説明

つかみ装置

【課題】追加部材を削減すると共に、第一、第二チューブの個別の膨張、収縮を可能にし、さらに、つかみ装置の軽量化を図ることを目的とする。
【解決手段】第一硬質基体4及び第一チューブ5を有する第一ピッカー2と第二硬質基体6及び第二チューブ7を有する第二ピッカー3とが直列に連結されたつかみ装置1において、第一硬質基体4に、第一柱状部40と第一筒状部41が備えられ、第一筒状部41の内側に第二硬質基体6の端部を嵌装させ、第一柱状部40の中央部に第一肉抜き部42を形成し、第一柱状部40の外周部に第一給排気口10及び第二給排気口11を形成し、第一柱状部40に、第一給排気口10と第一チューブ5の内側とを連通する第一空気通路12、及び、第二給排気口11と第一筒状部41の内側とを連通する第二空気通路13、を形成し、第二硬質基体6に、第一筒状部41の内側と第二チューブ7の内側とを連通する第三空気通路17を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを内側から把持するつかみ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のつかみ装置として、従来、弾性体からなるチューブの内側に硬質基体が挿通され、その硬質基体の外周面にチューブの両端がそれぞれ全周に亘って固定されてチューブの内側が密閉されたつかみ装置がある。上記した硬質基体には、その基端面に形成された給排気口から外周面まで延在してチューブの内側に向けて開口した空気通路が形成されている。このような構成のつかみ装置では、ワークの内側に当該つかみ装置を挿入した後、上記した空気通路を通してチューブの内側にエアが供給される。これにより、チューブが膨張してワークの内周面に密接し、ワークを内側から把持することができる。
【0003】
また、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、1本の硬質基体に対して2つのチューブが外装されたつかみ装置が提案されている。このようなつかみ装置では、2つのチューブをワークの内周面に密接させることができるので、把持力が向上し、揺れを防止したり垂直性を確保したりすることができる。
ところで、上記したつかみ装置を製造する際、チューブの両端の外周に加締リングを嵌め込み、その加締リングを加締装置によって径方向内側に加締めることで、チューブの両端を硬質基体に固定するが、上記した加締装置にセットできる硬質基体の長さ寸法には限度がある。このため、軸方向に十分に長いつかみ装置を製造することができない。
【0004】
そこで、従来、例えば下記特許文献2に示されているような、複数のピッカーが直列に連結されたつかみ装置が提案されている。この連結式のつかみ装置によれば、複数のピッカーをそれぞれ別々に製作し、それら複数のピッカーを直列に連結するので、軸方向に長いつかみ装置を製作することができる。
【0005】
詳しく説明すると、第1の従来の連結式のつかみ装置(下記特許文献2の図1記載)は、2つのピッカーの硬質基体同士がボルト接合されている。また、2つの硬質基体には、その基端面から外周面まで延在してチューブの内側に向けて開口した空気通路がそれぞれ形成されており、基端側(上側)の硬質基体の空気通路と先端側(下側)の硬質基体の空気通路とは、ゴム管及び継手を介して連結されている。
【0006】
また、第2の従来の連結式のつかみ装置(下記特許文献2の図8記載)は、各硬質基体の基端面には雄ねじ部がそれぞれ突設され、先端面には雌ねじ孔がそれぞれ形成されている。そして、先端側の硬質基体の雄ねじ部を基端側の硬質基体の雌ねじ孔に螺合することで、複数のピッカーの硬質基体同士が直列に連結されている。また、各硬質基体には、雄ねじ部の上端から雌ねじ孔の内面まで延在する縦孔と、その縦孔から径方向外側に向かって延びてチューブの内側に向けて開口した横孔と、からなる空気通路がそれぞれ形成されており、基端側の硬質基体の空気通路と先端側の硬質基体の空気通路とが連通されている。
【0007】
また、第3の従来の連結式のつかみ装置(下記特許文献2の図6記載)は、基端側の硬質基体の先端面に雌ねじ孔が形成され、先端側の硬質基体の基端面に雄ねじ部が突設されている。そして、この雄ねじ部を上記した雌ねじ孔に螺合することで、2つのピッカーの硬質基体同士が連結されている。また、基端側の硬質基体には、その基端面から外周面まで延在してチューブの内側に向けて開口した第一空気通路と、該硬質基体の基端面から先端面まで延在する第二空気通路と、が形成され、また、先端側の硬質基体には、その基端面に形成された凹部と、凹部の底面から硬質基体の外周面まで延在する第三空気通路と、が形成されており、上記した第二空気通路と第三空気通路とが凹部を介して連通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−28492号公報
