説明

ねじドライバおよび制御方法

【課題】操作を簡略化するねじドライバを得る。
【解決手段】ねじドライバの制御方法は、回転軸線15周りにねじ19を回転させるスピンドル14をモータ11により駆動するステップ、回転ねじ19の周囲に磁界を発生させるステップ、回転ねじ19により生じた磁界変調を検出するステップ、検出した変調に基づきねじ識別装置28によって動作停止基準を選択するステップ、動作停止基準が満たされた際ねじ19の回転を動作停止装置24によって停止するステップとを有する。ねじドライバは、モータ11、モータ11に連結したスピンドル14、スピンドル14の回転運動を停止するための調節可能な動作停止装置24、回転するねじ19によって生じた変調を検出する能動型磁界センサ38、能動型磁界センサ38と調節可能な動作停止装置24との間に接続するねじ識別装置28を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじドライバおよびねじドライバを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設分野では、ねじは、特に金属製の薄板を固定するために利用する。この目的につき、穿孔先端部を有するねじが開発され、ねじにおけるねじ山部をねじ込み、次いでねじヘッドによって薄板を素地に固定していた。作業者はねじヘッドが薄板に当接した後、ねじの締結作業を終える。この終了の際、作業者は滑りクラッチの支援を受け、この滑りクラッチは、適切に設定した解離トルクの設定値を超えた場合、力の伝達を遮断する。作業者は、利用するねじタイプに応じて、適切な解離トルクを調整するよう配慮する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、操作を簡略化したねじドライバを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によるねじドライバは、モータおよびスピンドルを備え、このスピンドルはモータに連結し、回転軸線周りにねじを回転させる。調節可能な動作停止装置は、スピンドルの回転運動を停止する機能を有する。能動型磁界センサは、このセンサが発生した磁界内において回転ねじにより生じた変調を検出できるよう配置する。また、ねじ識別装置を、能動型磁界センサと調節可能な動作停止装置との間に接続することにより、動作停止装置の動作停止基準を、能動型磁界センサが検出した変調に基づき調節できるようにする。
【0005】
本発明によるねじドライバの制御方法は、以下のステップより成る。回転軸線周りにねじを回転させるため、スピンドルをモータにより駆動するステップと、回転ねじの周囲に磁界を発生させ、回転ねじにより生じた磁界変調を能動型磁界センサによって検出するステップと、検出した変調に基づきねじ識別装置によって動作停止基準を選択するステップと、動作停止基準が満たされた際、ねじの回転を動作停止装置によって停止するステップ。
【0006】
能動型磁界センサはそれ自体で磁界を発生し、この磁界に対するねじの受動的な影響力によりねじを識別することが可能になる。
【0007】
本発明によるねじドライバ装置およびその制御方法における特徴は、ねじの識別または動作停止基準の選定を、ねじの回転時に行う点にある。これにより、ねじおよび動作停止基準の識別プロセスを、ねじの締結時に行うことが可能になる。これにより、動作停止装置を、締結しようとするそれぞれのねじに応じて調節することができるようになる。
【0008】
能動型磁界センサにおける高感度磁界センサ素子の配置は、誘導センサ素子が軸線方向においてねじのヘッド部分の高さ位置と部分的に重なるよう行うことができる。上述の誘導センサ素子は、好適には、ねじヘッドの裏側における刻印パターンを検出できるよう構成する。高感度磁界センサ素子は、一例では、誘導センサ素子として構成することができ、磁界に応じてこの誘導センサ素子に電流を発生させる。高感度磁界センサ素子は、電磁発振回路を含むことができ、この発振回路の共鳴周波数またはその減衰は、測定した磁界により影響を受ける。別の好適な一実施形態では、センサ素子としてホールセンサを利用する。
【0009】
本発明による好適な一実施形態では、能動型磁界センサは、スピンドルの加工材側端部に配置する電磁石を有する。
【0010】
本発明による好適な一実施形態では、動作停止装置は、モータを停止させるためモータと電気的に接続し、動作停止基準を満たした際にモータを停止させる構成とする。
【0011】
