説明

めっき方法、金属薄膜形成方法、及びめっき触媒液

【課題】疎水性の被めっき体に対してのめっき時の環境負荷を低減することが可能で、被めっき体の親疎水性に関わらず密着性に優れためっき膜を形成し得るめっき方法を提供すること。
【解決手段】(a)触媒元素と相互作用を形成する官能基を表面に有する被めっき体に対し、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する工程と、(b)該めっき触媒液が付与された被めっき体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とするめっき方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法、該めっき方法を用いた金属薄膜形成方法、及び、該めっき方法に用いられるめっき触媒液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被めっき体に対して無電解めっきを行う際には、一般的に、めっき下地として被めっき体表面に水系めっき触媒液に浸漬することで触媒を付与しておくことが一般的である。しかし、被めっき体表面が疎水的である場合には、めっき触媒液を弾いてしまい、触媒を付与することができないとの問題が発生する。この場合、疎水性の被めっき体表面に処理を施し、親水的にするなどの工程が増えるといった問題点があった。
疎水性の被めっき体に対し、無電解めっきを行う際には、例えば、特許文献1に記載のような、低級アルコール類と非プロトン極性化合物からなる混合溶液中で金属の塩又は錯体を還元することで得られる還元金属コロイド分散液を使用することができる。このめっき触媒液は、非水系であり、疎水性の被めっき体への触媒付与が容易なる。
【0003】
また、疎水性の被めっき体に対し、上記のような非水系のめっき触媒液を用いためっき方法としては、例えば、特許文献2に記載されており、具体的には、非水系のめっき触媒液と、非水系の無電解めっき液と、を用いることで、疎水性の被めっき体に対するめっき方法が開示されている。
しかしながら、このようにめっき触媒液及び無電解めっき液の両方に非水系のものを用いると、有機溶剤の使用量の関係から環境負荷が高いといった問題を有していた。
また、引用文献2には、疎水性の被めっき体に対して水系のめっき触媒液を使用する際には、被めっき体に対して、予め親水化・粗化処理が必要になるばかりか、めっき触媒付与後に乾燥が必要となる(更に、工程数が増えるだけでなく、めっき触媒活性が低下する)と記載されており、疎水性の被めっき体に対し、環境負荷を低減させつつ、良好なめっき膜を得ることが困難であることが分かる。
【特許文献1】特開平1−315334号公報
【特許文献2】特開2001−181853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、疎水性の被めっき体に対してのめっき時の環境負荷を低減することが可能で、被めっき体の親疎水性に関わらず密着性に優れためっき膜を形成し得るめっき方法、該めっき方法を用いた金属膜形成方法、及び、該めっき方法に用いられるめっき触媒液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
即ち、本発明のめっき方法は、(a)触媒元素と相互作用を形成する官能基を少なくとも表面に有する被めっき体に対し、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する工程と、(b)該めっき触媒液が付与された被めっき体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明のめっき方法において、被めっき体が、基材表面に、触媒元素と相互作用を形成する官能基を有し、且つ、該基材と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を有するものであることが好ましい。
また、このポリマー層が、触媒元素と相互作用を形成する官能基及び重合性基を有するポリマーを前記基材表面に直接化学結合させることにより形成されたものであることが好ましい。
更に、触媒元素と相互作用を形成する官能基及び重合性基を有するポリマーが、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることが更に好ましい態様である。
【0007】
【化1】