【特許文献2】特開平2−48191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した第1の従来の連結式のつかみ装置では、ボルトやゴム管、継手等の追加部材が多く必要であり、製作工数が増加すると共にコストアップになるという問題がある。
【0010】
また、上記した第2の従来の連結式のつかみ装置では、硬質基体間をシールするOリング等のシール部材だけを追加すれば済むが、複数のチューブにエアを供給する空気通路が同一系統となる。このため、複数のチューブが常に同時に膨張したり収縮したりし、複数のチューブを個別に膨張させたり収縮させたりすることができないという問題がある。
【0011】
また、上記した第3の従来の連結式のつかみ装置では、2つのチューブにエアを供給する空気通路が異なる系統となっているので、2つのチューブを個別に膨張させたり収縮させたりすることができるが、硬質基体間をシールするOリングを嵌め込むための凹溝、Oリングが密接する受け面、及びチューブを固定するための加締リングの受け面を確保しようとすると、硬質基体の肉抜き(軽量化)が十分に行えないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、追加部材を削減して製作工数やコストの増加を抑制することができると共に、2つのチューブを個別に膨張させたり収縮させたりすることができ、さらに、軽量化を図ることができるつかみ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るつかみ装置は、弾性体からなる第一チューブの内側に第一硬質基体が挿通され、該第一硬質基体の外周面に前記第一チューブの両端がそれぞれ全周に亘って固定されて該第一チューブの内側が密閉された第一ピッカーと、弾性体からなる第二チューブの内側に第二硬質基体が挿通され、該第二硬質基体の外周面に前記第二チューブの両端がそれぞれ全周に亘って固定されて該第二チューブの内側が密閉された第二ピッカーと、を備えており、前記第一ピッカーの軸方向一方側に前記第二ピッカーが直列に連結されたつかみ装置において、前記第一硬質基体には、第一柱状部と、該第一柱状部の軸方向一端部から軸方向一方側に向かって延在した第一筒状部と、が備えられ、該第一筒状部の内側に前記第二硬質基体の軸方向他方側の端部が嵌装されており、前記第一柱状部の中央部には、該第一柱状部の軸方向他方側に向けて開口された凹状の第一肉抜き部が形成され、前記第一柱状部の外周部には、前記第一チューブの外部に向けてそれぞれ開口された第一給排気口及び第二給排気口が形成されており、前記第一柱状部には、前記第一給排気口と前記第一チューブの内側とを連通する第一空気通路、及び、前記第二給排気口と前記第一筒状部の内側とを連通する第二空気通路、がそれぞれ形成されており、前記第二硬質基体には、前記第一筒状部の内側と前記第二チューブの内側とを連通する第三空気通路が形成されていることを特徴としている。
【0014】
このような特徴のつかみ装置を用いてワークを把持する際には、ワークの内側に当該つかみ装置を挿入した後、第一給排気口及び第二給排気口のうちの少なくとも一方からエアを送り、第一チューブ及び第二チューブのうちの少なくとも一方の内側にエアを供給する。具体的に説明すると、第一給排気口から第一空気通路にエアを送ると、そのエアは第一空気通路を通って第一チューブの内側に流入する。また、第二給排気口から第二空気通路にエアを送ると、そのエアは第二空気通路を通って第一筒状部の内側に流入し、第一筒状部の内側から第三空気通路を通って第二チューブの内側に流入する。このように、第一チューブ及び第二チューブのうちの何れか一方のチューブの内側にエアが供給されることで、そのチューブが膨張してワークの内周面に密接し、ワークが内側から把持される。なお、第一チューブにエアを供給するエア供給系統(第一給排気口及び第一空気通路)と第二チューブにエアを供給するエア供給系統(第二給排気口、第二空気通路、第一筒状部の内側及び第三空気通路)とが互いに交わることがなく、異なる系統となっている。
【0015】
