はんだ劣化検査方法とその装置
【課題】はんだペーストの使用前に、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常や保管状態の異常に関するはんだペーストの劣化状態を精緻かつ簡便に検査でき、劣化したはんだペーストを排除して本来的に使用できるはんだペーストを選別することで、製品品質の向上とはんだペーストの有効利用を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置を提供する。
【解決手段】はんだ劣化検査装置100は、はんだペースト9を収容するための容器10と検査材20から構成され、容器10は容器本体1と外蓋2を備え、容器本体1の側壁に設けられた雄ネジ1aと外蓋2の側壁に設けられた雌ネジ2aが嵌合して容器10が密閉されるようになっている。また、検査材20はその母材11の側面および底面に金属酸化物からなる酸化膜12を有し、その上部が外蓋2の略中心に固定されることで、容器10の密閉時に、検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬されるようになっている。
【解決手段】はんだ劣化検査装置100は、はんだペースト9を収容するための容器10と検査材20から構成され、容器10は容器本体1と外蓋2を備え、容器本体1の側壁に設けられた雄ネジ1aと外蓋2の側壁に設けられた雌ネジ2aが嵌合して容器10が密閉されるようになっている。また、検査材20はその母材11の側面および底面に金属酸化物からなる酸化膜12を有し、その上部が外蓋2の略中心に固定されることで、容器10の密閉時に、検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬されるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペーストの劣化状態を精緻かつ簡便に検査できるはんだ劣化検査方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から基板表面へのチップ等の部品の実装においては、すずや鉛からなるはんだが使用されている。その一例として、所要パターンの穴が形成されたマスクを用いて基板表面にはんだを印刷し、印刷されたはんだ上に部品を載置して、リフロー炉で部品と基板を接合する方法がある。ここで、基板に印刷されるはんだは、はんだ粉末と粘性のあるペースト状のフラックスとの混合物であり、はんだペーストやソルダペーストと呼ばれている。このはんだペーストは、熱の影響で劣化しやすく、たとえば、はんだペーストの表面に劣化したはんだ材の皮膜が発生したり、はんだペースト自体の粘度が増加したりして、はんだペーストの濡れ性や印刷性が低下するということが知られている。そこで、はんだ製造メーカーで製造されたはんだペーストは、ユーザーが使用するまでの間は約0℃〜10℃の低温雰囲気下で保管され、はんだペーストの劣化の抑制が図られている。
【0003】
ところで、現在、自動車産業においては、自動車で使用される材料に関し、環境負荷の軽減を目的に有害物質の使用量削減を図ろうとする、たとえば欧州の「ELV指令(End of Life Vehicles指令)」が施行される等、世界各国で環境負荷が大きい材料を規制する動きが活発化している。そこで、自動車全体においても、鉛等の有害物質を含有せず、環境影響負荷を低減できる環境材料の開発が求められている。
【0004】
上記する環境材料として、環境負荷を低減でき、さらに人体への影響も少ない鉛フリーはんだを挙げることができる。鉛フリーはんだは、廃棄物として埋め立て処分される際にも、鉛が周辺環境に流出して自然環境を汚染する危険性が低く、さらに作業者がはんだ付け中に有害な鉛蒸気を吸入する危険性も低減できることから、開発と普及が進められている材料である。
【0005】
しかし、鉛フリーはんだは、従来のすず−鉛はんだ材と比較して、反応性の高いすずの含有率が高いことから、はんだペーストが劣化しやすいという課題がある。また、鉛を含有するはんだ材と比較して融点が高く、硬くて伸びが少ないことから濡れ性が低下する。そのため、はんだペーストのフラックスに含まれる活性剤の活性を強力なものとする必要がある一方で、それによって今度ははんだペーストの劣化が促進されるという課題が生じてしまう。
【0006】
上記する課題に対して、低融点元素であるビスマス、亜鉛、インジウムを含む低融点鉛フリーはんだ用のはんだ粉末の開発や、はんだ粉末の反応性を抑制する金属元素を添加したはんだ粉末の開発、室温付近では活性がなく、融点付近で高い活性を発揮できるフラックスの開発等が進められているものの、低温雰囲気下での保管においても、それらに起因するはんだペーストの劣化を完全に抑止することはできない。また、鉛フリーはんだは従来の含鉛はんだと比較して熱による劣化が促進されるために、低温雰囲気下における保管において一層厳密な保管状態の下に管理されるものの、その保管状態に起因するはんだペーストの劣化を完全に抑止することは困難である。
【0007】
そこで、はんだペーストの使用前にはんだペーストの劣化状態を検査することができ、この検査によってはんだペーストの粘度等の特性を把握して、はんだ印刷不良抑止と生産効率の向上を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置の開発が望まれている。
【0008】
ところで、上記するはんだ劣化検査方法に関する従来の公開技術として、特許文献1,2に開示の方法を挙げることができる。特許文献1に開示のはんだ劣化検査方法は、はんだペーストが介在している2つの部材を引き離し、2つの部材間に位置するはんだペーストに光を出射し、2つの部材間を通過した光、またははんだペーストによって反射された光を測定して、はんだペーストの粘度変化を評価し、はんだペーストの劣化状態を検査するものである。また、特許文献2に開示のはんだ劣化検査方法は、はんだペーストの透明容器の内壁面に貼り付けられた温度感知ラベルの色や数字の変化によって、容器内に収容されたはんだペーストの温度を検知することで、はんだペーストの劣化状態を検査できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−242927号公報
【特許文献2】特開2005−271030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示のはんだ劣化検査方法においては、光を出射する投光部や光を受光する受光部を設け、さらにその検査用の装置にはんだペーストが介在している2つの部材を設置して、2つの部材を引き離しながらはんだペーストの粘度を評価する必要がある。そのため、検査装置が大型化し、さらに粘度の測定に時間を要することから、時間に応じて劣化するはんだペーストの検査方法としては好ましくない。また、特許文献2に開示のはんだ劣化検査方法においては、最も外気に近く温度変化の大きい、はんだペースト用容器の側部付近のみのはんだペーストの温度測定によってはんだペーストの劣化状態を検査するものであり、容器全体におけるはんだペーストの正確な劣化状態を検査することができない。したがって、検査に要する時間を短縮でき、容器内のはんだペーストの全領域の劣化状態を精緻に検査できるはんだ劣化検査方法とその装置の確立が、当該技術分野における急務の解決課題となっている。
【0011】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、はんだペーストの使用に際して、はんだペーストの劣化状態を精緻かつ簡便に検査でき、劣化したはんだペーストを排除して本来的に使用できるはんだペーストを選別することで、製品品質の向上とはんだペーストの有効利用を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明によるはんだ劣化検査方法は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置を使用して、はんだペーストの劣化状態を検査するはんだ劣化検査方法であって、少なくとも前記検査材の前記酸化膜の一部を前記容器の前記はんだペーストに浸漬させるステップと、前記検査材を前記はんだペーストから取り出して、前記酸化膜の変色を検査するステップと、からなるものである。
【0013】
ここで、はんだペーストは、はんだ粉末とフラックスからなるものであり、鉛フリーはんだのはんだ粉末としては、すず−銅系、すず−銀系、すず−銀−銅系のはんだ粉末や、低融点元素であるビスマス、亜鉛、インジウムを含む、すず−銀−銅−ビスマス系、すず−銀−ビスマス−インジウム系、すず−亜鉛系、すず−ビスマス系の低融点鉛フリーはんだ用のはんだ粉末、金やアンチモンを含む、すず−金系、すず−アンチモン系の高温はんだ用のはんだ粉末を挙げることができる。
【0014】
また、鉛フリーはんだのはんだペーストにおけるフラックスは、ロジン、活性剤、チキソ剤、および溶剤等からなるものである。
【0015】
ロジンとしては、天然ロジン(松脂)、重合ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジンのほか、ロジン誘導体を挙げることができる。
【0016】
また、溶剤は固形成分を溶解して過度の粘調性を持たせるもので、多くの有機溶剤を使用可能であるが、たとえば、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル等などを使用できる。
【0017】
また、チキソ剤は、ペースト状フラックスとはんだ粉末を均一に混和させた後、これらが分離しないように維持すると共に、印刷性に寄与できるものであり、たとえば、水素添加ヒマシ油、ヤシ油等を使用できる。
【0018】
そして、活性剤は接合すべき金属の酸化膜を除去するもので、有機酸(カルボン酸)が中心であり、たとえば、モノカルボン酸の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エントナ酸、カプリル酸、安息香酸等や、ジカルボン酸のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸等を使用できる。また、活性度を向上させるためにハロゲンを添加したアミンのハロゲン化水素酸やアミン・有機酸等が用いられ、ハロゲン化水素酸としては、メチルアミン塩酸塩、メチルアミン臭酸塩、エチルアミン塩酸塩、エチルアミン臭酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン臭酸塩等を挙げることができる。
【0019】
本発明のはんだ劣化検査方法によれば、金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材の少なくとも一部をはんだペーストに浸漬させるように、容器内に検査材とはんだペーストを収容し、はんだペーストの使用前に検査材をはんだペーストから取り出して、酸化膜の変色を検査するという簡単な方法によって、はんだペーストの劣化状態を検査できる。すなわち、検査に要する時間が短縮できるため、検査中のはんだペーストの劣化を抑制できることで、精緻なはんだペーストの劣化状態の検査が可能となる。
【0020】
なお、本発明における酸化膜の変色は目視によっても容易に確認できるものであり、検査のための付加的な装置が不要であるが、変色した検査材を写真やビデオで撮影し、それをコンピュータに取り込んで画像解析ソフトで解析して検査することで、変色の度合いやその分布を一層精緻に検査することもできる。
【0021】
ここで、本発明の検査材に用いられる母材は、樹脂またははんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金からなることが好ましい。さらに、酸化膜に用いられる金属酸化物は、はんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金の酸化物からなることが好ましい。
【0022】
たとえば、すず−銀−銅系のはんだ粉末を含むはんだペーストを使用する際には、すず、銀、銅のうちのいずれか一種からなる金属、またはそれらの複数を含む合金からなる母材や金属酸化物を使用することで、はんだペーストとの親和性を有し、はんだペーストの濡れ性や印刷性の低下を抑制することができる。
【0023】
また、本発明のはんだ劣化検査方法の他の実施の形態は、前記はんだ劣化検査装置が複数の前記検査材を備え、複数の該検査材を同時に前記はんだペーストに浸漬させ、複数の該検査材を同時に該はんだペーストから取り出して、該はんだペーストの複数の位置における前記酸化膜の変色を同時に検査するようになっているものである。
【0024】
はんだ劣化検査装置が複数の検査材を備え、はんだペーストの複数箇所の劣化状態を同時に検査できることで、検査材の上下方向のはんだペーストの劣化状態の検査のみに限定されず、容器内に収納されたはんだペーストの全領域を検査でき、容器内のはんだペーストの三次元的な劣化状態の分布を検査できる。したがって、容器内のはんだペーストの劣化状態の分布を容易かつ精緻に検知することで、はんだ印刷等の不良率を抑制でき、さらに劣化部位のみを特定して廃棄することで、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制することもできる。
