説明

がんの予防または治療用医薬組成物

【課題】がんを効果的に予防または治療することができる医薬組成物を提供する。
【解決手段】アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及びタンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質;並びに薬学的に許容される担体;を含むがんの予防または治療用医薬組成物である。これにより、効果的にがんの予防または治療が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防または治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用の抗体開発は、現在非常に活発になされている。これは、既存の合成新薬では治療が困難な分野に対する解決策を提示しており、合成新薬を代替する勢いである。現在16個の治療用抗体が市販されており、全世界で約300以上の企業体が、7,000種以上の抗体を開発中である。かような抗体製品は、医薬品市場を持続的に成長させている。
【0003】
血管新生(angiogenesis)は、あらゆるがん組織における細胞分化に必須である。血管新生を抑制するためのターゲットはすでに知られているが、単独での治療剤は効率が低いためにこれまで皆無の状態であり、また、さまざまな種類のがんに汎用的に適用される治療剤もまだ開発されていない状況である。
【0004】
アネキシン(Annexin)は、20年余り前から、リポコルチン、カルパクチン、エンドネキシンなどと呼ばれていたタンパク質を、10年余り前に統一させた呼称である。アネキシンは、カルシウムとホスホリピド(phospholipid)とに結合し、エンドネキシン−フォールド(endonexin-fold)と呼ばれる「GXGTDE」モチーフを含む約70個のアミノ酸配列が4回反復(8回反復される場合も存在)する独特の保存されたドメインを有する。従来発表されているアネキシンは、上記の保存されたドメインを含んでおり、当該配列の保存いかんで、アネキシンタンパク質であるか否かが決定づけられる。アネキシンタンパク質は、哺乳類から糸状菌に至るまで多様な生命体に存在することが知られており、ヒトではアネキシンI、II、III、IV、V、VI、VII、VIIIおよびXIIIなどが報告されている。アネキシンタンパク質は、骨の構造形成に関与するだけでなく、膜トラフィッキング(trafficking)、膜透過チャンネル活性、ホスホリパーゼA2の抑制、凝固抑制、マイトジェン・シグナルの伝達、及び細胞−マトリックス相互作用調整など、多様な生物学的現象に関与することが知られている。
【0005】
関連技術は、アネキシンA1に結合する抗体を利用した物質の伝達方法を開示しているが、抗体を利用したがん治療に係わる言及は行っていない。他の関連技術は、がんのマルチマーカーに対する阻害剤を組み合わせてがんを治療する方法について開示しているが、マーカーとしてアネキシンA1を利用するということは、開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によってもなお、がんを効果的に予防または治療することができる医薬組成物が依然として要求されているのが現状である。
【0007】
そこで本発明は、がんを効果的に予防または治療することができる医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明者らは、アネキシンA1をがんのマーカーとして利用することを試みた。その結果、がんを効果的に予防または治療することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記タンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質;並びに薬学的に許容される担体;を含むがんの予防または治療用医薬組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る医薬組成物によれば、効果的にがんの予防または治療が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態によるアネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び細胞毒性リンパ球の細胞毒性活性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質ががん細胞に作用する例を示した模式図である。
【図2】一実施形態によるアネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び細胞毒性リンパ球の細胞毒性活性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質を発現させるためのベクターに挿入されるNdeI−XhoI切片の模式図である。
【図3】一実施形態によるアネキシンA1に特異的に結合するポリペプチド、及び抗CD3を含むタンパク質からなる融合タンパク質の精製結果を示す写真であり、各レーンで、Lはloading、FTはflow-through、Wはwashing、数字は、イミダゾールのモル濃度(mM)を意味する。
【図4】分離されたアネキシンA1陽性/陰性細胞に対するAA1BPxCD3活性化されたT細胞の効果を示し、PMBCから生成された細胞障害性T細胞クローンを標的細胞(Ramos,SNU−1,SNU−5)と混合し、10:1のエフェクター対標的細胞(E:T)比率で示された濃度のAA1BPxCD3で、3時間インキュベーションさせ、特異的な標的細胞溶解を%で示す(3回行った平均値)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一形態は、アネキシンA1(Annexin A1)に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記タンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球(cytotoxic lymphocyte)の細胞毒性(cytotoxic activity)を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質;並びに薬学的に許容される担体;を含むがんの予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0013】