また、第一硬質基体の第一筒状部の内側に第二硬質基体の軸方向他方側の端部が嵌装されることで、第一硬質基体と第二硬質基体が直列に連結されるので、第一、第二硬質基体を連結するためのボルト等の追加部材は不要である。
また、第一硬質基体の第二空気通路と第二硬質基体の第三空気通路が、第一硬質基体の第一筒状部の内側を介して連通されているので、第二、第三空気通路を連通させるためのゴム管や継手等の追加部材は不要である。
また、第一硬質基体の軸方向一方側の部分(第一筒状部)が筒状に形成されているとともに軸方向他方側の部分(第一柱状部)に第一肉抜き部が形成されているので、第一硬質基体が軽量である。
【0016】
また、本発明に係るつかみ装置は、前記第二硬質基体に、前記第三空気通路が形成されていると共に軸方向他端部が前記第一筒状部の内側に嵌装された第二柱状部と、該第二柱状部の軸方向一端部から軸方向一方側に向かって延在した第二筒状部と、が備えられ、前記第二柱状部に、前記第二筒状部の内側及び前記第一筒状部の内側のうちの何れか一方に向けて開口された凹状の第二肉抜き部が形成されていることが好ましい。
【0017】
これにより、第二硬質基体の軸方向一方側の部分(第二筒状部)が筒状に形成されているとともに軸方向他方側の部分(第二柱状部)に第二肉抜き部が形成されているので、第二硬質基体が軽量である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るつかみ装置によれば、第一硬質基体と第二硬質基体を連結したり第二空気通路と第三空気通路を連通させたりするための追加部材が不要であるので、追加部材を削減することができ、製作工数やコストの増加を抑制することができる。
また、第一チューブにエアを供給するエア供給系統と第二チューブにエアを供給するエア供給系統とが異なる系統となっているので、第一チューブ及び第二チューブを個別に膨張させたり収縮させたりすることができる。
さらに、第一硬質基体が軽量になるので、つかみ装置の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのつかみ装置の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのつかみ装置の縦断面図であって、図1における切断方向に直交する方向から切断した縦断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するためのつかみ装置(第一ピッカー)の平面図である。
【図4】図1に示すA−A間の横断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するためのつかみ装置の使用状況を表した縦断面図である。
【図6】本発明の変形例を説明するためのつかみ装置の縦断面図である。
【図7】本発明の変形例を説明するためのつかみ装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るつかみ装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、図1に示す鎖線Oは、つかみ装置1の中心軸線を示しており、以下、単に「軸線O」と記す。また、本実施の形態では、軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、軸線O周りの方向を「周方向」とする。また、図1における軸方向下側が本発明における「軸方向一方側」に相当し、以下「先端側」と記す。また、その反対側(図1における軸方向上側)が本発明における「軸方向他方側」に相当し、以下「基端側」と記す。
【0021】
図1、図2に示すように、つかみ装置1は、基端側の第一ピッカー2と先端側の第二ピッカー3とが直列に連結された二連結式のエアピッカーであり、後述する第一、第二チューブのうちの少なくとも1つのチューブの内側にエアを流入させることで当該チューブを膨張させてワークW(図5に示す)を内側から把持する装置である。
【0022】
まず、上記した第一ピッカー2の構成について説明する。
図1、図2に示すように、第一ピッカー2は、筒状の第一硬質基体4と、その第一硬質基体4の外周に周設された第一チューブ5と、を備えている。
【0023】
第一硬質基体4は、例えばステンレスやアルミ等の金属からなる芯部材であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設され、第一チューブ5の内側に挿通されている。この第一硬質基体4の概略構成としては、略円柱形状の第一柱状部40と、その第一柱状部40の先端部から軸方向先端側に向かって軸方向に沿って延在した第一筒状部41と、を備えている。