【0025】
ここで、検査材が、少なくともその下端部に前記酸化膜を皮覆していない母材露出部を有し、該母材露出部を前記はんだペーストに浸漬させるようになっていることが好ましい。
【0026】
少なくとも検査材の下端部に母材露出部が設けられることで、検査材と同時に浸漬させる色見本等の基準となる部材が不要となり、予め検査された母材と劣化した酸化膜の変色の度合いの相関から、当該はんだペーストの劣化状態の検査が一層簡便となる。
【0027】
また、母材露出部と酸化膜が、検査材の上下方向に向かって交互に配されている形態や、検査材の側面の周方向で交互に配されている形態であれば、検査材の様々な部位において、色の基準となる母材露出部と変色する酸化膜を隣接して設けることができることから、はんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0028】
ところで、母材がはんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金からなる場合は、酸化膜を皮覆していない母材露出部が空気中の酸素によって酸化して変色するものである。特に、母材露出部がはんだペーストに浸漬しない場合は、はんだペーストの保管中においても、容器内の酸素と反応し、上記する色の基準としての機能を果たし得ない。
【0029】
そこで、従来から乾燥剤や脱酸素材を備えるはんだペーストを収容する容器が開発されてきた。その容器としては、たとえば、容器の外蓋等の内側に乾燥剤や脱酸素材を備える容器や、容器の側部や底部の内側に酸素透過性フィルムを配して容器を二重構造とし、容器と酸素透過性フィルムの間に乾燥剤や脱酸素材を備える容器を挙げることができる。
【0030】
しかし、上記する従来の容器においては、容器内に乾燥剤や脱酸素材を備えるスペースが必要となって容器が大型化し、容器内に収容できるはんだペーストの容量が削減される。また、容器内のはんだペーストをたとえばへら等の道具で容器から取り出す際に酸素透過性フィルムが破損する可能性がある。
【0031】
したがって、本発明のはんだ劣化検査方法で使用する検査材は、自身が乾燥剤または脱酸素材を備え、該乾燥剤または該脱酸素材の一部が該検査材の表面から露出しているものである。
【0032】
検査材自身が乾燥剤または脱酸素材を備えることで、容器内に乾燥剤や脱酸素材を備えるスペースが不要となり、容器の大型化を抑制してはんだペーストの収容能力を保証できる。また、母材露出部に近接して乾燥剤や脱酸素材を配することが可能となり、酸化抑制効果の増加にも繋がる。
【0033】
また、検査材の酸化膜の厚みにおいては、均一、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または該検査材の側面の周方向で連続的に変化している、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または前記検査材の側面の周方向で多段状に変化している等、様々な形態を使用できる。
【0034】
既述するように、検査材の酸化膜の変色ははんだペーストの劣化の度合いに応じて変化する一方で、酸化膜の厚みが変化すると、はんだペーストの活性剤によって還元した酸化膜の厚みと母材付近に残る還元していない酸化膜の厚みの比率が変化することから、酸化膜の厚みの変化に応じて検査材の色も変化することになる。
【0035】
したがって、検査材の上下方向に向かって、酸化膜の厚みを連続的に、もしくは多段状に変化させることで、検査材の上下方向におけるはんだペーストの劣化状態の分布を検査できる。また、検査材の側面の周方向で、酸化膜の厚みを連続的にもしくは多段状に変化させることで、検査材の上下方向における所望の高さでのはんだペーストの劣化の度合いを一層精緻に検査できるようになる。
【0036】
さらに、本発明によるはんだ劣化検査方法は、前記はんだペーストを製造して、該はんだペーストを前記容器に収容するステップと、前記容器に収容された前記はんだペーストを保管するステップと、をさらに含み、前記検査するステップが、前記収容するステップと前記保管するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの活性剤の異常を評価できるものである。
【0037】
また、前記はんだ劣化検査方法は、保管後の前記はんだペーストを使用するステップをさらに含み、前記検査するステップが、前記保管するステップと前記使用するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの保管状態の異常を評価できるものである。
【0038】
上記する形態の検査方法によれば、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常と保管状態の異常を、それぞれ個別に評価することが可能となる。すなわち、製造したはんだペーストを容器に収容してから、容器を低温雰囲気下で保管するまでの間に、検査材を使用して酸化膜の変色を検査し、はんだペーストの劣化状態の異常を評価することで、保管前におけるはんだペースト内の活性剤の異常を評価できる。また、容器を低温雰囲気下で保管してから、容器内のはんだペーストを使用するまでの間に、検査材を使用して酸化膜の変色を検査し、はんだペーストの劣化状態の異常を評価することで、はんだペーストの保管状態の異常を評価できる。
【0039】
また、本発明によるはんだ劣化検査装置は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、前記はんだ劣化検査装置の前記容器が、前記はんだペーストを収容する容器本体と該容器本体と嵌合して該容器を密閉する外蓋を備え、前記外蓋に少なくとも1つの前記検査材が固定されており、容器の密閉時に、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、容器の開封時に、該検査材を該はんだペーストから取り出して、該酸化膜の変色を検査できるようになっているものである。
【0040】
本発明のはんだ劣化検査装置によれば、容器の外蓋に酸化膜を有する検査材が固定されていることで、容器本体に外蓋を嵌合して容器を密閉すると、検査材の酸化膜の一部は容器本体のはんだペーストに浸漬され、容器を開封すると同時に、検査材をはんだペーストから取り出して酸化膜の変色を検査できる。したがって、検査材を別途取り出す作業が不要となり、取り出しに要する時間が削減され、検査中のはんだペーストの劣化を抑制して、精緻なはんだペーストの劣化状態の検査が可能となる。また、検査材を取り出すための装置が不要で、検査中のはんだペースト内への異物の混入をも抑制でき、さらに検査材の取り出し忘れ等によるはんだペーストの品質低下を抑止することもできる。
【0041】
また、本発明のはんだ劣化検査装置の容器は、収容するはんだペーストの上方に中蓋を備え、該中蓋は、容器の密閉時および開封時に、前記外蓋に固定された前記検査材が貫通する貫通孔を備えていることが好ましい。
【0042】
容器本体が貫通孔を有する中蓋を備え、貫通孔が検査材に対して僅かに大きな径を有し、容器の密閉や開封の際に、外蓋に固定された検査材が当該貫通孔を貫通できるようになっていることで、容器の開封時において、検査材に付着した余分なはんだペーストを中蓋によって検査材表面から除去できる。したがって、余分なはんだペーストを拭き取る時間が不要となって、簡便に検査材の変色を検査することができる。
【0043】
また、容器本体および前記外蓋のそれぞれが、容器の密閉時において対応する位置を示す指標を備えていることで、容器を開封して検査材をはんだペーストから取り出した後においても、検査材の容器本体における位置を検知できる。
【0044】
また、外蓋の内面のうち前記検査材が固定される面には、該外蓋に対して回転可能な回転板が備えられ、該検査材が該外蓋の該回転板に固定されていれば、たとえばネジ式の外蓋においても、約200Pa・Sの粘度を有するはんだペーストが抵抗となり、容器の開封時等におけるはんだペースト内での検査材の回転を抑制できる。したがって、検査材によって容器内の定点においてはんだペーストの劣化状態を検査でき、より一層精緻な劣化状態の検査が可能となる。
【0045】
本発明によるはんだ劣化検査装置の他の実施の形態は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、前記容器に複数の前記検査材が取り出し可能に配設され、複数の該検査材によって該容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されており、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、それぞれの該検査材を個別に該はんだペーストから取り出して、それぞれの該酸化膜の変色を検査できるようになっているものである。
【0046】
上記するはんだ劣化検査装置によれば、複数の検査材によって容器内に少なくとも2以上の区画が形成され、それぞれの検査材が個別にはんだペーストから取り出せるようになっていることで、それぞれの区画に対応した検査材の変色を個別に検査して、容器内のはんだペーストの劣化状態の分布を検査できる。また、検査材によって容器内が複数の区画に分かれていることで、既述の検査に基づいて劣化が進行していると判断された区画のはんだペーストのみを容器から抜き取って部分的に廃棄することができ、はんだペーストの廃棄量の抑制にも繋がる。
【0047】
ここで、前記検査材が、それぞれ前記容器の中心から外縁へ向かうように配設されて、前記容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されていれば、容器内に平面視で扇形の区画を均一に形成できることから好ましい。
【0048】
本発明のはんだ劣化検査方法は、金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材の少なくとも一部をはんだペーストに浸漬させ、はんだペーストから検査材をはんだペーストから取り出して酸化膜の変色を検査することで、検査に要する時間を抑制してはんだペーストの劣化状態を検査できることから、精緻かつ簡便なはんだ劣化検査方法となる。また、本発明のはんだ劣化検査装置により、検査に要する時間をさらに短縮でき、より一層精緻に容器内のはんだペーストの劣化状態を検査できる。
【発明の効果】
【0049】
以上の説明から理解できるように、本発明のはんだ劣化検査方法とその装置によれば、はんだペーストの使用前に、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常や保管状態の異常に関するはんだペーストの劣化状態を正確かつ簡便に検査でき、劣化したはんだペーストを排除して本来的に使用できるはんだペーストを選別することで、製品品質の向上とはんだペーストの有効利用を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のはんだ劣化検査装置を示した模式図である。
【図2】はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で示した図である。
【図3】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の他の実施の形態を示した斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、図3で示す検査材に脱酸素材を追加した検査材を示した斜視図である。
【図5】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の酸化膜の厚みが上下方向に向かって変化する形態を示した斜視図である。
【図6】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の酸化膜の厚みが検査材の側面の周方向で変化する形態を示した斜視図である。
【図7】(a),(b)はそれぞれ、図5で示す検査材を製造するための装置を示した模式図である。
【図8】図1で示すはんだ劣化検査装置に中蓋を追加した形態を示した模式図である。
【図9】(a)は複数の検査材を有するはんだ劣化検査装置の実施の形態を示した斜視図であり、(b)は(a)のB−B矢視図であり、(c)は(b)のC−C矢視図である。
【図10】図9で示すはんだ劣化検査装置の容器に指標を追加した図である。
【図11】図9で示すはんだ劣化検査装置の容器の外蓋に回転板を追加した図である。
