説明

ささり防止構造

【課題】本発明は、扱室内の脱穀物の持ち回りを防止して、穀粒の回収率の向上を図ることができる、ささり防止構造を提供する。
【解決手段】扱室内において軸線回りに回転駆動される扱胴本体及び扱胴本体の外表面に設けられた扱歯を有する扱胴と、穀稈の穂先側が扱室内に突入した状態で扱胴の軸線方向に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン装置と、扱室の下方に受網を介して配置された選別部とを備え、扱胴によって穀稈から脱穀された穀粒を含む脱穀物を受網を介して選別部へ流下させるように構成されたコンバインに適用されるささり防止構造であって、扱歯が穀稈に対して上方から下方へ移動するように軸線回りに回転駆動される扱胴本体の回転方向とは反対方向を向いた風を送風するささり防止ファンが設けられている。このささり防止ファンとしては、横断流ファンが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室内で脱穀物の持ち回りを防止し、穀粒の回収率を高めることができるコンバインのささり防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、扱室内において軸線回りに回転駆動される扱胴本体及び扱胴本体の外表面に設けられた扱歯を有する扱胴と、穀稈の穂先側が扱室内に突入した状態で扱胴の軸線方向に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン装置と、扱室の下方に受網を介して配置された選別部とを備え、扱胴の回転によって穀稈から脱穀された穀粒を含む脱穀物を前記受網を介して選別部へ流下させるように構成されたコンバインが知られている。
かかるコンバインは、扱歯を有する扱胴の回転によって、穀稈の穂先を脱穀する。脱穀された脱穀物は、受網を通じて選別部に流れ、そこで穀粒が選別される。
【0003】
ところで、上記扱室に於いて、穀稈を脱穀する扱歯が、扱胴の回転に伴って脱穀物を持ち回り、該持ち回った脱穀物が穀稈の株元に刺さるという、いわゆる「ささり粒」が発生する。このささり粒は、排藁と一緒に排出されるので、その改善が求められる。
このささり粒の発生を抑制するため、穀稈を搬送する流路の上方位置にささり防止体を配設したコンバインのささり防止構造が提案されている(特許文献1の[0030]及び図3等)。
該ささり防止構造は、扱歯が脱穀物を持ち回ることを防止して、ささり粒の発生を抑制できるので好ましいものである。
【0004】
しかしながら、上記従来のささり防止構造は、ささり防止体が穀稈の流路の上方位置に設けられている。このため、ささり防止体によって持ち回りを防止された脱穀物は、該流路に搬送されてくる穀稈の上に落ち、該穀稈の上に落ちた脱穀物は、脱穀済みの穀稈と共に排出されるおそれがある。従って、上記ささり防止構造では、持ち回り防止された脱穀物を、確実に選別部へと導くことができない。
【0005】
また、フィードチェーンの上方に送風ファンが設けられた脱穀装置が提案されている(特許文献1)。かかる脱穀装置は、送風ファンによって、フィードチェーンで搬送されてくる穀稈の株元から穂先に向かって風を送ることにより、穀稈に整流作用を働かせ、穂切れ粒や刺さり粒を低減することができる。
しかしながら、該脱穀装置は、送風ファンによって穀稈に向かって風を送るので、風によって送られた脱穀物が穀稈に刺さり、脱穀済みの穀稈と共に排出されるおそれがある。
【特許文献1】特開2001−120044号公報
【特許文献2】特開2004−097164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、扱室内の脱穀物の持ち回りを防止して、穀粒の回収率の向上を図ることができる、ささり防止構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手段は、扱室内において軸線回りに回転駆動される扱胴本体及び扱胴本体の外表面に設けられた扱歯を有する扱胴と、穀稈の穂先側が前記扱室内に突入した状態で前記扱胴の軸線方向に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン装置と、扱室の下方に受網を介して配置された選別部とを備え、扱胴によって穀稈から脱穀された穀粒を含む脱穀物を受網を介して選別部へ流下させるように構成されたコンバインに適用されるささり防止構造であって、扱歯が穀稈に対して上方から下方へ移動するように軸線回りに回転駆動される扱胴本体の回転方向とは反対方向を向いた風を送風するささり防止ファンが設けられているささり防止構造を提供する。
【0008】
上記ささり防止構造は、扱胴本体の回転方向とは反対方向を向いた風を送風するささり防止ファンが設けられているので、扱胴の回転によって持ち回される脱穀物の移動方向に対向して風が吹き付けられる。該風に乗って脱穀物は搬送されるので、扱胴の回転による脱穀物の持ち回りを確実に防止できる。また、該ささり防止ファンの風が、回転してくる扱歯に当たるため、扱歯に刺さっている脱穀物も抜けやすくなる。そして、ささり防止ファンの送風によって持ち回り防止された脱穀物は、受網を介して選別部へと導かれ、選別処理される。
【0009】
本発明の好ましい態様は、上記ささり防止ファンは、軸線方向が扱胴の軸線方向と略平行とされた横断流ファンとされており、横断流ファンは、扱胴を基準にしてフィードチェーン装置とは反対側へ向いた風を送風し得るように、扱胴の軸線を通る仮想水平面より上方に配置されている上記ささり防止構造を提供する。
【0010】
上記ささり防止構造のささり防止ファンは、扱胴を基準にしてフィードチェーン装置とは反対側へ向いた風を送風し得るように、扱胴の軸線を通る仮想水平面より上方に配置されているので、ささり防止ファンの風で持ち回り防止された脱穀物を、フィードチェーン装置と反対側へ飛ばすことができる。