一実施形態によれば、前記融合タンパク質は、アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質を含む。
【0014】
「融合タンパク質(fusion protein)」との語は、2以上のタンパク質を含み、前記2以上のタンパク質が、それ自体で化学的に結合されたり、またはリンカーを介して結合されて形成されたタンパク質複合体を意味する。
【0015】
前記融合タンパク質が特異的に結合する標的中の一つであるアネキシンは、哺乳類から糸状菌に至るまで多様な生命体に存在することが知られており、エンドネキシン−フォールド(endonexin-fold)と呼ばれる「GXGTDE(配列番号:118)」モチーフを含む約70個のアミノ酸配列が、4回反復(8回反復される場合もある)する独特の保存されたドメインを有する。アネキシンは、膜トラフィッキング(trafficiking)、膜透過チャンネル活性、ホスホリパーゼA2の抑制、凝固抑制、マイトジェン・シグナルの伝達、及び細胞−マトリックス相互作用調整など、多様な生物学的現象に関与すると知られている。アネキシンA1は、アネキシンのサブファミリーであって、リポコルチンIとも知られている。例えば、アネキシンA1は、ANXA1遺伝子によってコードされる。ANXA1は、Ca2+依存的リン脂質結合タンパク質であるアネキシンファミリーに属し、細胞膜の細胞質側面に位置することができる。アネキシンA1タンパク質は、ホスソリパーゼA2阻害活性を有し、分子量がおよそ40kDaである。また、アネキシンA1は、正常細胞では細胞内に位置しており、がんの生成に係わる結果として、細胞外膜に移動する特徴を有しているために、がんのマーカーとして用いられうる。従って、前記融合タンパク質において、アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質部位は、前記ポリペプチドを媒介として、がん細胞の表面に存在するアネキシンA1に特異的に結合しうる。
【0016】
「特異的に結合(specifically binding)」との語は、当業者に一般的に知られているのと同じ意味を有し、2以上のポリペプチド、またはタンパク質間で、共有結合または非共有結合によって、分子間に特異的な相互作用を行うことを意味する。例えば、抗原及び抗体が特異的に相互作用し、免疫学的反応を行うことがこれに含まれうる。
【0017】
「ポリペプチド(polypeptide)」との語は、ペプチド結合によって、アミノ酸残基が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、例えば、4〜200個、4〜100個、または4〜50個ののアミノ酸残基を有するものであってもよい。4個以上のアミノ酸残基を有するポリペプチドは、アネキシンA1に対して高い結合親和度を有する。200個を超えるアミノ酸残基を有するポリペプチドは、アネキシンA1に特異的に結合することもある。前記ポリペプチドは、例えば、遺伝子クローニング及び固相合成技術(solid-phase synthesis techniques)のように、本技術分野において公知の多様な方法を介して製造されうる。また、前記ポリペプチドは、商業的に購入可能なポリペプチド・ライブラリー(例えば、ポリペプチド・ライブラリー、 バクテリオファージM13−ポリペプチドー・ライブラリなど)を介して実験的に獲得することができる。
【0018】
一実施形態によれば、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質は、全長(full length)抗体またはその抗原結合断片でありうる。
【0019】
全長抗体は、2個の全長軽鎖及び2個の全長重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とのジスルフィド結合(SS−bond:disulfide bond)抗体の不変領域は、重鎖不変領域と軽鎖不変領域とに分けられ、重鎖不変領域は、ガンマ(γ)タイプ、ミュー(μ)タイプ、アルファ(α)タイプ、デルタ(δ)タイプ及びイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとして、ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)タイプ及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0020】
前記抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、非ヒト抗体、ヒト抗体(human antibody)、ヒト化抗体(humanized antibody)、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び前記抗体のエピドープ結合断片を含むが、それらに限定されるものではない。
【0021】
前記抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体であってもよい。非ヒト、例えば、マウスのヒト化抗体は、マウスの免疫グロブリンから誘導される最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリンの鎖またはその断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)、または抗体のその他抗原結合サブ配列であってもよい。
【0022】
非ヒト抗体をヒト化させる方法は、本技術分野において広く知られている。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、必須に齧齒類動物のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗体に対応する配列の代わりに置換させて行うことができる。従って、かようなヒト化抗体は、キメラ抗体であり、実質的に、正常なヒト抗体の可変領域より小さい領域が、非ヒト種から対応する配列によって置換される。例えば、ヒト化抗体は、一部のCDR残基、及び可能であるならば、一部の骨格(FR:フレームワーク)残基が、齧齒類動物の抗体にある類似部位からの残基で代替されたヒト化抗体でありうる。