【図12】本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のはんだ劣化検査装置を示した図であり、図2は、はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で示した図であり、図3〜6は、図1で示す検査材の他の実施の形態を示した図である。なお、検査材は図示例の形状に限定されず、直方体や多角柱、円錐や多角錐等、所望の形状に変更できる。そして、図7は、図5で示す検査材を製造するための装置を示した図である。また、図8は、図1で示すはんだ劣化検査装置に中蓋を追加した図であり、図9〜11は、複数の検査材を有するはんだ劣化検査装置の容器の実施の形態を示した図であり、図12は、本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示した図である。ここで、検査材と同様に、容器の形状は図示例に限定されず、直方体や多角柱等、所望の形状に変更できる。
【0052】
図1で示すはんだ劣化検査装置100は、はんだペースト9を収容するための容器10と検査材20から構成されている。容器10は容器本体1と外蓋2を備え、容器本体1の側壁に設けられた雄ネジ1aと外蓋2の側壁に設けられた雌ネジ2aが嵌合して容器10が密閉されるようになっている。また、検査材20はその母材11の側面および底面に金属酸化物からなる酸化膜12を有し、その上部が外蓋2の略中心に固定されることで、容器10の密閉時に、検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬されるようになっている。
【0053】
ここで、図面を参照してはんだペースト9の劣化状態を説明する。はんだペースト9ははんだ粉末9aとフラックス9bからなるものであり、はんだペースト9の保管状態等によってフラックス9b内には金属塩9cが増加する。特に鉛フリーはんだのような活性剤の活性が強いフラックス9bにおいては、活性剤とはんだ粉末9aが反応して(矢印K1)はんだペースト9が劣化する一方で、検査材20が酸化膜12を有することで、活性剤は検査材20の酸化膜12を還元させ(矢印K2)、従来のはんだペーストに対して、はんだペースト9の劣化が抑制される。
【0054】
図2を参照して、はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で説明する。はんだペーストは、はんだペーストの製造メーカーにおいて高温雰囲気下ではんだ粉末とフラックスを混錬して製造された後(区間A)、常温状態まで冷却されて(区間B)容器へ収納され(区間C)、はんだペーストの劣化を抑制するためにさらに約0℃〜10℃の低温状態まで冷却される(区間D)。そして、製造メーカーの保管室でユーザーへの発送まで低温雰囲気下で保管された後(区間E)、必要に応じて低温雰囲気に温度管理された状態でユーザーへ搬送される(区間F)。ユーザーは使用までの間、ユーザーの保管室で低温雰囲気の下で管理した後(区間G)、はんだペーストの使用に際して保管室から必要量のはんだペーストを取り出し、それを約1時間の常温雰囲気下での放置や数分間の攪拌によって常温状態へ戻して(区間H)、基板等への印刷に使用する(区間I)。
【0055】
図1で示すはんだ劣化検査装置100においては、まず、容器本体1に製造後のはんだペースト9が収容され、外蓋2を容器本体1に対して時計回りに回転させることで容器10が密閉されて、外蓋2に固定された検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬される。密閉された容器10は0℃〜10℃の低温状態まで冷却され、製造メーカーやユーザーによる保管や搬送の間、低温雰囲気下において検査材20がはんだペースト9に浸漬された状態となる。ユーザーははんだペーストの使用に当たり、低温環境下で保管されたはんだペースト9とその容器10を常温状態まで戻し、外蓋2を容器本体1に対して反時計回りに回転させることで容器10が開封される。ここで、検査材20が外蓋2に固定されていることで、容器10の開封と同時に検査材20をはんだペースト9から取り出すことができ、酸化膜12の変色を検査して、はんだペースト9の劣化状態を検査できる。
【0056】
変色の検査においては目視による検査も可能であるが、変色後の検査材を写真やビデオで撮影し、それをコンピュータに取り込んで画像解析ソフトで解析して検査することで、変色の度合いやその分布を一層精緻に検査することができる。
【0057】
なお、酸化膜12の厚みははんだペーストの活性力や保証期間に応じて変更可能であり、一般に1nmから1000nmの範囲内であることが好ましく、酸化膜12をはんだペーストに浸漬させる寸法は、搬送時の振動や目視による検査の便宜等を考慮すると、10mm以上であることが好ましい。
【0058】
ここで、はんだペーストから検査までの工程は、上記のごとく、たとえば、はんだペーストの容器への収容時に、はんだペーストを製造する製造メーカーが検査材をはんだペーストに浸漬させ、はんだペーストを使用するユーザーが、その使用前に検査材を取り出してはんだペーストの劣化状態を検査してもよいし、検査までの工程をすべて同一の者が実施してもよい。
【0059】
また、使用までの間のいくつかのステップにおいて上記する検査を行うことで、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常と保管状態の異常を、それぞれ個別に評価することができる。すなわち、図2で示す区間C,Dに対応するはんだペーストの保管前のステップにおいて、検査材20を容器10から取り出して酸化膜12の変色からはんだペースト9の劣化状態の検査することで、保管前におけるはんだペースト内の活性剤の異常を評価できる。また、図2で示す区間E以後であってはんだペーストを使用する前のステップにおいて、検査材20を容器10から取り出して酸化膜12の変色からはんだペースト9の劣化状態の検査することで、はんだペーストの保管状態の異常を評価できる。
【0060】
次に、図3から図6を参照して、図1で示す検査材の他の実施の形態を説明する。
【0061】
図3aで示す検査材30Aには、母材露出部21Aと酸化膜22Aが検査材30Aの側面の周方向で交互に配され、図3bで示す検査材30Bには、母材露出部21Bと酸化膜22Bが検査材30Bの上下方向に向かって交互に配されている。容器密閉時には上記する母材露出部21A,21Bと酸化膜22A,22Bのそれぞれが、はんだペーストに浸漬できるようになっており、母材露出部と酸化膜が隣接することで、母材に対する酸化膜の劣化状態の相対的な比較が容易となり、母材露出部を色の基準としてはんだペーストの劣化状態を簡便かつ精緻に検査できる。
【0062】
なお、上記する母材露出部と酸化膜の基数、それぞれの酸化膜の厚みは所望に変更でき、少なくとも検査材の下端部に母材露出部を設けることで、色見本となる母材露出部がはんだペーストに浸漬されて、色の基準となる追加の部材が不要となり、はんだペーストの劣化状態の検査が容易となる。
【0063】
図4で示す検査材は、図3で示す検査材に脱酸素材を追加した検査材である。図4aで示す検査材40Aには、その側部であって周方向で交互に配された母材露出部31Aと酸化膜32Aに穿孔33Aが設けられ、その穿孔33Aに脱酸素材34Aが配設されて、脱酸素材34Aの一部が検査材40Aの表面に露出している。また、図4bで示す検査材40Bには、その側部であって上下方向に向かって交互に配された母材露出部31Bと酸化膜32Bに穿孔33Bが設けられ、その穿孔33Bに脱酸素材34Bが配設されて、脱酸素材34Bの一部が検査材40Bの表面に露出している。したがって、自身が脱酸素材を有することで、母材露出部の酸化防止効果が増加して効率的に母材露出部の酸化を抑制することができる。
【0064】
なお、穿孔および母材露出部の基数や配置等においては、母材露出部の酸化防止効果に基づいて所望に変更できる。また、検査材の所望の位置に貫通孔を設け、その貫通孔内に脱酸素材や乾燥剤を配して、その一部を検査材の表面に露出させる形態であってもよい。
【0065】
図5には、図1で示す検査材の他の実施の形態の検査材が示されている。図5aで示す検査材50Aは、母材41A表面に配された酸化膜42Aの厚みが、検査材50Aの上方に向かって増加するように連続的に変化している。また、図5bで示す検査材50Bは、母材41B表面に配された酸化膜42Bの厚みが、検査材50Bの上方に向かって多段状に増加するように変化している。ここで、一定時間はんだペースト内に酸化膜42A,42Bを浸漬させると、酸化膜42A,42Bの厚みが薄い部位は、酸化膜42A,42Bの厚みが厚い部位と比較して、相対的に外観上の変色が大きい。また、はんだペーストが劣化していると酸化膜42A,42Bの色が大きく変化することから、予め金属酸化物の酸化膜の厚みとはんだペーストの劣化状態の相関を取ることで、はんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0066】
なお、図5で示す検査材50A,50Bが有する酸化膜41A,41Bの厚みは、検査材の下方へ向かって増加するように連続的に変化する形態であってもよいし、検査材の下方へ向かって増加するように多段状に変化する形態であってもよい。
【0067】
図5で示す検査材に対して図6で示す検査材は、検査材の側面の周方向で酸化膜の厚みが変化する検査材である。図6aで示す検査材60Aは、母材51A表面に配された酸化膜52Aの厚みが、検査材50Aの側面で周方向に連続的に変化している。また、図6bで示す検査材60Bは、母材51B表面に配された酸化膜52Bの厚みが、検査材60Bの側面の周方向で多段状に変化している。すなわち、検査材60A,60Bが、酸化膜の厚い部位52Aa,52Baと薄い部位52Ab,52Bbを有していることで、検査材60A,60Bの所望の高さにおいても、酸化膜52A,52Bの色の変化を検査してはんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0068】
次に、図7を参照して、図5で示す検査材50A,50Bを製造する装置を説明する。なお、図7aは図5aで示す検査材50Aを製造するための装置であり、図7bは図5bで示す検査材50Bを製造するための装置である。
【0069】
図7aで示す加熱チャンバーC1は、その下部に検査材70Aが貫通できる開口C1aを有しており、その側方には、金属酸化物を吐出するための開口C1bを有している。そして、加熱チャンバーC1は金属酸化物を貯蔵する貯蔵室S1と接続管L1で接続され、加熱チャンバーC1内へ接続管L1を介して金属酸化物を吐出できるようになっている。なお、吐出される金属酸化物の量は、検査材に形成される酸化膜の厚み、金属酸化物を含んだ気体の温度や酸素濃度、湿度等に基づいて変更できる。
【0070】
また、検査材70Aの母材61Aは送出機D1のシャフトD11に取り付けられ、送出機D1の駆動手段D12によって、検査材70Aが加熱チャンバーC1内へ開口C1aを介して送出できるようになっており、母材61Aの表面への酸化膜62Aの形成後、加熱チャンバーC1から検査材70Aを取り出せるようになっている。
【0071】
したがって、検査材70Aの母材61AをシャフトD11に取り付け、母材61Aを加熱チャンバーC1内へ一定速度で送出しながら、加熱チャンバーC1へ一定量の金属酸化物を開口C1bから吐出すれば、図5aで説明するような、検査材70Aの上方へ向かって酸化膜62Aの厚みが増加する検査材70Aが製造される。
【0072】
また、図7bで示す加熱チャンバーC2は、図1で示す加熱チャンバーC1と同様の構成を備えているが、その内部には、加熱チャンバーC2を4つの区画に区分するための遮蔽板C2cが備えられ、加熱チャンバーC2の内部の4つの区画をそれぞれ異なる雰囲気下に設定できるようになっている。また、それぞれの遮蔽板C2cには、検査材70Bが貫通できる開口C2dが設けられている。
【0073】
検査材70Bの母材61Bが送出機D2のシャフトD21に取り付けられ、送出機D2の駆動手段D22によって、検査材70Bが加熱チャンバーC2内へ開口C2aを介して送出されて設置された後、加熱チャンバーC2へ一定量の金属酸化物が開口C2bから吐出される。それぞれの区画で異なる量の金属酸化物が吐出されることにより、図5bで説明するような、酸化膜62Bの厚みが検査材70Bの上下方向に向かって多段状に変化している検査材70Bが形成され、送出機D2によって検査材70Bが加熱チャンバーC2から取り出されて、検査材70Bが製造される。
【0074】
なお、上記する加熱チャンバーC2に対して、金属酸化物を吐出しながら母材61Bを送出してもよい。また、加熱チャンバーC2の区画の基数や形成される酸化膜62Aの厚みは所望に変更でき、酸化膜の厚みは、送出機の送り速度によっても変更できる。
【0075】
また、母材を加熱チャンバー内で回転させながら金属酸化物を吐出して酸化膜を形成することで、母材の周方向で均一な厚みを有する検査材を製造することもできる。
【0076】