【0024】
第一柱状部40の中央部には、第一柱状部40の軸方向基端側に向けて開口された凹状の第一肉抜き部42が形成されている。この第一肉抜き部42は、図3に示すように、第一柱状部40の基端面の中央部分に形成された平面視円形の凹部(有底孔)であり、図1、図2に示すように、第一柱状部40の基端面から軸方向先端側に向けて軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。また、第一柱状部40の先端部分には、第一肉抜き部42の先端側を閉塞する隔壁部43(底壁部)が形成されており、この隔壁部43を介して第一肉抜き部42の内側と第一筒状部41の内側とが分離されている。
【0025】
また、第一柱状部40の外周部には、第一チューブ5の外部に向けてそれぞれ開口された第一給排気口10及び第二給排気口11が形成されている。第一給排気口10は、後述する第一空気通路12にエアを流出入させるための流出入口であり、また、第二給排気口11は、後述する第二空気通路13にエアを流出入させるための流出入口である。具体的に説明すると、第一給排気口10及び第二給排気口11は、第一柱状部40の基端面の外周部分にそれぞれ形成された孔であり、例えば図示せぬ給排気管のコネクタ部が接続可能な接続部を兼ねた雌ネジ孔からなる。そして、図3に示すように、これら第一給排気口10及び第二給排気口11は、平面視において上記した第一肉抜き部42の周りに配設されている。また、第一給排気口10と第二給排気口11とは、互いに周方向にずれた位置に配設されており、第二給排気口11は、平面視において第一給排気口10から軸線O回りに90度回転した位置に配設されている。
【0026】
また、図1、図2に示すように、第一柱状部40には、上記した第一給排気口10と第一チューブ5の内側とを連通する第一空気通路12、及び、第二給排気口11と第一筒状部41の内側とを連通する第二空気通路13、がそれぞれ形成されている。
【0027】
第一空気通路12は、第一チューブ5の内側にエアを供給したり第一チューブ5内のエアを排出したりするための給排気路であり、第一給排気口10から第一柱状部40の先端部の外周面まで延在して第一チューブ5の内側に向けて開口している。詳しく説明すると、第一空気通路12は、第一肉抜き部42を避けて第一肉抜き部42の周りに形成された通路であり、その概略構成としては、第一給排気口10から先端側に向けて延在した主路14と、その主路14の先端側の端部から第一柱状部40の外周面まで延在する複数(2本)の分岐路15、16と、を備えている。
【0028】
上記した主路14は、軸方向に沿って延在する丸孔であり、第一柱状部40の外周部内に形成されている。この主路14の上端は、第一給排気口10に連通されている。また、上記した分岐路15、16は、径方向に沿って延在する丸孔であり、隔壁部43内に形成されている。一方の分岐路15は、主路14の先端側の端部から第一肉抜き部42の下方を通って第一柱状部40の外周面まで延在され、他方の分岐路16は、主路14の先端側の端部から一方の分岐路15の反対側に向かって第一柱状部40の外周面まで延在されており、2本の分岐路15、16は、直線状に配置されている。
【0029】
また、上記した第二空気通路13は、第一筒状部41の内側を介して後述する第二硬質基体6の第三空気通路17にエアを供給したり第三空気通路17から第一筒状部41の内側に戻されたエアを排出したりするための給排気路であり、第二給排気口11から第一柱状部40の外周部を通って第一筒状部41の上端部まで延在して第一筒状部41の内側に向けて開口している。詳しく説明すると、第二空気通路13は、軸方向に沿って延在する丸孔であり、第一柱状部40の外周部に形成されている。この第二空気通路13の上端は、第二給排気口11に連通されており、下端は、第一筒状部41の内側に連通されている。
【0030】
第一筒状部41は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在する円筒形状の筒部であり、第一柱状部40の先端側に配設されている。この第一筒状部41の外径は第一柱状部40の外径と同径であり、第一筒状部41の外周面は第一柱状部40の外周面と面一に形成されている。この第一筒状部41の先端部(下端部)の内周面には、雌ねじ46及びシール受け面47が形成されている。シール受け面47は、雌ねじ46の内径よりも拡径された内周面であり、雌ねじ46の軸方向先端側(下端側)の位置に配設されている。
