説明

たばこの流通システム及びその流通方法

【課題】外気温の上昇に起因するたばこ商品の品質劣化を低減又は防止し、品質を保証したたばこ商品を消費者に確実に販売可能なたばこの流通システム及びその流通方法を提供する。
【解決手段】たばこの流通システムは、たばこ工場(2)内から小売り販売店(4)での販売に至るたばこ商品の全流通過程にて、たばこ商品をその商品形態に応じて外気温から隔離(A)し、たばこ商品を所望の低温状態に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこ商品の製造から小売り販売に至る全過程にて、たばこ商品の温度管理を可能としたたばこの流通システム及びその流通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ工場にて製造されたたばこ商品は、段ボール箱内に所定個数のカートンを箱詰めした商品形態にて流通基地に出荷され、この後、流通基地から小売り販売店に箱詰めの商品形態のまま配送されるか、又は、流通基地から中間基地に配送され、この中間基地にて段ボール箱からカートンを取出し、カートンの商品形態にて中間基地から小売り販売店に配送される(例えば、特許文献1の図1参照)。なお、カートンは所定個数のシガレットパックを包材により包み込んだものである。
【特許文献1】特開2003-108754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1の需要計画システムは、流通基地、中間基地及び小売り販売店の各段階にてたばこ商品の在庫を適切に管理し、これにより、消費者に対するシガレットパックの小売り販売をその賞味期限内にて確実且つ安定して行うことが可能となる。
ここで、シガレットパックの賞味期限はその製造日から所定の期間を経た期日に一義的に定められており、上述のたばこ商品の流通過程での外気温の変動に起因したたばこ商品の品質劣化については何ら考慮されていない。
【0004】
このため、シガレットパックがメンソール等の揮発性香料を含んでいる場合、その流通過程にて外気温が異常に上昇するような事態に至ると、シガレットパックからメンソールが揮散し、賞味期限内にあるにも拘わらず、シガレットパックの品質を保証できなくなる虞がある。
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とすることは、外気温の上昇に起因するたばこ商品の品質劣化を低減又は防止し、品質を保証したたばこ商品を消費者に確実に販売可能なたばこの流通システム及びその流通方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明のたばこの流通システムは、たばこ商品の製造から小売り販売に至る流通の全過程で、たばこ商品の商品形態に応じてたばこ商品を外気温から隔離する隔離手段を備え、これら隔離手段はたばこ商品の品質劣化を招く温度よりも低い低温状態にたばこ商品を維持する(請求項1)。
請求項1の流通システムによれば、その流通の全過程にて、たばこ商品は販売に至るまで隔離手段によって低温状態に維持され、そして、消費者に販売される。
【0006】
隔離手段はたばこ商品を0〜20℃の低温状態に維持するのが好ましく(請求項2)、このような低温状態であれば、たばこ商品にメンソール等の揮発性香料が含まれていても、このような香料の揮散は低減される。
具体的には、たばこ商品の商品形態には、所定本数のシガレットを包み込んだシガレットパック、所定個数のシガレットパックを包み込んだカートン及び所定個数のカートンを包み込んだ箱が含まれ、そして、隔離手段は、シガレットパック、カートン及び箱の商品形態に応じてたばこ商品を収容する保冷体を含む(請求項3)。この場合、保冷体は、倉庫を含むたばこ工場の空調付き建屋、低温輸送トラック、保冷容器又は保冷型自動販売機の形態をなす(請求項4)。
【0007】
更に、本発明はたばこの流通方法をも提供し、この流通方法は、たばこ商品の製造から小売り販売に至る全過程で、たばこ商品の商品形態に応じてたばこ商品を外気温から隔離する隔離手段を用い、この隔離手段により、その品質劣化を招く温度よりも低い低温状態にたばこ商品を維持する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜6のたばこの流通システム及びその流通方法は、たばこ商品が消費者に販売されるまで、たばこ商品を低温状態に維持しているので、その流通過程にて外気温が急減に上昇しても、この外気温の上昇がたばこ商品の品質劣化を招くことはなく、安定した品質を維持したまま、たばこ商品の販売が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、一実施例のたばこの流通システムを概略的に示す。
