説明

ふるいユニット

【課題】粉体の分級やふるい分け分野で使用される振動ふるい分け装置のふるいユニットのフックにおいて、不純物の混入の要因となるふるい金網とフックの間の隙間をなくしたふるいユニットを提供する。
【解決手段】J字形に折り曲げられた外板6に、ふるい金網1と外板よりも薄い内板7を挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板とふるい金網と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げてフック2を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業分野において粉体の分級工程や選別工程などに用いられるふるいユニット及び振動ふるい分け装置に関する。本発明の説明において「ふるいユニット」は、振動ふるい分け装置の交換用ユニットとして、ふるい金網等を所定の形状に切断し、その周縁の必要部分に係合部材を被せ、成型加工して製作したものであって、所定の振動ふるい分け装置に取付け易く交換作業を迅速に実施することができる。
【背景技術】
【0002】
振動ふるい分け装置は、所定の目開きのふるい金網上で粒子群を振動により流動させ、個々の粒子をふるい金網の網目と照合し粒子径に応じて選り分ける装置である。産業用の振動ふるい分け装置に装着するふるいユニットは消耗品であり、使用、交換に便利なように従来からいろいろな装着方式が提案されているが、その多くは、ふるい金網の周縁両側部あるいは周縁のフックと、振動ふるい分け装置の取付け枠体に係合部材を設け相互に係合させて、ふるい金網の取付け、交換や張力調整を容易にするように構成されている。前記のフックは、振動機からの振動を減衰させることなくふるい金網に伝えるため、十分な張力をふるい金網に与えて固定する必要がある。
【0003】
ふるい金網取付け手段全体を理解するために、図8にふるいユニットの平面図を、図9には前記図面のA−A’断面を例示した。1はふるい金網、2はふるい金網周縁両側部に形成されたフック、4は振動ふるい分け装置の取付け枠体、3はフックと係合させるために取付け枠体に取付けた引張金具、16は取付け枠体4に取付けたふるい金網張力調整機構(本例では引張ボルト)である。本取付け手段では、張力を付与するための引張代を見込んで取付け枠体4よりも僅かに小さめの幅にふるい金網1の両側縁に取付けたフック2と引張金具3とを相互に係合させ、引張金具3と取付け枠体4との間にわたされた引張ボルト16を調整して、ふるい金網1の張力を調整する。
【0004】
つぎに、従来から使用されているフックの一般的構造について図10に示す。図10に示されるフック22は、ふるい金網1の縁部分を覆うフック板26として1枚の板を長さ方向に沿ってU字形に折り曲げ、ふるい金網1を挟み込み、さらに縁部に沿って振動ふるい装置の引張金具と係合させるのに適当な幅で「く」の字状に折り曲げたものである(特許文献1)。その結果、後述するような理由によりフック板の外側部分26−1とフック板の内側部分26−2の先端部分には大きな隙間9が形成される。従来技術のように1枚の板を使って図10のように成型する場合には、この隙間の形成を避けることは不可能である。
【特許文献1】:特開2006-26564
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように従来技術ではふるい金網1とフック22の間に隙間9が生じる。その結果、ふるい分けの工程中に当該隙間に処理粉体の一部が入り込み、そこに残留することがある。その後、処理粉体の品種を切り替えた際に隙間に残留していた該処理粉体が振動によって離脱することで、品質低下や製品ロスなどの悪影響を与えることがあった。
【0006】
本発明は、これらふるい分け工程での課題である隙間を解消するためにふるい金網とフック(係合部材)の隙間を抑制したふるいユニットおよび該ふるいユニットを用いた振動ふるい分け装置を開発するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では上記従来技術の課題である隙間を解消するために、J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板とふるい金網とを挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板とふるい金網と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたとか、
【0008】
J字形に折り曲げられた外板に、ふるい金網とゴムシートおよび外板よりも薄い内板を挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板とふるい金網と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたとか、
【0009】