次に、図8を参照して、図1で示すはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を説明する。なお、図8における図1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0077】
図8で示す容器本体1Aには、収納されるはんだペースト9Aの上方に中蓋3Aが配され、中蓋3Aには、外蓋2Aを容器本体1Aに対して時計回りに回転して容器10Aが密閉される際に、外蓋2Aに固定された検査材20Aが貫通できる貫通孔4Aが、中蓋3Aの略中心に配されている。そして、貫通孔4Aが検査材20Aに対して僅かに大きな径を有していることで、容器10Aを開封する際に中蓋3Aが検査材20Aに付着した余分なはんだペースト9Aを検査材20Aの表面から除去でき、検査材20Aの表面から余分なはんだペーストを取り去る作業が不要となり、還元された酸化膜12Aの検査が容易となる。
【0078】
図9は、上記する検査材を同時に複数設けたはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示している。図9aは本実施の形態の斜視図であり、図9bは図9aにおける実施の形態のB−B矢視図、図9cは図9bにおける断面図のC−C矢視図である。
【0079】
図9aを参照すると、外蓋2Bには、その略中心と容器本体1Bを4等分する等間隔の4つの位置に、合わせて5本の検査材20Bが固定されており、容器10Bの密閉時には、それらの検査材20Bは同時にはんだペーストに浸漬され、容器10Bの開封時には、同時にはんだペーストから取り出せるようになっている。したがって、同時に取り出した検査材20Bを検査することで、容器10B内のはんだペースト9Bの劣化状態の三次元的な分布を検査することができ、はんだペースト9Bの劣化状態をより一層精緻に検査できる。また、劣化が確認された部位のみを、たとえばへら等で取り出して廃棄することで、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制できる。
【0080】
また、図9bを参照すると、容器本体1Bには、酸化膜12Bを有する検査材20Bが貫通できる貫通孔4Bを有する中蓋3Bが配されており、容器10Bの開封時には、検査材20Bに付着した余分なはんだペースト9Bが中蓋3Bによって除去されるようになっている。したがって、同時に取り出した複数の検査材20Bを検査する際にも、それぞれの検査材20Bに付着した余分なはんだペーストを拭き取る作業が不要となり、検査時間を短縮でき、簡便に検査材20Bの変色を検査できる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、中蓋3Bが容器本体1Bに固定され、検査材20Bが外蓋2Bに固定されていることから、容器本体1Bと外蓋2Bはネジ式に嵌合して密閉されるものではなく、容器本体1Bの側壁に配された凸部1Baと外蓋2Bの側壁に配された凹部2Baが嵌合することで容器10Bが密閉される(図9c参照)。
【0082】
また、上記する形態における検査材の基数や配置、検査材の長さ等は、はんだペーストの活性剤の活性力や保証期間、検査の分解能等に応じて変更でき、複数の検査材の酸化膜の厚みをそれぞれ異なる厚みとすることもできる。
【0083】
図10は、本発明のはんだ劣化検査装置で使用する容器の他の実施の形態を示している。ここで、図示する実施の形態は、図9で示すように外蓋に複数の検査材が固定されているはんだ劣化検査装置や、外蓋を容器本体に対して回転して密閉および開封する容器を有するはんだ劣化検査装置に対して有効である。
【0084】
図示する容器本体1Cおよび外蓋2Cのそれぞれには、容器の密閉時において対応する位置Pに指標1Ca,2Caが配され、密閉時における容器本体1Cと外蓋2Cの位置が、容器の開封後においても認識できるようになっている。したがって、容器10Cの開封後に外蓋2Cに固定された検査材(不図示)を検査する際にも、検査材が容器本体1Cに収容されたはんだペーストのどの位置を検査したものであるかが容易に認識でき、はんだペーストの劣化状態の分布を精緻に検査できる。
【0085】
なお、上記する指標の形態としては、たとえば、容器に色を付する形態や容器本体と外蓋の対応する位置にそれぞれ凸部を設ける形態等、容器本体と外蓋の位置が容器の開封後においても認識できる形態であればさまざまな形態を適用できる。
【0086】
また、図11は、図9で示すはんだ劣化検査装置の外蓋の他の実施の形態を示している。なお、図11における図9と同様の構成については、その説明を省略する。
【0087】
図示する容器10Dの外蓋2Dの内面2Dbには回転板5Dが配され、回転板5Dの下面に複数の検査材20Dが固定されている。また、回転板5Dはその周縁を外蓋2Dに配された凸部2Dcで支承されることで、回転板5Dが外蓋2Dに対して回転可能となっている。また、図示する容器10Dは、容器本体1Dの側壁に設けられた雄ネジ1Daと外蓋2Dの側壁に設けられた雌ネジ2Daが嵌合して密閉されるようになっている。したがって、外蓋2Dを容器本体1Dに対して回転させて容器10Dを密閉および開封する際にも、粘度の高いはんだペースト9Dが検査材20Dの動きに対して抵抗となり、はんだペースト9Dに対する検査材20Dおよび回転板5Dの回転が抑制されて、検査材20Dによる定点でのはんだペースト9Dの劣化状態の検査が可能となり、容器内のはんだペーストの劣化分布の精緻な検査が可能となる。
【0088】
また、上記する形態によれば、検査材20Dによるはんだペーストの劣化状態の検査後、外蓋2Dから還元された検査材20Dが固定された回転板5Dを取り外し、当該外蓋に新たな検査材を有する回転板を取り付けることで、外蓋を再利用することも可能となる。
【0089】
次に、図12を参照して、本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を説明する。なお、本実施の形態における外蓋2の形態は、図8〜11で示す検査材が外蓋に固定された形態にも変更できる。
【0090】
図示する容器10Eの容器本体1Eには、その中心に検査材20Eを把持するための把持手段6Eが配されると共に、容器本体1Eの側部の内壁に等間隔に6つの把持部7Eが配されている。また、把持手段6Eの把持部7Eに対応する位置には6つの凹部6Eaが設けられており、把持手段6Eの凹部6Eaと把持部7Eの凹部7Eaによって検査材20Eの両端が把持され、検査材20Eが容器本体1Eに固定される。そして、6つの検査材20Eにより、容器本体1Eの内部には6つの均一な区画が形成される。
【0091】
ここで、検査材20Eは、それぞれ個別に容器本体1Eの開口方向にスライド式に取り出しが可能であるため、それぞれの区画に対応する検査材20Eの酸化膜12Eの変色を個別に検査することで、容器本体1Eのそれぞれの区画のはんだペーストの劣化状態を個別に検査できる。また、容器本体1Eの内部のはんだペーストが区画ごとに分かれていることで、既述する検査に基づいて劣化が進行していると判断された区画のはんだペーストのみを容器本体1Eから取り出して部分的に廃棄することが可能となり、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制できる。
【0092】
なお、既述する区画の基数や配置、検査材を固定する手段等においては、はんだペーストの活性剤の活性力や検査の分解能、容器の材質等に応じて、所望に変更できる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…容器本体、2…外蓋、3…中蓋、4A,4B…貫通孔、5D…回転板、6E…把持手段、7E…把持部、9…はんだペースト、10…容器、11…母材、12…酸化膜、20…検査材、100…はんだ劣化検査装置、C1,C2…加熱チャンバー、S1,S2…貯蔵室、L1,L2…接続管、D1,D2…送出機、D11,D21…シャフト、D12,D22…駆動手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだペーストの劣化状態を精緻かつ簡便に検査できるはんだ劣化検査方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から基板表面へのチップ等の部品の実装においては、すずや鉛からなるはんだが使用されている。その一例として、所要パターンの穴が形成されたマスクを用いて基板表面にはんだを印刷し、印刷されたはんだ上に部品を載置して、リフロー炉で部品と基板を接合する方法がある。ここで、基板に印刷されるはんだは、はんだ粉末と粘性のあるペースト状のフラックスとの混合物であり、はんだペーストやソルダペーストと呼ばれている。このはんだペーストは、熱の影響で劣化しやすく、たとえば、はんだペーストの表面に劣化したはんだ材の皮膜が発生したり、はんだペースト自体の粘度が増加したりして、はんだペーストの濡れ性や印刷性が低下するということが知られている。そこで、はんだ製造メーカーで製造されたはんだペーストは、ユーザーが使用するまでの間は約0℃〜10℃の低温雰囲気下で保管され、はんだペーストの劣化の抑制が図られている。
【0003】
ところで、現在、自動車産業においては、自動車で使用される材料に関し、環境負荷の軽減を目的に有害物質の使用量削減を図ろうとする、たとえば欧州の「ELV指令(End of Life Vehicles指令)」が施行される等、世界各国で環境負荷が大きい材料を規制する動きが活発化している。そこで、自動車全体においても、鉛等の有害物質を含有せず、環境影響負荷を低減できる環境材料の開発が求められている。
【0004】
上記する環境材料として、環境負荷を低減でき、さらに人体への影響も少ない鉛フリーはんだを挙げることができる。鉛フリーはんだは、廃棄物として埋め立て処分される際にも、鉛が周辺環境に流出して自然環境を汚染する危険性が低く、さらに作業者がはんだ付け中に有害な鉛蒸気を吸入する危険性も低減できることから、開発と普及が進められている材料である。
【0005】
しかし、鉛フリーはんだは、従来のすず−鉛はんだ材と比較して、反応性の高いすずの含有率が高いことから、はんだペーストが劣化しやすいという課題がある。また、鉛を含有するはんだ材と比較して融点が高く、硬くて伸びが少ないことから濡れ性が低下する。そのため、はんだペーストのフラックスに含まれる活性剤の活性を強力なものとする必要がある一方で、それによって今度ははんだペーストの劣化が促進されるという課題が生じてしまう。
【0006】
上記する課題に対して、低融点元素であるビスマス、亜鉛、インジウムを含む低融点鉛フリーはんだ用のはんだ粉末の開発や、はんだ粉末の反応性を抑制する金属元素を添加したはんだ粉末の開発、室温付近では活性がなく、融点付近で高い活性を発揮できるフラックスの開発等が進められているものの、低温雰囲気下での保管においても、それらに起因するはんだペーストの劣化を完全に抑止することはできない。また、鉛フリーはんだは従来の含鉛はんだと比較して熱による劣化が促進されるために、低温雰囲気下における保管において一層厳密な保管状態の下に管理されるものの、その保管状態に起因するはんだペーストの劣化を完全に抑止することは困難である。
【0007】
そこで、はんだペーストの使用前にはんだペーストの劣化状態を検査することができ、この検査によってはんだペーストの粘度等の特性を把握して、はんだ印刷不良抑止と生産効率の向上を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置の開発が望まれている。
【0008】
ところで、上記するはんだ劣化検査方法に関する従来の公開技術として、特許文献1,2に開示の方法を挙げることができる。特許文献1に開示のはんだ劣化検査方法は、はんだペーストが介在している2つの部材を引き離し、2つの部材間に位置するはんだペーストに光を出射し、2つの部材間を通過した光、またははんだペーストによって反射された光を測定して、はんだペーストの粘度変化を評価し、はんだペーストの劣化状態を検査するものである。また、特許文献2に開示のはんだ劣化検査方法は、はんだペーストの透明容器の内壁面に貼り付けられた温度感知ラベルの色や数字の変化によって、容器内に収容されたはんだペーストの温度を検知することで、はんだペーストの劣化状態を検査できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−242927号公報
【特許文献2】特開2005−271030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示のはんだ劣化検査方法においては、光を出射する投光部や光を受光する受光部を設け、さらにその検査用の装置にはんだペーストが介在している2つの部材を設置して、2つの部材を引き離しながらはんだペーストの粘度を評価する必要がある。そのため、検査装置が大型化し、さらに粘度の測定に時間を要することから、時間に応じて劣化するはんだペーストの検査方法としては好ましくない。また、特許文献2に開示のはんだ劣化検査方法においては、最も外気に近く温度変化の大きい、はんだペースト用容器の側部付近のみのはんだペーストの温度測定によってはんだペーストの劣化状態を検査するものであり、容器全体におけるはんだペーストの正確な劣化状態を検査することができない。したがって、検査に要する時間を短縮でき、容器内のはんだペーストの全領域の劣化状態を精緻に検査できるはんだ劣化検査方法とその装置の確立が、当該技術分野における急務の解決課題となっている。
