説明

ごみ熱処理炉のごみ投入量制御方法

【課題】ごみ処理量の規制値および届出値の遵守の観点からなされたものであり、ごみ処理量の規制値および届出値を遵守しつつ、燃焼又はガス化を適正に維持できるごみ熱処理炉のごみ投入量制御方法を提供する。
【解決手段】実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値と異なる場合には、目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、実際投入量瞬時値および実際投入量積算値を導出した時刻から所定時間が経過する時刻までの時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出し、該上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給塵装置によりごみ熱処理炉へごみを投入するごみの量を制御するごみ投入量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ごみ焼却炉やごみガス化溶融炉等、ごみ熱処理炉におけるごみの焼却又はガス化処理によって発生する熱エネルギーの回収への関心が高まってきており、ボイラ発電設備が設置されたごみ焼却炉やガス化溶融炉が増加し、高い効率での熱回収を実現できる燃焼運転が要求されている。一方、ごみ焼却炉等から大気中に放出される環境汚染物質の規制が厳しくなるに従い、ダイオキシン類や窒素酸化物など燃焼由来の有害物質の排出を低減する燃焼運転も必要とされている。
【0003】
このように、ごみ焼却炉等に高度な燃焼運転制御が望まれているため、自動燃焼制御装置によって上述の要求を満たす運転制御が行われている。自動燃焼制御装置では、例えばストーカ式焼却炉の場合、操作量である給塵速度、燃焼火格子送り速度、燃焼空気量及び冷却空気量などを制御することにより、蒸気発生量を安定化させ、かつ排ガス中のダイオキシン類や窒素酸化物の濃度を低く抑え、灰中の未燃成分を少なくすべくごみが安定して燃焼するように運転されている。
【0004】
特許文献1には、ごみ焼却炉の燃焼制御機構において、給塵機構によってごみ焼却炉内にごみを投入される量を、焼却炉内のごみの燃焼発熱量に対して目標発熱量を設定して制御する給塵量制御手段を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ごみ熱処理炉の操業においては、様々な法律、条例による規制値を遵守するとともに、ごみ焼却設備の建設や運転の申請時の届出値を遵守する必要がある。例えば、規制値としては、排ガス中の一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、ダイオキシンなどの有害物質濃度の排出規制値、焼却灰中のダイオキシン濃度や重金属溶出濃度などがある。また、届出値としてはごみ焼却設備のごみ処理能力、排ガス量、排水量などがある。これらの規制値および届出値を遵守して操業できているか否かは毎日の操業日報等に記録され、管理されている。これらの規制値および届出値を逸脱した場合には、操業方法の改善、設備の改造、改造内容によっては届出値の変更などの対策が必要となる。
【0007】
一般に、ごみ熱処理炉においては、「基準ごみ質」、「低質ごみ質」、「高質ごみ質」等の設計基準ごみ質が設定され、ごみ熱処理炉はその設計基準ごみ質の範囲で最高性能を発揮するように設計される。換言すれば、この範囲を逸脱したごみを処理する場合には規制値および届出値を逸脱する可能性がある。ここで「ごみ質」とは、主としてごみの組成(可燃分/水分/灰分の3成分、化学分析によるC/H/O/Sなどの比率)と焼却時の発熱量で表される。
【0008】
ごみ熱焼却炉の設計は、焼却炉の単位容積単位時間あたりの焼却熱量である燃焼室負荷および焼却炉の単位火格子面積単位時間あたりの焼却熱量である炉床負荷を基本とし、完全燃焼する温度を維持できるように焼却炉の形状・寸法を決定することで行われる。したがって、焼却炉への単位時間当たりの投入熱量を設計範囲内に維持することで各種の規制値および届出値を満足する操業が可能になる。ところが、ごみの組成や発熱量は一定ではなく、設計基準ごみ質からしばしば逸脱する。このようなごみに対しても規制値および届出値を満足する操業を行うことが要望されている。
【0009】
特許文献1など従来技術は、焼却炉への投入熱量の適正化(設計燃焼室負荷、炉床負荷への一定化)を行っているものであるが、該投入熱量は、単位重量あたりの発熱量にごみの投入重量を乗じて算出されるので、極度に発熱量の高いごみに適用した場合には投入量が減少することになる。逆に、極度に発熱量の低いごみに適用した場合には投入量が増大することになる。
【0010】
上記特許文献1のように焼却炉への投入熱量を適正化することは、主として排ガスや焼却灰中の有害物質の低減に有効であるが、上述したように、規定される処理能力に関しては、単位時間あたりの投入重量を管理する操業に比べて変動が大きくなる。
【0011】