従って、持ち回り防止された脱穀物が、フィードチェーン装置によって搬送される穀稈と接触する虞がなく、該脱穀物が穀稈に刺さって排出されることを防止できる。
【0011】
さらに、本発明の好ましい態様は、上記横断流ファンは、外気を吸い込むように吸込側が扱室の上外方へ連通され且つ吐出側が扱室内に連通されている上記ささり防止構造を提供する。
【0012】
上記ささり防止構造の横断流ファンは、外気を吸い込んで扱室内へと風を送る構成とされているので、横断流ファンの駆動負荷を低減できる。すなわち、扱室内は、扱胴の回転によって扱胴の回転方向に気流が生じている。このため、該扱室内の空気を取り込み且つ扱胴の回転方向とは反対方向に送風するようにファンを構成した場合には、該ファンとして大きな駆動力を有するものを用いなければならない。この点、上記好ましい態様のように外気を取り込む構成とすることにより、扱胴の回転方向とは反対方向に送風する横断流ファンの駆動負荷を低減でき、横断流ファンの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様は、上記横断流ファンは、駆動源から扱胴へ至る伝動経路から分岐された動力によって駆動されるように構成されており、脱穀機枠は上方が開口とされており、コンバインは、脱穀機枠の上方開口と側方開口のうち少なくともフィードチェーン装置より上方に位置する部分とを覆う扱室カバーであって、扱胴の軸線方向に平行な枢支軸回り回動可能に脱穀機枠に連結された扱室カバーを備え、扱室カバーには、該扱室カバーを閉塞位置に位置させた際に横断流ファンを囲繞する開口が設けられている上記ささり防止構造を提供する。
【0014】
上記ささり防止構造の横断流ファンは、駆動源から扱胴へ至る伝動経路から分岐された動力によって駆動されるように構成されているので、横断流ファン用に別個の駆動源を設ける必要がない。さらに、上記ささり防止構造は、扱室カバーに、該扱室カバーを閉塞位置に位置させた際に横断流ファンを囲繞する開口が設けられているので、扱室カバーと横断流ファンが分離されている。従って、扱室カバーの開閉時、扱室カバーと共に横断流ファンが移動せず、横断流ファンに接続する伝達駆動機構などを固定化することができる。
【0015】
さらに、本発明の好ましい態様は、上記扱室には、横断流ファンによって風搬送された脱穀物を、受網をバイパスして選別部へ案内する回収用通路が設けられている上記ささり防止構造を提供する。
【0016】
上記ささり防止構造は、脱穀物を選別部へ案内する回収用通路が設けられているので、横断流ファンの送風によって搬送される脱穀物を、選別部へ導くことができる。
また、上記ささり防止構造の回収用通路は、脱穀物を受網をバイパスして選別部へ案内するように構成されているので、受網に脱穀物が多量に滞留することを防止できる。従って、受網が、脱穀物などによって目詰まりする頻度を緩和できる。
【0017】
なお、上記コンバインは、扱室の少なくとも一部を形成する脱穀機枠であって、扱胴を挟んでフィードチェーンとは反対側に位置する側壁と、扱胴より穀稈搬送方向上流側に位置する上流側端壁と、扱胴より穀稈搬送方向下流側に位置する下流側端壁とを有し、少なくともフィードチェーン装置に近接する側の側方が開口とされた脱穀機枠を有し、受網は、フィードチェーン装置に近接する側において扱胴の軸線方向に延びる基端側エッジと、扱胴の軸線を通る仮想垂直面よりフィードチェーン装置から離間する側において扱胴の軸線方向に延びる先端側エッジとを有し、扱胴本体の下方において該扱胴本体の外表面に沿うように脱穀機枠の側方開口から該脱穀機枠に脱着可能に装着され、横断流ファンは、受網の先端側エッジより前記扱胴の回転方向下流側に配置されており、受網と側壁とに間に形成される回収用通路へ向けて風を送風するように構成されている上記ささり防止構造を有するものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るささり防止構造は、ささり防止体によって持ち回り防止された脱穀物を、ささり防止ファンによって、確実に選別部へと導くことができる。このため、本発明のささり防止構造を具備するコンバインは、穀粒の回収率を向上させることができる。特に、本発明に係るささり防止構造は、持ち回り防止された脱穀物を穀稈と共に排出されることを防止して、更に、穀粒の回収率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<一実施形態>
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
(コンバインの全体構成について)
図1及び図2に、本実施形態に係るささり防止構造250が適用されたコンバインAの側面図及び平面図を示す。
図1及び図2に於いて、コンバインAは、本機フレーム1と、本機フレーム1に支持された駆動源(図示せず)と、本機フレーム1の下方に配設され、且つ前記駆動源からトランスミッションを介して回転駆動される左右一対のクローラ式走行装置2と、本機フレーム1の前方において該本機フレーム1に昇降可能に支持された刈取装置10と、刈取装置10によって刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置100と、脱穀装置100によって脱穀及び選別された穀粒を収容するグレンタンク40と、脱穀装置100によって脱穀処理された後の排藁を後方へ搬送する排藁搬送装置50と、を備え、脱穀装置100に、ささり防止構造250が具備されている。
なお、刈取装置10が設けられている側が、コンバインAの進行方向である。方向を示す用語として、コンバインAの進行方向側を「前」又は「穀稈搬送方向上流側」、コンバインAの進行方向と反対側を「後」又は「穀稈搬送方向下流側」という場合がある。
【0020】
刈取装置10は、穀稈を刈り取る刈取部20と、刈取部20によって刈り取られた穀稈を脱穀装置100へ向けて搬送する搬送部30と、を備えている。