【0011】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、はんだペーストの使用に際して、はんだペーストの劣化状態を精緻かつ簡便に検査でき、劣化したはんだペーストを排除して本来的に使用できるはんだペーストを選別することで、製品品質の向上とはんだペーストの有効利用を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明によるはんだ劣化検査方法は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置を使用して、はんだペーストの劣化状態を検査するはんだ劣化検査方法であって、少なくとも前記検査材の前記酸化膜の一部を前記容器の前記はんだペーストに浸漬させるステップと、前記検査材を前記はんだペーストから取り出して、前記酸化膜の変色を検査するステップと、からなるものである。
【0013】
ここで、はんだペーストは、はんだ粉末とフラックスからなるものであり、鉛フリーはんだのはんだ粉末としては、すず−銅系、すず−銀系、すず−銀−銅系のはんだ粉末や、低融点元素であるビスマス、亜鉛、インジウムを含む、すず−銀−銅−ビスマス系、すず−銀−ビスマス−インジウム系、すず−亜鉛系、すず−ビスマス系の低融点鉛フリーはんだ用のはんだ粉末、金やアンチモンを含む、すず−金系、すず−アンチモン系の高温はんだ用のはんだ粉末を挙げることができる。
【0014】
また、鉛フリーはんだのはんだペーストにおけるフラックスは、ロジン、活性剤、チキソ剤、および溶剤等からなるものである。
【0015】
ロジンとしては、天然ロジン(松脂)、重合ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジンのほか、ロジン誘導体を挙げることができる。
【0016】
また、溶剤は固形成分を溶解して過度の粘調性を持たせるもので、多くの有機溶剤を使用可能であるが、たとえば、ジエチレングリコールモノエチレンエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル等などを使用できる。
【0017】
また、チキソ剤は、ペースト状フラックスとはんだ粉末を均一に混和させた後、これらが分離しないように維持すると共に、印刷性に寄与できるものであり、たとえば、水素添加ヒマシ油、ヤシ油等を使用できる。
【0018】
そして、活性剤は接合すべき金属の酸化膜を除去するもので、有機酸(カルボン酸)が中心であり、たとえば、モノカルボン酸の蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エントナ酸、カプリル酸、安息香酸等や、ジカルボン酸のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸等を使用できる。また、活性度を向上させるためにハロゲンを添加したアミンのハロゲン化水素酸やアミン・有機酸等が用いられ、ハロゲン化水素酸としては、メチルアミン塩酸塩、メチルアミン臭酸塩、エチルアミン塩酸塩、エチルアミン臭酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン臭酸塩等を挙げることができる。
【0019】
本発明のはんだ劣化検査方法によれば、金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材の少なくとも一部をはんだペーストに浸漬させるように、容器内に検査材とはんだペーストを収容し、はんだペーストの使用前に検査材をはんだペーストから取り出して、酸化膜の変色を検査するという簡単な方法によって、はんだペーストの劣化状態を検査できる。すなわち、検査に要する時間が短縮できるため、検査中のはんだペーストの劣化を抑制できることで、精緻なはんだペーストの劣化状態の検査が可能となる。
【0020】
なお、本発明における酸化膜の変色は目視によっても容易に確認できるものであり、検査のための付加的な装置が不要であるが、変色した検査材を写真やビデオで撮影し、それをコンピュータに取り込んで画像解析ソフトで解析して検査することで、変色の度合いやその分布を一層精緻に検査することもできる。
【0021】
ここで、本発明の検査材に用いられる母材は、樹脂またははんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金からなることが好ましい。さらに、酸化膜に用いられる金属酸化物は、はんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金の酸化物からなることが好ましい。
【0022】
たとえば、すず−銀−銅系のはんだ粉末を含むはんだペーストを使用する際には、すず、銀、銅のうちのいずれか一種からなる金属、またはそれらの複数を含む合金からなる母材や金属酸化物を使用することで、はんだペーストとの親和性を有し、はんだペーストの濡れ性や印刷性の低下を抑制することができる。
【0023】
また、本発明のはんだ劣化検査方法の他の実施の形態は、前記はんだ劣化検査装置が複数の前記検査材を備え、複数の該検査材を同時に前記はんだペーストに浸漬させ、複数の該検査材を同時に該はんだペーストから取り出して、該はんだペーストの複数の位置における前記酸化膜の変色を同時に検査するようになっているものである。
【0024】
はんだ劣化検査装置が複数の検査材を備え、はんだペーストの複数箇所の劣化状態を同時に検査できることで、検査材の上下方向のはんだペーストの劣化状態の検査のみに限定されず、容器内に収納されたはんだペーストの全領域を検査でき、容器内のはんだペーストの三次元的な劣化状態の分布を検査できる。したがって、容器内のはんだペーストの劣化状態の分布を容易かつ精緻に検知することで、はんだ印刷等の不良率を抑制でき、さらに劣化部位のみを特定して廃棄することで、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制することもできる。
【0025】
ここで、検査材が、少なくともその下端部に前記酸化膜を皮覆していない母材露出部を有し、該母材露出部を前記はんだペーストに浸漬させるようになっていることが好ましい。
【0026】
少なくとも検査材の下端部に母材露出部が設けられることで、検査材と同時に浸漬させる色見本等の基準となる部材が不要となり、予め検査された母材と劣化した酸化膜の変色の度合いの相関から、当該はんだペーストの劣化状態の検査が一層簡便となる。
【0027】
また、母材露出部と酸化膜が、検査材の上下方向に向かって交互に配されている形態や、検査材の側面の周方向で交互に配されている形態であれば、検査材の様々な部位において、色の基準となる母材露出部と変色する酸化膜を隣接して設けることができることから、はんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0028】
ところで、母材がはんだペーストの組成に含まれる単一金属や合金からなる場合は、酸化膜を皮覆していない母材露出部が空気中の酸素によって酸化して変色するものである。特に、母材露出部がはんだペーストに浸漬しない場合は、はんだペーストの保管中においても、容器内の酸素と反応し、上記する色の基準としての機能を果たし得ない。
【0029】
そこで、従来から乾燥剤や脱酸素材を備えるはんだペーストを収容する容器が開発されてきた。その容器としては、たとえば、容器の外蓋等の内側に乾燥剤や脱酸素材を備える容器や、容器の側部や底部の内側に酸素透過性フィルムを配して容器を二重構造とし、容器と酸素透過性フィルムの間に乾燥剤や脱酸素材を備える容器を挙げることができる。
【0030】
しかし、上記する従来の容器においては、容器内に乾燥剤や脱酸素材を備えるスペースが必要となって容器が大型化し、容器内に収容できるはんだペーストの容量が削減される。また、容器内のはんだペーストをたとえばへら等の道具で容器から取り出す際に酸素透過性フィルムが破損する可能性がある。
【0031】
したがって、本発明のはんだ劣化検査方法で使用する検査材は、自身が乾燥剤または脱酸素材を備え、該乾燥剤または該脱酸素材の一部が該検査材の表面から露出しているものである。
【0032】
検査材自身が乾燥剤または脱酸素材を備えることで、容器内に乾燥剤や脱酸素材を備えるスペースが不要となり、容器の大型化を抑制してはんだペーストの収容能力を保証できる。また、母材露出部に近接して乾燥剤や脱酸素材を配することが可能となり、酸化抑制効果の増加にも繋がる。
【0033】
また、検査材の酸化膜の厚みにおいては、均一、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または該検査材の側面の周方向で連続的に変化している、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または前記検査材の側面の周方向で多段状に変化している等、様々な形態を使用できる。
【0034】
既述するように、検査材の酸化膜の変色ははんだペーストの劣化の度合いに応じて変化する一方で、酸化膜の厚みが変化すると、はんだペーストの活性剤によって還元した酸化膜の厚みと母材付近に残る還元していない酸化膜の厚みの比率が変化することから、酸化膜の厚みの変化に応じて検査材の色も変化することになる。
【0035】
したがって、検査材の上下方向に向かって、酸化膜の厚みを連続的に、もしくは多段状に変化させることで、検査材の上下方向におけるはんだペーストの劣化状態の分布を検査できる。また、検査材の側面の周方向で、酸化膜の厚みを連続的にもしくは多段状に変化させることで、検査材の上下方向における所望の高さでのはんだペーストの劣化の度合いを一層精緻に検査できるようになる。
【0036】
さらに、本発明によるはんだ劣化検査方法は、前記はんだペーストを製造して、該はんだペーストを前記容器に収容するステップと、前記容器に収容された前記はんだペーストを保管するステップと、をさらに含み、前記検査するステップが、前記収容するステップと前記保管するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの活性剤の異常を評価できるものである。
【0037】
また、前記はんだ劣化検査方法は、保管後の前記はんだペーストを使用するステップをさらに含み、前記検査するステップが、前記保管するステップと前記使用するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの保管状態の異常を評価できるものである。
【0038】
上記する形態の検査方法によれば、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常と保管状態の異常を、それぞれ個別に評価することが可能となる。すなわち、製造したはんだペーストを容器に収容してから、容器を低温雰囲気下で保管するまでの間に、検査材を使用して酸化膜の変色を検査し、はんだペーストの劣化状態の異常を評価することで、保管前におけるはんだペースト内の活性剤の異常を評価できる。また、容器を低温雰囲気下で保管してから、容器内のはんだペーストを使用するまでの間に、検査材を使用して酸化膜の変色を検査し、はんだペーストの劣化状態の異常を評価することで、はんだペーストの保管状態の異常を評価できる。
【0039】
また、本発明によるはんだ劣化検査装置は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、前記はんだ劣化検査装置の前記容器が、前記はんだペーストを収容する容器本体と該容器本体と嵌合して該容器を密閉する外蓋を備え、前記外蓋に少なくとも1つの前記検査材が固定されており、容器の密閉時に、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、容器の開封時に、該検査材を該はんだペーストから取り出して、該酸化膜の変色を検査できるようになっているものである。
【0040】
本発明のはんだ劣化検査装置によれば、容器の外蓋に酸化膜を有する検査材が固定されていることで、容器本体に外蓋を嵌合して容器を密閉すると、検査材の酸化膜の一部は容器本体のはんだペーストに浸漬され、容器を開封すると同時に、検査材をはんだペーストから取り出して酸化膜の変色を検査できる。したがって、検査材を別途取り出す作業が不要となり、取り出しに要する時間が削減され、検査中のはんだペーストの劣化を抑制して、精緻なはんだペーストの劣化状態の検査が可能となる。また、検査材を取り出すための装置が不要で、検査中のはんだペースト内への異物の混入をも抑制でき、さらに検査材の取り出し忘れ等によるはんだペーストの品質低下を抑止することもできる。