【0023】
前記ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖の可変領域及び不変領域の配列が、ヒトから由来した抗体を意味し、ヒト抗体は、ファージディスプレイ・ライブラリーを含む、本技術分野において広く知られた多様な技術、例えば、遺伝的組み換え技術と細胞工学技術とを利用して生成される。
【0024】
前記ヒト抗体は、エフェクター部分が、ヒト免疫系の他の部分とさらに良好に相互作用することができ、ヒト免疫系がヒト抗体を外部物質として認識せず、生体内に導入された抗体に対する免疫反応が全体外来非ヒト抗体または部分外来キメラ抗体に比べてそれほど多くない。また、生体内に導入されたヒト抗体は、自然発生ヒト抗体と実質的に同じ半減期を有するので、投与される服用量と回数とを減らすことができる。一方、「キメラ(chimeric)」との語は、抗体または抗原結合部位が2個の異なる種から由来した配列を含むものを意味する。
【0025】
また、「抗原結合断片(antigen binding fragment)」との語は、免疫グロブリンの全体構造に対するその断片であり、抗原が結合しうる部分を含むポリペプチドの一部を意味する。例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、FvまたはscFvであってもよいが、それらに限定されるものではない。前記抗原結合断片のうちFabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に、1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点で、Fabと異なる。F(ab’)抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基が、ジスルフィド結合を形成しつつ生成される。Fvは、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体断片であり、Fv断片を生成する組み換え技術は、本技術分野において広く知られている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で、重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが連結されており、単鎖Fv(single-chain Fv)は、一般的にペプチド・リンカーを介して、重鎖の可変領域と単鎖の可変領域とが共有結合で連結されるか、またはC末端ですぐに連結されており、二重鎖Fvのように、ダイマーのような構造をなすことができる。前記抗原結合断片は、タンパク質加水分解酵素を利用して得ることができ(例えば、全長抗体をパパインで切断すれば、Fab断片を得ることができ、ペプシンで切断すれば、F(ab’)断片を得ることができる)、遺伝子組み換え技術を介して作製することができる。
【0026】
一実施形態によれば、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、下記一般式Iで表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドでありうる。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、X及びXはそれぞれ独立して、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val、Asn、Cys、Gln、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asp、Glu、Arg、His及びLysからなる群から選択されるアミノ酸であり、Xは、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val、Asn、Cys、Gln、Gly、Ser、Thr及びTyrからなる群から選択されるアミノ酸である。前記一般式Iで表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、配列番号1〜配列番号8のアミノ酸配列からなる群から選択されてもよい。
【0029】
一実施形態によれば、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、配列番号9〜配列番号42のアミノ酸配列を有するポリペプチドから選択されてもよい。これらは、アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドのアミノ酸配列である。これらは、X−Trp−Gly−His−X−X−Trp(配列番号:119)で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドでなくともよい。
【0030】
一実施形態によれば、細胞障害性リンパ球の細胞障害性活性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質は、前記細胞障害性リンパ球の表面マーカーに特異的に結合するものであってもよい。例えば、前記表面マーカーは、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD16、CD28、CD56、CD57及びTCRから選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態によれば、前記細胞障害性リンパ球の表面マーカーに結合するポリペプチドは、配列番号116または配列番号117のアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。前記配列番号116は、マウスの抗CD3のV及びVを含むポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号117は、ヒトの抗CD3のV及びVを含むポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0032】