【0008】
上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0009】
本発明のめっき方法における(b)工程では、無電解めっきが行われることが好ましく、この無電解めっきの際に水系の無電解めっき浴を用いることがより好ましい。
また、本発明のめっき方法において、めっき触媒液を構成する有機溶剤が、ケトン系溶剤であることが好ましく、特に、アセトンであることが好ましい。
また、めっき触媒液が更に水を含有し、該水と前記有機溶剤との含有割合が、質量比で10:90〜30:70であることが好ましい。
また、めっき触媒液を構成する触媒元素が、Pdであることが好ましい。
【0010】
本発明の金属薄膜形成方法は、本発明のめっき方法を用いたことを特徴とするものである。
また、本発明のめっき触媒液は、本発明のめっき方法に用いられ、触媒元素と有機溶剤とを含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、疎水性の被めっき体に対してのめっき時の環境負荷を低減することが可能で、被めっき体の親疎水性に関わらず密着性に優れためっき膜を形成し得るめっき方法、該めっき方法を用いた金属膜形成方法、及び、該めっき方法に用いられるめっき触媒液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<めっき方法、金属薄膜形成方法>
本発明のめっき方法は(a)触媒元素と相互作用を形成する官能基を少なくとも表面に有する被めっき体に対し、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する工程と、(b)該めっき触媒液が付与された被めっき体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。また、本発明の金属薄膜形成方法は、本発明のめっき方法を用いたものである。
本発明においては、被めっき体は触媒元素と相互作用を形成する官能基の存在により、親疎水性に関わらずめっき触媒液中の触媒元素を効果的に吸着することができる。その結果、(a)工程後、被めっき体の表面には十分な触媒元素が付着していることとなり、その後の(b)工程において水系の無電解めっき浴を用いた場合であっても、良好なめっき膜を得ることができる。このように、本発明のめっき方法によれば、無電解めっき浴として水系のものを使用することが可能となり、疎水性の被めっき体に対してのめっき時の環境負荷の低減を図ることができる。
また、上記のように、被めっき体表面に存在する触媒元素と相互作用を形成する官能基と触媒元素とが相互作用(吸着)を形成していることから、この触媒元素をもとにめっき膜を形成することで、被めっき体との密着性に優れためっき膜を得ることができる。
以下、本発明のめっき方法における(a)及び(b)工程について説明する。
【0013】
〔(a)工程〕
本発明における(a)工程では、触媒元素と相互作用を形成する官能基を少なくとも表面に有する被めっき体に対し、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する。
【0014】
[被めっき体]
まず、本工程で用いる被めっき体について説明する。
本発明における被めっき体は、触媒元素と相互作用を形成する官能基(以下、適宜、「相互作用性基」と称する。)をその少なくとも表面に有しており、後述の(b)工程においてめっきを行うことができる程度の形状保持性を有していれば、その形状は特に限定されるものではない。被めっき体の形状については、作製されるめっき膜の用途に応じて、適宜、決定すればよい。
なお、相互作用性基は被めっき体の少なくとも表面に存在していれば、本発明の効果を得ることができるが、被めっき体の表面に加えその内部にも相互作用性基が存在していてもよい。被めっき体の表面及び内部に相互作用性基が存在する場合、被めっき体の厚さ方向の内部にまで触媒元素が吸着することになり、触媒元素吸着性の観点から好ましい。
【0015】
本発明における被めっき体は、基材表面に、触媒元素と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)を有し、且つ、該基材と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を有するものであることが好ましい。このようなポリマー層を有することにより、表面及び内部に相互作用性基が存在する被めっき体を得ることができる。
以下、このポリマー層を「特定ポリマー層」と称し、その形成方法について詳細に説明する。
【0016】
(表面グラフト)
本発明における被めっき体が、上記のような、基材表面に特定ポリマー層を有するものである場合、一般的な表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いることが好ましい。グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には、表面グラフト重合と呼ばれる。
【0017】
本発明に適用される表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0018】
また、本発明において、基材表面に特定ポリマー層を有する被めっき体を得る方法としては、上記の表面グラフト法以外にも、触媒元素と相互作用を形成する官能基を有する高分子化合物鎖の末端に、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、これと基材表面に存在する官能基とのカップリング反応により結合させる方法を適用することもできる。
これらの方法の中でも、より多くのポリマーを表面に存在させるため観点からは、光グラフト重合法、特に、UV光による光グラフト重合法を用いることが好ましい。
【0019】
(基材)
本発明における「基材」とは、その表面が、触媒元素と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)を有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有するものであり、基材自体がこのような表面特性を有するものであってもよく、また、このような特性を有する中間層(例えば、後述する重合開始層)を有するものであってもよい。
【0020】
本発明に使用される基材は、寸度的に安定なものであることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、相互作用性基を有するポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、後述の重合開始層などは必要ない。
【0021】
本発明における基材として、特開2005−281350号公報の段落番号〔0028〕〜〔0088〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0022】
また、本発明のめっき方法により得られためっき膜は、半導体パッケージ、各種電気配線基材等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基材、具体的には、絶縁性樹脂からなる基材、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基材を用いることが好ましい。
【0023】
絶縁性樹脂からなる基材、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0024】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、特開2007−144820号公報の段落番号〔0014〕〜〔0019〕に記載されているエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂などを使用することができる。
【0025】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0026】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0027】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0028】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10質量%〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0029】
本発明に用いられる基材は、半導体パッケージ、各種電気配線基材等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。この基材の表面凹凸(中間層や重合開始層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0030】
本発明においては、被めっき体(基材)が板状物、例えば、樹脂フィルムであれば、その両面に相互作用性基を存在させてもよい。このように樹脂フィルムの両面に相互作用性基が存在する場合には、更に、後述する(b)工程を行うことで、樹脂フィルムの両面にめっき膜が形成される。
【0031】
本発明において、基材表面に特定ポリマー層を有するものであって、該特定ポリマー層が、基材表面に活性種を与え、それを起点としてグラフトポリマーを生成させる表面グラフト重合法を用いて形成される場合、グラフトポリマーの生成に際しては、以下のような重合開始剤(活性種を発生しうる化合物)を含有する、又は、重合開始可能な官能基を有する重合開始層を有する基材を用いることができる。
この重合開始層が形成される基材が板状物であれば、その両面に重合開始層を形成してもよい。
【0032】
本発明における重合開始層は、基材との密着性が良好な樹脂組成物を用いて形成されることが好ましく、更に、この樹脂組成物中には特定ポリマー層を形成するために用いられる活性種を発生させる化合物(重合開始剤)、又は、活性点を発生させる部位と、基板と化学的な結合を形成しうる部位とを有する化合物を含むことが好ましい。
なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、活性点を発生させうる化合物であれば、樹脂組成物中に必ずしも活性種を発生させる化合物を添加する必要はない。
【0033】
本発明における重合開始層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基板との密着性の観点から、重合開始層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、重合開始層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0034】
重合開始層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着性の観点から好ましい。
【0035】
なお、本発明における絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。
【0036】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0037】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。
【0038】
また、重合開始層に用いられる絶縁樹脂としては、特定ポリマー層を形成するために用いられる活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。この樹脂として、例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0039】
更に、重合開始層には、層内での架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に、多官能のものを用いることが好ましい。その他、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に対し、その一部を、メタクリル酸やアクリル酸等を用いて、(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0040】
本発明における重合開始層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、更に種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、硬化剤などが挙げられる。硬化剤に関しては、化学量論的添加量(樹脂中の官能基が全て反応するために必要な硬化剤の量)とは異なる量を添加することで、多層配線基板を形成する際に、スルーホールやビアの形成、形成後のデスミア処理をし易くすることができる。エポキシ樹脂の場合を例に挙げると、エポキシ当量が165であるエポキシ樹脂と活性水素当量が120である硬化剤を用いる場合、硬化剤の化学量論的添加量は73phrであるが、この添加量以外で添加することにより、スルーホールやビアの形成、形成後のデスミア処理をしやすくすることができる。
【0041】
本発明における重合開始層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0042】
また、重合開始層には、絶縁樹脂以外の成分として、重合開始層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。具体的には、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーが挙げられる。
【0043】
また、更に、重合開始層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0044】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。重合開始層と隣接する基材とが、熱や電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0045】
重合開始層には、前述のように、特定ポリマー層を形成するために用いられる活性種を発生させる化合物が用いられることが好ましい。この活性点を発生させるためには、何らかのエネルギーを付与すればよく、好ましくは、光(紫外線、可視光線、X線など)、プラズマ(酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、熱、電気、等が用いられる。更に、酸化性の液体(過マンガン酸カリウム溶液)などによって表面を化学的に分解することで活性点を発生させてもよい。
活性種を発生させる化合物の例としては、例えば、特開2007−154306公報の段落番号〔0043〕、〔0044〕に記載されている熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。
ここで、重合開始層に含有させる重合開始剤の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0046】
本発明における重合開始層は、基材上に重合開始層形成用の樹脂組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜される。
この樹脂組成物を塗布液とする際に用いる溶媒は、重合開始層を構成する成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、特開2007−154306公報の段落番号〔0045〕に記載されている、シクロヘキサノン、メチルエチルケトンなどを使用することができる。溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2質量%〜50質量%が適当である。
【0047】
また、重合開始層を基材上に形成する場合の塗布量は、十分な密着性の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1g/m〜20g/mが好ましく、0.1g/m〜15g/mがより好ましく、0.1g/m〜2g/mが更に好ましい。
【0048】
本発明においては、上記のように、基材上に樹脂組成物を配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合開始層を形成するが、この時、加熱及び/又は光照射を行って予備硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性の二重結合を有する化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、重合開始層上に樹脂層が形成された後に重合開始層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が充分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40℃〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0049】
また、重合開始層に対しては、上記の予備硬膜に加え、更に、何らかのエネルギーを与える硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱又は光が一般的であり、熱の場合は、100℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、重合開始層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120℃〜220℃で20分〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
上記のような硬化処理は重合開始層の形成後すぐにおこなってもよく、重合開始層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、重合開始層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0050】
なお、重合開始層は、上述の塗布法以外にも、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成することもできる。
なお、転写法を適用する場合には、樹脂層形成用塗布液から得られた層と、重合開始層との2層構成を有する転写積層体を作製し、ラミネート法によって一度に基材の表面に転写してもよい。
【0051】
本発明における重合開始層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.2μm〜5μmの範囲であることが好ましい。重合開始層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基材や特定ポリマー層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。その結果、全体の厚みが薄く、且つ、密着性に優れためっき金属膜を得ることができる。
【0052】
また、本発明における重合開始層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点や、形成されためっき金属膜から微細な回路を有するプリント配線板を得るといった観点からは、JIS B 0633(2001)、算術平均表面粗さRaが1μm以下であるものが好ましく、Raが0.5μm以下であることがより好ましい。重合開始層の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、金属箔付基材は、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0053】
また、重合開始層の形成後、その表面に形成される特定ポリマーとの密着性向上の目的では、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0054】
(ポリマーの結合)
(a)工程において、基材と相互作用性基を有するポリマーとを結合させる方法としては、前述した如く、基材表面に存在する官能基と、相互作用性基を有する高分子化合物がその末端又は側鎖に有する反応性官能基とのカップリング反応を利用する方法や、光グラフト重合法を用いることができる。
本発明においては、基材上に、触媒元素と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)及び重合性基を有する化合物を接触させた後、エネルギーを付与することにより、前記基材表面(重合開始層があればその表面)に当該化合物を重合させつつ直接化学結合させる態様が好ましい。即ち、エネルギー付与により基材表面に活性種が発生すると、その活性種を起点として相互作用性基及び重合性基を有する化合物の重合反応が進行し、その結果、基材表面に相互作用性基を有するポリマー(グラフトポリマー)が直接化学結合した形態を得ることができる。
【0055】
上記接触は、基材を、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物からなる層を基材表面(重合開始層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基材が樹脂フィルムのような形状であり、両面に対してポリマー層を形成する場合にも、ポリマー層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0056】
本発明において、表面グラフト重合法により、基材表面にグラフトポリマーを生成させる場合に用いられる、相互作用性基及び重合性基を有する化合物について説明する。
本発明における相互作用性基及び重合性基を有する化合物中の重合性基は、エネルギー付与により、相互作用性基及び重合性基を有する化合物同士が反応する、又は、相互作用性基及び重合性基を有する化合物と基材とが結合する官能基であり、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキセタン基、エポキシ基、イソシアネート基、活性水素を含む官能基、アゾ化合物における活性基などが挙げられる。
【0057】
本発明における相互作用性基としては、極性基(親水性基)や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。特に、本発明のめっき方法により形成されためっき膜に対し、吸水性、吸湿性を低減するためには、金属イオン吸着能を示す部位としての非解離性官能基を用いることが好ましい。
【0058】
前記極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは解離基の対イオンの形で金属イオンと吸着する。
また、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の極性基も用いることもできる。
その他、イミノ基、1〜2級のアミノ基、アミド基、ウレタン基、水酸基(フェノールも含む)、チオール基などを用いることもできる。
【0059】
また、前記非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましく、具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基等が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0060】
一般的に、高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基はポリマー層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、膜が緻密になり、且つ、ポリマー層全体としての極性が下がるため、吸水性が低くなる。また、ポリマー層の良溶剤にて触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。以上のことから、シアノ基を有するポリマー層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用をする、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
また、本発明における相互作用性基としては、アルキルシアノ基であることが更に好ましい。これは、芳香族シアノ基は芳香環に電子を吸引されており、めっき触媒等への吸着性として重要な不対電子の供与性が低めになるが、アルキルシアノ基はこの芳香環が結合していないため、めっき触媒等への吸着性の点で好ましい。
【0061】
本発明において、相互作用性基及び重合性基を有する化合物は、モノマー、マクロモノマー、ポリマーのいずれの形態あってもよく、中でも、ポリマー層の形成性と、制御の容易性の観点から、ポリマー(相互作用性基及び重合性基を有するポリマー)を用いることが好ましい。
相互作用性基及び重合性基を有するポリマーとしては、相互作用性基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーであることが好ましく、この相互作用性基及び重合性基を有するポリマーは、少なくとも主鎖末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
以下、相互作用性基として非解離性官能基を有する相互作用性基及び重合性基を有する化合物について詳細に説明する。
【0062】
前記相互作用性基及び重合性基を有するポリマーを得る際に用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、前記記載の非解離性官能基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