規制値および届出値の遵守という観点において、発熱量の高いごみに対して処理重量が低下することは特に問題とならないが、発熱量の低いごみに対して処理重量が増大することは、規制値および届出値からの逸脱という問題を生ずる。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みて、ごみ処理量の規制値および届出値の遵守の観点からなされたものであり、ごみ処理量の規制値および届出値を遵守しつつ、燃焼又はガス化を適正に維持できるごみ熱処理炉へのごみ投入量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るごみ投入量制御方法は、給塵機によりごみ熱処理炉へ投入するごみの量を制御するためのものである。
【0014】
かかるごみ投入量制御方法において、本発明は、所定時間でのごみ処理量の目標値である目標処理量および該目標処理量の許容範囲を設定するとともに、該目標処理量を上記所定時間で除して算出した単位時間当たりのごみ投入量を目標投入量瞬時値として設定する設定工程と、上記給塵機の給塵速度を計測して、予め求められた給塵速度と単位時間当たりのごみ投入量である投入量瞬時値との関係および計測した給塵速度に基づいて、該投入量瞬時値の実際値である実際投入量瞬時値を導出した後、該実際投入量瞬時値の積算値である実際投入量積算値を導出する実際値導出工程と、上記実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値と異なる場合には、上記目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから上記実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、実際投入量瞬時値および実際投入量積算値を導出した時刻から上記所定時間が経過する時刻までの時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出し、該上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う制御工程とを有していることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、実際投入量瞬時値が投入量瞬時値の上限値と下限値との間の範囲内に収まるように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行うことにより、所定時間経過時において、実際投入量積算値が目標処理量の許容範囲内に収まる。したがって、目標処理量の許容範囲をごみ処理量の規制値および届出値が遵守される範囲として設定しておくことにより、規制値および届出値の遵守が可能となる。また、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行うことにより、熱処理炉内へのごみ投入量が安定化され、燃焼やガス化が適正に維持される。
【0016】
制御工程では、熱処理炉内温度を計測し、計測した熱処理炉内温度が所定範囲外の温度である場合には、熱処理炉内温度が該所定範囲内の温度となるように、給塵速度を調整して、さらにごみ投入量の制御を行うことが好ましい。
【0017】
このように、熱処理炉内温度を所定範囲内の温度となるように給塵速度を調整することにより、該熱処理炉内温度が所定範囲内で維持され、この結果、より確実に排ガスや焼却灰中の有害物質を低減させることができる。
【0018】
本発明によれば、ごみ処理量の規制値および届出値を遵守しつつ、燃焼又はガス化を適正かつ安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るごみ焼却炉およびごみ投入部を示す図である。
【図2】実際投入量瞬時値が目標処理量の許容範囲の上限値を上回っている場合におけるごみ投入量の制御を説明する図である。
【図3】実際投入量瞬時値が目標処理量の許容範囲の下限値を下回っている場合におけるごみ投入量の制御を説明する図である。
【図4】実施例におけるごみ投入量制御によるごみ投入量の時間推移を示す図である。
【図5】実施例における実際投入量瞬時値と焼却炉内温度の時間推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るごみ投入量制御方法の実施形態を説明する。
【0021】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係るごみ焼却炉1および該ごみ焼却炉1にごみを投入するごみ投入部2を示す図である。本実施形態に係るごみ焼却炉1は火格子式焼却炉であり、同図に示されるように、炉内に投入されたごみを焼却するための火格子1Aが炉内下部に設けられている。また、該ごみ焼却炉1には、焼却炉内温度を複数箇所で計測する炉内温度計測装置(図示せず)が設けられている。
【0022】
ごみ投入部2は、ごみピット(図示せず)に貯留されているごみを掴んで搬送するクレーン3と、該クレーン3により搬送されたごみを上方から受けるホッパ4と、該ホッパ4の上方に位置し該ホッパ4内のごみ層の高さを計測するごみ高さ計測装置5と、ホッパ4に投入されたごみの下方への通過を許容するシュート6と、該シュート6の下方に位置し該シュート6からのごみを受け水平方向でのプッシャー7Aの往復運動により該ごみをごみ焼却炉1内に押し出して投入する給塵機7と、プッシャー7Aの移動速度、換言すればプッシャー7Aによる給塵速度を計測する給塵速度計測装置8と、該給塵速度計測装置8によって計測された給塵速度に基づいて、後述するように給塵速度を調整することによりごみ焼却炉1へのごみ投入量を制御する制御装置9とを備えている。
