説明

ごみ固形燃料を用いる施設園芸用加温システムおよび園芸作物の生産管理システム

【課題】施設園芸用の熱源としてごみ固形燃料を効率よく利用し、加温コストを削減できる施設園芸用加温システムを提供する。
【解決手段】施設園芸用ハウスと加温機を備え、加温機の燃焼室で燃料を燃焼させて熱を発生させ、発生した熱により温風又は温水を生成し、生成した温風又は温水を施設園芸用ハウスに供給してハウス内を加温するようにした施設園芸用加温システムにおいて、加温機の燃焼室に供給する燃料としてRDFとRPFの混合燃料を用い、制御手段により、加温条件に応じてRDFとRPFの混合割合を変化させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ固形燃料を熱源に用いる施設園芸用加温システムと、園芸作物の生産管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物をエネルギー資源等に再利用して、資源を循環させると共に廃棄物の発生を抑制し、これにより環境に与える負荷をできるだけ低減させる循環型社会の実現が叫ばれている。かかる循環型社会の実現を図るべく、廃棄物を固形燃料化し、発電設備や温水プール、さらにはセメント生産設備等の熱源に用いる試みがなされている。廃棄物を原料とするごみ固形燃料には、一般廃棄物を原料とするRDF(Refuse Derived Fuel)と、産業廃棄物の古紙および廃プラスチックを原料とするRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)がある。前者のRDFは家庭ごみを中心とするため発生熱量が低く(3000〜4000kcal)、後者のPDFは廃プラスチックを含むため発生熱量が高い(6000〜8000kcal)という特長がある。
【0003】
ごみ固形燃料に関しては、従来より、不燃物を選別除去して良質なごみ固形燃料を製造する方法(特許文献1)や、含塩素プラスチックを効率良く除去して、塩素含有量の少ないごみ固形燃料を製造する方法(特許文献2)、ごみ固形燃料の貯蔵設備(特許文献3)、ごみ固形燃料の製造プラント(特許文献4)などの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−311465号公報
【特許文献2】特開平11−80762号公報
【特許文献3】特開2005−178934号公報
【特許文献4】特開2008−132408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、循環型社会の実現を図るには、ごみ固形燃料(RDF・RPF)の普及拡大が不可欠であるところ、現状では、製造コストや発電コスト等の問題により、限定的な利用に留まっている。このため、製造されたごみ固形燃料が消費されることなく貯蔵され、その貯蔵量が増大して保管コストが上昇し、さらには燃料として使用できなくなったごみ固形燃料を廃棄する等の新たな問題も生じる事態となっていた。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、施設園芸用の熱源としてごみ固形燃料の利用拡大を図り、合わせて加温コストを削減できる施設園芸用加温システムを提供することにある。第2の目的は、施設園芸用の熱源としてごみ固形燃料を利用し、コンピュータを用いて、園芸作物を計画的に生産および安定出荷できる園芸作物の生産管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る施設園芸用加温システムは、
施設園芸用ハウスと加温機を備え、加温機の燃焼室で燃料を燃焼させて熱を発生させ、発生した熱により温風又は温水を生成し、生成した温風又は温水を施設園芸用ハウスに供給してハウス内を加温するようにした施設園芸用加温システムにおいて、加温機の燃焼室に供給する燃料としてRDFとRPFの混合燃料を用い、制御手段により、加温条件に応じてRDFとRPFの混合割合を変化させることを主要な特徴とする。
【0008】
本発明に係る施設園芸用加温システムによると、加温条件(季節や一日の温度変化)に応じて、PDFとRDFの混合割合を変化させることにより、RDFとRPFのそれぞれの特性(前者は発生カロリーが低い、後者は発生カロリーが高い)を生かしつつ、加温条件に最適な熱量を発生させることができる。これにより、重油等の代替燃料として重油等より安価なごみ固形燃料の利用拡大を図り、合わせて加温コストの低減を図ることができる。
【0009】
本発明に係る施設園芸用加温システムは、制御手段により加温条件に応じて設定された混合割合でRDFとRPFを加温機の燃焼室に供給する供給手段を備えることを第2の特徴とする。
【0010】