【0065】
相互作用性基及び重合性基を有するポリマーにおいて、相互作用性基を有するモノマーに由来するユニットは、めっき触媒又はその前駆体との相互作用形成性の観点から、相互作用性基及び重合性基を有するポリマー中に、50モル%〜95モル%の範囲で含有されることが好ましく、40モル%〜80モル%の範囲で含有されることがより好ましい。
【0066】
また、相互作用性基及び重合性基を有するポリマーを得る際には、吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、上記相互作用性基を有するモノマー以外に他のモノマーを用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な重合性モノマーを用いてよく、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0067】
このような相互作用性基及び重合性基を有するポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用
性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0068】
相互作用性基及び重合性基を有するポリマーの合成に用いられる、相互作用性基を有するモノマーとしては、上記の相互作用性基を有するモノマーと同様のモノマーを用いることができる。モノマーは、一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
相互作用性基を有するモノマーと共重合させる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜、2−(3−ブロモ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレート、などが挙げられる。
【0070】
更に、相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0071】
以下、本発明において好適に用いられる相互作用性基及び重合性基を有するポリマーの具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
次に、本発明における相互作用性基及び重合性基を有するポリマーとして最も好ましいシアノ基及び重合性基を有するポリマー(以下、適宜、「シアノ基含有重合性ポリマー」と称する。)について説明する。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0076】
【化7】

【0077】
上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0078】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0079】
X、Y及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又はこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたものが好ましい。
置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニル基、若しくは、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたフェニル基が好ましい。
中でも、−(CH−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH−である。
【0080】
は、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、中でも、総炭素数1〜9であるものが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
の構造として、より具体的には、下記式(1−1)、又は、式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0081】
【化8】

【0082】
上記式(1−1)及び式(1−2)中、R及びRは、夫々独立して、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子を用いて形成される2価の有機基であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0083】
また、Lは、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、Lの総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0084】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(1)で表されるユニットが、下記式(3)で表されるユニットであることが好ましい。
【0085】
【化9】

【0086】
上記式(3)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Zは、単結合、置換若しくは無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Wは、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0087】
式(3)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0088】
式(3)におけるZは、前記式(1)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。
また、式(3)におけるLも、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0089】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(3)で表されるユニットが、下記式(4)で表されるユニットであることが好ましい。
【0090】
【化10】

【0091】
式(4)中、R及びRは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、V及びWは、夫々独立して、酸素原子、又はNR(Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0092】
式(4)におけるR及びRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0093】
式(4)におけるLは、前記式(1)におけるLと同義であり、好ましい例も同様である。
【0094】
前記式(3)及び式(4)において、Wは、酸素原子であることが好ましい。
また、前記式(3)及び式(4)において、Lは、無置換のアルキレン基、或いは、ウレタン結合又はウレア結合を有する二価の有機基が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、これら中でも、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0095】
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーとしては、前記式(2)で表されるユニットが、下記式(5)で表されるユニットであることが好ましい。
【0096】
【化11】

【0097】
上記式(5)中、Rは、水素原子、又は置換若しく無置換のアルキル基を表し、Uは、酸素原子、又はNR’(R’は、水素原子、又はアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、又は炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表し、Lは、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。
【0098】
式(5)におけるRは、前記式(1)におけるR及びRと同義であり、水素原子であることが好ましい。
【0099】
また、式(5)におけるLは、前記式(2)におけるLと同義であり、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(5)においては、L中のシアノ基との連結部位が、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(5)におけるL中のシアノ基との連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0100】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、前記式(1)〜式(5)で表されるユニットを含んで構成されるものであり、重合性基とシアノ基とを側鎖に有するポリマーである。
このシアノ基含有重合性ポリマーは、例えば、以下のように合成することができる。
【0101】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーを合成する際の重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられる。反応制御の観点から、ラジカル重合、カチオン重合を用いることが好ましい。
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが異なる場合と、2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合と、でその合成方法が異なる。
【0102】
1)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態が異なる場合は、1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様と、1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様と、がある。
【0103】
1−1)ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がカチオン重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がラジカル重合である態様で用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0104】
・重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられる重合性基含有ユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルブタンビニルエーテル、2−(メタ)アクリロイルエタンビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルプロパンビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシジエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、(メタ)アクリロイル1stテルピオネール、1−(メタ)アクリロイロキシ−2−メチル−2−プロペン、1−(メタ)アクリロイロキシ−3−メチル−3−ブテン、3−メチレン−2−(メタ)アクリロイロキシ−ノルボルナン、4,4’−エチリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、メタクロレインジ(メタ)アクリロイルアセタール、p−((メタ)アクリロイルメチル)スチレン、アリル(メタ)アクリレート、2−(ブロモメチル)アクリル酸ビニル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸アリル等が挙げられる。
【0105】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、2−シアノエチルビニルエーテル、シアノメチルビニルエーテル、3−シアノプロピルビニルエーテル、4−シアノブチルビニルエーテル、1−(p−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(o−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(m−シアノフェノキシ)−2−ビニロキシ−エタン、1−(p−シアノフェノキシ)−3−ビニロキシ−プロパン、1−(p−シアノフェノキシ)−4−ビニロキシ−ブタン、o−シアノベンジルビニルエーテル、m−シアノベンジルビニルエーテル、p−シアノベンジルビニルエーテル、アリルシアニド、アリルシアノ酢酸や、以下の化合物等が挙げられる。
【0106】
【化12】

【0107】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−4(p74)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 7章(p195)に記載の一般的なカチオン重合法が使用できる。なお、カチオン重合には、プロトン酸、ハロゲン化金属、有機金属化合物、有機塩、金属酸化物及び固体酸、ハロゲンが開始剤として用いることができるが、この中で、活性が大きく高分子量が合成可能な開始剤として、ハロゲン化金属と有機金属化合物の使用が好ましい。
具体的には、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、塩化アルミ、臭化アルミ、四塩化チタン、四塩化スズ、臭化スズ、5フッ化リン、塩化アンチモン、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化鉄、ジクロロエチルアルミニウム、クロロジエチルアルミニウム、ジクロロメチルアルミニウム、クロロジメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリメチル亜鉛、メチルグリニアが挙げられる。
【0108】
1−2)ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様
本発明において、ポリマー主鎖形成がラジカル重合で行われ、側鎖に導入される重合性基の重合形態がカチオン重合である態様用いられるモノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
【0109】
・重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
上記1−1)の態様で挙げた重合性基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
【0110】
・シアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマー
本態様に用いられるシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーとしては、シアノメチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、5−シアノペンチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、7−シアノヘプチル(メタ)アクリレート、8−シアノオクチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル−(2−(ブロモメチル)アクリレート)、2−シアノエチル−(2−(ヒドロキシメチル)アクリレート)、p−シアノフェニル(メタ)アクリレート、o−シアノフェニル(メタ)アクリレート、m−シアノフェニル(メタ)アクリレート、5−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトロ−ノルボルネン、6−(メタ)アクリロイル−2−カルボニトロ−ノルボルネン、1−シアノ−1−(メタ)アクリロイル−シクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シアノメチル−(メタ)アクリレート、1−メチル−1−エチル−1−シアノメチル−(メタ)アクリレート、o−シアノベンジル(メタ)アクリレート、m−シアノベンジル(メタ)アクリレート、p−シアノベンジル(メタ)アクリレート、1−シアノシクロヘプチルアクリレート、2−シアノフェニルアクリレート、3−シアノフェニルアクリレート、シアノ酢酸ビニル、1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸ビニル、シアノ酢酸アリル、1−シアノ−1−シクロプロパンカルボン酸アリル、N,N−ジシアノメチル(メタ)アクリルアミド、N−シアノフェニル(メタ)アクリルアミド、アリルシアノメチルエーテル、アリル−o−シアノエチルエーテル、アリル−m−シアノベンジルエーテル、アリル−p−シアノベンジルエーテルなどが挙げられる。
また、上記モノマーの水素の一部を、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基などで置換した構造を持つモノマーも使用可能である。
【0111】
重合方法は、実験化学講座「高分子化学」2章−2(p34)に記載の方法や、「高分子合成の実験方法」大津隆行著 5章(p125)に記載の一般的なラジカル重合法が使用できる。なお、ラジカル重合の開始剤には、100℃以上の加熱が必要な高温開始剤、40℃〜100℃の加熱で開始する通常開始剤、極低温で開始するレドックス開始剤などが知られているが、開始剤の安定性、重合反応のハンドリングのし易さから、通常開始剤が好ましい。
通常開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビル−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
【0112】
2)ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合
ポリマー主鎖を形成する重合形態と側鎖に導入される重合性基の重合形態とが同一の場合は、2−1)両者がカチオン重合の態様と、2−2)両者がラジカル重合である態様と、がある。
【0113】
2−1)両者がカチオン重合の態様
両者がカチオン重合の態様には、シアノ基を有するモノマーとして、前記1−1)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと同じものを用いることができる。
なお、重合中のゲル化を防止する観点から、シアノ基を有するポリマーを予め合成した後、該ポリマーと、カチオン重合性の重合性基を有する化合物(以下、適宜、「反応性化合物」と称する。)と、を反応させ、側鎖にカチオン重合性の重合性基を導入する方法を用いることが好ましい。
【0114】
なお、シアノ基を有するポリマーは、反応性化合物との反応のために、下記に示すような反応性基を有することが好ましい。
また、シアノ基を有するポリマーと反応性化合物とは、以下のような官能基の組み合わせとなるように、適宜、選択されることが好ましい。
具体的な組み合わせとしては、(ポリマーの反応性基、反応性化合物の官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルキシル基)等を挙げることができる。
【0115】
ここで、反応性化合物として、具体的には、以下に示す化合物を用いることができる。
即ち、アリルアルコール、4−ヒドロキシブタンビニルエーテル、2−ヒドロキシエタンビニルエーテル、3−ヒドロキシプロパンビニルエーテル、ヒドロキシトリエチレングリコールビニルエーテル、1stテルピオネール、2−メチル−2−プロペノール、3−メチル−3−ブテノール、3−メチレン−2−ヒドロキシ−ノルボルナン、p−(クロロメチル)スチレンである。
【0116】
2−2)両者がラジカル重合である態様
両者がラジカル重合である態様では、合成方法としては、i)シアノ基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましいのは、合成適性の観点から、ii)シアノ基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)シアノ基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0117】
前記i)の合成方法で用いられる重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレートや、以下の化合物などが挙げられる。
【0118】
【化13】