一実施形態によれば、前記細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質は、全長抗体またはその抗原結合断片であってもよい。全長抗体または抗原結合断片については、前述の通りである。
【0033】
前記抗体またはその抗原結合断片は、アネキシンA1または細胞障害性リンパ球の表面マーカーを特異的に認識できる範囲内で、添付した配列表に記載されたアミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度及び/またはその他の生物学的特性を改善させるために、抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。かような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/または置換を含む。かようなアミノ酸の変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズのような特性に基づいてなされる。例えば、Arg、Lys及びHisは、いずれも正電荷を帯びた残基であり、Ala、Gly及びSerは、類似サイズを有し、Phe、Trp及びTyrは、類似形態を有する。従って、前記考慮事項に基づいて、Arg、Lys及びHis;Ala、Gly及びSer;Phe、Trp及びTyrは、生物学的に、機能均等物であると言える。
【0034】
一方、分子の活性を全体的に変更させないタンパク質でのアミノ酸置換は、本技術分野において公知である。最も一般的に起こる置換は、アミノ酸残基であるAla/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Glyの間の交換である。生物学的均等活性を有する上記の変異を考慮して、前記アネキシンA1または細胞障害性リンパ球の表面マーカーに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片は、配列表に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものとする。。前記の実質的な同一性は、前記の配列番号のアミノ酸配列と、任意の他の配列とを最大限対応するように整列させ、本技術分野において一般的に利用されるアルゴリズムを利用して、整列された配列を分析した場合、最小60%の相同性、最小70%の相同性、最小80%の相同性または最小90%の相同性を示す配列であってもよい。配列の比較のためのアライメント方法は、当業界に公知されている。例えば、NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)を介して、インターネット上で、blastp、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムを利用することができる。
【0035】
一実施形態によれば、前記融合タンパク質は、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記細胞障害性リンパ球の活性を誘導するポリペプチドを連結するリンカーをさらに含むことができる。
【0036】
前記融合タンパク質は、リンカー、例えば、ペプチド・リンカーを含むことができる。前記リンカーとしては、本技術分野において公知の多様なリンカーを利用することができ、例えば、複数のアミノ酸残基からなるペプチド・リンカーであってもよい。前記ペプチド・リンカーは、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記細胞障害性リンパ球の活性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質を十分な距離で隔離させ、それぞれのタンパク質が適した二構造次及び三次構造にフォールディングさせる。例えば、ペプチド・リンカーは、Gly、Asn及びSer残基を含むことができ、Thr及びAlaのような中性アミノ酸も含まれてもよい。ペプチド・リンカーに適したアミノ酸配列は、本技術分野において公知であり、例えば、Gly−Ser、(Gly−Ser)またはGly−Ser−Gly−Serであってもよい。前記リンカーは、前記融合タンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない限り、存在しなくてもよいし、またはその長さを多様に決定することができる。
【0037】
また、ペプチド・リンカーは、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドのN末端及び/またはC末端に連結されてもよい。特に、前記ペプチド・リンカーが、前記ポリペプチドのN末端及びC末端にいずれも連結されている場合、前記ペプチド・リンカーは、それぞれシステインを含むことができ、それぞれのシステイン間に、ジスルフィド結合が生じてもよく、前記2個のシステイン間に、前記ポリペプチドが存在しうる。
【0038】
一実施形態によれば、本発明に係る医薬組成物は、がんの予防または治療に用いられるものとして、前記融合タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む。
【0039】
一実施形態によれば、前記医薬組成物は、がんの予防または治療に利用される。前記組成物によって、予防または治療できるがんは、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、皮膚がん、皮膚または眼球内の黒色腫、直腸がん、肛門付近がん、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉種、尿道がん、慢性白血病または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、膠芽腫、頚部がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾腺がん、腎臓がん、前立腺がん、陰門がん、甲状腺がん及び頭頚部がんからなる群から選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記医薬組成物が、がんの予防または治療用医薬組成物として製造される場合、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。前記医薬組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に一般的に利用されるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。前記医薬組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘美剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0041】
