり、容器に線香を入れるのであれば、燃焼用の空気を供給するための開口を幾つか用意する必要がある。その一方で、燃えた灰を回収できる機能も要求される。円錐状のお香についても、ほぼ同様である。したがって、香炉の容器は、側面、あるいは下側に燃焼用の空気を取り入れる孔が開き、さらに上方に、煙および香りを放出するための開口が用意されたものになる。あるいは、皿のように全体が平らで、上方が広く開放された形態の香炉となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの形態は、環状の本体を有するお香である。このお香は、従来の線香あるいは円錐状のお香に対して、形状がユニークであり、線香あるいは円錐状のお香と同様に使用できる場合もあるが、その形態に対応した異なる香炉にも適用できる。
【0005】
このお香の基本的形状は、円形あるいは多角形の環状である。このお香は、そのような環状の本体を有しているため、容器内でお香を焚く香炉や煙発生装置などの円形あるいは多角形の開口の縁部に沿うように配置できる。したがって、お香自身は、香炉の開口から直ぐに見える状態でなくても、お香の本体全体を開口の近傍に配置できる。このため、お香が周囲に配置された開口から供給される空気により十分に燃焼を維持することができ、その開口から煙と香りを放出できる。
【0006】
したがって、このお香が周囲に配置された開口は、香炉でお香を焚くための給気口および排気口を兼ねた口として使用することができ、容器内部の換気あるいは空気の流通を考慮しないデザインあるいは機能の香炉を提供可能となる。空気の流通を確保するために側面あるいは下側に設けられた開口を省き、給排気を兼ねた開口が1つだけの、ほとんど密閉容器に近い香炉であっても、このお香を支障なく燃焼できる。また、空気の供給口と、排気口とを兼ねた開口は、容器のどの位置にも配置できる。
【0007】
線香を縁に沿って配置できる長細い開口を備えた香炉においても、開口の数を限定できる可能性はある。しかしながら、香炉のデザインは限定されるであろうし、線香の燃焼とともに細長い開口から煙および香りが放出される位置が変化する。基本形状が環状のお香であれば、給排気を兼ねた開口を円形あるいは方形にすることが可能であり、香炉のデザインの幅は広がる。
【0008】
このお香を開口の縁の内側に沿って、開口から見えるように配置する香炉に使用することも可能である。しかしながら、お香の燃焼部分が香炉の外に現れる状態となるので、開口から直には見え難い状態である方が安全である。また、開口から、特に開口の真上からお香が直に見えないようにすると、お香から立ち上る煙と香りは、香炉内に充満し易くなり、香炉内の圧力変動で煙の挙動に変化を加えようとするような用途に適する。
【0009】
さらに、略環状の本体を有するお香では、どの位置に着火しても良く、一箇所を支持した状態で、他の一箇所に火をつけることにより、火をつけた場所から両側に燃え広がらせることができる。また、このようなお香では、環状の本体を棒などに通して支持しても良いが、環状の本体を香炉の開口の周囲に配置するために開口が開いた蓋の裏側で環状の本体の少なくとも一箇所を挟み込むように保持することが望ましい。この場合、お香の本体の内、保持された個所は燃え難くなるので、両側に燃え広がった場合には保持された個所で火が消えることが多い。このため、着火点の近くで保持すれば、環状の本体の一方から燃焼させることにより長い燃焼時間を確保でき、着火点の遠くで保持すれば、環状の本体が両側から燃えるので、燃焼時間は短くなるが、発生する煙の量を増やし、強い香りを得ることができる。
【0010】
お香の本体の少なくとも一部を挟み込むように保持することにより、その保持された個所で火が消えるようにすることが好ましい。そのため、お香は、少なくとも一部が平坦となるように形成することが好ましい。少なくとも一部が平坦となるように形成し、この平坦な部分を挟み込むように保持することで、保持された部分とお香の保持部材との接触面積を大きくすることができる。保持部材との接触面積が大きいと、お香の燃焼熱が効率良く奪われるので、お香の燃焼を停止させ易い。本体の少なくとも一部が平坦となるようなお香の好適な形状の1つとしては、お香の本体の少なくとも一部の断面形状が略半円形状であるものが挙げられる。
【0011】