本発明による好適な一実施形態では、電気的に操作可能なクラッチを、モータとスピンドルとの間における力伝達経路に配置し、動作停止装置によってクラッチを起動できるよう、動作停止装置をクラッチと電気的に接続されるようにする。動作停止装置は、ねじの回転を停止するため、動作停止基準が満たされた際、モータとスピンドルとの間に配置したクラッチを解離するための制御信号をクラッチに伝送するよう構成する。
【0012】
本発明による好適な一実施形態では、監視センサを設ける。監視センサによって、加工材に対するスピンドルの距離を測定するための信号および/またはスピンドルに伝達するトルクを測定するための信号を検出することができる。動作停止装置は、信号を動作停止基準と比較するため、監視センサに接続する。ねじによる回転の停止は、加工材にねじを十分な深さまで締結した後に行われることが望ましい。すなわち、工具と加工材との間における距離が、動作停止基準として設定した閾値を下回った場合に動作を停止する構成とする。代案として、または付加的には、ねじヘッドが加工材に締結されたことを示すトルクの増大を検出した場合に動作が停止する。
【0013】
本発明による好適な一実施形態では、ねじ識別装置が、変調スペクトルを測定するための周波数アナライザを有することにより、変調周波数スペクトルを測定し、この変調周波数スペクトルに基づき動作停止基準が選択されるようにする。周波数スペクトルの測定は、ねじによる反復的な回転を必要とするため時間のかかる作業ではあるものの、その半面でスペクトル解析は妨害に対して、時間領域による変調解析よりも安定していることが実証済みである。
【0014】
本発明による好適な一実施形態では、ねじ識別装置は記憶装置を有し、この記憶装置に変調パラメータおよびこの変調パラメータに割り当てた動作停止基準を記憶させるようにする。上記ねじ識別装置は、能動型磁界センサによって検出した変調パラメータと一致し、かつ動作停止基準を割り当てた変調パラメータを選択するための検索装置を有する。検索装置を動作停止装置に接続することにより、動作停止装置に、識別できた動作停止基準を設定することが可能になる。
以下、本発明を好適な実施形態および添付図面につき、詳述する。なお、図中、特に言及しない限り、構造または機能において対応する構成要素は同一の参照符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電動ねじドライバの説明図である。
【図2】ねじの縦断面図である。
【図3】ねじの底面図である。
【図4】図3に示すねじにおける磁界センサの信号波形の説明図である。
【図5】図4に示す信号波形におけるスペクトルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、好適な実施形態としての、手持ち式のモータ駆動によるねじドライバ10を示す。ねじドライバ10はモータ11を有し、モータ11は、例えばバッテリー12により駆動する。作業者が作動スイッチ13を操作すると、その直後にモータ11が駆動する。モータ11は、スピンドル14を回転軸線15周りに駆動する。スピンドル14は出力軸16を含み、この出力軸16の工具側端部には、工具収容部17および/または一体化した工具を設ける。工具収容部17には、取り外し可能に、工具18、例えばソケットまたはドライバビットを取り付けることができる。一体化させた工具は、例えば標準規格化された六角ねじヘッドを取り付けるためのソケットがある。作業者は、ねじ19を手動で工具収容部17の工具18、または一体化した工具18に取り付ける。スピンドル14を回転させる際、ねじ19も回転軸線15周りに回転する。ねじ19の工具18への取り付けは、マガジン機構により自動的または半自動的に行うこともできる。
【0017】
ねじドライバ10は、ねじ19を自動的に加工材20に締結するための操作支援機能を有する。ねじ19を締結した後には、ねじヘッド22の裏側21が加工材20に当接する。必要に応じて、裏側21と加工材20との間に、例えばシリコ―ンより成るシール材としての中間ワッシャ23を配置する。ねじヘッド22による加工材20への押圧力を適度に加減することによって、ねじ19内に生じる損傷を引き起こすような応力を回避する。さらに、中間ワッシャ23によれば、所定位置での保持を行うだけで、圧潰してしまうことを回避するようにする。
【0018】
