説明

ころコンベヤのころ駆動装置並びにころコンベヤ設備

本発明は、磁束を発生するための複数の巻線(10)を備え軸(4)上に配置された固定子(6)並びにこの固定子(6)の周りに配置され駆動ころ(12)のころ管(14)に結合できる回転子(8)を有する、コンベヤ設備(26)の駆動ころ(12)を駆動するためのころ駆動装置(2)に関する。ころ駆動装置(2)の運転中に発生される熱を良好に搬出するために、固定子(6)の端面に熱伝導要素(16)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はころコンベヤのころ駆動装置並びにころコンベヤ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
工業においてしばしば、物品を搬送するために、互いに平行に配置されベルトを介して互いに接続された複数のころ(ローラ)を有するころコンベヤ設備(搬送設備)が採用されている。ころコンベヤ設備の幾つかのころ、いわゆる駆動ころはころ駆動装置の一部として電動機を含み、その電動機によって駆動ころの回転運動が行なわれる。
【0003】
ころ駆動装置は、通常、永久磁石を備えた中空回転子を有し、その中空回転子の内部に鉄心と複数の巻線とを備えた静止固定子が配置されている。回転子自体は駆動ころの外側ころ管に結合され、これによって、ころ管がころ駆動装置の運転中に回転子と共に回転される。
【0004】
運転中、ころ駆動装置の損失電力が熱を発生し、その熱が物品を搬送するころ管を加熱する。その熱はころ管を介して周囲に放出され、従って、ころコンベヤによって搬送される物品に放出される。それにより物品が傷められないようにするために、ころ管の温度上昇は例えば約40〜50ケルビン温度までの許容範囲内でしか許されない。
【0005】
ころ駆動装置は、通常、駆動ころの中央に位置され、その長さはころ管の長さの約25%〜50%である。このために、ころ管表面に不均一な温度分布が生ずる。ころ管が熱伝導性の悪い鋼から成っているために、ころ管におけるころ駆動装置が存在する中央部位は、ころ駆動装置が存在しない外側部位よりもかなり高い温度となる。ころ管はこれが回転子の永久磁石の磁束に対する磁気回路形成に利用され、このために、例えば鋼のような磁化可能な材料で作られねばならず、例えばアルミニウムや銅のような良熱伝導特性材料では形成できない。
【0006】
今日では、ころ駆動装置で発生された熱の一部を熱伝達媒体が封入された例えばヒートパイプとも呼ばれる放熱管を介して取り出す対策が存在している。もっともかかるヒートパイプは電動機の軸径を大きくする必要があるため、固定子の直径が小さくされねばならない。このために、鉄心ないし巻線用の場所が狭くなり、これに伴ってトルクが減少する。
【0007】
駆動ころに一体に組み込まれたころ駆動装置は、通常、できるだけ大きなトルクを発生しなければならず、そのトルクはころ駆動装置ないしころ管の寸法(直径、長さ、壁厚)に依存する。もっとも所望のトルク増大は、ころ駆動装置の大形化がころ駆動装置の大きな損失出力を生じさせるために、ころ駆動装置の寸法増大では行えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、最大許容温度を超過することなしに、駆動ころのトルク増大を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、磁束を発生するための複数の巻線を備え軸上に配置された固定子並びにこの固定子の周りに配置され駆動ころのころ管に結合できる回転子を有する、ころコンベヤの駆動ころを駆動するためのころ駆動装置であって、その固定子の端面に熱伝導要素が設けられているころ駆動装置によって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ころ駆動装置から放出される熱がころ管にできるだけ一様に分配されることによって駆動ころのトルク増大ができる、という考えに基づいている。これによって、ころ管のできるだけ全長にわたって大きな放熱が達成され、これにより、より大きなトルクにもかかわらず、ころ管の温度がいずれの箇所でも最大許容温度を超過することはない。ころ駆動装置で発生された熱が駆動ころに沿ってできるだけ大きな範囲にわたりころ管に放出されることによって、特に良好な温度分布が存在する。この目的のために、ころ駆動装置に結合され且つころ管の内部における空間を少なくとも部分的に充填する熱伝導要素が設けられている。この場合、ころ駆動装置の熱の一部が熱伝導要素に導かれ、そこから熱放射によりころ管に放出される。その熱伝導要素は固定子としか直接接触せず、回転ころ管から空隙を介して隔てられた静止構成要素を形成している。従って、その熱伝導要素はころ駆動装置の延長部となっており、これにより熱が駆動ころの長手方向のより長い距離にわたってころ管に放出され、これによって、より一様に分配される。
【0011】
有利な実施態様において、この熱伝導要素は、固定子の端面に熱伝導的に全面接触する端面を有している。熱伝導要素と固定子の全面的な接触の結果、非常に強い熱伝達が行われ、これによって、ころ駆動装置で発生された熱の大部分が熱伝導要素を介して搬出される。
【0012】