J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板と多孔板とを挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板と多孔板と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたとか、
【0010】
J字形に折り曲げられた外板に、多孔板とゴムシートおよび外板よりも薄い内板を挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板と多孔板と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたなどの方法を採用することにより、従来技術の課題であった隙間をほぼゼロにすることができた。
【0011】
本発明はスポット溶接以外に、リベット止めやアルゴン溶接、シーム溶接、接着剤などスポット溶接に替わる物理的固定方法でふるい金網もしくは多孔板と外板および内板を固定したふるいユニットに関しても同様に適用可能であることは自明のことである。
【発明の効果】
【0012】
先端の隙間をなくすために種々検討した結果、以下のことを見出した。
A)同じ曲率半径で板を折り曲げた場合、厚い板と薄い板ではスプリングバックの量が変わり、薄い板ほどスプリングバックの量が大きい
B)板厚と曲げ角度が同じ場合、曲率半径が大きいほどスプリングバックの量が大きい
そこで、従来のふるいユニットに使用されていたフック(係合部材)を厚さの異なる2つの部材に分け、フックの内側に外板よりも厚さの薄い内板を配し、外板にふるい金網と内板を挿入した部分をスポット溶接などで固定することで、次のような効果が得られた。
1)本発明により、ふるい金網と外板および内板との隙間を極めて小さくできる。その結果、両者間に生じた隙間9から入り込む粉体量が少なくなり、処理粉体の品種を切り替えた後に振動によって離脱して不純物になる可能性を減らすことができる
2)ふるい金網がフックから抜け出すのを抑制できる
3)ふるい金網に均一な張力が掛かり、ふるい金網全面で均質なふるい分けを行うことができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一例を図1に示す。J字形に折り曲げられた外板6に、ふるい金網1と外板よりも薄い内板7を挿入して、図2に示すように該挿入部分をプレスでつぶした後スポット溶接8で固定し、一体となった外板とふるい金網と内板を、図3に示すようにプレス上金型31とプレス下金型32を用いて、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたフック2が構成されている。
【0014】
本発明の他の一例を図4に示す。J字形に折り曲げられた外板6に、ふるい金網1とゴムシート11および外板よりも薄い内板7を挿入して、図5に示すように該挿入部分をプレスでつぶした後スポット溶接8で固定し、一体となった外板とふるい金網、ゴムシートおよび内板を、プレス上金型31とプレス下金型32を用いて、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたフック2が構成されている。このときスポット溶接を行う部分のゴムシートは挿入前にあらかじめ切り欠いておく必要がある。
【0015】
本発明の他の一例を図6に示す。J字形に折り曲げられた外板6に、多孔板12と外板よりも薄い内板7を挿入して、該挿入部分をプレスでつぶした後スポット溶接8で固定し、一体となった外板と多孔板と内板を、プレス上金型31とプレス下金型32を用いて、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたフック2が構成されている。本多孔板の材質にはゴムなど金属以外のものも含まれる。
【0016】
本発明の他の一例を図7に示す。J字形に折り曲げられた外板6に、多孔板12とゴムシート11および外板よりも薄い内板7を挿入して、該挿入部分をプレスでつぶした後スポット溶接8で固定し、一体となった外板と多孔板、ゴムシートおよび内板を、プレス上金型31とプレス下金型32を用いて、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたフック2が構成されている。このときスポット溶接を行う部分のゴムシートは挿入前にあらかじめ切り欠いておく必要がある。本多孔板の材質にはゴムなど金属以外のものも含まれる。
【0017】
本発明で得られた外板と内板の組み合わせ例の詳細を示すと、外板6には厚さ1.5mm、内板7には厚さ0.8mmの帯状ステンレス鋼(SUS304)を採用することで、隙間9はほとんどゼロになった。外板、内板の材質や金型の形状、曲げ条件によってもスプリングバックの量が変わるので、板厚の組み合わせは試作により最適値を見出すことが望ましい。また、板厚は外板1.0〜3.0mm、内板0.3〜1.0mmの範囲で製作することが実用上望ましい。