操作支援機能は、動作停止装置24に基づいており、この装置24により駆動したスピンドル14の回転運動を停止するのみならず、例えば、モータ11を停止することもできる。代案として、モータ11とスピンドル14との間にクラッチ25を配置することもできる。クラッチ25は、トルクの伝達を遮断するために、動作停止装置24によって解離することができ、これによりスピンドル14の回転運動が停止する。クラッチ25として、例えばマグネットクラッチを利用することができ、動作停止装置24からの制御信号により操作することができる。クラッチ25としては、外部操作可能なクラッチ、例えば電磁ばねクラッチを利用することもできる。
【0019】
動作停止装置24による動作停止時点の識別は、以下に示す2つの手法のうち少なくとも一方に基づいて行うことができる。(a)1つ目の方法によれば、ねじドライバ10は、動作停止基準として、ねじ19を締結した深さを確認し、締結の深さがプリセットした深さに到達後、スピンドル14の回転を停止する。(b)2つ目の手法によれば、ねじドライバ10は、動作停止基準として、スピンドル14が及ぼすトルクを測定し、締結したねじ19に関してトルクが特有の変化を示した際、回転を停止する。特有の事象としては、瞬間的トルクにおける閾値の超過、またはトルクの増大率による閾値超過がある。
【0020】
ねじドライバ10は操作手段26を有し、この手段26により、作業者はねじ19用に動作停止装置24を調節することができる。この場合の調節の対象としては、特にねじヘッド22の高さ27を想定するものの、場合によっては、ねじ19の締結深度に影響する中間ワッシャ23の高さ、およびトルク測定に関して、許容可能なトルクの上限値がある。動作停止装置24は、これら入力した値を動作停止基準として変換する構成とする。
【0021】
ねじ識別装置28は、操作支援機能として、作業者による動作停止基準の調節を支援する。ねじ識別装置28は、ねじドライバ10が回すねじタイプを識別することができ、ねじ識別装置28における記憶装置29に、それぞれのねじタイプに関する動作停止基準が、動作停止装置24用に記憶される構成とする。ねじ識別装置28がねじタイプを識別した後、該当するねじタイプに割り当てた動作停止基準が記憶装置29から選択されるようにし、選択された動作停止基準に応じて動作停止装置24を調節する。動作停止基準の調節は、作業者が関与することなく、全自動で行うようにすることができる。代案として、動作停止基準の調節前に作業者による基準設定を要求するものとし、その後該当の基準が動作停止装置24に反映されるようにすることもできる。
【0022】
好適なねじ識別装置28を詳述する前に、特に好適なねじ19を説明する。締結したねじ19のねじヘッド22は、多くの適用事例において、上方から目視可能である。従って、種々の理由により、目視可能な識別用のマーキングをねじ19の上側30に施すことは望ましくない。
【0023】
図2は、好適なタンピングねじ19の構造を縦断面図として示し、図3は、ねじ19を下方から示す。ねじ19は、ねじヘッド22、ねじ山部31および先端部34を、軸線33に沿って有する。先端部32には、金属製の加工材、例えば、薄鋼板に穿孔するための1個または2個の切刃34を設ける。切刃34により、鋼板を切削により材料除去する、または変形することができ、ねじ山部31用の孔を設けることができる。随意的な、シリコーンのような弾性を有する合成樹脂で形成した中間ワッシャ23を、ねじヘッド22の裏側21に当接させることができる。中間ワッシャ23は、孔を水密化するためのシール素子として利用することができる。
【0024】
ねじヘッド22の裏側21には、4個のほぼ同一、かつ半径方向に延在し、軸線方向に見て外方に突出するリブ35を設ける。各リブ35は、隣接するリブ35に対して90°の角度36で配置する。すなわち、裏側21またはリブ35の配置は、ねじ19の回転軸線周りにおいて、4つのセクターから成る回転対称性を有することになる。裏側21は、360/n°の角度ずつ回転するとき、n回回転対称性を示すことになり、図示の実施形態に関しては、90°の角度毎に位置が合致する。
【0025】
リブ35は、好適には、ねじヘッド22と同一の材料、例えば、鉄、鋼またはその他の硬磁性もしくは軟磁性の材料で形成し、一例として、ねじヘッド22の裏側21を刻印によってリブ35を形成することができる。リブ35の個数および形状は、ねじタイプを符号化するのに供する。ねじ特定装置28の利用に当たっては、図示のねじ19以外のねじ19を利用することもできる。特に、突出するリブ35の代替として、窪みを刻印することもできる。また、刻印形状は、ねじヘッド22における周方向の近傍にのみ配置することもできる。
【0026】