この流通システムは、倉庫を備えたたばこ工場2から小売り販売店4にたばこ商品を配送する配送経路を備え、この配送経路にはその途中に流通基地6が設置され、また、必要に応じて流通基地6と小売り販売店4との間に中間基地8が設置されている。
図1中の破線Aは、流通システムの全域にてたばこ商品が外気温から隔離されていることを示し、この隔離について以下に詳述する。
【0010】
図2に示すようにたばこ工場2では、先ず、刻みたばこを巻紙により包み込んだシガレットが製造された後、このシガレットにフィルタを取り付けたフィルタシガレットFCが製造される。そして、フィルタシガレットFCは例えば20本毎に纏めて包装され、ソフト又はハード形態のシガレットパックCPが製造される。更に、シガレットパックCPは例えば10個単位で紙包材により包み込まれてカートンCとなり、そして、カートンCは例えば50個単位で段ボール箱Bに箱詰めされる。このような段ボール箱Bはたばこ工場2から出荷されるか、又は、たばこ工場2の倉庫に一時的に保管され後に出荷される。
【0011】
ここで、たばこ工場2又は倉庫から出荷される段ボール箱Bは、流通システム内を流通するたばこ商品の1つの商品形態であるものの、たばこ工場2又は倉庫から小売り販売店4に至る流通過程において、たばこ商品の商品形態は、段ボール箱B以外に、前述した個々のシガレットパックCP又はカートンCを含む。
たばこ工場での外気温隔離
たばこ工場2はその倉庫をも含め、図2中に破線で示す建屋2a自体がたばこ商品、即ち、シガレットパックCP、カートンC及び段ボール箱Bを外気から隔離する保冷体として構成されている。即ち、建屋2aは空調装置(図示しない)を備え、この空調装置はたばこ商品に品質劣化を招く温度、具体的には0〜20℃の低温状態に建屋2a内の温度を維持する。
【0012】
たばこ工場から流通基地への配送時の外気温隔離
たばこ工場2又はその倉庫から流通基地6にたばこ商品、即ち、段ボール箱Bを配送するには、図3(a),(b)にそれぞれ示すような低温輸送トラック10又は保冷容器12が使用され、これら低温輸送トラック10及び保冷容器12もまた保冷体の一形態をなす。
【0013】
より詳しくは、低温輸送トラック10は段ボール箱Bを収容可能な冷凍機付きのコンテナ14を備え、このコンテナ14内は0〜20℃の低温状態に維持されている。一方、保冷容器12はその内部に段ボール箱Bとともに蓄冷剤16を収容可能な大きさを有し、この蓄冷剤16は保冷容器12内を0〜20℃の低温状態に維持可能である。保冷容器12内に段ボール箱Bを収容した状態で、段ボール箱Bの配送がなされる場合、ここでの配送には通常の輸送トラックが使用可能である。
【0014】
流通基地及び中間基地での外気温隔離
流通基地6及び中間基地8は段ボール箱Bを搬入する建屋をそれぞれ備えており、これら建屋内は前述したたばこ工場2の建屋2aと同様に空調され、その屋内温度が0〜20℃の低温状態に維持されている。
流通基地から小売り販売店又は中間基地への配送時の外気温隔離
ここでの段ボール箱Bの配送時には、前述した低温輸送トラック10又は保冷容器12が使用される。
【0015】
中間基地から小売り販売店への配送時の外気温隔離
ここでのたばこ商品の配送は、段ボール箱B、カートンC又はシガレットパックCPの商品形態にて実施されることから、段ボール箱Bの配送には低温輸送トラック10又は保冷容器12が使用され、カートンC又はシガレットパックCPの配送には、保冷容器12と同一の機能を発揮するが、保冷容器12よりも小さい保冷容器が使用される。具体的には、図4(a)はシガレットパックCPを単位として、所定個数のシガレットパックCPを収容可能な小型保冷容器18を示し、また、図4(b)はカートンCを単位として、所定個数のカートンCを収容可能な中型保冷容器20を示す。
【0016】
小売り販売店での外気温隔離
小売り販売店4では、たばこ商品がシガレットパックCP又はカートンCを単位として店頭販売されるか、又は、その店の内外に設置したたばこ自動販売機によりシガレットパックCPを単位として販売される。
