説明

めっき処理装置

【課題】めっき浴への気体吹き込みによって発生しためっき液飛沫がめっき浴投入前の被めっき基材に付着することを防ぐことによって、めっき処理のムラを改善し、隣接する配線の間隔が数十μm以下と極めて高精細であっても配線同士が接合することのない、めっき処理装置を提供する。
【解決手段】長尺帯状の被めっき基材4をめっき処理するめっき槽1、およびめっき浴3にバブリングを行う気体吹き込み手段2,10,11を有するめっき処理装置であって、少なくとも複数の案内ロール6a〜6dおよびベルト5から構成されるめっき液飛沫付着防止手段と、該ベルト5に付着しためっき液飛沫8を除去するめっき液飛沫除去手段16とを少なくとも有するめっき処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリント配線板やアドレス電極等の表面処理に用いられるめっき処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の内、特にプリント配線板の製造過程では各種の電解めっき法および無電解めっき法が多く用いられていることから、めっき技術はプリント配線板製造において重要な技術であり、近年の電子部品の小型化、軽量化、高機能化に伴ってプリント配線板に対して高密度実装の要求がますます高まっている。
【0003】
このようなプリント配線の基材としてフレキシブル基材は省スペース配線材料、半導体パッケージのインターポーザー用途あるいは液晶ディスプレイのICテープキャリアとして有用であり、特にこれらの用途では高密度実装の要求から電子回路の配線幅と配線間隔を小さくしたファインピッチ化が進んでいる。
【0004】
しかしながら、隣接する配線の間隔が数十μm以下という極めて高精細な配線パターンを有する配線基板を作製する場合、特に配線間隔が50μm以下である場合、めっき処理のムラが発生すると、導体回路の配線間隔が非常に狭くなり、場合によっては配線が接触してしまうこともあった。この場合、プリント配線板やアドレス電極のような用途では、絶縁不良による誤動作を引き起こしたり、ショートしてしまうため、商品価値を損なってしまう。
【0005】
一方、従来めっき法では、めっき浴の攪拌やめっき浴中の酸素濃度調節を目的として酸素や窒素ガス等の気体をめっき浴中に吹き込むことが知られている。
【0006】
無電解めっき法においては、被めっき基材上に金属イオンを還元剤によって還元して析出する際に、析出物の表面から水素が発生し、この発生した水素が析出物表面に作用することで析出物表面を白濁化させることが知られている。このため、特開平2−290976号公報(特許文献1)ではめっき槽の底部から気体を吹き込むことによって、発生した水素を速やかに該表面から離脱させる装置が開示されている。
【0007】
また、無電解銅めっき処理においては溶存酸素濃度が銅めっきの析出性に大きな影響を与えることが知られている。めっき浴の溶存酸素濃度が高い場合、無電解銅めっき浴は不活性となり、めっき速度も遅く、銅めっきの付き回りが悪くなる。一方、溶存酸素濃度が低い場合は活性な浴となり、さらに浴として不安定な状態であり最終的に分解反応を起してしまうこともある。このため無電解銅めっき処理において、めっき浴の溶存酸素濃度の調節と攪拌を行うために、めっき浴中に空気を吹き込むことによって酸素を供給するエアバブリングを行うことが知られている。例えば特開平6−33254号公報(特許文献2)では窒素ガスを混合することによって酸素濃度を調整したガスをバブリングすることで溶存酸素濃度をめっき反応に適した濃度に調整することが記載されている。
【0008】
また、微細孔を有する被めっき基材の電解めっき処理においては、めっき処理槽内に振動攪拌装置とめっき浴への空気吹き込み装置とを設け、めっき浴への空気吹き込みと振動攪拌を組み合わせることによって、微細孔部のめっき不良を低減させることのできる電解めっき方法が特開平11−189880号公報(特許文献3)において開示されている。
【0009】
上記したようなめっき処理槽内への気体吹き込みは、一般的にめっき浴に対して直接行う、いわゆるバブリングによる方法が採用されている。このため、吹き込まれた気体がめっき浴の液面部からめっき浴外部へと抜ける際に気泡が弾けることで、めっき液の飛沫が発生する。この飛沫がめっき浴投入前の被めっき基材に付着し、そのままめっき処理が行われることによって、めっき析出量の異なるめっき処理ムラが発生してしまう場合があった。これが微細な高密度配線に対するめっき処理で発生した場合、隣接する配線間でショートや絶縁不良を起こし、商品価値を損なう原因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平2−290976号公報
【特許文献2】特開平6−33254号公報
