説明

けらば化粧部材及びけらばの化粧施工方法

【課題】固着具が露出することなく取り付けを行なうことができ、取り付け作業が容易なけらば化粧部材を提供する。
【解決手段】けらば1への固着具2の打入で固定される下固定部3が上部に設けられ且つ下端部に下係止部4が設けられた下固定具5。けらば1への固着具2の打入で固定される固定部6が上端部に設けられ且つ下端部に下固定具5の下係止部4に引掛け係止される下係止固定部7が設けられた下化粧板8。けらば1への固着具2の打入で固定される上固定部9が設けられ且つ下端部に上係止部10が設けられた上固定具11。水切12の水切片13に引掛け係止される上側係止固定部14が上端部に設けられ且つ下部に上固定具11の上係止部10に引掛け係止される下側係止固定部15が設けられると共に、下化粧板8の固定部6の固着具2の打入箇所の外側に重ねられる覆い部16が設けられた上化粧板17。これらを備えたけらば化粧部材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根のけらばに取り付けて使用されるけらば化粧部材、及びこのけらば化粧部材を用いたけらばの化粧施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切妻屋根など屋根の妻側端部のけらばには、けらばを化粧するためにけらば化粧板を取り付けることが行なわれている。図8はその一例を示すものであって、けらば1は屋根の野地板22の妻側端部の下側に破風板23を取り付けることによって形成されるものであり、けらば化粧板24をけらば1の側面の下端から上端に亘って取り付けることよって、けらば化粧板24でけらば1を化粧するようにしてある(特許文献1参照)。尚、図8において12は野地板22の上面のけらば側端部の上に取り付けられる水切であり、この水切12の上面には断面倒L型の水切片13が設けてあって、野地板22の上に葺設した屋根材25の端部をこの水切片13内に差し込み、屋根材25の上を流れる雨水がけらば側端部から流れ落ちることを水切片13で防ぐようにしたものである。
【0003】
そしてこのものでは、けらば化粧板24の下端部に下固定片29を水平に延設すると共に上端部の背面側に上固定片30を設けるようにしてあり、破風板23を包むようにけらば化粧板24を配設して、下固定片29から軒部材31の下面に固着具2を打入すると共に上固定片30から水切12の水切片13に固着具2を打入することによって、けらば化粧板24を屋根のけらば1に取り付けるようにしてある。
【0004】
しかしこのものにあって、けらばをきれいに納めることはできるが、1枚のけらば化粧板24でけらばの側面を下端から上端に亘って覆うようにしているため、けらば1の縦幅寸法に適合したけらば化粧板24を用いる必要があって、けらば1の縦幅毎に異なる縦幅のけらば化粧板24を用意しなければならず、部材の種類が増加してコスト的に不利になるおそれがある。しかもケラバ化粧板24は上下幅が大きくなって重量が重くなるため、屋根という危険を伴なう高所においてけらば化粧板24を取り付ける作業が困難になるという問題があった。
【0005】
そこで図9に示すように、けらば化粧板24を下化粧板8と上化粧板17に上下2分割して形成することが行なわれている。そして下化粧板8の下端部に下係止屈曲片27を設けると共に上端部に下重合片51を設け、また上化粧板17の上端部に上係止屈曲片28を設けると共に下端部に上重合片52を設け、下化粧板8の下係止屈曲片27を破風板23の下端に引掛け係止し、また上化粧板17の上係止屈曲片28を水切12の水切り片13に引掛け係止し、さらに下化粧板8の下重合片51の外面に上化粧板17の上重合片52を重ねると共に、この重合箇所にビスや釘などの固着具2を破風板23に打入して固定することによって、けらば1の側面を下端から上端に亘って覆うように下化粧板8と上化粧板17を取り付けるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−089973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように図9に示すものでは、けらば化粧板24を下化粧板8と上化粧板17に上下2分割することによって軽量化することができ、取り付けの作業性が向上するものである。また下化粧板8と上化粧板17の重合片51,52の重ね合わせ寸法を調整することによって、上下幅寸法を調整することができ、けらば1の縦幅寸法が変わっても一種類の下化粧板8と上化粧板17で対処することができるものであり、部材の種類を低減することができるものである。