刈取部20は、引起ケース21a及び引起タイン21bを含む引起機構21と、引起ケース21aの下方部から前方へ突出された分草板22と、引起ケース21aの後方に配設された刈刃23と、を有している。
刈取装置10は、分草板22によって穀稈を分草し、その後部に立設された引起しケース21aから突出された引起タイン21bによって穀稈を引き起こし、刈刃23にて株元を刈り取るようにしている。
搬送部30は、上部搬送機構及び縦搬送機構を含み、刈り取られた穀稈の株元を脱穀装置100におけるフィードチェーン装置260へ受け継ぐように構成されている。フィードチェーン装置260によって搬送された穀稈は、後記に詳述する脱穀装置100にて脱穀選別される。脱穀装置100にて脱穀選別された穀粒は、グレンタンク40に収容される。
このグレンタンク40には、排出オーガ41及び縦オーガ42が設けられている。また、グレンタンク40の底部には、排出コンベア(図示せず)が前後方向に設けられ、この排出コンベアの後部は、縦オーガ42の下部に連通されている。そして、グレンタンク40に収容された穀粒は、排出コンベアから縦オーガ42及び排出オーガ41を通じて、排出オーガ41の先端部から排出される。
【0021】
他方、上記フィードチェーン装置260の後端には、排藁搬送チェーンを備える排藁搬送装置50が設けられている。さらに、排藁搬送チェーンの後部下方には、排藁カッター装置及び拡散コンベアなどを含む排藁処理部60が設けられている。排藁処理部60は、フィードチェーン装置260から受け渡された排藁を切断して藁片にした後、この藁片を拡散しながら圃場に均一放出し、或いは排藁を切断せずに放出するように構成されている。
【0022】
次に、脱穀装置100について説明する。
図3に、図2の脱穀装置100を前後方向で切断した参考断面図を示す。図4に、同脱穀装置100を前方側から視た図であって、これを前後方向に直交する方向で切断した参考正面図を示す。図5に、同脱穀装置100を上方側から視た平面図を示す。
脱穀装置100は、脱穀部200と、選別部400と、を有し、脱穀部200に、本発明のささり防止構造250が具備されている。
【0023】
(脱穀部について)
図3に於いて、脱穀部200は、扱胴230を収容する扱室210と、扱室210内に設けられ且つ上記駆動源によって作動的に回転駆動される扱胴駆動軸220と、扱胴駆動軸220に相対回転不能に支持された扱胴230と、扱胴230の下方側に設けられた受網240と、扱室210に設けられたささり防止構造250と、刈取装置10から受け継いだ刈取穀稈を穂先側が扱室210に突入した状態で扱胴230の軸線方向に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン装置260と、を含んでいる。
なお、本実施の形態においては、フィードチェーン装置260は、前方側から後方側へ向かって刈取穀稈を搬送するように構成されている。
【0024】
具体的には、図3及び図4に示すように、扱室210は、主として、脱穀機枠211と、扱室カバー212と、から構成されている。
脱穀機枠211は、扱胴230を挟んで上記フィードチェーン装置260に対して反対側に位置する側壁211aと、扱胴230より穀稈搬送方向上流側に位置する上流側端壁211bと、扱胴230より穀稈搬送方向下流側に位置する下流側端壁211cと、扱胴230の上方及びフィードチェーン装置260に近接する側に設けられた上方開口211d及び側方開口211eと、を有する。なお、この上流側端壁211bには、脱穀前の穀稈を扱室210内へ挿入するため、スリット状の穀稈挿入用開口211b’が形成されている。下流側端壁211cには、脱穀後の排藁を排出するため、スリット状の排出用開口211c’が形成されている。
扱室カバー212は、脱穀機枠211の上方開口211dを覆い且つ脱穀機枠211の側方開口211eのうちフィードチェーン装置260の上方位置に於ける開口部分を覆うように形成されている。この扱室カバー212は、脱穀機枠211に対して開閉可能に設けられている。例えば、扱室カバー212は、扱胴230の軸線方向に平行な枢支軸212a回りに回動可能に、脱穀機枠211に取り付けられている。なお、図4に、扱室カバー212を開けた状態を2点差線で示している。
【0025】
また、扱室カバー212の上面部には、後述するささり防止ファン251を囲繞する開口212aが形成されている。この開口212aは、扱室カバー212を閉じた際に、開口内縁がささり防止ファン251の周囲に近接し、扱室カバー212を開ける際に、開口内縁がささり防止ファン251に接触しないように形成されている。
該開口212aを有する扱室カバー212を閉じた際には、ささり防止ファン251の上方側が開口212aから外部へ露出する。一方、扱室カバー212を開けた際には、扱室カバー212と共にささり防止ファン251が移動することはない。
【0026】
扱胴駆動軸220は、その両端部が脱穀機枠211の上流側端壁211b及び下流側端壁211cに軸支されている。
扱胴駆動軸220に支持された扱胴230は、前方外表面が前方へ向かうに従い次第に小径となるテーパ面230aに形成された略円柱状の扱胴本体231と、この扱胴本体231の外表面に植設された複数の扱歯232と、を有する。複数の扱歯232は、扱胴本体231の周方向に所定間隔を開けて配置された扱歯列が、扱胴230の軸線方向に平行多段状に列設されている。もっとも、扱歯232の配置は、これに限られず、例えば、複数の扱歯232が、扱胴本体231の外表面に螺旋状に植設されていてもよい。
【0027】
受網240は、扱胴230の軸線を通る仮想垂直面VPよりフィードチェーン装置260から離反する側に於いて、扱胴230の軸線方向に伸びる先端側エッジ241と、フィードチェーン装置260に近接する側に於いて、扱胴230の軸線方向に伸びる基端側エッジ242と、先端側エッジ241及び基端側エッジ242の間に形成された正面視半円形状の網本体243と、を有する。