ねじ識別装置28は、能動型磁界センサ38による誘導によってリブ35を検出する構成に基づくものとする。
【0027】
能動型磁界センサ38の磁界発生器39は、ねじ19を包囲する磁界を発生させる。好適には、磁界発生器39は、ねじヘッド22と同一の高さ位置に配置し、しかもその側方において回転軸線15に対し離間して配置することができる。代替的な一実施形態では、磁界発生装置39は、回転軸線15を環状に包囲する構成とする。磁界発生器39には、例えば永久磁石または電磁石、すなわち、通電コイルを利用することができる。
【0028】
ねじ19およびねじ19に形成したリブ35は、その磁界の流れの磁気特性、ひいては局所的な磁界強度に影響を及ぼす。好適には、誘導センサ素子40を回転軸線15の方向において、ねじヘッド22と同一の高さ位置に配置する。回転軸線15方向に見た場合、誘導センサ素子40およびねじヘッド22は部分的に重なる。ドライバビットにおける長さ、またはその他の工具は原則的に標準規格化されているため、少なくともねじヘッド22の上面30の位置は既知である。誘導センサ素子40は、一例として、深さストッパ42のスリーブ41内に一体化させることができる。好適には、誘導センサ素子40は、回転軸線15に対して半径方向に離間させて配置し、かつ非対称的な構成とする。環状のセンサ素子40における軸線の位置は、回転軸線15からずらして配置する。誘導センサ素子40は、例えばホールセンサまたはピックアップコイルとして構成することができる。図示の実施形態では、多数の誘導センサ素子40を利用する。
【0029】
センサ素子40の電気的接続は、一例では、ホイートストーンブリッジにおける差動測定によって行う。1個目のセンサ素子40を測定点と給電点との間で接続し、同様に、2個目のセンサ素子40を他の測定点と給電点との間で接続する構成とする。また、他の2個のブリッジには、磁界を遮断した同様のセンサ素子40を接続することができる。
【0030】
作動スイッチ13を操作することにより、ねじ識別装置28および能動型磁界センサ38を作動させることができる。これは、ねじ識別装置28および能動型磁界センサ38が既に動作していないことを前提とする。モータ11により、スピンドル14がねじ19とともに回転軸線15周りに回転する。リブ35は、回転運動により誘導センサ素子40に対して接近し、また遠ざかる。磁気的な特性により、リブ35は、磁界の流れに影響を及ぼし、これにより誘導センサ素子40領域の磁界強度にも影響を及ぼす。図4は、一例としての信号44における振幅43を示し、信号44は、誘導センサ素子40における磁界強度の度合いを示すものである。リブ35の1個が誘導センサ素子40に対し最近接した際、振幅43はそれぞれ極値45を示す。同一の形状を有し、かつ等しい角度36で配置したリブ35により、信号44は一定時間下で周期的に反復する。極値の位相は、スピンドル14の角度位置から推察することができる。ねじ識別装置28の周波数アナライザ46は、信号44から周波数スペクトル、または位相情報を除く実際の周波数スペクトルにおける値を測定する。信号44による周波数スペクトルのピーク値は、基本周波数fにおいて、スピンドル14の回転数の4倍に相当する振動数を示す(図5参照)。リブ35の物理的な幅により、基本周波数fの高調波においてピークが生じる。回転数に対する基本周波数fの割合は、等間隔で配置するリブ35の数により規定される。基本周波数におけるスペクトルおよび高調波の相対振幅43´は、特にリブ35の形状によって規定される。
【0031】
ねじ識別装置28は記憶装置29を含み、装置29に異なるねじタイプのスペクトルを、各動作停止基準とともに割り当てて記憶させる。好適な各ねじタイプは、裏側21の刻印パターン、特にリブ35の個数において異なる。刻印パターンによる符号化は、軟らかい中間ワッシャ23または他の特徴部を示し得る。それぞれのねじタイプごとに、好適な動作停止基準を試行錯誤により確定する。各ねじタイプの動作停止基準は、半永久的に記憶装置29に記憶することができ、記憶装置29は、一度のみ書き込み可能、または書き換え可能なメモリーセルを有する。適切な有線または無線による通信インタフェース47を、ねじドライバ10の外部または内部に設けることができる。
【0032】