【0008】
しかしこの図9のものにあって、固着具2が重合片51,52の表面に露出し、けらば化粧板24の外観が固着具2で損なわれることになり、また固着具2を打入した箇所が雨水の浸入等で汚れ、これによってもけらば化粧板24の外観が損なわれるおそれがあるという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、固着具が露出することなく取り付けを行なうことができ、しかも取り付け作業が容易になると共に、けらばの縦幅寸法の変化に容易に対処することができるけらば化粧部材を提供することを目的とし、またこのけらば化粧部材を用いてけらばの化粧を行なうけらばの化粧施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るけらば化粧部材は、屋根の妻側端部のけらば1にその下端から上端に亘って取り付けられるけらば化粧部材であって、けらば1の下部の側面に配設され、けらば1の側面への固着具2の打入で固定される下固定部3が上部に設けられ且つけらば1の下面に配置される下端部に下係止部4が設けられた下固定具5と、下固定具5の外側においてけらば1の下部の側面に配設され、けらば1の側面への固着具2の打入で固定される固定部6が上端部に設けられ且つ下端部に下固定具5の下係止部4に引掛け係止される下係止固定部7が設けられた下化粧板8と、けらば1の上部の側面に配設され、けらば1への固着具2の打入で固定される上固定部9が設けられ且つ下端部に上係止部10が設けられた上固定具11と、上固定具11の外側においてけらば1の上部の側面に配設され、けらば1の上面に取付けられた水切12に設けられた水切片13に引掛け係止される上側係止固定部14が上端部に設けられ且つ下部に上固定具11の上係止部10に引掛け係止される下側係止固定部15が設けられると共に、下化粧板8の固定部6の固着具2の打入箇所の外側に重ねられる覆い部16が設けられた上化粧板17とを、備えて成ることを特徴とするものである。
【0011】
この発明によれば、けらば1の側面を下化粧板8と上化粧板17の上下2部材で化粧することができ、2分割して軽量に形成することができる下化粧板8や上化粧板17の取付作業が容易になるものであり、また下化粧板8や上化粧板17の取付位置の調整で、けらばの縦幅寸法の変化に対処することができるものである。しかも、下化粧板8は上部の固定部6に固着具を打入すると共に下端部の下係止固定部7を下固定具5の下係止部4に引掛け係止して取付けられるが、上固定具11の上係止部10や水切12の水切片13に下側係止固定部15や上側係止固定部14を引掛け係止して取り付けられる上化粧板17の下端部の覆い部16で、下化粧板8の固定部6に打入した固着具2を隠すことができ、固着具2が露出して外観を損なうことを防ぐことができるものである。
【0012】
また本発明において、上記の上固定具11は、けらば1の長手方向に沿った複数個所に取り付けられるものであることを特徴とするものである。
【0013】
この発明によれば、上固定具11は長尺ではなくピース物として形成されるものであり、上固定具11の上係止部10に上化粧板17の下側係止固定部15を引掛け係止する作業が容易になるものである。
【0014】
また本発明は、下化粧板8の固定部6に対する、上化粧板17の覆い部16の重ね合わせ位置を、上下に調整自在にして成ることを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、下化粧板8の固定部6に対する上化粧板17の覆い部16の重ね合わせ位置を調整することによって、けらば1の上下幅に合わせて下化粧板8や上化粧板17を取り付けることができるものであり、けらば1の上下幅寸法の変化に容易に対処することができるものである。