【0031】
第一チューブ5は、弾性変形可能な円筒形状の弾性体であり、例えばナイロン糸などで補強された糸入りゴムからなる。この第一チューブ5は、第一硬質基体4の外周に外装されている。そして、第一チューブ5の基端部50の外側には加締リング52が周設されており、この加締リング52が径方向内側に加締められることで、第一チューブ5の基端部50が第一硬質基体4の第一柱状部40の外周面に全周に亘って固定されて第一柱状部40の外周面に気密に接合されている。また、第一チューブ5の先端部51は、第一チューブ5の内側に折り返されている。そして、その第一チューブ5の先端部51の外側には、第一チューブ5の内側に配置された加締リング53が周設されており、この加締リング53が径方向内側に加締められることで、第一チューブ5の先端部51が第一硬質基体4の第一筒状部41の外周面に全周に亘って固定されて第一筒状部41の外周面に気密に接合されている。このように第一チューブ5の両端部50、51が第一硬質基体4の外周面に対してそれぞれ気密に接合されていることで、第一チューブ5の内側が密閉される。なお、上記した第一チューブ5の基端部50と先端部51との間の部分に、上記した第一空気通路12の2本の分岐路15、16の開口端がそれぞれ形成されている。
【0032】
次に、上記した第二ピッカー3の構成について説明する。
図1、図2に示すように、第二ピッカー3は、筒状の第二硬質基体6と、その第二硬質基体6の外周に周設された第二チューブ7と、を備えている。
【0033】
第二硬質基体6は、例えばステンレスやアルミ等の金属からなる芯部材であり、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されていると共に第二チューブ7の内側に挿通されている。この第二硬質基体6の概略構成としては、略円柱形状の第二柱状部60と、その第二柱状部60の先端部から軸方向先端側に向かって軸方向に沿って延在した第二筒状部61と、を備えている。
【0034】
第二柱状部60は、第一硬質基体4の第一筒状部41の軸方向先端側に直列に配設されており、第二柱状部60の外径は、第一筒状部41の外径と略同径となっている。また、この第二柱状部60の基端部(上端部)は、その外径が軸方向基端側に向かうに従い段状に縮径されており、第二柱状部60の基端部の外周面には、雄ねじ66が形成されていると共に、その雄ねじ66よりも先端側の部分にOリング67が装着されている。そして、上記した雄ねじ66が上記した第一筒状部41の雌ねじ46に螺合されると共に、Oリング67が第一筒状部41のシール受け面47に全周に亘って密接されることで、第二硬質基体6(第二柱状部60)の基端部が第一硬質基体4の第一筒状部41の先端部の内側に嵌装されている。
【0035】
また、第二柱状部60には、上記した第一筒状部41の内側と第二チューブ7の内側とを連通する第三空気通路17が形成されている。この第三空気通路17は、第二チューブ7の内側にエアを供給したり第二チューブ7内のエアを排出したりするための給排気路であり、第一筒状部41の内側に面する第二柱状部60の基端面(上端面)から第二柱状部60の外周面まで延在して第二チューブ7の内側に向けて開口している。この第三空気通路17の概略構成としては、図4に示すように、第二柱状部60の基端面の中心部分から軸方向先端側に向かって第二柱状部60の先端面の手前まで延在する主路18と、その主路18の先端側の端部から径方向外側に向かって第二柱状部60の外周面まで延在する複数(2本)の分岐路19、19と、を備えている。
【0036】
図1、図2に示すように、上記した主路18は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在する丸孔であり、その上端は、第一筒状部41の内側に連通されている。また、上記した分岐路19は、径方向に沿って延在する丸孔であり、その一端が主路18に連通され、その他端が第二柱状部60の外周面において第二チューブ7の内側に向けて開口されている。また、複数の分岐路19、19は、軸線Oに対して対称に配設されている。すなわち、2本の分岐路19、19は、直線状に配置されており、2本の分岐路19、19と主路18とが逆T字状に配設されている。
【0037】