ねじ識別装置28は、検索装置48によって、記憶させたスペクトルの中から検出した信号44のスペクトルと一致するものを検索する。この場合、スペクトルを比較する基準として、スペクトルの最大値を示す絶対周波数を利用することができる。好適には、周波数の正規化は、出力軸16の回転数に応じて行うものとし、この目的につき、回転数計測器49が出力軸16および/またはモータ11の回転数を算出する。図5に示す実施形態では、回転数が1HZであり、顕著な振幅は4HZおよび8HZで生じる。これらの振幅は、4および8の回転数に応じて正規化したものである。相対振幅43´の閾値Sは、周波数ピークによるスペクトルへのノイズを抑制するために設定することができる。閾値Sは、例えばスペクトルの絶対最大値に基づいて動的に規定することができ、一例として、絶対最大値の10%〜20%で規定することが可能である。
【0033】
選択されたスペクトルに割り当てた動作停止基準は、動作停止装置24を調節するため、動作停止装置24に伝送される構成とする。動作停止基準としては、トルクの最大許容値、トルクの最大増大率、クラッチの解離トルクおよび深さストッパ42を設置する深さといった基準がある。
【0034】
動作停止装置24は、1個または複数個の監視センサと電気的に接続することができ、これにより、監視センサによる動作停止基準に関する1つまたは複数の信号を、監視することができるようになる。
【0035】
監視センサ50は、例えばモータ11による出力を検出することができ、モータ11による出力は、原則的にスピンドル14に作用するトルクの増大に伴って上昇する。動作停止装置24によって、例えばモータ11による瞬間的な出力を、動作停止基準として設定した閾値と比較することが可能になる。代替的または付加的に、モータ11に特徴的な出力に関する推移を監視することができる。
【0036】
別の監視センサ51は、例えば、歪みセンサとして直接スピンドル14に作用するトルクを検出することができる。センサ51による信号44の解析および監視は、監視センサ50に類似した方法により行う。
【0037】
別の監視センサは、機械的な深さストッパ42に基づくものである。深さストッパ42はストッパ53を有し、ストッパ53は、回転軸線15上の工具収容部17に対して、一定の距離で突出する。さらに、ストッパ53は、回転軸線15に沿って変位可能に配置する。深さストッパ42は、一例では、回転軸線15に対して同軸線上に配置したスリーブ41として形成することができる。監視センサは、ねじ19の締結に際し、深さストッパ42による変位距離を検出する構成とする。また、監視センサにポテンショメータを設けることができる。動作停止装置24は、検出した変位距離を監視し、動作停止基準により事前設定した変位距離の上限値と比較する。別の監視センサは、変位距離による位置測定に基づく構成とする。機械的深さストッパ42には、例えば磁気テープを配置することができ、動作停止装置24が変位距離を算出する。
【0038】
別の監視センサ55は、非接触型距離測定器56を設けた非接触式深さストッパに基づいている。距離測定器56は、光学的、音響的またはレーダー技術により加工材20の表面までの距離を測定することができる。動作停止装置24は、加工材20に対するねじドライバ10の距離が動作停止基準により設定した閾値を下回った際、回転運動を停止する。
【0039】
能動型磁界センサ38の磁界発生器39として、永久磁石を利用することができ、好適には、電磁石39を利用する。電磁石39は、電源57により給電される構成とし、電源57は、好適には作動スイッチ13をオンにした際に起動し、ねじタイプを識別するか、またはモータ11が停止した際に起動状態がオフに切り替わる。付着する可能性のある鋼屑は、作業者が新しいねじ19を取り付けるか、またはマガジンにより新しいねじ19が供給される際に、電磁石によって引き剥がされる。
【0040】
電源57は、直流電流を生ずる構成とする。代替的な実施形態では、電磁石39の供給電流に対して、発振器59によって周期信号が出力される。磁界センサ38により発生した信号44は、位相固定的に周期信号と混合し、周期信号における高調波ノイズを除去する。ロックインアンプとして周知の信号処理は、信号対ノイズ比を向上させるために利用することができる。
【0041】
能動型磁界センサ38は、誘導センサ素子40を複数個有することができ、これらセンサ素子40は、軸線15周りにおいて環状に配置する。信号44は加算器60によって合計される構成とする。センサ素子40と加算器60との間に遅延素子61が接続されるようにする。遅延素子61は、信号44を相対角度に応じて遅延させ、この場合の相対角度の測定は、スピンドル14および最後方に配置する誘導センサ素子40に対する誘導センサ素子40の回転とは逆方向の回転によって行う。さらに、場合によってはスピンドル14の回転数に応じて行われるようにする。リブ35による変調は、2個のセンサ素子40によって異なる時点で検出される。この遅延時間は遅延素子61により調整することで、信号が加算器60内で重畳される。遅延素子61は、スピンドル14の回転数、および場合によっては、スピンドル14の回転方向に応じて調節可能である。