お香の略環状の本体は、当該本体の他の部分よりも可燃性の高い成分が含有または塗布された着火部を備えていることが好ましい。ほぼ環状の本体、特に切れ目のない環状の本体は、端部がなく、強度が高い反面、着火するときには加熱される部分が大きいので、着火時に温度を上げ難い。一方、本体全体を燃焼しやすい条件あるいは組成にすると燃焼時間を確保し難い。したがって、本体の一部を着火しやすい状態にすることにより、着火しやすく、十分な燃焼時間を備えたお香を提供できる。
【0012】
お香の環状の本体は、本体から張り出す少なくとも1つの張出部をさらに有するようにしてもよい。張出部により、本体の強度を落とさずに着火しやすい端部を形成できるので、着火しやすく、十分な燃焼時間を備えたお香を提供できる。張出部には、本体よりも可燃性が高い成分を含有または塗布しても良い。
【0013】
お香のほぼ環状の本体の好適な形状の1つは、その外形が六角形状のものである。最密な形状に近いので、複数のお香を抜き型するときに無駄が少なく、円形に近いので、香炉の円形の開口の縁に沿って取り付けることができる。したがって、お香のほぼ環状の本体のさらに好適な形状の1つは、その外形が正六角形状のものである。ここで、本体の外形が「六角形状」であるとは、本体の外形が略六角形(実質的に六角形状)であればよいことをさしており、たとえば、六角形の角部が丸められていてもよい。また、本体の内側の形状は、外形と相似の六角形状であっても、外形と異なる形状、たとえば、円であっても良い。内形を円にすることにより、円形の開口に沿って配置できると共に、本体の体積を増やすことができ、燃焼時間を長くできる。
【0014】
さらに、本体の外形を略六角形とすることで、一定空間に効率よくお香を配置することができる。したがって、複数のお香を決められた空間に配置する場合、たとえば、ケース内に複数のお香を収納したり、香炉や煙発生装置に複数のお香をアッセンブリして煙発生ユニットとして搬送するときのスペース効率が高い。
【0015】
本発明の他の一つの形態は、外形が六角形状の複数のお香と、これら複数のお香を、六角形状をなすように、隣接する辺の一部を平面的に繋ぐ複数の架橋部とを有するお香ユニットである。このお香ユニットは、複数のお香を、一枚の板状のお香ユニットとして扱えるため、複数のお香を、ケースに収納したり、香炉や煙発生装置とともにアッセンブリして煙発生ユニットを組立てるのに便利である。さらに、所望の位置の架橋部を割って、お香を1つずつユニットから分離して、使用できる。環状の本体を備えたお香は個々の強度が高いので、個々のお香をユニットから分離するのも容易である。さらに、残されたお香同士は架橋部によって繋がれた状態としておけるので、未使用のお香がばらばらになってしまうことを防止できる。したがって、複数のお香をユニット化することにより、それらの収納や管理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、環状の本体を有する複数のお香1を繋いだお香ユニット3の外観を平面図により示してある。図2に、図1に示すお香ユニット3を図中のII-II線に沿って切断した断面を示してある。図3に、お香ユニット3を図中III-III線に沿って切断した断面を示してある。
【0017】
このお香ユニット3としてアッセンブルされた個々のお香1は、環状の本体11と、この本体11から内側(中心側)に水平方向に、すなわち、本体11と同一面上に張り出した張出部12とを有している。
【0018】
張出部12は、端部(エッジ)を形成するので、着火するときに温度を上げやすい。したがって、この張出部12は、お香1を焚く際の着火部13として利用される。さらに、張出部12および/またはその近傍に、本体11よりも可燃性が高い公知の成分(以下、着火成分という)を含有または塗布することにより着火性能を向上できる。図1のお香1では、本体11の全体のうち、着火成分が含有または塗布されている領域に、点模様を付している。着火成分は、お香1に火をつける際に、マッチあるいはライターなどの火があたり易い先端を中心に塗布することが望ましく、本体11の燃焼時間を確保するために、着火成分が塗布あるいは含有される部分は限定されることが望ましい。
【0019】
お香1の環状の本体11は、外形が略正六角形であり、複数のお香1をスペース効率良く配置するのに好適な形状である。お香ユニット3は、6つのお香1を、六角形状をなすように、複数の架橋部2によって、隣接する辺の一部を平面的に繋いでユニット化したものであり、狭いスペースに収納できる形態となっている。複数のお香1を一枚のお香ユニット3にユニット化することにより、管理および取り扱いが容易となり、複数のお香1を、後述する香炉とともにアッセンブリして煙発生ユニットを組立たり、それらケースに収納して市販する際に、梱包や管理の手間を省くことができる。
