くつ下、自転車用くつ下
【課題】ロードレース等の自転車競技用に適したくつ下を提供する。
【解決手段】ロードレース等の自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、爪先部は左右の足形の形状で、筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、該反転編み部の周囲に踝より踵側に難伸部を配置するとともに、アキレス腱部分には設けられていないくつ下とし、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される。
【解決手段】ロードレース等の自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、爪先部は左右の足形の形状で、筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、該反転編み部の周囲に踝より踵側に難伸部を配置するとともに、アキレス腱部分には設けられていないくつ下とし、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、くつ下に関する。特に、自転車用くつ下に適したくつ下に関する。
【背景技術】
【0002】
くつ下は、靴と素足の間の緩衝材としての役目のほか、足を暖かく保つ保温作用、汗を吸収して乾燥させ、通気性を確保することのほか、靴の外に出る皮膚の保護、靴と下半身の衣服との間を埋める衣服としての役割がある。靴下の長さは様々であり、踝(くるぶし)のすぐ上を覆うものから膝上を覆うものまで様々な長さがある。
また、用途や機能に適したくつ下の開発も行われている。
サッカーなどのスポーツ時に着用されるくつ下類(ストッキング)は、激しい運動に対応する必要がある。このため、ずれないようにきつめに作成されていることが多い。また、左右の足の形に沿ったくつ下の提案もされている。
例えば、特許文献1(特開2007−107178号公報)には、スポーツサイクルに適したくつ下として空気通路が形成されたくつ下が提案されている。特許文献2(特開2007−332470号公報)には、サポーター機能を付与したくつ下が開示されている。本出願人は、左右の足形の形状であって、親指側に余裕を持たせたくつ下(特許文献3、特許第3780354号公報)や、左右の足形に沿ったくつ下であって、土踏まず部の収縮力を高め、拇趾球部に高摩擦性を付与したくつ下(特許文献4、特開2007−197881号公報)を開発し、提案している。
一方、本出願人は、ロードレースなどの自転車競技用に適した、ペダルに効率よく脚力を伝えるために特殊な構造をした専用の靴(特許文献5、特許3319691号公報、特許文献6、特許2992620号公報)を開発し提案している。
自転車用靴は、足の踏み力が素速くペダルに伝達されその伝達効率が高いことが望まれており、特許文献5に提案した靴は、繊維強化樹脂製であって、足裏の土踏まずより前方で且つ親指の後方に位置する足裏の第1凸状面に対応するように形成された凹面を有する第1凹状形成部と、前記土踏まずより前方で且つ小指の後方に位置する足裏の第2凸状面に対応するように形成された凹面を有する第2凹状形成部とからなる構造の自転車用靴底であって、踏み込み時に土踏まずが靴底芯体にしっかり固定される。このとき同時に、親指、小指の関節位置の足の硬い部分が靴底芯体に固定され、繊維強化材料で形成され一体即ち単体の板状体として均一に薄く形成されている靴底芯体は軽く、ほとんど固体であり、即ち、変形性がほとんどないから、足の踏み込み力が減殺されないで靴底芯体に伝達されそのままペダルに伝達される靴である。また自転車用靴の靴底には、特許文献6に開示されるように、自転車のペダルと靴を結合するための結合媒体であるクリートが取り付けられて、ペダルと靴がずれて伝達力にロスが生じないように工夫されている。
このように、自転車では、足の踏み力が素速くペダルに伝達されその伝達効率が高くなるように、靴と足、靴とペダルの密着性を高め、ズレを防止する工夫が成されている。しかし、靴と足の間に介在するくつ下については、湿気を排気するに着目した特許文献1が提案されているが、脚力の伝達ロスを防止するために適したくつ下の開発はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107178号公報
【特許文献2】特開2007−332470号公報
【特許文献3】特許第3780354号公報
【特許文献4】特開2007―197881号公報
【特許文献5】特許第3319691号公報
【特許文献4】特許第2992620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ロードレース等の競技用の自転車用に適したくつ下を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、
該反転編み部の周囲に難伸部を配置したことを特徴とするくつ下。
2.反転編み部は、踵骨隆起突起を収納する形状であって、
該反転編み部の周囲に配置された難伸部は、踝より踵側に配置されていることを特徴とする1.記載のくつ下。
3.難伸部は、アキレス腱部分には設けられていないことを特徴とする1.又は2.記載のくつ下。
4.足首前部及び/又は足底部分に長手方向に詰め編み部を設けたことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載のくつ下。
5.踵部分の反転編み量と足首部に形成された詰め編み部によって、足部と脚部の屈曲角度が鈍角に形成したことを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載のくつ下。
6.拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成したことを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のくつ下。
7.ポリエステル繊維素材を主とするくつ下であって、足裏内面側に木綿繊維が配置されていることを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載のくつ下。
8.甲部に滑り止め部を設けたことを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載のくつ下。
9.左右の足の形状に沿った形状のくつ下であることを特徴とする1.〜8.のいずれかに記載のくつ下。
10.自転車用くつ下であること特徴とする1.〜9.のいずれかに記載のくつ下。
11.くつ下が自転車用であって、足部と脚部の屈曲角度が100〜140°であることを特徴とする5.〜9.のいずれかに記載のくつ下。
12.自転車がロードレース用自転車であることを特徴とする10.又は11.記載のくつ下。
13.自転車用くつ下であって、足の拇趾球部と小趾球部が当接する部分を凹部に形成された内面を有するロードレース用自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、
爪先部は左右の足形の形状であって、
拇趾球部と小趾球部の外面には、滑り止めが形成され、
くつ下踵部は、基本筒部に対して180°未満の部分に反転編みによって形成し、該反転編み部分の周囲に難伸部を形成し、
足首側は、長さ方向に詰め編みを施すことによって収縮部を形成することにより、
踵部は長さ方向に伸び、足首側は長さ方向に縮み、この伸びと縮みの調整によって、足部と脚部の屈曲角度を鈍角に形成し、
くつ下は靴の内面形状に沿い、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される自転車用くつ下。
14.くつ下は、ポリエステル繊維を主材とするものであって、足裏に接触するくつ下内面に木綿繊維を配置したことを特徴とする13.記載のくつ下。
【発明の効果】
【0006】
1.本発明のくつ下は、踵部分を収納するように形成された反転編み部は、足の踵の先端側を収納し、その反転部の周囲に難伸部が配置されていることにより、装着したくつ下が踵部分で固定される機能に優れている。装着されたくつ下が踵部分で固定性が高められる。通常のくつ下の踵部分は、反転編みを丁度総針数の半分(反転編み部分を筒編み部の180°)になるように編機に標準設定されており、これが一般にバランスのとれたくつ下の形とされている。しかし機能が求められるスポーツ用くつ下では、踵部分の反転編みを大きくすることにより、足首部の屈曲を直角に近くすることにより、通常直角付近での人間の足首の動きに追従させようとしている。踵部の収納領域を広く取るためには、反転編み部分を筒編みの180°以上にするのが通常の手法である。しかし、大きな反転編みにより足首の屈曲の角度を直角に近づけることができるが、同時に、大きすぎる反転編みによる踵収納部が足の動きにおいて大切なくつ下の踵部での固定性を低下させ、踵部にズレを生じさせることとなる。
2.反転編み部の大きさは、本来踵骨が後ろに張り出した踵骨隆起突起を収納する大きさであって、足首の屈曲の角度を、踵収納部を必要以上に大きくしてしまう反転編みを増すことではなく、踵部分の編み方の工夫により直角に近づけたり、必要によっては鈍角にとどめたり調整する方法を採用した。また、くるぶしよりも踵側に難伸部が配置されているので、足の踵部分への固定性を向上させたくつ下を提供することができる。特に、足の大きさにしっかりフィットする大きさのくつ下(小さめのくつ下)は、爪先と踵部分にしっかりと密着固定して、安定性が向上しズレを防止する機能が向上する。反転編みの縫合ラインであるゴアラインは、「V字状」、「Y字状」等になって表れ踵骨隆起突起をしっかりと覆う形状を形成することができる。
3.難伸部分を、アキレス腱を避けるように配置したので、アキレス腱の動きを阻害することがない。
4.足首部分の長手方向にタック編みなどにより、平編みの編み目複数分に相当する縦方向の編み目を1つに詰めて編み込むことによって、甲側の足首を鈍角に付勢し、足首の角度が伸びることを抑制する。また、足底部にも詰め編みを入れると、足首側と共同して足首の角度の規制作用を強めることができる。