【0042】
ねじ19に設け、かつ回転させる刻印パターン35によって、特有の磁界変調を発生させることでねじ19を識別する方法は、上述した通り、ねじ19の識別を、変調した周波数スペクトルに基づいて行う場合、特に安定した方法であることが実証済みである。
【0043】
代案として、変調を直接、時間経過とともに記録される信号44に基づいて解析することもできる。例えば、トリガーユニット62により、信号44が閾値を超える度に、事象が通知される構成とすることができる。この場合、カウンタが、プリセットしたねじ19の回転数用に、事象数を測定する。記憶装置29には、個々のねじタイプ用に事象の数を記憶させるようにする。別の好適な一実施形態では、一時的記憶装置に回転数用に事象を記憶させ、記憶装置29に、ねじタイプ別に割り当て、かつ事象経過時間に影響する刻印を、各ねじタイプの動作停止基準とともに記憶させる。
【符号の説明】
【0044】
10 ねじドライバ
11 モータ
12 バッテリー
13 作動スイッチ
14 スピンドル
15 回転軸線
16 出力軸
17 工具収容部
18 工具
19 ねじ
20 加工材
21 裏側
22 ねじヘッド
23 中間ワッシャ
24 動作停止装置
25 クラッチ
26 操作手段
27 高さ
28 ねじ識別装置
29 記憶装置
30 上側面
31 ねじ山部
32 先端部
34 切刃
35 リブ
36 角度
38 能動型磁界センサ
39 磁界発生器
40 誘導センサ素子
41 スリーブ
42 深さストッパ
43 振幅
44 信号
45 極値
46 周波数アナライザ
47 通信インタフェース
48 検索装置
50 監視センサ
51 監視センサ
53 ストッパ
55 監視センサ
56 非接触型距離測定器
57 電源
59 発振器
60 加算器
61 遅延素子
62 トリガーユニット
64 一時的記憶装置
S 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじドライバであって、
モータ(11)と、
ねじ(19)を締結するために軸線(15)周りに前記モータ(11)とともに連結したスピンドル(14)と、
前記スピンドル(14)の回転運動を停止するための調節可能な動作停止装置(24)と、
能動型磁界センサ(38)が発生した磁界において、回転する前記ねじ(19)によって生じた変調を、前記能動型磁界センサ(38)によって検出できるよう配置した、該能動型磁界センサ(38)と、
前記能動型磁界センサ(38)によって検出した前記変調に基づき、前記動作停止装置(24)の動作停止基準を設定するため、前記能動型磁界センサ(38)と、前記調節可能な動作停止装置(24)との間に接続する、ねじ識別装置(28)と
を備えたねじドライバ。
【請求項2】
請求項1に記載のねじドライバにおいて、前記能動型磁界センサ(38)の高感度磁界センサ素子(40)を、前記軸線15方向の前記ねじ(19)のねじヘッド(22)と部分的に重なるよう配置したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のねじドライバにおいて、前記能動型磁界センサ(38)が電磁石(39)を有し、該電磁石(39)を、前記スピンドル(14)における加工材側端部に配置したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、前記動作停止装置(24)を、前記モータ(11)を停止するため、該モータ(11)と電気的に接続したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、電気的に操作可能なクラッチ(25)を、前記モータ(11)と前記スピンドル(14)との間における力伝達経路に連結し、前記動作停止装置(24)は、前記クラッチ(25)を起動するため、該クラッチ(25)と電気的に接続したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項6】