【0023】
このような構成のごみ投入部2では、まず、クレーン3がごみピットに貯留されたごみを搬送してホッパ4内に投入する。本実施形態では、クレーン3には掴み上げたごみの重量を計測するための重量計(図示せず)が設けられており、ごみがホッパ4に投入される前に、該重量計により該ごみの重量が計測される。クレーン3によりホッパ4に投入されたごみはシュート6を通って給塵機7内へ送られて、プッシャー7Aによって焼却炉1内へ投入される。そして、ごみ焼却炉1内では投入されたごみが火格子1A上で焼却される。
【0024】
図1に示されているように、プッシャー7Aは、距離Sのストロークをもって往復運動している。該プッシャー7Aの往復運動は繰り返されており、該プッシャー7Aの1回の押出し時における移動速度が速いほど単位時間当たりの往復運動、換言すれば押し出し移動の回数が多くなり、ごみ焼却炉1内へのごみの投入量が多くなるという関係が成り立っている。したがって、プッシャーの移動速度、すなわち給塵速度を調整することにより、ごみ焼却炉1内へのごみの投入量を制御することができる。
【0025】
以下、ごみ焼却炉1を操業する場合において、1日(0時〜24時)にわたる給塵速度の制御について説明する。以下、該給塵速度の制御を「相関関係テーブル作成工程」、「設定工程」、実際値導出工程」、「制御工程」の四つの工程に分けて説明する。
【0026】
(1)相関関係テーブル作成工程
後述するように、制御装置9は、プッシャー7Aによる給塵速度と単位時間当たりのごみ焼却炉1へのごみ投入量である投入量瞬時値との関係をテーブル(以下、「相関関係テーブル」という)として予め保持しており、該テーブルを用いて給塵速度の制御を行う。したがって、ごみ焼却炉1の操業に先立って、まず、上記相関関係テーブルを作成する。
【0027】
上記相関関係テーブルは、次のようにして作成される。まず、クレーン3がごみをホッパ4へ投入するごとに、該クレーン3の重量計によりごみ重量を計測する。次に、ごみ高さ計測装置5によってホッパ4内のごみ層上面の高さを計測しておくことにより、該高さの上昇分(図1における寸法h)を導出する。そして、ホッパ4内のごみ層上面の高さ上昇分にホッパ断面積を乗じて該ホッパ4内に投入されるごみの体積を計算し、ごみ重量をごみ体積で除してごみかさ密度を算出する。
【0028】
次に、給塵機7のプッシャー7Aの給塵速度を給塵速度計測装置8によって計測する。また、該プッシャー7Aの1回の押出し移動によりシュート6内のごみが焼却炉1内へ投入されたときのホッパ4内におけるごみ層上面の高さをごみ高さ計測装置5によって計測しておくことにより、該高さの低下分を導出する。そして、該低下分にホッパ断面積を乗じることにより、プッシャー7Aの1回の押出し移動によりごみ焼却炉1内へ投入されるごみの体積を求める。次に、該体積に上記ごみかさ密度を乗じて、プッシャー7Aの1回の押出し移動によりごみ焼却炉1内へ投入されるごみ投入重量を算出する。そして、該ごみ投入重量をプッシャー7Aの1回の押出し移動時間で除して、単位時間当たりのごみ投入量を投入量瞬時値として求める。この結果、給塵速度と投入量瞬時値との関係が導出される。
【0029】
上述した給塵速度と投入量瞬時値との関係は、種々の給塵速度について、また、種々のごみかさ密度のごみについて導出されている。これらの導出された関係は、制御装置9によってテーブルとして予め保持される。
【0030】
(2)設定工程
所定時間、すなわち1日でのごみ処理量の目標値である目標処理量および該目標処理量の許容範囲を設定する。通常、上記目標処理量として、届出した届出値(定格焼却能力)t/日が設定される。また、上記許容範囲は、1日の終了時における目標処理量に対して規定値および届出値の遵守という観点から許容し得る増減量を加えた範囲として設定される。そして、該目標処理量を1日の時間(24時間)で除して算出した単位時間当たりのごみ投入量を目標投入量瞬時値として設定する。
【0031】
(3)実際値導出工程
既述したように、給塵機7のプッシャー7Aの移動速度、すなわち給塵速度は給塵速度計測装置8によって計測される。制御装置9は、上記相関関係作成テーブルで作成され予め保持している相関関係テーブルおよび計測された給塵速度に基づいて、計測された給塵速度およびごみ焼却炉1内へ投入されるごみのごみかさ密度に応じた投入量瞬時値の実際値である実際投入量瞬時値を導出する。ここで、単位時間とは、例えば、1時間や1分等、所定間隔で区切られた時間をいう。さらに、制御装置9は、ごみ投入量制御の開始時(0時)からの上記実際投入量瞬時値の積算値である実際投入量積算値を導出する。
【0032】
(4)制御工程
上記実際値導出工程で導出された実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値と異なる場合には、目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、実際投入量瞬時値および実際投入量積算値を導出した時刻から24時間が経過する時刻までの時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出する。そして、該上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う。