網本体243の面内には、脱穀物が通過可能な複数の孔(網目)が形成されている。受網240は、その網本体243が扱胴230の下方及び下方両側方を覆うように、扱胴230の外表面に沿って設けられている。この受網240は、メンテナンスなどのため、脱穀機枠211に対して脱着可能に取り付けられている。この受網240の脱着は、例えば、脱穀機枠211の側方開口211eから行うことができるように構成されている。もっとも、受網240は、脱穀機枠211の側壁211a側に於ける上方開口211dから脱着できるように構成されていてもよい。
【0028】
フィードチェーン装置260は、穀稈を前方側から後方側へと搬送するフィードチェーンを有する。フィードチェーン装置260の上方には、藁押さえ装置(図示せず)がフィードチェーンに対向して設けられている。藁押さえ装置は、フィードチェーン装置260によって搬送される穀稈をフィードチェーンに向けて押圧する。なお、藁押さえ装置は、扱室カバー212の下端部に設けられている。
【0029】
(ささり防止構造について)
次に、本発明の特徴部分である、ささり防止構造250について、主として図3〜図5を参照しつつ説明する。
ささり防止構造250は、主として扱胴230の回転に伴って持ち回される脱穀物の該持ち回りを防止するため、扱室210内に設けられている。
ささり防止構造250は、扱歯232が穀稈に対して上方から下方へ移動するように軸線回りに回転駆動される扱胴本体231の回転方向とは反対方向を向いた風を送風するささり防止ファン251を有する。また、ささり防止構造250は、好ましくは前記ささり防止ファン251と、ささり防止ファン251の作用によって搬送される脱穀物を、選別部400へ案内する回収用通路255と、を有する。
【0030】
ささり防止ファン251は、扱胴230を基準にしてフィードチェーン装置260とは反対側へ向いた風を送風するように設けられており、好ましくは、扱胴230の軸線を通る仮想水平面より上方に配置される。
【0031】
具体的には、ささり防止ファン251は、風を送ることができるものであれば特に限定されず、従来公知のファン、例えば、横断流ファン、シロッコファン、プロペラファンなどを用いることができる。中でも、ささり防止ファン251としては、横断流ファンを用いることが好ましい。
【0032】
ここで、図6及び図7に、ささり防止ファン251として用いられる横断流ファン70の一例を示す。
該横断流ファン70は、ファン本体71と、該ファン本体71を覆うカバー72と、を有する。
ファン本体71は、回転軸711と、該回転軸711に外嵌したボス712と、該ボス712に外嵌した一対の側板713,713と、側板713,713の間に平行に設けられた補強板714と、側板713,713及び補強板714に挿通された複数のフィン715,…と、から構成されている。
【0033】
側板713,713及び補強板714は同一形状であり、部品を共有化による組立性の向上及びコストダウンが図られている。なお、補強板714は、図示したように1枚であるが、ファン本体71の軸線方向長さに応じて、2枚以上所定間隔を開けて設けられていてもよい。
側板713,713及び補強板714は、回転中心にボス712となる筒状体を挿通するための孔716が穿設されており、さらに、放射状に複数のフィン挿通孔717,…が穿設されている。フィン挿通孔717,…は、略同一円周上に並設され、その形状は船底状とされている。該フィン挿通孔717,…の回転方向と反対側であって回転中心に対して外周側には、フィン715,…の形状に適合する曲線部717a,…が形成されている。
【0034】
一方、フィン715は、一対の側板713,713間より長いブレード状の曲板であって、横断流ファン70を構成したときに外周側となる辺側部分に起立部715aが形成されている。該起立部715aの端辺部分には、側板713,713及び補強板714のフィン挿通孔717,…の外周部を挟持するための切欠(図示せず)が形成されている。
【0035】
また、カバー72は、ファン本体71を覆う剛性筺体から形成されている。該カバー72の一方側には、ファン本体71の軸線方向に延びる細長い空気取込み口721が開口され、この空気取込み口721の反対側であるカバー72の他方側には、同様に送風口722が開口されている。空気取込み口721及び送風口722は、いずれもフィン715の長手方向長さと略同長さで、且つ所定幅で開口されている。
【0036】
上記横断流ファン70は、ファン本体71を組み立て、これをカバー72内に収容することで作製される。ファン本体71の組み立ては、側板713,713と補強板714にボス712を挿通し、側板713,713と補強板714のフィン挿通孔717,…にフィン715,…をそれぞれ挿通し、フィン715をフィン挿通孔717に係合させ、フィン715,…やボス712を溶接固定することにより行われる。
【0037】
上記横断流ファン70は、図4に示すように、扱胴230の前方側から視て、その回転軸711が扱胴230の軸線を通る仮想水平面VFよりも上方側(具体的には、受網240の先端側エッジ241の上方側)であって、扱胴230の軸線を基準にしてフィードチェーン装置260と離反する側に配置される。
また、図3及び図5に示すように、横断流ファン70の軸線方向長さは、少なくとも扱胴230の前方端から送塵口330の前方端の上方に至るまで設けられている。かかる横断流ファン70は、その軸線方向が扱胴230の軸線方向と略平行になるように設けられている。もっとも、横断流ファン70は、扱胴230の軸線方向に対して傾斜して設けられていてもよい。
【0038】
横断流ファン70は、扱室カバー212と分離した状態で固定できるように、例えば、脱穀機枠211に固定されている(図3参照)。具体的には、横断流ファン70のカバー72の前方面723が、脱穀機枠211の上流側端壁211bに接続部材725を介して固定され、横断流ファン70のカバー72の後方面724が、脱穀機枠211の下流側端壁211cに接続部材726を介して固定されている。