5.小さな踵部と難伸部を踵側に工夫した配置することによって踵部の固定力が高まり、足裏側の伸びに対する抵抗が大きくなることとなり、爪先が上方に回動することが抑制され、ペダルに対する足首の角度が深くなることを抑制する。この抑制力と足首側の詰め編みとによって、ペダルに対する足首の角度を一定に保つことに役立つ。この角度θは120度を中心に、100〜140度程度に保つことが好ましい。さらに、難伸部を足底側の詰め編みに接続することにより、足裏側の伸びに対する抵抗を大きくすることができる。
6.拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成することにより、脚力を回転トルクに有効に伝達することができる。
7.くつ下の足裏内面に木綿(コットン)繊維の配合を多くすることにより、発汗による吸湿によって足の肌とくつ下内面の摩擦性をたかめ、足とくつ下のズレを防止することができる。一方、主材のポリエステルは、吸湿性が小さく、汗を放出でき、全体としてくつ下に乾燥感を与え、装着感を維持することに適している。
8.甲部外面に滑り止め機能を付すことにより、靴の締め付けを有効にして、靴とくつ下の安定性に寄与する。
9.左右の足の形と動きに沿った構造とすることにより、くつ下のフィット性を高めている。
10.本発明のくつ下は、踵部の固定性を高め、足首の角度を鈍角に保つことができ、ロードレースなどの自転車用に適したくつ下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ロードレース用自転車に乗って走行している状態を示す図。
【図2】ペダルと足首の角度についての模式図。
【図3】脚の筋肉が発生する力とペダリング関係を示す図。
【図4】直立した足の状態図(a)と、直立状態の足の基本形に適したくつ下の基本形を示す図(b)。
【図5】図4(b)に示す基本的くつ下を展開した模式図。
【図6】深い踵部を構成する反転編みの例を示すくつ下の展開を示す模式図。
【図7】本発明の踵部の反転編み部の例を、200本針のシリンダーについて模式的に示す図。
【図8】足の骨格図。
【図9】実施例1のくつ下を示す図。
【図10】実施例2のくつ下の足裏側を示す図。
【図11】実施例2のくつ下の甲側を示す図。
【図12】実施例2のくつ下を装着した内側側面を示す図。
【図13】実施例2のくつ下を装着した外側側面を示す図。
【図14】自転車専用靴の靴底内面を示す模式図。
【図15】自転車専用靴の靴底の分解斜視図。
【図16】タック編みの状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るくつ下は、特に自転車用に適したくつ下を開発したものである。その研究開発の過程で得られた知見をくつ下一般に適用する新たな発明として提案するものである。
すなわち、ロードレースなどの競技用自転車に求められる要求を詳しく解析し、その要求に応えうるくつ下を実現した。
ロードレースなどの競技用の自転車では、(1)足の拇趾球部と小趾球部が主に自転車のペダルに力を伝達する足の部位であること、(2)スムーズに脚力をペダルに伝達するには足首の角度θが鈍角に保たれていることが、脚力をロス無くスムーズにペダルの回転力に伝え、疲労を押さえるためには重要な要素である。
さらに、自転車の走行について詳しく説明する。図1にロードレース用自転車に乗って走行している状態を例示する。このような一定の姿勢を保ちながら、120回/分ほどの回転数によって、平地では時速50km程度のスピードで走行する。このような高速回転運動を続け、常に円滑な一定の走行トルクを発揮することが重要である。足と靴の密着性が重要であることは、背景技術及び特許文献5、6等に記載されているので省略する。
他方、足首の角度θが上下すると走行トルクにムラが生じて、脚力の伝達ロスになる。図2に足首の角度について模式的に説明する。A図では、足の角度が自然でなく、トルクのムラが生ずる。B図では、回転軸に対し足の角度は一定であるが、膝の位置に対して足首が動きすぎて、トルクにムラが生ずる。C図では、膝から足首に対して一定の鈍角を保ち続け、安定して効率よくトルクを伝えることができる。この鈍角θは、120°を中心として、100〜140°程度が好ましい範囲である。
脚の筋肉が発生する力とペダリング関係を図3に示す。ペダリング時の出力の殆どを占めているのは蹴り出し〜踏み込みであり、その際に足首の角度が鋭角〜鈍角に振れることは、トルクの伝達ロスを発生する。足首の角度を望ましい角度に維持することは、筋肉が発揮する力をより安定してトルク伝達するには重要なことが判明する。
【0009】
一方、背景技術に述べたように、左右の足形の形状及び、拇趾球部、小趾球部に高摩擦部を配置したくつ下は提案されている。くつ下は運動性を損なわないために、足首の自由度を妨げないようにすること、直立した状態を基本(図4(a))の足形200とするために直角に屈曲するように踵部を大きく形成することが、一般的なくつ下の設計思想である。踵部を大きく形成することは、歩行や運動による、踵部のズリ落ちやずり上がりが生じ難くなることもあって、踵部の反転編みは基本円筒編みの180°より大きくする傾向がある。反転編みの中心が踝直下になるようなくつ下も見られる。図4(b)を参照すると反転編み部分が大きく挿入されて踵部分204を大きく包み込むように形成されている。このように踵部分を大きく挿入すると、脚部と足部は直角に近く角度が付き、一般的には、ずれたり、脱げにくいくつ下となる。しかし、踵骨隆起突起部を包み込むには大きすぎる収容部は、踵でのくつ下のフィット感が得られず、より専門的な競技用くつ下には適さない。 図4(b)に示すくつ下201は、一般的であって、足を挿入する口部202が設けられ、脚部205と足部が筒編みされており、踵部分204の反転編みが大きく挿入されている。脚部205と足裏部209の間に反転編みにより形成された踵部分204が挿入されて足形に沿って曲げられる。一方、脚部205と甲部分217は、内折りに曲げられて、足首部分213にたるみが発生する。爪先部分203は反転編みによって袋状に形成される。この結果、脚部と足部は直角に近く角度が付き、一般的には、ずれたり、脱げにくいくつ下となる。その展開図を図5に示す。図5(a)に示す展開図は、口部202から丸編機などによって筒編みして脚部205を形成し、踵部分204は、反転編みして台形を形成し、台形の上辺部で折り返して足裏側の台形を相似形に編み立て、足部の筒編みを行う。この図示の例では、180°分反転編みされた例である。足部は足裏部209と甲部分217が連続して筒状に形成され、爪先部203は、反転編みして台形を形成し、台形の上辺部で折り返して甲側217の開口に縫合して袋状の爪先部203が形成される。 図5(b)に示す展開図は、180°以上の部分に反転編みを形成する例を示している。この図5は、筒編みと反転編みによって連続して編成されるので、このような展開図を組み立ててくつ下を製造するわけではないが、分かり易く説明する参考図である。筒状の脚部と足の胴部との間に台形状の反転編み部を対称に介在させて踵部を形成する。爪先部は足の胴部の先端に台形状反転編みを対称に形成して折り返して形成される。
爪先を足形に合わせて形成することは、特許文献3、4に開示されているように、特殊な形成方法を適用することとなる。
踵部の膨らみを深くするためには、図6に示すように台形状の間に小さな台形部分を挿入するなどの手法を適用することもできる。脚部205と足裏部209の間に反転編みして形成された複数の台形204a1、204b1、204b2、204a2が形成されている。この図6では、180°以上の範囲に反転編みが形成された状態を示しており、大きく深い踵が形成される。
【0010】
くつ下は、針を円形に配置したシリンダー型の丸編機によって編み込まれる。針数は、84本、96本、120本、132本、144本、168本、176本、200本、220本などのシリンダーが使用されることが多い。
図7に本発明の踵部の反転編み部の例を、200本針のシリンダー針の割図Cについて示す。
足裏側中心から一方向の針順を付与した場合、本発明は左右50本未満の合計100本未満について、反転編みを施す範囲とする。例えば、図示では、左右に30本分の合計60本分について、丸編みを中止して、反転編みを施して、扇形の形状に設けた反転編み部Bが形成される例が示されている。好ましくは、左右40本以内が好ましい。角度的には、左右70度程度以下である。30本分では、左右55度に相当する。
一方、図5(a)の例では、半分の100本分について反転編みを施すこととなる。
【0011】
<足裏部の固定構成について>
本発明は、拇趾球部と小趾球部の特定領域でペダルに対して密着してズレの無いくつ下を提供するために、足裏側の長さ方向の動きを規制する構成を実現することを第1の課題として検討した。
爪先側は、折り返して袋の先に足指が係止されるので固定点とすることができる。一般的なくつ下の踵側は、実際の人間の踵の形には関係なく大きさを意識して台形を重ねた形状をしているので、固定点としては不十分である。足の骨格構造(図8)を良く観察すると、踵骨は後ろ側に伸びており、その先端は踵骨隆起突起として張り出している。この踵骨隆起突起に係止する構造をくつ下の踵部分に形成できれば、踵側の固定点とすることができると想定して、具体的なくつ下の構造開発に取り組んだ。
【0012】
その結果、(1)小さな幅の反転編み部を形成して踵骨隆起突起の収納部とすることとし、(2)さらに、反転編みの周囲に難伸部を形成することによって、強い力が踵に作用した場合でも、踵骨隆起突起の根元に巻き付くように難伸部が配置されているので、外れてしまうことなく安定させることができることを知見した。
反転編み部の幅を小さくすることは、基本筒編み部の半分(180°未満)より小さくすることにより実現できる。反転編み部による踵骨隆起突起の収納部の形状と容積は、台形状の段数を増やすことにより形成することができる。難伸部は、アキレス腱を避けるように配置することが好ましく、アキレス腱を不要に締め付けることを防止する。踵骨隆起突起の収納部は、袋状の深さを備えて、収納できる形と容積を確保することができる。この深さは、図5(a)に示す、2つの台形を向かい合わせに配置する構成では浅すぎて十分でないことが多い。この形状では、ゴアラインが1本形成される。