【0041】
また、本発明のはんだ劣化検査装置の容器は、収容するはんだペーストの上方に中蓋を備え、該中蓋は、容器の密閉時および開封時に、前記外蓋に固定された前記検査材が貫通する貫通孔を備えていることが好ましい。
【0042】
容器本体が貫通孔を有する中蓋を備え、貫通孔が検査材に対して僅かに大きな径を有し、容器の密閉や開封の際に、外蓋に固定された検査材が当該貫通孔を貫通できるようになっていることで、容器の開封時において、検査材に付着した余分なはんだペーストを中蓋によって検査材表面から除去できる。したがって、余分なはんだペーストを拭き取る時間が不要となって、簡便に検査材の変色を検査することができる。
【0043】
また、容器本体および前記外蓋のそれぞれが、容器の密閉時において対応する位置を示す指標を備えていることで、容器を開封して検査材をはんだペーストから取り出した後においても、検査材の容器本体における位置を検知できる。
【0044】
また、外蓋の内面のうち前記検査材が固定される面には、該外蓋に対して回転可能な回転板が備えられ、該検査材が該外蓋の該回転板に固定されていれば、たとえばネジ式の外蓋においても、約200Pa・Sの粘度を有するはんだペーストが抵抗となり、容器の開封時等におけるはんだペースト内での検査材の回転を抑制できる。したがって、検査材によって容器内の定点においてはんだペーストの劣化状態を検査でき、より一層精緻な劣化状態の検査が可能となる。
【0045】
本発明によるはんだ劣化検査装置の他の実施の形態は、はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、前記容器に複数の前記検査材が取り出し可能に配設され、複数の該検査材によって該容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されており、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、それぞれの該検査材を個別に該はんだペーストから取り出して、それぞれの該酸化膜の変色を検査できるようになっているものである。
【0046】
上記するはんだ劣化検査装置によれば、複数の検査材によって容器内に少なくとも2以上の区画が形成され、それぞれの検査材が個別にはんだペーストから取り出せるようになっていることで、それぞれの区画に対応した検査材の変色を個別に検査して、容器内のはんだペーストの劣化状態の分布を検査できる。また、検査材によって容器内が複数の区画に分かれていることで、既述の検査に基づいて劣化が進行していると判断された区画のはんだペーストのみを容器から抜き取って部分的に廃棄することができ、はんだペーストの廃棄量の抑制にも繋がる。
【0047】
ここで、前記検査材が、それぞれ前記容器の中心から外縁へ向かうように配設されて、前記容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されていれば、容器内に平面視で扇形の区画を均一に形成できることから好ましい。
【0048】
本発明のはんだ劣化検査方法は、金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材の少なくとも一部をはんだペーストに浸漬させ、はんだペーストから検査材をはんだペーストから取り出して酸化膜の変色を検査することで、検査に要する時間を抑制してはんだペーストの劣化状態を検査できることから、精緻かつ簡便なはんだ劣化検査方法となる。また、本発明のはんだ劣化検査装置により、検査に要する時間をさらに短縮でき、より一層精緻に容器内のはんだペーストの劣化状態を検査できる。
【発明の効果】
【0049】
以上の説明から理解できるように、本発明のはんだ劣化検査方法とその装置によれば、はんだペーストの使用前に、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常や保管状態の異常に関するはんだペーストの劣化状態を正確かつ簡便に検査でき、劣化したはんだペーストを排除して本来的に使用できるはんだペーストを選別することで、製品品質の向上とはんだペーストの有効利用を実現できるはんだ劣化検査方法とその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のはんだ劣化検査装置を示した模式図である。
【図2】はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で示した図である。
【図3】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の他の実施の形態を示した斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、図3で示す検査材に脱酸素材を追加した検査材を示した斜視図である。
【図5】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の酸化膜の厚みが上下方向に向かって変化する形態を示した斜視図である。
【図6】(a),(b)はいずれも、図1で示す検査材の酸化膜の厚みが検査材の側面の周方向で変化する形態を示した斜視図である。
【図7】(a),(b)はそれぞれ、図5で示す検査材を製造するための装置を示した模式図である。
【図8】図1で示すはんだ劣化検査装置に中蓋を追加した形態を示した模式図である。
【図9】(a)は複数の検査材を有するはんだ劣化検査装置の実施の形態を示した斜視図であり、(b)は(a)のB−B矢視図であり、(c)は(b)のC−C矢視図である。
【図10】図9で示すはんだ劣化検査装置の容器に指標を追加した図である。
【図11】図9で示すはんだ劣化検査装置の容器の外蓋に回転板を追加した図である。
【図12】本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明のはんだ劣化検査装置を示した図であり、図2は、はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で示した図であり、図3〜6は、図1で示す検査材の他の実施の形態を示した図である。なお、検査材は図示例の形状に限定されず、直方体や多角柱、円錐や多角錐等、所望の形状に変更できる。そして、図7は、図5で示す検査材を製造するための装置を示した図である。また、図8は、図1で示すはんだ劣化検査装置に中蓋を追加した図であり、図9〜11は、複数の検査材を有するはんだ劣化検査装置の容器の実施の形態を示した図であり、図12は、本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示した図である。ここで、検査材と同様に、容器の形状は図示例に限定されず、直方体や多角柱等、所望の形状に変更できる。
【0052】
図1で示すはんだ劣化検査装置100は、はんだペースト9を収容するための容器10と検査材20から構成されている。容器10は容器本体1と外蓋2を備え、容器本体1の側壁に設けられた雄ネジ1aと外蓋2の側壁に設けられた雌ネジ2aが嵌合して容器10が密閉されるようになっている。また、検査材20はその母材11の側面および底面に金属酸化物からなる酸化膜12を有し、その上部が外蓋2の略中心に固定されることで、容器10の密閉時に、検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬されるようになっている。
【0053】
ここで、図面を参照してはんだペースト9の劣化状態を説明する。はんだペースト9ははんだ粉末9aとフラックス9bからなるものであり、はんだペースト9の保管状態等によってフラックス9b内には金属塩9cが増加する。特に鉛フリーはんだのような活性剤の活性が強いフラックス9bにおいては、活性剤とはんだ粉末9aが反応して(矢印K1)はんだペースト9が劣化する一方で、検査材20が酸化膜12を有することで、活性剤は検査材20の酸化膜12を還元させ(矢印K2)、従来のはんだペーストに対して、はんだペースト9の劣化が抑制される。
【0054】
図2を参照して、はんだペーストの製造から使用までの雰囲気温度を時系列で説明する。はんだペーストは、はんだペーストの製造メーカーにおいて高温雰囲気下ではんだ粉末とフラックスを混錬して製造された後(区間A)、常温状態まで冷却されて(区間B)容器へ収納され(区間C)、はんだペーストの劣化を抑制するためにさらに約0℃〜10℃の低温状態まで冷却される(区間D)。そして、製造メーカーの保管室でユーザーへの発送まで低温雰囲気下で保管された後(区間E)、必要に応じて低温雰囲気に温度管理された状態でユーザーへ搬送される(区間F)。ユーザーは使用までの間、ユーザーの保管室で低温雰囲気の下で管理した後(区間G)、はんだペーストの使用に際して保管室から必要量のはんだペーストを取り出し、それを約1時間の常温雰囲気下での放置や数分間の攪拌によって常温状態へ戻して(区間H)、基板等への印刷に使用する(区間I)。
【0055】
図1で示すはんだ劣化検査装置100においては、まず、容器本体1に製造後のはんだペースト9が収容され、外蓋2を容器本体1に対して時計回りに回転させることで容器10が密閉されて、外蓋2に固定された検査材20の酸化膜12の一部がはんだペースト9に浸漬される。密閉された容器10は0℃〜10℃の低温状態まで冷却され、製造メーカーやユーザーによる保管や搬送の間、低温雰囲気下において検査材20がはんだペースト9に浸漬された状態となる。ユーザーははんだペーストの使用に当たり、低温環境下で保管されたはんだペースト9とその容器10を常温状態まで戻し、外蓋2を容器本体1に対して反時計回りに回転させることで容器10が開封される。ここで、検査材20が外蓋2に固定されていることで、容器10の開封と同時に検査材20をはんだペースト9から取り出すことができ、酸化膜12の変色を検査して、はんだペースト9の劣化状態を検査できる。
【0056】
変色の検査においては目視による検査も可能であるが、変色後の検査材を写真やビデオで撮影し、それをコンピュータに取り込んで画像解析ソフトで解析して検査することで、変色の度合いやその分布を一層精緻に検査することができる。
【0057】
なお、酸化膜12の厚みははんだペーストの活性力や保証期間に応じて変更可能であり、一般に1nmから1000nmの範囲内であることが好ましく、酸化膜12をはんだペーストに浸漬させる寸法は、搬送時の振動や目視による検査の便宜等を考慮すると、10mm以上であることが好ましい。
【0058】
ここで、はんだペーストから検査までの工程は、上記のごとく、たとえば、はんだペーストの容器への収容時に、はんだペーストを製造する製造メーカーが検査材をはんだペーストに浸漬させ、はんだペーストを使用するユーザーが、その使用前に検査材を取り出してはんだペーストの劣化状態を検査してもよいし、検査までの工程をすべて同一の者が実施してもよい。
【0059】
また、使用までの間のいくつかのステップにおいて上記する検査を行うことで、はんだペーストの劣化の要因となり得る活性剤の異常と保管状態の異常を、それぞれ個別に評価することができる。すなわち、図2で示す区間C,Dに対応するはんだペーストの保管前のステップにおいて、検査材20を容器10から取り出して酸化膜12の変色からはんだペースト9の劣化状態の検査することで、保管前におけるはんだペースト内の活性剤の異常を評価できる。また、図2で示す区間E以後であってはんだペーストを使用する前のステップにおいて、検査材20を容器10から取り出して酸化膜12の変色からはんだペースト9の劣化状態の検査することで、はんだペーストの保管状態の異常を評価できる。
【0060】
次に、図3から図6を参照して、図1で示す検査材の他の実施の形態を説明する。
【0061】
図3aで示す検査材30Aには、母材露出部21Aと酸化膜22Aが検査材30Aの側面の周方向で交互に配され、図3bで示す検査材30Bには、母材露出部21Bと酸化膜22Bが検査材30Bの上下方向に向かって交互に配されている。容器密閉時には上記する母材露出部21A,21Bと酸化膜22A,22Bのそれぞれが、はんだペーストに浸漬できるようになっており、母材露出部と酸化膜が隣接することで、母材に対する酸化膜の劣化状態の相対的な比較が容易となり、母材露出部を色の基準としてはんだペーストの劣化状態を簡便かつ精緻に検査できる。
【0062】
なお、上記する母材露出部と酸化膜の基数、それぞれの酸化膜の厚みは所望に変更でき、少なくとも検査材の下端部に母材露出部を設けることで、色見本となる母材露出部がはんだペーストに浸漬されて、色の基準となる追加の部材が不要となり、はんだペーストの劣化状態の検査が容易となる。
【0063】