【0020】
また、お香ユニット3においては、複数のお香1は、本体11に対して十分に脆弱な、たとえば、薄肉な架橋部2により接続されている。また、本体11は環状で強度は高い。したがって、本体11を持って架橋部2を容易に割ることができ、お香1を1つずつユニット3から分離でき、1つずつ使用できる。その際、本体11が傷ついたり欠けたりする可能性は少ない。さらに、ユニット3に残されたお香1は、残された架橋部2によって繋がれた状態なので、未使用の複数のお香1がばらばらにならず、ユーザサイドにおいても、お香1の収納や管理を容易に行える。
【0021】
お香1の環状の本体11の外形の角部14は、詳細には面取りされたり、丸められており、お香を取り扱うときに角が欠けて、本体11が傷ついたり、ゴミが発生したりし難い形状となっている。一方、本体11の内側は円形であり、以下の香炉の開口の縁に沿ってお香1を配置できる形状となっている。
【0022】
図4および図5に、環状の本体11を備えたお香1を使用するのに適した香炉20を示してある。図4は、香炉20を上方から見た様子を示しており、図5は、香炉20の内部の概略構成をV-V線に沿って切断した断面により示してある。
【0023】
この香炉20は、図6に展開して示すように、香炉本体21と、複数のお香ユニット3を備蓄する備蓄用容器22とが上下に積層したものであり、香炉本体21は、備蓄用容器22を付けた状態でも、容器22を外した状態でも使用できる。この香炉本体21は、お香1を焚いたときの匂いあるいは香りだけではなく、お香1から発生する煙の挙動も楽しむことを目的とした煙発生装置でもある。香炉本体21は、部材構成としては、図6に示すように、上方23aが開放された偏平な有底円筒状の容器23と、容器23の上方23aの開口を閉塞させる蓋24と、この蓋24の中央の開口44に取り付けられるキャップ45とを備えている。キャップ45がお香1を支持するホルダーとなっており、キャップ45の中心に円形のポート41があり、環状のお香1は、キャップ45の裏面に取り付けて焚かれる。すなわち、ポート41は、給排気口として機能する。容器23、蓋24およびキャップ45は、たとえば、耐熱性の良好な、陶器などのセラミック、金属、あるいは合成樹脂などによって形成されている。備蓄用容器22は、たとえば、プラスチックなどによって形成されている。
【0024】
一方、香炉本体21は、機能的には、容器23を上下に仕切るように取り付けられた振動膜31により上下に2分割されている。振動膜31の上部は、お香1を焚いた煙を保持する領域S2であり、振動膜31の下部は、振動膜31を駆動する機構が収納された領域S1である。この香炉本体21の領域S2は、お香1を収納する領域であり、その上方に小径の開口41がある以外は密閉された空間となる。しかしながら、キャップ45の開口41の周囲にお香1を装着して焚くことにより、お香1を支障なく燃焼させることができ、その香りと煙を楽しむことができる。さらに、振動膜31を駆動させることにより、領域S2の圧力を変動させて、開口41から出力される煙の挙動を楽しむことができる。
【0025】
すなわち、この香炉本体21は、テーブルなどの搭載面上に置いた状態で、蓋24の中心に設けられた口41から、お香1の香り51および煙52をパルス的に放出でき、条件が整えば、放出される煙52はリング状の雲のようになる。香炉20を単独で、あるいは備蓄用容器22を取り付けた状態で、口41が上を向くように搭載面F1の上に水平に置けば、煙52は上にパルス的に放出される。一方、香炉20を口41が横を向くように容器23を立ち上げて、搭載面F3の上に置いて使用することも可能であり、煙52は前方に向かって水平方向にパルス的に放出される。
【0026】
容器23の内部を2分割する振動膜(振動板)31は、ゴムなどの弾性材料からなる。振動膜31の中央には、プラスチックなどのゴムよりも変形し難い硬質な材料からなる支持板32が貼り付けられており、振動膜31が変位したときに上方の領域S2の容積変化が大きくなるように工夫されている。領域S2は、上方の口41を除いて略密閉された空間であり、振動膜31を動かして、その容積を変化させることにより、圧力が変動する圧力変動室となっている。