図6に示すように台形の数を重ねて増やすことによって深さを確保することができる。台形の斜辺の合わせラインとして表れるゴアラインが「V字状」、「Y字状」「W字状」となって表れる。丁度、深いマチを形成する様な状態となる。
難伸部は、伸びの小さな繊維や強弾性繊維等の素材を用いることや編み手法によって伸びにくく、安定して踵に密着させることができる。編み手法として例えば、タック編みを適用することができる。
この踵部の工夫により、爪先部と踵部を固定点として、くつ下の足裏側の長さ方向及び周方向のズレ防止を図ることができる構成を実現した。
このような、足裏部の動きを規制することは、スポーツ用ソックスにおいて基本であり、特にスケートやスキーなど足下の安定性が求められるスポーツ用のくつ下に適用できる。
【0013】
<足首の角度維持の構成について>
甲側足首側は、鈍角に筒体を折り曲げた状態を維持するためには、曲げによるたるみを吸収し、足首が伸びた場合に抵抗となる構造を実現することを具体的な開発課題とした。
甲側足首部に、横方向のコース糸を、複数本をまとめて一緒に編み目を作るタック編みを設けることにより、長手方向の編み目の数を減らして長手方向を詰める編み方を施し、足首部の曲げによるたるみを吸収し、編み目の数が減らされていることによって伸びを規制する機能を発揮させることとした。すなわち、甲側足首部にタック編みを施したものである。また、足裏側の足底部分にタックなどにより詰め編みを施すことにより、足底部分を引っ張る機能を発揮し、足首を伸ばす方向に付勢することができる。この足底部分のタック編みと甲側のタック編みとを共動させることにより足首の角度を一定に保つ機能を向上させることができる。さらに、足底側のタック編みと難伸部を接続することにより、足裏側の伸びに対する抵抗を大きくすることができる。
なお、タック編みとは生地を編成する際に、ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作るもので、編針から編み目を脱出させないので、編針のフック又は針幹の前の編み目とともに保持し、例えば次の給糸により編み目を形成する時に同時に2つの編み目をくぐって編み糸を引き出して新しい編み目を作った組織である。タックする回数(タック数)は5〜6回続けることもできる。編み目に引張力が作用したときに、編み目の形が変化することによって伸びることができるが、タック編みによって編み目の数が減らされているので、編み目の空間が縮小されると共に、伸びることができる編み目の数が減るので伸びに対する抵抗を発揮することができる。タック編みについて参考図を図16に示す。
このタック編みを適当な範囲に形成することにより、曲げ角度を設定することができ、鈍角に付勢することができる。この角度は、120度を中心に、100〜140度程度に設計されることが好ましい。
さらに、足裏側が踵と爪先部で固定されているので、足首が鋭角側へ折れる方向に曲がることに対しても抵抗力を発揮する。
【0014】
<拇趾球部、小趾球部の構成について>
くつ下の拇趾球部、小趾球部には、力が集中する部分であるので、膨らんだ拇趾球部と小趾球部を収納できる膨らみを形成し、靴との間で滑らないようにくつ下の外表面に高摩擦性を付与する滑り止め機能を設けることが好ましい。
高摩擦性を付与する手段としては、コットンとナイロンの混紡糸のコットンの比率を高めることにより摩擦性を高くすることができる。例えば、コットン70%、ナイロン30%のブークレ糸がある。
なお、ブークレ糸は、セーターの意匠性を高めるために開発された経緯があって意匠撚糸とも呼ばれている。意匠撚糸は、小さなループなどを多数設けた撚糸で、ボリューム感やもこもこ感を出す装飾用の糸として一般的には用いられている。本発明者は、この意匠撚糸を、小さなループなど表面の凹凸によって摩擦を増加させることに使用したものである。本発明者は、意匠撚糸を編み込むことによって、滑り抵抗を大きくしたくつ下を開発した。意匠撚糸の編み込みの使い分けによって、くつ下の内外面で摩擦抵抗を変更したくつ下を提供することができる。これによって、肌とくつ下の界面で滑りを起こさせるか、靴とくつ下の界面で滑りを起こさせるかコントロールできるくつ下を提供することができる。意匠撚糸を加える場合の編み方や、意匠撚糸を加える場合の角度を調整することによって、意匠撚糸が顕れる面をコントロールすることができる。これによって、滑り止め面をくつ下の表裏どちらに設けるか決定することができる。なお、反対面にもいくらか意匠撚糸が現れるので、意匠撚糸を使用しない部分よりは摩擦が高くなっている。使用する意匠撚糸としては、ブークレ糸が好ましい。
【0015】
<甲側表面の構成について>
足首からつま先に至る甲側は、一般的な編み方を適用することができる。スポーツ用としては、足の胴部がしっかりとフィットするように編み構成とすることが好ましい。甲から側面にかけて、高通気性部分を設けて、靴で覆われる足底側からの排気性を高め、履き心地を改善することもできる。
また、靴と足をしっかり固定するために、甲側は紐やバンドによって締め付けが行われることが多い。くつ下の甲側表面にすべりを押さえる構成を形成することにより、安定性を向上させることができる。このすべりを押さえる手段として、ブークレ糸などを用いることができる。
【0016】
<つま先>
つま先の形成は、あし先の形状に合わせた、左右の非対称に形成することが好ましい。足形にしっかり密着することが大事なスポーツ用くつ下は、足形に沿った形状に編み立てることが望ましい。編み立て方法は、本出願人が提案した特許第3780354号公報に開示した方法を採用することができる。例えば、くつ下編機により、足裏側部分と甲側部分とを一体に筒編するとともに、該筒編部に連続してつま先を収容するつま先収容部を編成して、くつ下を製編する方法において、つま先収容部を編成する際、該つま先収容部の表側部と裏側部の双方を、それぞれ編み幅を変化させつつ反転編して、くつ下先端側ほど編み幅の狭い平面略台形状をなすように編成するとともに、該表側部の反転編と裏側部の反転編との間で、該表側部と裏側部の外形に沿う編立て部を正転編して、前記表側部と裏側部の間に正転編の編立て部を介設させるように製編して形成することができる。
さらに、つま先先端を親指側に寄せるには、くつ下編機の正転により、前記つま先収容部の外形部に沿う前記正転編の編立て部を編み立てる途中において、くつ下編機におけるつま先収容部を編成する編針領域で、親指側に寄せた先端である小形つま先部となる裏側と表側を、それぞれ編み幅を変化させつつ反転編して、くつ下先端側ほど編み幅の狭い平面略台形状をなすように編成することによりくつ下を製造することができる。
【0017】
<湿気排気対策と足のすべり防止について>
足からの発汗による濡れを回避するために、素材としては吸水性、速乾性の大きいポリエステル繊維が主材として用いられる。一方、ポリエステルは、足とのすべりが生じやすく、靴を締め付けても安定性に欠けることがあった。コットンは、湿度が高くなるとすべりを押さえることができるが、速乾性が低い。
ポリエステルを主材とし、肌に接触する面にコットンの比率を高めることにより、発汗による吸湿によって摩擦性を高めることができる。コットンの比率を高める部分は、くつ下の内面側の拇趾球部、小趾球部、甲側頂部などを中心とする。
土踏まず部分や内側面、甲側爪先部は、通気性を高めて、汗を放出することが好ましい。
【0018】
<全体構成について>
素材は、ポリエステル繊維を中心に、滑り止め機能を発揮する部分については、その表面部にコットン繊維の混入比率を高める。
自転車用くつ下は、人間の足の形や動きに合わせて設計し、余分な部分のないように足に良くフィットするように設計される。脚部が短く、くるぶしの上部に挿入口がある程度で十分である。
意匠撚糸を編み込み糸に用いて、表面に現れたループによって、摩擦抵抗を増加させるように設計した素材を滑り止め部分に適用する。ループを出す程度をくつ下の内面あるいは外面に調整し、摩擦面を設定できる。意匠撚糸は、多様な種類があるが、本発明ではブークレ糸が好ましい。意匠撚糸は、太さ、色、撚り数、繊維の種類などの異なる糸を2本以上使用し、これらの糸の給糸速度や、撚数などを変化させることにより特異な外観と風合いを有する糸である。意匠撚糸は、芯糸、芯糸の上に巻いて飾りを作るからみ糸、飾りの崩れを押さえる押さえ糸から構成される。意匠撚糸には、製造段階で糸の供給を連続的に行うループ系統、間欠的に行うノット系統に分けられる。ループ系統には、リングヤーン、ループヤーン、ブークレヤーン、スナールヤーン、ポーラヤーンなどがある。ブークレヤーンは、からめ糸をリングヤーンよりも多く供給して下撚りし、芯糸の周りにワナを形成する。その後押し糸を用いて逆方向に上撚りした糸である。ワナを小さく細く締まった糸を作ることもできる。
【0019】
<応用性ついて>
本発明のくつ下は、ロードレースなどの自転車用くつ下に適した構造である。足と靴の関係が一定していて、ズレによって力の伝達ロスや姿勢の崩れが大きな影響を及ぼす運動用のくつ下に適している。例えば、スケートやスキー用に適している。特に、スピードスケート、スキージャンプなど一定の姿勢を保ちながら、脚力を集中して発揮するスポーツに特に適している。
【実施例1】
【0020】
図9に実施例1のくつ下を示す。
この実施例のくつ下は、200本の針数を有するシリンダー胴を有するくつ下編機を利用して筒状に編み込むことを基本としている。踵部4は、図7に示すように反転編みを足裏側中心から左右に30本の針数分について、反転編みを施して形成する。この反転編みによる膨らみは、踵骨隆起突起の収納部として機能する。この反転編み部の周囲に難伸部6を形成する。難伸部6は、踵骨隆起突起の基部をしっかりとホールドして、反転編み部が踵骨隆起突起に対する固定安定性を助長する。この実施例では、難伸部の形成にタック編みを採用した。図9(d)にタック編みの構成状態を示す。タック編みを、2コース分を1目とし、二回繰り返す構成とした。なお、難伸部6は、アキレス腱部分を回避するように口部側に延長することが好ましい。