それ故、店外に設置した自動販売機が使用される場合、図5(a)に示されるように自たばこ動販売機は冷凍機22を備え、この冷凍機22はたばこ自動販売機内、即ち、その機体内の温度を0〜20℃の低温状態に維持する。
【0017】
一方、店頭販売される場合、店内には図5(b)に示す開閉可能な保冷庫24が使用される。この保冷庫24は多数のシガレットパックCP及びカートンCを収容可能な大きさを有し、その庫内の温度は0〜20℃の低温状態に維持されている。店員は顧客の要求に応じ、顧客が指定した銘柄のシガレットパックCP又はカートンCを保冷庫24から取出し、顧客、即ち、消費者に販売する。
【0018】
なお、可能であれば、小売り販売店4の店内全体を空調機により0〜20°以下の低温状態に維持するようにしてもよい。
以上の説明から明らかなようにたばこ工場から小売り販売店までの全ての流通過程にて、たばこ商品を低温状態に維持するようにしたから、たばこ商品、即ち、シガレットパックがメンソール等の揮発性香料を含むものであっても、外気温の上昇による香料の揮散を防止又は低減でき、シガレットパックの品質をシガレットパックが消費者の手元に渡るまで保証可能となる。
【0019】
本発明は上述の一実施例に制約されるものではなく、たばこ商品をその商品形態に応じて外気温から隔離するには図3〜図5に示した手段以外の種々の隔離手段を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】たばこの流通システムを示した概略図である。
【図2】たばこ工場でのたばこ商品の製造の流れを示した概略図である。
【図3】たばこ商品の配送に使用される保冷体の具体的な例を示し、(a)は低温輸送トラック、(b)は保冷容器を示す。
【図4】たばこ商品の配送に使用される保冷体の他の具体的な例を示し、(a)は小型保冷容器、(b)は中型保冷容器を示す。
【図5】小売り販売店にて使用される保冷体の具体的な例を示し、(a)は冷凍機付きのたばこ自動販売機、(b)は保冷庫を示す。
【符号の説明】
【0021】
2a 建屋(保冷体)
10 低温輸送トラック(保冷体)
12 保冷容器(保冷体)
16 蓄冷剤
18 小型保冷容器(保冷体)
20 中型保冷容器(保冷体)
22 冷凍機付きたばこ自動販売機(保冷体)
24 保冷庫(保冷体)
A 外気温に対する隔離
B 段ボール箱(たばこ商品)
C カートン(たばこ商品)
CP シガレットパック(たばこ商品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ商品の製造から小売り販売に至る流通の全過程で、たばこ商品の商品形態に応じてたばこ商品を外気温から隔離する隔離手段を備え、これら隔離手段はたばこ商品の品質劣化を招く温度よりも低い低温状態にたばこ商品を維持することを特徴とするたばこの流通システム。
【請求項2】
前記隔離手段は、たばこ商品を0〜20℃の低温状態に維持することを特徴とする請求項1に記載のたばこの流通システム。
【請求項3】
たばこ商品の商品形態には、所定本数のシガレットを包み込んだシガレットパック、所定個数のシガレットパックを包み込んだカートン及び所定個数のカートンを包み込んだ箱が含まれ、
前記隔離手段は、シガレットパック、カートン及び箱の商品形態に応じてたばこ商品を収容する保冷体を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のたばこの流通システム。
【請求項4】
前記保冷体は、倉庫を含むたばこ工場の空調建屋、低温輸送トラック、保冷容器又は保冷型自動販売機の形態をなすことを特徴とする請求項3に記載のたばこの流通システム。
【請求項5】
たばこ商品の製造から小売り販売に至る流通の全過程で、たばこ商品の商品形態に応じてたばこ商品を外気温から隔離する隔離手段を用い、この隔離手段によりたばこ商品の品質劣化を招く温度よりも低い低温状態にたばこ商品を維持することを特徴とするたばこの流通方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−173660(P2011−173660A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155506(P2008−155506)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】