前記がんの予防または治療用医薬組成物は、経口または非経口で投与される。非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などによって投与されてもよい。経口投与時、タンパク質またはペプチドは消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングしたり、胃での分解から保護されるように剤形化する必要がある。また、前記医薬組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与されてもよい。
【0042】
前記がんの予防または治療用医薬組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食)、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって多様に処方される。前記医薬組成物の投与量は、例えば、成人基準で、0.001〜100mg/kgの範囲内である。「薬学的有効量」との語は、がんを予防または治療するのに十分な量を意味する。
【0043】
前記医薬組成物は、当該当業者が容易に実施することができる方法によって、薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することによって、単位容量形態で製造されたり、多用量容器内に込められて製造される。このとき剤形は、油性または水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液形態であるか、あるいはエキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。また、前記医薬組成物は、個別治療剤として投与したり、あるいは他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは、順次または同時に投与することができる。
【0044】
一方、前記医薬組成物は、抗体またはその抗原結合断片を含むことができるので、免疫リポソームとして剤形化することができる。抗体を含むリポソームは、本技術分野において広く知られた方法によって製造される。前記免疫リポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びポリエチレングリコールで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミンを含む脂質組成物であって、逆相蒸発法によって製造される。例えば、抗体のF(ab’)断片は、ジスルフィド交換反応を介して、リポソームに接合される。
【0045】
他の形態は、薬学的有効量のアネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記タンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質;並びに薬学的に許容される担体;を含む医薬組成物を動物に投与することを含む、動物のがんの治療方法を提供する。
【0046】
前記がん治療方法に用いられるがんの予防または治療用医薬組成物及び投与方法は、前述の通りであるので、この両者に共通する内容は、本明細書が過度に複雑となるのを避けるために、その記載を省略する。一方、前記がんの予防または治療用医薬組成物を投与することができる個体は、あらゆる動物を含む。例えば、ヒト、またはイヌ・ネコ・マウスのようなヒト以外の動物であってもよい。
【0047】
他の形態は、アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記タンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む細胞を培養する段階、及び培養物から発現されたタンパク質を回収する段階を含む前記融合タンパク質の製造方法を提供する。
【0048】
形質転換された細胞の培養は、本技術分野において公知の多様な方法を介して実施することができる。例えば、形質転換された細胞を、YT液状培地に接種して培養を実施した後、細胞密度が一定水準に達した時点でIPTGを培地に添加し、lacZプロモータによるタンパク質発現を誘導して培養することによって、細胞内または培地に分泌されたタンパク質を得ることができる。
【0049】
細胞内または培地に分泌されたタンパク質は、本技術分野において公知の多様な精製方法によって精製された形態で得ることができる。例えば、硫酸アンモニウムによる溶解度分画化(solubility fractionation )、サイズ分別濾過及び多様なクロマトグラフィー(サイズ、電荷、疎水性または親和性による分離のために作製されたもの)による精製方法を介して精製された形態でタンパク質を得ることができる。例えば、融合タンパク質がGSTに融合された場合には、グルタチオンが結合された樹脂カラム、6xHisに融合された場合には、Ni2+−NTA His−結合樹脂カラムを利用し、所望のタンパク質を容易に得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、1つ以上の具体例について、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、1つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであり、本発明の技術的範囲が、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