【0119】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、下記式(a)で表される化合物などが挙げられる。
【0120】
【化14】

【0121】
上記式(a)中、Aは重合性基を有する有機原子団、R〜Rは、夫々独立して、水素原子又は1価の有機基、B及びCは脱離反応により除去される脱離基であり、ここでいう脱離反応とは、塩基の作用によりCが引き抜かれ、Bが脱離するものである。Bはアニオンとして、Cはカチオンとして脱離するものが好ましい。
式(a)で表される化合物としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0122】
【化15】

【0123】
【化16】

【0124】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、下記に示すように、B、Cで表される脱離基を脱離反応により除去する方法、つまり、塩基の作用によりCを引き抜き、Bが脱離する反応を使用する。
【0125】
【化17】

【0126】
上記の脱離反応において用いられる塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミ化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。アルカリ金属類の水素化物、水酸化物、又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。これらの塩基は、1種或いは2種以上の混合であってもよい。
【0127】
また、前記脱離反応において、塩基を付与(添加)する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独或いは2種以上混合してもよい。
【0128】
使用される塩基の量は、化合物中の特定官能基(B、Cで表される脱離基)の量に対して、当量以下であってもよく、また、当量以上であってもよい。また、過剰の塩基を使用した場合、脱離反応後、余剰の塩基を除去する目的で酸などを添加することも好ましい形態である。
【0129】
前記iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、上記1−2)
の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基としてカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0130】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
水酸基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(2−ヒドロキシエチル)−(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0131】
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるシアノ基を有するポリマーは、更に第3の
共重合成分を含んでいてもよい。
【0132】
前記iii)の合成方法において、シアノ基を有するポリマーと反応させる重合性基を有
するモノマーとしては、シアノ基を有するポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
具体的には以下のモノマーを使用することができる。
【0133】
【化18】

【0134】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーにおいて、前記式(1)、式(3)、又は式(4)におけるLがウレタン結合を有する二価の有機基である構造の場合には、下記の合成方法(以下、合成方法Aと称する。)で合成することが好ましい。
即ち、本発明における合成方法Aは、少なくとも溶媒中で、側鎖にヒドロキシル基を有するポリマー、及び、イソシアネート基と重合性基とを有する化合物を用い、該ヒドロキシル基に該イソシアネート基を付加させることによりL中のウレタン結合を形成することを特徴とする。
【0135】
ここで、合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーとしては、上記1−2)の態様で挙げたシアノ基含有ユニット形成するために用いられるモノマーと、以下に示す挙げるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、の共重合体が好ましい。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、前述の二重結合導入のための反応性基を有するモノマーの一つとして挙げられている水酸基含有のモノマーと同種のものを使用することができる。
なお、合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーは、更に第3の共重合成分を含んでいてもよい。
【0136】
上述のような側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーの中でも、高分子量体のポリマーを合成する観点から、原料として、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いて合成したポリマーを使用することもできる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(I)〜(IV)の工程を順次経ることで得られたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0137】
前記(I)の工程において用いられる混合物は、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する不純物である2官能アクリレートと、を含んでおり、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートの一般的な市販品に相当する。
前記(I)の工程では、この市販品(混合物)を水に溶解して、水溶液を得る。
【0138】
前記(II)の工程では、(I)の工程で得られた水溶液に対し、水と分離する第1の有機溶剤を加える。ここで用いられる、第1の有機溶剤としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
その後、水溶液(水層)から、この第1の有機溶剤と2官能アクリレートとを含む層(油層)を分離する。
【0139】
前記(III)の工程では、(II)の工程で油層と分離された水層に、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する。
ここで用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などの無機塩等が用いられる。
【0140】
前記(IV)の工程では、水層に第2の有機溶剤を加えて、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する。
ここで用いられる第2の有機溶剤としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。この第2の有機溶剤は、前述の第1の有機溶剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
(IV)の工程における濃縮には、無水硫酸マグネシウムによる乾燥や、減圧留去等が用いられる。
【0141】
前記(I)〜(IV)の工程を順次経ることで得られたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを含む単離物は、その全質量中に2官能アクリレートを0.1質量%以下の範囲で含むことが好ましい。つまり、前記(I)〜(IV)の工程を経ることで、混合物から不純物である2官能アクリレートが除去され、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが精製される。
2官能アクリレートの含有量のより好ましい範囲は、単離物の全質量中に0.05質量%以下であり、少なければ少ないほどよい。
このように精製されたヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることで、不純物である2官能アクリレートが重合反応に影響を及ぼし難くなるため、重量平均分子量が20000以上のニトリル基含有重合性ポリマーを合成することができる。
【0142】
前記(I)の工程において用いられるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、前述の合成方法Aに用いられる側鎖にヒドロキシル基を有するポリマーを合成する際に用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとして挙げられたものを用いることができる。中でも、イソシアネートへの反応性の観点から、第1級水酸基を有するモノマーが好ましく、更には、ポリマーの単位質量当たりの重合性基比率を高める観点から、分子量が100〜250のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
【0143】
また、合成方法Aに用いられるイソシアネート基と重合性基とを有する化合物としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI、昭和電工(株)製)、2−メタクリルオキシイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工(株)製)等が挙げられる。
【0144】
また、合成方法Aに用いられる溶媒としては、SP値(沖津法により算出)が20MPa1/2〜23MPa1/2であるものが好ましく、具体的には、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、1,2,3−トリアセトキシ−プロパン、シクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、アセチルアセトン、アセトフェノン、トリアセチン、1,4−ジオキサン、ジメチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、高分子量体を合成する観点から、エステル系溶媒であることがより好ましく、特に、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート等のジアセテート系溶媒や、ジメチルカーボネートが更に好ましい。
ここで、本発明における溶媒のSP値は、沖津法(沖津俊直著「日本接着学会誌」29(3)(1993))によって算出したものである。具体的には、SP値は以下の式で計算されるものである。なお、ΔFは文献記載の値である。
SP値(δ)=ΣΔF(Molar Attraction Constants)/V(モル容積)
【0145】
以上のようにして合成された本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、共重合成分全体に対し、重合性基含有ユニット、シアノ基含有ユニットの割合が以下の範囲であることが好ましい。
即ち、重合性基含有ユニットが、共重合成分全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜40mol%である。5mol%以下では反応性(硬化性、重合性)が落ち、50mol%以上では合成の際にゲル化しやすく合成しにくい。
また、シアノ基含有ユニットは、めっき触媒に対する吸着性の観点から、共重合成分全体に対し5mol%〜95mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜95mol%である。
【0146】
なお、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーは、シアノ基含有ユニット、重合性基含有ユニット以外に、他のユニットを含んでいてもよい。この他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、本発明の効果を損なわないものであれば、いかなるモノマーも使用することができる。
他のユニットを形成するために用いられるモノマーとしては、具体的には、アクリル樹脂骨格、スチレン樹脂骨格、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)骨格、メラミン樹脂(メラミンとホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ユリア樹脂(尿素とホルムアルデヒドの重縮合体)骨格、ポリエステル樹脂骨格、ポリウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリオレフィン骨格、ポリシクロオレフィン骨格、ポリスチレン骨格、ポリアクリル骨格、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの重合体)骨格、ポリアミド骨格、ポリアセタール骨格、ポリカーボネート骨格、ポリフェニレンエーテル骨格、ポリフェニレンスルファイド骨格、ポリスルホン骨格、ポリエーテールスルホン骨格、ポリアリレート骨格、ポリエーテルエーテルケトン骨格、ポリアミドイミド骨格などの主鎖骨格を形成しうるモノマーが挙げられる。
また、これらの主鎖骨格は、シアノ基含有ユニットや、重合性基含有ユニットの主鎖骨格であってもよい。
【0147】
ただし、前述のように重合性基をポリマーに反応させて導入する場合は、100%導入することが困難な際には少量の反応性部分が残ってしまうことから、これが第3のユニットとなる可能性もある。
具体的には、ラジカル重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの無置換(メタ)アクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、3,3,3−トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレートなどのハロゲン置換(メタ)アクリル酸エステル類、2−(メタ)アクリロイロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアンモニウム基置換(メタ)アクリル酸エステル類、ブチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類、スチレン、ビニル安息香酸、p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのスチレン類、N−ビニルカルバゾール、酢酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル化合物類や、その他にジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルチオ−エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが使用できる。
また、上記記載のモノマーを用いて得られたマクロモノマーも使用できる。
【0148】
カチオン重合でポリマー主鎖を形成する場合は、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールビニルエーテル、ジ(エチレングリコール)ビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、2−ビニルオキシテトラヒドロピラン、ビニルベンゾエート、ビニルブチレートなどのビニルエーテル類、スチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン類、アリルアルコール、4−ヒドロキシ−1−ブテンなどの末端エチレン類を使用することができる。
【0149】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
ここに記載されている分子量及び重合度の好ましい範囲は、本発明において用いられるシアノ基含有重合性ポリマー以外の特定重合性化合物に関しても好適な範囲である。
【0150】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜100000の範囲である。
【0151】
【化19】