他の有利な実施態様において、この熱伝導要素は損失出力が生ずる固定子と、特に巻線端と熱伝導性注入材を介して結合されている。その注入材は、一方では、熱伝導要素のころ駆動装置への確実な固定を提供する。他方では、その注入材は特にころ駆動装置の端面が平らでない場合に特に有利である。即ち、その注入材が固定子の凹凸端面と熱伝導要素の端面との間に存在する隙間を塞ぎ、これにより、ころ駆動装置と熱伝導要素との熱伝達性が向上される。その注入材として、良好な熱伝導性を有する、例えば粘塑性材料あるいは硬化性材料、特に接着剤も利用される。
【0013】
熱伝達要素ができるだけ多量の熱を周囲に放出するように形成されていることによって、ころ駆動装置で発生された熱の搬出を追加的に増大することができる。その場合、この熱伝導要素は、好適には、その全面接触端面とは反対側の端面に内側に向いた円錐状凹所を有している。その円錐状凹所によって、熱伝達要素の表面積が増大され、これによって、熱放射の形で周囲に放出される熱量が増大される。また、その凹所は材料の削減を可能とし、これによって、熱伝達要素が特に安価に構成できる。
【0014】
好適には、熱伝導要素はほぼ円筒状に形成されている。この実施態様において、熱伝導要素の形状はころ管の形状に特に良好に合わされ、これによって、一様な熱伝達が行われる。特に熱伝導要素はころ管に対して同心的に配置され、これによって、熱伝導要素から放射された熱は半径方向に一様に分配される。
【0015】
熱伝導要素がころ管の内径に比べて公差寸法だけ小さい外径の円筒状外周面を有していることが有利である。その公差寸法は、熱伝導要素の外周面ところ管の内周面との間にできるだけ小さな隙間しか生じないように規定され、熱伝導要素の熱はその小さな隙間を介して熱放射の形でころ管に放出される。同時にその公差寸法は、熱伝導要素の外周面ところ管との間の隙間が、ころ管の回転中における熱伝導要素ところ管との接触従って摩擦を防止するために十分であるように規定されている。熱伝導要素の外径は特に回転子の外径に相応し、これによって、熱伝導要素はころ駆動装置の軸方向延長部となっている。
【0016】
熱伝導要素の内部における熱の迅速な分配のために、熱伝導要素は、好適には、100W/(m・K)以上、特に150W/(m・K)以上の熱伝導度を有する材料で形成されている。その熱伝導要素は例えばアルミニウム、銅あるいはマグネシウムで形成されるか、大部分がアルミニウム、銅および/又はマグネシウムで構成された合金で形成される。
【0017】
ころ管における特に一様な熱分配のために、好適には、固定子の両側端面にそれぞれ熱伝導要素が配置されている。
【0018】
ころ管への大きな熱伝達を可能とするために、熱伝導要素の長さは、好適には、固定子の長さの15%より大きく、特に20%より大きくされている。熱伝導要素の長さは特に現存場所に合わされ、熱伝導要素が長ければ長いほど、熱伝導要素は多量の熱を吸収でき、駆動ころにおける熱分配を良好にする。
【0019】
また本発明の課題は請求項10に記載のころ駆動装置を備えたころコンベヤ設備(搬送設備)によって解決される。ころ駆動装置について述べた利点およびその有利な実施態様は、ころコンベヤ設備に同じように転用できる。
【0020】
以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。なお各図において同一部分には同一符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ころ駆動装置の斜視図。
【図2】ころ駆動装置が一体に組み込まれた駆動ころの透視図。
【図3】熱伝導要素の端面の斜視図。
【図4】図3の熱伝導要素の反対側端面の斜視図。
【図5】2つの熱伝導要素を有するころ駆動装置を備えた駆動ころの透視図。
【図6】ころコンベヤ設備の部分破断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、軸4上に配置された固定子6と、この固定子6を包囲する回転子8とを有するころ駆動装置2が示されている。その静止固定子6は複数の巻線10が配置された鉄心で形成されている。回転子8は固定子6の周りに、回転子8が巻線10で発生された磁力により固定子6の周りを自由に回転できるように配置されている。回転子8はころ駆動装置2の直径を規定する外径DRを有している。
【0023】
ころ駆動装置2は、ここでは詳細に図示されていないころコンベヤ設備(搬送設備)の一部である駆動ころ12を駆動するために利用される。また駆動ころ12はころ管14を含み、駆動ころ12はころ管14の中にその長さL2に関して中央に位置されている。回転子8はここでは詳細に図示されていない取付け手段を介してころ管14に結合され、これによって、ころ駆動装置2の運転中、回転子8の回転がころ管14を一緒に回転させる。ころ管14は回転子8の外径DRより僅かに大きい内径DIを有している。
【0024】
ころ駆動装置2の長さL1は、通常、ころ管14の長さL2の約25%〜50%である。この実施例においては、その長さL1はころ管14の長さL2の30%である。
【0025】
ころ駆動装置2の運転中に固定子6に生ずる熱を良好な搬出するために、図3と図4に示されているような熱伝導要素16が設けられている。この熱伝導要素16はほぼ円筒状に形成され、回転子8の外径DRにほぼ等しい直径DWを有している。この熱伝導要素16はアルミニウムおよび/又は銅で形成されている。
【0026】