供給手段により、制御手段により加温条件に応じて設定された混合割合のRDFとRPFを加温機の燃焼室に安定供給することができる。
【0011】
本発明に係る施設園芸用加温システムは、供給手段が、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクと、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクからRDFおよびRPFを加温機の投入部へ向けて搬送する搬送手段を有し、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクの各下部には、制御手段により設定された混合割合となるようにRDFとRPFの排出量を調整する調整部を設けたことを第3の特徴とする。
【0012】
本発明に係る施設園芸用加温システムは、制御手段が、加温条件に対応してRDFとRPFの混合割合を変化させるモードとして、基準モード、RPF重視モード、RDF重視モードを備えることを第4の特徴とする。
【0013】
ここで、基準モードは、例えば、RDFとRPFの混合割合を50:50に設定したモードである。また、RPF重視モードは、RPFの混合割合を50%超とし、制御手段のコンピュータの入力部から、RDFとRPFの混合割合を5:95〜45:55の範囲で設定可能としたモードである。また、RDF重視モードは、RPFの混合割合を50%未満とし、制御手段のコンピュータの入力部から、RDFとRPFの混合割合を55:45〜95:5の範囲で設定可能としたモードである。
【0014】
例えば、春季・秋季に基準モードを、冬季にRPF重視モードを、夏季にRDF重視モードをそれぞれ使い分けることにより、1年の加温シーズンを通して、RDFとRPFの各固形燃料の使用を平準化し、1年を通してRDFとRPF双方の消費拡大を図ることができる。
【0015】
本発明に係る施設園芸用加温システムは、制御手段が、加温条件に対応してRDFとRPFの混合割合を変化させるモードとして、さらに自動設定モードを備え、自動設定モードは、施設園芸用ハウスの内外に設けられた温度センサーに基づき、制御手段が、RDFとRPFの混合割合を自動設定可能としたことを第5の特徴とする。
【0016】
本発明に係る施設園芸用加温システムは、加温機が重油又は灯油を主燃料とし、RDFとRPFの混合燃料を補助燃料に用いることを第6の特徴とする。
【0017】
重油又は灯油の価格の変動に合わせて、RDFとRPFの混合燃料を補助燃料に用いることで、加温コストの上昇抑制と維持、低減化を図ることができる。
【0018】
本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システムは、
管理コンピュータを備え、管理コンピュータが、園芸作物の生産委託者の端末、園芸作物を施設園芸ハウス内で生産する園芸作物生産者の端末、施設園芸ハウスの加温用燃料として供給するごみ固形燃料を製造する固形燃料製造者の端末、ごみ固形燃料の原料となる廃棄物を収集する廃棄物収集者の端末と、それぞれ通信ネットワークを介して結ばれ、
管理コンピュータは、生産委託者の端末からの生産委託情報に基づき、園芸作物生産者が生産する園芸作物の生産量と、固形燃料製造者が製造するごみ固形燃料の製造量と、廃棄物収集者が収集する廃棄物の収集量をそれぞれ決定し、それぞれの端末に園芸作物の生産量情報、ごみ固形燃料の製造量情報、廃棄物の収集量情報を送信し、
園芸作物生産者の端末は、受信した園芸作物の生産量情報に基づき、園芸作物の生産計画を生成し、
固形燃料製造者の端末は、受信した固形燃料の製造量情報に基づき、ごみ固形燃料の製造計画を生成し、
廃棄物収集者の端末は、受信した廃棄物の収集量情報に基づき、廃棄物の収集計画を生成する、
ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた生産管理システムによれば、生産委託者からの生産委託情報に基づき、管理コンピュータが、生産委託者からの生産委託情報に基づき、園芸作物の生産量と、ごみ固形燃料の製造量と、廃棄物の収集量をそれぞれ決定し、それぞれの端末に園芸作物の生産量情報、ごみ固形燃料の製造量情報、廃棄物の収集量情報を同時期に送信することで、生産委託者からの要求にあわせて、園芸作物生産者は園芸作物を無駄なく計画的に生産し、また、固形燃料製造者は園芸作物の生産に必要なごみ固形燃料を無駄なく計画的に製造し、また、廃棄物収集者はごみ固形燃料の製造に必要な廃棄物を計画的に収集することができる。
【0020】
そして、これにより、廃棄物収集者はごみ固形燃料の製造に必要な廃棄物を安定して固形燃料製造者に供給し、固形燃料製造者はごみ固形燃料を安定して園芸作物生産者に供給し、園芸作物生産者は園芸作物を安定して生産委託者に出荷することができる。かかる生産管理システムを1年を通して運用することにより、重油等よりも値段の安価なごみ固形燃料を熱源として、1年を通して園芸作物を計画的に生産し安定して生産委託者に出荷できると共に、ごみ固形燃料の消費拡大を図ることができる。