足部は筒状に編み込んで、足裏部9のつま先側に拇趾球部と小趾球部を含む趾球部8を形成する。趾球部8は、ブークレ糸等を用いて滑り止め作用を高めた構成とする。拇趾球部、小趾球部は、足の膨らみに応じて膨らみを形成することが好ましい。足裏側から連続して100本分針数を反転編み部にして、足裏側爪先の台形を形成し、折り返して相似形の台形を反転編みして甲側の爪先を形成して、全体として、つま先部3を形成する。
【0021】
甲側は、脚部5から足部の甲側7にかけて、連続して編み立てられる。足首部13は、タック編みを適用する。タック編みによって、周囲の平編み部分よりも編み目の目数を減らして、長さ方向を短く詰め、足首の屈曲角度に合わせる様にする。
図9(b)(c)に足首部13の拡大詳細を示す。
図9(b)は、タック部とメッシュ部を交互に組み合わせてタック部を形成した状態を示している。タック部とメッシュ部を混在させることにより、足首部分の詰め量を調整し、甲側への無理な引っ張りを解消することができる。メッシュ部とタック部の詳細な状態を図9(c)図に示す。メッシュ部は2コース分に設け、タック部は6コース分を使って、3コース分をタックして交互に配置している。これによって、タック部分は目が詰まって、周囲よりも詰めて収縮した状態を作ることができる。この例では、メッシュ部とタック部を繰り返して配置することにより、タックの連続による引きつれのような引っ張りを解消できる。このメッシュとタックの交互配置をバランスさせることにより、120°を中心とする足首の角度保持に有効に機能する。
さらに、タック編みを土踏まず部分に設けると、土踏まずを押し上げてアーチを維持及び足裏側を縮めて、足首の角度を伸ばす方向に付勢することができる。甲側のタック編みと土踏まずのタック編みを共動させることにより、足首の屈曲角度を一定に維持することに役立たせることができる。
更に、甲側7には、滑り止め性を高めた構成を付与する。
この構成によって、踵部は踵骨隆起突起にしっかり固定されつま先との間で、足裏側の安定性が向上し、趾球部付近を中心とする踏ん張り力をロスすることなく伝えることができる。足首側では、屈曲角度を一定にすることができ、ペダルなど角度を固定した状態で力を伝える運動に適する構成を実現する。更に、甲側に設けられた滑り止め機能は、靴の上面との固着性を高め、足の周方向の安定性を高める機能を果たす。趾球部と甲側の両方の滑り止め機能によって、周方向の安定性が一層向上する。
【0022】
素材は、ポリエステル製繊維を主材とし、拇趾球部や甲側では、コットンを混紡したブークレ糸を使用する。また、くつ下内面側にコットンを混紡することにより、発汗の汗の吸湿によって、足とくつ下の滑りを低下させることができる。
【実施例2】
【0023】
図10〜13に実施例2のくつ下を示す。
実施例2に示すくつ下1は、左右の足形に沿った構造を備えたくつ下の左足用である。つま先部3の形成は、特許文献3(特許第3780354号公報)に開示した製法を採用することができる。
図10は足裏側を示し、図11は甲側を示している。図12、図13は足に装着した状態を表している。
【0024】
足裏側を示す図10には、踵部4と踵部の周囲に配置された難伸部6が設けられている。足指の基部の拇趾球部81、小趾球部82は、やや膨らませて、外表面側に滑り止めを施して形成した。発汗した汗を放出するために、高通気性部分を脚部、土踏まず部、拇趾球部と小趾球部の周囲に設けている。それぞれの通気性部分は、52、53、92、93、94の符号で示されている。高通気性部分は、鹿の子編みなどによってメッシュの目を粗くする編み方を適用することができる。符号2は、足を挿入する口部を示し、口部側から筒編みが進められる。
図示されるように踵部分4は、筒編み直径(針数100本)に対して、約半分の幅に表示されている。針数は実施例1と同様に60本設定してある。また、難伸部6は、図9(d)に示すタック編みを採用している。踵部と難伸部の針数は、一般に機械的に標準設定されている半分(本例では100本)よりも少なく設定されている。踵部4の深さは、図6に示される、台形の数を調整する手法を用いて設計することができる。
【0025】
甲側を示す図11は、タック編みによって構成された足首部13が示されている。なお、甲側滑り止め部は、靴の締め付け安定などを考慮して適宜必要に応じて設計される。詰め編部95を土踏まず部分にも設けることができる。図11では、難伸部6に接して足指側に延長しているので、つま先側を踵側に引き寄せるように作用し、足首を伸ばす方向に付勢することができる。足裏側の詰め編みと足首のタック編みを共動させることにより、足首の屈曲角度を特定角度に維持、安定させることに役立たせることができる。足首部13を構成するタック編みは、図9(b)(c)に示すタックとメッシュの組み合わせを採用することができる。
甲側滑り止めは必須ではないが、図8(b)に示される中間楔状骨や外側楔状骨に対応する部分を含むように配することもできる。足裏側に設けた高通気性部分に連続した高通気性部分が側面及びつま先の根元に設けられている。高通気性部分は、符号52、53、72、73、74で示されている。更に、小趾球部82は、側面に沿って足裏側から甲側に配置されている。
【0026】
つま先3は、左右の足形に沿った形である。繊維素材は、実施例1と同様に、ポリエステルを主材として、ブークレ糸はコットンを適宜用いることができる。
【0027】
くつ下1の装着状態を側面視図として図12、13に示す。なお、高通気性部分の表示は省略してある。
反転編みした踵部4は、足の踵の先端側をカバーしている状態が示されている。その踵部4の周囲に難伸部6が配置されている。本実施例では、図示されるように踵部のゴアラインが「Y字状」に形成されている。難伸部6は、土踏まずよりも踵側から、くるぶし直下よりも踵側であって、アキレス腱部54を避けて口部2のふくらはぎ側に延出されている状態が示されている。拇趾球部81、小趾球部82がそれぞれの位置に配置されている。足首には、タック編みした足首部13が配置されている。
この実施例2のくつ下1は、装着状態で、足首の角度が120°付近でフィットした状態になるように設定されている。これによって、ロードレース用自転車専用の靴に適したくつ下であって、ペダルに対して適切な足首角度120°付近を維持するのに適した構成となっている。自転車用靴は、靴内底の形状であって、図14に表示される、靴底外面にはクリートが設置されている。拇趾球部81を中心としてクリートを介して、図1や図2Cに示す適切な姿勢を保ちながら、ペダルに回転トルクを円滑に伝達することができるくつ下を実現することができた。
【符号の説明】
【0028】
1 くつ下
2 口部
3 つま先部
4 踵部
5 脚部
52、53 通気性部
54 アキレス腱部
6 難伸部
7 甲側
71 すべり止め部
72、73 通気性部
8 趾球部
81 拇趾球部
82 小趾球部
9 足裏部
92、93、94 通気性部分
95 詰め編部
13 足首部
20 脚
101 自転車用靴底内面平面
102 自転車用靴底断面
103 中敷
104 中板
105 底板
106 クリート
200 足形
A くつ下
B 反転編部
C シリンダー針の割図
【技術分野】
【0001】
本発明は、くつ下に関する。特に、自転車用くつ下に適したくつ下に関する。
【背景技術】
【0002】
くつ下は、靴と素足の間の緩衝材としての役目のほか、足を暖かく保つ保温作用、汗を吸収して乾燥させ、通気性を確保することのほか、靴の外に出る皮膚の保護、靴と下半身の衣服との間を埋める衣服としての役割がある。靴下の長さは様々であり、踝(くるぶし)のすぐ上を覆うものから膝上を覆うものまで様々な長さがある。
また、用途や機能に適したくつ下の開発も行われている。
サッカーなどのスポーツ時に着用されるくつ下類(ストッキング)は、激しい運動に対応する必要がある。このため、ずれないようにきつめに作成されていることが多い。また、左右の足の形に沿ったくつ下の提案もされている。
例えば、特許文献1(特開2007−107178号公報)には、スポーツサイクルに適したくつ下として空気通路が形成されたくつ下が提案されている。特許文献2(特開2007−332470号公報)には、サポーター機能を付与したくつ下が開示されている。本出願人は、左右の足形の形状であって、親指側に余裕を持たせたくつ下(特許文献3、特許第3780354号公報)や、左右の足形に沿ったくつ下であって、土踏まず部の収縮力を高め、拇趾球部に高摩擦性を付与したくつ下(特許文献4、特開2007−197881号公報)を開発し、提案している。
一方、本出願人は、ロードレースなどの自転車競技用に適した、ペダルに効率よく脚力を伝えるために特殊な構造をした専用の靴(特許文献5、特許3319691号公報、特許文献6、特許2992620号公報)を開発し提案している。
自転車用靴は、足の踏み力が素速くペダルに伝達されその伝達効率が高いことが望まれており、特許文献5に提案した靴は、繊維強化樹脂製であって、足裏の土踏まずより前方で且つ親指の後方に位置する足裏の第1凸状面に対応するように形成された凹面を有する第1凹状形成部と、前記土踏まずより前方で且つ小指の後方に位置する足裏の第2凸状面に対応するように形成された凹面を有する第2凹状形成部とからなる構造の自転車用靴底であって、踏み込み時に土踏まずが靴底芯体にしっかり固定される。このとき同時に、親指、小指の関節位置の足の硬い部分が靴底芯体に固定され、繊維強化材料で形成され一体即ち単体の板状体として均一に薄く形成されている靴底芯体は軽く、ほとんど固体であり、即ち、変形性がほとんどないから、足の踏み込み力が減殺されないで靴底芯体に伝達されそのままペダルに伝達される靴である。また自転車用靴の靴底には、特許文献6に開示されるように、自転車のペダルと靴を結合するための結合媒体であるクリートが取り付けられて、ペダルと靴がずれて伝達力にロスが生じないように工夫されている。
このように、自転車では、足の踏み力が素速くペダルに伝達されその伝達効率が高くなるように、靴と足、靴とペダルの密着性を高め、ズレを防止する工夫が成されている。しかし、靴と足の間に介在するくつ下については、湿気を排気するに着目した特許文献1が提案されているが、脚力の伝達ロスを防止するために適したくつ下の開発はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107178号公報