なお、横断流ファン70の下端部は、扱胴230の回転時に扱歯232に接触しないように、扱歯232の回転軌跡外縁よりもやや径外方向位置に配置されている。
さらに、横断流ファン70の空気取込み口721は、扱室カバー212の開口から外出され、横断流ファン70の送風口722は、風を回収用通路255の上方側へ向けて送ることができるように、下側方に向けられている。
このように配置されている横断流ファン70は、外気(扱室外の空気)を吸い込み、送風口722から風を下側方へ向けて送ることができる。従って、該横断流ファン70は、扱胴230の回転によって扱室210内に生じる回転流に対向する風を送ることができる。
また、横断流ファン70は、外気を吸い込むように構成されているため、横断流ファン70の駆動負荷を低減することができる。もっとも、横断流ファン70の空気取込み口721が、扱室210内の空気を取り込む、又は、扱室210内の空気と外気の双方を取り込むように構成されていてもよい。
【0039】
次に、回収用通路255について説明する。
回収用通路255は、横断流ファン70(ささり防止ファン251)の風で搬送される脱穀物を、受網240を介さずに選別部400へ導くための迂回路である。
該回収用通路255は、脱穀機枠211の側壁211aと受網240の間に設けられている。また、受網240の先端側エッジ241と扱室カバー212の間には、回収用通路に連通する間隙254(連通口)が形成されている。
回収用通路255の上方側は、横断流ファン70の送風口721に対応して、それと略同長さで扱胴230の軸線方向に延設されている。回収用通路255の下方側は、下方に向かうに従い狭まった漏斗状に形成され、回収用通路255の下方部にシュート部255aが形成されている。該シュート部255aの下端部には、開口が形成されており、該開口は、選別部400のフィードパンの前方部(特に、前方フィードパン411aの前方部)に配置されている。
【0040】
他方、回収用通路255の上方側には、案内板256が設けられている。案内板256は、横断流ファン70によって脱穀機枠211の側壁211a方向に搬送される(吹き飛ばされる)脱穀物を、回収用通路255へと確実に案内するためのものである。
該案内板256は、例えば、剛性のある長状部材(例えば、厚みのある帯状板等)で構成されており、回収用通路255に対応して設けられている。案内板256の長手方向長さは、横断流ファン70の送風口721に対応して、それと略同長さで扱胴230の軸線方向に延設されている。
案内板256の取付位置は、特に限定されないが、例えば、案内板256は、扱室カバー212の内面であって扱室カバー212の枢支軸212aの近傍位置に取り付けられる。もっとも、案内板256は、脱穀機枠211の側壁211aなどに取り付けてもよい。また、案内板256は、脱着可能に取り付けられていてもよいし、固定的に取り付けられていてもよい。
案内板256の下端部は、回収用通路255側へ向くように配置されている。例えば、案内板256の板面が、下側方に傾斜状に設けられている。このように配置されていることにより、ファンの風で搬送される脱穀物を、案内板256に当てつつ回収用通路255へ確実に案内することができる。
【0041】
上記ささり防止構造250は、横断流ファン70が下側方に向いた風(扱胴230の回転方向とは反対方向に向いた風)を送る。よって、該横断流ファン70の風が、扱胴230の回転によって持ち回される脱穀物の移動方向に対向して吹き付けられ、この風に乗って脱穀物はその方向に搬送される。従って、脱穀物の持ち回りを防止できる。持ち回り防止された脱穀物は、横断流ファン70の風に従い、受網240と扱室カバー212の間隙254から案内板256によって案内されつつ回収用通路255へと導かれる。
また、横断流ファン70は、扱胴230の軸線を通る仮想水平面VFよりも上方側に配置されているので、横断流ファン70の風で持ち回り防止された脱穀物を、フィードチェーン装置260と反対側へ飛ばすことができる。よって、持ち回り防止された脱穀物が、フィードチェーン装置260によって搬送される穀稈と接触する虞がなく、該脱穀物が穀稈に刺さって排出されることを防止できる。特に、横断流ファン70は、扱胴230の軸線を基準にしてフィードチェーン装置260と離反する側に配置されているので、風で搬送される脱穀物が、回収用通路255へ入り易くなる。
【0042】
なお、横断流ファン70を回転させるための駆動源は、扱胴230を回転させる駆動源と別個独立した駆動源を用いてもよいが、駆動源の共通化による構造の簡素化及び低コスト化の点から、扱胴230を回転させる駆動源と兼用することがことが好ましい。
かかる横断流ファン70は、駆動源から扱胴230へ至る伝動経路から分岐された動力によって駆動される。
ここで、駆動源(エンジン)から扱胴230および横断流ファン70への駆動力伝達経路について、図8を用いて説明する。
【0043】
図8に於いて、エンジン500の前方出力軸501は、クローラ式走行装置2を駆動するための走行用ミッションケースの入力軸と連結され、クローラ式走行装置2へ駆動力を伝達する。一方、エンジン500の後方出力軸502には、脱穀部200や選別部400へ駆動力を伝達するためのプーリ510と、グレンタンク40の排出オーガ41等へ駆動力を伝達するためのプーリ520と、が設けられている。
【0044】
上記後方出力軸502の後端に設けられたプーリ520は、Vベルト530を介して、グレンタンク駆動ケースの入力軸503に固設されたプーリ540に連結されている。そして、エンジン500の駆動力の一部は、グレンタンク駆動ケースに伝達され、グレンタンク40の排出オーガ41等を駆動させる。
【0045】
一方、上記後方出力軸502の前側に設けられたプーリ510は、Vベルト610を介して、カウンターケース600から突出する入力軸601に固設された入力プーリ620に連結されている。従って、エンジン500の駆動力の一部は、該カウンターケース600の入力軸601に伝達される。