【0021】
本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システムは、
管理コンピュータが、生産委託者の端末から廃棄物発生情報を受信すると共に、同廃棄物発生情報を廃棄物収集者の端末に転送し、廃棄物収集者の端末が、受信した廃棄物の必要量情報および廃棄物発生情報に基づき、廃棄物の収集計画を生成する、ことを第2の特徴とする。
【0022】
生産委託者からの廃棄物発生情報に基づき、生産委託者から排出された廃棄物を収集してごみ固形燃料を製造し、かかるごみ固形燃料を生産委託者から委託された園芸作物の生産に熱源として供給するという一連の流れを形成することができ、これにより資源を循環させて、循環型社会の実現に向けて一歩進めることができる。
【0023】
本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システムは、
固形燃料製造者がごみ固形燃料としてRDFとRPFを製造し、RDFとRPFを一定の割合で混合した混合燃料を園芸作物生産者に供給することを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る施設園芸用加温システムによると、加温条件に応じて、PDFとRDFの混合割合を変化させることにより、RDFとRPFのそれぞれの特性を生かしつつ、加温条件に最適な熱量を発生させることができ、これにより、重油等の代替燃料として重油等より安価なごみ固形燃料の利用拡大を図り、合わせて施設園芸における加温コストを大きく低減させることができるという優れた効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係るコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システムによると、生産委託者からの生産委託情報に基づき、廃棄物収集者は廃棄物を無駄なく計画的に収集してごみ固形燃料製造者に供給し、固形燃料製造者はごみ固形燃料を無駄なく計画的に製造して園芸作物者に供給し、園芸作物生産者は園芸作物を無駄なく計画的に生産して生産委託者に安定して出荷することができる。これにより、重油等より安価なごみ固形燃料を熱源として、園芸作物を計画的に生産し安定して生産委託者に出荷できると共に、ごみ固形燃料の消費拡大を図ることができ、ひいては循環型社会に大きく貢献できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態を示すもので、図中、符号Sは本発明に係る施設園芸用加温システムの全体構成図を示している。
【0027】
施設園芸用加温システムSは、図1に示すように、施設園芸用ハウス100と加温機110と供給手段120と制御手段130を備える基本構成とされている。
【0028】
施設園芸用ハウス100は、アルミパイプ等の骨組に塩化ビニルフィルムやポリエチレンフィルム等の保温被覆資材を被覆して組み立てられており、内部の温室で園芸作物を栽培するようになっている。この農業用ハウス100には、ハウスの室内温度を測定する室内温度センサー101と、外気温度を測定する外気温度センサー102が設置されている。この施設園芸用ハウス100の温室103で栽培される園芸作物としては、きゅうり、トマト、メロン、ナス、いちご、ハウスみかん、きく、バラ等がある。
【0029】
加温機110は、本実施形態では、RDFおよびRPFの混合燃料を燃焼させるボイラーが用いられる。加温機110は、加温機本体111の内部に燃焼室112が設けられ、燃焼室112の上部に熱交換部113が配置されている。燃焼室112の入口にはRDFおよびRPFを燃焼室112に供給する投入部114が設けられている。燃焼室112の側面にはRDFおよびRPFに着火させる着火部115が設けられている。燃焼室112内に供給されたRDFおよびRPFの混合燃料は、着火部115により着火および燃焼して高温の熱を発生させ、熱交換部113において熱交換され、温風や温水を生成することができる。生成された温風や温水は、供給ダクト116を通じて農業用ハウス100の温室103内に供給されるようになっている。なお、燃焼室112内の燃焼により生じたガスは燃焼室112の出口に設けられた煙突117から外部に排気されるようになっている。
【0030】