また、第二柱状部60には、第二筒状部61の内側に向けて開口された凹状の第二肉抜き部62が形成されている。この第二肉抜き部62は、第二柱状部60の先端面に形成された平面視円形の有底孔であり、第二柱状部60の先端面から軸方向基端側に向けて軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。また、第二肉抜き部62は、図4に示すように、上記した第三空気通路17の両側にそれぞれ配設されており、図1に示すように、一対の第二肉抜き部62、62の間に第三空気通路17の主路18が平行に配設されている。
【0038】
図1、図2に示すように、第二筒状部61は、軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延在する円筒形状の筒部であり、第二柱状部60の先端側に配設されている。この第二筒状部61の外径は第二柱状部60の外径と同径であり、第二筒状部61の外周面は第二柱状部60の外周面と面一に形成されている。
【0039】
第二チューブ7は、弾性変形可能な円筒形状の弾性体であり、例えばナイロン糸などで補強された糸入りゴムからなる。この第二チューブ7は、第二硬質基体6の外周に外装されている。そして、第二チューブ7の基端部70の外側には加締リング72が周設されており、この加締リング72が径方向内側に加締められることで、第二チューブ7の基端部70が第二硬質基体6の第二柱状部60の外周面に全周に亘って固定されて第二柱状部60の外周面に気密に接合されている。また、第二チューブ7の先端部71は、第二チューブ7の内側に折り返されている。そして、その第二チューブ7の先端部71の外側には、第二チューブ7の内側に配置された加締リング73が周設されており、この加締リング73が径方向内側に加締められることで、第二チューブ7の先端部71が第二硬質基体6の第二筒状部61の外周面に全周に亘って固定されて第二筒状部61の外周面に気密に接合されている。このように第二チューブ7の両端部70、71が第二硬質基体6の外周面に対してそれぞれ気密に接合されていることで、第二チューブ7の内側が密閉される。なお、上記した第二チューブ7の基端部70と先端部71との間の部分に、上記した第三空気通路17の2本の分岐路19、19の開口端がそれぞれ形成されている。
【0040】
次に、上記したつかみ装置1の作用について説明する。
【0041】
つかみ装置1を用いてワークWを把持する際には、まず、第一給排気口10及び第二給排気口11に図示せぬ給排気管のコネクタ部をそれぞれ螺着させ、つかみ装置1に給排気管を接続しておく。その後、ワークWの内側に当該つかみ装置1を挿入する。このとき、第一、第二チューブ5、7の内側にエアを供給せず、図1、図2に示すように、第一、第二チューブ5、7を萎んだ収縮状態にしておく。
【0042】
続いて、第一チューブ5及び第二チューブ7のうちの少なくとも一方の内側にエアを供給する。
詳しく説明すると、図5(a)に示すように、第一チューブ5にエアを供給する場合には、第一給排気口10から第一空気通路12にエアを供給する。このエアは、主路14を先端側に向かって流通し、2本の分岐路15、16にそれぞれ分流し、各分岐路15、16の端部から第一チューブ5の内側に流入する。これにより、第一チューブ5がドーナツ状に膨張し、第一チューブ5の外周面がワークWの内周面に密接し、ワークWが内側から把持される。このとき、第一空気通路12が第一硬質基体4の内部で2本の分岐路15、16に分岐されており、これら2本の分岐路15、16を通って第一チューブ5内にエアが供給されるので、第一チューブ5が効率的に短時間で膨張する。
【0043】
また、図5(b)に示すように、第二チューブ7にエアを供給する場合には、第二給排気口11から第二空気通路13にエアを供給する。このエアは、第二空気通路13を先端側に向かって流通し、第一筒状部41の内側に流入する。そして、第一筒状部41の内側を介して第三空気通路17に流入し、第三空気通路17の主路18を先端側に向かって流通し、2本の分岐路19、19にそれぞれ分流し、各分岐路19、19の端部から第二チューブ7の内側に流入する。これにより、第二チューブ7がドーナツ状に膨張し、第二チューブ7の外周面がワークWの内周面に密接し、ワークWが内側から把持される。このとき、第三空気通路17が第二硬質基体6の内部で2本の分岐路19、19に分岐されており、これら2本の分岐路19、19を通って第二チューブ7内にエアが供給されるので、第二チューブ7が効率的に短時間で膨張する。
【0044】
なお、第一チューブ5と第二チューブ7とをそれぞれ膨張させ、第一チューブ5及び第二チューブ7でワークWを内側から把持してもよい。これにより、つかみ装置1による把持力が向上し、重量物のワークWでも把持することができ、また、ワークWを把持したときのワークWの揺れを防止したりワークWの垂直性を確保したりすることができる。