カウンターケース600の前方部には、前記入力軸601に連結された出力軸602が突設され、この出力軸602には、出力プーリ630が固設されている。この出力プーリ630は、Vベルト640を介して、処理胴軸360に固設されたプーリ650に連結されている。
また、上記処理胴軸360に固設されたプーリ650は、Vベルト660を介して、扱胴駆動軸220に駆動伝達可能な軸680に固設されたプーリ670に連結されている。
【0046】
一方、上記処理胴軸360には、プーリ650の後方側に、横断流ファン70の回転軸711に動力を伝達するためのプーリ690が固設されている。このプーリ690は、Vベルト691を介して、横断流ファン70の回転軸711に固設されたプーリ692に連結されている。
上記構成により、カウンターケース600からの駆動の一部は、扱胴駆動軸220、処理胴軸360及び横断流ファン回転軸711に伝達され、扱胴230、送塵口処理胴310及び横断流ファン70を回転させる。
【0047】
なお、603は、フィードチェーン装置260にカウンターケース600からの駆動を伝達する出力軸を示し、604は、選別部400(揺動選別装置410、唐箕421、各コンベア等)にカウンターケース600からの駆動を伝達する出力軸を示す。
【0048】
(処理室について)
本実施形態のコンバインは、脱穀部200の後方に、処理室300が併設されている。
該処理室300は、扱室210の後部の側方(例えば、グレンタンク側)に設けられている。
処理室300は、処理室ケース340と、処理室ケース340内に設けられた略円柱状の送塵口処理胴310と、送塵口処理胴310の下方及び下方両側方を覆うように設けられている半円形状の処理胴網320と、扱室210と処理室300との間の連通口である送塵口330と、を有する。
処理室ケース340は、送塵口処理胴310などを被覆する筺体で形成され、処理室ケース340の側壁前方が、脱穀機枠211の側壁211aの後方に接して配置されている。
送塵口処理胴310は、扱胴230の軸線方向と平行となるように、扱胴230の後部の側方で且つ前後方向に横架され、回転可能に軸支されている。送塵口330は、脱穀機枠211の側壁211aの後方部とこれに対面する処理室ケース340の側壁の前方部とを連通するために、両部の間に開口されている。
処理室300は、扱胴230で処理できなかった枝梗付着粒等の未処理物及び脱穀物を再処理するために設けられている。すなわち、未処理物等は、扱室210から送塵口330を通じて処理室300内に導かれる。そして、送塵口処理胴310の回転によって未処理物等が処理され、この処理物のみが、処理胴網320の孔(網目)を通過して流下する。
【0049】
なお、送塵口処理胴310の後端部の外表面には前後に長い板体よりなる羽体311が固設されている。該羽体311は、送塵口処理胴310と一体的に回転し、送塵口処理胴310により処理室300後方まで搬送されてきた藁屑は該羽体311の回転によって跳ね飛ばされて排出される。
【0050】
また、上記処理胴網320の下方には、送塵搬送コンベア350が前後方向に軸架されている。送塵搬送コンベア350はスクリュー式のコンベアであり、該送塵搬送コンベア350によって、処理胴網320から落下してきた処理物は、前方(送塵口処理胴310の搬送方向とは反対の方向)に向かって搬送されて、送塵搬送コンベア350の前端から選別部400の前方部(選別処理開始端部)に再投入される。
【0051】
(選別部について)
次に、選別部400は、揺動選別及び風選別の2種類の選別方式により、扱室210で脱穀された脱穀物及び処理室300での処理物が、一番物と二番物と藁屑等に分別される。
図3に示すように、揺動選別は、主として揺動選別装置410によって行われ、風選別は、主として送風機420によって行われる。
なお、選別部400には、揺動選別装置410の後方且つ上方において藁屑等を機体外部に排出する吸引ファン430が備えられている。
【0052】
揺動選別装置410及び送風機420は、選別部400の機枠440内に収納されている。
揺動選別装置410は、揺動駆動機構450によって機枠440(固定側)に対して揺動するように構成されている。該揺動選別装置410の前端部は、扱胴230の前端部下方まで延出され、揺動選別装置410の後端部は送塵口処理胴310の後端部下方まで延出されている。
具体的には、揺動選別装置410は、前後のフィードパン411a,411bと、前方フィードパン411aの後下方に設けられた第一選別部であるチャフシーブ412と、後方フィードパン411bの後部に連設された第二選別部である網状のグレンシーブ413と、チャフシーブ412の後方に設けられたストローラック414と、を有する。
前後のフィードパン411a,411bは、例えば、板状の部材を波形に成形したものが用いられる。前方フィードパン411aは、扱室210の受網240の前下方から略中央下方にかけて配置されている。後方フィードパン411bは、前方フィードパン411aの後下方に配置されている。チャフシーブ412は、開度を調節可能な複数のチャフフィンから形成され、前方フィードパン411aと後方フィードパン411bの上下間に配置されている。グレンシーブ413は、網状体から形成され、後方フィードパン411bの後方に連続して設けられている。
【0053】
送風機420は、揺動選別装置410の前下方に於いて、処理物に対して選別風を送風するように配設される唐箕421と、唐箕421の後方で選別風を送風する副圧送ファンであるセカンドファン422と、を有する。
唐箕421は、機枠440内で揺動選別装置410により選別される処理物に対して、前下方から後上方へ送風することで、細かい藁屑等を後方へ吹き飛ばす。
セカンドファン422は、唐箕421の選別風が弱まる機枠440内の後方においても風選別による選別性能が低下しないようにしており、細かい藁屑等を吸引ファンへ送る。
【0054】
また、選別部400には、揺動選別装置410及び送風機420によって選別された処理物を集約させる樋構造と、前記樋構造に集約された処理物を所定箇所へ搬送するコンベア部が備えられている。