供給手段120は、加温機110の燃焼室112に混合燃料として投入されるRDFとRPFを一定の割合で供給するもので、RDF貯留タンク121と、RPF貯留タンク122と、RDF貯留タンク121内のRDFを加温機110の投入部114に搬送する搬送コンベア123と、RPF貯留タンク122内のRPFを加温機110の投入部114に搬送する搬送コンベア124とを備えている。RDF貯留タンク121とRPF貯留タンク122の下部には、加温機110の燃焼室112に供給されるRDFとRPFが一定の割合になるようにそれぞれの排出量を調整する排出量調整部125,126が設けられている。排出量調整部125,126は、例えば排出量調整部125,126内に排出口の大きさを増減するモータ駆動式の調整板(図示せず)を設け、制御手段130からの信号により調整板を可動させることにより、RDF,RPFの各排出量を調整する方式等を採用できる。
【0031】
制御手段130は、コンピュータ131を備え、図2に示すように、コンピュータ131のプログラム格納部には、RDFとRPFの混合割合を設定するRDF・RPF混合割合設定プログラムが内蔵されている。RDF・RPF混合割合設定プログラムは、複数のモード、すなわち基準モード、RPF重視モード、RDF重視モード、自動設定モードの4つのモードを選択できる。基準モードはRDFとRPFの混合割合を50:50に設定してある。RPF重視モードは、RPFの割合を多くしたモードであり、基準モードの場合に比べて、RDFとRPFの混合燃料により発生する総カロリー量を高くしてある。RDF重視モードは、RPFの割合を少なくしたモードであり、基準モードの場合に比べて、RDFとRPFの混合燃料により発生する総カロリー量を低くしてある。自動設定モードは、農業用ハウス100の室内温度センサー101と外気温度センサー102からの温度信号に基づき、RDFとRPFの混合割合を自動的に計算し、設定するモードである。
【0032】
作業者は、コンピュータ131の入力部から、基準モード、RPF重視モード、RDF重視モード、自動設定モードのいずれかを選択できる。例えば、春季や秋季は基準モード、冬季はRPF重視モード、夏季はRDF重視モードと季節毎に使い分けることができる。また、作業者は、RPF重視モードを選択した場合、RDFとRPFの混合割合を5:95〜45:55の範囲で、RDF重視モードを選択した場合、RDFとRPFの混合割合を55:45〜95:5の範囲で設定できる。
【0033】
これに対し、自動設定モードを選択した場合、RDF・RPF混合割合設定プログラムが、施設園芸用ハウス100の室内温度センサー101と外気温度センサー102からの温度信号に基づき、室内外の温度変化(例えば昼夜の温度差、晴天雨天の温度差)に応じて、RDFとRPFの混合割合を5:95〜95:5の範囲で自動計算又は自動設定するようになっている。
【0034】
これにより、制御手段130は、RDF・RPF混合割合設定プログラムにおいて、作業者により選択されたモードおよび設定されたRDF・RPF混合割合に従い、RDF貯留タンク121の吐出量調整部125とRPF貯留タンク122の吐出量調整部126に制御信号を送信し、設定された混合割合となるように、RDFとRPFの各吐出量を調整し、これにより、RDF貯留タンク121およびRPF貯留タンク122から調整されたRDFとRPFがそれぞれの搬送コンベア123,124上に吐出される。吐出されたRDFとRPFは搬送コンベア123,124上を搬送され、加温機110の投入部114に供給され、最後に混合燃料として燃焼室112に投入される。
【0035】
また、制御手段130は、施設園芸用ハウス100の室内温度センサー101と外気温度センサー102からの温度信号に基づき、コンピュータ131のプログラム格納部に内蔵された加温プログラムに従い、施設園芸用ハウス100の内部温室103が設定温度を維持するように、供給手段120によるRDFとRPFの供給、加温機110の燃焼室112における混合燃料の燃焼、生成された温風又は温水のハウス内供給のそれぞれを全体的に制御するようになっている。加温プログラムは、栽培される園芸作物毎にプログラムが準備され、作業者はコンピュータ131の入力部から、複数のプログラムのうち、栽培対象の園芸作物に対応するプログラムを選択できるようになっている。
【0036】
制御手段130と室内温度センサー101の間、制御手段130と外気温度センサー102の間、制御手段130と加温機110の着火部115の間、制御手段130と搬送コンベア123,124との間、制御手段130と吐出量調整部125,126との間、制御部130と搬送コンベア123,124(の駆動モータ)との間は、それぞれ通信ネットワーク132により結ばれている。
【0037】
次に、図1を参照して、本発明に係る施設園芸用加温システムS1の作用について説明する。
【0038】
