説明

かき筏

【課題】強度及び耐久性に優れ、筏を組立てる際のワイヤー等による緊縛作業が容易なかき養殖用のかき筏を提供する。
【解決手段】各種材質でできた太鼓状構造物や発泡スチロール等よりなるほぼ円筒形をした浮体2と、一列に並ぶ浮体上に固定されるレール3よりなる群4と、平行して配置した各群4のレール上に該レール3と直行して適当間隔で固定される横なる5と、該横なる上に横なる5と直交して適当間隔で固定される押え6よりなるかき筏において、孟宗竹よりなるレール、横なる及び押えのうち、少なくとも一部を孟宗竹に換えてポリエチレン管とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かき養殖用のかき筏に関する。
【背景技術】
【0002】
かきの養殖は多くの場合、帆立貝の貝殻に針金を通して一定間隔で取付けた採苗連を付着期幼生の出現盛期に筏から海中に吊り下げてかきの幼生を付着させる採苗期と、採苗後、採苗連を引上げて干潟に移し、そこで潮の干満を利用して海水に浸したり、日や風波に当ててかきの成長を抑制すると共に、かきに付着する有害生物を死滅させて防除し、かつ抵抗力の強い種かきを育成する抑制期と、採苗連から種かきの付着する帆立貝を外し、新しい針金に通し替えて垂下連を作り、これを筏や棚等から海中に吊り下げてかきを育成する本垂下期を経て行われ、使用される筏としては、その多くが適当間隔を置いて並べた各種材質でできた太鼓状構造物や発泡スチロール等よりなるほぼ円筒形をした浮体上に孟宗竹を縦横に格子状に組立てたものよりなっている。
【0003】
図は、その例を示すもので、図1は、かき筏1の平面、図2は海面に浮かべた同かき筏1の側面を示している。かき筏1は、例えば発泡スチロールよりなる、ほぼ円筒形をした浮体2と、一列に並べた浮体2上に一対、平行して配置され、針金等で縛り付けて固定したレール3よりなる群4を数列平行に配置し(図1においては三列配置しているが、二列でも四列以上配置してもよい)、その上に横なる5をレール3と直交して一定間隔で配置してレール3に針金等で縛り付けて固定してなり、更にその上に押え6を上記群4を挟むようにして横なる5に直交して配置し、該横なる5に針金等で縛り付けて固定してなるものである。図中、7は横なる5に連結した針金にかき付着器となる帆立の貝殻と樹脂製のスペーサを交互に通してなる垂下連である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、大型で強い勢力を保った台風による被害が農林水産業を始め、様々な分野で発生している。かき養殖用のかき筏に関しても強風や高波により流出したり、破損することによる直接的な被害が発生するほか、流出したり、破損したかき筏が漁業操業や船舶航行の障害となったり、流出した資材が周辺海域に散逸する等の問題が発生する。
【0005】
またかき筏に使用される孟宗竹は、割裂性(繊維が揃い割れ易い)を有し、生物劣化及び気象劣化が進行し易い等の特性を有することから、その寿命は、通常3年、最大でも5、6年程度であって短く、その後は産業廃棄物となり、その処理にも費用がかかることとなる。
【0006】
本発明は、かき筏の強度及び耐久性を向上させて上記の問題を解消したかき筏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、浮体と、一列に並ぶ浮体上に固定されるレールよりなる群と、並行して配置した各群のレール上に該レールと直行して適当間隔で固定される横なると、該横なる上に横なると直交して適当間隔で固定される押えよりなり、かきの幼生が付着する採苗器を連ねた採苗連或いはかきの種付着器を連ねた垂下連を海中に吊下げるかき養殖用のかき筏において、孟宗竹よりなるレール、横なる及び押えのうち、少なくとも一部を孟宗竹に換えて樹脂管としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、レ-ルの一部又は全部が樹脂管であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、押えの一部又は全部が樹脂管で、該樹脂管には滑り止め塗装が施されるか、或いは樹脂管の少なくとも一部に蛍光塗料が塗布されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明で用いる樹脂管としては、耐衝撃性及び可撓性を有する材料、好ましくはポリエチレン(以下、PEという)管が用いられる。以下PE管を用いた場合を例にとって本発明の効果を詳述する。
【0011】
PE管はリサイクルが容易で環境に優しい材料であること、台風や船舶航行時の高波等によってかき筏が激しく揺れると、かき筏に吊り下げられる垂下連も上下動し、この際、垂下連を構成するワイヤーや針金(以下、単にワイヤー等という)が瞬間的に弛んだ状態から一気に引張られるようになって大きな衝撃を発生し、このためにワイヤー等が切断されることがあるが、PE管は孟宗竹に比べ、耐衝撃性及び可撓性を有するため、ワイヤー等に大きな衝撃力が加わるようなことがあっても、これを吸収してワイヤー等の切断を防止し、かきの海底への落下を防止できること、個々の孟宗竹は、直径、節間隔、全体の長さ等が不均一で、しかも同じ孟宗竹でも両端で直径が異なったりするが、PE管は径が均一で節もなく、可撓性や柔軟性を有することから、PE管同士の交差部は必ず接触し、締結に使用するワイヤー等との馴染みもよいため、孟宗竹に比べ、ワイヤー等による緊縛作業が容易で、弛みなく強固に締結でき、またワイヤー等の