【0027】
領域S1に収納された駆動機構33は、たとえば、ゼンマイ式のオルゴール34である。ゼンマイ34によりオルゴールのドラム37が回転されると共に駆動歯車36が回転され、その歯車36により、先端部が支持板32に固定された連結アーム35が上下に駆動され、圧力変動室S2の圧力が脈動する。したがって、オルゴールのゼンマイ34を巻くと、香炉20からオルゴールが聞こえ、その音色に合わせて振動膜31が振動し、音色に合わせて煙52が放出される。
【0028】
振動膜31は全体が弾性膜であっても良いが、連結アーム35で振動膜31の一箇所を引っ張るだけだと、振動膜31が円錐状に変位するだけになる。これに対し、振動膜31より変形し難い支持板32を中央に設けて支持板32を引っ張ると振動膜31は円錐台状に変位する。したがって、圧力変動室S2の内圧変動を大きくできるので、口41からより多くの煙52をパルス的に放出でき、煙52の挙動を楽しむことができる。
【0029】
なお、駆動機構33は、オルゴール34に限定されるものではなく、振動膜31を周期的に駆動できるものであれば良い。その駆動装置の動きを振動膜31に伝達する機構もアームのようなリンク機構に限らず、マグネット式の駆動機構などであっても良い。マグネット式の駆動機構の一例は、電磁コイルを制御ユニットによってオン・オフし、支持板32に取り付けられた鉄片を所望の周波数あるいは周期で揺動(振動)させるものである。この場合、駆動機構33内に電源となるバッテリを設置することが望ましい。
【0030】
お香1は、蓋24の開口44に着脱可能に取り付けられるキャップ45の裏面に取り付けられる。指で摘める程度の大きさのキャップ45を香炉本体21あるいは蓋24から外して、お香1を装着できるので、お香1の取り付けが簡単である。また、お香1に着火するときでもキャップ45は小さいので持ちやすく、また、キャップ45に直に炎が当たらないようにしてお香1に着火することが可能となる。
【0031】
お香1を蓋24の裏面に取り付ける構成を採用することも可能である。しかしながら、蓋24を持ってお香1に着火することは、蓋24が大きいと持ち難い。さらに、着火するときに炎により蓋24が焙られる状態となるので、煤が付き易く高温に晒される。このため、蓋24が耐熱性の材料で形成されているとしても好ましいとは言えない。
【0032】
一方、香炉本体21から、キャップ45だけが取り外しできるようになっていて、お香1を取り替えて、新しいお香1に着火する点では問題ない。しかしながら、香炉本体21から灰を除去するのが面倒であり、香炉内を清潔に保持することが難しくなる。したがって、容器23と、蓋24と、お香1をホールドするキャップ45との組合せは、ほぼ環状の本体11を有するお香1を使用する香炉として好適なものである。
【0033】
蓋24の開口44に着脱可能なキャップ45は、蓋24の貫通口44を覆うキャップ本体46と、このキャップ本体46を貫通する給排気口41と、キャップ本体46の裏面の給排気口41の近傍に配置された、お香1の把持部42とを備えている。キャップ本体46から、下方に向かって弾性変形しながら蓋24の貫通口44に入りこむ3つの爪47a、47bおよび47cが突き出ている。キャップ本体46と3つの爪47a、47bおよび47cとは、耐熱性の樹脂により一体成形されている。
【0034】
把持部42は、キャップ本体46の裏面に軸42bを中心に旋回できるように取り付けられた、断面が略C字状で、その欠けた側42cからお香1を挿入して支持する受け金具42aを備えている。受け金具42aは、その欠けた側がキャップ本体46に対し反対側を向く第1の位置と、欠けた側がキャップ本体46に沿って開口41の方向を向く第2の位置との間を回動する。
【0035】
図7は、キャップ45を蓋24から取り出して、その受け金具42aを、欠けた側42cがキャップ本体46に対し反対側を向く第1の位置に回転した状態を示す断面図である。この状態で、お香1を下方から受け金具42aの欠けた部分42cに差込み、お香1に着火する。その後、受け金具42aを第2の位置に動かす。
【0036】
図8は、受け金具42aの欠けた側42cにお香1を取り付けた状態で、受け金具42aをキャップ本体46に沿って、開口41の側に向けた状態を示す断面図である。これにより、お香1は、その環状の本体11が、円形の開口41の縁の外側に沿うように、キャップ本体46の裏側に保持される。