【0152】
【化20】

【0153】
【化21】

【0154】
【化22】

【0155】
【化23】

【0156】
【化24】

【0157】
【化25】



【0158】
ここで、例えば、前記具体例の化合物2−2−11は、アクリル酸と2−シアノエチルアクリレートを、例えば、N−メチルピロリドンに溶解させ、重合開始剤として、例えば、アゾイソブチロニトリル(AIBN)を用いてラジカル重合を行い、その後、グリシジルメタクリレートをベンジルトリエチルアンモニウムクロライドのような触媒を用い、ターシャリーブチルハイドロキノンのような重合禁止剤を添加した状態で付加反応することで合成することができる。
また、例えば、前記具体例の化合物2−2−19は、以下のモノマーと、p−シアノベンジルアクリレートを、N、N−ジメチルアクリルアミドのような溶媒に溶解させ、アゾイソ酪酸ジメチルのような重合開始剤を用いてラジカル重合を行い、その後、トリエチルアミンのような塩基を用いて脱塩酸を行うことで合成することができる。
【0159】
【化26】

【0160】
本発明におけるシアノ基含有重合性ポリマー等の相互作用性基及び重合性基を有する化合物は、重合性基と相互作用性基の他に、極性基を有していてもよい。
極性基を有していることによって、めっき膜が形成された後、例えば、保護層を設ける場合には、ポリマー層と保護層との接触領域において密着力を向上させることができる。
【0161】
前述のように、本発明におけるポリマー層を形成するためには、相互作用性基及び重合性基を有するポリマー等の相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する液状組成物、即ち、相互作用性基及び重合性基を有する化合物と、該化合物を溶解しうる溶剤と、を含有する組成物(好ましくは、シアノ基又は−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造、及び重合性基を有するポリマーと、該ポリマーを溶解しうる溶剤と、を含有する本発明のポリマー層形成用組成物を用いることが好ましい。
なお、相互作用性基及び重合性基を有する化合物(例えば、シアノ基含有重合性ポリマー)の組成物中の含有量は、組成物全体に対して、2質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0162】
上記組成物に使用する溶剤は、組成物の主成分である、相互作用性基及び重合性基を有する化合物が溶解可能ならば特に制限はない。溶剤には、更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤などが挙げられる。
この中でも、シアノ基含有重合性ポリマーを用いた組成物とする場合には、アミド系、ケトン系、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
また、シアノ基含有重合性ポリマーを含有する組成物を塗布する場合は、取り扱い安さから沸点が50℃〜150℃の溶剤が好ましい。なお、これらの溶剤は単一で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0163】
また、本発明において、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を、基材上に塗布する場合、基材(重合開始層)の吸溶媒率が5%〜25%となる溶剤を選択することができる。この吸溶媒率は、基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の質量の変化から求めることができる。
また、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を、基材上に塗布する場合、基材(重合開始層)の膨潤率が10%〜45%となる溶剤を選択してもよい。この膨潤率は、基材を溶剤中に浸漬し、1000分後に引き上げた場合の厚さの変化から求めることができる。
【0164】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0165】
また、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶媒も使用することができる。
【0166】
相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0167】
また、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物には、必要に応じて、重合開始層の硬化を進めるために、硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、重合開始層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
【0168】
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアーリルヨードニウム塩、トリアーリルスルホニウム塩、トリアーリルセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0169】
これらの硬化剤及び/又は効果促進剤は、溶液の塗布性、基材やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0質量%〜50質量%程度まで添加することが好ましい。また、硬化剤及び/又は硬化促進剤は重合開始層に添加してもよく、その場合は、重合開始層に添加した量とポリマー層中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0170】
また、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて重合開始層に添加してもよい。
【0171】
これらの相互作用性基及び重合性基を有する化合物と各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成されたポリマー層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
得られたポリマー層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
【0172】
相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を接触させる場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、基材上に、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を塗布し、乾燥させて、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0173】
(エネルギーの付与)
基材表面へのエネルギー付与方法としては、例えば、加熱や露光等の輻射線照射を用いることができる。例えば、UVランプ、可視光線などによる光照射、ホットプレートなどでの加熱等が可能である。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0174】
なお、エネルギーの付与を露光にて行う場合、その露光パワーは、グラフト重合を容易に進行させるため、また、生成されたグラフトポリマーの分解を抑制するため、10mJ/cm〜5000mJ/cmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、50mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲である。
また、相互作用性基及び重合性基を有する化合物として、平均分子量2万以上、重合度200量体以上のポリマーを使用すると、低エネルギーの露光でグラフト重合が容易に進行するため、生成したグラフトポリマーの分解を更に抑制することができる。
【0175】
以上のようにして、基材表面に特定ポリマー層が形成されてなる被めっき体を得ることができる。
【0176】
なお、得られたポリマー層が、例えば、pH12のアルカリ性溶液に添加し、1時間攪拌したときの重合性基部位の分解が50%以下である場合は、該ポリマー層に対して高アルカリ性溶液による洗浄を行うことができる。
【0177】
また、基材と結合していないポリマーは、以下の手法により除去することができる。例えば、物理的な除去方法では、大気圧プラズマ、ウエットブラスト法などが挙げられる。また、化学的な除去方法としては、特定ポリマーが膨潤剥離を起すような溶媒を用いることができ、この溶剤としては、アセトン、アセトニトリル、ジメチルゼロソルブ、エチレングリコールジメチルエーテル、アセト酢酸メチル、シクロヘキサノン、ジメチルカーボネート及びそれらの水溶液などが挙げられる。
【0178】
[めっき触媒液]
本発明における(a)工程では、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液(本発明のめっき触媒液)を用いる。
このめっき触媒液を、前述の被めっき体に対して付与することにより、被めっき体の表面に存在する触媒元素と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)に、付与された触媒元素が付着(吸着)する。
【0179】
本発明におけるめっき触媒液を構成する触媒元素は、後述する(b)工程で行われるめっきの際に、活性核になるものや、電極として機能するものであればよい。
触媒元素としては、活性核になるものや、電極として機能しうるものであれば、特に制限されず、例えば、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Pdが特に好ましい。
【0180】
本発明におけるめっき触媒液中の触媒元素は、イオン状態で存在する、金属微粒子状態で存在する、又は、コロイド状態(金属コロイド)で存在する。
触媒元素のめっき触媒液中の存在形態である金属コロイドは、一般に、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0181】
また、触媒がイオン状態で存在するめっき触媒液は、金属塩を用いることで調製することができる。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。
【0182】
また、本発明において、めっき触媒液に用いられる有機溶剤としては、アセトンなどのケトン系溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤、メタノールなどのアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、等が挙げられる。中でも、除去の容易性の点から、アセトン、メタノールが好ましく、アセトンが特に好ましい。
【0183】
なお、本発明におけるめっき触媒液を構成する液成分としては、上記の有機溶剤以外に、水(蒸留水)を用いることができる。
めっき触媒液中における水と有機溶剤との含有割合は、質量比で、水:有機溶剤=5:95〜95:5の範囲であることが好ましく、特に、触媒元素が被めっき体に対して付着する速度が速くなるといった観点から、水に対して有機溶剤を多くした方がよく、具体的には、質量比で、水:有機溶剤=10:90〜30:70の範囲がより好ましく、20:80〜35:65の範囲が更に好ましい。
【0184】
めっき触媒液の被めっき体に対して付与する方法としては、被めっき体表面にめっき触媒液を塗布するか、或いは、めっき触媒液中に被めっき体を浸漬すればよい。
また、被めっき体を得る際に表面グラフト重合法を用いる場合、基材上に、相互作用性基及び重合性基を有する化合物を含有する組成物を接触させるが、この組成物中に、触媒元素を予め添加する方法を用いてもよい。相互作用性基及び重合性基を有する化合物と、触媒元素と、を含有する組成物を、基材上に接触させて、表面グラフト重合法を適用することにより、相互作用性基を有し、且つ、基材と直接化学結合したポリマーと、触媒元素と、を含有するポリマー層を形成することができる。このポリマー層を有する被めっき体を、上述のめっき触媒液に更に浸漬することで、ポリマー層中に触媒元素をより多く取込むことが可能になる。
【0185】
なお、基材が樹脂フィルムであり、その樹脂フィルムの両面に対して特定ポリマー層が形成されている場合には、その両面のポリマー層に対して同時にめっき触媒液を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0186】
上記のようにめっき触媒液を被めっき体に接触させることで、被めっき体表面に存在する相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、触媒元素を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、めっき触媒液中の触媒元素濃度は、0.001質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0187】
〔(b)工程〕