制球項1〜5のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、監視センサ(50,51,55)によって、前記加工材(20)に対する前記スピンドル(14)の距離を測定するための信号、および/または、前記スピンドル(14)に伝達するトルクを測定するための信号を検出可能とし、前記動作停止装置(24)を、前記信号を前記動作停止基準と比較するため、前記監視センサ(50,51,55)に接続したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項7】
制球項1〜6のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、前記ねじ識別装置(28)は、変調スペクトルを測定するための周波数アナライザ(46)を有する構成としたことを特徴とするねじドライバ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、前記ねじ識別装置(28)は、変調パラメータおよび該変調パラメータに割り当てた前記動作停止基準を記憶させた記憶装置(29)と、前記ねじ識別装置(28)が、前記能動型磁界センサ(38)によって検出した変調パラメータと一致し、かつ前記動作停止基準を割り当てた変調パラメータを選択するための検索装置(48)とを有する構成としたことを特徴とするねじドライバ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のねじドライバにおいて、前記能動型磁界センサ(38)は、複数個の前記回転軸線(15)周りに環状的に配置した誘導センサ素子(40)を有し、該センサ素子(40)のそれぞれに信号遅延時間を遅延させるための遅延素子(61)を接続したことを特徴とするねじドライバ。
【請求項10】
ねじドライバ用の制御方法であって、
軸線(15)周りにねじ(19)を回転させるためにモータ(11)によりスピンドル(14)を駆動するステップと、
前記ねじ(19)の回転領域で磁界を発生させるステップと、
前記ねじ(19)の回転により生じた磁界変調を、能動型磁界センサ(38)により検出するステップと、
検出した変調に基づき、ねじ識別装置(28)によって動作停止基準を選択するステップと、
前記動作停止基準が満たされた際、前記ねじ(19)の回転を、動作停止装置(24)によって停止するステップとを有する制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法において、前記動作停止装置(24)は、前記モータ(11)を前記動作停止基準が満たされた際に停止させることを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の制御方法において、前記動作停止装置(24)が、前記動作停止基準が満たされた際、前記モータ(11)と前記スピンドル(14)との間に配置したクラッチ(25)を解離させ、かつ前記ねじ(19)を回す作業を停止させるための制御信号を前記クラッチ(25)に伝送することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の制御方法において、変調の周波数スペクトルを算出し、前記動作停止基準を、前記周波数スペクトルに基づいて選択したことを特徴とする制御方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の制御方法において、監視センサ(50,51,55)が、加工材(20)に対する前記スピンドル(14)の距離を測定するための信号、および/または、前記スピンドル(14)に伝達するトルクを測定するための前記信号を検出し、前記動作停止装置(24)が検出した前記信号を、前記動作停止基準と比較することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一項に記載の制御方法において、前記動作停止基準の選択は、記憶装置(29)から前記動作停止基準を選択することを含み、この場合、検索装置(48)は、前記記憶装置(29)に分類して記憶させた前記動作停止基準の変調パラメータが、前記能動型磁界センサ(38)によって検出した変調と対応する動作停止基準を選択することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−6138(P2012−6138A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138635(P2011−138635)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】