施設園芸用ハウス100内を加温するにあたり、コンピュータ131の入力部から、RDF・RPF混合割合設定プログラムを作動させ、4つのモードからいずれかのモードを選択する。例えば、春季や秋季のシーズン(たとえば、春季のメロンや秋季のイチゴ栽培など)では、基準モードを選択する。基準モードは、RDF・RPF混合割合が50:50に設定され、使用するRDF・RPFの発生熱量がそれぞれ3000kcal、6000kcalである場合、基準モードでの混合燃料の平均発生熱量は4500kcalとなる。基準モードを選択したら、加温機110の燃焼室112にRDFとRPFの混合燃料を供給する。
【0039】
図示しない燃料供給開始ボタンの操作により、制御手段130が、基準モードに対応する制御信号を排出量調整部125,126に送信し、RDF貯留タンク121とRPF貯留タンク122から互いの排出量が50:50に調整されたRDFとRPFが搬送コンベア123,124上に排出される。搬送コンベア123,124上に排出されたRDFとRPFは、制御手段130からの制御信号により駆動されるモータにより、搬送コンベア123,124上を搬送され、加温機110の投入部114に供給される。そして、投入部114から加温機110の燃焼室112内に、50:50の割合の混合燃料として投入される。
【0040】
次に、制御手段130のコンピュータ131の入力部から、加温プログラムを作動させることにより、制御手段130が着火部115に制御信号を送信し、着火部115からの火炎により燃焼室112内のRDFとRPFの混合燃料を着火させ、燃焼させる。かかる燃焼により燃焼室112内に発生した高温の熱は、熱交換部113において熱交換され、温風や温水が生成される。生成された温風や温水は、供給ダクト116を通じて施設園芸用ハウス100の温室103内に供給される。これにより、春季や秋季のシーズンは、基準モードを選択することにより、混合燃料の平均発生熱量を4500kcalに保持して、施設園芸用ハウス100の温室103内に適温の温風や温水を供給するとともに、廃棄物から生産されるRDFとRPFを等しく混合燃料として消費し、それらを有効利用することができる。
【0041】
冬季のシーズン(たとえば、冬季のハウスみかん栽培など)の場合、発生熱量を多くするため、RPF重視モードを使用する。制御手段130のコンピュータ131の入力部から、RDF・RPF混合割合決定プログラムを作動させ、RPF重視モードを選択する。RPF重視モードは、RPFの割合を多くしたモードであり、基準モードの場合に比べて、RDFとRPFの混合燃料により発生する総カロリー量を高くしてある。そして、作業者が、外気温その他の加温条件に合わせて、入力部からRDFとRPFの混合割合を5:95〜45:55の範囲で設定するが、ここでは、RDFとRPFの混合割合を40:60に設定する。この場合の混合燃料の平均発生熱量は5200kcalとなり、基準モードの平均発生熱量(4500kcal)よりも高い熱量が得られる。このように冬季のシーズンは、RPF重視モードを選択することにより、高い熱量を発生させ、ハウス内の設定温度を維持するべく、適温の温風又は温水をハウス内に供給することができる。また、冬季のシーズンにおいても、廃棄物から生産されたRDFとRPFの両方を混合燃料として消費できる。
【0042】
夏季のシーズン(たとえば、夏季の高地や寒冷地での花き栽培など)の場合、発生熱量を少なく抑えるため、RDF重視モードを使用する。制御手段130のコンピュータ131の入力部から、作業者がRDF・RPF混合割合決定プログラムを作動させ、RDF重視モードを選択する。RDF重視モードは、RPFの割合を少なくしたモードであり、基準モードの場合に比べて、RDFとRPFの混合燃料により発生する総カロリー量が低い。そして、作業者により、RDFとRPFの混合割合を55:45〜95:5の範囲から設定するが、ここでは、RDFとRPFの混合割合を60:40に設定する。この場合の混合燃料の平均発生熱量は4200kcalとなり、基準モードの平均発生熱量(4500kcal)よりも低く抑えられる。このように夏季のシーズンは、RPFの混合割合を少なくすることにより発生熱量を低く抑えながら、農業用ハウス100の温室103内に適温の温風又は温水を供給することができる。また、生産されたRDFとRPFの両方を混合燃料として消費できる。
【0043】
このように、一年のシーズンを通して、RDFとRPFの固形燃料を施設園芸用の加温用熱源として使用し、廃棄物から製造されたRDFとRPFを効率よく消費することができる。また、発生熱量が高いRPFと発生熱量が低いRDFを組み合わせて混合燃料とし、春季・秋季、冬季、夏季等、加温条件の相違に合わせて、平均発生熱量を変化させることにより、ごみ固形燃料を安定して燃焼させながら、加温条件に応じた適温の温風や温水を施設園芸用ハウスに供給することができる。そして、一年を通して、RDFとRPFの消費を平準化し、RDFとRPFの安定製造と消費拡大を図ることができる。また、重油に替わる安価なごみ固形燃料を熱源に使用することで、加温コストの大幅低減を図ることができる。