【0016】
また本発明に係るけらばの化粧施工方法は、下化粧板8、上化粧板17、下固定具5、上固定具11を備えて形成されるけらば化粧部材を用い、屋根の妻側端部のけらば1にその下端から上端に亘って下化粧板8と上化粧板17を取り付けることによって、けらば1の化粧施工をするにあたって、下固定具5をけらば1の下部の側面に配設すると共に、下固定具5の上部の下固定部3から固着具2をけらば1の側面に打入することによって、下固定具5をけらば1に固定し、次に下化粧板8の下端部に設けた下係止固定部7を上記の下固定具5の下端部に設けた下係止部4に引掛け係止すると共に、下化粧板8の上端部に設けた固定部6から固着具2をけらば1の側面に打入することによって、下固定具5の外側においてけらば1の下部の側面に下化粧板8を取り付け、次に上固定具11を下化粧板8の上端より上側においてけらば1の側面に配設すると共に、上固定具11の上固定部9から固着具2をけらば1に打入することによって、上固定具11をけらば1に固定し、次に、上化粧板17の下端部に設けた覆い部16を下化粧板8の固定部6の固着具2の打入箇所の外側に重ねた状態で、上化粧板17に設けた下側係止固定部15を上固定具11の上係止部10に引掛け係止すると共に、上化粧板17の上端部に設けた上側係止固定部14を、けらば1の上面に取り付けられた水切12に設けられた水切片13に引掛け係止することによって、上固定具11の外側においてけらば1の上部の側面に上化粧板17を取り付けることを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、けらば1の側面を下化粧板8と上化粧板17の上下2部材で化粧することができるので、2分割して軽量に形成することができる下化粧板8や上化粧板17の取付作業が容易になるものであり、また下化粧板8や上化粧板17の取付位置の調整で、けらばの縦幅寸法の変化に対処することができるものである。しかも、下化粧板8は上部の固定部6に固着具を打入すると共に下端部の下係止固定部7を下固定具5の下係止部4に引掛け係止して取付けられるが、上固定具11の上係止部10や水切12の水切片13に下側係止固定部15や上側係止固定部14を引掛け係止して取り付けられる上化粧板17の下端部の覆い部16で、下化粧板8の固定部6に打入した固着具2を隠すことができるので、固着具2が露出して外観を損なうことを防ぐことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、けらば1の側面を下化粧板8と上化粧板17の上下2部材で化粧することができるので、2分割して軽量に形成することができる下化粧板8や上化粧板17の取付作業が容易になるものであり、また下化粧板8や上化粧板17の取付位置の調整で、けらばの縦幅寸法の変化に対処することができるものである。しかも、下化粧板8は上部の固定部6に固着具を打入すると共に下端部の下係止固定部7を下固定具5の下係止部4に引掛け係止して取付けられるが、上固定具11の上係止部10や水切12の水切片13に下側係止固定部15や上側係止固定部14を引掛け係止して取り付けられる上化粧板17の下端部の覆い部16で、下化粧板8の固定部6に打入した固着具2を隠すことができるので、固着具2が露出して外観を損なうことを防ぐことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】同上の施工手順を示すものであり、(a)(b)は各工程の断面図である。
【図3】同上の施工手順を示すものであり、(a)(b)は各工程の断面図である。
【図4】同上に用いる水切の斜視図である。
【図5】同上のけらば化粧部材の一例を示すものであり、(a)は下固定具の斜視図、(b)は上固定具の斜視図、(c)は下化粧板の斜視図、(d)は上化粧板の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図7】同上のけらば化粧部材の一例を示すものであり、(a)は下固定具の斜視図、(b)は上固定具の斜視図、(c)は下化粧板の斜視図、(d)は上化粧板の斜視図である。
【図8】従来例の一例を示す断面図である。