【特許文献2】特開2007−332470号公報
【特許文献3】特許第3780354号公報
【特許文献4】特開2007―197881号公報
【特許文献5】特許第3319691号公報
【特許文献4】特許第2992620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ロードレース等の競技用の自転車用に適したくつ下を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、
該反転編み部の周囲に難伸部を配置したことを特徴とするくつ下。
2.反転編み部は、踵骨隆起突起を収納する形状であって、
該反転編み部の周囲に配置された難伸部は、踝より踵側に配置されていることを特徴とする1.記載のくつ下。
3.難伸部は、アキレス腱部分には設けられていないことを特徴とする1.又は2.記載のくつ下。
4.足首前部及び/又は足底部分に長手方向に詰め編み部を設けたことを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載のくつ下。
5.踵部分の反転編み量と足首部に形成された詰め編み部によって、足部と脚部の屈曲角度が鈍角に形成したことを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載のくつ下。
6.拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成したことを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載のくつ下。
7.ポリエステル繊維素材を主とするくつ下であって、足裏内面側に木綿繊維が配置されていることを特徴とする1.〜6.のいずれかに記載のくつ下。
8.甲部に滑り止め部を設けたことを特徴とする1.〜7.のいずれかに記載のくつ下。
9.左右の足の形状に沿った形状のくつ下であることを特徴とする1.〜8.のいずれかに記載のくつ下。
10.自転車用くつ下であること特徴とする1.〜9.のいずれかに記載のくつ下。
11.くつ下が自転車用であって、足部と脚部の屈曲角度が100〜140°であることを特徴とする5.〜9.のいずれかに記載のくつ下。
12.自転車がロードレース用自転車であることを特徴とする10.又は11.記載のくつ下。
13.自転車用くつ下であって、足の拇趾球部と小趾球部が当接する部分を凹部に形成された内面を有するロードレース用自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、
爪先部は左右の足形の形状であって、
拇趾球部と小趾球部の外面には、滑り止めが形成され、
くつ下踵部は、基本筒部に対して180°未満の部分に反転編みによって形成し、該反転編み部分の周囲に難伸部を形成し、
足首側は、長さ方向に詰め編みを施すことによって収縮部を形成することにより、
踵部は長さ方向に伸び、足首側は長さ方向に縮み、この伸びと縮みの調整によって、足部と脚部の屈曲角度を鈍角に形成し、
くつ下は靴の内面形状に沿い、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される自転車用くつ下。
14.くつ下は、ポリエステル繊維を主材とするものであって、足裏に接触するくつ下内面に木綿繊維を配置したことを特徴とする13.記載のくつ下。
【発明の効果】
【0006】
1.本発明のくつ下は、踵部分を収納するように形成された反転編み部は、足の踵の先端側を収納し、その反転部の周囲に難伸部が配置されていることにより、装着したくつ下が踵部分で固定される機能に優れている。装着されたくつ下が踵部分で固定性が高められる。通常のくつ下の踵部分は、反転編みを丁度総針数の半分(反転編み部分を筒編み部の180°)になるように編機に標準設定されており、これが一般にバランスのとれたくつ下の形とされている。しかし機能が求められるスポーツ用くつ下では、踵部分の反転編みを大きくすることにより、足首部の屈曲を直角に近くすることにより、通常直角付近での人間の足首の動きに追従させようとしている。踵部の収納領域を広く取るためには、反転編み部分を筒編みの180°以上にするのが通常の手法である。しかし、大きな反転編みにより足首の屈曲の角度を直角に近づけることができるが、同時に、大きすぎる反転編みによる踵収納部が足の動きにおいて大切なくつ下の踵部での固定性を低下させ、踵部にズレを生じさせることとなる。
2.反転編み部の大きさは、本来踵骨が後ろに張り出した踵骨隆起突起を収納する大きさであって、足首の屈曲の角度を、踵収納部を必要以上に大きくしてしまう反転編みを増すことではなく、踵部分の編み方の工夫により直角に近づけたり、必要によっては鈍角にとどめたり調整する方法を採用した。また、くるぶしよりも踵側に難伸部が配置されているので、足の踵部分への固定性を向上させたくつ下を提供することができる。特に、足の大きさにしっかりフィットする大きさのくつ下(小さめのくつ下)は、爪先と踵部分にしっかりと密着固定して、安定性が向上しズレを防止する機能が向上する。反転編みの縫合ラインであるゴアラインは、「V字状」、「Y字状」等になって表れ踵骨隆起突起をしっかりと覆う形状を形成することができる。
3.難伸部分を、アキレス腱を避けるように配置したので、アキレス腱の動きを阻害することがない。
4.足首部分の長手方向にタック編みなどにより、平編みの編み目複数分に相当する縦方向の編み目を1つに詰めて編み込むことによって、甲側の足首を鈍角に付勢し、足首の角度が伸びることを抑制する。また、足底部にも詰め編みを入れると、足首側と共同して足首の角度の規制作用を強めることができる。
5.小さな踵部と難伸部を踵側に工夫した配置することによって踵部の固定力が高まり、足裏側の伸びに対する抵抗が大きくなることとなり、爪先が上方に回動することが抑制され、ペダルに対する足首の角度が深くなることを抑制する。この抑制力と足首側の詰め編みとによって、ペダルに対する足首の角度を一定に保つことに役立つ。この角度θは120度を中心に、100〜140度程度に保つことが好ましい。さらに、難伸部を足底側の詰め編みに接続することにより、足裏側の伸びに対する抵抗を大きくすることができる。
6.拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成することにより、脚力を回転トルクに有効に伝達することができる。
7.くつ下の足裏内面に木綿(コットン)繊維の配合を多くすることにより、発汗による吸湿によって足の肌とくつ下内面の摩擦性をたかめ、足とくつ下のズレを防止することができる。一方、主材のポリエステルは、吸湿性が小さく、汗を放出でき、全体としてくつ下に乾燥感を与え、装着感を維持することに適している。
8.甲部外面に滑り止め機能を付すことにより、靴の締め付けを有効にして、靴とくつ下の安定性に寄与する。
9.左右の足の形と動きに沿った構造とすることにより、くつ下のフィット性を高めている。
10.本発明のくつ下は、踵部の固定性を高め、足首の角度を鈍角に保つことができ、ロードレースなどの自転車用に適したくつ下を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ロードレース用自転車に乗って走行している状態を示す図。
【図2】ペダルと足首の角度についての模式図。
【図3】脚の筋肉が発生する力とペダリング関係を示す図。
【図4】直立した足の状態図(a)と、直立状態の足の基本形に適したくつ下の基本形を示す図(b)。
【図5】図4(b)に示す基本的くつ下を展開した模式図。
【図6】深い踵部を構成する反転編みの例を示すくつ下の展開を示す模式図。
【図7】本発明の踵部の反転編み部の例を、200本針のシリンダーについて模式的に示す図。
【図8】足の骨格図。
【図9】実施例1のくつ下を示す図。
【図10】実施例2のくつ下の足裏側を示す図。
【図11】実施例2のくつ下の甲側を示す図。
【図12】実施例2のくつ下を装着した内側側面を示す図。
【図13】実施例2のくつ下を装着した外側側面を示す図。
【図14】自転車専用靴の靴底内面を示す模式図。
【図15】自転車専用靴の靴底の分解斜視図。
【図16】タック編みの状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るくつ下は、特に自転車用に適したくつ下を開発したものである。その研究開発の過程で得られた知見をくつ下一般に適用する新たな発明として提案するものである。
すなわち、ロードレースなどの競技用自転車に求められる要求を詳しく解析し、その要求に応えうるくつ下を実現した。
ロードレースなどの競技用の自転車では、(1)足の拇趾球部と小趾球部が主に自転車のペダルに力を伝達する足の部位であること、(2)スムーズに脚力をペダルに伝達するには足首の角度θが鈍角に保たれていることが、脚力をロス無くスムーズにペダルの回転力に伝え、疲労を押さえるためには重要な要素である。
さらに、自転車の走行について詳しく説明する。図1にロードレース用自転車に乗って走行している状態を例示する。このような一定の姿勢を保ちながら、120回/分ほどの回転数によって、平地では時速50km程度のスピードで走行する。このような高速回転運動を続け、常に円滑な一定の走行トルクを発揮することが重要である。足と靴の密着性が重要であることは、背景技術及び特許文献5、6等に記載されているので省略する。
他方、足首の角度θが上下すると走行トルクにムラが生じて、脚力の伝達ロスになる。図2に足首の角度について模式的に説明する。A図では、足の角度が自然でなく、トルクのムラが生ずる。B図では、回転軸に対し足の角度は一定であるが、膝の位置に対して足首が動きすぎて、トルクにムラが生ずる。C図では、膝から足首に対して一定の鈍角を保ち続け、安定して効率よくトルクを伝えることができる。この鈍角θは、120°を中心として、100〜140°程度が好ましい範囲である。
脚の筋肉が発生する力とペダリング関係を図3に示す。ペダリング時の出力の殆どを占めているのは蹴り出し〜踏み込みであり、その際に足首の角度が鋭角〜鈍角に振れることは、トルクの伝達ロスを発生する。足首の角度を望ましい角度に維持することは、筋肉が発揮する力をより安定してトルク伝達するには重要なことが判明する。