本発明における(b)工程では、前述の(a)工程によりめっき触媒液が付与された被めっき体に対してめっきを行う。これにより、被めっき体上にはめっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(a)工程において、付与されためっき触媒液中の触媒元素の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒液が付与された被めっき体に対して、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、被めっき体が特定ポリマー層を有する場合、そのポリマー層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0188】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、めっき触媒液が付与された被めっき体を、水洗して余分な触媒元素(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、被めっき体に対し触媒元素が金属イオン状態で付与されている場合には、還元剤を含有する無電解めっき浴が用いられる。このような無電解めっき浴を用いることで、金属イオンの還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。
なお、金属イオンの還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、金属イオンを0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヂメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
【0189】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
なお、本発明においては、環境負荷を抑制する観点から、水系の無電解めっき浴を用いることが好ましい。ここで、水系の無電解めっき浴とは、液状成分として水(蒸留水)を50質量%以上含むものを意味する。
【0190】
但し、疎水性が高い被めっき体に関しては、上記の水の範囲を逸脱しない量においてめっき浴に有機溶剤を添加してもよい
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0191】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0192】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0193】
特定ポリマー層を有する被めっき体に対して上記のように無電解めっきを行って得られためっき膜は、SEMによる断面観察することで、特定ポリマー層中に触媒元素やめっき金属からなる微粒子がぎっしりと分散しており、更にポリマー層上にめっき金属が析出していることが確認された。被めっき体とめっき膜との界面は、ポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、ポリマー層(有機成分)と無機物(触媒元素又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、凹凸差が500nm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0194】
(電気めっき)
本工程おいては、(a)工程において付与された触媒元素が電極としての機能を有する場合、めっき触媒液が付与された被めっき体に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより被めっき体との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0195】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0196】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚については、用途に応じて異なるものであり、めっき浴中に含まれる金属濃度、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電気配線などに用いる場合の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0197】
本発明において、特定ポリマー層を有する被めっき体を用いた場合、前述の触媒元素に由来する金属、及び/又は、無電解めっきによりポリマー層中に析出した金属は、該ポリマー層中でフラクタル状の微細構造体として形成されていることによって、金属膜とポリマー層との密着性を更に向上させることができる。
特定ポリマー層中に存在する金属量は、被めっき体断面を金属顕微鏡にて写真撮影したとき、ポリマー層の最表面から深さ0.5μmまでの領域に占める金属の割合が5面積%〜50面積%であり、ポリマー層と金属界面の算術平均粗さRa(JIS B 0633−2001)が0.05μm〜0.5μmである場合に、更に強い密着力が発現される。
【0198】
以上、説明したように、(a)及び(b)工程を経ることで、被めっき体表面にはめっき膜(金属薄膜)が形成される。形成されためっき膜(金属薄膜)は、被めっき体との密着性に優れるものであり、例えば、例えば、電磁波防止膜、コーティング膜、2層CCL材料、電気配線用材料等の種々の用途に適用することができる。
【0199】
また、本発明のめっき方法により得られためっき膜(本発明の金属薄膜形成方法により得られた金属薄膜)は、パターン状にエッチングすることで、金属パターンとすることもできる。
この(c)エッチング工程について以下に説明する。
【0200】
〔(c)工程〕
(c)工程では、本発明のめっき方法により得られためっき膜(金属薄膜)をパターン状にエッチングすることで、めっき膜の不要部分が取り除かれ、所望の金属パターンを得ることができる。
この金属パターンの形成には、如何なる手法も使用することができ、具体的には一般的に知られているサブトラクティブ法、セミアディティブ法が用いられる。
【0201】
サブトラクティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設けパターン露光、現像により金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジストパターンをマスクとしてエッチング液でめっき膜を除去し、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジストとしては如何なる材料も使用でき、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。また、エッチング方法としては、プリント配線基材の製造時に使用されている方法が何れも使用可能であり、湿式エッチング、ドライエッチング等が使用可能であり、任意に選択すればよい。作業の操作上、湿式エッチングが装置などが簡便で好ましい。エッチング液として、例えば、塩化第二銅、塩化第二鉄等の水溶液を使用することができる。
【0202】
また、セミアディティブ法とは、形成されためっき膜上にドライフィルムレジスト層を設け、パターン露光、現像により非金属パターン部と同じパターンを形成し、ドライフィルムレジソトパターンをマスクとして電気めっきを行い、ドライフィルムレジソトパターンを除去した後にクイックエッチングを実施し、めっき膜をパターン状に除去することで、金属パターンを形成する方法である。ドライフィルムレジソト、エッチング液等はサブトラクティブ法と同様な材料が使用できる。また、電気めっき手法としては前記記載の手法が使用できる。
【0203】
以上の(a)〜(c)工程を経ることにより、所望の金属パターンを得ることができる。
【0204】
一方、特定ポリマー層を有する被めっき体の場合、その特定ポリマー層を予めパターン状に形成しておき、そのような被めっき体に対して、前述の(b)を行うことで、所望のパターンのめっき膜を得ることができる(フルアディティブ工法)。
特定ポリマー層をパターン状に形成する方法としては、具体的には、ポリマー層を形成する際に付与されるエネルギーをパターン状とすればよく、また、エネルギーを付与しない部分を現像で除去することでパターン状のポリマー層を形成することができる。
なお、現像方法としては、相互作用性基及び重合性基を有する化合物などのポリマー層を形成するために用いられる材料を溶解しうる溶剤に浸漬することで行われる。浸漬する時間は1分〜30分が好ましい。
また、パターン状の特定ポリマー層は、グラビア印刷法、インクジェット法、マスクを用いたスプレーコート法など公知の塗布方法で直接パターニングした後、エネルギー付与し、その後、現像することで形成してもよい。
パターン形成したポリマー層上にめっき膜を形成するための(b)工程は、前述の方法と同じである。
【0205】
このようにして得られた金属パターンは、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の被めっき体上の全面又は局所的に、金属膜(めっき膜)を設けたものであることが好ましい。また、被めっき体と金属パターンとの密着性が0.2kN/m以上であることが好ましい。即ち、被めっき体表面が平滑でありながら、被めっき体と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0206】
なお、被めっき体表面の凹凸は、被めっき体を被めっき体表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
また、被めっき体とめっき膜との密着性の値は、めっき膜(金属パターン)の表面に、銅板(厚さ:0.1mm)をエポキシ系接着剤(アラルダイト、チバガイギー製)で接着し、140℃で4時間乾燥した後、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行うか、又は、めっき膜自体の端部を直接剥ぎ取り、JIS C 6481に基づき90度剥離実験を行って得られた値である。
【0207】
上記のようにして得られた金属パターンは、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【0208】
以下に、本発明の金属薄膜形成方法により得られた金属パターンを有するプリント配線板、及びプリント配線板を使用した多層配線基板の製造方法について具体的に記載する。
【0209】
多層配線基板は、一般的に、絶縁樹脂を介して複数の電気配線を積層させることで形成される。積層の手法としては、一括積層法、ビルドアップ法(又はHDI法(High Density Interconnection))に大別される。
【0210】
一括積層法とは、両面(又は片面)に金属薄膜や導電材料による薄膜などが付与された基板にそれぞれ配線状に導電パターンを形成し、両面(又は片面)に金属などによる配線が形成された基板と絶縁樹脂を交互に積層し、それらを一回のプレスで積層一体化を行う方法である。この方法の場合、一体化された多層配線基板に貫通スルーホール加工を行い、スルーホールの壁面にスルーホールめっきや、導電性物質の充填などを行うことで層間配線の導通を得ることができる。
【0211】
ビルドアップ法とは、中心部(ベース或いはコアと称す)に一括積層板(又は配線化された1層の両面又は片面の銅張り板など)を配置し、その上に絶縁樹脂、電気配線を順次積み上げながら多層化していく方法、最初から順次、絶縁樹脂による膜と電気配線を積み上げていく方法、コアに積層した絶縁樹脂による膜上に無電解めっき・電解めっきを行い金属薄膜を形成する方法、などがある。これらの方法の場合、スルーホール加工以外にも層を積み上げた時点でビア加工を行い、ビア部へめっき、又は導電性物質の充填などを行うことで、ブラインドビア構造やベリードビア構造を多層配線基板内に導入することができ、層間接続の自由度が上がるため高密度・高集積な多層配線基板の製造に向いている。
【0212】
このような多層配線基板を作製する上で好ましい層間接続構造の形成方法について、以下に示す。
【0213】
スルーホール加工の場合は、予め多層に積層された基板を準備し、全ての層を貫通するスルーホールを形成し、スルーホールの内壁又は内部にめっきを行うことで層間導通を行う。多層に積層する方法は、一括積層法でもビルドアップ法でもよい。
本発明では、例えば、基材、重合開始層、及び特定ポリマー層から構成される被めっき体に対して、(a)工程にてめっき触媒液を付与した後、(b)工程にて、無電解めっきや電気めっきによるめっきを行い、その後、配線パターンを形成することで、被めっき体の両面若しくは片面に電気配線を有する単層配線基板を複数枚準備する。
その後、配線パターン(電気配線)が形成された付与された基板を複数枚積層することで一体化する。積層の方法は、露出した基材自体を融着してもよいし、接着層を基板間に配置して加圧積層してもよい。
一方、ビア加工の場合は、ビルドアップ法で行うため、例えば、コア基材から、重合開始層、特定ポリマー層、金属薄膜、絶縁樹脂による層(層間絶縁層)を順次積み上げる際に各層ごとにビアを形成し、ビア内壁又は内部にめっきを行うことで、層間導通を行う。
【0214】
スルーホール又はビア加工の手段としてはドリル切削、放電(プラズマ)加工、レーザー加工、フォトリソグラフィで露光、現像するフォトビア加工、マイクロブラスト加工などがあるが、穴加工をする上では、これらに限定されず、所望の加工形状が得られればよい。