【特許文献3】特開平11−189880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、めっき浴への気体吹き込みによって発生しためっき液飛沫がめっき浴投入前の被めっき基材に付着することを防ぐことによって、めっき処理のムラを改善し、隣接する配線の間隔が数十μm以下と極めて高精細であっても配線同士が接合することのないめっき処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、長尺帯状の被めっき基材をめっき処理するめっき槽、およびめっき浴にバブリングを行う気体吹き込み手段を有するめっき処理装置であって、少なくとも複数の案内ロールおよびベルトから構成されるめっき液飛沫付着防止手段と、該ベルトに付着しためっき液飛沫を除去するめっき液飛沫除去手段とを備えるめっき処理装置によって、解決することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によればめっき浴への気体吹き込みによって発生しためっき液飛沫がめっき浴投入前の被めっき基材に付着することを防ぐことによって、めっき処理のムラを改善し、隣接する配線の間隔が数十μm以下と極めて高精細であっても配線同士が接合することのないめっき処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明におけるベルトに付着しためっき液飛沫を除去するめっき液飛沫除去手段の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の電解めっき処理装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明における被めっき基材は、ウェブ上の少なくとも一方の面に無電解めっき処理のための触媒付与処理や、電解めっき処理のための導電性画像形成処理といっためっき処理を行うための前処理が施された材料、又は該前処理が施されていないウェブ上の少なくとも一方の面に該前処理を施したシートを貼付した基材であり、かかる被めっき基材の基材としては柔軟性を有するフレキシブル基材が好ましく、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、無電解めっき処理前の触媒付与処理としては例えばパラジウム等の貴金属イオンを含む溶液に被めっき基材を接触させることでパラジウム等の貴金属触媒核を被めっき基材上に形成する方法やフォトリソグラフィー方式、印刷方式および銀塩写真方式等の方法が挙げられる。
【0016】
パラジウム触媒を形成する方法としては、例えば特開2009−010276号公報において塩化パラジウム、塩化第一スズ、塩酸を含有する混合溶液に被めっき基材を接触させることでパラジウム−スズコロイドを被めっき基材表面に吸着させた後、硫酸又は塩酸からなる活性化液によってスズを除去し、パラジウム粒子を吸着させる方法が挙げられる。フォトリソグラフィー方式には、均一な導電金属層を有する基板上にフォトレジストを塗布し、露光、現像後、レジストが剥離された導電性金属層をエッチング除去し導電性パターンを得るサブトラクティブ方式(例えば特開平5−16281号公報)、また無電解めっき触媒を含有するレジストを支持体上に塗布し、露光、現像し未露光部のレジストを除去後、無電解めっきすることにより導電性パターンを得るアディティブ方式(例えば特開平11−170421号公報)等が挙げられる。印刷方式としては、例えば銀を含有する導電性金属インキや導電性ペーストを所望のパターンにスクリーン印刷する方法(例えば特開昭55−91199号公報、特開2006−313891号公報、特開2000−113147号公報等)が挙げられる。銀塩写真方式によって銀画像形成する方法としては、例えばWO2004/007810号パンフレットに記載の、基材上に物理現像核層およびハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を水洗除去する方法が挙げられる。電解めっき前の導電性画像処理としては例えば上述の印刷方式、フォトリソグラフィー方式および銀塩写真方式等のいずれかの方法が挙げられる。また、これらの処理が施された被めっき基材の配線間隔は50μm以下、特に20μm以下である場合に本発明は極めて有用である。
【0017】
本発明におけるめっき処理装置について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図であり、長尺帯状のウェブの下面に被めっき処理面(13)を有する被めっき基材(4)に対して、無電解めっき処理を行う場合のめっき処理装置である。被めっき基材(4)は搬送モーター(図示せず)と案内ロール(6b、9a〜9c)によって、矢印(14)の方向に搬送され、めっき浴(3)内に案内され、めっきされた後、図示しない洗浄手段および乾燥手段によって洗浄、乾燥される。めっき浴(3)にバブリングを行う気体吹き込み手段は、ブロワ(11)と気体吹き込み配管(10)、および気体吹き込み部(2)とから構成され、めっき槽外部に設置したブロワ(11)から供給される気体を、気体吹き込み配管(10)を介して気体吹き込み部(2)に供給し気体吹き込み部(2)からめっき浴(3)中に気体を送り込むことでバブリングが行われる。