前記樋構造は、一番物を集約させる側面視略V字状の一番回収部(一番樋)454と、二番物を集約させるように一番回収部454より後方側に配置された側面視略V字状の二番回収部(二番樋)455と、を有している。
前記コンベア部は、前記一番回収部454内に配設された第一コンベア451aと、第一コンベアの搬送方向下流側において前記一番回収部454に連接された揚穀筒451と、揚穀筒451に内挿された揚穀コンベア(図示せず)と、前記二番回収部455内に配設された第二コンベア452aと、前記第二コンベア452aの搬送方向下流側において前記二番回収部に連接された還元筒452と、前記還元筒452に内挿された二番還元コンベアと、を含んでいる。
前記一番回収部454内に集約された一番物は、前記第一コンベア451a及び前記揚穀コンベアによって前記グレンタンク40内に搬送される。
前記二番回収部455内に集約された二番物は、前記第二コンベア452a及び前記二番還元コンベアによって前記前方フィードパン411a上に戻され、再度、揺動選別される。
【0055】
(本発明のささり防止構造を有するコンバインの使用例)
上記コンバインAは、刈取装置10によって刈り取られた穀稈を、フィードチェーン装置260によって扱室210内に搬送し、扱歯232を有する扱胴230の回転によって脱穀する。
扱室210内で脱穀された脱穀物は、受網240の網目から流下し、選別部400によって選別される。
一方、扱室210内で脱穀された脱穀物の一部は、受網240から流下せず、扱胴230の回転に伴って持ち回されるが、上記コンバインAは、ささり防止ファン251が設けられているので、該ファンの送風によって脱穀物が持ち回されることを防止できる。また、ささり防止ファン251の風は、回転してくる扱歯232に当たるため、扱歯232に刺さっている脱穀物も抜けやすくなる。ささり防止ファン251の風で搬送される脱穀物は、隙間254を通過し、案内板256によって案内されつつ、回収用通路255へと導かれる。回収用通路255に入った脱穀物は、シュート部255aを介して、選別部400のフィードパンの前方部に導かれ、そこで、選別処理が行われる。なお、回収用通路255を介して、脱穀物は、選別部400の前方部(選別部400に於ける選別処理開始端部)に導かれるので、該脱穀物に対する選別処理時間が長くなり、それだけ穀粒の選別回収を高めることができる
【0056】
一方、ささり防止ファン251の後方部に於いて持ち回り防止された脱穀物についても、同様に、回収用通路255に導かれる。ところで、該脱穀物のうちの一部は、回収用通路255に入らない場合も考えられる。この点、上記ささり防止ファン251は、送塵口330に至るまで設けられているので、持ち回り防止された脱穀物の一部であって、回収用通路255に入らない脱穀物は、送塵口330から処理室300へ入り、そこで処理される。処理された脱穀物は、処理室300から選別部400へと導かれ、回収用通路255を介した脱穀物と同様に、選別部400で選別処理される。
そして、選別部400に於いて選別された穀粒は、グレンタンク40へと収容される。
【0057】
このように、上記ささり防止構造250は、脱穀物の持ち回りを防止し、穀粒の回収率を高めることができる。また、上記ささり防止構造250は、ささり防止ファン251で持ち回り防止された脱穀物を、受網240をバイパスして選別部400へ導くので、受網240の内側に脱穀物が多量に滞留することも防止できる。従って、上記ささり防止構造250を有するコンバインAは、受網240を介して脱穀物を選別部400へ導くと共に、回収用通路255を介して脱穀物を選別部400へ導くことにより、扱室210内に存する脱穀物の多くを速やかに選別部400へ導くことができる。
【0058】
<他の実施形態>
以下、本発明の他の実施形態(変形例)について説明する。ただし、下記様々な他の実施形態の説明において、上記一実施形態と異なる構成及び効果について主として説明し、一実施形態と同様の構成及び効果については、その説明を省略し、用語及び符号を援用する場合がある。
【0059】
上記一実施形態では、ささり防止ファン251(具体例では横断流ファン70)は、脱穀機枠211の上流側端壁211b及び下流側端壁211cに固定されているが、例えば、ささり防止ファン251は、脱穀機枠211の側壁211aに適宜な接続部材を介して固定されていてもよい。また、ささり防止ファン251は、扱室カバー212に固定してもよい。もっとも、上記一実施形態のように、ささり防止ファン251が、扱室カバー212と分離して固定されていれば、扱室カバー212と共にささり防止ファン251が移動せず、ささり防止ファン251に接続する伝達駆動機構などを固定化できるので好ましい。
【0060】
また、上記実施形態では、横断流ファン70は、その回転軸711が扱胴230の軸線を通る仮想水平面VFよりも上方側であって扱胴230の軸線を基準にしてフィードチェーン装置260と離反する側に配置されているが、本発明のささり防止ファン251は、扱胴230の回転方向とは反対方向に向いた風を送れるように構成されていれば、その配置等については、特に限定されない。例えば、図9に示すように、横断流ファン70の回転軸711が、扱胴230の前方側から視て、扱胴230の軸線を通る仮想水平面VFよりも上方側であって扱胴230の軸線を基準にしてフィードチェーン装置260寄りに配置されていてもよい。
【0061】
また、上記一実施形態では、横断流ファン70の長さ(及びこれに対応する送風口721の長さ)は、扱胴本体231の前方端から送塵口330に至って形成されているが、例えば、横断流ファン70の長さは、図10に示すように、扱胴本体231の後方端にまで延びて形成されていてもよい。この場合、回収用通路255や案内板256は、横断流ファン70の長手方向長さに対応して、これと略同長さとなるように設けられていることが好ましい。