図1は、一実施形態によるアネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質140が、がん細胞120に作用する例を示したものである。前記融合タンパク質140は、がん細胞120の表面に存在するアネキシンA1 130、及び細胞障害性リンパ球100の表面に存在する表面マーカー110の双方に特異的に結合することができるので、がん細胞120の周辺に、細胞障害性リンパ球100を位置させ、細胞障害性リンパ球が分泌する細胞障害性顆粒(cytotoxic granule)を介して、正常細胞に影響を与えずに、がん細胞を特異的に死滅させることができる。
【0052】
実施例1:アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドのスクリーニング
(1)バイオ・パニング
アネキシンA1((株)Genotechに依頼して合成)をプレートに固定させた後、ファージディスプレイ・ポリペプチド・ライブラリー(Dyax)を添加して結合させ、多様な結合時間及び洗浄条件を介して、高い親和力で結合するポリペプチド発現ファージを選別した。
【0053】
パニングには、ビーズパニング法を使用した。具体的には、ストレプトアビジンが表面に固定された磁気ビーズと、ビオチンを共役させたアネキシンA1とを混合した後、4℃で18時間撹拌し、前記タンパク質を磁気ビーズの表面に固定させた。前記タンパク質が固定化された磁気ビーズを、スキムミルクを用いて常温で2時間ブロッキングした後、前記磁気ビーズの表面にポリペプチドをディスプレイしているファージ溶液を入れた。前記結果物を2時間撹拌させつつ反応させ、PBS溶液(1.06mM KHPO、155.17mM NaCl、2.97mM NaHPO・7HO)、及び0.1%のTween 20が含まれたPBS溶液を利用して洗浄した後、前記抗原と結合したファージのみを分離した。前記パニング過程は、パニング後に得られたファージ数によって、2回または3回まで進めた。
【0054】
(2)ファージELISA及びアネキシンA1と特異的に結合するポリペプチド部分の塩基配列の確認
前記パニング過程で得られたファージ・クローンを、E.coli XL1−Blueにそれぞれ感染させた後、37℃で14時間培養してファージ溶液を得た。96ウェル・マイクロタイター・プレート(Nunc)にアネキシンA1を添加した後、4℃で18時間静置させ、前記タンパク質をプレート表面に固定させた。前記タンパク質が固定されたプレートを、スキムミルクを用いて常温で1時間ブロッキングした後、100μLのファージ溶液を添加した。2時間、ファージとタンパク質とを常温で反応させ、0.1%のTween 20が含まれたPBS溶液を利用して洗浄した。その後、ファージに特異的に反応するHRPが共役した抗M13抗体(GE Healthcare)を添加し、常温で1時間反応させた後、0.1%のTween 20が含まれたPBS溶液で2回洗浄した。最後に、前記プレート各ウェルに、100μLのトリメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を添加して発色反応を誘導させ、その後、5NのHSO溶液50μlを添加して反応を中止させ、OD450値をプレートリーダー(Molecular Devices)で測定した。その結果、総42個のファージ・クローンがアネキシンA1と高い反応性を有することが確認された。前記ファージの単一クローンから、前記アネキシンA1と特異的に結合するポリペプチド部分の塩基配列を確認するためのプライマーセット(TNフォワード・プライマー及びTNリバース・プライマー;配列番号114及び配列番号115)を使用し、コロニーPCRを行った。PCRは、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystem)を使用して行い、PCR条件は、次の通りである:94℃で5分;94℃で1分、60℃で1分及び72℃で1.5分の連続反応を30回反復;72℃で10分;4℃に冷却。その後、前記反応から得られたポリヌクレオチド切片の洗浄及び塩基配列分析(Solgent)を行い、ここから、前記アネキシンA1と特異的に結合するポリペプチド部分の塩基配列を確認した(表1)。下記表1は、前記ファージにディスプレイされたポリペプチドで、ペプチド・リンカー部分を除外した部分、すなわち、アネキシンA1と特異的に結合するポリペプチド部分のアミノ酸配列及びそれから類推された塩基配列を示している。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】

【0057】
実施例2:抗CD3及びアネキシンA1結合ポリペプチドからなる融合タンパク質の発現ベクターの製造
本実施例では、細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドの1種であるCD3に特異的に結合することができる抗CD3ポリペプチド、及び前記実施例1で製造されたアネキシンA1結合ポリペプチドからなる融合タンパク質を生産するための発現ベクターを製造した。図2に示す構造を含むNheI−XhoI切片を、(株)Genotechに依頼して合成し、前記合成されたNheI−XhoI切片を、NheI及びXhoIに切断した後、前記と同一の制限酵素で切断したpET21b(Promega)に挿入して発現ベクターを完成した。前記NheI−XhoI切片は、抗CD3をコードするポリヌクレオチド2種(マウスまたはヒト)、及びアネキシンA1結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド8種(配列番号8、配列番号5、配列番号21、配列番号19、配列番号4、配列番号1、配列番号15、配列番号16の順序)を組み合わせ、合計16種類作製した。前記それぞれのNheI−XhoI切片を、配列番号85〜配列番号100に示す。また、前記各切片から生産される融合タンパク質の名称を、M1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7及びH8と命名した。
【0058】
さらに、発現される融合タンパク質の溶解度を向上させるために、前記発現ベクターを利用し、前記融合タンパク質にユビキチンが結合されたタンパク質を発現させるためのベクターを作製した。ユビキチンは、図2に示すNheI−XhoI切片において、pelB及びFLAG間に位置させた。ユビキチンが結合された前記融合タンパク質を発現させるためのベクターの作製方法は、次の通りである。
【0059】