【0033】
本実施形態では、上述のごみ投入量の制御は、実測投入積算値が目標投入量瞬時値の積算値である目標投入量積算値の上限値を所定量以上上回った時点、あるいは実測投入積算値が目標投入量積算値の下限値を所定量以上下回った時点に行われる(図2および図3参照)。ごみ投入量の制御が行われるタイミングはこれに限られず、例えば、例えばプッシャー7Aが押出移動する時点等、予め定められた適当な時間間隔に制御が行われてもよい。
【0034】
上記実際値導出工程で導出された実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値と異なる一例として、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値を上回っている場合について図2を用いて説明する。図2は、横軸を時間、縦軸をごみ投入量としたグラフであり、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値を上回っていることにより、時刻Tにおいて、実際投入量積算値が目標投入量瞬時値の積算値である目標投入量積算値の上限値を上回っている状態が示されている。この場合、24時(ごみ投入量制御の終了時)における目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから時刻Tにおける実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、実際投入量瞬時値および実際投入量積算値を導出した時刻Tから24時までの時間、すなわち残時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出する。図2では、算出された投入量瞬時値の積算値である投入量積算値の上限値および下限値が一点鎖線で示されている。
【0035】
そして、算出された投入量瞬時値の上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、換言すると、投入量積算値の上限値および下限値の間の範囲内(図2において一点鎖線同士の間の範囲内)に実際投入量積算値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う。
【0036】
上記実際値導出工程で導出された実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値と異なる他の例として、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値を下回っている場合について図3を用いて説明する。図3も、図2と同様に、横軸を時間、縦軸をごみ投入量としたグラフであり、時刻Tにおいて、実際投入量積算値が目標投入量瞬時値の積算値である目標投入量積算値の下限値を下回っている状態が示されている。この場合も、24時(ごみ投入量制御の終了時)における目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから時刻Tにおける実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、残時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出する。図3では、算出された投入量瞬時値の積算値である投入量積算値の上限値および下限値が破線で示されている。
【0037】
そして、図2で示した例と同様に、算出された投入量瞬時値の上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、換言すると、投入量積算値の上限値および下限値の間の範囲内(図3において破線同士の間の範囲内)に実際投入量積算値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う。
【0038】
このように、本実施形態では、実際投入量瞬時値が投入量瞬時値の上限値と下限値との間の範囲内に収まるように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行っているので、ごみ投入量制御の終了時において、実際投入量積算値を目標処理量の許容範囲内に収めることができる。また、本実施形態のように、ごみ処理量の規制値および届出値が遵守される範囲を目標処理量の許容範囲として設定しておくことにより、規制値および届出値の遵守が可能となる。さらに、本実施形態では、実際投入量瞬時値が目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行っているので、焼却炉内へのごみ投入量が安定化され、燃焼が適正に維持される。
【0039】
<第二実施形態>