スルーホール加工の場合は積層により基板厚みが増加するため、均一加工性を実現する上ではドリル切削や放電加工が好ましく、高密度集積回路形成に有利であるビルドアップ法の場合は、微細なスルーホールを加工するために、放電(プラズマ)加工やレーザー加工、マイクロブラスト加工などを好適に用いることができる。
【0215】
また、スルーホール及びビア形成後にスルーホール及びビア内に残留する基材残渣(スミア)を低減し、スミア除去工程を簡略化若しくは省略できるという点においては、レーザー加工であればエキシマレーザー加工法や、マイクロブラスト加工を用いるのが好ましい。
【0216】
スミア除去(デスミア)工程は、リジット基板の場合は公知のデスミア処理液及び条件を使用することができる。例えば、ムロマチテクノス(株)より市販されているMDKシリーズ、メルテックス(株)より市販されているエンプレートシリーズ、アトテック(株)などから市販されているものを使用することができ、一般的には、層間絶縁層の膨潤処理を行い、アルカリ性過マンガン酸塩溶液或いはクロム酸塩溶液によりスミアを酸化分解した後に中和、水洗処理を行う。
一方、フレキシブル基板、例えば、ポリイミドを基材とした場合、アルカリ洗浄によって容易にスミアを除去することができる。
本発明においてスルーホール及び/又はビア加工を行う場合は、デスミア工程(デスミア処理)によって最表層に露出した層が分解する可能性があるため、以下の方法を採ることが好ましいが、デスミア工程による最表層に露出した層への影響が少ない場合においては、上述した方法によって多層配線基板を得ることができる。
【0217】
最表層が層間絶縁層などの絶縁樹脂、又は重合開始層の場合、デスミア工程はスルーホール及びビア加工の直後に行うことが好ましい。その後、例えば、重合開始層、或いは、特定ポリマー層の形成の際に、スルーホール及び/又はビア部分のみ、重合開始層を形成する組成物や、特定ポリマー層を形成する組成物の反応(硬化)の進行を抑制して未反応物(未硬化物)を洗浄することでデスミア工程なされたスルーホール及びビア表面を露出させることができる。より具体的には、重合開始層を形成する組成物並びに特定ポリマー層を形成する組成物のそれぞれを塗布した後に、スルーホール及び/又はビア部位にマスクを施し、光照射によって重合開始層を形成する組成物並びに特定ポリマー層を形成する組成物を反応(硬化)させた後に、マスクした部分の未反応物(未硬化物)を洗浄除去することで得ることができる。この時、重合開始層を形成する組成物並びに特定ポリマー層を形成する組成物は熱以外の活性エネルギーによる反応性(重合性)を有していることが好ましく、特に感光性樹脂組成物であることが好ましい。
【0218】
なお、重合開始層や特定ポリマー層を予めフィルム状にしておき、加圧(必要に応じて加熱)積層しながら上記マスクによるスルーホール及び/又はビア形成工程を行ってもよい。この場合は、マスクされるスルーホール内部の重合開始層、並びに特定ポリマー層を除去するために、フィルム状の状態におけるそれぞれの層中の反応率(重合率)は低いまま保持されることが好ましい。また、先に、スルーホール内に重合開始層並びに特定ポリマー層に対し濡れ性が悪い材料(例えば、水溶性の樹脂組成物など)を充填した後に上記重合開始層を形成する組成物や、特定ポリマー層を形成する組成物をそれぞれ塗布、反応(硬化)させ、水系の洗浄溶液でスルーホール及びビア内部の水溶性の樹脂組成物を除去してもよい。この時、濡れ性の悪い材料としては、水溶性の樹脂組成物が挙げられ、例えば、アクリル酸ポリマーやセルロース系ポリマー、ポリビニルアルコールなどを用いることができる。これらの方法により、スルーホール及び/又はビア内をデスミア処理でき、特定ポリマー層を有する多層配線基板を得ることができる。
【0219】
なお、基材と特定ポリマー層とが直接結合しており、基材と特定ポリマー層との密着に優れる場合、基材と特定ポリマー層との間には必ずしも重合開始層を形成することはない。例えば、基材をデスミア処理した際に、基材表面が粗化、又は分解されたことによって官能基が存在する場合においては、重合開始層を形成せずに直接特定ポリマー層を形成してもよい。この際、本発明の観点からは、目安として、基材表面の表面粗さRa(μm)に対して、Ra×2+A(μm)の厚みを有する特定ポリマー層を付与することで、金属配線下の樹脂層表面を再び平滑化することができる。ここでAの範囲は0.05以上、2以下であることが好ましい。
【0220】
また、最表層に特定ポリマー層を有している場合、スルーホール及び/又はビア加工は、特定ポリマーの上にデスミア工程用のレジスト層(デスミアレジスト層)を付与した後に行うことが好ましい。デスミアレジスト層は、デスミア処理における膨潤処理に対して膨潤しにくく、アルカリ性過マンガン酸処理で酸化分解されにくい樹脂を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、エポキシ樹脂などが挙げられ、特に試薬容器などに使われるポリプロピレンやポリ塩化ビニル、ポリエチレンが好ましい。
【0221】
なお、デスミア処理を行っても特定ポリマー層が残存する場合は、特定ポリマー層を露出させたままデスミア処理を行ってもよい。例えば、予めデスミア工程における特定ポリマー層のエッチング速度を測定し、デスミア工程に必要な時間からデスミア処理しても特定ポリマー層が残存する厚みで特定ポリマー層を付与することなどが挙げられる。
【0222】
更に、最表面に金属薄膜を有している場合、スルーホール及び/又はビア加工は、通常のデスミア工程を好適に用いることができる。この場合、金属薄膜は加工性の観点で薄い方が好ましく、厚みとしては0.1μm〜2μmが好ましい。本発明においては、無電解めっきを行った後にスルーホール及びビア加工を行うことが好ましい態様である。
【0223】
なお、予め、重合開始層と特定ポリマー層と無電解めっき層とが積層したフィルム、そして基材とを別々に準備し、一括積層法を適用して全ての単層基板を一括で積層してもよいし、予め積層した表面に絶縁基材が露出した多層基板表層に積層又は転写してもよい。
【0224】
これらの方法により、表面に特定ポリマー層が露出したスルーホール及び/又はビアを形成した後に、公知の技術によりスルーホール及び/又はビアを導電性材料で充填した後に、金属薄膜の形成及び配線化を行うことで、層間接続された多層配線板を得ることができる。
【0225】
公知のスルーホール及び/又はビア充填方法としては、例えば、スルーホール及び/又はビア壁面にコンフォーマルめっきを行った後、インク材や導電ペーストをスルーホール及び/又はビア内に充填し、表面が平滑になるように研磨をする方法や、コンフォーマルめっきの後に電解フィリングめっきを行ってスルーホール及びビア内部に金属めっきで埋める方法などが挙げられる。
【0226】
スルーホール及び/又はビアを充填した後、金属薄膜の形成及び配線化を更に行う方法は以下が挙げられる。サブトラクティブ法の場合、充填後にめっきを行い、得られた金属薄膜をエッチングすることで配線を得られる。セミアディティブ法の場合、充填後、めっきを行う前にめっきレジストを設けて充填部分及び露出部のめっきを行ってからマイクロエッチングを行うことで、特定ポリマー層表面に金属配線を形成できる。フルアディティブ法の場合、予め特定ポリマー層をパターン状に形成しておき、特定ポリマー層表面とスルーホール及びビアに触媒を付与してめっきを行うことで金属配線を形成する。スルーホール及びビア内壁はデスミア処理により、表面に物理アンカー若しくは樹脂分解による官能基を有しており、触媒はデスミア処理を経ていない最表層の露出した重合開始層に付着しないために、フルアディティブ配線を得ることができる。
【0227】
更に、デスミア処理されたスルーホール及びビア内に予め導電性粒子を充填する、若しくは、公知の触媒付与工程を経てコンフォーマルめっきを行った後にスルーホール及びビア領域以外の表層をマスクして電解フィリングめっき法によりビアポストを形成した後に、重合開始層を形成する組成物や、特定ポリマーを形成する組成物を積層・反応(硬化)させてもよい。この場合、ビアポストの多層配線基板表層からの高さを、重合開始層並びに特定ポリマー層の合計の厚みより高くした後に、上記各層を形成する組成物を塗布・(反応)硬化させ、ビアポスト上部を研磨することでビアポスト上部の樹脂を除去した後に公知の金属配線形成法を行うことで、表層の電気配線とビアポストの接続を得ることができる。
【0228】
上述した加工方法以外に、一括積層法において、単層の基材上の特定ポリマー層にめっきを行い、スルーホール加工並びにスルーホール内部に導通手段が施された片面又は両面の配線基板を得た後、それらを一括積層することで層間の導通が確保された多層配線基板を得ることもできる。この方法におけるスルーホールの加工方法は上述した方法を各層ごとに行えばよい。
また、ビルドアップ法においては、ビア加工を行わずに層間の導通構造を形成してもよい。例えば、最表層に露出した金属配線上の所望の領域に、電気導通が可能な材料からなるビアポストを先に形成した後、層間絶縁膜、必要に応じて重合開始層、特定ポリマー層の順に積層した後に、表面を研削平坦化させてビアポスト上部を露出させる。しかる後に、特定ポリマー層上に金属薄膜を形成することで、下層と上層間の電気接続構造を形成することもできる。
【実施例】
【0229】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0230】
〔実施例1〕
[被めっき体の作製]
(基材の作製)
まず、jER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製)11.9質量部、LA7052(フェノライト、硬化剤:大日本インキ化学工業)4.7質量部、YP50−35EK(フェノキシ樹脂、東都化成製)21.7質量部、シクロヘキサノン61.6質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.1質量部を混合した混合溶液を、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、塗布液を調製した。
この塗布液を、ガラエポ基板上に、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、1500rpmで25秒回転)にて塗布し、その後、170℃で乾燥して硬化させた。硬化した重合開始層の厚みは1.3μmであった。
これにより、重合開始層を有する基材を得た。
【0231】
(相互作用性基及び重合性基を有するポリマーAの合成)
下記のようにして、相互作用性基及び重合性基を有するポリマーAを合成した。
1000mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド35gを入れ、窒素気流下、75℃まで加熱した。そこへ、2−ヒドロキシエチルアクリレート(市販品、東京化成製)6.60g、2−シアノエチルアクリレート28.4g、V−601(和光純薬製)0.65gのN,N−ジメチルアセトアミド35g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで加熱し、更に3時間撹拌した。その後、室温まで、反応溶液を冷却した。
上記の反応溶液に、ジターシャリーブチルハイドロキノン0.29g、ジブチルチンジラウレート0.29g、カレンズAOI(昭和電工(株)製)18.56g、N,N−ジメチルアセトアミド19gを加え、55℃、4時間反応を行った。その後、反応液にメタノールを3.6g加え、更に1.5時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル:ヘキサン=1:1で再沈を行い、固形物を取り出し、相互作用性基及び重合性基を有するポリマーA(重量平均分子量6.2万)を32g得た。
【0232】
(特定ポリマー層の形成)
前記相互作用性基及び重合性基を有するポリマーA:10.5質量部、アセトン73.3質量部、メタノール33.9質量部、及びN,Nジメチルアセトアミド4.8質量部を混合攪拌し、塗布溶液Aを調製した。
前述のようにして作製された重合開始層を有する基材上に、調製された塗布溶液Aをスピンコータ(300rpmで5秒回転後、750rpmで20秒回転)にて塗布し、その後、80℃で乾燥した。
その後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、10mW/cmの照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射露光した。
これにより、特定ポリマー層を有する被めっき体を得た。
【0233】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中に特定ポリマー層を有する被めっき体を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
この時、形成された特定ポリマー層の厚みは0.6μmであった。
【0234】
[めっき触媒液の付与]
水:アセトン=80:20(質量比)の混合溶液に対し、0.5質量%の硝酸パラジウムを溶解し、未溶解物をろ紙にて除去したものに、特定ポリマー層を有する被めっき体を、15分間浸漬した。
その後、その特定ポリマー層を有する被めっき体を、水:アセトン=80:20(質量比)の混合溶液中に15分間浸漬して洗浄した。
【0235】
[無電解めっき]
上村工業(株)製のスルカップPGTを用い、下記表1に記載の建浴条件の浴を無電解めっき浴として使用した。
【0236】
【表1】

