説明

ひねり結束用変形形状保持体

【課題】芯材なしでも良好なひねり結束性を得ることができる樹脂製のひねり結束用変形形状保持体を提供する。
【解決手段】扁平形状を有するひねり結束用変形形状保持体である。ポリ塩化ビニル樹脂に対し、可塑剤が1〜10質量%にて添加されてなる。可塑剤が、エポキシ化大豆油を含むことが好ましい。また、ポリ塩化ビニル樹脂組成物が、メタクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体を1〜10質量%にて含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひねり結束用変形形状保持体に関し、詳しくは、食品等の保管に用いられる各種袋の開封口の結束、通信回線や電線等の結束、および、植物のつるや枝の、支柱への結束などに好適に使用される、ひねり結束用変形形状保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
ひねり結束用変形形状保持体は、塑性変形した形状の保持が可能であって、両端を束ねてひねることで結束状態を形成して、その結束状態を保持するものである。かかるひねり結束用変形形状保持体の素材としては、従来、その形状保持性能の安定性と使いやすさから、鉛棒や、なまし針金が、一般的に用いられていた。
【0003】
しかし、金属からなる針金や鉛棒を、食品の包装や子供の玩具、勉強用具、身の回り品などの梱包に用いると、手指に傷を負うなどの危険性があり、また、包装内容物の混入金属が探知できないという問題もあった。そのため、近年では、樹脂製のひねり結束用変形形状保持体が、一部使用されるようになってきている。
【0004】
結束材用途に使用可能な樹脂材料として、例えば、特許文献1には、特定のポリエチレンの溶融固化物又はこのポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合溶融固化物を延伸した延伸物であって、特定の物性値を有する延伸物からなる糸状又は帯状塑性変形性ポリエチレン材料が開示されている。また、特許文献2には、エチレン単独重合又はエチレン・α−オレフィン共重合体であって、100℃で測定した広幅NMRによるFID曲線を成分分離した時の短時間側緩和成分およびその緩和時間が所定の値を有する材料を用いた、繊維状または帯状の延伸成形体が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、プラスチック光ファイバに劣化等を生じさせずに、プラスチック光ファイバを結束、固定、保護等するホルダとして、可塑剤の含有量が1重量%以下の樹脂を用いてなるプラスチック光ファイバ用ホルダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−238417号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2004−182761号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2002−148447号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来知られている樹脂製の結束材は、いずれも、ひねり結束用途に用いるには十分なものではなく、例えば、特許文献3の図2および図3に示されているように、2層の樹脂フィルム14,14の間に芯材としての鉄線16を挿入した形態でなければ、十分なひねり結束性を得られるものではなかった。このように結束材の芯材として金属材料を用いた場合、上述したような、取り扱い時の危険性の問題や、包装内容物の混入金属を探知できないとの問題については依然として解消されず、また、製造工程が複雑となってコスト高を招くという難点もある。したがって、このような問題なしで良好なひねり結束性を得ることができる樹脂製の結束材を実現することが望まれていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、芯材なしでも良好なひねり結束性を得ることができる樹脂製のひねり結束用変形形状保持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の組成を有するポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いることで、芯材なしでも良好なひねり結束性を得ることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のひねり結束用変形形状保持体は、扁平形状を有するひねり結束用変形形状保持体において、ポリ塩化ビニル樹脂に対し、可塑剤が1〜10質量%にて添加されてなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明のひねり結束用変形形状保持体は、前記可塑剤として、エポキシ化大豆油を含むことが好ましい。また、本発明においては、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物が、メタクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体を1〜10質量%にて含むことが好ましい。さらに、本発明のひねり結束用変形形状保持体は、幅が30mm以下であり、厚みが0.3mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記構成としたことにより、芯材なしでも良好なひねり結束性を得ることができる樹脂製のひねり結束用変形形状保持体を実現することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のひねり結束用変形形状保持体は、芯材を有しない断面略矩形の扁平形状を有し、ポリ塩化ビニル樹脂に対し、可塑剤が1〜10質量%、好適には3〜7質量%にて添加されているポリ塩化ビニル樹脂組成物からなる。
【0014】
本発明のひねり結束用変形形状保持体は、芯材なしでも良好なひねり結束性を発揮できるので、金属材料を含む従来の結束材におけるような問題を有さず、また、樹脂材料のみから製造されるために、製造工程も簡易であって、コスト性にも優れるものである。上記ポリ塩化ビニル樹脂組成物中の可塑剤の含有量が10質量%を超えると、塑性変形した形状を十分保持できないために、良好なひねり結束性が得られない。また、上記ポリ塩化ビニル樹脂組成物中の可塑剤の含有量が1質量%未満であると、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の加工性が悪化する。
【0015】
本発明に係るポリ塩化ビニル樹脂組成物に用いる可塑剤としては、ポリ塩化ビニル樹脂に用いられる可塑剤として従来公知のもののうちから適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。具体的には例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、リン酸エステル系化合物、脂肪酸エステル系化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油などが挙げられる。本発明においては、中でも、可塑剤として、エポキシ化大豆油を用いることが好ましい。
【0016】
本発明に係るポリ塩化ビニル樹脂組成物には、可塑剤の他に、所望に応じて、安定剤、充填剤、難燃剤、加工助剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を適宜添加することができる。好適には、本発明に係るポリ塩化ビニル樹脂組成物には、補強成分として、メタクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等を添加することが好ましく、その添加量は、好適には1〜10質量%、より好適には3〜7質量%とする。
【0017】
本発明のひねり結束用変形形状保持体の寸法は、用途に応じ適宜選定することができるが、好ましくは、幅が30mm以下、より好ましくは、6〜18mmであって、厚みが、好ましくは、0.3mm以下、より好ましくは、0.05〜0.2mmであるものとする。
【0018】
本発明のひねり結束用変形形状保持体は、上記ポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いて、スリット押出により容易に製造することができる。また、本発明のひねり結束用変形形状保持体には、意匠性を高めるために、例えば、印刷により表面に着色を施すこともでき、また、表面にアルミ蒸着を施した後、印刷を行うことで、金属光沢を有する外観を付与することもできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
扁平形状を有するひねり結束用変形形状保持体を、以下に示す条件にて、下記の表中にそれぞれ示す材料を用いて、スリット押出により製造した。
【0020】
<引張強度>
得られた各ひねり結束用変形形状保持体について、島津製オートグラフを用いて、引張速度300mm/分、引張間隔100mmの条件で、引張試験を行った。ひねり結束用変形形状保持体の寸法は、幅18mm、厚み0.080mm〜0.090mm、長さ200mmとした。その結果を、下記の表中に併せて示す。なお、引張強度は、結束対象品にもよるが、3kg以上あれば結束材として機能し得ると考えられる。
【0021】
<ひねり結束強度>
得られた各ひねり結束用変形形状保持体の両端を束ね、2回ひねって結束状態を形成した。その後、結束部を開くようにつまんで、島津製オートグラフを用いて、引張速度300mm/分、引張間隔30mmの条件で、結束強度を測定した。ひねり結束用変形形状保持体の寸法は、幅10mm、厚み0.080mm〜0.090mm、長さ100mmとした。その結果を、下記の表中に併せて示す。なお、ひねり結束用変形形状保持体のひねり結束強度は、ポリ袋等の包装材の強度との関係で必要な値が決まり、例えば、ポリ袋の場合、ひねり結束強度が、ポリ袋の口が絞られた状態から開こうとする力よりも大きければ、実用上問題ないと言える。具体的に、ポリエチレンまたはポリプロピレン製で、手持ち程度の大きさの袋(約400mm×400mm程度)であれば、1.0kg程度のひねり結束強度が必要となる。また、幅4.0mm、芯部分の厚み0.5mmの、針金を芯材とするひねり結束材((株)コケシテープ製)で、ひねり結束強度は1〜3kgである。
【0022】
【表1】