本発明の特徴の1つである、めっき液飛沫付着防止手段はベルト(5)、ベルトを案内する複数の案内ロール(6a〜6d)、および案内ロール(6a〜6d)を駆動する駆動モーター(図示せず)から構成され、ベルト(5)は被めっき基材(4)のめっき浴(3)に進入する前の被めっき処理面(13)を被覆しつつ、矢印(15)の方向に進む。これによりめっき浴(3)に気体を吹き込みながらめっき処理を行う際に発生するめっき液飛沫(8)が、めっき処理直前の被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)に付着することを防止することができる。そして、ベルト(5)はその後、本発明の特徴であるめっき液飛沫除去手段(16)により洗浄された後、再度被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)を被覆すべく、搬送される。
【0018】
めっき処理直前の被めっき基材(4)に対するめっき液飛沫(8)の付着を防止するためには、ベルト(5)を被めっき基材(4)に密着させることがより好ましい。また、この場合、ベルト(5)と被めっき基材(4)を密着させることで、ベルト(5)と被めっき基材(4)が擦れて被めっき基材(4)に傷が発生する場合があるが、この傷を防止するために、ベルト(5)の搬送速度と被めっき基材(4)の搬送速度を同調させた上で、ベルト(5)を搬送させるのが好ましい。
【0019】
一方、本発明のめっき装置において、ベルト(5)の搬送を必ずしも行わなくとも被めっき基材(4)へのめっき液飛沫(8)付着を防止することが可能であり、本発明の効果が得られるめっき装置となるが、前述のとおり、被めっき基材(4)へのめっき液飛沫付着防止効果と傷防止効果の両方をより効果的にするためには、ベルト(5)の搬送速度と被めっき基材(4)の搬送速度を同調させた上で、ベルト(5)を搬送させるのが好ましい。
【0020】
本発明におけるベルト(5)は、案内ロール(6a〜6d)によって搬送が可能であり、被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)の全体を被覆できる幅であり、ベルト(5)に付着しためっき液飛沫(8)が付着面の反対側の面に通過しない材質のものであれば特に規制するものではない。本発明における案内ロール(6a〜6d)の形状および材質は、ベルト(5)を搬送することができるものであれば規制はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)等が利用できる。また、案内ロール(6a〜6d)の設置位置および数は、ベルト(5)が被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)を覆った状態で、めっき槽(1)およびめっき浴液面(12)まで搬送することができれば特に図1に示される設置位置および数に限定されるものではない。
【0021】
気体吹き込み手段が有する気体吹き込み部(2)としては直径1mm程度の貫通孔を多数設けた気体吹き込み管や、数十μm程度の細孔を多数もつ多孔質材料の気体吹き込みフィルター等が用いられる。めっき浴(3)の攪拌を主目的として気体吹き込みを行う場合には気体吹き込み管を用いることが多く、めっき浴(3)中の酸素濃度調節を目的として気体吹き込みを行う場合には気体吹き込みフィルターを用いることが好ましい。
【0022】
気体吹き込み部(2)の材質は、めっき処理液によって腐食、劣化しなければ特に規制するものではなく、例えば塩化ビニル製パイプ、テフロン(登録商標)、セラミックが好適に用いられる。
【0023】
気体吹き込み部(2)は図1に示す位置に限定するものではないが、めっき槽(1)の底部に設置することで、めっき浴(3)の攪拌効率やめっき浴への酸素供給効率を高めることができるため好ましい。
【0024】
図2は本発明におけるベルトに付着しためっき液飛沫を除去するめっき液飛沫除去手段の一例を示す概略断面図である。めっき液飛沫除去手段(16)は図2に示すようにめっき液飛沫除去槽(19)とベルト(5)を案内する案内ロール(20a〜20c)、および洗浄液(17)をベルト(5)に吹き付けるシャワー吹き出し管(18a〜18d)とから構成され、ベルト(5)に付着しためっき液飛沫をシャワー吹き出し管(18a〜18d)から吹き出された洗浄液(17)により洗浄する。まためっき液飛沫除去手段は、上記めっき液飛沫除去手段(16)に加えて、さらにベルト(5)表面の洗浄を促進するために例えばモルトンロール(図示せず)やブラシロール(図示せず)等の洗浄促進部材を追加しても良い。
【0025】