【0009】
一方、背景技術に述べたように、左右の足形の形状及び、拇趾球部、小趾球部に高摩擦部を配置したくつ下は提案されている。くつ下は運動性を損なわないために、足首の自由度を妨げないようにすること、直立した状態を基本(図4(a))の足形200とするために直角に屈曲するように踵部を大きく形成することが、一般的なくつ下の設計思想である。踵部を大きく形成することは、歩行や運動による、踵部のズリ落ちやずり上がりが生じ難くなることもあって、踵部の反転編みは基本円筒編みの180°より大きくする傾向がある。反転編みの中心が踝直下になるようなくつ下も見られる。図4(b)を参照すると反転編み部分が大きく挿入されて踵部分204を大きく包み込むように形成されている。このように踵部分を大きく挿入すると、脚部と足部は直角に近く角度が付き、一般的には、ずれたり、脱げにくいくつ下となる。しかし、踵骨隆起突起部を包み込むには大きすぎる収容部は、踵でのくつ下のフィット感が得られず、より専門的な競技用くつ下には適さない。 図4(b)に示すくつ下201は、一般的であって、足を挿入する口部202が設けられ、脚部205と足部が筒編みされており、踵部分204の反転編みが大きく挿入されている。脚部205と足裏部209の間に反転編みにより形成された踵部分204が挿入されて足形に沿って曲げられる。一方、脚部205と甲部分217は、内折りに曲げられて、足首部分213にたるみが発生する。爪先部分203は反転編みによって袋状に形成される。この結果、脚部と足部は直角に近く角度が付き、一般的には、ずれたり、脱げにくいくつ下となる。その展開図を図5に示す。図5(a)に示す展開図は、口部202から丸編機などによって筒編みして脚部205を形成し、踵部分204は、反転編みして台形を形成し、台形の上辺部で折り返して足裏側の台形を相似形に編み立て、足部の筒編みを行う。この図示の例では、180°分反転編みされた例である。足部は足裏部209と甲部分217が連続して筒状に形成され、爪先部203は、反転編みして台形を形成し、台形の上辺部で折り返して甲側217の開口に縫合して袋状の爪先部203が形成される。 図5(b)に示す展開図は、180°以上の部分に反転編みを形成する例を示している。この図5は、筒編みと反転編みによって連続して編成されるので、このような展開図を組み立ててくつ下を製造するわけではないが、分かり易く説明する参考図である。筒状の脚部と足の胴部との間に台形状の反転編み部を対称に介在させて踵部を形成する。爪先部は足の胴部の先端に台形状反転編みを対称に形成して折り返して形成される。
爪先を足形に合わせて形成することは、特許文献3、4に開示されているように、特殊な形成方法を適用することとなる。
踵部の膨らみを深くするためには、図6に示すように台形状の間に小さな台形部分を挿入するなどの手法を適用することもできる。脚部205と足裏部209の間に反転編みして形成された複数の台形204a1、204b1、204b2、204a2が形成されている。この図6では、180°以上の範囲に反転編みが形成された状態を示しており、大きく深い踵が形成される。
【0010】
くつ下は、針を円形に配置したシリンダー型の丸編機によって編み込まれる。針数は、84本、96本、120本、132本、144本、168本、176本、200本、220本などのシリンダーが使用されることが多い。
図7に本発明の踵部の反転編み部の例を、200本針のシリンダー針の割図Cについて示す。
足裏側中心から一方向の針順を付与した場合、本発明は左右50本未満の合計100本未満について、反転編みを施す範囲とする。例えば、図示では、左右に30本分の合計60本分について、丸編みを中止して、反転編みを施して、扇形の形状に設けた反転編み部Bが形成される例が示されている。好ましくは、左右40本以内が好ましい。角度的には、左右70度程度以下である。30本分では、左右55度に相当する。
一方、図5(a)の例では、半分の100本分について反転編みを施すこととなる。
【0011】
<足裏部の固定構成について>
本発明は、拇趾球部と小趾球部の特定領域でペダルに対して密着してズレの無いくつ下を提供するために、足裏側の長さ方向の動きを規制する構成を実現することを第1の課題として検討した。
爪先側は、折り返して袋の先に足指が係止されるので固定点とすることができる。一般的なくつ下の踵側は、実際の人間の踵の形には関係なく大きさを意識して台形を重ねた形状をしているので、固定点としては不十分である。足の骨格構造(図8)を良く観察すると、踵骨は後ろ側に伸びており、その先端は踵骨隆起突起として張り出している。この踵骨隆起突起に係止する構造をくつ下の踵部分に形成できれば、踵側の固定点とすることができると想定して、具体的なくつ下の構造開発に取り組んだ。
【0012】
その結果、(1)小さな幅の反転編み部を形成して踵骨隆起突起の収納部とすることとし、(2)さらに、反転編みの周囲に難伸部を形成することによって、強い力が踵に作用した場合でも、踵骨隆起突起の根元に巻き付くように難伸部が配置されているので、外れてしまうことなく安定させることができることを知見した。
反転編み部の幅を小さくすることは、基本筒編み部の半分(180°未満)より小さくすることにより実現できる。反転編み部による踵骨隆起突起の収納部の形状と容積は、台形状の段数を増やすことにより形成することができる。難伸部は、アキレス腱を避けるように配置することが好ましく、アキレス腱を不要に締め付けることを防止する。踵骨隆起突起の収納部は、袋状の深さを備えて、収納できる形と容積を確保することができる。この深さは、図5(a)に示す、2つの台形を向かい合わせに配置する構成では浅すぎて十分でないことが多い。この形状では、ゴアラインが1本形成される。
図6に示すように台形の数を重ねて増やすことによって深さを確保することができる。台形の斜辺の合わせラインとして表れるゴアラインが「V字状」、「Y字状」「W字状」となって表れる。丁度、深いマチを形成する様な状態となる。
難伸部は、伸びの小さな繊維や強弾性繊維等の素材を用いることや編み手法によって伸びにくく、安定して踵に密着させることができる。編み手法として例えば、タック編みを適用することができる。
この踵部の工夫により、爪先部と踵部を固定点として、くつ下の足裏側の長さ方向及び周方向のズレ防止を図ることができる構成を実現した。
このような、足裏部の動きを規制することは、スポーツ用ソックスにおいて基本であり、特にスケートやスキーなど足下の安定性が求められるスポーツ用のくつ下に適用できる。
【0013】
<足首の角度維持の構成について>
甲側足首側は、鈍角に筒体を折り曲げた状態を維持するためには、曲げによるたるみを吸収し、足首が伸びた場合に抵抗となる構造を実現することを具体的な開発課題とした。
甲側足首部に、横方向のコース糸を、複数本をまとめて一緒に編み目を作るタック編みを設けることにより、長手方向の編み目の数を減らして長手方向を詰める編み方を施し、足首部の曲げによるたるみを吸収し、編み目の数が減らされていることによって伸びを規制する機能を発揮させることとした。すなわち、甲側足首部にタック編みを施したものである。また、足裏側の足底部分にタックなどにより詰め編みを施すことにより、足底部分を引っ張る機能を発揮し、足首を伸ばす方向に付勢することができる。この足底部分のタック編みと甲側のタック編みとを共動させることにより足首の角度を一定に保つ機能を向上させることができる。さらに、足底側のタック編みと難伸部を接続することにより、足裏側の伸びに対する抵抗を大きくすることができる。
なお、タック編みとは生地を編成する際に、ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作るもので、編針から編み目を脱出させないので、編針のフック又は針幹の前の編み目とともに保持し、例えば次の給糸により編み目を形成する時に同時に2つの編み目をくぐって編み糸を引き出して新しい編み目を作った組織である。タックする回数(タック数)は5〜6回続けることもできる。編み目に引張力が作用したときに、編み目の形が変化することによって伸びることができるが、タック編みによって編み目の数が減らされているので、編み目の空間が縮小されると共に、伸びることができる編み目の数が減るので伸びに対する抵抗を発揮することができる。タック編みについて参考図を図16に示す。
このタック編みを適当な範囲に形成することにより、曲げ角度を設定することができ、鈍角に付勢することができる。この角度は、120度を中心に、100〜140度程度に設計されることが好ましい。
さらに、足裏側が踵と爪先部で固定されているので、足首が鋭角側へ折れる方向に曲がることに対しても抵抗力を発揮する。
【0014】
<拇趾球部、小趾球部の構成について>
くつ下の拇趾球部、小趾球部には、力が集中する部分であるので、膨らんだ拇趾球部と小趾球部を収納できる膨らみを形成し、靴との間で滑らないようにくつ下の外表面に高摩擦性を付与する滑り止め機能を設けることが好ましい。
高摩擦性を付与する手段としては、コットンとナイロンの混紡糸のコットンの比率を高めることにより摩擦性を高くすることができる。例えば、コットン70%、ナイロン30%のブークレ糸がある。
なお、ブークレ糸は、セーターの意匠性を高めるために開発された経緯があって意匠撚糸とも呼ばれている。意匠撚糸は、小さなループなどを多数設けた撚糸で、ボリューム感やもこもこ感を出す装飾用の糸として一般的には用いられている。本発明者は、この意匠撚糸を、小さなループなど表面の凹凸によって摩擦を増加させることに使用したものである。本発明者は、意匠撚糸を編み込むことによって、滑り抵抗を大きくしたくつ下を開発した。意匠撚糸の編み込みの使い分けによって、くつ下の内外面で摩擦抵抗を変更したくつ下を提供することができる。これによって、肌とくつ下の界面で滑りを起こさせるか、靴とくつ下の界面で滑りを起こさせるかコントロールできるくつ下を提供することができる。意匠撚糸を加える場合の編み方や、意匠撚糸を加える場合の角度を調整することによって、意匠撚糸が顕れる面をコントロールすることができる。これによって、滑り止め面をくつ下の表裏どちらに設けるか決定することができる。なお、反対面にもいくらか意匠撚糸が現れるので、意匠撚糸を使用しない部分よりは摩擦が高くなっている。使用する意匠撚糸としては、ブークレ糸が好ましい。