図4で示す検査材は、図3で示す検査材に脱酸素材を追加した検査材である。図4aで示す検査材40Aには、その側部であって周方向で交互に配された母材露出部31Aと酸化膜32Aに穿孔33Aが設けられ、その穿孔33Aに脱酸素材34Aが配設されて、脱酸素材34Aの一部が検査材40Aの表面に露出している。また、図4bで示す検査材40Bには、その側部であって上下方向に向かって交互に配された母材露出部31Bと酸化膜32Bに穿孔33Bが設けられ、その穿孔33Bに脱酸素材34Bが配設されて、脱酸素材34Bの一部が検査材40Bの表面に露出している。したがって、自身が脱酸素材を有することで、母材露出部の酸化防止効果が増加して効率的に母材露出部の酸化を抑制することができる。
【0064】
なお、穿孔および母材露出部の基数や配置等においては、母材露出部の酸化防止効果に基づいて所望に変更できる。また、検査材の所望の位置に貫通孔を設け、その貫通孔内に脱酸素材や乾燥剤を配して、その一部を検査材の表面に露出させる形態であってもよい。
【0065】
図5には、図1で示す検査材の他の実施の形態の検査材が示されている。図5aで示す検査材50Aは、母材41A表面に配された酸化膜42Aの厚みが、検査材50Aの上方に向かって増加するように連続的に変化している。また、図5bで示す検査材50Bは、母材41B表面に配された酸化膜42Bの厚みが、検査材50Bの上方に向かって多段状に増加するように変化している。ここで、一定時間はんだペースト内に酸化膜42A,42Bを浸漬させると、酸化膜42A,42Bの厚みが薄い部位は、酸化膜42A,42Bの厚みが厚い部位と比較して、相対的に外観上の変色が大きい。また、はんだペーストが劣化していると酸化膜42A,42Bの色が大きく変化することから、予め金属酸化物の酸化膜の厚みとはんだペーストの劣化状態の相関を取ることで、はんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0066】
なお、図5で示す検査材50A,50Bが有する酸化膜41A,41Bの厚みは、検査材の下方へ向かって増加するように連続的に変化する形態であってもよいし、検査材の下方へ向かって増加するように多段状に変化する形態であってもよい。
【0067】
図5で示す検査材に対して図6で示す検査材は、検査材の側面の周方向で酸化膜の厚みが変化する検査材である。図6aで示す検査材60Aは、母材51A表面に配された酸化膜52Aの厚みが、検査材50Aの側面で周方向に連続的に変化している。また、図6bで示す検査材60Bは、母材51B表面に配された酸化膜52Bの厚みが、検査材60Bの側面の周方向で多段状に変化している。すなわち、検査材60A,60Bが、酸化膜の厚い部位52Aa,52Baと薄い部位52Ab,52Bbを有していることで、検査材60A,60Bの所望の高さにおいても、酸化膜52A,52Bの色の変化を検査してはんだペーストの劣化状態を一層精緻に検査できる。
【0068】
次に、図7を参照して、図5で示す検査材50A,50Bを製造する装置を説明する。なお、図7aは図5aで示す検査材50Aを製造するための装置であり、図7bは図5bで示す検査材50Bを製造するための装置である。
【0069】
図7aで示す加熱チャンバーC1は、その下部に検査材70Aが貫通できる開口C1aを有しており、その側方には、金属酸化物を吐出するための開口C1bを有している。そして、加熱チャンバーC1は金属酸化物を貯蔵する貯蔵室S1と接続管L1で接続され、加熱チャンバーC1内へ接続管L1を介して金属酸化物を吐出できるようになっている。なお、吐出される金属酸化物の量は、検査材に形成される酸化膜の厚み、金属酸化物を含んだ気体の温度や酸素濃度、湿度等に基づいて変更できる。
【0070】
また、検査材70Aの母材61Aは送出機D1のシャフトD11に取り付けられ、送出機D1の駆動手段D12によって、検査材70Aが加熱チャンバーC1内へ開口C1aを介して送出できるようになっており、母材61Aの表面への酸化膜62Aの形成後、加熱チャンバーC1から検査材70Aを取り出せるようになっている。
【0071】
したがって、検査材70Aの母材61AをシャフトD11に取り付け、母材61Aを加熱チャンバーC1内へ一定速度で送出しながら、加熱チャンバーC1へ一定量の金属酸化物を開口C1bから吐出すれば、図5aで説明するような、検査材70Aの上方へ向かって酸化膜62Aの厚みが増加する検査材70Aが製造される。
【0072】
また、図7bで示す加熱チャンバーC2は、図1で示す加熱チャンバーC1と同様の構成を備えているが、その内部には、加熱チャンバーC2を4つの区画に区分するための遮蔽板C2cが備えられ、加熱チャンバーC2の内部の4つの区画をそれぞれ異なる雰囲気下に設定できるようになっている。また、それぞれの遮蔽板C2cには、検査材70Bが貫通できる開口C2dが設けられている。
【0073】
検査材70Bの母材61Bが送出機D2のシャフトD21に取り付けられ、送出機D2の駆動手段D22によって、検査材70Bが加熱チャンバーC2内へ開口C2aを介して送出されて設置された後、加熱チャンバーC2へ一定量の金属酸化物が開口C2bから吐出される。それぞれの区画で異なる量の金属酸化物が吐出されることにより、図5bで説明するような、酸化膜62Bの厚みが検査材70Bの上下方向に向かって多段状に変化している検査材70Bが形成され、送出機D2によって検査材70Bが加熱チャンバーC2から取り出されて、検査材70Bが製造される。
【0074】
なお、上記する加熱チャンバーC2に対して、金属酸化物を吐出しながら母材61Bを送出してもよい。また、加熱チャンバーC2の区画の基数や形成される酸化膜62Aの厚みは所望に変更でき、酸化膜の厚みは、送出機の送り速度によっても変更できる。
【0075】
また、母材を加熱チャンバー内で回転させながら金属酸化物を吐出して酸化膜を形成することで、母材の周方向で均一な厚みを有する検査材を製造することもできる。
【0076】
次に、図8を参照して、図1で示すはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を説明する。なお、図8における図1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0077】
図8で示す容器本体1Aには、収納されるはんだペースト9Aの上方に中蓋3Aが配され、中蓋3Aには、外蓋2Aを容器本体1Aに対して時計回りに回転して容器10Aが密閉される際に、外蓋2Aに固定された検査材20Aが貫通できる貫通孔4Aが、中蓋3Aの略中心に配されている。そして、貫通孔4Aが検査材20Aに対して僅かに大きな径を有していることで、容器10Aを開封する際に中蓋3Aが検査材20Aに付着した余分なはんだペースト9Aを検査材20Aの表面から除去でき、検査材20Aの表面から余分なはんだペーストを取り去る作業が不要となり、還元された酸化膜12Aの検査が容易となる。
【0078】
図9は、上記する検査材を同時に複数設けたはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を示している。図9aは本実施の形態の斜視図であり、図9bは図9aにおける実施の形態のB−B矢視図、図9cは図9bにおける断面図のC−C矢視図である。
【0079】
図9aを参照すると、外蓋2Bには、その略中心と容器本体1Bを4等分する等間隔の4つの位置に、合わせて5本の検査材20Bが固定されており、容器10Bの密閉時には、それらの検査材20Bは同時にはんだペーストに浸漬され、容器10Bの開封時には、同時にはんだペーストから取り出せるようになっている。したがって、同時に取り出した検査材20Bを検査することで、容器10B内のはんだペースト9Bの劣化状態の三次元的な分布を検査することができ、はんだペースト9Bの劣化状態をより一層精緻に検査できる。また、劣化が確認された部位のみを、たとえばへら等で取り出して廃棄することで、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制できる。
【0080】
また、図9bを参照すると、容器本体1Bには、酸化膜12Bを有する検査材20Bが貫通できる貫通孔4Bを有する中蓋3Bが配されており、容器10Bの開封時には、検査材20Bに付着した余分なはんだペースト9Bが中蓋3Bによって除去されるようになっている。したがって、同時に取り出した複数の検査材20Bを検査する際にも、それぞれの検査材20Bに付着した余分なはんだペーストを拭き取る作業が不要となり、検査時間を短縮でき、簡便に検査材20Bの変色を検査できる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、中蓋3Bが容器本体1Bに固定され、検査材20Bが外蓋2Bに固定されていることから、容器本体1Bと外蓋2Bはネジ式に嵌合して密閉されるものではなく、容器本体1Bの側壁に配された凸部1Baと外蓋2Bの側壁に配された凹部2Baが嵌合することで容器10Bが密閉される(図9c参照)。
【0082】
また、上記する形態における検査材の基数や配置、検査材の長さ等は、はんだペーストの活性剤の活性力や保証期間、検査の分解能等に応じて変更でき、複数の検査材の酸化膜の厚みをそれぞれ異なる厚みとすることもできる。
【0083】
図10は、本発明のはんだ劣化検査装置で使用する容器の他の実施の形態を示している。ここで、図示する実施の形態は、図9で示すように外蓋に複数の検査材が固定されているはんだ劣化検査装置や、外蓋を容器本体に対して回転して密閉および開封する容器を有するはんだ劣化検査装置に対して有効である。
【0084】
図示する容器本体1Cおよび外蓋2Cのそれぞれには、容器の密閉時において対応する位置Pに指標1Ca,2Caが配され、密閉時における容器本体1Cと外蓋2Cの位置が、容器の開封後においても認識できるようになっている。したがって、容器10Cの開封後に外蓋2Cに固定された検査材(不図示)を検査する際にも、検査材が容器本体1Cに収容されたはんだペーストのどの位置を検査したものであるかが容易に認識でき、はんだペーストの劣化状態の分布を精緻に検査できる。
【0085】
なお、上記する指標の形態としては、たとえば、容器に色を付する形態や容器本体と外蓋の対応する位置にそれぞれ凸部を設ける形態等、容器本体と外蓋の位置が容器の開封後においても認識できる形態であればさまざまな形態を適用できる。
【0086】
また、図11は、図9で示すはんだ劣化検査装置の外蓋の他の実施の形態を示している。なお、図11における図9と同様の構成については、その説明を省略する。
【0087】
図示する容器10Dの外蓋2Dの内面2Dbには回転板5Dが配され、回転板5Dの下面に複数の検査材20Dが固定されている。また、回転板5Dはその周縁を外蓋2Dに配された凸部2Dcで支承されることで、回転板5Dが外蓋2Dに対して回転可能となっている。また、図示する容器10Dは、容器本体1Dの側壁に設けられた雄ネジ1Daと外蓋2Dの側壁に設けられた雌ネジ2Daが嵌合して密閉されるようになっている。したがって、外蓋2Dを容器本体1Dに対して回転させて容器10Dを密閉および開封する際にも、粘度の高いはんだペースト9Dが検査材20Dの動きに対して抵抗となり、はんだペースト9Dに対する検査材20Dおよび回転板5Dの回転が抑制されて、検査材20Dによる定点でのはんだペースト9Dの劣化状態の検査が可能となり、容器内のはんだペーストの劣化分布の精緻な検査が可能となる。
【0088】
また、上記する形態によれば、検査材20Dによるはんだペーストの劣化状態の検査後、外蓋2Dから還元された検査材20Dが固定された回転板5Dを取り外し、当該外蓋に新たな検査材を有する回転板を取り付けることで、外蓋を再利用することも可能となる。
【0089】
次に、図12を参照して、本発明のはんだ劣化検査装置の他の実施の形態を説明する。なお、本実施の形態における外蓋2の形態は、図8〜11で示す検査材が外蓋に固定された形態にも変更できる。
【0090】
図示する容器10Eの容器本体1Eには、その中心に検査材20Eを把持するための把持手段6Eが配されると共に、容器本体1Eの側部の内壁に等間隔に6つの把持部7Eが配されている。また、把持手段6Eの把持部7Eに対応する位置には6つの凹部6Eaが設けられており、把持手段6Eの凹部6Eaと把持部7Eの凹部7Eaによって検査材20Eの両端が把持され、検査材20Eが容器本体1Eに固定される。そして、6つの検査材20Eにより、容器本体1Eの内部には6つの均一な区画が形成される。
【0091】
ここで、検査材20Eは、それぞれ個別に容器本体1Eの開口方向にスライド式に取り出しが可能であるため、それぞれの区画に対応する検査材20Eの酸化膜12Eの変色を個別に検査することで、容器本体1Eのそれぞれの区画のはんだペーストの劣化状態を個別に検査できる。また、容器本体1Eの内部のはんだペーストが区画ごとに分かれていることで、既述する検査に基づいて劣化が進行していると判断された区画のはんだペーストのみを容器本体1Eから取り出して部分的に廃棄することが可能となり、劣化したはんだペーストの廃棄量を抑制できる。
【0092】