まず、上記で作製された発現ベクターをテンプレートとして、NdeIで切断可能なリンカーを含み、pelBの5’部分を含むように作製したフォワード・プライマー(5’−cgccatatgaaatacctgctgccgaccgctg−3’(pelB:NdeI−F;配列番号101))及びBamHIで切断可能なリンカーを含み、pelBの3’部分を含むように作製したリバース・プライマー(5’−cccggatccggccatggccggctggg−3’(pelB−NcoI:BamHI−R;配列番号102))を使用してPCRを行い、得られたPCR産物を、NdeI及びBamHIで切断した後、精製してNdeI−BamHI切片を得た。
【0060】
その後、pET21bベクターのBamHIと、EcoRI切断位置との間に、ユビキチンをコードするポリヌクレオチド(配列番号103)を含んでいるベクターを、NdeI及びBamHIで切断し、精製した後、前記NdeI−BamHI切片をライゲーションさせた。ライゲーション産物については、シーケンシングを依頼して塩基配列を確認した。
【0061】
その後、FLAG−VH−リンカ−VL−(GGGGS)リンカー−アネキシンA1結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNA切片は、上記で作製された発現ベクター16種をそれぞれテンプレートとして、下記フォワード・プライマー及びリバース・プライマーを使用してPCRを介して得た。フォワード・プライマーは、EcoRIで切断可能なリンカーを含み、マウスのVHに該当する部分と、ヒトのVHに該当する部分とをそれぞれ異なって使用し、リバース・プライマーは、XhoIで切断可能なリンカーを含み、アネキシンA1結合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの一部を含むように作製した。使用したプライマーは次の通りである:
【0062】
【化2】

【0063】
その後、上記で得られたPCR産物を、EcoRI及びXhoIで切断させた後で精製し、上記で作製されたライゲーション産物もまた、EcoRI及びXhoIで切断させた後で精製し、前記精製された産物を互いにライゲーションさせた。ライゲーション産物については、シーケンシングを依頼して塩基配列を確認した。一方、前記融合タンパク質にユビキチンが結合されたタンパク質16種の名称を、Ub−M1、Ub−M2、Ub−M3、Ub−M4、Ub−M5、Ub−M6、Ub−M7、Ub−M8、Ub−H1、Ub−H2、Ub−H3、Ub−H4、Ub−H5、Ub−H6、Ub−H7及びUb−H8と命名した。
【0064】
実施例3:融合タンパク質の発現及び精製
前記実施例2で製造したベクターを利用し、融合タンパク質を過発現させるために、前記ベクター(ユビキチンが結合された融合タンパク質をコードするベクター)で形質転換されたE.coli BL21(DE3)に当該融合タンパク質を発現させた。このとき、培養液としてYT培地を使用し、吸光度600nmで、O.D.値が0.5のときに0.1mMのIPTGを入れ、18℃で16時間さらに培養した。前記培養して得た細胞を、50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)下で超音波で粉砕した後、遠心分離機(13,000rpm)を利用して上清(上澄み液)を得た。前記上清を、前記緩衝液で平衡化されたNi2+−NTA superflowカラム(Qiagen)にアプライし、カラム体積の5倍に該当する洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、1M NaCl)で洗浄した後、溶出緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、250mM イミダゾール)で前記融合タンパク質を溶出させた。融合タンパク質が含まれた分画を集め、前記緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、250mM イミダゾール)で平衡化されたQカラム(Amersham Biosciences)にアプライし、カラム体積の5倍に該当する洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4)で洗浄した後、溶出緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.4、500mM NaCl)で前記タンパク質を溶出させた。融合タンパク質が含まれた分画を集め、透析を利用して塩を除去して濃縮した。精製されたタンパク質濃度は、BSAを標準物質として使用して測定した。
【0065】
図3に示すSDS−PAGEの結果から分かるように、約30kDaの融合タンパク質(Ub−H2(配列番号5を含む融合タンパク質))が精製されたことを確認することができた。
【0066】
実施例4:細胞培養、細胞株及びT細胞分離
ヒトバーキットリンパ腫細胞株(human Burkitt’s lymphoma cell)であるRamos(ATCC CRL−1596)及び胃がん細胞株SNU−1,SNU−5(ATCC CRL−5971,ATCC CRL−5973)をAmerican Type Culture Collectionから購入した。前記細胞株は、ドナーのプロトコルによって培養した。血液バンクから供給された血液から、Ficoll−Paque密度勾配遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)を分離した。その後、常温で15分間、RBC溶解バッファ(155mM NHCl、10mM KHCO、0.1mM EDTA)でインキュベーションさせて赤血球細胞(RBC)を除去し、5分間600gで遠心分離して細胞を沈殿させた。上澄み液を除去し、残った細胞をPBSに懸濁した。その後、15分間110gで遠心分離して多量の血小板を除去した。PBMCを培養培地に再懸濁し、刺激(stimulation)なしに準備した後で4日目になる日に使用した。CD8+ T細胞は、Human CD8 Subset Column kit(R&DSystems,Wiesbaden,Germany)を使用して分離した。
【0067】
実施例5:細胞毒性アッセイ