熱伝導要素16は、固定子6の端面に熱伝導的に全面接触する端面18を有している。この実施例において、その熱伝導接触は端面18のここでは詳細に図示されていない凹所に詰められた注入材20を介して行われる。この場合、その注入材20を介して固定子6と熱伝導要素16との間でしか接触が行われず、このために、ころ駆動装置2の運転中、熱伝導要素16は動かない。回転子8の回転が害されないようにするために、熱伝導要素16と回転子8との接触は阻止されている。
【0027】
図4で理解できるように、熱伝導要素16はその全面接触端面18とは反対側の端面22に内側に向いた円錐状凹所を有している。この凹所24は、一方では、材料を節約し、他方では、熱伝導要素16の表面を増大するために役立ち、これによって、より多くの熱が周囲に放出できる。
【0028】
駆動ころ12は組立状態において図5に示されているように、ころ駆動装置2の両端面に熱伝導要素16を固定してころ管14の内部に配置されている。熱伝導要素16の直径DWが回転子8の直径に相当していることによって、その直径DWはころ管14の内径DIに比べて公差寸法だけ減少されている。従って、熱伝導要素16ところ管14との間に非常に小さな隙間が生じ、この隙間を介して、熱伝導要素16からの熱が熱放射の形でころ管14に放出される。
【0029】
この実施例において、各熱伝導要素16の長さLWはころ駆動装置2の長さLIの約30%である。従って、熱伝導要素16は駆動ころ12の延長部となっており、これによって、熱伝導要素16に導入された廃熱をころ管14の内部により良好に分配することができる。これによって特にトルク増大が可能となり、その場合、一様な廃熱分布に基づいて、ころ管14の所定の許容温度を超過することはない。
【0030】
図6に物品(図示せず)を搬送するためのころコンベヤ設備26が示され、このころコンベヤ設備26は、互いに平行に配置された複数のころ(ローラ)12、28を有している。それらのころは、駆動ころ12の形態で形成されているか、本質的にころ管しか含まない空転ころ28である。それらのころ12、28はベルトを介して互いに連結され、これによって、駆動ころ12の回転運動が空転ころ28に伝達される。また、物品の位置を検出するために、光バリヤ(光学的通過センサ)32が設けられている。
【符号の説明】
【0031】
2 ころ駆動装置
6 固定子
8 回転子
14 ころ管
16 熱伝導要素
18 端面
20 注入材
26 ころコンベヤ設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生するための複数の巻線(10)を備え軸(4)上に配置された固定子(6)並びにこの固定子(6)の周りに配置され駆動ころ(12)のころ管(14)に結合できる回転子(8)を有する、ころコンベヤ設備(26)の駆動ころ(12)を駆動するためのころ駆動装置(2)であって、
固定子(6)の端面に熱伝導要素(16)が設けられていることを特徴とするころコンベヤ(26)の駆動ころ(12)を駆動するためのころ駆動装置(2)。
【請求項2】
熱伝導要素(16)が、固定子(6)の端面に熱伝導的に全面接触する端面(18)を有していることを特徴とする請求項1に記載のころ駆動装置(2)。
【請求項3】
熱伝導要素(16)が、熱伝導性注入材(20)を介して固定子(6)に結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のころ駆動装置(2)。
【請求項4】
熱伝導要素(16)が、その全面接触端面(18)とは反対の端面(22)に、内側に向いた円錐状凹所(24)を有していることを特徴とする請求項2又は3に記載のころ駆動装置(2)。
【請求項5】
熱伝導要素(16)が、ほぼ円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)。
【請求項6】
熱伝導要素(16)が、ころ管(14)の内径(DI)に比べて公差寸法だけ小さい外径(DW)の円筒状外周面を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)。
【請求項7】
熱伝導要素(16)が、100W/(m・K)以上、特に150W/(m・K)以上の熱伝導度を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)。
【請求項8】
固定子(6)の両側端面にそれぞれ熱伝導要素(16)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)。
【請求項9】
熱伝導要素(16)の長さ(LW)が固定子(6)の長さ(L1)の15%より大きく、特に20%より大きいことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載のころ駆動装置(2)を有する駆動ころ(12)を備えていることを特徴とするころコンベヤ設備(26)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529936(P2010−529936A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536754(P2009−536754)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064029
【国際公開番号】WO2008/074761
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】