【図9】従来例の他例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
切妻屋根などにおいて、屋根の妻側端部はけらば1として形成されている。図2(a)はこのけらば1の一例を示すものであり、野地板22の妻側端部の下面に破風板23を取り付けることによって、けらば1が形成されるものである。
【0022】
また野地板22の妻側端部の上には、けらば1に沿って水切12が取り付けてある。水切12は図4に示すように、固定片12aの一側端に水切片13を断面倒L字形に屈曲延出して、屋根の中央側へ開口する断面コ字形に形成されるものであり、固定片12aから釘やビスなどの固着具を野地板22に打入することによって固定してある。そして野地板22の上に葺設される屋根材25のうち、妻側端部に配置される屋根材25の端部をこの水切片13内に差し込むようにしてあり、屋根材25の上を流れる雨水が屋根の妻側端部から流れ落ちることを水切片13で防ぐことができるものである。
【0023】
このように形成される屋根のけらば1の側面を化粧するために用いられる本発明のけらば化粧部材は、下化粧板8、上化粧板17、下固定具5、上固定具11を備えて形成されるものである。
【0024】
図5(a)は下固定具5を示すものであり、断面倒L字形に折曲した本体部37の上端の屋外側端部に下固定部3を上方へ延出すると共に、本体部37の下端に屋根中央部側へ向けて水平に下係止部4を延設することによって、全体として断面略L字形に形成してある。この下固定具5は、金属板の折曲加工品や、樹脂の押出成形品などで、長尺物に形成されるものであり、上下幅は後述の下化粧板8の上下幅より小さい寸法に形成されるものである。
【0025】
図5(b)は上固定具11を示すものであり、断面L字形に折曲した本体部38の下端の屋外側端部に上係止部10を下方へ延設すると共に、本体部38の上端に受け片39を水平に折曲して設けることによって形成してある。この受け片39は、3片からなるものであり、両側の受け片39a,39aを屋外側へ折曲し、中央の受け片39bを屋根中央部側へ折曲してある。断面L型の本体部38は上固定部9となる横片38aと縦片38bから形成されるものであり、また上係止部10の背面(屋外側と反対側の面)の下部にはL型断面に形成されるスペーサ片40が突設してある。この上固定具11は、金属板の折曲加工品や、樹脂の射出成形品などで、上記の下固定具5や後述する下化粧板8や上化粧板17より短い短尺寸法のピース物に形成されるものである。また上下幅は後述の上化粧板17の上下幅より小さい寸法に形成されるものである。
【0026】
図5(c)は下化粧板8を示すものであり、化粧や補強のために凹凸屈曲模様を長手方向に設けて形成される本体部41の上端に固定部6を上方へ延設すると共に、本体部41の下端に屋根中央部側へ水平に屈曲した下横片42を延設して、全体として断面略L字形に形成してあり、下横片42の先端には上側へ折り返し屈曲して下係止固定部7が設けてある。この下化粧板8は、金属板の折曲加工品や、樹脂の押出成形品などで、長尺物に形成されるものである。
【0027】
図5(d)は上化粧板17を示すものであり、断面倒L字形の本体部43の横片43aの屋根中央部側の先端に上側係止固定部14を設けると共に、縦片43bの下端に下側係止固定部15を介して覆い部16を下方へ延出して設けることによって形成されるものであり、全体として断面略倒L字形に形成してある。上側係止固定部14は本体部43の横片43aの先端部を屋外側へ向け斜め下方に屈曲して形成されるものであり、上係止固定部14の先端に屋根中央部側へ向けて斜め下方にガイド片44が延設してある。また下側係止固定部15は、本体部43の縦片43bの下端と覆い部16の上端の境界部を屋根中央部側へ向けて斜め上方へ凸屈曲することによって形成してある。この上化粧板17は、金属板の折曲加工品や、樹脂の押出成形品などで、長尺物に形成されるものである。
【0028】