【0037】
このようにして着火されたお香1を保持したキャップ45を、図6に示すように、蓋24の貫通口44に取り付けると、キャップ45の爪47a、47bおよび47cが弾性変形しながら挿入され、蓋24の裏面にお香1が保持された状態で燃焼する。
【0038】
なお、把持部42は、図8に示す第2の位置に固定された旋回しない受け金具あるいはキャップ本体46と一体成形されたプラスチックあるいはセラミック製の受け部を用いて構成することも可能である。
【0039】
図9に、お香1が香炉本体21の蓋24の裏面において燃焼している状態を拡大して示してある。お香1の環状の本体11は、キャップ45の裏面の把持部42により給排気口41の縁に沿うように保持される。したがって、お香1の本体11は、全体が給排気口41の近傍に位置するので、お香1の本体11が燃焼している間、その燃焼を維持する程度の空気は給排気口41から供給される。すなわち、お香1の本体11の燃焼している部分は常に給排気口41の近傍にあり、給排気口41からの距離は殆ど変化しない。このため、容器23の内部に空気を供給あるいは循環させなくても、お香1の燃焼を維持できる。したがって、香炉本体21においてお香1を収納するスペースS2に、開口がキャップ45の給排気口41のみであっても、お香1を燃焼させることができる。
【0040】
その一方で、お香1の環状の本体11は、給排気口41の外側、すなわち、キャップ45のキャップ本体46の裏側に配置されるので、香炉本体21の外側から直接見える状態にならない。したがって、燃焼中のお香1は、キャップ45あるいは蓋24によりカバーされており、安全である。また、お香1の燃焼により発生する煙52は、一部が香り51と共に給排気口41から漏れ出し、それにより外気Aの導入が促進されるが、煙52の殆どは、キャップ45のキャップ本体46および蓋24の裏面に沿って流れ、香炉本体21のスペースS2に溜まる。
【0041】
したがって、振動膜31を振動させてスペースS2の内圧を変動することにより、スペースS2に十分に溜まった煙52をパルス的に給排気口41から外に向かって放出できる。さらに、お香1の環状の本体11は、給排気口41の外側にあり、煙52はお香1の本体11の内側を通るので、給排気口41から煙52が放出される障害とならない。このため、スペースS2の内圧変動を適切に調整することにより、円形の給排気口41から図10に示すように、ドーナツ状あるいはリング状の煙52をパルス的に放出することができ、その煙52の挙動を楽しむことができる。
【0042】
このように、環状の本体11を備えたお香1は、開口が1つしかない香炉20であってもその開口41の裏側にセットすることにより安定して燃焼させることができる。さらに、この香炉本体21は、内蔵しているオルゴール34により振動膜31を振動させてスペースS2の内圧を脈動させることができる。このため、オルゴール34の音楽に合わせて開口41から煙52をパルス的に放出することができる。また、お香1が収納されているスペースS2の圧力を脈動させることにより、給排気口41から煙52が放出されると共に外気AがスペースS2に吸込まれる。このため、お香1は燃えやすくなり、さらに大量の煙52が発生し、スペースS2に蓄えられる。そして、オルゴール34が停止してスペースS2の圧力変動がなくなっても、お香1は容器23の内部の酸素不足で消えることはなく、受け金具42aで保持された部分まで燃え進む。
【0043】
図11に、お香1の本体11が開口41の周囲で燃焼する様子を示している。お香1の本体11は、その外形が六角形状であり、外周の一部、本例では6箇所が直線状となっている。そのため、この外周の直線状となっている部分を、キャップ45の把持部42の、断面が略C字状の受け金具42aに突き当てることで、本体11は、受け金具42aに嵌まり込み、安定してお香1を取り付けることができる。
【0044】
図11に、実線で示すように、お香1を本体11から内側に張り出した着火部13が、受け金具(口金)42aと対峙するようにキャップ45に取り付けて着火すると、本体11の燃焼は実線矢印のように着火部13から両側に進む。本体11の受け金具42aに挿入された部分は、温度が上がり難く、また空気と接触し難いので、多くのケースでは、燃え残る。したがって、着火部13から本体11の両側に燃焼が進む、2箇所で燃えて煙52および香り51が発生するので、大量の煙52と強い香り51を楽しむことができる。