【0018】
また、従来から隙間抑制とふるい金網の抜け出し抑制の技術としては、隙間9に近い箇所でフック板26とふるい金網1をリベット止めやスポット溶接で固定することがふるいユニットでは用いられているが、固定された部分に張力が集中し、早期破損や張力の不均一さが問題になることがあった。しかしながら本発明では、フックの挿入部をスポット溶接8で固定することでふるい金網の抜け出しを抑制するとともに、金網に掛かる張力を「く」の字に折り曲げた部分で受けるため、ふるい金網に均一な張力を掛けることができる。また、挿入部で固定する方法はスポット溶接以外にリベット止めやアルゴン溶接、シーム溶接、接着剤などの物理的固定方法でも同様の効果が期待できる。
【0019】
図11に本発明ふるいユニット、従来型リベット固定金網ユニット、及びふるい金網自体の引張試験結果の一例を示す。本発明ふるいユニットの強度はふるい金網自体の強度により近くなっており、従来のふるい金網より高い張力をかけることができるので、ふるい金網の長寿命化も期待できる。さらにふるい金網には均一な張力が掛かるため、張力の不均一によるふるい分け効率の低下を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
近年の各種製造プロセスでは、多品種、少量、高品質生産の割合が増え、ふるい分けられる物質が頻繁に入れ替わり、また不純物の混入を極端に嫌うことが多くなった。このため、不純物混入の原因となる装置内の隙間やデッドスペースは極力小さくしなければならない。本発明ふるいユニットおよびこれを使用する振動ふるい分け装置は、隙間やデッドスペースは極めて小さいので、特にファインケミカル製品などの製造工程に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明ふるいユニットのフック例示説明図
【図2】本発明フックの製作例示説明図1
【図3】本発明フックの製作例示説明図2
【図4】本発明に関する他の実施例
【図5】本発明フックの製作例示説明図3
【図6】本発明に関する他の実施例
【図7】本発明に関する他の実施例
【図8】ふるいユニットの平面図
【図9】ふるいユニットA-A断面(取り付け状態)
【図10】従来のフックの説明図
【図11】本発明ふるいユニット、従来型リベット固定金網ユニット、及びふるい金網自体の引張試験結果
【符号の説明】
【0022】
1 : ふるい金網
2,22 : フック
3 : 引張金具
4 : 取付け枠体
5 : ふるいユニット
6 : 外板
7 : 内板
8 : スポット溶接
9 : 隙間
11: ゴムシート
12: 多孔板
16: 金網張力調整機構(引張ボルト)
26: フック板
31: プレス上金型
32: プレス下金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふるい金網のフックを介し、振動ふるい分け装置の引張金具に係合させて取り付け枠体に固定するふるいユニットであって、J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板とふるい金網とを挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板とふるい金網と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたことを特徴とするフックを有するふるいユニット。
【請求項2】
J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板とふるい金網とゴムシートを挿入したことを特徴とする請求項1に記載のふるいユニット。
【請求項3】
J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板と多孔板とを挿入して、該挿入部分をスポット溶接で固定し、一体となった外板と多孔板と内板を、内板が内側になるように「く」の字状に折り曲げたことを特徴とするフックを有するふるいユニット。
【請求項4】
J字形に折り曲げられた外板に、外板よりも薄い内板と多孔板とゴムシートを挿入したことを特徴とする請求項3に記載のふるいユニット。
【請求項5】
リベット止めやアルゴン溶接、シーム溶接、接着剤などスポット溶接に替わる物理的固定方法でふるい金網もしくは多孔板と外板および内板を固定したことを特徴とする請求項1〜請求項4に記載のふるいユニット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5までに記載された請求項の一つ、または、複数の請求項に該当するふるいユニットを装着した振動ふるい分け装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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