洗浄液(17)としてはベルト(5)に粒子などの異物を付着させない理由から、イオン交換水を使用することが好ましい。また、めっき浴(3)投入前の被めっき基材(4)に対する洗浄液の転写が好ましくない場合には、さらにベルト(5)の乾燥手段を設けても良い。その場合、乾燥手段は洗浄液(17)が付与された後、例えば案内ロール(20a)のベルト(5)をはさんで対向する位置に液絞りロール(図示せず)を追加しても良いし、さらに、ベルト(5)が付着めっき液除去手段(16)を通過した後の位置にエアノズル(図示せず)を追加し、エアノズル(図示せず)からの空気をベルトに吹き付けることで、ベルト(5)の乾燥効果をより有効にすることもできる。なお図2にはめっき液飛沫除去手段の一例として、めっき液飛沫除去槽(19)と案内ロール(20a〜20c)、および洗浄液(17)をベルト(5)に吹き付けるシャワー吹き出し管(18a〜18d)とから構成されるめっき液飛沫除去手段を示したが、本発明のめっき液飛沫除去手段はこれに限定されるものではなく、例えば図示しないが、図2のめっき液飛沫除去手段からシャワー吹き出し管(18a〜18d)を取り除き、代わりにめっき液飛沫除去槽(19)内にイオン交換水を投入し、案内ロール(20a〜20c)によりベルト(5)をイオン交換水内を通過させるめっき液飛沫除去手段であっても良い。この場合のめっき液飛沫除去手段は、めっき液飛沫除去槽(19)と案内ロール(20a〜20c)から構成される。
【0026】
さらに、めっき液飛沫(8)の再付着防止や、めっき浴(3)への前記洗浄液の混入を防止するために、めっき液飛沫除去手段(16)および前記ベルト乾燥手段(図示せず)はめっき槽(1)外部に設けることが好ましい。
【0027】
図1において被めっき処理面(13)は、被めっき基材(4)の下側、つまりベルト(5)と接触する面側のみにある場合であるが、被めっき処理面(13)が被めっき基材(4)の上側にある場合における本発明のめっき処理槽は図3のようになり、また、被めっき処理面(13)が被めっき基材の両面にある場合における本発明のめっき槽は図4のようになる。
【0028】
図3は本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図であり、長尺帯状のウェブの上面に被めっき処理面(13)を有する被めっき基材(4)に対して、無電解めっき処理を行う場合のめっき処理装置である。被めっき基材(4)は搬送モーター(図示せず)と案内ロール(22a〜22d)によって、矢印(14)の方向に搬送され、めっき浴(3)内に案内され、めっきされた後、図示しない洗浄手段および乾燥手段によって洗浄、乾燥される。めっき浴(3)にバブリングを行う気体吹き込み手段は、ブロワ(11)と気体吹き込み配管(10)、および気体吹き込み部(2)とから構成され、めっき槽外部に設置したブロワ(11)から供給される気体を、気体吹き込み配管(10)を介して気体吹き込み部(2)に供給し、気体吹き込み部(2)からめっき浴(3)中に気体を送り込むことでバブリングが行われる。本発明の特徴である、めっき液飛沫付着防止手段はベルト(5)、ベルトを案内する案内ロール(21a〜21f)、および案内ロール(21a〜21f)を駆動する駆動モーター(図示せず)から構成され、ベルト(5)は被めっき基材(4)のめっき浴(3)に進入する前の被めっき処理面(13)側を被覆しつつ、駆動モーター(図示せず)の駆動により矢印(15)の方向に進む。これによりめっき浴(3)に気体を吹き込みながらめっき処理を行う際に発生するめっき液飛沫(8)が、めっき処理直前の被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)に付着することを防止することができる。そして、ベルト(5)はその後、めっき液飛沫除去手段(16)により洗浄された後、再度被めっき基材(4)の被めっき処理面(13)を被覆すべく、搬送される。
【0029】
図4は本発明のめっき処理装置の一例を示す概略断面図であり、長尺帯状のウェブの両面に被めっき処理面(13a、13b)を有する被めっき基材(4)に対して、無電解めっき処理を行う場合のめっき処理装置である。被めっき基材(4)は搬送モーター(図示せず)と案内ロール(6b、9a〜9c)によって、矢印(14)の方向に搬送され、めっき浴(3)内に案内され、めっきされた後、図示しない洗浄手段および乾燥手段によって洗浄、乾燥される。めっき浴(3)にバブリングを行う気体吹き込み手段は、ブロワ(11)と気体吹き込み配管(10)、および気体吹き込み部(2)とから構成され、めっき槽外部に設置したブロワ(11)から供給される気体を、気体吹き込み配管(10)を介して気体吹き込み部(2)に供給し、気体吹き込み部(2)からめっき浴(3)中に気体を送り込むことでバブリングが行われる。本発明の特徴である、めっき液飛沫付着防止手段はベルト(5a、5b)、ベルトを案内する複数の案内ロール(6a〜6d、23a〜23f)、および案内ロール(6a〜6d、23a〜23f)を駆動する駆動モーター(図示せず)から構成され、被めっき基材(4)の下側にベルト(5a)と案内ロール(6a〜6d)が設置され、被めっき基材(4)の上側に(5b)と案内ロール(23a〜23f)が設置されている。ベルト(5a、5b)は被めっき基材(4)のめっき浴(3)に進入するまでの上下両面を被覆しつつ、駆動モーター(図示せず)の駆動により矢印(15a、15b)の方向に進む。これによりめっき浴(3)に気体を吹き込みながらめっき処理を行う際に発生するめっき液飛沫(8)が、めっき処理直前の被めっき基材(4)に付着することを防止している。そして、ベルト(5a、5b)はその後、めっき液飛沫除去手段(16)により洗浄された後、再度被めっき基材(4)の被めっき処理面(13a、13b)を被覆すべく、搬送される。