次に、上記のけらば化粧部材を用いて行なう屋根のけらば1の化粧施工について説明する。けらば1に沿って配置される水切12は、図2(a)に示すように、野地板22の端部よりやや内側寄りの位置に取り付けてある。そしてまず図2(b)のように、下固定具5をけらば1の下部においてけらば1の側面から下面にかけて配置し、下固定具5の下固定部3を破風板23の外面に当接させると共に下固定部3から破風板23に釘やビスなどの固着具2を打入して固定することによって、下固定具5をけらば1に取り付ける。このとき、けらば1を形成する破風板23の下端面に本体部37の上面を当接させることによって、位置決めした状態で下固定具5の取り付けを行なうものであり、このように位置決めして下固定具5を取り付けることによって、下固定具5の下端の下係止部4はけらば1の下面から下方へ離れた位置に配置されることになる。
【0029】
この後、下化粧板8を下固定具5の上に被せた状態でけらば1の側面から下面にかけて配置し、図3(a)のように、下化粧板8の下横片42の先端の下係止固定部7を下固定具5の下係止部4の先端に引掛け係止すると共に、下化粧板8の上端部の固定部6をけらば1の側面となる破風板23に重ねて、固定部6から固着具2を破風板23に打入して固定することによって、けらば1に下化粧板8を取り付ける。このとき、下係止部4は上記のようにけらば1の下面から下方へ離れて配置されているので、下係止部4への下係止固定部7の係止の作業が容易になるものである。
【0030】
次に、上固定具11をけらば1の上部においてけらば1の側面から上面にかけて配置し、図3(b)のように、本体部38の横片38aである上固定部9をけらば1の上面となる野地板22の端部に載置して、この上固定部9から野地板22に固着具2を打入して固定することによって、上固定具11をけらば1に取り付ける。上固定部9への固着具2の打入は、受け片39a,39a間の隙間の箇所において行なわれるものであり、受け片39a,39a間の隙間を通した工具で固着具2の打入を支障なく行なうことができるものである。このとき、上固定具11の下部の上係止部10の背面に突設したスペーサ片40がけらば1の側面となる破風板23に当接し、上係止部10の下端部と破風板23の間に隙間が形成されるようにしてある。また上固定具11の本体部38の縦片38bが水切12の水切片13の縦片13bと背中合わせに当接し、受け片39bが水切12の水切片13の横片13aの上面に重なるようになっている。上固定具11は短尺物であるので、けらば1の長手方向に沿って複数個所に所定間隔で取付けられるものである。
【0031】
この後、上化粧板17を上固定具11の上に被せた状態でけらば1の側面から上面にかけて配置し、図1のように、上化粧板17の上側係止固定部14を水切12の水切片13の横片13aの先端に引掛け係止すると共に、上化粧板17の下側係止固定部15を上固定具11の上係止部10の下端に引掛け係止することによって、上化粧板17をけらば1に取り付ける。このとき、上固定具11の上係止部10の下端部とけらば1の側面との間には上記のように隙間が形成されているので、上係止部10に対する下側係止固定部15の係止の作業が容易になるものである。また上側係止固定部14にはガイド片44が設けてあるので、このガイド片44の下面を水切12の水切片13の先端に滑らせることによって、水切片13への上側係止固定部14の係止の作業が容易になるものである。さらに上固定具11は短尺のピース物に形成され、けらば1に沿った複数個所に取付けられているので、上固定具11の上係止部10への上化粧板17の下側係止固定部15の係止は、けらば1に沿って一列に並ぶ上固定具11に対して弾性的にパチッと嵌め込むかたちで、一つずつ順番に行なうようにすればよく、この係止作業がより容易になるものである。
【0032】
そしてこのように上化粧板17をけらば1の上部に取り付けると、上化粧板17の下端部の覆い部16が下化粧板8の固定部6の外面に重ねられ、固定部6に打入した固着具2が覆い部16で覆われる。また上固定具11の上固定部9に打入した固着具2も上化粧板17の本体部43で覆われる。
【0033】