【0045】
また、ワークWを把持したつかみ装置1をワークWから離す際には、膨張した第一チューブ5や第二チューブ7内のエアを外部に排出する。例えば、図5(a)に示すように、第一チューブ5でワークWを把持している場合には、第一給排気口10からエアを吸引する。これにより、第一チューブ5の内側のエアが第一空気通路12を通って第一給排気口10から排出される。その結果、第一チューブ5が収縮して萎んだ状態となり、第一チューブ5がワークWの内周面から離間してワークWからつかみ装置1が外れる。また、図5(b)に示すように、第二チューブ7でワークWを把持している場合には、第二給排気口11からエアを吸引する。これにより、第二チューブ7の内側のエアが第三空気通路17を通って第一筒状部41の内側に流入し、第一筒状部41から第二空気通路13を通って第二給排気口11から排出される。その結果、第二チューブ7が収縮して萎んだ状態となり、第一チューブ5がワークWの内周面から離間してワークWからつかみ装置1が外れる。
【0046】
上記したつかみ装置1によれば、第一チューブ5にエアを供給するエア供給系統と第二チューブ7にエアを供給するエア供給系統とが互いに交わることなく、異なる系統となっているので、第一チューブ5及び第二チューブ7を個別に膨張させたり収縮させたりすることができる。
【0047】
また、上記したつかみ装置1によれば、第一硬質基体4の第一筒状部41の内側に第二硬質基体6の端部が嵌装されることで、第一硬質基体4と第二硬質基体6が直列に連結されるので、第一、第二硬質基体4、6を連結するためのボルト等の追加部材は不要である。また、第一硬質基体4の第二空気通路13と第二硬質基体6の第三空気通路17が、第一硬質基体4の第一筒状部41の内側を介して連通されているので、第二、第三空気通路13、17を連通させるためのゴム管や継手等の追加部材は不要である。このように追加部材を削減することができるので、製作工数やコストの増加を抑制することができる。
【0048】
また、第一硬質基体4の先端部分(第一筒状部41)が筒状に形成されているとともに基端部分(第一柱状部40)に第一肉抜き部42が形成されているので、第一硬質基体4が軽量である。また、第二硬質基体6の先端部分(第二筒状部61)が筒状に形成されているとともに基端部分(第二柱状部60)に第二肉抜き部62、62が形成されているので、第二硬質基体6が軽量である。したがって、つかみ装置1の軽量化を図ることができる。
【0049】
以上、本発明に係るつかみ装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、第一チューブ5の先端部51が第一チューブ5の内側に折り返されており、また、第二チューブ7の先端部71が第二チューブ7の内側に折り返されているが、本発明は、図6に示すように、第一チューブ5の基端部51(上端部)が第一チューブ5の内側に折り返された構成であってもよく、また、図7に示すように、第一チューブ5の基端部51が第一チューブ5の内側に折り返されていると共に、第二チューブ7の基端部71が第二チューブ7の内側に折り返された構成であってもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、第一筒状部41の内側に第二柱状部60の基端部が螺着されることで第一硬質基体4と第二硬質基体6とが連結されているが、本発明は、第一硬質基体と第二硬質基体とが他の構造で連結されていてもよい。例えば、第一筒状部の内側に第二柱状部の基端部がアンダーカット嵌合されていてもよく、その他の構成で第一筒状部の内側に第二柱状部の基端部が嵌装されていてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、第一硬質基体4の第一柱状部40の中央部に平面視円形の丸孔状の第一肉抜き部42が1つ形成されており、また、第二硬質基体6の第二柱状部60の中央部に第三空気通路17の主路18が形成され、その主路18の両側に平面視円形の丸孔状の第二肉抜き部62がそれぞれ形成されているが、本発明は、第一肉抜き部や第二肉抜き部の形状は適宜変更可能であり、例えば平面視矩形の角孔状の肉抜き部を形成してもよく、また、半球状やテーパー状の肉抜き部を形成してもよい。また、第一柱状部40の中央部に複数の第一肉抜き部を形成することも可能である。また、第三空気通路17の主路18を径方向外側に寄せた位置に配設して、第二筒状部61の中央部に第二肉抜き部を形成することも可能である。