【0044】
図3は、図1に示す施設園芸用加温システムS1を含む園芸作物の生産管理システムS2の全体構成を示す図である。
【0045】
図3に示すように、生産管理システムS2は、管理コンピュータ140を備えている。管理コンピュータ140は、園芸作物の生産委託者A1のコンピュータ(端末)133、生産委託者A1からの生産委託により園芸作物を施設園芸ハウス100(図1参照)内で生産する園芸作物生産者A2のコンピュータ(端末)131、ごみ固形燃料(RDF・RPF)を製造する固形燃料製造者A3のコンピュータ(端末)134、ごみ固形燃料(RDF・RPF)の原料となる廃棄物を収集する廃棄物収集者A4のコンピュータ(端末)135と、それぞれ通信ネットワーク141を介して結ばれている。
【0046】
なお、生産委託者A1は、例えば園芸作物を販売するスーパー、園芸作物を食材として使用するレストラン、観光農園を展開する事業者等であり、園芸作物生産者A2は、例えば契約農家等である。また、固形燃料製造者A3は、例えば固形燃料を製造する民間業者や自治体、第三セクター等であり、廃棄物収集者A4は、例えば産業廃棄物を収集する民間業者や、一般廃棄物を収集する自治体等であり、廃棄物から不燃物等を分離除去する中間業者も含まれる。
【0047】
管理コンピュータ140は、生産委託者A1のコンピュータ133から送信される生産委託情報を受信し、同生産委託情報に基づき、プログラム格納部に格納された生産管理プログラムに従い、園芸作物生産者A2が生産する園芸作物の生産量と、固形燃料製造者A3が製造するごみ固形燃料(RDF・RPF)の製造量と、廃棄物収集者A4が収集する廃棄物の収集量をそれぞれ決定する。ここで、生産委託情報には、生産委託者、園芸作物の種類、生産委託量、入荷期限等の情報が含まれる。
【0048】
そして、管理コンピュータ140は、園芸作物生産者A2のコンピュータ131に園芸作物の生産量情報を、固形燃料製造者A3のコンピュータ134にごみ固形燃料(RDF・RPF)の製造量情報を、廃棄物収集者A4のコンピュータ135に廃棄物の収集量情報を、それぞれ通信ネットワーク141を介して送信する。ここで、園芸作物の生産量情報には、生産委託者、生産者、園芸作物の種類、生産量、生産時期、出荷期限等の情報が含まれる。ごみ固形燃料(RDF・RPF)の製造量情報には、出荷先、製造者、RDF・RPFの各製造量、製造時期、出荷期限等の情報が含まれる。廃棄物の収集量情報には、出荷先、収集者、廃棄物の種類(一般廃棄物・産業廃棄物)、収集量、収集時期、出荷期限等の情報が含まれる。
【0049】
園芸作物生産者A2のコンピュータ131は、管理コンピュータ140から受信した園芸作物の生産量情報に基づき、プログラム格納部に内蔵された生産計画プログラムに従い、園芸作物の生産計画を生成する。そして、園芸作物生産者Aは、生成された生産計画に従い、施設園芸用ハウス100内で園芸作物を生産する。また、固形燃料製造者A3のコンピュータ134は、管理コンピュータ140から受信した固形燃料の製造量情報に基づき、プログラム格納部に内蔵された製造計画プログラムに従い、ごみ固形燃料(RDF・RPF)の製造計画を生成する。そして、固形燃料製造者A3は、生成された製造計画に従い、ごみ固形燃料(RDF・RPF)を製造する。また、廃棄物収集者A4のコンピュータ135は、管理コンピュータ140から受信した廃棄物の収集量情報に基づき、プログラム格納部に内蔵された廃棄物収集計画プログラムに従い、廃棄物(一般廃棄物・産業廃棄物)の収集計画を生成する。そして、廃棄物収集者A4は、生成された収集計画に従い、廃棄物を収集する。
【0050】
そして、図3に示すように、廃棄物収集者A4は、収集した廃棄物(一般廃棄物・産業廃棄物)から不燃物等を分離除去して、次工程の固形燃料製造者A3に計画量の廃棄物を搬送する。固形燃料製造者A3は、搬送された廃棄物を原料として、ごみ固形燃料(RDF・RPF)を製造し、次工程の園芸作物生産者A2に供給する。園芸作物生産者A2は、供給されたごみ固形燃料(RDF・RPF)を加温システムS1の熱源として用い、出荷時期に合わせてハウス100内で園芸作物を生産し、次工程の生産委託者A1に出荷する。
【0051】
生産管理システムS2によれば、管理コンピュータ140が、生産委託者A1からの生産委託情報に基づき、園芸作物の生産量と、ごみ固形燃料の製造量と、廃棄物の収集量をそれぞれ決定し、それぞれの端末131,134,135に園芸作物の生産量情報、ごみ固形燃料の製造量情報、廃棄物の収集量情報を同時期に送信することで、生産委託者A1からの要求にあわせて、園芸作物生産者A2は園芸作物を無駄なく計画的に生産し、また、固形燃料製造者A3は園芸作物の生産に必要なごみ固形燃料を無駄なく計画的に製造し、また、廃棄物収集者A4はごみ固形燃料の製造に必要な廃棄物を計画的に収集することができる。