【0045】
一方、図11に、一点鎖線で示すように、着火部13と、受け金具42aとが隣り合うようにお香1をキャップ45に取り付けると、図11において、着火部13から反時計回りに進んだ燃焼は受け金具42aのところで消える。したがって、本体11は、主に着火部13から時計方向に進むように燃焼し、一箇所で燃える。このため、両側に燃焼が進むときよりも、本体11は、長時間にわたり燃焼し、煙52と香り51の発生量は少なくなるが、それらを長時間にわたり楽しむことができる。
【0046】
このように、環状の本体11を備えたお香1は、キャップ45への取り付け方により、燃焼時間を長くしたり、煙および香りの発生量を多くしたりすることができる。このため、ユーザは、香炉の形状や、ユーザ自身の好みに適した条件でお香1を焚くことができる。
【0047】
香炉20においては、お香1は、香炉本体21と同梱された状態で提供される。そのため、香炉本体21の容器23は、底壁の外側に、6つのお香1が結合されたお香ユニット3を備蓄するための空間S3を備えており、その空間S3に、1つまたは複数のお香ユニット3を入れた備蓄用容器22が着脱可能に取り付けられるようになっている。お香1を焚くときは、備蓄用容器22のお香ユニット3において複数のお香1を接続している架橋部2を割って、1つのお香1を分離して取り出し、残りを備蓄用容器22に入れて管理することが可能である。環状の本体11を備えたお香1は、個々のお香1の強度が高いので、お香1を持ってお香ユニット3から分離しようとすると、薄い架橋部2が自動的に割れ、お香1をお香ユニット3から簡単に取り外しできる。
【0048】
環状の本体11を備えたお香1を焚くのに適した香炉は上記に限定されるものではない。容器内を圧力変動しない、略密閉型の香炉でも、このお香を焚くことができる。すなわち、環状の本体11を備えたお香1は、蓋あるいは本体の開口の近傍に配置しておくことにより、香炉内部に空気の循環あるいは対流が発生しないようなデザインの香炉であってもお香1を焚いて、煙や香りを楽しむことができる。したがって、環状の本体を有するお香を採用することにより、香炉のデザインはフレキシブルになり、多種多様なデザインの香炉を提供できる。この環状の本体を持ったお香は、皿のような容器でも、一般の香炉でも焚くことができる。
【0049】
図12から図17に、略環状の本体11を備えたお香の幾つかのバリエーションを示してある。図12に示したお香1は、本体11から外側に水平方向に張り出した部分12を形成し、着火部13としている。この着火部13には、上記と同様に着火成分(点模様で示す)を含有させたり、塗布しても良い。この形状のお香1は、二点鎖線で示したように、張出部12がお香ユニット3の中央側を向くように、各お香1を架橋部2で繋いでお香ユニット3を形成するのが好ましい。
【0050】
図13に示したお香1は、本体11に張り出した部分は設けず、本体自身の一部に可燃性の高い成分を含有または塗布することにより、着火部13を形成している。張出部分がないので、よりシンプルな形状のお香1を提供できる。
【0051】
図14に示したお香1は、環状の本体11の外周が略円形であり、その外周の一部は直線状となるようにしている。円環状の本体11は、形状がシンプルであり、また、全周にわたって断面形状がほぼ同じになるので、煙の発生量がより均一になるなどのメリットがある。その反面、外周が略六角形の本体と比較すると、最密な形状ではないのでユニット化したときに隣接するお香との間が開いてしまう。また、型押しなどによりお香を製造する場合も無駄が多くなりやすい。着火用の張出部12は、内側にも、外側にも設けることができる。
【0052】
図15に示したお香1は、矩形あるいは方形の環状の本体11を有している。このお香1は、方形あるいは矩形の開口を備えた香炉に装着するのに適している。また、図16に示したお香1は、外周だけではなく内周も略六角形の環状の本体11を有するものである。このように、香炉の開口の形状に合わせて、円形または多角形の環状の本体を有するお香1を提供できる。
【0053】
図17および図18に示したお香1は、外形状が環状であって、断面形状が略半円形状に形成された本体11を有している。なお、本体11の外形状は、上述したように、略円形状であっても、略多角形状であってもよい。また、お香1は、張出部12や着火部13を有するようにしてもよい。