【0052】
また、上記した実施の形態では、第二肉抜き部62が第二筒状部61の内側に向けて開口されているが、本発明は、第一筒状部41の内側に向けて開口した第二肉抜き部を第二柱状部に形成することも可能である。例えば、第二柱状部60の基端面(上端面)から軸方向先端側に延在する有底孔状の第二肉抜き部を第二柱状部60に形成してもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、第二柱状部60と第二筒状部61とからなる第二硬質基体6が備えられているが、本発明は、第二硬質基体の構成は適宜変更可能であり、他の構成の第二硬質基体を用いてもよい。例えば、第二硬質基体全体が柱状(中実)に形成され、その第二硬質基体に第三空気通路が形成された構成であってもよい。また、第二硬質基体全体が筒状に形成され、その第二硬質基体の周壁部の内側に、その周壁部の内部を軸方向に仕切る隔壁部が形成され、その隔壁部の基端側に形成された内部空間が、第一筒状部41の内側に連通されていると共に、前記周壁部に形成された開口(第三空気通路)を介して第二チューブ7の内側に連通された構成であってもよい。
【0054】
また、上記した実施の形態では、第一空気通路12や第三空気通路17が、軸方向に延在する主路14(18)と、径方向に延在する2本の分岐路15、16(19、19)と、から構成されているが、本発明は、他の構成の第一空気通路や第三空気通路を形成することも可能であり、例えば、分岐路が1本又は3本以上であってもよい。
【0055】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 つかみ装置
2 第一ピッカー
3 第二ピッカー
4 第一硬質基体
5 第一チューブ
6 第二硬質基体
7 第二チューブ
10 第一給排気口
11 第二給排気口
12 第一空気通路
13 第二空気通路
17 第三空気通路
40 第一柱状部
41 第一筒状部
42 第一肉抜き部
60 第二柱状部
61 第二筒状部
62 第二肉抜き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなる第一チューブの内側に第一硬質基体が挿通され、該第一硬質基体の外周面に前記第一チューブの両端がそれぞれ全周に亘って固定されて該第一チューブの内側が密閉された第一ピッカーと、
弾性体からなる第二チューブの内側に第二硬質基体が挿通され、該第二硬質基体の外周面に前記第二チューブの両端がそれぞれ全周に亘って固定されて該第二チューブの内側が密閉された第二ピッカーと、
を備えており、
前記第一ピッカーの軸方向一方側に前記第二ピッカーが直列に連結されたつかみ装置において、
前記第一硬質基体には、第一柱状部と、該第一柱状部の軸方向一端部から軸方向一方側に向かって延在した第一筒状部と、が備えられ、
該第一筒状部の内側に前記第二硬質基体の軸方向他方側の端部が嵌装されており、
前記第一柱状部の中央部には、該第一柱状部の軸方向他方側に向けて開口された凹状の第一肉抜き部が形成され、前記第一柱状部の外周部には、前記第一チューブの外部に向けてそれぞれ開口された第一給排気口及び第二給排気口が形成されており、
前記第一柱状部には、前記第一給排気口と前記第一チューブの内側とを連通する第一空気通路、及び、前記第二給排気口と前記第一筒状部の内側とを連通する第二空気通路、がそれぞれ形成されており、
前記第二硬質基体には、前記第一筒状部の内側と前記第二チューブの内側とを連通する第三空気通路が形成されていることを特徴とするつかみ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のつかみ装置において、
前記第二硬質基体には、前記第三空気通路が形成されていると共に軸方向他端部が前記第一筒状部の内側に嵌装された第二柱状部と、該第二柱状部の軸方向一端部から軸方向一方側に向かって延在した第二筒状部と、が備えられ、
前記第二柱状部には、前記第二筒状部の内側及び前記第一筒状部の内側のうちの何れか一方に向けて開口された凹状の第二肉抜き部が形成されていることを特徴とするつかみ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−115881(P2011−115881A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274482(P2009−274482)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】