【0052】
そして、これにより、廃棄物収集者A4はごみ固形燃料の製造に必要な廃棄物を安定して固形燃料製造者A3に供給し、固形燃料製造者A3はごみ固形燃料を安定して園芸作物生産者A2に供給し、園芸作物生産者A2は園芸作物を安定して生産委託者A1に出荷することができる。かかる生産管理システムを1年を通して運用することにより、重油等よりも値段の安価なごみ固形燃料を熱源として、1年を通して園芸作物を計画的に生産し安定して生産委託者に出荷できると共に、ごみ固形燃料の消費拡大を図ることができる。
【0053】
管理コンピュータ140は、図3に示すように、生産委託者A1のコンピュータ133から廃棄物発生情報を受信すると共に、同廃棄物発生情報を廃棄物収集者A4のコンピュータ135に転送することができる。ここで廃棄物発生情報には、生産委託者、廃棄物の種類、発生量、発生時期等の情報が含まれる。廃棄物収集者A4のコンピュータ135は、廃棄物発生情報を受信すると、既に受信した廃棄物の必要量情報に廃棄物発生情報を加えて、収集計画プログラムに従い、廃棄物の収集計画を生成するか既に生成した収集計画を更新できる。
【0054】
生産委託者A1からの廃棄物発生情報を廃棄物収集者A4のコンピュータ135に転送することで、生産委託者A1から排出される廃棄物を廃棄物収集者A4が確実に回収し、ごみ固形燃料として再生産し、これを生産委託者A1が生産委託する作物の生産に利用することができ、資源の循環を図ることができる。
【0055】
管理コンピュータ140は、複数の生産委託者A1のコンピュータ133・・・、複数の園芸作物生産者A2のコンピュータ131・・・、複数の固形燃料製造者A3のコンピュータ134・・・、複数の廃棄物収集者A4のコンピュータ135・・・と、それぞれ通信ネットワーク141を介して結ぶことができる。これにより、管理コンピュータ140は、生産委託者A1の生産委託情報に含まれる地区情報に基づき、最寄の園芸作物生産者A2、固形燃料製造者A3,廃棄物収集者A4を選定し、各情報を発信することができる。例えば、生産委託者が北海道地区であれば北海道地区内の、生産委託者が九州地区であれば九州地区内の園芸作物生産者A2、固形燃料製造者A3,廃棄物収集者A4に各情報を発信し、効率よく生産計画を立てることができる。そして、地域の実情に合わせて、各地区内で資源を循環させることができる。
【0056】
以上説明したように、本発明に係る生産管理システムS2は、管理コンピュータ140および通信ネットワーク141を利用して、園芸作物を計画的に生産し、また、園芸作物の加温に用いるごみ固形燃料を計画的に製造供給して計画的に消費し、資源を循環させることにより、資源循環型社会に資するシステムとして大いに役立つことができる。また、本発明に係る加温システムS1は、施設園芸用を目的とするが、これに限らず、例えば養殖鰻などの水産業向けや温水プールなどの他の用途に幅広く適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る加温システムは、ごみ固形燃料を用いる加温システムとして幅広く利用可能であり、また、本発明に係る園芸作物の生産管理システムは、管理コンピュータを用いて園芸作物を計画的に生産できる管理システムとして幅広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態を示す施設園芸用加温システムの全体構成図、
【図2】図1の施設園芸用加温システムに用いるコンピュータの構成図、
【図3】園芸作物の生産管理システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0059】
100 施設園芸用ハウス
101 室内温度センサー
102 外気温度センサー
110 加温機
111 加温機本体
112 燃焼室
113 熱交換部
114 投入部
115 着火部
116 供給ダクト
117 煙突
120 供給手段
121 RDF貯留タンク
122 RPF貯留タンク
123,124 搬送コンベア
125,126 排出量調整部
130 制御手段
131,133,134,135 コンピュータ(端末)
132,141 通信ネットワーク
140 管理コンピュータ
S1 施設園芸用加温システム
S2 園芸作物の生産管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設園芸用ハウスと加温機を備え、加温機の燃焼室で燃料を燃焼させて熱を発生させ、発生した熱により温風又は温水を生成し、生成した温風又は温水を施設園芸用ハウスに供給してハウス内を加温するようにした施設園芸用加温システムにおいて、加温機の燃焼室に供給する燃料としてRDFとRPFの混合燃料を用い、制御手段により、加温条件に応じてRDFとRPFの混合割合を変化させることを特徴とする施設園芸用加温システム。