本実施形態は、計測された給塵速度に基づくごみ投入量の制御に加え、さらに、ごみ焼却炉内の温度に基づくごみ投入量の制御を行う点で、計測された給塵速度の基づくごみ投入量の制御のみを行い、ごみ焼却炉内の温度に基づくごみ投入量の制御を行わない第一実施形態と異なっている。本実施形態では、第一実施形態と異なる点、すなわち、ごみ焼却炉内の温度に基づくごみ投入量の制御を中心に説明する。
【0040】
上記ごみ焼却炉内の温度に基づく制御は、計測された給塵速度に基づくごみ投入量の制御と同時に行われる。本実施形態では、排ガスや焼却灰中の有害物質を低減させるのに十分な炉内温度の範囲が予め設定されている。この温度範囲のデータは、制御装置9によって保持されている。
【0041】
まず、ごみ焼却炉1に設けられた炉内温度計測装置(図示せず)によって複数個所で炉内温度を計測する。制御装置9は、計測された炉内温度(以下、「計測温度」という)と予め設定された上記温度範囲とを比較し、計測温度が該温度範囲外の温度である場合には、炉内温度が該温度範囲内の温度となるように、給塵速度を調整して、さらにごみ投入量の制御を行う。
【0042】
具体的には、制御装置9は、炉内温度が上記温度範囲の下限値より低い場合にはごみ投入量を増やすために給塵速度を増加し、焼却炉内温度が所定範囲の上限値より高い場合にはごみ投入量を減らすために給塵速度を減少するように調整する。
【0043】
本実施形態では、炉内温度が予め設定された上記温度範囲の温度となるようにごみ投入量の制御が行われるので、焼却炉内温度が該温度範囲内で維持されることにより、排ガスや焼却灰中の有害物質の低減をより確実に実現できる。
【実施例】
【0044】
本発明の実施例として、第二実施形態で説明したごみ投入量の制御方法を処理能力315t/日のごみ焼却炉に適用した実施例について説明する。図4は、実際投入量積算値の時間推移を表した図である。同図では、ごみ投入量の制御を開始してからの時間を横軸、ごみ投入量を縦軸としており、実線が実際投入量積算値を表し、破線が目標投入量積算値を表す。図5は、実際投入量瞬時値と焼却炉内温度の時間推移を表した図である。
【0045】
図4に示されるように、0:00〜8:00の間は実際投入量積算値が目標投入量を上回るペースで推移し、8:00に給塵速度を調整してごみ投入量を減少した。この結果、図5に示されているように、ごみ投入量瞬時値が12.5t/h程度に低下した。15:00には実際投入量積算値が目標投入量を下回っており、15:00に給塵速度を調整してごみ投入量を増加した。この結果、図5に示されるように、ごみ投入量瞬時値が13t/h程度に上昇した。20:00には実際投入量積算値が目標投入量を下回っており、20:00に給塵速度を調整してごみ投入量をさらに増加した。この結果、図5に示されるように、ごみ投入量瞬時値が13.5t/h程度に上昇した。そして、24:00には実際投入量積算値が目標投入量と一致しており、1日の実績ごみ処理量を目標処理量に合わせることができた。
【0046】
また、図5に示されているように、ごみ焼却炉内の温度は、ごみ投入量瞬時値が12.5t/h程度に減少された8:00から15:00でも、1000℃程度を維持しており、焼却炉の燃焼状態が良好に維持されていることが確認できた。
【符号の説明】
【0047】
1 ごみ焼却炉
2 ごみ投入部
3 クレーン
4 ホッパ
5 ごみ高さ計測装置
6 シュート
7 給塵機
7A プッシャー
8 給塵速度計測装置
9 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給塵機によりごみ熱処理炉へ投入するごみの量を制御するごみ投入量制御方法において、所定時間でのごみ処理量の目標値である目標処理量および該目標処理量の許容範囲を設定するとともに、該目標処理量を上記所定時間で除して算出した単位時間当たりのごみ投入量を目標投入量瞬時値として設定する設定工程と、上記給塵機の給塵速度を計測して、予め求められた給塵速度と単位時間当たりのごみ投入量である投入量瞬時値との関係および計測した給塵速度に基づいて、該投入量瞬時値の実際値である実際投入量瞬時値を導出した後、該実際投入量瞬時値の積算値である実際投入量積算値を導出する実際値導出工程と、上記実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値と異なる場合には、上記目標処理量の許容範囲の上限値及び下限値のそれぞれから上記実際投入量積算値を差し引いたごみ重量を、実際投入量瞬時値および実際投入量積算値を導出した時刻から上記所定時間が経過する時刻までの時間で除して投入量瞬時値の上限値および下限値を算出し、該上限値と下限値との間の範囲内に実際投入量瞬時値が収まるように、かつ、実際投入量瞬時値が上記目標投入量瞬時値に近づくように給塵速度を調整してごみ投入量の制御を行う制御工程と、を有していることを特徴とするごみ投入量制御方法。
【請求項2】
制御工程にて、熱処理炉内温度を計測し、計測した熱処理炉内温度が所定範囲外の温度である場合には、熱処理炉内温度が該所定範囲内の温度となるように、給塵速度を調整して、さらにごみ投入量の制御を行うこととする請求項1に記載のごみ投入量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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