緩みによる交差部のずれや垂下連のずれが発生しにくいため、高波等により筏が解体して構成部材が散逸するのを防ぐことができ、孟宗竹を用いたかき筏に比べ、高波等による被害を受けにくいこと、PE管は孟宗竹に比べ高価格であることから、初めから全てをPE管にすることは初期投資が大きく、経営を圧迫するが、当初は一部にPE管を用いることで、かき筏の製作コストの上昇を最小限に抑え、その後、漸次孟宗竹をPE管に交換することで、安定経営を図ることができること、PE管は可撓性を有することから、ドラム等に巻付けて容易に輸送することができ、現地に輸送後、所定寸法に切断し、矯正することで使用可能となり、利便性に富むこと、PE管の寿命は一般に50〜100年程度と耐久性に優れ、リサイクルが可能であることから、孟宗竹に比べ廃棄物の量を少なくできること、PE管は着色や塗装が容易であり、予め製造時に着色することや組立て時に蛍光塗料を塗ることが可能で、PE管の一部にでも蛍光塗料を塗装しておけば、夜間での認識が容易となって船舶のかき筏への衝突防止効果をもたらすことができること、PE管に滑り止め塗装をすることで、作業者の海中への転落を防ぐことができること、従来、かき筏は孟宗竹の中からレール、横なる、或いは押えとなる部材を選定して組付けており、竹の選択には熟練を要していたが、PE管を着色してレール、横なる、或いは押えとなるものを予め色分けしておくことにより、未熟練者でもレール、横なる、或いは押えとなるものを簡単に選んで組付けることができ、筏組付け作業が容易になること、PE管は孟宗竹に比べ、海草やフジツボ等の海洋生物が付着しにくく、付着しても取れ易いこと、かき養殖時、かきは成長に伴って、その重量も増加し、このため筏の海面下への沈降が予想されるが、PE管を使用した場合、その両端に融着などによって蓋をし、塞いでおくことで、浮体の機能を兼備させ、筏全体の浮力の向上を図ることができ、また蓋をするPE管の数量を変えることにより、かきの成長に伴うかき筏の浮力調整が可能になり、また浮力を増加させて海面上に浮上させることで、移動時の流体抵抗を減少させ、移動を容易にできるようになること等の効果を奏する。
【0012】
また筏の最下部にあって供用中の交換作業が難しいレールをPE管としておけば、横なるや押えのPE管との交換作業は筏上で行えるため作業性に優れる。
また押えのPE管に滑り止め塗装しておけば、筏上での作業時に作業者の海中への転落防止効果を発揮することができ、押えの一部又は全部をPE管とし、該PE管の少なくとも一部に蛍光塗料を塗装しておけば、夜間において目立ち易く、船舶のかき筏への衝突防止効果を最もよくもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態のかき筏は、図1及び図2に示すかき筏1において、孟宗竹よりなるレール3、横なる5及び押え6のうちの一部、好ましくは、筏の最下部にあって供用中の交換作業が難しく、かつ、筏の浮力及び形状確保並びに筏全体の重量を支持するという最重要な部材であるレ−ル3の一部若しくは全部を予めPE管に代えた筏として製作・使用し、その後、孟宗竹の劣化に伴い、PE管を漸次増やして孟宗竹と交換する場合には、かき収穫後すなわち垂下連7が取り除かれた時に適宜取り替えるとより効率的に行える。例えば、交換する場合には、横なる5から行われ、横なる5を全てPE管に換えると、押さえ6がPE管に換えられる。この様な手順で実施すれば、コスト増加による経営の圧迫を回避できるとともにさらに長寿命の筏の実現が可能となる。また、横なる5や押え6のPE管との交換作業は筏上で行えるため作業性に優れるというメリットがある。
【0014】
浮体には、上述するような発泡スチロールよりなる、ほぼ円筒形をした浮体以外に例えば各種材質でできた太鼓状構造物、金属又は樹脂製のタンクよりなり、圧縮空気の注入により浮力調整が可能な浮体を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】かき筏の平面図
【図2】海面に浮かべたかき筏の側面図
【符号の説明】
【0016】
1・・かき筏
2・・浮体
3・・レール
4・・群
5・・横なる
6・・押え
7・・垂下連

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体と、一列に並ぶ浮体上に固定されるレールよりなる群と、並行して配置した各群のレール上に該レールと直行して適当間隔で固定される横なると、該横なる上に横なると直交して適当間隔で固定される押えよりなり、かきの幼生が付着する採苗器を連ねた採苗連或いはかきの種付着器を連ねた垂下連を海中に吊下げるかき養殖用のかき筏において、孟宗竹よりなるレール、横なる及び押えのうち、少なくとも一部を孟宗竹に換えて樹脂管としたことを特徴とするかき筏。
【請求項2】
レールの一部又は全部が樹脂管であることを特徴とする請求項1記載のかき筏。
【請求項3】
押えの一部又は全部が樹脂管で、該樹脂管には滑り止め塗装が施されるか、或いは樹脂管の少なくとも一部に蛍光塗料が塗布されることを特徴とする請求項1又は2記載のかき筏。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−154466(P2008−154466A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343976(P2006−343976)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】