【0030】
図5は本発明の電解めっき処理装置の一例を示す概略断面図であり、電源装置(24)、アノード板(25)、給電ロール(26)を新たに設けること以外は図1に示しためっき槽と同様の構成である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
被めっき基材として、厚み100μmからなるポリエチレンテレフタレート製のウェブの一方の面に、厚み100μm、大きさ10×15cmからなるポリエチレンテレフタレート製のシート上にめっき用前処理として銀画像(1×5cmの2つの電極間を10cmになるよう配置し、その間を細線幅6.3μm、細線間隔6.3μmの細線1536本で結合)が描画された銀画像シートを貼付したものを使用し、図1に示しためっき処理装置を使用して無電解銅めっき処理を行い、めっき基材Aを作製した。なお、無電解銅めっきは、メルテックス(株)製薄付無電解銅めっき液、メルプレートCU−5100を標準希釈で建浴し、50℃で15分間行った。
【0033】
このめっき基材Aの2つの電極間の電気抵抗値をFLUKE 70(JOHN FLUKE MFG CO.INC.社製マルチメーターの商品名)を用いて測定したところ、5.2Ωであった。
【0034】
(比較例1)
上記実施例1において図1のめっき処理装置からめっき液飛沫除去手段(16)を取り除いためっき処理装置を使用すること以外、実施例と同様にして、比較のめっき基材Bを作製した。
【0035】
このめっき基材Bのめっき画像を、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、めっき析出量の異なる処理ムラが確認され、隣接する配線が所々つながっている様子が観察された。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、3.2Ωであった。これは、めっき処理のムラが発生したことにより、隣接する線同士が所々つながってしまったために電気抵抗が下がったためである。
【0036】
(比較例2)
上記実施例1において図1のめっき処理装置からベルト(5)、およびめっき液飛沫除去手段(16)を取り除いためっき処理装置を使用すること以外、実施例1と同様にして、比較のめっき基材Cを作製した。
【0037】
このめっき基材Cのめっき画像を、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、めっき析出量の異なる処理ムラが多数確認され、隣接する配線がつながっている様子が観察された。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、2.6Ωであった。これは、めっき処理のムラが発生したことにより、隣接する線同士が所々つながってしまったために電気抵抗が下がったためである。
【0038】
結果からわかるように、本発明においては、めっき浴への気体吹き込みによって発生しためっき液飛沫がめっき浴投入前の被めっき基材に付着することを防ぐことによって、めっき処理のムラを改善し、隣接する配線の間隔が数十μm以下と極めて高精細であっても配線同士が接合することを回避することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 めっき槽
2 気体吹き込み部
3 めっき浴
4 被めっき基材
5 ベルト
5a、5b ベルト
6a〜6d 案内ロール
7 気泡
8 めっき液飛沫
9a〜9d 案内ロール
10 気体吹き込み配管
11 気体吹き込みブロワ
12 めっき浴液面
13 被めっき処理面
13a、13b 被めっき処理面
14 被めっき基材の搬送方向
15 ベルトの搬送方向
15a、15b ベルトの搬送方向
16 めっき液飛沫除去手段
17 洗浄液
18a〜18d シャワー吹き出し口
19 めっき液飛沫除去槽
20a〜20c 案内ロール
21a〜21f 案内ロール
22a〜22d 案内ロール
23a〜23f 案内ロール
24 電源装置
25 アノード板
26 給電ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状の被めっき基材をめっき処理するめっき槽、およびめっき浴にバブリングを行う気体吹き込み手段を有するめっき処理装置であって、少なくとも複数の案内ロールおよびベルトから構成されるめっき液飛沫付着防止手段と、該ベルトに付着しためっき液飛沫を除去するめっき液飛沫除去手段とを少なくとも有するめっき処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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