このようにして、図1に示すように、下化粧板8の上端部の固定部6に上化粧板17の下端部の覆い部16を重ねて、下化粧板8と上化粧板17を外観のうえで一体化した状態で、けらば1の側面を下端から上端まで覆うことができ、下化粧板8と上化粧板17からなるけらば化粧板でけらば1の化粧を行なうことができるものである。また固着具2は上記のように覆われて外部に露出しないので、固着具2で外観を損なうこともないものである。軒天井35は、上記のように下化粧板8と上化粧板17の取り付けを行なった後に、けらば1の下側に施工して取り付けられるものであり、軒天板35のけらば側端部は、下固定具5の本体部37及び下係止部4で覆って露出しないようにしてある。
【0034】
また、下化粧板8と上化粧板17は、下化粧板8の固定部6に上化粧板17の覆い部16を重ね合わせて接続されるため、固定部6に対する覆い部16の重ね合わせ高さを調整することによって、下化粧板8の下端から上化粧板17の上端までの高さ寸法を変えることができるものである。従って、けらば1の上下の厚み寸法が異なっても、固定部6に対する覆い部16の重ね合わせ高さを調整することによって、施行現場で容易に対処することができるものである。尚、固着具2の打入位置は、固定部6のできるだけ上部がよいものであり、これにより、高さ調整代を最大限にとることができるものである。
【0035】
図6は本発明の他の実施の形態を示すものである。この実施の形態では、図7に示す下化粧板8、上化粧板17、下固定具5、上固定具11を備えて形成されるけらば化粧部材を用いるものであり、下化粧板8と下固定具5は上記の図5のものと同じである。
【0036】
上固定具11は図7(b)に示すように、縦の板材からなる上固定部9の下端に屋外側へスペーサ部47を屈曲すると共にスペーサ部47の先端に上係止部10を下方へ垂下することによって形成されるものであり、上固定部9の上端に屋根中央部側へ屈曲する引掛け部48が設けてある。この上固定具11は、金属板の折曲加工品や、樹脂の押出成形品などで、長尺物に形成されるものである。
【0037】
上化粧板17は図7(d)に示すように、断面倒L字形の本体部43の横片43aの屋根中央部側の先端に上側係止固定部14を設けると共に、本体部43の縦片43bの下端に下側係止固定部15を設けて形成されるものであり、この縦片43bが覆い部16ともなるものである。上側係止固定部14は本体部43の横片43aの先端部を屋外側へ向け斜め下方に屈曲して形成されるものであり、また下側係止固定部15は、本体部43の縦片43bの下端を裏側へ折返し屈曲することによって形成してある。この上化粧板17は、金属板の折曲加工品や、樹脂の押出成形品などで、長尺物に形成されるものである。
【0038】
上記の図7に示すけらば化粧部材を用いて行なう屋根のけらば1の化粧施工について説明する。このとき、けらば1に沿って配置される水切12は、図6に示すように、水切片13の縦片13bが野地板22の端縁と一致する位置に取り付けてある。そしてまず上記の図2(b)と同様にしてけらば1の下部に下固定具5を取り付けた後、上記の図3(a)と同様にしてけらば1の下部に下化粧板8を取り付ける。
【0039】
次に、上固定具11をけらば1の上部においてけらば1の側面に配置し、上端の引掛け部48を水切12の水切片13の上端に引掛けた状態で、上固定部9をけらば1の側面となる破風板23と水切片13にあてがい、この上固定部9から破風板23に固着具2を打入して固定することによって、上固定具11をけらば1に取り付ける。このとき、上固定具11の下端部の上係止部10と破風板23の間には、スペーサ部47の寸法分の隙間が形成されている。
【0040】
この後、上化粧板17を上固定具11の上に被せた状態でけらば1の側面から上面にかけて配置し、上化粧板17の下側係止固定部15を上固定具11の上係止部10の下端に引掛け係止すると共に、上化粧板17の上側係止固定部14を水切12の水切片13の横片13aの先端に引掛けて、折り返して係止することによって、上化粧板17をけらば1に取り付ける。このとき、上固定具11の上係止部10の下端部とけらば1の側面との間には上記のように隙間が形成されているので、上係止部10に対する下側係止固定部15の係止の作業が容易になるものである。
【0041】
そしてこのように上化粧板17をけらば1の上部に取り付けると、上化粧板17の覆い部16が下化粧板8の固定部6の外側に重ねられ、固定部6に打入した固着具2が覆い部16で覆われる。また上固定具11の上固定部9に打入した固着具2も上化粧板17で覆われる。