AA1BPxCD3の細胞毒性を測定するために、カルセイン(calcein)AM分泌アッセイ法を使用した。細胞毒性は、3時間後に確認した。Ramos,SNU−1またはSNU−5細胞(1.5×10個)を、細胞培養培地内で37℃で30分間、10mMのカルセインAM(Molecular Probes)で標識した。細胞培養培地で3回洗浄した後、細胞密度をRPMI 1640/10% FCSで、細胞濃度が3×10個/mLになるように合わせ、3×10個で、100μLずつアッセイ反応に使用した。96ウェル丸底フラスコで、表示されたAA1BPxCD3濃度で、3回CD8+ T細胞及び標的細胞を同時培養した。10:1のE:T比率のために、標的細胞の数をウェル当たり3×10個になるように維持させた。AA1BPxCD3を、所望の温度によって、RPMI 1640/10% FCSに希釈させた。総反応体積を200μLにし、3時間インキュベーションした。溶解された細胞から分泌される蛍光カルセインを、蛍光リーダ器(2104 EnVision(登録商標) Multilabel Reader、USA)で測定した。対照群蛍光カルセインは、エフェクター(effector)及びAA1BPxCD3のない標的細胞をインキュベーションして決定した。総細胞溶解を決定するために、エフェクターとAA1BPxCD3とがない標識された標的細胞の混合物を1%サポニン20μLを添加して10分間溶解させた。特異的な細胞毒性(細胞溶解;% specific Lysis)は、下記数式によって計算した:
【0068】
【数1】

【0069】
結果を図4に示す。図4に示すように、SNU−5細胞およびSNU−1細胞に対しては、AA1BPxCD3の濃度の増加に伴い、細胞毒性も増強される結果となった。
【符号の説明】
【0070】
100 細胞障害性リンパ球
110 表面マーカー
120 がん細胞
130 アネキシンA1
140 融合タンパク質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記タンパク質の末端に連結された細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質からなる融合タンパク質;並びに薬学的に許容される担体;を含むがんの予防または治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記融合タンパク質は、前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質、及び前記細胞障害性リンパ球の活性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質を連結するリンカーをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドを含むタンパク質は、全長抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、下記一般式Iで表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物:
【化1】

式中、X及びXはそれぞれ独立して、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val、Asn、Cys、Gln、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asp、Glu、Arg、His及びLysからなる群から選択されるアミノ酸であり、Xは、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Val、Asn、Cys、Gln、Gly、Ser、Thr及びTyrからなる群から選択されるアミノ酸である。
【請求項5】
前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、配列番号1〜配列番号8のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アネキシンA1に特異的に結合するポリペプチドは、配列番号9〜配列番号42のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質は、前記細胞障害性リンパ球の表面マーカーに特異的に結合することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記表面マーカーは、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD16、CD28、CD56、CD57及びTCRからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記細胞障害性リンパ球の表面マーカーに結合するポリペプチドは、配列番号116または配列番号117のアミノ酸配列を有するポリペプチドであることを特徴とする、請求項7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細胞障害性リンパ球の細胞毒性を誘導するポリペプチドを含むタンパク質は、全長抗体またはその抗原結合断片であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記がんは、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、皮膚がん、皮膚または眼球内の黒色腫、直腸がん、肛門付近がん、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉種、尿道がん、慢性白血病または急性白血病、リンパ球リンパ腫、肝細胞がん、胃腸がん、膵臓がん、膠芽腫、頚部がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝腫瘍、乳がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾腺がん、腎臓がん、前立腺がん、陰門がん、甲状腺がん及び頭頚部がんからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−23501(P2013−23501A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−165002(P2012−165002)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】