【0054】
このようなお香1は、たとえば、各種のお香原料を練り上げてなるシート状のお香を、表面が平坦な受け部材101上に置くとともに、図17に示すように、断面形状が略半円形状である略環状の抜き型102によって抜くと同時に、受け部材101で押さえて成形することによって形成することができる。このように形成することにより、シート状のお香を抜き型で断面矩形状となるように抜き切って形成する場合と比べて、平坦な面11aを有するお香1を、断面形状の精度を良好に保った状態で形成することができる。
【0055】
平坦な面11aを有するお香1は、図18に示すように、キャップ本体46の裏面に設けられた金属板からなるベース42dと、軸42bを中心に旋回できるようにベース42dに取り付けられているとともに、コイルばね42eによって二点鎖線で示す方向から実線で示す方向に付勢されている断面略半円状の受け金具42aとを有する把持部42により、平坦な面11a側がベース42dと対向する姿勢で把持させて、燃焼させるとよい。なお、把持部42は、蓋24の裏面に設けてもよい。
【0056】
この断面を備えたお香1と、受け金具42aとの組み合わせによって、お香1と把持部42との接触面積を大きくすることができる。したがって、把持部42において、お香1の燃焼熱が効率良く奪われるので、お香1の燃焼は停止し易い。なお、この場合、お香1は、本体11の全域において、その断面形状が略半円形状となるように形成してもよく、また、本体11のうち、少なくとも把持部42に把持される一部の断面形状のみが略半円形状となるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】6つのお香を接続したお香ユニットを示す正面図。
【図2】図1のお香ユニットをII-II線に沿って切断した状態を示す断面図。
【図3】図1のお香ユニットをIII-III線に沿って切断して状態を示す断面図。
【図4】香炉の一例を示す平面図。
【図5】図4の香炉の概略構成を示す断面図。
【図6】図4の香炉を分解した状態を示す図。
【図7】図4の香炉のキャップを外し、受け金具を第1の位置にした状態を示す断面図。
【図8】図7に続いて受け金具を第2の位置にした状態を示す断面図。
【図9】香炉においてお香が燃焼する状態を示す図。
【図10】香炉から煙がパルス的に放出される様子を示す図。
【図11】お香の燃焼が進む様子を示す図。
【図12】お香の他の例を示す平面図。
【図13】お香のさらに異なる例を示す平面図。
【図14】お香のさらに異なる例を示す平面図。
【図15】お香のさらに異なる例を示す平面図。
【図16】お香のさらに異なる例を示す平面図。
【図17】お香のさらに異なる例を示す断面図。
【図18】図17のお香を把持部に把持させた状態で示す断面図。
【符号の説明】
【0058】
1 お香、 2 架橋部
3 お香ユニット、 11 (お香の)本体
12 張出部、 13 着火部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の本体を有するお香。
【請求項2】
請求項1において、前記本体の少なくとも一部は、その断面形状が略半円形状である、お香。
【請求項3】
請求項1において、前記本体は、当該本体の他の部分よりも可燃性の高い成分が含有または塗布された着火部を備えている、お香。
【請求項4】
請求項1において、前記本体から張り出す少なくとも1つの張出部をさらに有する、お香。
【請求項5】
請求項4において、前記張出部には、前記本体よりも可燃性が高い成分が含有または塗布されている、お香。
【請求項6】
請求項1において、前記本体は、その外形が六角形状である、お香。
【請求項7】
外形が六角形状の複数の香と、
これら複数の香を、六角形状をなすように、隣接する辺の一部を平面的に繋ぐ複数の架橋部とを有するお香ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−119426(P2007−119426A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316585(P2005−316585)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(597103067)有限会社エフ・アンド・エフ (18)
【Fターム(参考)】