【0042】
このようにして、図6に示すように、下化粧板8の上端部の固定部6に上化粧板17の覆い部16を重ねて、下化粧板8と上化粧板17を外観のうえで一体化した状態で、けらば1の側面を下端から上端まで覆うことができ、下化粧板8と上化粧板17からなるけらば化粧板でけらば1の化粧を行なうことができるものである。また固着具2は上記のように覆われて外部に露出しないので、固着具2で外観を損なうこともないものである。
【符号の説明】
【0043】
1 けらば
2 固着具
3 下固定部
4 下係止部
5 下固定具
6 固定部
7 下係止固定部
8 下化粧板
9 上固定部
10 上係止部
11 上固定具
12 水切
13 水切片
14 上側係止固定部
15 下側係止固定部
16 覆い部
17 上化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の妻側端部のけらばにその下端から上端に亘って取り付けられるけらば化粧部材であって、けらばの下部の側面に配設され、けらばの側面への固着具の打入で固定される下固定部が上部に設けられ且つけらばの下面に配置される下端部に下係止部が設けられた下固定具と、下固定具の外側においてけらばの下部の側面に配設され、けらばの側面への固着具の打入で固定される固定部が上端部に設けられ且つ下端部に下固定具の下係止部に引掛け係止される下係止固定部が設けられた下化粧板と、けらばの上部の側面に配設され、けらばへの固着具の打入で固定される上固定部が設けられ且つ下端部に上係止部が設けられた上固定具と、上固定具の外側においてけらばの上部の側面に配設され、けらばの上面に取付けられた水切に設けられた水切片に引掛け係止される上側係止固定部が上端部に設けられ且つ下部に上固定具の上係止部に引掛け係止される下側係止固定部が設けられると共に、下化粧板の固定部の固着具の打入箇所の外側に重ねられる覆い部が設けられた上化粧板とを、備えて成ることを特徴とするけらば化粧部材。
【請求項2】
上固定具は、けらばの長手方向に沿った複数個所に取り付けられるものであることを特徴とする請求項1に記載のけらば化粧部材。
【請求項3】
下化粧板の固定部に対する、上化粧板の覆い部の重ね合わせ位置を、上下方向に調整自在にして成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のけらば化粧部材。
【請求項4】
下化粧板、上化粧板、下固定具、上固定具を備えて形成されるけらば化粧部材を用い、屋根の妻側端部のけらばにその下端から上端に亘って下化粧板と上化粧板を取り付けることによって、けらばの化粧施工をするにあたって、下固定具をけらばの下部の側面に配設すると共に、下固定具の上部の下固定部から固着具をけらばの側面に打入することによって、下固定具をけらばに固定し、次に下化粧板の下端部に設けた下係止固定部を上記の下固定具の下端部に設けた下係止部に引掛け係止すると共に、下化粧板の上端部に設けた固定部から固着具をけらばの側面に打入することによって、下固定具の外側においてけらばの下部の側面に下化粧板を取り付け、次に上固定具を下化粧板の上端より上側においてけらばの側面に配設すると共に、上固定具の上固定部から固着具をけらばに打入することによって、上固定具をけらばに固定し、次に、上化粧板に設けた覆い部を下化粧板の固定部の固着具の打入箇所の外側に重ねた状態で、上化粧板に設けた下側係止固定部を上固定具の上係止部に引掛け係止すると共に、上化粧板の上端部に設けた上側係止固定部を、けらばの上面に取り付けられた水切に設けられた水切片に引掛け係止することによって、上固定具の外側においてけらばの上部の側面に上化粧板を取り付けることを特徴とするけらばの化粧施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−163777(P2010−163777A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6034(P2009−6034)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)