【請求項2】
制御手段により加温条件に応じて設定された混合割合でRDFとRPFを加温機の燃焼室に供給する供給手段を備えることを特徴とする請求項1記載の施設園芸用加温システム。
【請求項3】
供給手段は、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクと、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクからRDFおよびRPFを加温機の投入部へ向けて搬送する搬送手段を有し、RDF貯留タンクおよびRPF貯留タンクの各下部には、制御手段により設定された混合割合となるようにRDFとRPFの排出量を調整する調整部が設けられていることを特徴とする請求項2記載の施設園芸用加温システム。
【請求項4】
制御手段は、加温条件に対応してRDFとRPFの混合割合を変化させるモードとして、基準モード、RPF重視モード、RDF重視モードを備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の施設園芸用加温システム。
【請求項5】
基準モードは、RDFとRPFの混合割合が50:50に設定されていることを特徴とする、請求項4記載の施設園芸用加温システム。
【請求項6】
RPF重視モードは、RPFの混合割合が50%超とされ、制御手段のコンピュータの入力部から、RDFとRPFの混合割合を5:95〜45:55の範囲で設定可能とされていることを特徴とする、請求項4記載の施設園芸用加温システム。
【請求項7】
RDF重視モードは、RPFの混合割合が50%未満とされ、制御手段のコンピュータの入力部から、RDFとRPFの混合割合を55:45〜95:5の範囲で設定可能とされていることを特徴とする、請求項4記載の施設園芸用加温システム。
【請求項8】
制御手段は、加温条件に対応してRDFとRPFの混合割合を変化させるモードとして、さらに自動設定モードを備え、自動設定モードは、施設園芸用ハウスの内外に設けられた温度センサーに基づき、制御手段が、RDFとRPFの混合割合を自動設定可能とされていることを特徴とする、請求項4記載の施設園芸用加温システム。
【請求項9】
加温機は重油又は灯油を主燃料とし、RDFとRPFの混合燃料を補助燃料に用いることを特徴とする、請求項1記載の施設園芸用加温システム。
【請求項10】
コンピュータ・ネットワークを用いた廃棄物のリサイクル管理システムにおいて、
管理コンピュータを備え、管理コンピュータが、園芸作物の生産委託者の端末、委託された園芸作物を施設園芸ハウス内で生産する園芸作物生産者の端末、施設園芸ハウスの加温用燃料として供給するごみ固形燃料を製造する固形燃料製造者の端末、ごみ固形燃料の原料となる廃棄物を収集する廃棄物収集者の端末と、それぞれ通信ネットワークを介して結ばれ、
管理コンピュータは、生産委託者の端末からの生産委託情報に基づき、園芸作物生産者が生産する園芸作物の生産量と、固形燃料製造者が製造するごみ固形燃料の製造量と、廃棄物収集者が収集する廃棄物の収集量をそれぞれ決定し、それぞれの端末に園芸作物の生産量情報、ごみ固形燃料の製造量情報、廃棄物の収集量情報を送信し、
園芸作物生産者の端末は、受信した園芸作物の生産量情報に基づき、園芸作物の生産計画を生成し、
固形燃料製造者の端末は、受信した固形燃料の製造量情報に基づき、ごみ固形燃料の製造計画を生成し、
廃棄物収集者の端末は、受信した廃棄物の収集量情報に基づき、廃棄物の収集計画を生成する、
ことを特徴とする、コンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システム。
【請求項11】
管理コンピュータが、生産委託者の端末から廃棄物発生情報を受信すると共に、同廃棄物発生情報を廃棄物収集者の端末に転送し、
廃棄物収集者の端末が、受信した廃棄物の必要量情報および廃棄物発生情報に基づき、廃棄物の収集計画を生成する、
ことを特徴とする、請求項10記載のコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システム。
【請求項12】
固形燃料製造者はごみ固形燃料としてRDFとRPFを製造し、RDFとRPFを一定の割合で混合した混合燃料を園芸作物生産者に供給することを特徴とする、請求項10又は請求項11記載のコンピュータ・ネットワークを用いた園芸作物の生産管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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