【0015】
<甲側表面の構成について>
足首からつま先に至る甲側は、一般的な編み方を適用することができる。スポーツ用としては、足の胴部がしっかりとフィットするように編み構成とすることが好ましい。甲から側面にかけて、高通気性部分を設けて、靴で覆われる足底側からの排気性を高め、履き心地を改善することもできる。
また、靴と足をしっかり固定するために、甲側は紐やバンドによって締め付けが行われることが多い。くつ下の甲側表面にすべりを押さえる構成を形成することにより、安定性を向上させることができる。このすべりを押さえる手段として、ブークレ糸などを用いることができる。
【0016】
<つま先>
つま先の形成は、あし先の形状に合わせた、左右の非対称に形成することが好ましい。足形にしっかり密着することが大事なスポーツ用くつ下は、足形に沿った形状に編み立てることが望ましい。編み立て方法は、本出願人が提案した特許第3780354号公報に開示した方法を採用することができる。例えば、くつ下編機により、足裏側部分と甲側部分とを一体に筒編するとともに、該筒編部に連続してつま先を収容するつま先収容部を編成して、くつ下を製編する方法において、つま先収容部を編成する際、該つま先収容部の表側部と裏側部の双方を、それぞれ編み幅を変化させつつ反転編して、くつ下先端側ほど編み幅の狭い平面略台形状をなすように編成するとともに、該表側部の反転編と裏側部の反転編との間で、該表側部と裏側部の外形に沿う編立て部を正転編して、前記表側部と裏側部の間に正転編の編立て部を介設させるように製編して形成することができる。
さらに、つま先先端を親指側に寄せるには、くつ下編機の正転により、前記つま先収容部の外形部に沿う前記正転編の編立て部を編み立てる途中において、くつ下編機におけるつま先収容部を編成する編針領域で、親指側に寄せた先端である小形つま先部となる裏側と表側を、それぞれ編み幅を変化させつつ反転編して、くつ下先端側ほど編み幅の狭い平面略台形状をなすように編成することによりくつ下を製造することができる。
【0017】
<湿気排気対策と足のすべり防止について>
足からの発汗による濡れを回避するために、素材としては吸水性、速乾性の大きいポリエステル繊維が主材として用いられる。一方、ポリエステルは、足とのすべりが生じやすく、靴を締め付けても安定性に欠けることがあった。コットンは、湿度が高くなるとすべりを押さえることができるが、速乾性が低い。
ポリエステルを主材とし、肌に接触する面にコットンの比率を高めることにより、発汗による吸湿によって摩擦性を高めることができる。コットンの比率を高める部分は、くつ下の内面側の拇趾球部、小趾球部、甲側頂部などを中心とする。
土踏まず部分や内側面、甲側爪先部は、通気性を高めて、汗を放出することが好ましい。
【0018】
<全体構成について>
素材は、ポリエステル繊維を中心に、滑り止め機能を発揮する部分については、その表面部にコットン繊維の混入比率を高める。
自転車用くつ下は、人間の足の形や動きに合わせて設計し、余分な部分のないように足に良くフィットするように設計される。脚部が短く、くるぶしの上部に挿入口がある程度で十分である。
意匠撚糸を編み込み糸に用いて、表面に現れたループによって、摩擦抵抗を増加させるように設計した素材を滑り止め部分に適用する。ループを出す程度をくつ下の内面あるいは外面に調整し、摩擦面を設定できる。意匠撚糸は、多様な種類があるが、本発明ではブークレ糸が好ましい。意匠撚糸は、太さ、色、撚り数、繊維の種類などの異なる糸を2本以上使用し、これらの糸の給糸速度や、撚数などを変化させることにより特異な外観と風合いを有する糸である。意匠撚糸は、芯糸、芯糸の上に巻いて飾りを作るからみ糸、飾りの崩れを押さえる押さえ糸から構成される。意匠撚糸には、製造段階で糸の供給を連続的に行うループ系統、間欠的に行うノット系統に分けられる。ループ系統には、リングヤーン、ループヤーン、ブークレヤーン、スナールヤーン、ポーラヤーンなどがある。ブークレヤーンは、からめ糸をリングヤーンよりも多く供給して下撚りし、芯糸の周りにワナを形成する。その後押し糸を用いて逆方向に上撚りした糸である。ワナを小さく細く締まった糸を作ることもできる。
【0019】
<応用性ついて>
本発明のくつ下は、ロードレースなどの自転車用くつ下に適した構造である。足と靴の関係が一定していて、ズレによって力の伝達ロスや姿勢の崩れが大きな影響を及ぼす運動用のくつ下に適している。例えば、スケートやスキー用に適している。特に、スピードスケート、スキージャンプなど一定の姿勢を保ちながら、脚力を集中して発揮するスポーツに特に適している。
【実施例1】
【0020】
図9に実施例1のくつ下を示す。
この実施例のくつ下は、200本の針数を有するシリンダー胴を有するくつ下編機を利用して筒状に編み込むことを基本としている。踵部4は、図7に示すように反転編みを足裏側中心から左右に30本の針数分について、反転編みを施して形成する。この反転編みによる膨らみは、踵骨隆起突起の収納部として機能する。この反転編み部の周囲に難伸部6を形成する。難伸部6は、踵骨隆起突起の基部をしっかりとホールドして、反転編み部が踵骨隆起突起に対する固定安定性を助長する。この実施例では、難伸部の形成にタック編みを採用した。図9(d)にタック編みの構成状態を示す。タック編みを、2コース分を1目とし、二回繰り返す構成とした。なお、難伸部6は、アキレス腱部分を回避するように口部側に延長することが好ましい。
足部は筒状に編み込んで、足裏部9のつま先側に拇趾球部と小趾球部を含む趾球部8を形成する。趾球部8は、ブークレ糸等を用いて滑り止め作用を高めた構成とする。拇趾球部、小趾球部は、足の膨らみに応じて膨らみを形成することが好ましい。足裏側から連続して100本分針数を反転編み部にして、足裏側爪先の台形を形成し、折り返して相似形の台形を反転編みして甲側の爪先を形成して、全体として、つま先部3を形成する。
【0021】
甲側は、脚部5から足部の甲側7にかけて、連続して編み立てられる。足首部13は、タック編みを適用する。タック編みによって、周囲の平編み部分よりも編み目の目数を減らして、長さ方向を短く詰め、足首の屈曲角度に合わせる様にする。
図9(b)(c)に足首部13の拡大詳細を示す。
図9(b)は、タック部とメッシュ部を交互に組み合わせてタック部を形成した状態を示している。タック部とメッシュ部を混在させることにより、足首部分の詰め量を調整し、甲側への無理な引っ張りを解消することができる。メッシュ部とタック部の詳細な状態を図9(c)図に示す。メッシュ部は2コース分に設け、タック部は6コース分を使って、3コース分をタックして交互に配置している。これによって、タック部分は目が詰まって、周囲よりも詰めて収縮した状態を作ることができる。この例では、メッシュ部とタック部を繰り返して配置することにより、タックの連続による引きつれのような引っ張りを解消できる。このメッシュとタックの交互配置をバランスさせることにより、120°を中心とする足首の角度保持に有効に機能する。
さらに、タック編みを土踏まず部分に設けると、土踏まずを押し上げてアーチを維持及び足裏側を縮めて、足首の角度を伸ばす方向に付勢することができる。甲側のタック編みと土踏まずのタック編みを共動させることにより、足首の屈曲角度を一定に維持することに役立たせることができる。
更に、甲側7には、滑り止め性を高めた構成を付与する。
この構成によって、踵部は踵骨隆起突起にしっかり固定されつま先との間で、足裏側の安定性が向上し、趾球部付近を中心とする踏ん張り力をロスすることなく伝えることができる。足首側では、屈曲角度を一定にすることができ、ペダルなど角度を固定した状態で力を伝える運動に適する構成を実現する。更に、甲側に設けられた滑り止め機能は、靴の上面との固着性を高め、足の周方向の安定性を高める機能を果たす。趾球部と甲側の両方の滑り止め機能によって、周方向の安定性が一層向上する。
【0022】
素材は、ポリエステル製繊維を主材とし、拇趾球部や甲側では、コットンを混紡したブークレ糸を使用する。また、くつ下内面側にコットンを混紡することにより、発汗の汗の吸湿によって、足とくつ下の滑りを低下させることができる。
【実施例2】
【0023】
図10〜13に実施例2のくつ下を示す。
実施例2に示すくつ下1は、左右の足形に沿った構造を備えたくつ下の左足用である。つま先部3の形成は、特許文献3(特許第3780354号公報)に開示した製法を採用することができる。
図10は足裏側を示し、図11は甲側を示している。図12、図13は足に装着した状態を表している。
【0024】
足裏側を示す図10には、踵部4と踵部の周囲に配置された難伸部6が設けられている。足指の基部の拇趾球部81、小趾球部82は、やや膨らませて、外表面側に滑り止めを施して形成した。発汗した汗を放出するために、高通気性部分を脚部、土踏まず部、拇趾球部と小趾球部の周囲に設けている。それぞれの通気性部分は、52、53、92、93、94の符号で示されている。高通気性部分は、鹿の子編みなどによってメッシュの目を粗くする編み方を適用することができる。符号2は、足を挿入する口部を示し、口部側から筒編みが進められる。
図示されるように踵部分4は、筒編み直径(針数100本)に対して、約半分の幅に表示されている。針数は実施例1と同様に60本設定してある。また、難伸部6は、図9(d)に示すタック編みを採用している。踵部と難伸部の針数は、一般に機械的に標準設定されている半分(本例では100本)よりも少なく設定されている。踵部4の深さは、図6に示される、台形の数を調整する手法を用いて設計することができる。
【0025】
甲側を示す図11は、タック編みによって構成された足首部13が示されている。なお、甲側滑り止め部は、靴の締め付け安定などを考慮して適宜必要に応じて設計される。詰め編部95を土踏まず部分にも設けることができる。図11では、難伸部6に接して足指側に延長しているので、つま先側を踵側に引き寄せるように作用し、足首を伸ばす方向に付勢することができる。足裏側の詰め編みと足首のタック編みを共動させることにより、足首の屈曲角度を特定角度に維持、安定させることに役立たせることができる。足首部13を構成するタック編みは、図9(b)(c)に示すタックとメッシュの組み合わせを採用することができる。