*1)ポリ塩化ビニル樹脂組成物A:住友ベークライト(株)製,スミライトVSS−1506(エポキシ化大豆油およびメタクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体を含むポリ塩化ビニル樹脂組成物)
*2)ポリエチレンテレフタレート:東レ(株)製,ルミラー
*3)ポリプロピレン:東レ(株)製,トレファン
*4)ポリ塩化ビニル樹脂組成物B:東和合成工業(株)製,軟質塩化ビニルフィルム
【0023】
上記表中に示すように、可塑剤の含有量を10質量%以下としたポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた実施例のひねり結束用変形形状保持体においては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリプロピレンを用いた比較例1,2、および、可塑剤の含有量が60質量%であるポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いた比較例3のひねり結束用変形形状保持体と比較して、引張強度およびひねり結束強度の双方において、良好な性能が得られていることが確かめられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平形状を有するひねり結束用変形形状保持体において、
ポリ塩化ビニル樹脂に対し、可塑剤が1〜10質量%にて添加されてなるポリ塩化ビニル樹脂組成物を用いたことを特徴とするひねり結束用変形形状保持体。
【請求項2】
前記可塑剤が、エポキシ化大豆油を含む請求項1記載のひねり結束用変形形状保持体。
【請求項3】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物が、メタクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体を1〜10質量%にて含む請求項1または2記載のひねり結束用変形形状保持体。
【請求項4】
幅が30mm以下であり、厚みが0.3mm以下である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のひねり結束用変形形状保持体。

【公開番号】特開2011−246138(P2011−246138A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118552(P2010−118552)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(500035775)岡本化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】