【0237】
なお、無電解めっき浴の温度を26℃、pHを水酸化ナトリウム及び硫酸で12.6に調整し、これを用いて無電解めっきを行った。
【0238】
(めっき初期析出性評価)
上記の方法で厚さ0.2μmの均一な無電解銅めっき膜を得るのにかかった無電解めっき時間を測定したところ、90分であった。
【0239】
[電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを30分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは19.5μmであった。
【0240】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0241】
(密着性評価)
上記のようにして得られためっき膜に対して、100℃−30分間、170℃−1時間ベーク処理を行った。その後、めっき膜の5mm幅について、島津製作所社製 オートグラフAGS−Jを使用して、引張速度10mm/mimにて、90°ピール強度の測定を行ったところ、0.77kN/mであった。
【0242】
〔実施例2〜4〕
実施例1におけるめっき触媒液中の混合溶液を以下のものに代えた以外は、実施例1と同様にして、めっき膜を形成した。
実施例2:水:アセトン=90:10(質量比)の混合溶液
実施例3:水:アセトン=40:60(質量比)の混合溶液
実施例4:水:アセトン=20:80(質量比)の混合溶液
【0243】
(めっき初期析出性評価)
上記の方法で厚さ0.2μmの均一な無電解銅めっき膜を得るのにかかった無電解めっき時間を測定したところ、実施例2、3、4の順に、それぞれ、120分、60分、30分であった。
【0244】
(密着性評価)
得られためっき膜に対し、実施例1と同様にして、密着性試験を行ったところ、90°ピール強度の測定結果は以下の通りであった。
実施例2:0.72kN/m
実施例3:0.71kN/m
実施例4:0.73kN/m
【0245】
このように、めっき膜の密着性は実施例1〜4において同等に高い値を示すものの、めっき触媒液において、水に対してアセトンの量を多くした混合溶液を用いることで、無電解めっきの初期析出速度を早くすることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)触媒元素と相互作用を形成する官能基を少なくとも表面に有する被めっき体に対し、触媒元素と有機溶剤とを含有するめっき触媒液を付与する工程と、
(b)該めっき触媒液が付与された被めっき体に対してめっきを行う工程と、
を有することを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記被めっき体が、基材表面に、触媒元素と相互作用を形成する官能基を有し、且つ、該基材と直接化学結合したポリマーからなるポリマー層を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のめっき方法。
【請求項3】
前記ポリマー層が、触媒元素と相互作用を形成する官能基及び重合性基を有するポリマーを前記基材表面に直接化学結合させることにより形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のめっき方法。
【請求項4】
前記触媒元素と相互作用を形成する官能基及び重合性基を有するポリマーが、下記式(1)で表されるユニット、及び、下記式(2)で表されるユニットを含む共重合体であることを特徴とする請求項3に記載のめっき方法。
【化1】


(上記式(1)及び式(2)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y及びZは、夫々独立して、単結合、又は置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L及びLは、夫々独立して、置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。)
【請求項5】
前記(b)工程では、無電解めっきが行われることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項6】
前記無電解めっきの際に水系の無電解めっき浴を用いることを特徴とする請求項5に記載のめっき方法。
【請求項7】
前記有機溶剤が、ケトン系溶剤であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項8】
前記有機溶剤が、アセトンであることを特徴とする請求項7に記載のめっき方法。
【請求項9】
前記めっき触媒液が更に水を含有し、該水と前記有機溶剤との含有割合が、質量比で10:90〜30:70であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項10】
前記触媒元素が、Pdであることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のめっき方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10に記載のめっき方法を用いた金属薄膜形成方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項10に記載のめっき方法に用いられ、触媒元素と有機溶剤とを含有することを特徴とするめっき触媒液。

【公開番号】特開2009−256775(P2009−256775A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334171(P2008−334171)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】