また、横断流ファン70の長さが、扱胴本体231の軸線方向長さよりも短く形成されていてもよい。このように短い横断流ファン70を用いる場合には、該横断流ファン70の位置は特に限定されないが、例えば、図11に示すように、該横断流ファン70は、扱胴230の前方部に少なくとも配置されていることが好ましい。一般に、脱穀物の持ち回りは、扱胴230の前方部に於いて多量に生じ易い傾向にあるからである。
また、同様に短く形成された横断流ファン70が、扱胴本体231の前方部と、扱胴本体231の後方部(例えば、扱胴230の軸長方向中央部から送塵口330の上方に亘る部分)とにそれぞれ設けられていてもよい。
【0062】
さらに、上記一実施形態では、回収用通路255のシュート部255aは、選別部400の前方部に脱穀物を導くように構成されているので、持ち回り防止された脱穀物の選別処理効率に優れているが、例えば、回収用通路255のシュート部255aが、選別部400の前後方向中央部または後方部に脱穀物を導くように構成されていてもよい。
また、回収用通路255は、漏斗状のシュート部255aを有しないものでもよい。さらに、本発明のささり防止構造250は、回収用通路255自体を有しないものでもよい。回収用通路255が設けられていない場合でも、ささり防止ファン251の送風で持ち回り防止された脱穀物は、受網240を流下して選別部400へ投入されるからである。
【0063】
なお、上記一実施形態では、処理室300を備えるコンバインAを例示したが、本発明のささり防止構造250は、処理室300を具備しないコンバインに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインを示す側面図。
【図2】同平面図。
【図3】同コンバインの脱穀装置の扱室内の概略構造を示す図であって、前後方向で切断した側面断面図。
【図4】同脱穀装置の扱室内の概略構造を示す図であって、前後方向と直交する方向で切断した正面断面図。
【図5】同脱穀装置を示す平面図。
【図6】横断流ファンのファン本体を示す斜視図。
【図7】横断流ファンの概略構造を示す図であって、前後方向で切断した断面図。
【図8】横断流ファンを駆動させる伝動経路を示す部分説明図。
【図9】他の実施形態に係る脱穀装置の扱室内の概略構造を示す正面断面図。
【図10】他の実施形態に係る脱穀装置を示す平面図。
【図11】他の実施形態に係る脱穀装置を示す平面図。
【0065】
A…コンバイン 2…クローラー式走行装置
10…刈取装置 20…刈取部
30…搬送部 40…グレンタンク
70…横断流ファン 71…ファン本体
721…ファンの空気取込み口 722…ファンの送風口
100…脱穀装置 200…脱穀部
210…扱室 212…扱室カバー
220…扱胴駆動軸 230…扱胴
231…扱胴本体 232…扱歯
240…受網 241…受網の先端側エッジ
242…受網の基端側エッジ 250…ささり防止構造
251…ささり防止ファン 254…連通口
255…回収用通路 256…案内板
300…処理室 310…送塵口処理胴
320…処理胴網 330…送塵口
400…選別部 410…揺動選別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室内において軸線回りに回転駆動される扱胴本体及び扱胴本体の外表面に設けられた扱歯を有する扱胴と、穀稈の穂先側が前記扱室内に突入した状態で前記扱胴の軸線方向に沿って穀稈を搬送するフィードチェーン装置と、前記扱室の下方に受網を介して配置された選別部とを備え、前記扱胴によって穀稈から脱穀された穀粒を含む脱穀物を前記受網を介して前記選別部へ流下させるように構成されたコンバインに適用されるささり防止構造であって、
前記扱歯が前記穀稈に対して上方から下方へ移動するように軸線回りに回転駆動される前記扱胴本体の回転方向とは反対方向を向いた風を送風するささり防止ファンが設けられていることを特徴とするささり防止構造。
【請求項2】
前記ささり防止ファンは、軸線方向が前記扱胴の軸線方向と略平行とされた横断流ファンとされており、
前記横断流ファンは、前記扱胴を基準にして前記フィードチェーン装置とは反対側へ向いた風を送風し得るように、前記扱胴の軸線を通る仮想水平面より上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のささり防止構造。
【請求項3】
前記横断流ファンは、外気を吸い込むように吸込側が前記扱室の上外方へ連通され且つ吐出側が前記扱室内に連通されていることを特徴とする請求項2に記載のささり防止構造。
【請求項4】
前記横断流ファンは、駆動源から前記扱胴へ至る伝動経路から分岐された動力によって駆動されるように構成されており、
前記脱穀機枠は上方が開口とされており、前記コンバインは、前記脱穀機枠の上方開口と側方開口のうち少なくとも前記フィードチェーン装置より上方に位置する部分とを覆う扱室カバーであって、前記扱胴の軸線方向に平行な枢支軸回り回動可能に前記脱穀機枠に連結された扱室カバーを備え、
前記扱室カバーには、該扱室カバーを閉塞位置に位置させた際に前記横断流ファンを囲繞する開口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のささり防止構造。
【請求項5】
前記扱室には、前記横断流ファンによって風搬送された脱穀物を、前記受網をバイパスして前記選別部へ案内する回収用通路が設けられていることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のささり防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−182978(P2008−182978A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20779(P2007−20779)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】