甲側滑り止めは必須ではないが、図8(b)に示される中間楔状骨や外側楔状骨に対応する部分を含むように配することもできる。足裏側に設けた高通気性部分に連続した高通気性部分が側面及びつま先の根元に設けられている。高通気性部分は、符号52、53、72、73、74で示されている。更に、小趾球部82は、側面に沿って足裏側から甲側に配置されている。
【0026】
つま先3は、左右の足形に沿った形である。繊維素材は、実施例1と同様に、ポリエステルを主材として、ブークレ糸はコットンを適宜用いることができる。
【0027】
くつ下1の装着状態を側面視図として図12、13に示す。なお、高通気性部分の表示は省略してある。
反転編みした踵部4は、足の踵の先端側をカバーしている状態が示されている。その踵部4の周囲に難伸部6が配置されている。本実施例では、図示されるように踵部のゴアラインが「Y字状」に形成されている。難伸部6は、土踏まずよりも踵側から、くるぶし直下よりも踵側であって、アキレス腱部54を避けて口部2のふくらはぎ側に延出されている状態が示されている。拇趾球部81、小趾球部82がそれぞれの位置に配置されている。足首には、タック編みした足首部13が配置されている。
この実施例2のくつ下1は、装着状態で、足首の角度が120°付近でフィットした状態になるように設定されている。これによって、ロードレース用自転車専用の靴に適したくつ下であって、ペダルに対して適切な足首角度120°付近を維持するのに適した構成となっている。自転車用靴は、靴内底の形状であって、図14に表示される、靴底外面にはクリートが設置されている。拇趾球部81を中心としてクリートを介して、図1や図2Cに示す適切な姿勢を保ちながら、ペダルに回転トルクを円滑に伝達することができるくつ下を実現することができた。
【符号の説明】
【0028】
1 くつ下
2 口部
3 つま先部
4 踵部
5 脚部
52、53 通気性部
54 アキレス腱部
6 難伸部
7 甲側
71 すべり止め部
72、73 通気性部
8 趾球部
81 拇趾球部
82 小趾球部
9 足裏部
92、93、94 通気性部分
95 詰め編部
13 足首部
20 脚
101 自転車用靴底内面平面
102 自転車用靴底断面
103 中敷
104 中板
105 底板
106 クリート
200 足形
A くつ下
B 反転編部
C シリンダー針の割図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、
該反転編み部の周囲に難伸部を配置したことを特徴とするくつ下。
【請求項2】
反転編み部は、踵骨隆起突起を収納する形状であって、
該反転編み部の周囲に配置された難伸部は、踝より踵側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のくつ下。
【請求項3】
難伸部は、アキレス腱部分には設けられていないことを特徴とする請求項1又は2記載のくつ下。
【請求項4】
足首前部及び/又は足底部分に長手方向に詰め編み部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のくつ下。
【請求項5】
踵部分の反転編み量と足首部に形成された詰め編み部によって、足部と脚部の屈曲角度が鈍角に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のくつ下。
【請求項6】
拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のくつ下。
【請求項7】
ポリエステル繊維素材を主とするくつ下であって、足裏内面側に木綿繊維が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のくつ下。
【請求項8】
甲部に滑り止め部を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のくつ下。
【請求項9】
左右の足の形状に沿った形状のくつ下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のくつ下。
【請求項10】
自転車用くつ下であること特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のくつ下。
【請求項11】
くつ下が自転車用であって、足部と脚部の屈曲角度が100〜140°であることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のくつ下。
【請求項12】
自転車がロードレース用自転車であることを特徴とする請求項10又は11記載のくつ下。
【請求項13】
自転車用くつ下であって、足の拇趾球部と小趾球部が当接する部分を凹部に形成された内面を有するロードレース用自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、
爪先部は左右の足形の形状であって、
拇趾球部と小趾球部の外面には、滑り止めが形成され、
くつ下踵部は、基本筒部に対して180°未満の部分に反転編みによって形成し、該反転編み部分の周囲に難伸部を形成し、
足首側は、長さ方向に詰め編みを施すことによって収縮部を形成することにより、
踵部は長さ方向に伸び、足首側は長さ方向に縮み、この伸びと縮みの調整によって、足部と脚部の屈曲角度を鈍角に形成し、
くつ下は靴の内面形状に沿い、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される自転車用くつ下。
【請求項14】
くつ下は、ポリエステル繊維を主材とするものであって、足裏に接触するくつ下内面に木綿繊維を配置したことを特徴とする請求項13記載のくつ下。
【請求項1】
筒状に丸編み形成された基本円筒形に踵形成部分に反転編み部を設け、前記反転編み部を基本円筒形の180°未満の範囲に形成し、
該反転編み部の周囲に難伸部を配置したことを特徴とするくつ下。
【請求項2】
反転編み部は、踵骨隆起突起を収納する形状であって、
該反転編み部の周囲に配置された難伸部は、踝より踵側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のくつ下。
【請求項3】
難伸部は、アキレス腱部分には設けられていないことを特徴とする請求項1又は2記載のくつ下。
【請求項4】
足首前部及び/又は足底部分に長手方向に詰め編み部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のくつ下。
【請求項5】
踵部分の反転編み量と足首部に形成された詰め編み部によって、足部と脚部の屈曲角度が鈍角に形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のくつ下。
【請求項6】
拇趾球部、小趾球部の外面に滑り止め部を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のくつ下。
【請求項7】
ポリエステル繊維素材を主とするくつ下であって、足裏内面側に木綿繊維が配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のくつ下。
【請求項8】
甲部に滑り止め部を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のくつ下。
【請求項9】
左右の足の形状に沿った形状のくつ下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のくつ下。
【請求項10】
自転車用くつ下であること特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のくつ下。
【請求項11】
くつ下が自転車用であって、足部と脚部の屈曲角度が100〜140°であることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のくつ下。
【請求項12】
自転車がロードレース用自転車であることを特徴とする請求項10又は11記載のくつ下。
【請求項13】
自転車用くつ下であって、足の拇趾球部と小趾球部が当接する部分を凹部に形成された内面を有するロードレース用自転車用靴を着用する場合に足に装着するくつ下であって、
爪先部は左右の足形の形状であって、
拇趾球部と小趾球部の外面には、滑り止めが形成され、
くつ下踵部は、基本筒部に対して180°未満の部分に反転編みによって形成し、該反転編み部分の周囲に難伸部を形成し、
足首側は、長さ方向に詰め編みを施すことによって収縮部を形成することにより、
踵部は長さ方向に伸び、足首側は長さ方向に縮み、この伸びと縮みの調整によって、足部と脚部の屈曲角度を鈍角に形成し、
くつ下は靴の内面形状に沿い、ペダル踏み込み姿勢角度に適した足首角度に付勢される自転車用くつ下。
【請求項14】
くつ下は、ポリエステル繊維を主材とするものであって、足裏に接触するくつ下内面に木綿繊維を配置したことを特徴とする請求項13記載のくつ下。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図9】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図9】
【図16】
【公開番号】特開2011−149133(P2011−149133A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12596(P2010−12596)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【出願人】(390019806)コーマ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【出願人】(390019806)コーマ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]