なお、既述する区画の基数や配置、検査材を固定する手段等においては、はんだペーストの活性剤の活性力や検査の分解能、容器の材質等に応じて、所望に変更できる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…容器本体、2…外蓋、3…中蓋、4A,4B…貫通孔、5D…回転板、6E…把持手段、7E…把持部、9…はんだペースト、10…容器、11…母材、12…酸化膜、20…検査材、100…はんだ劣化検査装置、C1,C2…加熱チャンバー、S1,S2…貯蔵室、L1,L2…接続管、D1,D2…送出機、D11,D21…シャフト、D12,D22…駆動手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置を使用して、はんだペーストの劣化状態を検査するはんだ劣化検査方法であって、
少なくとも前記検査材の前記酸化膜の一部を前記容器の前記はんだペーストに浸漬させるステップと、
前記検査材を前記はんだペーストから取り出して、前記酸化膜の変色を検査するステップと、からなるはんだ劣化検査方法。
【請求項2】
前記母材が、樹脂またははんだペーストの組成に含まれる金属からなる、請求項1に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項3】
前記金属酸化物が、はんだペーストの組成に含まれる金属の酸化物からなる、請求項1または2に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項4】
前記はんだ劣化検査装置が複数の前記検査材を備え、複数の該検査材を同時に前記はんだペーストに浸漬させ、複数の該検査材を同時に該はんだペーストから取り出して、該はんだペーストの複数の位置における前記酸化膜の変色を同時に検査するようになっている、請求項1〜3のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項5】
前記検査材が、少なくともその下端部に前記酸化膜を皮覆していない母材露出部を有し、該母材露出部を前記はんだペーストに浸漬させるようになっている、請求項1〜4のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項6】
前記母材露出部と前記酸化膜が、前記検査材の上下方向に向かって、または、前記検査材の側面の周方向で、交互に配されている、請求項5に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項7】
前記検査材が乾燥剤または脱酸素材を備え、該乾燥剤または該脱酸素材の一部が該検査材の表面から露出している、請求項5または6に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項8】
前記酸化膜の厚みが、均一、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または該検査材の側面の周方向で連続的に変化している、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または前記検査材の側面の周方向で多段状に変化している、請求項1〜7のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項9】
前記はんだ劣化検査方法が、
前記はんだペーストを製造して、該はんだペーストを前記容器に収容するステップと、
前記容器に収容された前記はんだペーストを保管するステップと、をさらに含み、
前記検査するステップが、前記収容するステップと前記保管するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの活性剤の異常を評価する、請求項1〜8のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項10】
前記はんだ劣化検査方法が、
保管後の前記はんだペーストを使用するステップをさらに含み、
前記検査するステップが、前記保管するステップと前記使用するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの保管状態の異常を評価する、請求項9に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項11】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、
前記はんだ劣化検査装置の前記容器が、前記はんだペーストを収容する容器本体と該容器本体と嵌合して該容器を密閉する外蓋を備え、
前記外蓋に少なくとも1つの前記検査材が固定されており、容器の密閉時に、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、容器の開封時に、該検査材を該はんだペーストから取り出して、該酸化膜の変色を検査できるようになっている、はんだ劣化検査装置。
【請求項12】
前記容器は、収容するはんだペーストの上方に中蓋を備え、該中蓋は、容器の密閉時および開封時に、前記外蓋に固定された前記検査材が貫通する貫通孔を備えている、請求項11に記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項13】
前記容器本体および前記外蓋のそれぞれが、容器の密閉時において対応する位置を示す指標を備えている、請求項11または12に記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項14】
前記外蓋の内面のうち前記検査材が固定される面には、該外蓋に対して回転可能な回転板が備えられ、該検査材は該外蓋の該回転板に固定されている、請求項11〜13のいずれかに記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項15】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、
前記容器に複数の前記検査材が取り出し可能に配設され、複数の該検査材によって該容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されており、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、それぞれの該検査材を個別に該はんだペーストから取り出して、それぞれの該酸化膜の変色を検査できるようになっている、はんだ劣化検査装置。
【請求項16】
複数の前記検査材が、それぞれ前記容器の中心から外縁へ向かうように配設されて、前記容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されている、請求項15に記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項1】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置を使用して、はんだペーストの劣化状態を検査するはんだ劣化検査方法であって、
少なくとも前記検査材の前記酸化膜の一部を前記容器の前記はんだペーストに浸漬させるステップと、
前記検査材を前記はんだペーストから取り出して、前記酸化膜の変色を検査するステップと、からなるはんだ劣化検査方法。
【請求項2】
前記母材が、樹脂またははんだペーストの組成に含まれる金属からなる、請求項1に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項3】
前記金属酸化物が、はんだペーストの組成に含まれる金属の酸化物からなる、請求項1または2に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項4】
前記はんだ劣化検査装置が複数の前記検査材を備え、複数の該検査材を同時に前記はんだペーストに浸漬させ、複数の該検査材を同時に該はんだペーストから取り出して、該はんだペーストの複数の位置における前記酸化膜の変色を同時に検査するようになっている、請求項1〜3のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項5】
前記検査材が、少なくともその下端部に前記酸化膜を皮覆していない母材露出部を有し、該母材露出部を前記はんだペーストに浸漬させるようになっている、請求項1〜4のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項6】
前記母材露出部と前記酸化膜が、前記検査材の上下方向に向かって、または、前記検査材の側面の周方向で、交互に配されている、請求項5に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項7】
前記検査材が乾燥剤または脱酸素材を備え、該乾燥剤または該脱酸素材の一部が該検査材の表面から露出している、請求項5または6に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項8】
前記酸化膜の厚みが、均一、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または該検査材の側面の周方向で連続的に変化している、もしくは、前記検査材の上下方向に向かって、または前記検査材の側面の周方向で多段状に変化している、請求項1〜7のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項9】
前記はんだ劣化検査方法が、
前記はんだペーストを製造して、該はんだペーストを前記容器に収容するステップと、
前記容器に収容された前記はんだペーストを保管するステップと、をさらに含み、
前記検査するステップが、前記収容するステップと前記保管するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの活性剤の異常を評価する、請求項1〜8のいずれかに記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項10】
前記はんだ劣化検査方法が、
保管後の前記はんだペーストを使用するステップをさらに含み、
前記検査するステップが、前記保管するステップと前記使用するステップの間に実行されて、前記はんだペーストの保管状態の異常を評価する、請求項9に記載のはんだ劣化検査方法。
【請求項11】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、
前記はんだ劣化検査装置の前記容器が、前記はんだペーストを収容する容器本体と該容器本体と嵌合して該容器を密閉する外蓋を備え、
前記外蓋に少なくとも1つの前記検査材が固定されており、容器の密閉時に、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、容器の開封時に、該検査材を該はんだペーストから取り出して、該酸化膜の変色を検査できるようになっている、はんだ劣化検査装置。
【請求項12】
前記容器は、収容するはんだペーストの上方に中蓋を備え、該中蓋は、容器の密閉時および開封時に、前記外蓋に固定された前記検査材が貫通する貫通孔を備えている、請求項11に記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項13】
前記容器本体および前記外蓋のそれぞれが、容器の密閉時において対応する位置を示す指標を備えている、請求項11または12に記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項14】
前記外蓋の内面のうち前記検査材が固定される面には、該外蓋に対して回転可能な回転板が備えられ、該検査材は該外蓋の該回転板に固定されている、請求項11〜13のいずれかに記載のはんだ劣化検査装置。
【請求項15】
はんだペーストを収容するための容器と、母材表面に金属酸化物からなる酸化膜を有する検査材と、を備えるはんだ劣化検査装置であって、
前記容器に複数の前記検査材が取り出し可能に配設され、複数の該検査材によって該容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されており、少なくとも該検査材の前記酸化膜の一部を前記はんだペーストに浸漬させ、それぞれの該検査材を個別に該はんだペーストから取り出して、それぞれの該酸化膜の変色を検査できるようになっている、はんだ劣化検査装置。
【請求項16】
複数の前記検査材が、それぞれ前記容器の中心から外縁へ向かうように配設されて、前記容器の内部に少なくとも2以上の区画が形成されている、請求項15に記載のはんだ劣化検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−220718(P2011−220718A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87168(P2010−87168)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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